COMMUNE 2002/10/01(No321 p48)

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10月号 (2002年10月1日発行)No321号

定価 315円(本体価格300円)


〈特集〉 日共の有事立法反対論のペテン

□日帝の北朝鮮・中国侵略戦争への屈服と翼賛
□安保・防衛問題における日共の歴史的裏切り

□資料/日共の有事立法反対4・16アピール/9・11に関する各国政府への書簡/9・11に関する志位委員長談話

●医療/人体を「資源」にする生命操作(下)

●翻訳資料/ 休載
● ニューズ&レビュー/ 休載 

     8・6-9広島-長崎反戦闘争

三里塚ドキュメント(7月) 内外情勢(7月) 日誌(6月)

コミューン表紙

羅針盤 仕切り直しの決戦

 有事立法3法案は通常国会で継続審議となり、秋の臨時国会に決戦はもちこされた。この法案が北朝鮮・中国侵略戦争法であることは、3法案をまともに見据えて検討すれば明明白白である。米帝の世界戦争計画のもとでイラク侵略戦争に連動して北朝鮮侵略戦争がたくらまれており、日帝はこれに共同的=競合的に参戦しようとしている。有事3法案は、憲法9条を真っ向からじゆうりんし、首相に全権限を集中し、国民の戦争協力を義務づけ、国家総動員体制をつくろうとするものだ。また個人情報保護法実は、有事立法第4法案というべきものである。住基ネット(国民総背番号制)稼働、人権擁護法案、心神喪失等医療観察法案なども有事立法攻撃の一環だ。9月から仕切り直しで再度の有事立法決戦の爆発をかちとろう。

 今夏の広島、長崎反戦反核闘争は、昨年9・11反米ゲリラ戦と10・7アフガニスタン空爆によって開始された米帝の世界戦争計画の下での最初の8・6、8・9だった。米帝ブッシュが公然と核の使用、先制攻撃を宣言し、七つの国に対する核攻撃を準備するという重大な情勢だ。しかも日帝が福田官房長官、安倍官房副長官の「非核三原則見直し」「核使用は合憲」の発言をもって核武装化の道に踏み出している。何よりも有事3法案を成立させて北朝鮮・中国侵略戦争に突入しようとしている情勢に対する人民の危機感と怒りを結集して8・6−8・9がかちとられた。ヒロシマ大行動は、広島、長崎の被爆が侵略戦争の結末であったことを見据え、加害責任をはっきりさせ、朝鮮、中国人民の闘いとの連帯を明確に掲げた集会だった。

 7月29日の普天間代替施設協議会は、名護新基地について辺野古沖のリーフ(さんご礁)上に埋め立てで2500b滑走路を造るという基本計画を決定した。これは97年12月の名護市民投票で明確に拒否された当時の滑走路1500b、撤去可能な工法という新基地計画をはるかに上回る巨大かつ恒久の軍事基地だ。復帰後沖縄の最悪の攻撃を、しかも地元沖縄が受け入れるという形で実現させることなど到底できない。米帝の世界戦争計画の一環として、ハイテク新鋭の侵略戦争基地の建設強化を推進しょうとしているのだ。今、沖縄では米軍の演習強化による事件・事故が多発している。朝鮮・中国・アジア、イスラム諸国人民の虐殺のためであり、地元に害をもたらすものでもある米軍基地の建設強化を絶対に阻まなければならない。

 国鉄決戦は、日本共産党の「路線転換」で重大な局面を迎えた。これは、@4党合意路線は誤り、A3与党声明を批判する、B闘争団統制処分は本末転倒、とするものである。これまで4党合意路線を進め、闘争団切り捨てと国労解体の道を突っ走ってきた日共・反動革同は、このままでは闘争破壊の首謀者として断罪され完全に支持を失うという事態に及んで、あたふたと「路線転換」したのである。それは自己保身的な延命策ではあるが、問題はその思惑を超えて、この「路線転換」が国労内で大きな衝撃を与えることである。闘争団除名・査問攻撃で国労の自己解体へ突進していた国労本部チャレンジ・反動革同中枢を揺るがすことは必至だ。今こそ、闘争団への除名処分絶村阻止、闘う国労の旗を守れ、チャレンジ・反動革同打倒のスローガンを掲げ、1047人闘争−国鉄労働運動の階級的団結を固めて闘おう。        (た)

 

 

翻訳資料

 ●医療

 人体を「資源」にする生命操作(下)

  U 戦争のための医療改変、社会保障破壊

Q 前回の討論で、人クローン規制法が優生政策・戦争を推進する危険な法律だということはわかりました。
 しかし、この法律などによって促進される研究開発は、画期的な治療法を生み出す可能性があるとも言われていますね。
A たしかにバラ色の夢がふりまかれていますね。
 しかし、これは優生政策の推進ですよ。今はまだナチと直接には同じ形になっていなくても軽視してはならないんです。行き着く先は同じです。ナチだって公然と「安楽死をやる」とは言っていなかったんです。
 前回、優生学発祥の地イギリスや、ナチに至るドイツの歴史などから明らかにしたように、優生政策は、階級支配の現実を隠蔽し、階級闘争を歪曲・解体し、戦争に動員します。゛バラ色の夢″でこれをすることは一歩たりとも許せません。
Q こうした人クローン規制法等々の対象になっている研究開発の領域は、どうして現在のように盛んに行われるようになったのですか。
A 直接には医療やバイオ技術をめぐる特許戦争が動力になっています。クローン規制法によって推進されるES細胞、人胚を使っての研究は、新薬開発やそれの基礎とされる特許取得に結びつくものです。
 さらに大きくは現在の帝国主義の危機の中での医療の改変の動きです。それが人胚研究による出生前診断の強化、優生政策と結びついているのです。
 現在、有事立法の動きが激化していますね。これが日帝・支配階級の動向の軸になっているわけです。
 法案では日本が「武力行使」することが公然と前面にだされています。
Q なぜ、日本が武力行使するのですか。
A すでに世界大恐慌の時代に入っています。帝国主義国同士が、たがいの延命をかけて、勢力圏を確保しようとし、米帝のアフガニスタン侵略戦争に続くイラク、北朝鮮・中国侵略戦争の動きは急です。世界戦争情勢が始まっているのです。日帝は、もはやみずから軍事力を行使できなければ、帝国主義として生きていけなくなるのです。
Q そういう動きが、医療に影響を与えているのですね。
A 前回述べた優生政策に加えて、3つの側面をひとつずつ考えていきましょう。@医療(広くいえばバイオテクノロジー)における特許戦争、A公的医療、社会保障の切り捨て、B戦時医療体制への再編です。

 特許戦争

Q 特許戦争というのは、特許を取った企業が特許権料で利益をあげる競争ということですか。
A これも2つ考える必要があります。(a)企業の利潤追求、(b)帝国主義間の争闘戦です。
 まず、(a)企業の利潤追求は、右のA公的医療、社会保障の切り捨てと一体の関係にあります。医療の公的性格を切り捨て、規制緩和し、医療を私企業の利潤追求の草刈り場にしていくということです。
 薬や医療機器の特許はもちろん、厖大な利益になります。病院経営の手法にさえ、今は「ビジネスモデル特許」が与えられます。こうした利潤追求の裏面で、もうからないものはバッサリ切り捨てるということです。
Q 利潤追求に特許の役割が大きいというわけですね。
A もともと医療の分野では特許を認められる範囲が非常に狭かったのです。特許制度は国ごとに違いがありますが、一般的にいって、従来は、特許は基本的に機械とか化学製品などやその製造方法について与えられるものでした。たとえば治療法を発明してもそれに特許にならない。人命を救う技術の使用を特許で制限するのは人道的ではない等の理由からです。また、生物に特許は認められませんでした。生物そのものは自然界にあって、作るものではありませんから。たとえば、抗生物質の製造のために、ある微生物を利用する場合には特許になったけれども、それは薬品の製法の特許であって、微生物自体が特許になったわけではありません。
 こうした特許制度の仕組みが、80年の米国最高裁判決以来、急速に変えられました。
 表向き、生物そのものではなく、利用法に特許を与えているようでありながら、実質的には、生物そのものの独占権=特許権を与えるようになったのです。治療法についても、製品の特許や検査方法の特許などの拡張解釈によって事実上の治療法特許にする傾向が強まっています。
 特許制度の改変は、米帝による帝国主義間争闘戦です。つまり(b)の側面です。個別企業の利潤追求だけでなく、国家的争闘戦の側面が大きいのです。
 特許制度は、従来から各国の制度がきわめて多様だったのですが、それを米帝に都合のいい形で使っていったのです。米帝は、電子、コンピュータソフトなど全分野に渡る特許権・著作権(知的所有権)制度の改変=争闘戦の先鋒、決定的な柱としてバイオ・医療分野を位置づけています。
 日独帝に対する産業競争力において没落した米帝が、必死の巻き返しにでてきたということです。この過程で、米帝が日本企業などの産業スパイ摘発に動いたことも重要な事実です。
 いったん、特許をめぐる競争が始まると、それ自身がさらに競争を激化させます。
Q なぜ、特許自体が競争を激化させるのですか。
A 特許は《全てか無か》です。
 同じ領域の研究開発をしていたチームが3つあって、その3つがほとんど同じ水準の研究をしていたとします。特許制度というものでは最初に特許を取ったチームが全ての権利を獲得し、他の2つのチームはゼロです。
Q 最近、バイオ関係の「産業スパイ事件」というのが、2件報道されましたね。
A 両方ともアメリカの研究所に日本人の研究者(一件は日本人と中国人)が訴えられました。特許関連の研究成果が財産として奪い合いになっています。
 帝国主義間の競争は、必ず侵略になります。日本の遺伝子研究者は、日本では規制が厳しく遺伝子サンプルが十分に集められないから競争に勝てないと言って、モンゴルで血液などを集めています。病気その他の身体的特徴を表す遺伝子情報は最高のプライバシーですよ。家族・血縁者の情報も含まれています。これは、どんなふうにも利用できます。個人を事実上支配してしまうことになる。モンゴルの規制の少なさにつけ込んで、こういう情報をまるごと取るんですから、悪質です。

 医療制度改悪

Q 世界大恐慌、世界戦争情勢のために、公的医療、社会保障が切り捨てられるというのは、どういうことですか。
A ひとつの面は、医療の分野に対する財政支出をとことん削減する。軍事に回そうとする。あとひとつの面は、医療そのもののあり方を軍事医療体制へと再編しようとすることです。
 ついこの間、医療制度改革法が強行されましたね。健保本人負担を2割から3割に上げることは良く知られていますが、他にも、高額療養費の自己負担限度額の引き上げ、被用者保険料の月収ベースからボーナスも含めた総報酬制への変更、政管健保は年収の8・2%にして保険料を引き上げる、等でとんでもない負担増になります。この3割負担も、今後さらに増やされる。高齢者医療でも人民の負担はますます増えます。
Q 健保に入っている労働者の医療費は、もともと自己負担ゼロでしたね。
A それが、57年から自己負担が始まり、84年に1割負担になり、98年に2割負担、そして今度は3割負担です。この負担は、労働者家族の生活が崩壊する大問題です。そもそも働き手の病気で収入減のうえに医療費がのしかかるわけですから。
 このように制度として行われる負担増の他に、労災問題などもあります。労災と認定されれば医療費無料になるケースでも、企業による労災隠しで自己負担になる場合が激増しています。社会保険庁によれば、1990年度から10年間で労災隠しが58万件あり、それによって労働者が40億円を自己負担させられたそうです。これに休業補償などでの不利益が加わります。しかし、実態からすれば、この数字も氷山の一角でしょう。
Q 負担ばかり増えて、医療がますます奪われているということですね。
A 医療だけでなく、社会保障全体の動きです。
 医療制度改革は社会保障構造改革の一環に位置づけられています。帝国主義の側からすると、介護保険の導入を突破口にして、「医療制度改革」「年金制度改革」を進めていくことになっています。この全体が、「社会保障構造改革」です。
 00年10月に『21世紀に向けての社会保障』という報告書がでています。そこで「持続可能な社会保障」が強調されています。今までの社会保障は持続できないと宣言したのです。
Q 社会保障構造改革、医療改革は、「総額人件費抑制」「財政再建」といわれるものに帰着する問題ですか。

 原理的な社会保障の否定

A たしかにそれが基礎です。
 そのうえで、もっと根本的な問題でもあります。社会保障などすべきではないという、考え方そのものの大転換です。
Q 費用削減という量的問題ではすまないということですか。
A 《原理的に社会保障を破壊する》という動力が吹き出しているのです。
 『21世紀に向けての社会保障』を出した「有識者会議」は、こんな議論をしています。
 「社会保障というのは政府が絶対にやらねばいかぬということではないんです。国防であるとか、司法であるとか、政府本来の仕事に比べますと」(第1回会合、石 弘之)
 侵略戦争や反戦闘争の弾圧に力を集中すべきで、社会保障はなくていいというわけです。
 99年2月に出された『経済戦略会議答申』は言っています。
 「ナショナルミニマムの算定は容易ではないが、このレベルを高くしすぎると、モラルハザードが生じるだけでなく、非効率な大きな政府を作り上げることになる」
 労働者人民を必死に働かせ、相互に競争させるためには、社会保障など破壊したほうがいいというわけです。
Q ということは、労働者の社会保障を要求する闘いも今までのレベルとは別のものが必要になってくるわけですか。
A 相手が、原理レベルで否定してきているのですから、そのレベルで闘わなければ勝てないでしょう。資本主義の延命を前提にして、その枠内で闘うというのでは、もうダメです。労働者の生活が保障できないんなら、そんな資本主義は打倒すると突きつけなければ。
 資本主義の延命を前提にしたら、労働者に求められる犠牲は、際限がなくなります。戦争で命まで捧げることを求められます。
Q 革命を常に掲げるということですか。
A 現在は、世界的にプロレタリア社会主義革命が直接の課題になっている時代です。それを徹底的に自覚し、宣伝していくことが重要です。
 その上で、直接には改良的な要求を掲げる時にも、必ず革命を背後の論理として持っている必要があります。
 本気で革命を構えて改良要求を突きつけるのと、改良だけを考えて要求するのとでは天と地の差が出る時代になっています。

 戦争のために医療再編

 もうひとつ重要なことは、医療を考える場合には、必ず人間の生活を全体的にとらえる必要があるということです。
Q たとえば感染症の対策として、新しい抗生物質の開発とか治療だけを考えてもダメだと。感染を防ぐための手洗いや掃除、洗濯などがまず大切とか。
A 人間の病気の原因は、医学的なものばかりではありません。
 イラクでは、米軍の爆撃で水道施設がねらい打ちされて衛生状態が悪化し、感染症がまん延しています。経済制裁による栄養不良もあって、子どもたちだけで50万人が亡くなっています。
 パレスチナでもイスラエルに同じことがやられています。
Q 米帝やイスラエルの侵略戦争を阻止することが重要だというわけですね。今、ブッシュ政権によってイラクや北朝鮮が「悪の枢軸」とされていることの重大さを感じます。
 日本国内の医療を考えた場合にはどうなのでしょうか。
A 労災による負傷や病気への対策は、医療もありますが、その発生そのものを抑えることが第一に考えられるべきことでしょう。さっき言った労災隠しは、原因を究明して発生を抑える上でも、十分な治療を保障する上でも重大問題です。
 そしてイラク・北朝鮮への侵略戦争の切迫にともなって、日本の医療を戦時医療優先に再編しようという動きが激しくなっています。「トリアージ」の手法と考え方を習得する訓練が始まっています。これは、負傷兵を負傷の程度によって振り分けて、戦場に戻せる可能性の高い者を優先する手法です。
 また、労働者人民の生活では、国内で自殺に追い込まれている仲間が、98年に年間3万人を超えました。今も増えつづけています。
Q 一人ひとりの労働者と家族にとって、かけがえのない命がこうして奪われていくのは、ほんとうに許せないですね。
A 以前と違い、働き盛りの年齢層の自殺が多くなって、その層の平均寿命を押し下げているほどです。ガンに次ぐ第2の死亡原因なんです。労働者のリストラ・首切り、労働強化、中小企業の倒産問題に追いつめられている人が多いのです。
 この問題では国鉄闘争が原点です。国鉄分割・民営化で、国家そのものが不当労働行為をやって、組合をずたずたにして破壊しようとしたことが、今の事態を招いているからです。分割民営化の過程で200人以上の国鉄労働者が自殺に追い込まれています。総評が解体されて連合ができたのも、国鉄分割・民営化によります。その先兵になったのが、JR総連、カクマルです。
 そして現在、日帝は、国労執行部に闘う闘争団除名を迫っています。しかしこれは逆に、不屈に闘いぬく闘争団の存在にこそ、全労働者の勝利の展望がある証拠です。
Q 過労死も深刻ですね。
A 団結の破壊のもとで、過労死したり、病気になり、負傷している仲間がますます増えています。
 労働者に対する攻撃は、個々の企業のレベルの問題だけではありません。国鉄分割・民営化を突破口にして資本家階級全体として、国家として、総ぐるみで攻撃してきています。
 今年の日経連労問研報告は、ついに賃下げを公然と押し出してきました。春闘では、大手のベア・ゼロがあいつぎました。これらは、労働者の生活の破壊であるとともに、労働組合運動の原点中の原点、賃金闘争の破壊です。労組の破壊攻撃です。そしてNTTを先頭にして、終身雇用制のすさまじい破壊が行われています。この攻撃も、国鉄分割・民営化のやり方です。
 国鉄分割・民営化は、80年代のアメリカのレーガン政権が行った労組破壊と労働条件のメチャメチャな切り下げと一体になって行われました。レーガン反革命は、19世紀以来の労働者の闘いの成果をことごとく奪う激しさで行われました。労組破壊、首切り、不安定雇用化、極度の賃下げ、社会保障破壊で、徹底的に労働者を搾取し、それによって米帝企業は国際競争力を回復しようとしました。日帝も、それに対抗するために、自国の労働者を攻撃してきたわけです。
 この労働者階級への攻撃の一環として、「医療制度改革」を捉える必要があります。そしてそれと一体で、人体の生命操作があるのです。

 V 帝国主義による人体資源化、生物兵器開発

 ES細胞作りは人体資源化

Q ES細胞の研究ということが言われていますね。これはどういうことですか。
A 人間の体を資源として利用するということです。人クローン規制法では、ES細胞(胚性幹細胞)を使って移植用の臓器や組織を作ったり、新薬の開発をすることを認めています。ES細胞は、女性のいわゆる「不妊治療」のひとつとして行われている体外受精で余った受精卵を使うとされています。
 しかし、受精卵は女性の体の中で人間となるものです。その使用は、生命の操作そのものです。利潤のための人体の資源化です。けっして許せません。
 もうひとつは、女性の体に大きな負担をかけます。体外受精の成功率は、2割程度です。しかも副作用がある排卵誘発剤を使って卵子を大量に出させるものです。そういうことを隠して体外受精「不妊治療」に誘導しているのが現状です。
 ES細胞作りのために「余剰」の受精卵を使って良いとなれば、最大限の余剰卵を作ろうとする動力が必ずでてきます。むしろ、余剰卵を目的に、カップルを体外受精に誘導します。

 人体実験

Q 一般的な問題になりますが、新薬の治験など、人体実験が最終的には必要だと言われますね。
A どんな治療法も、最終的には、人間の体で試して確定することになります。しかし、人体実験の前にできる方法はいくらでもあるのですから、いきなり、「新治療法の開発には人体実験が必要」と言うのはどうかと思います。
 というのは、医学の進歩を大義名分にして粗暴な人体実験が行われてきた歴史があるからです。《医学全体の進歩か、一人の患者の利益か》と、全体と個の対立の図式で語られてきたことがあるからです。
Q 人体実験では、日本軍の石井機関が悪名高いのですが。
A それは、「医学の進歩」を口実とした人体実験ですらありません。
 石井機関の人体実験は、生物兵器、化学兵器の開発や、極限的状況への兵士の耐久力テストなどのためでした。そこから医学的データを得ようとしたこともありましたが、副次的なものです。
 日帝は、七三一部隊をはじめとして、生物兵器開発のための病原菌の投与や生体解剖など残虐な人体実験や生物・化学兵器の実戦使用を計画的系統的かつ大規模に行いました。日本の医学界中枢は、これに全面的に動員され、その実験データを研究資料として利用しました。
 日本の階級闘争は、日帝・石井機関の犯罪を、戦後長く責任追及できずにきたことも含めて自己批判的総括を深め、それを繰り返そうとしている日帝と徹底的に闘う必要があります。
Q 軍事とは一応別の目的で行われた人体実験はどうなのですか。
A アラバマ州タスキギーという所で、連邦政府は、1932から人体実験を行いました。タスキギーは、住民の100%がアフリカ系アメリカ人です。ここで、梅毒患者を集め、本人には病名を隠してニセの「治療」を行いました。梅毒の進行を放置するとどういう経過をたどるかのデータをとったのです。
 この非道な実験には、医師や看護婦から反対がでましたが、その都度、政府の圧力でつぶされています。この人体実験は、絶対に許せないものです。米帝によるアフリカ系アメリカ人に対する最悪の人種差別であり、抹殺攻撃です。
 タスキギー実験を検討すれば、《医学全体の進歩か、一人の患者の利益か》なるものが、百%虚偽の図式だということは明白です。この実験は医学に何の成果ももたらしていません。
 患者を犠牲にすることを当然としたたために、研究者の患者に対する人間的共感が消え、物体として捉えるようになりました。そのため患者の氏名を大量に取り違えたり、以前のデータとの連続性がないなど、でたらめきわまる「研究結果」が作られました。すでに46年にペニシリン療法が確立したにもかかわらず、その後も何の意味もない放置実験が72年まで続けられたのです。怒りにたえない「実験」ではありませんか。
 帝国主義は、搾取・収奪、侵略戦争、差別・抑圧を激化させることによってしか延命できまないものです。だから、その非人間性を居直り、合理化し、むしろ自己目的的に激化させる傾向を必ずおびていきます。人体実験の推進もそのひとつです。
Q 軍事目的ではどのような人体実験が行われたのですか。
A 戦後も米帝は、数千人に放射性の猛毒プルトニウムの注射実験、生物兵器を環境中に放出する実験などを行っています。核実験場は先住民族の居住地域に作られ、先住民族や米軍兵士が被曝実験に使われました。

 死亡認定の前倒し

Q 97年に臓器移植法ができましたね。どう考えたらよいのでしょうか。
A これで脳死ー臓器移植が推進されるようになりました。これは、移植される人=レシピアントと、「脳死」判定されて臓器を提供する人=ドナーの双方があって、初めて成りたちます。一方が命を失うことで、他方が臓器を得られる。他のすべての治療法と根本的に違います。
 他人の臓器や組織は、身体にとって異物で、免疫機構が攻撃します。拒絶反応です。免疫抑制剤で拒絶反応をある程度は抑えられますが、免疫を抑えれば病原体に感染しやすくなります。この根本的矛盾があるわけで、レシピアントにとっても人体実験的「医療」なのです。免疫機構の攻撃にまがりなりにも耐えて、移植された臓器が生き延びるためには、丈夫で新鮮な臓器でなければなりません。それで、心臓がまだ動いているうちに「脳死」の段階で臓器を取りだそうとします。しかもその最大限の前倒しが求められます。
Q 脳死とは、どういう状態ですか。
A 本当は、良くわかっていません。臓器移植法では、「脳幹を含む全脳の機能停止」と規定していますが、何をもって機能停止と判断するのか、確たるものはないんです。現行の脳死判定基準は便宜的線引きです。実際、「脳死になりつつある」とされた人、あるいは脳死判定法しだいでは「すでに脳死している」と判定された人の救命に、脳低温療法によって成功した実績があります。
 しかし、脳低温療法は、脳死移植推進と矛盾します。脳低温療法を行っている間は脳死判定ができませんから。また、低温療法は、脳の回復は助けても、他の臓器に負担をかけるので、移植に適した新鮮な臓器が得られなくなります。

 救命医療の危機

Q 臓器移植推進と事故などでの救命治療とは対立するということですか。
A はい。しかし、ただ並列的に対立としてだけ捉えるのではなく、救命医療の危機として捉える必要があると思います。
 日本では、臓器移植そのものはアメリカなどに比べれば少ない件数にとどまっています。しかし、臓器移植法をテコにして、「脳死=人の死」という概念が持ち込まれたことが重大です。たしかに、激しい論争の末に、法文上は「脳死=人の死」を死一般の規定としては明文化できませんでしたが、実質的にはそれが持ち込まれています。
 生きている人が「脳死」判定で死体にされるのです。しかも、判定の手段そのものが、無呼吸テストのように、患者に重大な負担をかけ、死を作り出す働きをします。
 現在のところは、臓器移植法にもとづく脳死判定はドナーになる可能性のある人――ドナーカードを持ち、比較的若くて健康な臓器がありそうな人――を主な対象にしていますが、じきに別の種類の患者が主な対象になる恐れがあります。
Q 臓器提供とは無関係な患者に脳死判定が行われるということですか。
A 「高齢者医療=無駄」論のキャンペーンは、かなり前から始まっていますね。
 高齢者医療制度の改悪で自己負担が急増する中で、現在広範に延命、救命措置が打ち切られています。「脳死判定」も隠然たる打ち切りの道具としてすでに使われています。今後、これがもっと公然と大規模に行われる危険が大きいのです。
 また、石原都知事は、「障害者」施設を視察して、「生きている意味があるのかね。欧米なら安楽死だね」と公言しました。権力を使って「障害者」抹殺の扇動が行われる情勢です。
 特に多くの介護・医療を必要とする重症患者、「障害者」に対しては、脳死論などさまざまな口実をつかって、介護、医療を打ち切り、死の前倒しをすることが狙われています。
Q 脳死ー臓器移植は、レシピアントとドナーという当事者だけの問題ではないんですね。
A 世界でもっとも脳死臓器移植が多いという米国でさえ、脳死移植数は限られています。脳死移植と心臓死移植を区別した統計はありませんが、全部が脳死移植である心臓の移植数でみると、01年に2202件です〔右ページ表〕。移植臓器摘出可能な「脳死」が交通事故等の重傷者数に規定される以上、飛躍的に脳死移植数が増加する見込みもありません。
 さまざまな領域でそれぞれに治療を求めている患者がいるのにほとんど報道もされない一方で、実際上はこうしたマイナーな領域であるにもかかわらず、脳死移植が高度先端医療の花形とされ、大々的に宣伝されるのはなぜか考えるべきです。
Q 移植は、むしろ口実で、別のことに本来の目的があるわけですか。
A 死の前倒し、医療・社会保障の切捨てこそが大きな目的だと思います。
 《臓器移植の推進のためには脳死判定が必要だ》と言われていますが、むしろ逆に、「脳死」概念の定着化のための水路として脳死-臓器移植が使われているのです。いきなり「脳死」を持ち出しても社会的反対が強すぎるから、臓器移植「医療」を前面に出すわけです。帝国主義にとっての「価値なき命」を抹殺するのです。実際、判定によって「脳死」が宣告されたら健康保険の適用を打ち切るという策動も強められています。

 軍事医療体制への動員

 事故に対する救急医療では、脳外科や整形外科が主な役割をしますね。ちょうどこれが、野戦病院の中心になる科でもあります。脳死臓器移植は、こうした医師や医療スタッフ――そして全社会――のイデオロギー的動員のために使われています。
 帝国主義の軍事医療の担い手としては、救命救助にとことんこだわる者は失格です。臓器移植を通じて、今までの医療のあり方を転換し、軍事医療にふさわしい担い手を作ろうとしているのです。
Q トリアージで、早く戦場に戻れるものを優先するために、重傷者の治療を切り捨てるという割り切りができる者が、軍事医療には求められるということですか。
A そうです。現在はいちおう軍事目的とは別の「臓器移植が必要な別の患者を救うため」とか「ドナーカードに記入した患者本人の意志の尊重のため」とかの理由で救命治療を打ち切らせるのですが、それをある種の使命感をもってやらせようとしているわけです。積極的自発的に協力する担い手を作ろうとしています。
 医療関係者、そして全社会に抵抗感が強い《患者の切り捨て》に慣らそうとしているのです。それは、「公共の利益」「国益」の名で患者を切り捨てる軍事医療につなげられます。
 今回の医療制度改革で脳外科や整形外科の診療収入が特に削減され、2割、3割という大幅な減収になっているのも、こうした戦時医療への動員をにらんだ攻撃だと言われています。
Q アメリカでは、脳死臓器移植が多いというのですが、どんな状況になっているのですか。

 臓器売買を生み出す医療の「市場原理主義」化

A アメリカは、世界の大国の中で唯一国民皆健康保険制度が存在しない国です。健康保険は、基本的に民営です。特に80年代のレーガン政権以降、公立病院の独立採算化、民営化、巨大病院チェーンによる吸収・合併とリストラの波が襲いました。医療にも市場原理主義を貫こうという攻撃がかけられています。
 一握りの金持ちは手厚い医療を受けられるが、労働者人民は安心して医療を受けられません。保険に入っている人でも、手術費までは保険会社が払うがその後の入院は拒否されて、感染によって死亡するなどのケースが多発しています。日本では、アメリカの病院の合理的経営をモデルにしようと論じる人が多いのですが、そこでは、入院日数の極端な削減などでこのような犠牲が多発しているのです。
 そうした中で、脳死臓器移植が行われているわけです。
Q いくらなんでも、臓器そのものの市場原理化、商品化は禁止されているはずですが。
A それはそうです。もともと世界各国が臓器売買禁止の条項を法文に入れたのもアメリカの経験からきています。
 1984年に、ジェイコブズという医師が「インタナショナル・キドニー・エクスチェンジ」(国際腎臓取引所)という会社を作って、7500の病院に腎臓移植手術または摘出手術の取引への参加を呼びかけました。彼は、南米から米国に旅行させる代わりに片方の腎臓の摘出手術を受けるツアー募集までやっています。入国ビザが厳しくなっていることにつけ込んでいるわけです。
 この時は、あらゆるものを商品化するレーガノミックスの真っ最中でしたが、さすがに臓器の商品化には全米が衝撃を受けて、84年の臓器移植法には売買禁止が明示されました。
Q その法律のために、アメリカでは臓器売買はやられてないわけですね。
A いや、闇取引で売買されています。最近も中国の刑務所で死刑になった人の腎臓を移植したケースについて、レシピアントのアフタケアを依頼されたニューヨーク大学メディカルセンターの医師による確実な証言が得られています。すでに恒常的なルートができていて、手術にあわせて処刑の日取りを決めるとか、摘出する臓器によって、銃殺の弾丸を打ち込む場所が決められるということです。
 また、南米のストリートチルドレンが誘拐され、臓器や組織をとられている事実があります。値段を付けて生体腎の提供を呼びかける広告が現地の新聞に載ったこともあります。
 そして、アメリカでは「無脳症」といわれる生まれつき脳に損傷を受けている子どもを、臓器や組織の供給源として使おうという計画も公然と推進されています。人体資源化の極致です。
 臓器移植、臓器売買の動きは、さまざまな「障害者」の身体の゛資源″としての利用につながっていきます。
 臓器売買は、日本の問題でもあります。最近、プロレスラーの移植後の死亡で明るみにでましたが、他にもインドやフィリピンなどに臓器を買いに行く例が多いといわれています。
Q 臓器売買は、法律で禁止しても闇の取引は生まれるということですか。
A 闇取引以上に衝撃的なことは、アメリカには臓器商品化の合法化運動があるということです。公然と大々的に商品化しようというわけです。
 たとえば、「オーガン・セリング」(臓器販売)という運動体があります。賛同者の中には、トーマス・ペータース医師のような人もいます。ASTS(米移植医協会)の幹部です。こうした人物が幹部に選出されつづけているということは、移植医界の大部分が本音では臓器売買を肯定しているということでしょう。この現状を知りながら何ら問題にせず、米帝は脳死臓器移植を推進しているのですから、米帝そのものの本音も明らかです。というより、米帝自体がこうした移植界の現状を作り出したということです。
Q こうした運動体はどういうふうに臓器売買を正当化しようとしているのですか。
A 引用しましょう。
 「貧しい人の腎臓が金持ちの手に入るのは不公平ではないかとか、困窮に迫られて片方の腎臓を売ったがために、健康を害して後で後悔する人がでるのは避ける必要があるという批判がある」「しかし、貧しい人にも選択権を与えるべきだ。貧しい人が危険をおかして生活の糧を得ているという意味では、鉱山での労働なども同じではないか。貧しい人よりも金持ちのほうが安全性が高い車に乗るのとどこが違うのか」
 レーガン、中曽根、サッチャーの規制緩和、「選択の自由」「自己決定権」と同じ論法です。日、米、英は、深夜労働・危険労働についての規制も、労働者も選択権があるという論法で緩和・撤廃していきました。米国の多くの州が労組が企業と非労組員の雇用を禁じる協定を結ぶこと(クローズド・ショップ/ユニオン・ショップ)を、「働く権利」を口実にして禁止する州法を制定しました。
Q 市場原理の美化を徹底していけば、人体の商品化にまで行き着くということですね。
A そのうえで、このレーガン、中曽根、サッチャー以来の路線が、他帝国主義との激烈な対抗を動力にしていることが重要なポイントです。「市場原理」なるものが万能薬のように叫ばれますが、言っている本人たちも信じているわけではありません。市場原理をたてにとった、労働者階級の階級闘争への大攻撃とそれによる帝国主義間争闘戦の勝利が狙いなのです。この行き着いた姿が、臓器売買自由化論です。人体の切り売りを認めよという論は、財産を持たない者は、搾取・収奪されて当然という立場を極限的にしたものです。特に、新植民地主義体制諸国からの臓器輸入=臓器強奪の自由化論であり、侵略の自由論なのです。
 全世界の被抑圧民族と労働者人民は団結して帝国主義を打倒しないかぎり、この極限的な非人間性を強制されます。

 新世代生物兵器の開発

Q 現在の生命操作技術は技術的にはどんな段階にあるのですか。
A 今回の最初の質問で出た「画期的治療法」などは生みだしていません。
 脳死ー臓器移植は、イデオロギー攻撃としてはともかく、前述のようにそれ自体としては数的にも質的にも大きく発展しているわけではありません。
 遺伝子操作は、微生物による薬品製造などである程度のものは作り出したものの、多細胞生物の遺伝子操作、いわゆる遺伝子治療などで具体的に何かを生みだしているわけではありません。遺伝子操作は、不確定性が高く使いづらいものです。しかし破壊さえすればいい軍需には、十分すぎるほどの技術です。すでに毒性や感染性の高い細菌やウイルスが遺伝子技術によって作り出されています。新世代の生物兵器の開発をめぐって、米帝を先頭に帝国主義諸国はしのぎを削っています。
 そして今、全社会的な医療の改変、政治的攻撃、イデオロギー攻撃がかけられてきているのです。特に、優生思想の攻撃は重大です。前回述べたように、階級闘争を根底から否定し、分断し、戦争に動員していくのですから。どれほどナチの優生政策を口先で否定していようとも、帝国主義の危機の爆発とともにそこに行き着くのです。いやすでに、それは姿を現しはじめているではありませんか。
 臓器移植も遺伝子操作も、生殖操作も、帝国主義にとって「価値なき命」を抹殺し、「価値ある命」を増殖させることで共通しています。
 どんなにおぞましくても、死の前倒し攻撃や、臓器売買の現実を直視せねばなりません。それと一体のものとして、他の操作技術もあるのです。「価値ある命」をクローンなどの生殖操作、遺伝子操作で増殖したり、また遺伝子解読で選別をするわけですから。
 有事立法闘争を軸にして、断固、帝国主義の優生政策と対決し、生命操作とたたかっていきましょう。
 (おわり)

2001年に米国で行われた移植
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移植のタイプ            移植数
腎臓移植(5,949 は、生体腎移植) 14,152
肝臓移植              5,177
膵臓単独               468
腎臓−膵臓移植            884
臓移植                112
心臓移植              2,202
心臓−肺移植              27
肺移植                1,054
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合計                24,076
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ドナーのタイプ
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死体  6,081
生体 6,6499
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合計 12,580
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OPTN※=「臓器取得及び移植ネットワーク」の今年3月発表の資料による。(※84年臓器移植法により設立された組織)