COMMUNE 2000/08/01(No297 p48)

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No297号 2000年8月号〈2000年8月1日発行)

定価 315円(本体価格300円+税)

〈特集〉 森暴言弾劾・沖縄サミット粉砕

1 戦時体制の一挙的確立狙う森の暴言許すな
  ・資料/森の略歴/森暴言録 2 戦争会議粉砕し名護への新基地建設阻止を
  ・ヘリ基地建設反対を貫く沖縄
  ・95年9 ・4 以来の闘いの地平 翻訳資料 米21世紀安全保障委員会第2段階レポート

2000年4月 米21世紀安全保障委員会 村上和幸

 にゅーず&レビュー
  戦争国家化/日米共同演習の最前線=小松基地 出島 覚

 5・28全国総決起集会

三里塚ドキュメント(5月)内外情勢(5月)日誌(4月)

羅針盤 サミットとの対決

 森首相の「天皇を中心とする神の国」発言と、「国体」発言は、どんなに荒唐無稽でボロボロであろうとも、今や天皇制イデオロギーを振りかざしてのりきりを図る以外にないほど、日本帝国主義の政治支配の危機が深刻であることを自己暴露している。「国体」発言は、自公保政権が倒れたら、安保も天皇制も資本主義も危ないという文脈の中で飛び出した。まさに支配階級が革命の危機を問題にする事態だということである。ところが、日本共産党スターリン主義は、この恫喝に対して、「安保も天皇制も資本主義も守ります」と誓い、日帝の体制を守るために連合政権に入りたいという意思表示をしたのだ。総選挙後の政治的激動に向かって、危機にあえぐ日帝を打倒する人民の革命的行動を一層力強く巻き起こしていく時である。

 総選挙決戦と並行して、国鉄決戦が最大の激突局面に突入した。国労本部は、「JRに法的責任はない」という、国家的不当労働行為に対する全面無条件降伏の裏切りを7・1臨時大会で押し通そうとしている。これは国鉄分割・民営化以来の13年間の闘争団を始めとする国労3万の血と汗と涙の苦闘をすべて切り捨て、最後的に国労を日帝ブルジョアジーに売り渡す暴挙である。どんなことがあっても粉砕し覆さなければならない。それはひとり国労のみならず、戦後50数年の日本の労働者階級の闘いすべてがかかった闘いである。国鉄労働者の階級的団結の力が日帝・JR資本を追い詰め、勝利の道を切り開いていることを信頼できず、降伏を図る宮坂・チャレンジ一派と革同上村一派を今こそ打倒して国労の戦闘的再生をかちとろう。

7月沖縄サミットが目前に迫った。国際帝国主義の戦争会議であり、沖縄闘争圧殺・名護新基地建設のための攻撃である沖縄サミットを、闘うアジア人民、闘う沖縄人民と連帯して、粉砕しよう。嘉手納基地包囲の闘いの先頭に立ち、サミット粉砕の大デモをたたきつけよう。日共・不破はサミット翼賛勢力として、日帝のお先棒を担いでいる。また、カクマルは『解放』6月12日付号で、「中核派の沖縄サミット決戦を粉砕せよ」とわめいている。「ジュビリー2000は、日米権力者のどす黒い陰謀」などと言っているが、カクマルの言いたいことは、要するに沖縄に世界中の人民が押し掛けて帝国主義に抗議の闘いを爆発させることは許されないということだ。ついにカクマルは、サミット粉砕闘争の敵としての本性をさらけだした。

 総選挙決戦、国鉄決戦、沖縄サミット決戦という2000年の3大決戦を勝ち抜き、これに続いて8・6広島反戦大闘争、9・3首都治安出動演習粉砕闘争と三里塚暫定滑走路建設阻止闘争などの闘いを打ち抜いて、一切の力を11月労働者集会の成功に結びつける闘いに勝利しよう。帝国主義の危機、戦争国家化に向かっての有事立法・改憲の攻撃、労働者へのリストラ・大失業攻撃に対して、今こそ労働者階級の本格的な階級的反撃が広範に組織されなければならない。資本主義にノーと言える労働運動を爆発的につくり出していかなければならない。帝国主義は労働者人民に犠牲を押しつけることによってしか延命できない。その上、市場と勢力圏をめぐって帝国主義間の争闘と対立を激化させ、帝国主義戦争を不可避とする体制である。この帝国主義と徹底的に対決する階級的労働運動こそが求められているのだ。(た)                                      

 

 

翻訳資料

 米21世紀安全保障委員会第2段階レポート

 国家戦略を求めて−−安全保障の維持と自由の促進の調和−−

2000年4月 米21世紀安全保障委員会

  村上和幸訳 

【解説】

 沖縄サミットは、米軍基地反対闘争をおしつぶし、侵略戦争をするための帝国主義同士の談合と争闘の場である。
 ちょうど沖縄サミットを前にした時期に、米帝がこの文書を発表した政治的意味は重大である。この文書で米帝は、90年代の日米安保の強化・朝鮮侵略戦争体制づくりをもはるかに超える大軍拡と新たな侵略戦争拡大を宣言しているからである。
 この文書は、単なるひとつの委員会の答申ではなく、ほとんど米帝の公式の戦略文書というべきものである。これは米国防省の公式の諮問機関「21世紀安全保障委員会」が作成したものであり、その委員会は、民主・共和両党幹部、国防・国務両省など政府諸機関が全面的に参画した大がかりな戦略検討機関である。米帝支配階級の軍事戦略が、今後25年間、政権交代を経つつも一貫して実行されるべきものとして検討されている。
 この文書は長期的な戦略として提出されているのであるが、内容を読んでみると、現時点でのきわめて切迫した情勢への対応を重視していることがひとつの決定的な特徴になっている。
 本誌1月、3月号に掲載した第1段階レポートの最大の特徴は、従来の外交辞令的なオブラートに包まれた表現を越え、帝国主義間争闘戦のむき出しの言葉で日独帝(特に日帝)の対米対抗的な台頭への危機感を示したことであった。また、東アジアの日・朝・中の「地政学的三角形」なるものを重視し、このなかで米帝が日帝との帝国主義間争闘戦をやりぬくことを表明したことであった。
 そして今度の第2段階レポートの特徴は、90年代の「BUR(ボトムアップレビュー)」「QDR」という2つの文書で示された戦略の転換、軍事予算の大幅拡大を提起したことである。
 QDRでは、2つの大規模戦域戦争(中東と朝鮮半島)を同時に戦いうる戦力の保持が基準とされていた。それは、米帝の国力・予算の制約を前提とし、高度軍事技術による新型軍事力の長期的な建設(帝国主義間戦争向け)と現在的に行使する従来型軍事力の維持とのバランスをとった選択として示されていた。
 だが今回は、予算の制約という前提条件そのものの突破を提起している。戦力の構成としては、情報技術をはじめとする高度軍事技術を徹底的に重視するとともに、占領地の治安維持・支配能力、世界の人民の決起を弾圧する戦力の拡充を求めている。そして、「経済のグローバル化、情報技術の前進」とそれがもたらす国際的・国内的な大激動に対応して支配体制を守るために、国家あげての大改造を提起し、総力戦を戦うために、軍とそれ以外の諸機関・社会全体との協力を強調している。
 また、統一後=侵略戦争後の朝鮮に米軍があくまで駐留を続けること、統一朝鮮の核保有・日帝の核保有の阻止の強烈な意志が示されている。
 朝鮮南北首脳会談において在韓米軍問題が協議されたことに米帝は激烈に反応し、急きょ日程を変更して国務長官を派遣することにした。韓国・金大中政権と北朝鮮スターリン主義の反人民的な思惑を越えて、全朝鮮人民の根底的な決起を解き放ってしまうことに、そして沖縄の米軍基地に対する闘いを大爆発させてしまうことに恐怖しているのである。また、少しでも事態を放置すれば石原・森的な日帝の反動的な突出が進展し、対米対抗的にアジア勢力圏化に突進していくとみているのである。
 沖縄サミットを前にした情勢は、世界史的にもきわめて重大になっている。米帝が、本文書をはじめとする重大な戦略文書を連続的に発表したことはそのあらわれである。米帝バブル崩壊の兆候は、全支配階級を震え上がらせている。朝鮮の南北首脳会談、日帝の政治危機は、かつてない大激動の到来を告げ知らせている。
 全世界の労働者人民と連帯して沖縄サミット粉砕決戦に決起しよう。労働者人民の力で新たな時代を切り開こう。【強調は原文。〔 〕内は訳者による補足。「前書き」は省略】
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 戦略を考える

 本委員会の第1段階レポートでは、今後の動向として、2つの相反するものを指摘した。地球規模の共同体を統合していく経済的・技術的・知的な力が、強力な社会的・政治的細分化の力と同時に存在するのである。これらの力の混合物が何を作り出していくのかは誰にも分からないが、これからの新たな世界は、重大な諸点で劇的に変化していくであろう。諸国の政府は、民族分離主義と暴力の力による下からの圧力と経済的・技術的・文化的な力による上からの圧力にさらされている。これらの力は、どの国の政府も完全にはコントロールできない。われわれが見ているものは、農耕時代から工業時代への移行に匹敵する人類社会の大変動である。しかも、これは、農耕から工業への移行よりはるかに圧縮された期間で行われようとしている。
 このような状況のなかでは、戦略的な英知がとりわけ重要になる。米国のような規模と性格を有している国では特にそうである。本委員会の見解では、米国の戦略の核心は、次の2つの目標のバランスである。第1は、《世界のいっそうの統合の収穫を刈り取り、米国および他の諸国のために自由・安全保障・繁栄を拡大する》ことである。しかし第2に、米国の戦略はまた、《これらの利益の持続のため、地球規模の不安定性の力をやわらげる》ように努める必要がある。自由は、アメリカの不可欠な価値観であるが、安全保障とそれがもたらすある程度の安定がなければ、自由は消え失せかねない。アメリカの戦略は、安全保障と自由の双方を追求しなければならない。その一方を他方と調和させつつ追求しなければならない。それが、われわれが本報告を《安全保障の維持と自由の推進の調和》と題した理由である
 これから生まれてくる世界についてのわれわれの見通し、そして米国人の主要な利害と価値観からして、次のようなものが国家戦略の定式化の基準となるといえる。
 戦略と政策は、国益に立脚したものでなければならない。国益には、政治、経済、安全保障、人道など多くの要素がある。しかし、国益は政策の一貫性を確保するためのもっとも持続的な基盤となる。また、米国の原則が、はっきりわかる国益と結びついているときにこそ、米国の政策への世論の支持がもっとも得られやすい。しかも、正しい意味での国益にもとづいた戦略からは、他の諸国の利益の尊重が生じるのである。
 米国の強さの維持は長期的な取り組みの問題であり、意識的で懸命な努力がなければ確保されない。アメリカが自分の強さを保持するために賢明な投資を行わないならば、25年もたたないうちに力が落ち、現在以上にアメリカの利益が挑戦を受け、影響力が浸食されるであろう。多くの国々が、すでにアメリカの力に拮抗することを追求しており、社会的・軍事的・経済的・技術的なアメリカの強さは、意識的な国家的取り組みなしには維持できない。アメリカの繁栄の確保は特に決定的である。それなしには、国際的な指導的役割を演じるあらゆる努力も阻害されてしまう。
 新たな時代の中で米国は、前例のない好機と危険の双方に直面している。アメリカの戦略は、肯定的な挑戦にも否定的な挑戦にも対処するものでなければならない。主要諸国間の建設的関係をめざして働き、新たなグローバル経済の活力を維持しつつその利益を普及させ、国境を越えた新たな諸問題への取り組みの責任を他の諸国と共有すること、−−これは、米国の政治能力と創造性の試金石となる外交課題である。1940年代末と同様に、米国は新たな国際システムを建設する必要がある。他の諸国がその中で自由に国益を追求できる国際システム、米国の利益と一致するように行動することを他の諸国自身が有利だと感じるような国際システムを、当時同様に建設すべきである。
 米国はあらゆる重荷を担えはしないのだから、能力がありまた米国と考えが共通な諸国と協力する新たな道をみいだす必要がある。アメリカが自分では行動しない分野では、国際協力の効果的な゛システム”の形成を助ける責任がある。したがって米国は、国際機関およびパートナーに対するアンビバレントな態度を克服し、疑うことを減らし、鼓舞することを多くしなければならない。
 米国は、優先順位を設定し、それを首尾一貫して適用しなければならない。世論の支持を維持するためにも、政策の節度を保つためにも、米国は際限ない介入で疲弊してはならない。とりわけ海外への軍事介入については、利益と負担の綿密な計算によって決定すべきである。いわゆる「CNN効果」に抵抗することは、今後の米国の政策策定においてもっとも重要なことになるであろう。
 米国は、いくつかの原則、なかんずく法の支配の下の自由の原則のために戦うことをけっして忘れてはならない。自由は、今日では人類の有力な潮流になっており、たしかにそのための手段はその限界の現実主義的な理解にもとづいて調整されるべきだが、自由の力を無視することは「現実主義」ではない。そしてまた、米国が指導的役割を保持すべきであるならば、自分自身の行動や他の諸国との関係において自分の諸原則に忠実でなければならないのである。

 新世紀の国益

 以上の基準のなかで最初にあげたものはもっとも決定的なものである。米国の国家安全保障戦略は国益に立脚したものでなければならず、その国益は米国社会の基礎的な福利のために守り、拡大すべきものである。これらの国益を、われわれは次の3つのレベルで定義する。延命上の利益とは、それなしでは現在の姿では米国が存続できないもののことである。決定的利益とは、因果関係からみて、延命上の利益から1歩だけ遠いもののことである。 重要な利益とは、米国がその中で行動しなければならない世界環境に、大きな影響を与えるもののことである。むろん他の国益も存在する。しかし、以上の3つのカテゴリーに比べれば、それほど重要ではない。
 米国の延命上の利益には、直接の攻撃、特に国家あるいはテロリストによる大量破壊兵器を使った攻撃からの米国の安全が含まれる。重要性の順位が同じものとしては、米国憲法秩序の保持および世界の中での米国の政治的・経済的・軍事的な位置の基礎になっている核心的な力−−教育、産業、科学・技術−−の保持である。
 決定的な米国の国益には、エネルギー・経済・通信・交通・公衆衛生(食料・水の供給を含む)といった枢要な国際的システムの安全保障が含まれる。米国人の生活と福利はこれらのシステムに依存するようになっているのである。敵対的な強国を米国の国境地帯に台頭させないことは決定的な国益である。また、敵対的な覇権国が決定的な土地、空域、シーライン−−そして今日の新たな世界では宇宙やサイバースペース−−を支配しないようにすることは決定的な国益である。地球上のいかなる主要な地域にも敵対的な覇権国や敵対的な〔米国と〕同等の力のライバルないしそれに匹敵する敵対的な諸国連合が台頭しないようにすることは、決定的国益である。同盟国および友好国の安全保障は、米国の決定的な国益である。大量破壊兵器が米国に対して敵対的ないし潜在的に敵対的な者の手に拡散することを防止ないし抑制することもそうである。
 米国の重要な国益には、海外における法の支配の下での立憲民主主義の深化と制度化、市場を基礎にした経済、基本的人権の世界的な承認が含まれる。自然環境問題を始めとする共通の地球規模の問題に対処する、主要諸国間で合意されたルールにもとづいた国際秩序の責任ある拡大に、米国は重要な利益を有している。海外で経済成長があり、もっとも貧しい人々の生活水準が引き上げられ、経済的・政治的紛争がやわらげられることは米国の重要な国益である。国際的な経済的・文化的な交流の開放性を阻害することなく、国際テロリズムおよび国際犯罪(麻薬の非合法取引など)を最小限に減らすことは米国の重要な国益である。大量殺人もはなはだしい人権侵害も国際政治の中で認められないことは、米国の重要な利益である。米国の国境を越える移民流入が管理を逃れることがないようにすることは、米国の重要な国益である。そして、海外における米国人の自由で安全な移動は米国の重要な国益である。

 枢要な目標

 米国は、法の下でのみずからの自由、安全、繁栄を追求する。しかし米国は、これらの目標が、他国もそれらを達成する世界の中でこそもっともよく確保されることを認識している。したがって米国の戦略は、世界的な全体主義的脅威から幸いにも自由になった世界の平和・繁栄・民主主義および協力的秩序を、新たな方法で−−そして他国と協力して−−うちかため、前進させることでなければならない。しかし同時に−−これも他国と協力して−−まだ激しい政治的紛争に悩まされている地域の安定化のために奮闘しなければならない。これらの新たな時代の戦略的ゴールに達するための米国の優先的な目標と枢要な政治的目的は、次のようなものである。
 第1は、米国の防衛と新たな時代の危険からの安全性の確保
 大量破壊兵器の拡散とテロリズムから生じる新たな危険という観点からみると、自国領土とその決定的な資産へのあらゆる攻撃に対する強固な抑止力をいかに維持するかということに、あらためて焦点をあてなければならない。大量破壊兵器の拡散防止は、次の四半世紀の米安保政策の最高の優先課題である。すべての諸国に対する非通常攻撃を、外交や他の手段によって予防することにも、高い優先順位を与えねばならない。しかし、予防と抑止が働かなかった場合は、米国は死の危険に対しても脅迫に対しても積極的な防衛の手段が必要である。この目的のために、米軍、司法警察、諜報、経済、金融、外交の諸手段を効果的に統合しなければならない。
 米国は大量破壊兵器拡散の増大と戦うための国際協力の強化を追求しなければならない。それには、国家やその他の者による生物的病原体の創造、移転、貿易、武器化に対する有効で強制力ある国際的禁止措置も含まれる。また、すでに存在する核・生物・化学兵器への共同の取り組みは、それが実現し、精力的に実施されるならば、兵器と兵器材料の拡散の危険を減らすための費用効果比の良い、政治的に魅力的な道である。
 また、テロリズムおよびテロリズムへの国家の支援に反対する国際基準の合意を深めるために奮闘しなければならない。他国の司法警察機関や諜報機関、軍との相互協力を強化することによって、テロリストの作戦を阻止し、テロリストの資金・兵站拠点を攻撃して彼らの聖域をなくすべきである。
 米国は、包括的な戦域ミサイル防衛の能力を構築すべきである。また、技術的に実現可能、財政的に慎重、かつ政治的に維持しうるかぎりにおいて、限定的弾道ミサイル攻撃に対する国家防衛計画も構築すべきである。巡航ミサイルや他の高度な大気圏内技術が普及してきており、米国は、これらに対する防衛を工夫する必要がある。また、米国を大量破壊兵器によって攻撃する他の目立たない攻撃方法についても、防衛の方法を開発しなければならない。
 また、大量破壊兵器を所有している者やテロリストからの脅威や脅迫と戦う能力がある専門部隊を持つ必要もある。そしてまた、大量破壊兵器がもたらす危険の巨大さのため、米国は先制の手段とその状況について綿密に考察しなければならない。
 米国および国際社会の宇宙とサイバースペースへのアクセスを守ることは、米国の安全保障計画の高い優先順位に置くべきである。宇宙とサイバースペースは、発展する世界の情報・経済システムの大動脈であり、それらを通じてアイデアと情報を自由に動かす能力は拡大する世界的な自由と繁栄の前提条件である。宇宙とサイバースペースへのアクセスの安全は、米国軍事力が効果的に機能するための必須条件でもある。米国は、宇宙とサイバースペースを「突破」してしまう能力の可能性に技術的手段と外交的手段の双方によって備えなければならない。
 政治的な壁はあるが、危険な軍民両用技術の拡散に対して、多国間で取り組むための努力を倍加しなければならない。米国自身のハイテク輸出の行き先と最終的な使用を追跡する能力を、米国は改善しなければならない。また、同盟国の同様の努力を支援するようにすべきである。
 米本土が攻撃された場合の多大な米国人の人命損失の可能性に対処するために、公衆衛生能力を増大させなければならない。そして、米国憲法にもとづく政府の継続性確保のための行動計画を強化すべきである。
 第2は、米国の社会的一体性、経済的競争力、技術的創造性、軍事的な強さ
 米国の核心的な諸機関の活力を確保するためには、初等教育・中等教育、特に数学と科学の改善を国家政策の優先課題にしなければならない。また、民間の研究開発が政府をしのいでいる時代にあっては、科学技術の革新の公的利益を拡大するための官民協力のさらに進んだ形態、さらに効果的な形を作り出す必要がある。
 米国は、外国の化石燃料エネルギーへの依存を少なくするように奮闘しなければならない。この依存のため、経済的圧力や政治的脅迫に対する米国と同盟国の立場が弱くなっている。したがって、代替エネルギー源の持続的開発、エネルギーの伝送・蓄積効率の向上は国家安全保障の上でも経済や環境の上でも必要である。
 アメリカの国民と軍に勤務するメンバーとの絆を強化する必要がある。また、あらゆるレベルでの人員の採用・定着・効率性を改善するために、政府(文民と軍人)の人事制度を強化することも必要である。国家安全保障政策に関して、行政府と立法府は効果的な協力を推進する必要がある。 
 第3に、現在立ち上げられつつある国際体制の主流への、中国、ロシア、インドなどの枢要な大国の統合の支援
 米国は中国に対して建設的に肯定的な姿勢で、政治的・経済的に関与していく必要がある。しかし、中国が強力になるにつれて米中間の競争になっていく可能性を認識すべきである。世界的な経済的、法的、文化的な諸機関や標準に中国がますます参加してきていることは肯定的な要素であり、米国は、この統合のプロセスを促し、支援していくべきである。同時に、米国は抑止力およびアジア−太平洋地域における同盟システムを維持すべきである。米国は、3つの米中コミュニケおよび台湾関係法の規定にしたがい、台湾問題の平和的解決の約束を守っていかなければならない。
 ロシアの経済改革と民主的政治の発展については、それらの達成がまずもってロシア人自身の仕事であることを認識しつつ、現実的見地にたって支援すべきである。世界的経済諸機関へのロシアの統合の支援も、中国の場合におとらず米国の利益である。
 むろんロシアとの関係は、その大国としての重要性にかなったものでなければならない。ロシア政府を弱体化したり侮辱する政策を追求することは米国の利益にならない。しかし、米国自身の利益がロシアの政策によって反対方向に影響される場合には、米国は自分の利益を主張すべきである。たとえば、大量破壊兵器の拡散を促進ないし容認するようなロシアの政策などに対してである。また、米国とその同盟国は、旧ソ連邦から新たに独立した諸国の政治的独立と領土保全を支援すべきである。
 さらに、軍備管理もひきつづき米国の国家安全保障政策の重要な側面である。ただ、米国はSTARTU条約の次の戦略核兵器管理の戦略策定のためには、新たな計算が必要である。その計算には世界の核保有国数の増加の諸結果についての分析も含まれる。新たな中国とロシアの核兵器能力も考慮すべきである。そして化学・生物兵器の脅威に対して核兵器で対応する米国の潜在的必要性についても、また非核国家を核保有国の脅迫や攻撃から守るという米国の約束についても考慮すべきである。
 インドは、世界最大の民主主義国であり、まもなく世界最大の人口国になるであろう。したがって、インドは大国として扱われているし、またそうであるべきである。パキスタンもそれ自身で、軸となる国でありつづけているし、また良好な米パ関係は米国の国益である。米国は、インドとパキスタンが紛争を暴力抜きに解決することを促すべきであり、その目的のために尽力すべきである。
 米国の政策によってインド・パキスタン両政府が核能力を放棄するように説得できる可能性は少ない。しかし米国は他の大国とともに、将来の核実験と保安取り決めなしの核分裂物質増産をやめさせるよう、さらに積極的な役割を担っていく。また、両国の核能力の安全と安全保障を確保する措置を相互に採用していくことを促進していく。
 以上の3つの大国を新たな国際協力秩序の主流の中に入れていく努力に加えて、高度な通常兵器の世界中への拡散をおさえていくことにも米国の大きな利害がかかっている。したがって、このような拡散をおさえるために、まずはもっとも近い同盟国や友好国とともに、その次にロシア・中国・インドや他の重要な兵器生産国とともに、多国間の取り組みを追求していかなければならない。
 第4に、他の諸国とともに、新たなグローバル経済の活力を高めることおよび国際機関と国際法の有効性を改善すること
 社会的・政治的な混乱と金融危機に対するこのシステムの弱点を最小限におさえつつ、経済のグローバル化の利点を広げるためには、米国はG7と協調して、グローバル化にともなう混乱を制御するよう努力していかなければならない。その努力には、政治的正統性および経済の仕組みの構築も含まれる。
 貿易の自由化は、ひきつづきグローバル経済の前進のカギである。とりわけ、先進諸国中の、あいかわらず貿易が保護主義政策によって束縛されている諸国−−米国を含む−−やそのいくつかの産業部門の自由化がカギである。二国間および地域的なアプローチ(それに加えてWTOに代表されるグローバルなシステム)を推進すべきである。環境問題の懸念や労働者の権利には取り組まなければならないが、それが貿易自由化を阻害したり逆転させたりしないような仕方で取り組むべきである。
 同様に、経済制裁は不当に貿易を阻害してはならない。しかし、本委員会は広範な経済制裁、特に米国単独の経済制裁の有効性には疑問をもっているが、個別の目標に絞った金融制裁、特に多国的に行われるものは、効果をあげる可能性が高い。米国とそのもっとも近い同盟国が新たな金融の仕組みを構築する際、金融制裁の能力をそのシステムに組み込むことが必要であろう。
 米国はひきつづき他の諸国と協力し、ペルシャ湾および他の主要なエネルギー供給地からの供給と価格が、米国や同盟国・友好国に対する政治的武器として使われることのないようにすべきである。
 本委員会は、公衆外交が米国外交の重要な一部であると考えている。米国は、情報技術の世界的普及を助けて、グローバル化と民主主義の利益を現在それらから切り離されている所にもたらしていくべきである。米国は、新技術を創造的に使って、新たな情報時代の中での公衆外交を改善していくべきである。
 米国はひきつづき、国家的な腐敗と国境を越えた犯罪に対処する強力な国際的な努力を促進すべきであり、国際社会が人道的危機に対してもっと効果的に対応するように支援すべきである。そうするためには、他国政府ばかりでなく非政府諸組織(NGO)とも新たなやり方で協力する必要がある。特に米国の公式の代表が少ない場所では必要である。
 米国は、伝統的にそうしてきたように、国際法の拡大を支持すべきであり、また米国の利益になる場合は国際的取り決めに進んで同意すべきである。しかし米国は、自分で自分の利害を決める権利を常に留保しなければならない。たとえ、それが個々の条約上の義務から離脱する−−それに違反するのではないが−−ことを必要としても、そうである。米国の政策の一貫性と憲法の下での民主的な説明責任は保持すべきである。
 米国は、国連のシステムの改善と効率化に大きな利害を有しており、その目的のために建設的に関与すべきである。国連は、適切に支援されるならば、国際的な安定と人道的な目的のために有効な手段となりうる。そして米国は、必要なときは、課題ごとの国家間協力関係の形成を積極的にリードすべきである。
 第5に、米国の同盟関係と他の地域的なメカニズムを、米国のパートナーがより大きな自律性と責任を求める新たな時代に適応させること
 米国の地域政策の要石は、現存の同盟関係および友好関係の維持・強化である。同盟国および友好国との関係強化によって、米国は影響力を拡大し、また平和と安定の地域を拡大していく。
 欧州では、NATOの統一性と両立する仕方でEUが独立の防衛政策を進めていくことを支持するようにすべきである。米国の全軍事能力と欧州への関与を体現している前方駐留部隊は、ひきつづきこの地域的同盟の不可欠の要素である。また米国は、大西洋自由貿易地域(TAFTA)構想を推進し、自由貿易にもとづいた大西洋と欧州の経済諸機構への東欧・中欧の民主主義国の統合を支援していくべきである。
 北米自由貿易協定(NAFTA)を米大陸のすべての民主主義国に広げることが必要である。米大陸の中でのNAFTAのきずなを深め、米州機構(OAS)を強化すべきである。民主主義の「輸出」に利点がどれほどあるにしても、自分自身の努力で民主主義が得られた民主主義国に対する支援を米国の優先課題リストの上位に置くべきであることは疑いない。米大陸ほどこのような努力が重要な所はない。
 アジア−太平洋地域では、米日同盟がひきつづき米国の政策のかなめ石であるべきである。米国は、日本との間でいっそう同等なパートナーシップと自由な貿易取り決めを追求すべきである。古くからの対抗関係が存続し、和解と統合がEUのようには進んでいないこの地域で、米国の韓国・オーストラリア・ニュージーランド・タイ・シンガポール・フィリピンなどのとの同盟と安全保障のきずなは、ひきつづき決定的である。こうしたきずなは、米国の関与と力がもたらす保障にもとづいて確固として作られている地域的な安全保障の共同体となっている。また米国は、ASEAN・ASEAN地域フォーラム(ARF)・APECなどの地域的安全保障と繁栄のための多国間機構の成長を支持すべきである。
 朝鮮の再統一の可能性にむけた計画を米国は今策定すべきである。米国の部隊のうちいくつかは、この地域に安心感と安定を与える要素として、統一後の朝鮮に留まるべきである。その目的には、統一朝鮮が核兵器なしでいることの確保も含まれる。
 米国は、ペルシャ湾の安全確保にひきつづき決定的な利害をもっており、そのための負担を分担すべきである。その観点から、投入可能な大量破壊兵器をイラクやイランが配備しないよう防止することは、高い優先順位に置かなければならない。また友好諸国−−特にイスラエル・トルコ・ヨルダン−−が始めている協力を支援し、協力を広げてエジプト・サウジアラビアなどを含めていくことを追求すべきである。アラブ−イスラエル紛争の外交的解決の支援は、この展望を前進させるであろう。
 他のOECD諸国、アフリカ統一機構(OAU)および国際的開発諸機構と協力して、米国はサハラ以南のアフリカの経済の強化、制度的な一体性と民主主義的理念の強化を支援すべきである。経済分野では、西アフリカ沖合のエネルギー資源開発を援助しつつ民間投資を促進すること、債務救済と人道援助(エイズ流行と闘うための資金を含む)を供与することに重点を置くべきである。米国は、アフリカ諸国の軍の民主主義的価値観にもとづく職業倫理を後押しすべきである。そしてアフリカ諸国の政府がその軍をインフラストラクチャーづくりの建設的な仕事に投入することを支援すべきである。南アフリカやナイジェリアなどの生まれ始めた主要な民主主義国は、米国とその同盟国の枢要なパートナーとなるであろう。
 第6に、変革の時代に生まれてくる分裂的な力を国際社会が制御することへの支援
 グローバル化の分裂的な力は、多くの国の政府にただならぬ圧力をおよぼしている。多くの国では、これまで政府に独占されてきた、力の行使、立法、通貨発行が、今はさまざまに「民営化」されている。自由の思想の普及は、長期的には肯定的だが、それさえ不安定化を生むことが多い。世界の多くの場所での政治的・領土的な現状維持の崩壊は、次の四半世紀の国際問題の特徴の一つとなるであろう。
 弱体な国家、破産した国家、民族分離主義、暴力およびそれらが生み出す危機のこのような拡大に対処するため、米国はまず優先順位を設定しなければならない。このような問題すべてに米国が主要な責任をとる必要はない。現在では、他の強国が大きな富と人的資源を持っているのであるから、ますますそうである。だが、さまざまの理由から、国内の安定が米国の利害にとってきわめて重要である諸国がある(メキシコ、コロンビア、ロシア、サウジアラビアなど)。そこでの国内騒乱の可能性の予測はしないが、それぞれの場合に応じて米国の計画策定の優先課題とすべきである。
 優先順位は低いが、米国は、国際社会が破産した国家を管理する革新的なメカニズムを作り出すことを支援すべきである。それらには、平和維持活動の組織化を容易にする有効な手続や国連の「後見制度」を含めるべきである。
 米国はつねに、まず初めに予防外交を使わなければならない。他国と協調して政治的・経済的な手段を用いて、大規模な暴力への敷居を越える前に紛争の進路を転じるようにしなければならない。
 とはいえ、予防外交が常に効果をあげるとはかぎらない。米国は、他国とともに軍事的に行動する用意がなければならない。その場合の状況の基準は次のとおりである。
 ▽米国の同盟国ないし友好国が危険にさらされているとき
 ▽大量破壊兵器が民間人に重大な危害をおよぼす兆候があるとき
 ▽グローバル経済システムにとって決定的な資源へのアクセスが危険にさらされているとき
 ▽米国の利害に深刻な危害を加える意図を、ひとつの国の政権が示したとき
 ▽大量虐殺が行われているとき
 以上の条件のすべてか大部分が存在する場合、多国的な軍事行動を支持する論拠は強くなる。これらの基準のうち1つでもそうとう深刻なものがあれば、その場合も軍事行動の論拠は強くなる。

 国家安全保障への影響

 本レポートで概説した戦略は、米国の国家安全保障政策の政治的、経済的、軍事的な諸要素に重要な影響を生じる。政治的観点からすれば、米国の外交は、ますます統合性を増しているグローバルな交流によって伝統的な世界分析の区分が時代遅れになっていくことを認識すべきである。二国間の重要な関係は存続するであろうが、もっと国際的な多くの事柄がますます地域的になり、そしてさらに多くのことが全世界的になるであろう。非政府的な動きの広がりも、米国外交の伝統的な枠組みにきしみを生じさせる。
 本委員会の第1段階レポートで強調したように、政策策定の中で経済の領域もいっそう重要になっていく。「民主的平和地帯」と呼ばれる民主主義諸国の間では、経済問題が軍事問題に匹敵する重要性さえもっている。しかしそれだけでなく、経済問題は、他の新興諸国や開発途上国の基本的な政治的・社会的改革の成否の展望にとっても、決定的に重要である。米国の戦略は、経済の健全性や世界中での軍事的優越の基礎となっている技術の重要性も認識しなければならない。
 以上のことから、米国の政策決定過程の統合機能は、かつてない大課題となっている。従来からの国家安全保障諸機関(国務省、国防省、CIA、国家安全保障会議スタッフ)は、新たな仕方で協力しなければならなくなる。そして経済諸機関(財務省、商務省、米国通商代表部)は従来の国家安全保障諸機関とさらに緊密に協力することが必要になる。それに加えて、他の機関−−特に司法省と運輸省−−をもっと全面的に国家安全保障の仕事に統合すべきである。単なる現在の構造における省庁間の協力の改善では不十分である。
 米国政府は、州政府・地方行政との協力をもっと効果的にする必要がある。また、連邦も州も地方も、非政府組織との新たな協力関係を築いていく必要がある。その際、国家政策を決定するにあたっての最終的責任と説明責任を放棄しないことはいうまでもない。
 軍事的な意味合いについていえば、現在生まれつつある世界とその環境に適した戦略は、次の5つの軍事能力を必要としている。
▽米国と同盟国への攻撃を抑止し、またそれから守るための核能力
▽米本土安全保障の能力
▽大規模戦争に勝利するために必要な通常能力
▽急速に投入しうる遠征/介入能力
▽人道援助および保安隊の能力
 米国の国家安全保障戦略にとって基本的なことは、米国内に駐留する部隊および前方プレゼンスの役割をもって海外ないし海上に駐留する部隊を世界的に投入する必要性である。他の諸国への新たな防衛技術の拡散のために、21世紀には、米軍の効果的な投入はいっそう困難になっていくであろう。したがって米軍は、敵が大量破壊兵器を使用する能力を有している場合などのさまざまな環境で作戦を行えるように、柔軟性をいっそう拡大しなければならない。今後の四半世紀に予想される多種多様な対称的ないし非対称的 な脅威に効果的に対処するためには、米軍には、ステルス性、スピード、射程、正確性、致死性、機敏性、継戦能力、信頼性が必要である。
  〔対称的=米軍同様の手段。他国の政府軍などの戦争方法/非対称的=異質な手段。ゲリラ等々の方法〕
 本委員会は、「2つの大規模戦域戦争」という物差しで米軍の規模をきめることは、現在発生しており今後さらに増加すると思われる多様で複雑な有事に必要な能力を作り出すものではないと信じる。これらの有事は、派遣軍の介入あるいは安定化作戦を必要とすることが多く、大規模戦域戦争むけに形成された部隊とは違った部隊が求められる。本委員会は、将来こうした有事がそうとう頻繁に、また複数の有事が同時に発生し、米国は部隊の構造の一部をこれらの必要性に適合させなければならなくなると信じる。そのため、全部隊が、人道援助から災害救助、平和維持から遠征戦闘作戦、大規模な高強度通常戦争にいたるまでの有事に効果的に対処する能力が必要であろう。これらのことから、われわれは、これらの必要性に対処する部隊構造は、想定シナリオではなく現実世界についての諜報評価にもとづいて練り上げるべきであると勧告するものである。
 以上のことから求められる能力は、結局、次のような部隊となる。すなわち、急速に展開することができ、直ちに使用でき、遠征軍の役割や安定化作戦、大規模戦域戦争において決定的に敵を圧倒する部隊である。戦争を抑止し、危機が大規模紛争に進むことを防止し、必要になったら迅速かつ決定的に戦争に勝利する部隊である。
 また米国は、文民的な(つまり軍以外の)米本土安全保障を強化すべきである。これらには十分資金を与えるべきであり、また適切な権限・責任・説明責任の原則にのっとって組織されるべきである。州兵軍−−国民軍の後身で、共和国の歴史的な防衛者として憲法修正第2条で認知されている−−は、他の任務とともに、21世紀の米本土を防衛する重要な役割をはたすために訓練され、装備されなければならない。
 また米国は、政治と安全保障の現実の変化によって必要となっている事柄のレベルに適合した、ここに述べた5種類の能力を必ず発展させ、それに資金を供給しなければならない。この国の軍に現在課せられている要求、あるいは次の四半世紀に予期される要求を前提にすると、これらの要求に対応しうる近代的部隊が現在のレベルの財政支出によっては維持できないことは明白である。

 第3段階レポートへ −−平和のための建設

 本レポートに述べられた戦略は、米国が゛自由の拡大と基礎的な安定との間のバランスがとれた世界の構築をリードする”ことを求めている。そのためには、米国は、それを他者と協調してやっていかなければならないし、可能なかぎり他者の利害と両立させていかなければならない。
 世界強国となった米国は今、米国の利害を守るためにも、さらに広い世界的な平和と安全保障の利害をまもるためにも、放棄することのない責任を有している。米国は、完全に世界的なリーダーシップの責任をもった最初の国である。だが、リードするには、有効な方法もそうでない方法もある。リーダーシップは支配と同じではない。他のあらゆる人の仕事がアメリカの仕事でもあるというわけでは必ずしもない。誠実さを欠いた富者がむなしいのと同様、賢明さを欠いた力も価値がない。シェークスピアもいう。
 すばらしい、
 巨人のように強いのは。だが、
 強さを巨人のように使ったら、暴君だ。
   (『尺には尺を』第2幕第2場)
 本レポートで示された米国の国家安全保障は、過去半世紀間の戦略的習慣とは異なっている。国家安全保障における経済的要素および他の非軍事的要素に新たな重点を置いている。また、脅威と同じくらい好機にも焦点を当てた。そして、米国の国際的な力の国内的な基盤について注意を喚起した。米国の戦略と目的を明確化しようと努め、また慎重に限界をわきまえて、それらとの調和をはかったのである。米国政府が、この戦略を遂行できるように構成されているか、それともほとんど過去の実践からえた戦略概念を遂行できるようになっているかは、われわれにはわからない。世界は急速に変化しており、もし米国政府がそれとともに変化しないならば、次々に場当たりの反応をしなければならなくなるであろう。もし米国がダイナミックな変化に対応する能力を失うならば、深く後悔しなければならない時がくるであろう。
 したがって、第3段階レポートで本委員会は、現在の構造と手続が21世紀に通用するかどうか検討していく。そのためにわれわれは、次の基準を適用する。
 第1は、米国政府は、予期される国家安全保障の課題に熟達する必要があるということである。そのためには、情報収集から分析、政策見直しにいたる最善の諜報システムが必要になる。
 第2は、海外介入の長期的影響を計算する能力が必要だということである。選択的に介入するというだけでは十分ではない。賢明に選択しなければならない。そのためには、国力の手段をさしせまった問題にマッチさせる必要がある。
 第3は、伝統的な国家安全保障政策の諸要素にそのあらゆる非伝統的な諸要素を効果的に統合する必要があるということである。
 第4は、世界環境の変化に急速に適応する機敏さが必要だということである。
 第5は、新たな形の戦争の中で、軍・警察・司法の境界がますますあいまい化することに対処する組織的なメカニズムが必要だということである。
 第6は、自分の業績を批判的に評価し、その経験から教訓を引き出し、資源を適切に調整することが必要だということである。
 第7は、内政とその核心的な国家安全保障への影響および米国の国境外にむけられた国家安全保障政策との間での一貫性が必要だということである。
 本委員会の第3段階の作業は、急速に変化する政治的・技術的環境の中で効果的に機能する米国政府の力を強化するための勧告を行うことである。旅の場合と同様、乗り物が旅行に耐ええないものなら、行き先と経路を決めても何の役にも立たない。今、本委員会が意識を集中しているものは、まさにこの乗り物−−米国の国家安全保障機関の構造とプロセス−−である。

  (おわり)