COMMUNE 1999/04/01(No.282 p48)

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4月号 (1999年4月1日発行)No282号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  戦後最大の激突へ

●翻訳資料1 東アジア―太平洋地域に関する米安保戦略(下)
(“略称「東アジア戦略報告」“EASR”

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/x−−室田順子

    国労新橋支部が座りこみ行動

三里塚ドキュメント(1月) 内外情勢(1月)日誌(11-12月)

羅針盤 戦後最大の激突へ

 小渕・小沢自自連立政権のもとで、ガイドライン関連法案を絶対に強行成立させようという日帝の攻撃はすさまじい。この攻撃の前に民主党や公明党は「修正協議」に取り込まれ、日共も社民党も安保を容認してしまっているため、国会内では総与党化状況が生まれ、そこだけみると絶望的にみえるほどである。だがしかし、これをもって階級闘争はもはや展望がないと言えるのか。断じてそんなことはない。日帝がこの攻撃でめざしているものは戦後最大の、戦後的価値観を転覆するような、朝鮮侵略戦争合法化立法である。それが抵抗もなくすんなりまかり通るはずがないのだ。労働者階級人民は自自連立政権下の戦争の現実化の動きに不安と危機感と怒りをつのらせており、必ず広範に闘いに立ち上がっていくことは確実である。
 それにしても、通常国会の安保・ガイドライン問題での論戦は驚くべきものである。どの党も朝鮮を対象とした戦争は当然という前提で議論を進めているのだ。そして、ちまたには「北朝鮮脅威」論があふれている。北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国がすぐにも核ミサイルで日本に攻め込んでくるかのようなでたらめな排外主義宣伝がはびこっている。だが、北朝鮮スターリン主義・金正日の反人民的・反革命的内外政策をえじきとして、朝鮮半島で侵略戦争をしようとしているのは米帝であり、日帝なのだ。この根本問題をごまかした北朝鮮非難は、すべて帝国主義の侵略戦争に翼賛するものだ。「北朝鮮はわれわれと共通の常識をもたない」という日本共産党の議論も日帝政府と北朝鮮政策をともにするという侵略翼賛の態度表明だ。
 日本共産党の「安保廃棄の凍結」方針は、安保の発動として進行している現在の事態をすべて容認するものだ。たとえば沖縄基地の現実を認めるということを意思表示するものである。不破や志位は国会質問で「国連決議に基づくかどうか」「アメリカの先制攻撃かどうか」「日本の国家主権の発動かどうか」を判断の基準にすると言い、「戦争絶対反対」を引き下ろしてしまっているのである。彼らは今差し迫った問題が米日帝による朝鮮侵略戦争であるという核心を覆い隠し、あたかも危機が北朝鮮によってもたらされるという排外主義丸出しの議論をしているのである。日共の辞書からは帝国主義ということばは消えてしまったのである。新ガイドライン関連法案を口先で反対、実際は容認する日共を打倒しなければならない。
 ガイドライン関連法案と一体の攻撃として、沖縄に対する攻撃が強まっている。普天間基地の県内移設=北部新軍事基地建設の攻撃に先立って、那覇軍港の浦添移設の攻撃が策動されている。稲嶺知事が「移設容認」を表明したことで、闘いは重大段階に入った。また、入管法・外登法の改悪攻撃、三里塚空港の平行滑走路二〇〇〇年完成の攻撃、狭山差別裁判再審棄却の策動、組織的犯罪対策三法案の成立策動など新ガイドライン攻撃と一体の攻撃を全力で打ち破らなければならない。さらに国鉄改革法を承認して国労を敵に売り渡す宮坂・チャレンジグループの策動を粉砕する闘いも正念場だ。これらの闘いに勝ちぬき、四月統一地方選挙闘争を当面するガイドライン決戦の最大の関門として勝利しなければならない。ここで「侵略戦争に反対する唯一の党派」としての登場をかちとることがすべてを切り開くのだ。    (た)

 

 

翻訳資料

  東アジア―太平洋地域に関する米安保戦略(下)
(“略称「東アジア戦略報告」“EASR”)

 98年11月23日 アメリカ国防省

 江原 良訳 

〔第二章2〜4 略〕

 5 中国への総合的関与

 アジア−太平洋地域の持続的安全保障は、中国が建設的役割を演じることなしには不可能だと米国は理解している。九七年十月と九八年七月のクリントン大統領と江主席の首脳会談は、米中関係の転換点を画すもので、米国の中国への総合的関与戦略を推進する大きな出来事であった。
 中国は、わが国の地域的安全保障戦略に対して多くの難問をもたらしていると同時に、多くのチャンスももたらしている。核保有国、地域的な主要軍事大国、国連安全保障理事会の常任理事国として世界的な位置をもっている中国は、アジア−太平洋の安全保障に決定的役割をはたしている。米国にとって、いや、すべてのアジア−太平洋地域諸国にとって、中国の、安定した、安全な、開かれた、繁栄した、平和な国としての発展が大きな利益となる。アジアの平和と繁栄の展望は、国際社会の責任ある一員としての中国の役割に大きく左右されるのである。
 米国と中国は、多くの共通の世界的・地域的な利益を持っている。両国とも、アジアの経済発展と継続を促すために地域の安定を保持することを利益としている。わが国も中国と同じく、中国が安定し繁栄した国として台頭することを利益としている。両国とも、朝鮮半島の平和の維持および大量破壊兵器とその運搬手段の拡散の予防を重大な利益としている。インドとパキスタンの核実験がアジアの安定におよぼす影響を、両国とも懸念している。両国は、非通常兵器によるさまざまな安全保障上の脅威に共同で対抗している。
 中国の大国としての台頭は、さまざまな潜在的な難題を提起している。中国の隣国の多くは、中国の防衛支出増大、および先進的な戦闘機の開発・購入や移動式弾道ミサイルシステム、対地・対艦巡航ミサイル、先進的地対空ミサイル、エネルギー投射プラットフォームの開発計画などの人民解放軍の近代化を注意深く追跡している。中国の軍事力増大が国際的・地域的な焦点になっていることを考えれば、中国が、多国間の拡散防止・軍備管理体制に参加し、軍の透明性の拡大に努めることは、ますます重要である。米国は、中国の一九九八年八月の防衛白書出版は開放拡大に向っての積極的な一歩であるとして歓迎する。
 【東アジア戦略報告の囲み記事《中国の白書》
 中国は、透明性拡大に向かって大きな動きをみせ、また国際的な安全保障対話に参加するなかで、九八年七月、『中国の国防』という題の白書を出した。この文書は、国際的・地域的安全保障問題および中国自身の防衛政策についての中国政府の見解を示している。また、外交的手段によって地域の未解決事項を解決すること、また他の諸国と共同でアジア−太平洋地域の安定的な地域安全保障の枠組みを形成していくことを中国が望んでいることをあらためて示した。また、中国の第一の国家安全保障上の懸案は経済建設であることを説明している。そして拡散防止などの地球規模の安全保障問題での中国の役割がますます増大していることを強調している。
 『中国の国防』は、軍事ブロックの拡大と軍事同盟の強化は国際安全保障に「不安定化要因」を加えるという中国政府の見解を強調している。この見解は、米国のアジアにおける同盟が安定化に寄与してきたという広範に認められている事実とは逆である。中国の経済近代化は、米国のアジアにおける同盟が進めてきた建設的な地域環境から利益を受けているのである。中国は、アジア−太平洋地域の安全保障の仕組みの発展および既存の二国間同盟のネットワークを補完する多国間機関の発展に重要な役割を担っている。米国、中国、あるいはこの地域の他の諸国が、安全保障の仕組みを形成するにあたっての最大の課題は、いまだに残っている戦略的見解のギャップへの対処であり、また互いに受け入れ可能な安全保障へのアプローチを作り出すことである】
 米中の対話は、両国が互いの地域安全保障上の利害について明確な認識を持つためには、引き続き不可欠である。対話と交流は、両国間の認識の誤りを減らし、中国の安全保障上の懸念に対するわが国の理解を深め、両国の防衛機関の間の信頼を醸成し、軍事事故や誤算を回避するものとなる。九八年七月のクリントン大統領の訪中時に行われた、米中の戦略核兵器の照準を互いに相手国からはずすという合意も、両国に保証を与え、両国の建設的関係を再確認する重要な象徴的な行動であった。
 米中は、コミュニケーション・相互理解のための機構の枠組みの確立を前進させてきた。米国は、間違った期待を持たずに現実の成果に立脚していくように、このアプローチを一歩一歩進める方法をとってきた。
 九八年五月に設置された首脳間の直接連絡ラインは、世界的・地域的・二国間的な問題の協議のための重要な水路となっている。九八年一月の軍事海上協議協定は、互いの近傍の海上・上空で行動する際の両国軍の間の理解と信頼を深める対話のプロセスを確立するために締結された。また米国防省は、九七年十二月から開始された毎年の「防衛協議会談」による高官レベルの定期的な戦略対話を続けている。両国軍は、相互に表敬寄港しており、人道支援と災害救助についても交流を開始した。また、国防省・軍の高官が相互訪問し、それぞれの国防大学への留学生交換を行っている。

 香港

 米海軍は、香港に毎年六十回〜八十回寄港している。この行動は、香港の中国主権下への復帰以来、中断されることなく続いている。香港寄港は、船舶の小規模な保守や修理を可能にし、この地域における米国の海外プレゼンスに貢献している。世界的に一流の「生活の質」をもった香港へのアクセスは軍人の休養にそうとう役立っている。またそれは、一九八四年の英中共同宣言および香港基本法による香港の自治継続を象徴的に支えることにもなっている。

 台湾

 米国は、台湾関係法(TRA)および三つの米中共同声明にもとづいて、台湾の人々との強力な、しかし非公式な関係を保っている。わが国は一貫して、台湾問題は、台湾海峡の両側の中国人が解決する問題であると考えてきた。解決は必ず平和的でなければならないということが、米国の不変の利害である。台湾関係法および三つの米中共同声明にのっとって、米国は台湾に防衛的兵器を販売し、十分な自衛能力を維持できるようにしてきた。わが国の限定的兵器販売は、台湾海峡の平和と安定の維持に貢献し、対話を含む海峡間の関係の改善の空気を作り出してきた。

〔第二章6〜第三章 略〕

 第四章 大量破壊 兵器の拡散

 0 拡散防止〔次項のみ訳出〕

 朝鮮半島

 米国は、南朝鮮との協力に高い優先順位を置いている。それは北朝鮮の大量の化学兵器とその運搬手段によって、南朝鮮がきわめて大きな大量破壊兵器の脅威に直面しているからである。米国と南朝鮮は、地域の拡散問題、特に北朝鮮の拡散活動についての互いの懸念事項に対処するために、拡散防止対策本部を設置している。
 九四年十月二十一日の米朝基本合意は、北朝鮮の核開発計画による脅威を大幅に減少させたが、北朝鮮の合意完全順守を厳重に監視するとともに、米韓日が、基本合意のプロセスを支援することが朝鮮半島の核拡散の脅威を減少させるためには不可欠である。
 北朝鮮は大量破壊兵器が運搬可能なシステムとして、これまでノドン・ミサイルを開発してきたし、今テポドン一号・二号ミサイルを開発しつつある。九八年八月、北朝鮮はテポドン一号ミサイルの発射実験を行った。小さな衛星が搭載されていたようだが、軌道には乗らなかった。しかし朝鮮民主主義人民共和国は、この発射によって新たなミサイル能力を示したのである。テポドン二号は、四千`メートル以上の射程距離を持っていることもありうる。北朝鮮は、弾道ミサイルで化学兵器を運搬する能力も持っている。しかも、朝鮮民主主義人民共和国のミサイル計画は、朝鮮半島とアジア−太平洋地域のはるか遠くまで影響が及ぶのである。北朝鮮は、弾道ミサイル、装備、関連技術の開発と特に南アジア・中東諸国への販売に高い優先順位を置いている。米国は、九六年四月に北朝鮮政府との間で、北朝鮮のミサイル技術の輸出と国産ミサイル開発計画の凍結のための交渉に入った。まだ合意に至ってはいないが、討議は続行されている。

〔〜第五章 略〕

  第六章 米国の関与の 保持−−新世紀への 米国の戦略的展望

 冷戦終結以来の年月によってアジア−太平洋地域は変化したが、これからの年月はさらに巨大な動きになることは確かである。米国は、この地域の将来について、またこの変化のただなかで安定を確保する力である米国の関与の継続について楽観している。新世紀のアジア−太平洋地域が、安定した、安全な、繁栄した、平和的な地域であるためには、引き続き警戒と柔軟性が必要であり、またあらためて同盟国や友好国との緊密な協力と協議にコミットすることが必要である。また、新世紀への展望を開くためには、この地域のことに米国が総合的にアプローチして建設的な変革の促進を援助していくことが必要である。

  0 海外プレゼンスの維持−− 基地、アクセスおよび善隣

 約十万人の軍事要員を予見しうる将来にわたり維持することを始めとしたアジア−太平洋地域での米国の海外プレゼンスは、地域の戦略的利益に寄与しつづけ、米国のコミットメントと関与が縮小されないことの証明となる。戦力構成は、地域的な戦略的要件とそれを支えるために必要な能力についてのわが国の構想を反映するものであり、また同盟国と協議しつづけていく対象である。今後米国は、地域内のこのプレゼンスを維持し支援していく新たな方式についても検討していくことになる。オーストラリア、インドネシア、タイ、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、フィリピンなどの諸国での支援−−従来の駐留構造とは別の−−が発展しつづけることは、地域の安定維持およびこの地域にまた必要とあらばアラビア湾などにも確実に戦力投入する能力という米国の戦略的利益に寄与する。
 在日米軍基地は、今後ともこの地域におけるわが国の軍事プレゼンスの基軸である。在韓米軍は、引き続き朝鮮半島で侵略を抑止し北東アジアとアジア−太平洋全域の安定に寄与していく。従来からの駐留構造と米軍プレゼンスへの新たな支援方式との組み合わせによって、これまで地域の安定に寄与してきた柔軟性と威信が今後も保たれ、将来の課題に確実に対処できるようになる。
 他方、米軍と受入国の親善を進めることは、今後とも米国の海外プレゼンスに不可欠の要素である。受入国や地元社会との協力は、基地司令官と地元当局との間だけでなく、陸・海・空軍・海兵隊の一人ひとりの軍人と一人ひとりの地元民との間でも不可欠なのである。日本とのSACOでの緊密な協力が示しているように、米軍の地元への影響を減らす措置について受入国との対話と協議をさらに拡大するとともに、地元社会への目にみえる貢献、民生プロジェクトなどによる生活の質の改善を必ず進めていく。また米軍は、プレゼンスの戦略目的や米軍の訓練活動と準備しておく必要がある作戦との関係についての理解を求める努力を強めていく。米国は、受入国政府がこのプロセスに参加することを歓迎する。それは、米国のプレゼンスを支え将来にわたって米軍の最大限の即戦力を確保する不可欠の戦略的要素であるこのプロセスを促進するものである。

 1 同盟パートナーシップ の更新

 すでに述べたように、米国は、変化にそなえていくにあたり、この地域についての米国の将来の戦略方向を定めるために過去数年間に作ってきた枠組みを足場にしていく。なにより、この地域の政治的・軍事的課題に対処する重要な柱である、同盟国との戦略的パートナーシップをさらに強化していく。わが国のすべての同盟関係は、今後さらに広く深くなり、その安全保障協力の構想はいっそう包括的なものとなるであろう。
 この地域で最重要の二国間関係である米日のパートナーシップは特に、米国とこの地域の利害にとって決定的であり、過去と同様、将来もアジアにとって重要である。新たな世紀の新旧の課題に対処する際に、米国には、この歴史的関係に取って代わるものはない。
 次の世紀にも米日同盟は、わが国の地域安全保障政策の要であり、それが引き続き地域の脅威への対応と予防外交への関与を準備していくことになる。米日は、たがいの共通の価値観、相互利益、補完しあう能力を基礎にして、今後とも地球規模のパートナーシップを築いていく。一九九七年の防衛ガイドラインの全面的かつ効果的な実施は、このプロセスに大きく寄与するであろう。わが国は、日本が将来の安全保障問題の発生を予防していくために、多大な外交的・経済的手段を使っていくことも期待している。日本が、南アジアの核実験を強く非難し、また核実験による不安定化の動きの波及を少なくするために積極的に関与していることは、歓迎すべきことであり、地球規模の拡散防止を支える重要な行動である。
 九八年七月に始まった定例拡散防止協議および九八年八月の北朝鮮のミサイル発射への両国の強力な共同の回答は、長期的計画立案と情報共有が両国の利益となっていることを浮き彫りにした。われわれは、この協議と協力の拡大を望んでいる。米国はまた、日本がこの地域の経済・金融危機の解決のカギになるとみている。
 さらに米国がめざすことは、平和を保障する、米国の日本における海外プレゼンスを継続し、その部隊が中央政府から支援され、地元社会から善き隣人として歓迎され地元社会との交流が行われるということである。受入国支援の水準の維持、SACO最終報告の実施の約束を共同で守っていくことは、この点で核心的要素となる。
 韓国との関係も、米国は長期的に考えている。朝鮮半島の情勢は、引き続きアジア−太平洋地域で近い将来のもっとも深刻な安全保障上の脅威である。米国はこの地域のすべての国と協力して安定した北東アジアの形成を支援していくが、その中で米韓同盟は、朝鮮半島における安定と抑止に寄与するものである。
 韓国の金大中大統領が朝鮮半島再統一の後でも二国間同盟と米軍駐留の価値があると公式声明で確認したことを米国は歓迎する。北朝鮮が脅威でなくなった後も両国の同盟と軍の駐留が朝鮮半島とこの地域全般の安定を支えるということに、米国は断固同意する。二国間同盟と米軍駐留は、まだ残る朝鮮の防衛の必要性にこたえ、また二つの朝鮮の統合を適宜支援していく。朝鮮半島の外でも、核兵器などの軍事力の密集状態、未解決の領土紛争や歴史的緊張、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散が不安定性の根源になっており、アジア−太平洋地域の不安定性と不確実性は残ると見られる。和解し、そして最終的に再統一した後でも、米国と韓国はこのような地域的な不安定化の根源を軽減するために深くコミットしていく。
 また、韓国の地球規模での役割の増大にともない、米韓は、紛争の平和的解決、軍備管理、拡散防止、公海とその上空および宇宙の通行権、民主的で自由な市場慣行のための世界大のコミットメントを共有していく。二国間安全保障同盟と米軍の海外プレゼンスは長期にわたって、これらの共通の目標を達成する重要な手段となる。
 また米国は、今後米豪同盟をさらに拡大・深化することをめざしている。米豪はすばらしく確立された実務関係とAUSTIN〔米豪州定期国防・外務閣僚会議〕を通じて安保問題の交流・協力関係を発展させ、追求しており、今後もオーストラリアは東南アジアにおけるわが国のプレゼンスにとって重要である。オーストラリアは単独訓練・合同訓練にとってますます重要な場所になっている。特に北部地域は重要である。両国は、アラビア湾やカンボジアなどで相互の安全保障の利益となる国際平和維持活動や他の国連の作戦を緊密に協力して進めていく。
 タイやフィリピンとの長期的な同盟を強化する道もさぐっていく。これらの価値あるパートナーシップは、地域の安定継続を確保し、また麻薬密輸、テロリズム、環境破壊、兵器の拡散を含むさまざまな安全保障上の問題に取り組むことを可能にする。タイ軍との間で、米国のアクセス、共同行動、相互運用性を拡大することは、これらの相互利益のために決定的である。また互いの安全保障の利益になるように今後ともフィリピンと緊密に協力してパートナーシップを発展させていく。

 地域協力の強化

 全般的にいって、米国は将来の課題に対処するための同盟国との地域協力をますます重視しなければならない。戦略的協議の強化は、地域協力の重要な要素である。日本(安全保障協議委員会すなわち「2+2」)やオーストラリア(AUSMIN)との防衛・外交閣僚定期会談、韓国との年次安全保障協議会議などの公式会談も、そして同盟国間で頻繁に行われるもっと非公式の交流も、公式の安全保障協議の流れの中にある。このような討議は、あらゆるレベルで続けられ深められていく。
 たとえば、地域協力は、ますます共同施設の利用や軍事補給品・役務・兵站支援の相互供給などに広げられていくであろう。米国が基地を維持しているか、定期的に訓練・演習をしている国では、購入・交換補給支援協定(ACSA)の締結は、単にそうした支援を規定するだけでなく、米国のプレゼンス全般にわたって地域的な支持があることの実質的かつ象徴的な証拠となる。一九九八年四月の日本との改訂ACSAの調印は、この方向への第一歩である。米国は、この地域の他の場所でも、さらにACSAの締結を求めていく。

 2 中国への関与−−信頼 醸成から協力へ

 米政府・軍機関のあらゆるレベルで中国との接触・交流・訪問を拡大し、両国間の信頼醸成の努力を続けていくつもりである。毎年の防衛協議会談のプロセスは、高官レベルでの戦略対話のための重要な場として発展していくであろう。クリントン大統領の九八年六月の訪中の際、米中は、それぞれの軍機関が相手国の統合訓練演習の視察に合意し、軍の環境保護および安全保障についての協力を約束した。米国は、中国が軍事的透明性をさらに前進させること、特に、戦略ドクトリン、予算、戦力構造の透明性を求めていく。
 今後は、米国は信頼譲成措置の拡大だけでなく、相互に利益となる問題での中国との積極的な二国間協力も求めていく。たとえば人道支援、災害救援、平和維持活動、公海の自由航行権、国際的な海上輸送ラインの安全、朝鮮半島を含む紛争の平和的解決などの領域での共同の活動である。米国は、この地域の金融危機に対する建設的なアプローチについて引き続き中国と協議していく。両国はまた、南アジアの安定の回復と国際的な拡散防止活動の強化が共通の利益であることを再確認した。
 米国と中国は長い交流の歴史をもっているが、過去二世紀の接触の大部分に、一貫性、バランス、相互利益と戦略的見通しについての冷静な対話が欠けていた。米国と中国がこの地域だけでなく国際的な平和・安定・繁栄の維持に大きな相互利益を有していることは明らかである。したがって、これらの利益を確保するための両国の積極的協力は、新世紀に入っていくにあたって望ましいどころか、絶対的に必要である。

 3 アジア|太平洋安全 保障問題へのロシアの 合流の継続

 アジア−太平洋地域の問題へのロシアの参加は、今後、歴史的緊張が緩和し、二国間・多国間の交流が正式のものになるにつれて増すであろう。米国は、このロシアの参加をこの地域の全般的動向にとって建設的なものとして歓迎し、さらに促していく。経済面では、地域の安保問題にロシアをいっそう組み入れることは、全般的に安定性を増し、おのおの経済的資材と天然資源の生産的使用を可能にし、成長を促進する。この地域での米ロの軍間交流も拡大しつづけるであろう。米国は、将来米ロの軍がこの地域の他の諸国とともに協力し、効果的な人道支援や災害救援などを行っていくと考えている。また、ロシア自身が安定し、それが参画していくことは、兵器拡散防止に大きく寄与していく。地域の安全保障問題へのロシアの建設的な参加は、アジアの戦略構成の重要な要素であり、無視しえないものである。

 4 アジア太平洋安全保障 のための戦略の革新−− 重なり合い連動した諸機 構のネットワーク

 すでに述べたように、米国は、二国間、少数国間、多国間の安全保障関係の累積効果は、アジア−太平洋地域において次世紀に共通の安全保障を推進する多様で柔軟な枠組みを築いていくと考えている。たとえばASEAN地域フォーラムが発展しつづけることは、南中国海などの地域的問題についての意見交換を行い、相互の理解と信頼を深め、予防外交と紛争解決への取り組みを大きく推進するものだと考えている。少数国間の接触の継続と拡大も、米国の戦略のひとつの優先事項であり、伝統的な対話メカニズムと並んで今後も行っていく。
 特に、大量破壊兵器の拡散や他の従来からの安全保障上の懸念事項、たとえば環境破壊・麻薬密売・テロリズムなどには、従来の二国間の措置ないし軍事的措置を越えた創造的な多国間アプローチや広範な地域的交流が必要である。地域としての仕事は、国境を越えて安全保障に影響を及ぼす国内問題を、すべての国が認識しそれに対処することを促していくこと、そして、このような非従来型の安全保障問題に対処するあらゆる国内的・国際的手段を動員し相互調整することである。

 5 地域の金融危機への対処

 多くのアジアの主要な経済地域が九七年半ばから直面しはじめた金融危機によって、この地域だけでなく、全世界に衝撃波が走った。米国もこの危機の経済的・政治的影響をまぬがれるものではないことを認識している。
 米国は、アジア金融危機は安全保障上の中心的懸念事項だと考えている。米国は、経済危機への対処にあたって、この地域がこうむっている経済後退の国内的・国際的影響を和らげるために主導的役割をはたしつづける。したがって、この困難な過渡期における米国のこの地域への関与とプレゼンスは、変化のただ中で継続性と安定性を保証し、地域の指導者たちとの接触を可能にし、建設的な動きを推進するためには今後も決定的なのである。

 6 透明性の推進

 安定のためには開かれた政府が重要なのであり、各国の関係正常化のための交流がますます増大し安全保障の努力が新たな安全保障環境を反映して行われはじめている中で、透明性が至上原則とならねばならない。米国は、開かれた透明なやり方で地域政策を行う約束を守りつづけ、地域安全保障の努力に参加するすべての国・機関に、同様の開かれた透明なやり方で活動し信頼を築き、地域の安定を強化するためのスタンダードの確立を促していく。

 結論

 「はじめに」で述べたように、本報告自体が透明性の重要な実践である。九八年版東アジア戦略報告は、冷戦の妖怪が後退し、二十一世紀を迎えつつある中での米国のアジア−太平洋地域についての見通し、諸関係、利害、戦略を論じてきた。この地域は今後多くの難問に直面していくであろう。そのうちには、予期しうるものも予期しえないものもあるであろう。第六章や本報告全体を通して論じてきたビジョンは、米国が、アジア−太平洋地域諸国とともに、変わりゆく世界の諸課題に取り組み、新世紀にむけてこの地域への総合的関与の約束を固く守っていくことを示している。
(おわり)