COMMUNE 2003/03/01(No325 p48)

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3月号 (2003年3月1日発行)No325号

定価 315円(本体価格300円)


〈特集〉 自衛隊のイラク参戦阻止

口イージス艦派遣を突破
口に進む自衛隊の突出  
□切迫する北朝鮮侵略戦争に対応する有事立法
□資料/武力攻撃事態法案・修正案/「国民保護法制の輪郭」

●緊迫するイラク現地報告

●翻訳資料/ ブッシュ・ドクリン (米国家安全保障戦略)
● ニューズ&レビュー/ 南朝鮮・韓国/3大悪法阻止へ民主労総ゼネスト--室田順子 

     12・16横須賀現地闘争

三里塚ドキュメント(11−12月)内外情勢(11−12月) 日誌(10月)

コミューン表紙

 国際反戦闘争の波

 『前進』新年号掲載の革共同政治局2003年1・1アピールは、帝国主義の危機が戦争と大恐慌の時代をついに現出し、帝国主義の侵略戦争、世界戦争の過程がついに始まったこと、これに対して、労働者階級人民と被抑圧民族人民の決起が全世界的に巻き起こり、国際的内乱が開始されたこと、すなわち革命的情勢が容赦ない歴史的必然の力でつくりだされつつあることを明らかにしている。日本の階級闘争、反戦闘争が、国際連帯の質をもって高揚を開始したことを確認し、03年を、闘うムスリム人民、闘う南北・在日朝鮮人民と連帯し、イラク・北朝鮮侵略戦争阻止の闘いの爆発の年としよう。年末の南朝鮮・韓国の人民の大規模な反米反基地の闘い、1・18アメリカ人民の闘いは、連帯闘争の発展の方向をはっきり示している。

イラク・北朝鮮侵略戦争情勢はきわめて緊迫している。ブッシュはイラク開戦準備を強引に進めている。そして、イラクと連動して北朝鮮をめぐる米帝の戦争重圧が一層高まっている。北朝鮮・金正日政権の核武装をもてあそぶ瀬戸際政策は反人民的・反革命的なものであり断じて許せないが、問題の根本原因は、北朝鮮スターリン主義のやり方を口実とし「えじき」として、侵略戦争に訴える帝国主義の側にある。日帝政府は、排外主義をあおり、米帝ブッシュの世界戦争計画のもとで北朝鮮侵略戦争に共同して参戦しようとしている。小泉がまたしても靖国神社を参拝したことは、まさにその「戦勝祈願」と有事立法成立への決意表明だ。絶対に許せない。始まった通常国会での有事立法成立を絶対阻止しなければならない。

 世界戦争と大恐慌の情勢のもとで03春闘は、「生活破壊・戦争動員・治安弾圧と闘う春闘」である。日帝ブルジョアジーの攻撃は、日本経団連の「経営労働政策委員会報告(経労委報告)」に露骨に示されている。そこで日帝は「春闘終焉」を宣言し、賃下げ・ベアゼロを掲げ、不安定雇用化を推進している。国際競争力を掲げて、国益主義、企業防衛主義を前面化させている。要するに、資本主義の末期的危機に労働者に一切の犠牲をしわ寄せして延命するというのだ。この攻撃に屈服している連合、全労連、JR総連の労働者支配を打ち破って、春闘を、国労5・27臨大闘争弾圧粉砕闘争を基軸に全力で闘おう。この弾圧との闘いを全労働者の中に広げ、裁判闘争に勝利していくことが、階級的労働運動の再生の核心をなしている。

 この二つの大課題とともに、今年前半の大決戦課題は4月統一地方選闘争だ。東京杉並区議選で、けしば誠一(前)、新城せつこ(現)、北島邦彦(新)の3氏を擁立し、全員当選をかちとることは、世界戦争と大恐慌の始まりの情勢のもとで都政を革新する会が一個の政治勢力として登場することを意味している。社民党の没落と無力化、日本共産党の侵略戦争容認勢力への転落の中で、今こそ戦争絶対反対を貫き、イラク・北朝鮮反戦、有事立法阻止の先頭に立つ議員、そして労働者住民の生活といのちを守る闘いとして介護保険廃止を掲げて闘う議員を送り出そう。この〈反戦と介護>の旗の周りに多くの闘う先進的区民を結集し、選挙戦に必ず勝利しよう。さらに、神奈川県相模原の西村綾子市議3選の闘い、大阪府高槻市の小西弘泰市議の再選、同森田充二氏の初当選など闘う全候補の勝利へ前進しよう。(た)

 

 

翻訳資料

 ブッシュ・ドクリン

 (米国家安全保障戦略) 02年9月

 村上和幸訳 

【解説】

 米国の国家安全保障戦略――通称「ブッシュ・ドクトリン」――は、01年のQDR(四年毎の戦力見直し)、NPR(核戦力態勢見直し)、02年国防報告で明らかにされた方向をさらに進め、先制攻撃を公式に打ち出した。相手に攻撃されていなくても、いや攻撃の切迫さえなくても、米帝が必要と判断しさえすれば攻撃するというのだ。数世紀に及ぶ国際関係の建前を一変させるドクトリンだ。
 そして、それをさらに相乗的に重大化するものが、「ユニラテラリズム」(単独決定主義・一方的行動主義)の露骨な強調だ。
 「米国の国家安全保障戦略は、わが国の価値観とわが国の国益の合一を反映したきっぱりとアメリカ的な国際主義に基づくものとしていく」(第1章)
 米帝の戦略は、「きっぱりとアメリカ的な国際主義」なるものに基づく。通常の国際主義とは区別される「きっぱりとアメリカ的」国際主義とは、「米国の価値観と米国の国益の合一」に他ならないという。米帝支配階級の利害をむきだしの力で貫徹することが「国際主義」だと公然と言い放ったのだ。
 従来、少なくとも建前上は相互の利害の調整の場であった国際関係が、あからさまに《国際関係イコールアメリカのみの国益》とされるようになった。これまでの帝国主義間争闘戦のあり方がついに一線を超え、公然と相手をなぎ倒すものへと転換した。
 そして、さらに凶暴なことがこの文書の秘密報告部分や記者へのブリーフィングで述べられている。12月11日のワシントンポスト紙によれば、次のとおり。
 「昨日ホワイトハウスが出した6nの戦略文書は、1月からの諸省庁間の論争を決着させて5月にブッシュが署名した最高機密文書から公表できる部分を抜粋したものだ。これは、国家安全保障会議と国土安全保障会議の最初の大規模な政策協力だ。この〔国家安全保障戦略の〕秘密版は、国家安全保障大統領命令(NSPD)17および国土安全保障大統領命令4と名付けられている」
 「大量破壊兵器またはそれらを運搬できる長距離ミサイルの取得に近づいている国またはテロリストグループに対する先制攻撃を認める」
 「最高機密の付属文書ではイラン、シリア、北朝鮮、リビアを名指しして、新戦略の焦点にしている」
 「新政策の文書は『米国、わが国の海外部隊及び同盟国・友好国に対する大量破壊兵器の使用には、わが国のあらゆる選択肢を含む圧倒的な戦力によって応える権利を保持しつづける』といっそう具体的に詳論している。…この新戦略のブリーフィングを行った政府高官は、これらのオプションには核戦力が含まれると述べた」
 「今日の敵に対しては、先制的に、死の灰を最小限にした核兵器をもって攻撃することが必要になりうると、この政権は論じている」
 「新戦略は外交、多国間軍備管理および輸出管理の『伝統的諸措置』を否認していない。しかし、その秘密版…では、大統領命令は、『伝統的な拡散防止は失敗したのであり、いまやわが国は〔大量破壊兵器の〕能動的禁止を始めていく』という見解を前提にしていると、諸省庁間の協議のある出席者は述べている」「その高官によれば、能動的禁止とは、『動力学的なものであろうと、サイバー的なものであろうと、あらゆる形をとった物理的な妨害・破壊のこと』だという」
 ブッシュ・ドクトリンは、既存の帝国主義世界体制の盟主であるはずの米帝自身が、既存の秩序を暴力的に破壊する宣言だ。「数世紀にわたる国際法」などにあえて言及していることも、その現状破壊性を際だたせている。支配階級、それも最大最強の支配階級たる米帝がこれまでどおりには支配できなくなったのだ。全世界の革命的情勢の到来を米帝の側から告白しているのである。
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 序文

 自由と全体主義の間の20世紀の偉大な闘いは、自由勢力の決定的勝利によって終了した。国家的成功の唯一の持続しうるモデルは、自由、民主主義、および自由企業である。21世紀においては、基本的人権を守り、政治的・経済的自由を保障する方針を共にする諸国のみが、国民の潜在力を解き放ち、国民の将来の繁栄を保障することができる。あらゆる所で人びとは自由に語り、彼らを統治する者を選び、好きなように、礼拝し、自分の子どもたちを教育し――男も女も、財産を所有し、自分の労働の収益を享有することを望んでいる。これらの自由の価値は、あらゆる人間、あらゆる社会において正当で、真実であり、そしてこれらの価値をその敵から守る義務は、全地球の全時代の自由を愛する人びとの共通の使命である。
 今日、米国は無比の軍事力および偉大な経済的・政治的影響力を有している。われわれの伝統と原則を保持し、われわれの強さを一方的な利益を押し付けるために使用することはしない。…
 わが国の敵からの防衛は連邦政府の第一の基本的な任務である。今日では、この任務は劇的に変化した。かつては敵は米国を危機に陥れるためには大きな軍隊と工業力を必要とした。現在では、影に隠れた人間のネットワークが、戦車1台の購入費にも満たない費用でわが国に大きな混乱と災害をもたらすことができる。テロリストは、開かれた社会に潜入し、現代科学技術の力をわれわれに向けるべく組織されている。
 この脅威を打破するために、われわれはわが武器庫にあるあらゆる手段||軍事力、増強された国土防衛力、司法警察、諜報、テロリストの資金調達を遮断する精力的努力||を利用しなければならない。グローバルに展開するテロリストに対する戦争は、期間を定められないグローバルな試みである。米国はテロとの闘いでわが国の支援を必要とする諸国を援助するであろう。米国はテロリストをかくまう国も含めて、テロに妥協する諸国に責任をとらせる。テロに加担する国は文明の敵だからである。米国および協力国は、テロリストが新たな拠点を作ることを許してはならない。われわれは共に、いたる所で彼らの聖域を許さないように活動するであろう。
 わが国が直面する最大の危険は、ラジカリズムと科学技術が交差する場所で生じている。われわれの敵は大量破壊兵器の所持を追求していることを公然と宣言している。そして彼らがそれを決意をこめて行っていることは、証拠が示している。米国はこれらの努力が成功するのを許さない。われわれは、弾道ミサイルや他の運搬手段にたいする防衛体制を構築する。われわれは危険な科学技術を獲得しようとする敵の努力を否定し、阻止し、抑え込むために他の諸国と協力する。そして、米国は形成されつつある脅威が完全な姿をとる前に、それに対抗して行動する。||これは常識の問題であり、自衛の問題なのだ。楽観していては米国と友好国を防衛することはできない。それゆえ、われわれは最善の情報活動を使い、熟考して敵の計画をうち破る準備をしなければならない。…
 われわれは平和を防衛しながら、同時に平和を維持するために、この歴史的好機を利用するであろう。現在、国際社会は、17世紀の国民国家の登場以来、諸大国が常に戦争に備えるかわりに平和裏に競争する世界を構築する最大のチャンスを迎えている。
 現在、世界の大国は、テロリストの暴力と混乱という共通の危険によって団結させられ、われわれは同一の陣営にいると考えている。米国はこれらの共通の利益の上にたって、グローバルな安全保障を築きあげ、推進するであろう。われわれは共通の価値観によってますます相互に団結している。ロシアは民主主義的な将来とテロとの戦争におけるパートナーとなることを目指して、希望に満ちた移行のまっただ中にある。中国の指導者は経済的自由が国の富の唯一の源泉であることに気づきつつある。… 
 最後に米国は、この好機を用いて、自由の利益を地球全体に広げていく。われわれは、民主主義、開発、自由市場、自由貿易の希望を世界のすみずみにまでもたらすために積極的に働いていく。…
 自由をめざす力の均衡を構築するにあたって、米国は、すべての国家が重大な責任を有しているという確信に導かれている。自由を享受する国家はテロと積極的に戦わなければならない。国際的安定に依拠する諸国家は、大量破壊兵器の拡散阻止を手伝わねばならない。国際的な援助を求める国家は、援助が適正に使用されるように賢明な統治を行わなければならない。自由を成長させるために、説明責任が期待され、要求されなければならない。
 われわれは、どの国家も単独ではより安全でより良い世界を築くことはできないという確信に導かれている。同盟や多国間組織は自由を愛する諸国の強さを増幅させることができる。米国は国際連合、世界貿易機構、米州機構、NATOのような常設機関やその他の長期にわたる同盟に参加している。自発的な同盟は、これらの永久的な機関を強化することができる。すべての場合に、国際的な義務は真剣に考慮されなければならない。到達地平をより高いものにすることなしに、理想に対する支持を象徴的に求めるだけでは、この義務は果たされない。
 自由は、譲歩の余地のない人間の尊厳である。すべての文明における、すべての人の生得の権利である。歴史をつうじて、自由は戦争とテロによって脅かされてきた。それは強力な諸国の意志の衝突と暴君の邪悪な企図による挑戦を受けてきた。蔓延する貧困と疾病による試練を受けてきた。現在、人類は自由の敵すべてに対する自由の勝利を推進する好機を手にしている。米国は、この偉大な任務をリードするわが国の責任を喜んで引き受ける。
ジョージ・W・ブッシュ
ホワイト・ハウス
2002年9月17日

 第1章 米国の国際戦略の概観

 米国は世界においてかつて例がなく、――そして並ぶものがない――力と影響力を保有している。自由の諸原理と自由社会の価値観に支えられて、この地位は、無比の責任、義務、チャンスを伴っている。この国の偉大な力は、自由に有利になるバランス・オブ・パワーを増大させるように使用されなければならない。
 20世紀の大部分、世界は思想をめぐる――破壊的な全体主義のビジョン対自由と平等の間の――大きな闘いによって分断されてきた。
 この大きな闘いは、終わった。階級・民族・人種についてのユートピアを約束し、惨禍をもたらした戦闘的なビジョンは打ち破られ、信用を落とした。アメリカは今、征服的国家によって脅かされることは少なくなり、むしろ破綻した国家によって脅かされている。わが国は、艦隊と陸軍によっていうより、恨みを抱いた少数の者が握っている破局的な科学技術によって脅かされている。われわれは、わが国と同盟国・友好国に対するこうした脅威を打ち破らねばならないのだ。
 これは、アメリカにとっての好機でもある。われわれは、この瞬間の影響力を使って、平和、繁栄、自由の数十年間を作っていくのだ。
 米国の国家安全保障戦略は、わが国の価値観とわが国の国益の合一を反映したきっぱりとアメリカ的な国際主義に基づくものとしていく。この戦略の目的は、世界をもっと安全なものにしていくのみならず、もっと良いものにしていくことだ。われわれの進むべき道のゴールは明確だ。すなわち、政治的かつ経済的な自由、他の諸国との平和的関係、及び人間の尊厳の尊重だ。
 そしてこの道は、アメリカだけのものではない。これはみなに開かれている。
 これらの目的を達成するために、米国は以下のことを行う。
・人間の尊厳への熱望を先頭で担う
・世界のテロリズムをうち破る同盟の強化と、わが国および友好国への攻撃を阻止する活動
・地域紛争を緩和するための諸外国との協力活動
・敵がわが国、同盟国、友好国を大量破壊兵器で脅迫することを阻止する
・自由市場と自由貿易を通じたグローバルな経済成長の新時代を切り開く
・社会の開放と民主主義の基盤を構築することによって発展の輪を拡大する
・グローバルな力をもつ他の基軸国との協調行動のための課題の提示
・21世紀の課題とチャンスに対処する米国の国家安全保障制度の改革

 第2章 人間の尊厳への熱望の推進 (略)

 第3章 グローバル・テロリズムを撃破するための同盟の強化と、米国および友好国に対する攻撃を阻止するための活動

 アメリカ合州国は、世界を活動範囲とするテロリストに対する戦争をたたかっている。敵は、単一の政治体制ないし人、宗教、イデオロギーではない。敵は、テロリズム――計画的な、罪のない人々に対して政治的動機でふるわれる暴力――だ。
 多くの地域で、正当な不満が平和の持続を妨げている。こうした不満は、政治的プロセスの内部で、取り組まれるに値するものであり、またそうすべきだ。しかし、どんな大義もテロを正当化するものではない。米国は、テロリストの要求には譲歩せず、彼らとは取引しない。テロリストと彼らを知って匿いあるいは援助する者との間に区別をもうけない。
 グローバルなテロリズムに対する闘いは、わが国の歴史におけるいかなる戦争とも異なる。それは多くの戦線で、極めてとらえどころのない敵に対し、長期にわたって闘われるだろう。この闘いは成功の持続的蓄積を通じて前進するだろうが、それは目に見えるものもあれば、見えないものもある。
 今日、敵は、政治的目的を達成するためにテロリズムをかくまい、支援し、利用する体制に対して、文明国が取ることができ、また今後取ろうとする措置の結果を目の当たりにしている。アフガニスタンは解放され、連合勢力はタリバンとアルカイダの掃討を継続している。しかし、われわれがテロリストとの戦争を行っているのはこの戦場だけではない。数千人もの訓練されたテロリストが、南米、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア全域にまだ野放しで残存し組織をもっている。
 われわれの最優先課題は、世界的な活動領域をもつテロリスト組織を崩壊させ、破壊し、その指導部、指揮・統制・通信、兵站、資金源を攻撃することである。これはテロリストの計画、作戦能力を失わせる効果をもつであろう。
 …
 しかしながら、この戦いが効果的であるためには、逐次的に行っていく必要はない。あらゆる地域における累積的な効果が、われわれの追求している結果を達成することを助けるのである。われわれは、次のことによって、テロリスト組織を崩壊させ、破壊していく。すなわち、
・ 国内的・国際的なあらゆる要素を使用した、直接的で連続的な行動。われわれの当面の焦点は、大量破壊兵器もしくはその前駆体を獲得もしくは使用しようとしている世界的な活動範囲を有するテロリストあるいはテロリズム支援国とする。
・ 脅威が国境まで到達する前にそれを同定し破壊することによって、米国、アメリカの人民およびわれわれの国内・国外の利益を防衛すること。米国は、国際社会の支援を要請する努力を不断に行っていくが、必要とあらばわれわれは単独で行動することを躊躇しない。こうしたテロリストがわが人民とわが国に危害を及ぼすことを予防するために、彼らに対して先制的に行動することによって自衛権を行使することを躊躇しない。
・ そして、諸国家が主権国家としての責任をとるように説得し、また強要することによって、テロリストへの後援、支援、保護をこれ以上与えないようにさせる。…
 一方でわが国の最良の防御は適切な攻撃であることを認識しつつ、われわれは、攻撃から守りそれを抑止するために米国本土の安全保障を強化している。
 本政権は、トルーマン政権が国家安全保障会議を設置して以来最大の政府再編を行い、新設の国土安全保障省を中心にして、新設の統一軍部隊〔現有の統一軍部隊は、欧州軍・太平洋軍・中央軍・南方軍・統合軍・宇宙軍・特殊作戦軍・輸送軍・戦略軍の9つ〕及びFBIの根本的再編成を含む、国土安全保障のためのわれわれの包括的プランは、政府及び公共部門・民間部門の協力のあらゆるレベルにわたっている。…

 第4章 地域的紛争を弱めるための協力〔略〕

 第5章 米国、同盟国・友好国に対する敵の大量破壊兵器による脅威の阻止

 冷戦の脅威の本性からして、米国は――同盟国・友好国とともに――敵の戦力の使用に対する抑止に重点を置いていた。それは恐るべき相互確証破壊戦略を生みだした。ソ連の崩壊と冷戦の終了とともに、われわれの安全保障環境は根本的な変化を受けた。……
 しかし、ならず者国家とテロリストからの新たな致死的な挑戦が台頭してきた。これらの今日の脅威はいずれも、ソ連がわれわれに対して向けていたまさしく破壊的な力に匹敵するものではない。しかしながら、これらの新たな敵の本性と動機、これまで世界の最強諸国しか入手できなかった破壊力を獲得しようという彼らの決意、そして大量破壊兵器をわれわれに対して使用する確率の高さ、これらが今日の安全保障環境をいっそう複雑かつ危険にしているのである。
 1990年代、われわれは少数のならず者国家の台頭を見てきた。それらは、重要な諸点で異なっているが、多くの共通の特性を有している。それらの国家は――
・ 自国の人民を残虐に扱い、支配者の個人的利益のために国家的資源を浪費し、
・ 国際法にいかなる敬意も払わず、隣国を脅かし、自分が加入している国際条約に平気で違反し、
・ これらの体制の侵略的企図を達成するための脅迫としてあるいは攻撃として使用するために他の先進的な軍事技術とともに大量破壊兵器を取得する決意を持ち、
・ 世界中のテロリズムを後援し、
・ 基本的な人間的価値を拒絶し、米国とそれが守ろうとするあらゆるものを憎んでいる。
 湾岸戦争の時わが国は、イラクの企図がイランと自国民に対してイラクが使用した化学兵器だけに限定されておらず、核兵器と生物学的物質の取得にまで拡大していたという疑いない証拠をつかんだ。過去10年間に、北朝鮮は世界の主要な弾道ミサイル販売者になり、自分の大量破壊兵器を開発するとともに、ますます能力の高いミサイルをテストするようになった。他のならず者国家も、核、生物、化学兵器を求めている。これらの国家の大量破壊兵器の追求、世界的な取引は、すべての国家に迫っている脅威となってきている。
 わが国は、ならず者国家とその支援するテロリストが米国と同盟国・友好国に対して脅迫する前に、あるいは大量破壊兵器を使用する前に、それを阻止する準備を整えておかねばならない。わが国の回答は、同盟強化、かつての敵との新たなパートナーシップの確立、軍事力使用の革新、効果的なミサイル防衛を含む近代的技術をフルに活用することであり、諜報の収集と分析にいっそう重点をおかなければならないということである。
 わが国の大量破壊兵器との包括的な戦いの戦略には、次のことが含まれる。
・ 先回り的な拡散対抗の努力。わが国は、脅威が解き放たれる前に、それを抑止し、それから防衛するべきである。カギになる能力――探知、能動的防御と受動的防御、反撃能力――を、確実にわが国の防衛変革と本土安全保障システムの中に一体化しなければならない。また大量破壊兵器で武装した敵とのいかなる紛争においてもわが国が優勢を確保できるように、わが国と同盟国・友好国の軍のドクトリン、訓練、装備の中に拡散対抗を一体化しなければならない。
・ ならず者国家とテロリストが大量破壊兵器に必要な物質、技術、専門知識を取得することを阻止するための拡散防止の努力の強化。わが国は、大量破壊兵器を求める諸国家とテロリストを阻止する外交、軍備管理、多国間輸出管理、および脅威削減支援を強化し、そして必要な場合には、大量破壊兵器を可能にする技術や原料の禁輸を行う。わが国は、これらの努力を支援する連合の建設を続行し、彼らによる拡散防止と脅威削減プログラムの政治的・財政的支援の拡大を促していく。最近のG8合意で、拡散防止のためのグローバルパートナーシップに200億jにのぼる支援を公約したことは、大きな前進である。
・ テロリストあるいは敵対国家による大量破壊兵器の使用の影響に対して対応するための効果的な結果管理。わが国の人民に対する大量破壊兵器使用の影響を最小限にすることは、敵にその望む結果を得られないことを示すことによって、こうした兵器を所有する者に対して抑止し、またその取得を追求する者を思い止まらせることを助ける。また米国は、海外にあるわが軍に対する大量破壊兵器の使用の影響への対応についても準備し、そして同盟国・友好国が攻撃された場合には助ける準備をしていなければならない。
 この新たな脅威の真の本性についてわれわれが理解するのに10年近くもかかった。ならず者国家とテロリストの目的を考慮すれば、もはや米国は、過去と同じように事後反応的な態勢のみにたよっているわけにはいかなくなっている。潜在的な攻撃者を阻止する能力の欠如、現在の脅威の緊急性、敵の兵器選択いかんで引き起こされる可能性のある被害の大きさなどから見て、事後反応的態勢の選択はゆるされない。われわれは敵に先制攻撃を許すことはできないのだ。
 冷戦時代においては、特にキューバ・ミサイル危機の後では、わが国が直面していたのは、全般的に現状維持的な、リスクを嫌う敵であった。抑止は、効果的な防衛であった。しかし、報復の脅迫にのみもとづく抑止は、自国の人民の生命や自国の富でギャンブルをするリスクを冒す意志を強く持つならず者国家のリーダーに対しては、それほどは効果がないであろう。
・ 冷戦時代においては、大量破壊兵器は、それを使用した者を破壊するリスクがある最後の手段としての兵器だと考えられていた。今日では、わが国の敵は、大量破壊兵器を選択しうる兵器と考えている。ならず者国家にとっては、これらの兵器は、隣国に対する威嚇と軍事侵略の道具である。こうした兵器によってこれらの国が、ならず者国家の侵略行為を抑止ないし撃退しようとする米国と同盟国を脅迫して、それをやめさせようと試みることがありうる。また、このような国は大量破壊兵器を、米国の通常兵器の優越性を乗り越える最良の手段とみている。
・ 抑止という伝統的概念は、むちゃくちゃな破壊と罪のない者を標的にする戦術を公言しているテロリストという敵に対しては、効果がない。彼らのいわゆる兵士は、死の中に殉教を見いだしているし、国をもっていないことが彼らの最強の防御になっている。こうしたテロを支援する国家と大量破壊兵器を追求する国家は重なっているのであるから、われわれは、行動を起こさねばならないのである。
 数世紀のあいだ国際法は、切迫した攻撃の危険に対して、自分たちを守るための行動を合法的に行うことができるまで、攻撃を堪え忍ぶ必要がないことを認めてきた。法律学者、国際法学者はたいてい、先制攻撃の正統性の条件は、切迫した脅威の存在――ほとんどの場合、陸軍、海軍、空軍の攻撃を準備した明白な動員――であるとした。
 われわれは、切迫した脅威という概念を、今日の敵の能力と目的に適合させねばならない。ならず者国家とテロリストは、通常的手段を使ってわれわれを攻撃しようとしているのではない。彼らは、そうした攻撃が失敗することを知っている。そのかわりに、テロ行為や、大量破壊兵器――容易に隠蔽し、秘密に運搬し、警告なしに使用することが可能な兵器――を使用しようとしているのである。
 …
 米国は、わが国の国家安全保障への大きな脅威に対する先制攻撃という選択肢をずっと保持してきた。脅威が大きければ大きいほど、不作為によるリスクは大きい。――そして、たとえ敵の攻撃の時と場所については不確実性が残るとしても、われわれ自身を守るために先行的行動をとる必要性は、切実なものになるのである。敵によるこのような敵対行動の機先を制するため、あるいはそれを予防するために、われわれは、必要な場合には、先制的に行動していく。
 われわれは、台頭しつつある脅威の機先を制するためにはあらゆる場合に戦力を使用するというつもりはないし、また諸国は、侵略の口実として、先制攻撃を用いるべきではないであろう。しかし、文明の敵が公然と積極的に世界で最も破壊的な技術を追求している時代においては、米国は危険が増大しているあいだ無為でいることはできない。われわれは常に、われわれの行動の諸結果を考量しながら、慎重に進んでいく。先制という選択肢を裏づけるために、われわれは次のことを行っていく
・ 脅威がどこで現れてきても、脅威についてのタイムリーで正確な情報を提供するために、より良く、より統合的な諜報能力を建設し、
・ もっとも危険な脅威についての共通の評価を形成するために、同盟国との間で緊密に調整し、
・ 決定的な結果を達成するための迅速で正確な作戦を遂行する力を確保するために、わが軍事力の変革を続行する。
 われわれの行動の目的は常に、米国と同盟国・友好国への特定の脅威の除去である。われわれの行動の理由は鮮明で、戦力は適量であり、大義は正当である。

 第6章 自由市場および自由貿易によるグローバルな経済成長の新時代のスタート(略)…

 第7章 社会の開放と民主主義のインフラストラクチャーの建設による発展の循環の拡大(略)…

 第8章 世界勢力の他の主要な中心との協力行動の課題の策定

 米国は自由を支える力の均衡を促進する能力を持ち、またそれを
望む諸国と、可能な限り広範囲に、連合を組織することによって自国の戦略を実現するだろう。連合を効果的に指導するには、優先課題の明確性、他国の利益の承認、謙遜の精神にのっとったパートナー間の協議が必要である。…
 9月11日の攻撃は、NATO自体が同条約第5条の自衛条項を初めて発動した際に認定したように、NATOに対する攻撃でもあった。NATOの中心的任務である、大西洋をまたぐ民主主義国家の同盟の集団的自衛は現在も変わらないが、NATOは新たな情勢のもとでこの任務を達成するためには、新たな態勢と能力を発展させなければならない。NATOは同盟のメンバーに対する脅威に対処する必要がある場合にはいつでも、機動性の高い、特殊訓練をうけた戦力を即時に展開できる能力を作りださなければならない。
 われわれの利益が脅威にさらされた場合、NATOの独自の権限の下の連合を形成し、あるいは特定の任務に基づく連合に参加して、どこででも行動できなければならない。その達成のために、次のことがなされねばならない。
・われわれの共通利益を守り推進する責任を喜んで引き受ける能力がある民主主義国家を加盟国にすること
・NATO諸国の軍隊が適切な戦闘能力を提供することによって、連合としての戦争が可能になることを保証すること
・これらの提供された戦闘能力が効果的な多国籍軍として実現されるような作戦計画を作りだすこと
・NATOの軍事力を予測されうる侵略者に優越し、われわれの脆弱性を減少させるものに転換するために、われわれの防衛支出における科学技術上の機会と財政的規模を利用すること
・新たな作戦的要請に応え、軍事力の新たな構成に伴う訓練と統合と実験の要求を満たすために、司令系統を簡素化し、その柔軟性を増大させること
・われわれの軍事力の転換と現代化のために必要な措置をとる場合にも、同盟国として協力し共に戦う能力を維持すること…
 9月11日の攻撃は、米国とアジアとの同盟を活性化させた。オーストラリアは世界最精鋭の戦闘部隊の一部を「自由の存続作戦」のために急派するという歴史的決定に続いて、アンザス条約を発動し、9月11日の攻撃はオーストラリア自身への攻撃であると宣言した。日本と韓国は、テロリストの攻撃から数週間以内にかつてないレベルの兵站支援を提供した。…
 テロリズムに対する戦争は、アジアにおける同盟国がこの地域の平和と安定を下支えするだけでなく、柔軟で新たな課題にも対応できる用意ができていることも証明した。アジアにおける同盟と友好関係を強化するために、われわれは以下のことを行う。
・日本に対しては、共通の利益、共通の価値観、密接な防衛・外交上の協力に基づいて、この地域および世界における諸事態に対して指導的な役割を果たし続けることを期待する
・韓国とは、われわれの同盟がこの地域の広範囲にわたる安定に長期間寄与するように準備しながら、北朝鮮に対する警戒を維持するために協力する
・50年間の米豪同盟の上に、||両国が珊瑚海の戦いからトラボラに至る過程で協力してきたように||この地域と世界の諸問題を共同して解決するための協力関係を構築する…
 古いタイプの巨大国間の競争の再現の可能性について、われわれは注意していなければならない。いくつかの潜在的な巨大国――最も重要なものはロシア、インド、中国||が現在、国内的な過渡期にある。この3つのケースのすべてにおいて、最近の動向は、基礎的な原則についての真に世界的なコンセンサスが徐々に形成されるというわれわれの希望に自信を与えてくれるものとなっている。
 ロシアとは、わが国はすでに21世紀の核心的現実に基礎をおいた新たな戦略的関係を構築している。すなわち、米国とロシアはもはや戦略的敵対者ではない。…
 われわれはこれまでの広範囲にわたる協力関係をテロリズムとの世界的な戦いにまで拡大する。…
 米国はインドとの強固な関係がわが国の利益にとって必要であるという確信に基づいて、インドとの二国間関係を変革してきた。…
 米国の中国との関係は、アジア太平洋地域の安定、平和、繁栄を推進するわが国の戦略の重要な一部だ。わが国は、強力で、平和的な、繁栄した中国の台頭を歓迎する。中国の民主的発展は、その将来にとって決定的だ。だが、共産主義の最悪の形態からの脱皮のプロセスが始まってから四分の一世紀が経つのに、中国のリーダーたちはまだ、この国の性格に関する次の根本的諸選択を行っていない。中国はアジア太平洋地域の隣国を脅かしうる先進的な軍事能力を追求しており、自国の国家的な偉大さを結局は阻害することになる時代遅れの道を行っているのだ。やがて中国は、社会的・政治的自由がその偉大さの唯一の源泉であることを見いだすであろう。
 米国は、変わり行く中国との建設的関係を追求していく。われわれはすでに、両国の利害が重なるところでは、協力している。それには、現在のテロリズムとの戦争および朝鮮半島の安定の促進が含まれる。同様に、両国はアフガニスタンの将来について連係してきており、反テロリズムおよび類似した過渡的な懸念について包括的な対話を開始している。…
 これらの国家を越えた脅威への対処は、中国に、情報をもっと公開し、市民社会の発展を促進し、個人の人権を強化することを求めている。中国は、多くの個人的自由を認め、村レベルの選挙を実施して、政治的開放への道をたどりはじめているが、しかし、共産党による全国的な一党支配に強くこだわりつづけている。市民が必要としているものや市民の願いに国家が真に責任をとるようになるためには、まだ多くのことが必要だ。中国の人びとが考え、集まり、自由に礼拝することを認めることによってのみ、中国はその潜在力を完全に発揮しうる。
 われわれの重要な貿易関係は、中国の世界貿易機構(WTO)への加盟によって大きな利益を受ける。それは、輸出機会を拡大し、最終的にはアメリカの農民、労働者及び企業に多くの仕事を作り出す。中国との貿易は、輸出入あわせて年間1000億j以上の額にたっしており、米国の第4番目の貿易相手国だ。市場原理の力と透明性と説明責任というWTOの加盟要件が、中国における開放性と法の支配を推進し、商業と市民に対する基礎的な保護の確立を助けていく。しかしながら、両国の間には、大きな不一致がある領域が存在する。台湾関係法に基づく台湾の自衛へのわが国の誓約が1つであり、また人権があと1つだ。われわれは中国が核不拡散に関与し続けることを期待する。…

 第9章 21世紀の難問と好機に対応するための米国の国家安全保障機構の変革

 米国の国家安全保障の主要な制度は、今の時代とは異なった時代に今とは異なった要請に対応するために設計された。そのすべてが変革されなければならない。
 今こそ、米国の軍事力の重要な役割を再確認すべき時である。われわれは攻撃をしのぐ防衛体制を構築し、維持しなければならない。わが軍の最優先課題はアメリカ合州国を防衛することである。それを効果的に実現するためには、わが軍は以下のことをしなければならない。
・同盟国や友好国を安心させること
・将来の軍事的競争を断念させること
・米国の利益や同盟国、友好国に対する脅威を抑止すること
・抑止できなかった場合に、いかなる敵も決定的に撃破すること
 米軍の比類なき強さと、その前方展開体制は、戦略的に最重要ないくつかの地域において平和を維持してきた。だが、われわれが対決すべき脅威と敵は変化したのであり、わが軍も変化しなければならない。冷戦時代の大規模な軍隊を抑止することを目的とした軍の構造は、いつどこで戦争が開始されるかということよりも、敵がどのような戦いかたをするかに焦点をあてて変革されなければならない。われわれは、作戦上の挑戦を試みる軍隊にうち勝つということにエネルギーを向けなければならない。
 米軍の海外における展開は、同盟国や友好国に対する米国のコミットメントを最も根本的に象徴している。…
 アフガニスタンでの戦争の前には、あの地域は重要な対応計画リストの下位にあった。だが、非常に短期間にあのような遠隔の地にある国の全域で、全軍を動員して作戦を展開しなければならなかった。われわれは最先端の遠隔探知能力、長距離精密攻撃能力、新たな機動作戦、緊急展開部隊などの能力を展開することによって、このような展開行動に備えなければならない。この広範囲の軍事能力には、国土防衛、情報作戦の実施、遠隔地の戦場にアクセスする能力の保証、宇宙空間になる死活的な施設や資産の防衛などが含まれなければならない。
 軍内部における革新は、共同作戦を強化し、米国の諜報活動の優位性を活用し、科学・技術を最大限活用するなどの、戦争に対する新たなアプローチに関する実験を基礎として行われる。同時に、国防省の運営方法、とりわけ財政運営、職員の採用と給与について改革しなければならない。最後に、短期の臨戦態勢と対テロ戦争を戦う能力を維持しつつも、最終目標は、米国や同盟国、友好国に対する侵攻やさまざまな形をとった強要を阻止するために、広範な軍事的選択肢を大統領に与えることでなければならない。
 われわれは抑止できないこともあることを歴史から知っている。抑止されえない敵がいることも経験から知っている。米国は、国家であれ、非国家的存在であれ、米国や同盟国、友好国に対して自分の意志を強要しようとする敵のいかなる企てもうち破る能力を維持しなければならず、また維持するであろう。われわれは自らの責務を果たし、自由を守ることのできる軍事力を維持する。わが軍は、潜在的な敵が米国の力を凌駕したり、匹敵したりすることを期待して軍事力の強化を追求することを断念させるに十分なほど強いものになるであろう。
 われわれは、グローバルな安全保障上の関与と米国民の保護に必要なわが国の努力が、国際刑事裁判所(ICC)による捜査、取調、訴追の可能性によって損なわれことのないよう必要な保障措置をとる。ICCの司法権は米国市民には及ばないし、われわれはそれを受け入れない。われわれは、軍事作戦や協力活動における混乱を避けるために、ICCから米国民を擁護できるような多国間あるいは二国間の機構を通じて、他の諸国と協力して行動する。米国国務要員保護法の規定を完全に実施することによって、米国の職員・公務員の保護とその強化に務める。
 今後1年間以上、国家安全保障に関する政府の支出の適正な水準と配分を確保するために困難な選択をするであろう。…
 わが国のリーダーシップを行使するにあたって、わが国は、友好国やパートナーの価値観、判断、利害を尊重していく。しかし、われわれはわが国の利害と独特の責任のために必要な時には、離れて行動する覚悟がある。細目についての不一致があるときは、率直にわれわれが懸念する理由について説明し、可能な代替案を作り出すよう尽力する。われわれはこのような不一致が、われわれが共有する根本的な利益と価値を同盟国や友好国と共に守ろうする決意をあいまいなものにすることを許さないであろう。
 究極的には、米国の強さの基盤は国内にある。それはわが国民の能力、わが国の経済のダイナミズム、制度の弾力性にある。多様な現代社会は、固有の、野心的で、企業家的なエネルギーがある。われわれの強さは、われわれがこのエネルギーで事を成すところから生まれる。これがわが国の安全保障の出発点である。

 

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