COMMUNE 1998/06/01(No.273 p48)

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06月号 (1998年06月01日発行)No.273号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  周辺事態基本法は朝鮮出兵法

●翻訳資料 

    平行滑走路建設に反撃

三里塚ドキュメント(3月) 内外情勢(3月)

日誌(2月)

翻訳資料

 翻訳資料

 米通商代表部の貿易障壁報告−日本の部

米通商代表部 98年3月31日発表

松永 洋訳 

【解説】

 米通商代表部(USTR)「貿易障壁報告書」の日本の部は、二万七千語にも達する。この分量だけでも、米帝の貿易赤字、特に対日赤字がいかに危機的なものか物語っている。日本の部では、直接には触れていないが、この報告では、韓国、インドネシア、タイなどにも多くのページをさいて論じており、日帝資本のアジアの生産拠点からの対米輸出が大問題になっていることも明らかである。
  今年の報告書は、九七年版報告書と比べても、日帝の全経済政策、全社会構造の徹底的改変を求めている点で際立っている。従来から非関税障壁、構造障壁とされてきた点だけではなく、帝国主義としての日帝のあり方そのものを根底から問題にしている公正取引委員会の人事等にも細かく立ち入って批判している(これには日帝はただちに激烈な反応を示した。また日帝は、報復的に「アメリカの構造障壁」の撤廃要求を突きつけている)。そしてそのうえで、個々の産業部門、個々の品目についての要求を詳細に掲げ、今すぐ実利を獲得する姿勢を鮮明にしている。
  本誌には、個別分野・個別品目の項は冒頭のごく一部しか掲載できなかったが、金融部門、会計・法律業務の開放を強く求めていることが注目される。そして、特に大きな重点は、情報通信産業である。
  この分野は、現代軍事技術の核心であり、また今日の米帝経済で唯一の成長産業である。そしてこの成長は、単なる純経済行為・ビジネスの成功の結果ではなく、米帝の歴史的な基軸国としての総合力――政治・軍事・経済・文化・言語などの世界的影響力――をフルに使った争闘戦によってもぎり取ったものである。 日帝が、六〇年代から国家総力的な保護育成策をとって、この分野になだれ込んできたことに対して、米帝は八〇年代の日米半導体協定、米包括通商法への知的所有権保護条項盛り込み等で、猛然と巻き返した経緯がある。この分野は、軍事的死活性に加え、半導体・コンピュータの製造・販売、衛星事業、コンピュータソフトや音楽の著作権、通信サービス参入問題など広範囲の問題が密接にからみあい、世界標準の先取が決定的意味を持つという産業的特質がある。だからこの分野では、国家総力戦的な争闘戦が必然となる。
  日米帝の対立は解決不可能であり、究極的には、日米戦争・世界戦争に行き着くしかない。たしかに日帝は、当面は米帝と共同の朝鮮侵略戦争に向かっているが、その共同の中でも対米対抗的な独自の軍事力の形成を激しく追求し、米帝とのきしみを生じているのである。
  われわれ労働者人民は、帝国主義間の競争、帝国主義間争闘戦での自国帝国主義の敗北を歓迎・促進する立場を鮮明にしなければならない。帝国主義間争闘戦激化の時代には、これが唯一の現実的な道である。
  他帝国主義に対する自国帝国主義の勝利を求める立場に立つなら、労働者人民は、無限の競争にたたき込まれ、極限的に搾取され、結局は戦争に動員され命までも差し出させられる。日本共産党の「対米従属経済から東アジア経済圏へ」論(『前衛』四月号大槻論文)、カクマルの「CIAの謀略」論は、日帝の対米争闘戦を尻押しし、現代版「大東亜共栄圏」の形成に人民を動員しようとするものである。侵略戦争・帝国主義戦争の先兵だ。日共・カクマルを粉砕し、新たな労働者の党を建設しよう。

【〔 〕内の補足は訳者】

……………………………………

【米通商代表部の貿易障壁報告】

 一九九七年、米国の対日商品貿易の赤字は五五七億jであった。前年の赤字四七六億jより八〇億j(一七%)の増加である。米国の対日商品輸出六五七億jで、前年比一九億j(二・八%)の減少である。九七年、日本は米国の三番目の輸出市場であった。米国の日本からの輸入は、一二一四億jで、九六年の輸入よりも六一億j(五・三%)増えた。
  一九九六年の米国の日本への直接投資残高は、三九六億jで、九五年の水準から三・一%増加している。米国の対日直接投資は、主に製造業、金融、卸売り業に集中している。

◆概観

 クリントン政権は一九九七年も、アジア最大の経済圏である日本において、米国の財・サービスの市場アクセスの改善を前進させた。不況によって、日本の輸入が減少し、経常収支と貿易収支の黒字が増加したが、それは同時に、日本政府に、米国の財とサービスに対する長期にわたる構造障壁への取り組みを行わせる好機ともなった。米国は、新たな協定を締結し、いくつかの主要な部門で日本との間の紛争を解決し、アメリカの対日輸出の機会を拡大した。これらの協定の中でもっとも包括的なものは、六月にクリントン大統領と橋本首相が発表した「規制緩和・競争政策についての強化協議」である。昨年の他の二国間協定・二国間取り決めは、木材製品・録音物・トマト・通信用調達品・海運および港湾の運用・NTTの調達品・蒸留酒・民間航空の分野であった。
  クリントン政権が重視してきたことは、自動車・自動車部品や通信などの基軸的部門をカバーする既存の諸協定の実施状況を監視して、貫徹すること、二国間的あるいは地域的あるいは多国間的アプローチによって、新たな協定の交渉を行うこと、いっそう多くの部門を競争に開放し、日本の内需主導の成長をなしとげるために、構造改善と規制緩和を行うことである。
  この戦略は、一九九三年七月十日のクリントン大統領と当時の宮沢首相の間で調印された「米日間の新たなパートナーシップのための枠組み(枠組み合意)」〔日米包括経済協議(の合意)〕に体現された日本との二国間経済関係についてのクリントン政権の包括的アプローチに沿ったものである。この「枠組み合意」のもとで、部門別の障壁だけでなく、構造的障壁、マクロ経済的障壁にも取り組んで、外国企業の日本市場へのアクセスを拡大することを、米国と日本は合意した。日本は、公式の輸入関税はきわめて低いレベルに引き下げてきたが、不透明な、差別的標準や排他的商習慣、国内企業を保護し外国の競合商品の日本市場への流入を制限する商環境などの非関税障壁を維持してきた。包括経済協議合意による大きな改善点は、一つひとつの合意事項の履行の監視と貫徹のための客観的な量的・質的基準に重点を置いたことである。この基準によって、各合意事項の実施状況の完全な査定が可能となり、日本市場の外国商品・サービスへの開放度が計られるようになったのである。
  この包括経済協議合意の下での主要な政策目標は、日本での規制の改善と競争の促進である。包括経済協議合意を基礎にして作られた「規制緩和・競争政策についての強化協議」は、包括的規制緩和を推進し、競争促進を強化する二国間の取り組みの牽引車となった。この協議は、日本自身の「規制緩和行動計画」にもとづく日本経済の自由化・規制緩和の取り組みを補完するものである。このために米国は、九七年十一月、日本経済全体の重荷になっている規制について日本政府が取るべき規制緩和措置を提案する詳細な文書を提示した。このような過剰規制は、日本の消費者の生活水準を引き下げ、市場アクセスの障壁を作り出して日本の貿易収支黒字を増加させるのである。
  クリントン政権は、九七年にいくつかの産業部門で新たな協定を結び、米国の財とサービスに対する古くからの障壁に立ち向かい、米企業にビジネスチャンスを提供し、日本との貿易紛争を解決してきた。たとえば、NTT・警察庁の通信資材調達に関する二つの協定は、米国の輸出企業が公平な市場アクセスを確保できるようにした。今後とも米国は、日本の巨大な通信資材・通信サービス市場をいっそう自由化することを大きな優先課題としていく。
  米国連邦海事委員会の強力な活動の結果、米国と日本は、九七年に別の二つの協定を締結することとなった。これによって日本は、日本のきわめて制限的な港湾使用システムの改善、外国海運業者の日本の港湾サービスへのアクセスの自由化を約束した。九八年一月には、米日は、二国間民間航空市場を大幅に自由化する民間航空協定を結んだ。
  一九九七年、米国と日本の担当者は頻繁に会合し、自動車・自動車部品、保険、板ガラス、建設、半導体、医療サービス・医薬品、政府のコンピュータ・スーパーコンピュータ調達をカバーする重要な協定の実施状況について討議した。
  米国は、日本の市場障壁に対して、世界貿易機関(WTO)紛争解決委員会を通じても取り組んできた。クリントン政権は、日本に対するWTOの紛争解決手続きを行うことを決断し、一月には、日本における録音物保護の不十分性についての紛争を解決した。日本は、この紛争を解決するために九六年十二月に著作権法を改正し、一九四六年から一九七一年に生産された録音物を完全に保護することとした。この期間における保護の欠落による損害は、米国の当該産業の見積もりによれば、年間五億jにのぼる。
  蒸留酒に対する日本の差別的課税制度を認めないWTO審査決定の実施について、米国は、十二月に日本と取り決めを行った。
  米国がWTOの日本に対する紛争解決手続きに訴えたのは一九九六年のことであった。それは、消費者用写真フィルムおよび紙の部門での日本の市場アクセスの制限についての問題であった。だがしかし、WTO審査委員会は、九八年に両国に提示した最終報告書の中で、日本がWTOの義務に違反した事実は発見できなかったと述べた。これはきわめて遺憾な調査であり、この報告が日本の多数の市場保護措置が複合して発揮する効果などの核心問題からそれていると米国は表明した。そこでクリントン政権は日本市場への実質のあるアクセスを要求する、新たな市場開放協議の開始を宣言した。この協議のもとで省庁を超えた監視・執行委員会が置かれ、WTO審査委員会への日本の市場開放度申告の実施状況を監視することとなった。
  さらに日本は、部門別の取り組み、構造的取り組みに加えて、基礎的なマクロ経済の不均衡への取り組みも約束した。特に、国内総生産に占める経常黒字総額の比率の削減のために力を尽くすことに合意した。
  一九九二年には、経常黒字はGDPの三・二%であったが、九六年には、GDPの約一・五%(六六〇億j)まで減少した。だが日本の経済成長は事実上停滞し、九七年には再び、GDPの二・三%(九三五億j)にまで劇的に増加した。
  われわれは、日本政府に対して、内需主導の成長を確保して経常収支黒字の継続的かつ顕著な増大を回避する約束を果たすよう、繰り返し強く求めた。

◆規制緩和・競争政策についての米日強化協議

●背景――日本と規制緩和

 最近の日本政府の規制緩和の努力にもかかわらず、日本経済は、過剰な、時代遅れの規制に満ちている。不要な規制は、経済成長を妨げ、日本での企業活動の費用を増大させ、日本の消費者の生活水準を下げ、輸入の障壁になる。日本の経済学者の見積もりによれば、政府は日本の全経済活動の約四〇%を規制しているという。過剰な規制の例として、価格統制、独自の規格、煩雑な検査および認証条件があげられる。日本政府は、規制緩和計画が全面的に実施されれば、一九九八年度から二〇〇三年度の間に、GDP成長は年間〇・九%上乗せされ、経常収支黒字の対GDP比は〇・九%減少すると見積もっている。
  規制は、日本で活動する米企業が直面する多くの市場アクセス問題の核心である。規制の一部は、直接に輸入に向けられたものであり、他の規制は、新たな市場参入に対して現状を守るシステムになっている。米企業の市場アクセスを妨害する規制の撤廃を強力に要求してきた。米日の貿易協定は、日本市場の規制に関する諸問題に向けられてきた。
  一九九五年以来、日本政府は規制緩和推進三ヵ年計画の施行に力を入れてきた。現行の計画は、九八年三月末に終了する。日本が実質ある規制緩和の取り組みをするよう促すため、米国および他の貿易相手国は、個別的な規制緩和措置を詳細に示した年次提案書を日本に提示してきた。しかし残念なことに、規制緩和行動計画は、はかばかしく進んでいない。
  規制緩和推進のため、日本政府は法律によって行政改革会議を設立した。行政改革会議の規制緩和勧告の多くは、米国および他の国の提案に沿うものである。しかし行政改革会議には、勧告の採用を強制する権限はなく、これまでも日本の省庁は最重要の勧告を無視してきたのである。行政改革会議の任期は九七年十二月で切れた。
  九八年二月、橋本内閣は規制緩和委員会を設立した。これは、新たな規制緩和三ヵ年計画を九八年三月までに策定するためのものである。日本政府は、行政改革会議の後継機関を置くかどうか、どのようなものにするかどうかを考慮中であるようだが、米国は、総理府の下に新たな機関を設立し、それに新たな規制緩和措置の実行と既に発表された措置の監視の任務を与えるよう、主張している。

● 規制緩和・競争政策についての強化協議

 包括経済協議合意の目標の達成、日本における規制緩和の促進、外国の商品・サービスの市場アクセス拡大のために、クリントン大統領と橋本首相は、九七年六月一九日、規制緩和・競争政策強化計画を設けることを合意した。この強化計画は、産業部門別の問題と構造的問題の両方に取り組み、外国の競合する商品とサービスの市場アクセスを妨害する政府の法律、規制、指導の改善を目指している。五つの専門家グループが作られ、通信、住宅、医療機2器および医薬品、金融サービスの四部門、そして一つの構造問題の会合が開かれてきた。構造問題のグループでは、競争政策、流通、透明性や他の政府の慣行に焦点が当てられている。米国は、日本が、実のある規制緩和を実行し、内需を刺激し、外国の商品・サービスの市場アクセスを拡大するというバーミンガム・サミットの時の約束を果たすことを期待している。

◆部門別の規制緩和

● 通信

 通信部門には、長らく時代遅れの規制があり、また支配的な通信事業者(NTTとKDD)の市場支配力を使った新らたな競争者の参入と発展が阻害されてきた。米国は、この部門にもっと競争を持ち込むように、規制の変更を追求してきた。米国の要請は、基礎的通信、DTH〔一般使用者向け直接発信〕衛星サービス、無線施設及びケーブルテレビの規制緩和に目標を定めてきた。高すぎる〔通信事業者間の〕相互接続料、外国からの投資制限、料金認可手続きの煩雑さ、衛星サービスの制限、施設の許認可手続きの負担の重さは特に問題である。
  日本は、この部門の規制緩和にいくらかの前進をした。二国間協議の結果、DTH衛星サービス事業者は、著しく多数のチャンネルを提供できるようになる。大手国際通信業者KDDへの外資の投資制限は撤廃される…。このような約束をわれわれはしっかりと監視していく。
  しかし、特に地域通信事業の競争において真に競争的な市場を保証するためには、もっと多くのことが必要である。たとえば、長期的な増分原価法を使った、競争促進的な相互接続体系を九八年末までに導入する必要がある。そうしないと、基礎的通信部門での前進は、危うくなる。また、通信・CATVインフラへの新規参入者に、透明、無差別な回線使用へのアクセスを遅滞なく保証しなければならない。支配的通信事業者が反競争的な価格設定をしないように保証する措置を導入すべきである。DTHをさらに自由化し、チャンネル無制限使用の許可、放送周波数の有効使用を進める圧縮多重送信の許可が必要である。 (おわり)