COMMUNE 2003/09/01(No331 p48)

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9月号 (2003年9月1日発行)No331号

定価 315円(本体価格300円)


〈特集〉 米のイラク占領、破産の実態

口苛酷な占領に対するイラク人民の憎悪と怒り
口パレスチナ解放闘争の抹殺狙うロードマップ

●翻訳資料1/ 徹底的断絶―国土保全の新戦略
●翻訳資料2/ 英労組、2委員長に聞く

国際労働運動 イギリス/基幹労組が労働党と全面対決 平岡 保

    7・6関西新空港反対集会

三里塚ドキュメント(6月) 政治・軍事月報(6月)

労働月報(6月)  闘争日誌(5月)

コミューン表紙

  労働者階級の中へ

 イラク派兵法案が日帝軍隊のイラク侵略戦争への参戦でありイラク人民を虐殺する戦争の始まりであることは、ますます明らかになってきている。小泉自身が国会答弁で、「(派兵された)自衛隊員でも民間人でも、野盗や強盗のたぐいに襲われたら殺される可能性はあるかもしれない。相手を殺す場合もないとは言えない」と発言している。日帝が自衛隊を戦闘地域に送り込み、殺し殺される戦闘体験を積ませようとしていることは明らかだ。それを「正当防衛だから、戦闘ではない」と強弁しようとしているのだ。それは、米日帝の北朝鮮侵略戦争の切迫を見据え、周辺事態法、有事3法をもって日帝が実際に侵略戦争に自ら乗り出していくための攻撃の先取りである。自衛隊地上軍のイラク派兵を絶対阻止しなければならない。

 上の小泉発言を始め、この間の政府・自民党の暴言の数々は帝国主義の深刻な危機の中から出てきたものだ。「(創氏改名は朝鮮人が)名字をくれと言ったのがそもそもの始まりだ」(麻生太郎)、「日韓併合は両国が調印して国連が無条件で承認した」(江藤隆美)、「集団レイプする人はまだ元気があるからいい」(太田誠一)、「子どもを一人もつくらない女性が自由をおう歌し、年とって税金で面倒をみなさいというのはおかしい」(森喜朗)などなど。これらの排外主義と差別主義のデマと暴言が、その責任を問われることなくまかり通っているのが今の国会である。日帝の侵略戦争へののめり込みと資本攻勢の激化が、こうした発言を生み出している。それに対する批判は帝国主義そのものの打倒へと向かわなければならない。

 日帝がイラク侵略戦争への参戦を強め、北朝鮮侵略戦争を準備し、まさに戦争に向かって突き進んでいる時、これを内乱に転化し、帝国主義を打倒していくために核心的に何が必要か。労働者、労働組合の決起をつくりだしていくこと、労働者階級に深く根を張った革命党を建設すること、要するにプロレタリア革命の大道を確実に切り開いていくということである。国労5・27臨大闘争弾圧を労働者人民の闘いで粉砕することを軸に、国鉄決戦を闘い、全逓、自治労、教育労働者の4大産別決戦を闘い、資本攻勢をはね返す闘いを闘って、連合中央、全労連中央の裏切りと屈服をのりこえて、闘う労働者の総結集をかちとらなければならない。4日間にわたる春闘ストライキを闘った動労千葉に学び、連帯する運動が求められている。

 日本共産党が11月の23回大会で、綱領を改定しようとしている。革命の放棄、帝国主義との闘いの放棄を徹底させ、階級政党ではなく国民政党であることを宣言する、徹底的な反マルクス主義、反共産主義の綱領の完成と言える。とりわけ、資本家階級との非和解的対立を踏まえた労働者階級の階級的闘いの要素を完全に一掃してしまったことはおそるべきことである。自衛隊を容認し、天皇制との共存も鮮明にすることで、ブルジョア支配階級にとって自らが徹底的に無害な存在であることをアピールしようとしている。社会主義・共産主義も、革命なしに、国家権力の打倒と粉砕なしに実現するものとして描かれている。日共中央は、こうすることで支持を広げられるともくろんでいる。だが、現実の侵略戦争と大資本攻勢に怒りを高めている労働者階級の支持は確実に失うであろう。われわれにとっては大きなチャンスである。(た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

 ●翻訳資料 1

 『徹底的断絶―国土保全の新戦略』

 1996年7月 イスラエル上級政治・戦略研究所

 村上和幸訳 

【解説】

 この文書は、96年に出されたが、現在の情勢の中で再び全世界で論議の的となっている。
 文書の作成者たちはウォルフォウィッツ国防副長官らとともに、ネオコンザーバティブ(新保守主義者)と呼ばれる。90年代のブッシュ政権実現運動を担い、現政権成立後は、その中枢に入った。
 作成者の筆頭、パールは、国防諮問委員会の議長となり軍事戦略と国防省と軍の再編の先頭に立った(最近、腐敗を追及されて辞任)。ファイスは国防省ナンバー3=政策担当国防次官だ。

 世界支配の要=イスラエル

 報告書はすでに96年に、先制戦略、イラク侵略戦争への衝動と、現在の「中東自由貿易圏」、「ロードマップ」の方向を示している。
 そして、この報告書は、イスラエルの研究所から出された。作成者は、イスラエルと密接な関係にある者ばかりだ。パールはイスラエル軍需企業の取締役であり、ネタニヤフ首相の登場に際して、選挙対策を取り仕切った。
 こうしたことから、新保守主義勢力が中枢を占めるブッシュ政権を、イスラエルのためにイラク戦争などを行っているという見方が流布されている。だが、これは事態を逆転させた見方だ。アメリカ帝国主義の世界支配にとって、イスラエルは死活的なのだ。イスラエルは、世界の中でも稀な、最大級に重大な戦略的位置にある。
 第一に、他では代替不能な巨大産油地帯に位置している。第二に、帝国主義の勢力圏をめぐる争闘の要衝だ。中東自体が勢力圏として重大であり、また最大の市場であるアジアへの欧州からの出口だ。
 そして第三に、イスラエル建国の基礎であるシオニスト運動は、ロシア革命はじめ、世界の革命運動に重要な役割を果たしてきたユダヤ人の闘いを歪曲・破壊し、反革命に組織する役割がある。
 シオニズム・イスラエル国家は、帝国主義に手厚く援助されつつも相対的に独自なイデオロギッシュな運動だからこそ、民族解放闘争の噴出する中東での帝国主義支配の最先兵の役割を担い得たのだ。
 だから、大恐慌、世界支配崩壊の危機にあえぐ米帝にとってイスラエルは死活的な戦略拠点なのだ。イスラエルのすさまじい凶暴性によって中東の諸勢力に打撃を与え、圧迫することなしに、米帝の中東支配は成立しない。

 中東支配の破産

 この報告書は、これまでの米帝のイスラエル・中東政策の全面的破綻の恐怖から出発している。
 従来イスラエルの主流だった労働党は、名称から想像されるものとは逆に極右だ。ネタニヤフの前の労働党政権の首相=ラビンは、建国前はハガナというシオニスト軍事組織に属し、パレスチナ人の組織的な虐殺・追放作戦を行った人物だ。67年の第三次中東戦争では参謀総長としてイスラエル軍を指揮し、現在も続くゴラン高原、西岸・ガザ地区占領を行った。
 この報告書は、この極右「労働党シオニズム」さえ超える凶暴性を要求しているのだ。
 93年のオスロ合意でPLOアラファト執行部を屈服させ、ペテン的「和平」に引き込んだものの、パレスチナ人民の不屈の闘いが続いた。そのため、もくろまれていたエジプトなどとの経済圏構想は吹き飛び、イスラエル経済危機はさらに深刻化した
 そして、パレスチナ人民の不屈の決起とそれへの凶暴な弾圧に、イスラエル社会も動揺し、デモや兵士の不服従が広がった。世代交代とともにシオニズムのイデオロギーが後退し、新しい世代の中からはシオニズムの史料を掘り起こし、表向きの宣伝とは違う、パレスチナ人民を計画的に虐殺し、一般のユダヤ人をナチスに売り渡してきたシオニスト指導者たちの犯罪を当人たちの生々しい発言などを通して暴く動きも出てきた。イデオロギー国家としてのイスラエルにとって重大事態だ。

 展望なき中東支配再編

 報告書は、「土地と平和の交換」の考え方を破棄し、シオニズムの「理想」の実現、つまり際限なき領土拡大=大イスラエル建設の権利を宣言している。その一方で、ヨルダンと「緊密な協力」を行うという。領土を奪う宣言をしながら協力させるとは虫が良すぎる。
 イラクのシーア派との協力という構想なども、実現性がないことは同様だ。トルコとの協力をもくろんでも、その反動的な政府に対して労働者人民、クルド人が不屈に闘っている。またトルコは米帝・EU帝間の争闘戦の渦中にあり、反動的政府でも米・イスラエルの意のままにはならない。
 米帝・イスラエルは、見込みがなくても、こんな路線を出さざるをえない。この報告書の路線が今のブッシュ政権の中東政策にほとんど採用されている。米帝の中東再植民地化の破産は必至だ。闘う中東人民と連帯し、米日帝国主義の中東侵略を国際的内乱に転化しよう。
【原文の強調個所は太字にした。〔 〕内は訳者による】

………………………………………

 徹底的断絶 ― 国土保全の新戦略

 以下は、 IASPS(上級戦略政治研究所)の「2000年に向けてのイスラエル新戦略研究グループ」が作成した報告書である。本報告書の中の主要な考え方は、リチャード・パール、ジェームズ・コルバート、チャールズ・フェアバンクス・ジュニア、ダグラス・ファイス、ロバート・ローウェンバーグ、デービッド・ワーマー、メイラフ・ワーマーを始めとする卓越した世論指導者が参加した討議から生まれた。「徹底的断絶 ― 国土保全の新戦略」は、今後の一連の研究報告の枠組みとなるものである。
 イスラエルは、大きな問題を抱えている。労働党シオニズムは70年間もシオニズム運動を支配し、停滞し、束縛された経済を生みだした。イスラエルの社会主義的な諸機構を救い出そうとする試み――これには、国家主権よりも超国家的なものを優先させ、「新たな中東」のスローガンを掲げた和平プロセスを追求することも含む――は、国家の正統性を掘り崩し、イスラエルを戦略的無力状態に陥れた。この和平プロセスは、国家の戦略臨界量(※)の浸食の証拠――明らかな国家的疲弊を含む――を押し隠し、また戦略的主導権が失わせた。首都についての主権の取引に合意し、また多発するテロで、イスラエル人がバス通勤通学といった通常の日常生活さえ大変になっている悲惨な事態への屈服などの国内で不人気な諸政策を売り込むために、米国にすり寄っていくやり方に、この国家の臨界量の喪失が、もっともよく示されている。〔※臨界量 原爆などに使う核反応物質が連鎖反応するのに最小限必要な量。ここでは比喩的に、イスラエルの延命に必要な最小限の戦略的な力を指す〕
 ベンヤミン・ネタニヤフの政権は、新たな思考をもって登場した。連続性を求める者もいるが、イスラエルは徹底的断絶を行う機会を得たのだ。つまり、まったく新たな知的基礎にもとづいた和平プロセスと戦略を作ることができるのだ。それによってイスラエルは戦略的主導権を回復し、シオニズム再建に国民があらゆるエネルギーを投入する余裕が得られる。出発点は経済改革だ。国の街頭、国境を今後すぐに安全にするために、イスラエルは次のことを行うことができる。
 ▽トルコおよびヨルダンと緊密に協力し、もっとも危険な諸脅威勢力を不安定化し、撃退すること。これは、「包括的和平」のスローガンから徹底的に断絶し、力の均衡にもとづく伝統的戦略概念に戻ることを意味する。
 ▽パレスチナ人との関係の性格を変更すること。これには、すべてのパレスチナ地域への緊急越境追跡権を堅持すること、およびパレスチナ社会に対するアラファトの独占的な支配に代わるものを育成していくことも含まれる。
 ▽米国との関係の新たな基礎の形成。自力、成熟、相互の利害にかかわる領域における戦略的協力に重点を置き、゛西″の本来の価値観を推進する。これは、イスラエルが、経済改革を妨げている援助を終わらせる真剣な措置をとることによって、初めて可能になる。
 本報告では、カギになる個所に<草稿>という印を付けた。これは、今後の演説に使える文章であり、新政権が徹底的断絶を行うチャンスを有していることを示す所だ。報告書の本文は、これらの文章がわれわれの戦略の脈絡の中でどのような目的を有するのか、どう位置づけられるのかを説明する。

 和平への新たなアプローチ

 新首相は、和平と安全保障についての大胆な新展望の採用を早急に行うことが不可欠だ。前政権や他の多くの外国が「土地と平和の交換」を強く支持してきたが、それはイスラエルを文化・経済・政治・外交・軍事的に後退させた。しかし、新政権は、°西″の価値観と伝統を推進することができる。こうしたアプローチは、米国に歓迎されていくであろう。それは、「平和と平和の交換」であり「力による平和」であり、自力主義だ。つまり、力の均衡なのだ。
 主導権をつかむための次のような新戦略が導入できる。
 〈草稿〉
 われわれは4年間、「新中東」にもとづく和平を追求してきた。われわれイスラエル人は、この無垢でない世界において、海外向けに無垢を演じることはできない。和平は、われわれの敵の性格と行為にかかっている。われわれは、弱体な諸国家と激しい対立がある、危険な地域に生活している。ユダヤ人国家の建設の努力と「土地と平和の交換」の取引によってそれを無に帰す意図との間でどっちつかずの態度を示すことは、「ピース・ナウ〔直ちに平和〕」を確保することにはならない。われわれが土地を権利として主張することは、2000年にわたってすがってきた希望であり、正統性があり、崇高なことだ。「一方的に和平を行う」ことは、どれほどわれわれが譲歩しようとも、われわれ自身の力でできることではない。われわれの権利をアラブが無条件――特に彼らの領土の大きさにおいて――に承認することのみが、「平和と平和の交換」のみが、将来の堅固な基礎となる。
 イスラエルの平和追求は、その理想から生まれるものであって、理想に代わるものではない。自分自身の土地に自由に住むという2000年来の夢によってアイデンティティーに焼き付いているユダヤ人民の人権への希求は、平和の概念というものを示しており、また°西″の伝統とユダヤの伝統の連続性を示している。イスラエルは現在、交渉を受け入れうるが、それは手段で、目的ではない。その理想を追求し、国家の堅忍不抜性を示す手段なのだ。イスラエルは、警察国家に対して挑戦し、協定を順守させ、情報公開の最小基準を主張することができる。

 北側国境の安全確保

 シリアは、レバノンの国土においてイスラエルに挑戦している。効果的なアプローチであって、かつ米国が同調しうるものは、イスラエルが北側国境沿いで戦略的主導権を取り、ヒズボラ、シリア、イランと交戦していくことであろう。この三者は、レバノンにおける侵略行為の主な担い手だ。この交戦には、次のことが含まれる。
 ▽レバノンにおけるシリアの薬物資金と偽造インフラを叩く。それらはすべて、ラジ・カナンに集中している。
 ▽シリア領土も攻撃からまぬかれないという前例を作って、シリアの行為に対抗する。この攻撃は、レバノンからイスラエルの代理勢力によって行う。
 ▽レバノンにおけるシリアの軍事目標を攻撃する。これが不十分だとわかった場合は、シリア自体の目標を選択的に攻撃する。
 また、イスラエルは、この機会にシリアの体制の性格を世界に思い起こさせることができる。シリアは繰り返し約束を破っている。トルコとの多くの協定に違反し、また89年のタイフ協定に違反してレバノンを占領しつづけて米国を裏切っている。不正選挙を行い、カイライ政権を作り、91年にレバノンに「同胞協定」への署名を強要し、レバノンの主権を奪った。そして数十万人のシリア人によってレバノンを植民地化し、ハマで自国の何万もの市民をたったの3日間に一挙に殺害した。
 シリアのうしろだてで、レバノンの薬物取引は繁盛している。シリア軍将校は目こぼし料をとっている。シリアの体制は、レバノンとシリア内でテロリストグループに作戦的・資金的支援をしている。シリア支配下のベカー・バレーは、シリコン・バレーがコンピュータ産業地帯であるように、テロ地帯となってきた。ベカー・バレーは100ドル札の最大の集散地になってきた。この米国通貨の偽札は、非常に出来が良く、見破ることができないほどだ。
 〈草稿〉
 シリアの抑圧的体制との交渉には慎重なリアリズムが必要だ。相手の善意を前提にするのは賢明でない。自国の人民の殺害、隣国の公然たる侵略、国際薬物密売や通貨偽造の犯罪との関係、最も恐ろしいテロリスト組織への支援をする体制とのナイーブな取り引きは、イスラエルにとって危険だ。
 ダマスカスの体制の性格を考えれば、イスラエルが「包括的和平」のスローガンを放棄し、シリアの大量破壊兵器開発計画に関心を集中させ、シリア封じ込めに移行し、ゴラン高原についての「土地と平和の交換」を拒否することは、当然かつ道徳的だ。

 伝統的な力の均衡戦略への移行

 〈草稿〉
 敵と味方を冷静かつ明白に区別すべきだ。中東全域の味方が、われわれの友好の堅固さや価値をけっして疑わないように、手段を講じなければならない。
 イスラエルは、トルコおよびヨルダンと協力し、シリアを弱体化し、封じ込め、さらに後退させることによって、戦略的環境を作ることができる。この作業においては、サダム・フセインのイラクの権力からの取り除き――これはイスラエル自身の重要な戦略目的だ――を、シリアの地域的野望をうち砕く手段として焦点にしうる。ヨルダンは最近、イラクにおけるハーシム家〔旧イラク王家〕復興を示唆し、シリアの地理的野望に対して挑戦した。これがヨルダンとシリアの対立に火を付け、アサドは浸透作戦などを使って、〔ヨルダンの〕ハーシム王朝の不安定化を強めた。シリアは最近、シリアとイランにとっては、弱体だがかろうじて延命しているサダムのほうがましだと述べ、ヨルダンがサダムを取り除こうとする目論見を砕き、侮辱した。
 しかし、シリアは潜在的弱点を抱えている。地域の新たな難題への対処に忙殺されすぎて、レバノンで活動できないのだ。そして、イスラエルとの「自然な枢軸」が一方にあり、中央イラクとトルコが他方にあり、中央にはヨルダンがあって、シリアが締め付けられ、サウジ半島から切り離されるのを恐れている。
 イラクの行方は中東の戦略的均衡に深い影響を与えるのであるから、ハーシム家のイラク再定義の努力への支援がイスラエルの利益であることは明白だ。たとえば、ネタニヤフ新政権が、米国訪問にさえ先だってヨルダンを最初の公式訪問国とすること、具体的な安全保障措置によってシリアの転覆策から守ることによって、フセイン国王を支援すること、米国の経済界の影響力を使ってヨルダンへの投資を促進し、ヨルダン経済をイラクへの依存から構造的にシフトさせること、レバノンの反対派を使ってシリアのレバノン支配の不安定化を行い、シリアの注意をそらせることなどだ。
 もっとも重要なことは、トルコとヨルダンのシリアに対する行動を外交・軍事・作戦的に支援することだ。たとえば、シリアとの国境にまたがっていてシリアの支配層に敵対的なアラブ諸部族の部族連合に安全保障を与えることだ。
 フセイン国王は、イスラエルのためにレバノン問題をコントロールするアイデアを提供できるであろう。南レバノンで多数を占めるシーア派住民は、数世紀にわたり、イランよりイラクのナジャフのシーア派指導者とつながってきた。ハーシム家がイラクを支配すれば、ナジャフへの影響力を使ってイスラエルが南レバノンのシーア派をヒズボラ、イラン、シリアから引き離すことを助けられる。シーア派は、ハーシム家と強いつながりを持っている。シーア派は、預言者の直系家族系をなによりも尊崇するのであり、フセイン国王はそれに属するのだ。

 パレスチナ人との関係の性格の変更

 イスラエルには、イスラエルとパレスチナ人との間の新たな関係を作るチャンスがある。まず第一に、イスラエルの街頭の安全保障には、パレスチナ人支配地域への緊急越境追跡が必要だ。これは、正当化できる行為であり、米国人が同調しうるものだ。
 和平のカギとなる要素は、すでに署名された協定の順守だ。したがって、イスラエルは、オリエントハウス〔PLO本部が置かれている東エルサレムにある建物〕の閉鎖とエルサレムにおけるジブリル・ルジュブ機関〔治安機関〕の解体を含む、協定順守を迫る権利を有する。さらに、イスラエルと米国は、PLOが最低限の順守基準、職権と責任、人権並びに司法で信頼に足る説明責任基準を満たしているかどうかを定期的に検証するための合同順守監視委員会を設立することができる。
 〈草稿〉
 われわれは、パレスチナ当局が米国の対外援助を受けている他の国と同じ説明責任の最低基準を守る必要があると信じている。堅固な平和には、弾圧と不正義があってはならない。自分の人民に対してもっとも初歩的な義務を果たせない体制は、その隣国に対する義務を果たせると期待するわけにはいかない。
 PLOが義務をはたさないなら、イスラエルはオスロ合意に定められた義務を有しない。もし、PLOがこれらの最低限の基準を順守できないなら、PLOは将来に対する希望も持てなければ、また現在、対話を行うこともできない。それを準備するために、イスラエルはアラファトの権力基盤に代わるものを養成することを望んでいる。ヨルダンは、それについてのアイデアを持っている。
 イスラエルがアラブ人民ではなくPLOの行動に問題があると見ている点を強調するために、イスラエルは味方には特別な報償を与え、アラブ人の間での人権を推進する努力をすることを希望している。多くのアラブ人はイスラエルに協力しようとしている。彼らを特定し、彼らを援助することは重要だ。ヨルダンなど、多くの隣国がアラファトとの間で問題を抱えており、〔イスラエルとの〕協力を望んでいる。イスラエルも、自国のアラブ人をもっと融合させることを望んでいる。

 新たな米・イスラエル関係の形成

 近年、イスラエルは、イスラエルの内政・対外政策へのアメリカの積極的な介入を要請してきた。それには2つの理由がある。一つは、「土地と平和の交換」というイスラエル世論が飲めない譲歩に対する国内の反対勢力を抑えるため、一つは、資金、過去の罪の赦免、米国の兵器の供給を通じて、アラブ人を交渉に誘うためだ。この戦略は、米国の資金を抑圧的・侵略的体制に注入することを必要とし、リスクが高く、費用がかかり、米国にとってもイスラエルにとっても非常に犠牲が大きかった。
 イスラエルは、過去からの徹底的断絶を行い、自立、成熟および相互性にもとづいた米・イスラエルのパートナーシップの新たな展望をうち立てることができる。両国のパートナーシップは、領土紛争のみを焦点にした狭いものであるべきではない。力による平和という〔両国の〕共通の哲学にもとづくイスラエルの新戦略は、イスラエルが自立しておりイスラエル防衛のためには米軍部隊を必要としない――ゴラン高原においても――こと、そして自分の問題は自分で管理できることを強調していて、“西”の価値との連続性を反映しているのだ。こうした自立は、イスラエルに大きな行動の自由を与えるものであり、過去にイスラエルに対してかけられてきた圧力を除去するであろう。
 この点をさらに強化するため、首相は、〔米国〕訪問の時に、イスラエルは今や十分に成熟しており、今すぐ、少なくとも米国の経済援助なしに、または少なくとも債務保証なしにやっていけると言明することができる。これらが経済改革を阻害しているのだ。(軍事援助は、現在は、供給問題に対処できることが保証される十分な取り決めがなされるまでは、別個のものとされる)。本研究所の別の報告書で述べられているように、イスラエルは、段階的ではなく、大胆に一挙に経済自由化、減税、自由加工地域についての再立法、公有地・公有企業の売却を行うことによってのみ、自立できる。こうした措置は、下院議長ニュート・ギングリッチを始めとする広範な共和・民主両党の親イスラエルの枢要なリーダーに感銘を与え、支持を集めるであろう。
 このような条件の下でイスラエルは米国との協力を改善し、この地域と°西″の安全保障に対する真の脅威に対抗できる。ネタニヤフ氏は、弱体で遠く離れた軍さえも両国にもたらしうるミサイルによる脅迫の脅威を取り除くために、ミサイル防衛について米国といっそう緊密に協力したいという彼の希望を強調することができる。こうしたミサイル防衛についての協力は、イスラエルの延命に対する物理的脅威に対抗するだけではなく、イスラエルについてあまり知らないがミサイル防衛については大きな関心を持っている多くの米国会議員の間にイスラエルの支持基盤を広げることにもなる。この広範な支持は、在イスラエル米大使館をエルサレムに移転する助けになるであろう。
 米国の反応を見越し、そうした反応を制御・抑制するために、ネタニヤフ首相はその政策を定式化し、アメリカ人になじんだ言葉で彼の述べたい主目標を強調することができる。冷戦期には、こうしてアメリカの諸政権の主目標をイスラエルは活用できたのだ。イスラエルが、アメリカ人の良好な反応を必要とするある種の提案について、それが得られるか否かをテストしようと望むのなら、もっとも良い時期は96年11月前だ。

 結論 ―イスラエル・アラブ紛争を越えて

 〈草稿〉
 イスラエルは敵を封じ込めるだけではない。それを越えていく。
 アラブの著名な知識人たちは、イスラエルが七転八倒しており、国家的アイデンティティーを失っていると感じていると頻繁に書いている。このように感じられていることが、攻撃を招き、イスラエルが真の平和を達成することを阻害し、イスラエルを破壊する者に希望を与えている。したがって、以前の戦略は、中東の新たなアラブ・イスラエル戦争に導くものだったのだ。イスラエルの新たな取り組みは、疲弊を前提にした政策を放棄することによって、また報復だけにとどまるのではなく、先制の原則を再確立することによって、そして報復なしに国民への打撃を受け入れることを止めることによって、徹底的断絶を知らしめることができるのだ。
 イスラエルの新たな戦略的取り組みは、イスラエルのエネルギーの焦点をもっとも必要な所に戻す余地を与える地域環境を形成することができる。すなわち、イスラエルの社会主義的な基盤をもっと健全な基盤に置き換えることによって、国家思想を若返らせること、そして国家の延命を脅かしている「疲弊」に打ち勝つことだ。
 最終的には、イスラエルは紛争への戦争による対処以上のことを行いうる。いかに大量の兵器や勝利も、イスラエルが望む平和は作れない。イスラエルが健全な経済基盤の上に立てば、そして自由で、力強く、国内的に健全であれば、もはや単にアラブ・イスラエル紛争に対処するだけではなく、それを越えていくであろう。ある有力なイラク反対派リーダーが最近述べたように、「イスラエルは、道徳的・知的リーダーシップを再活性化し、若返らせるべきだ。それは中東の歴史の中で、最も重要な要素ではないまでも、重要な諸要素のひとつである」。誇りをもち、豊かで、堅固で、強力なイスラエルは真に新たで平和な中東の基礎となるであろう。

 

翻訳資料

 翻訳資料-2

 英、2労組委員長に聞く

【解説】

 イギリスの通信労組(CWU、28万人)と公共・商業労組(PCS、29万人)の各委員長へのインタビューを紹介する。社会主義労働者党の『ソーシャリスト・ワーカー』紙に掲載されたものだ。
 昨年から今年冬にかけて、200万の反戦デモにまで発展したイギリス階級闘争は、今、一方でイラク占領反対、民営化、福祉・医療破壊阻止闘争に決起しつつ、各労組の大会や執行部選挙をたたかっている。昨年は、イギリス第2、第3の巨大労組AmicusやTGWUで左派がブレア派の候補を破ったが、今年はそれが地滑り的に進んだ。この中で今、階級的労働運動は、次の飛躍をめざしている。

 ビリー・ヘインズCWU委員長

 ――反戦闘争が拡大し、左翼のチャンスが大きくなったことをどう見ていますか。
 反戦闘争はイギリスの政治を変え、新しい世代の活動家を作りました。社会主義的な活動、運動への参加の意欲がある。こういう抗議運動に来ているうちの組合員は、ベテラン活動家だけじゃありません。反戦運動でも反グローバル化運動でも、新しいレベルの活動になっています。平和のための運動と世界的な正義のための運動が、ほとんど同じになっている。
 労組の反戦運動への参加度は、ベトナム戦争時と比べてもはるかに高くなっています。
 ――この成功を踏まえて、どう前進していくべきでしょうか。
 戦争中に作った運動の構造を今、深化、発展させるべきです。一つの任務は、イラク占領を終わらせ、中東に正義の平和を実現することです。反グローバル化運動、反帝国主義運動とさらに結合を深めることができるようになっています。
 皆が合意できるある種の政治綱領が必要です。われわれには想像力と柔軟性が必要です。
 広範な運動を束ねることは可能です。しかし、左翼は伝統的に一緒にやっていかないということのエキスパートですね。社会主義連合でも、労働党内左派でもそうです。われわれは、見せ場は作りますが、その後分裂してしまいます。
 私は、個別の問題について、喜んで労働党の中の人とも外の人とも一緒にやっていこうと思っています。それが実践的で、いい政策です。今、ブレアが本当に弱体になっていますから、これが緊急に必要なんです。左翼にとって非常に実り豊かな時になるでしょう。
 大量破壊兵器〔のウソ〕の問題に政府は悩まされています。おそらく59年のスエズ戦争の時に匹敵します。イーデン首相は、スエズの後ですぐには辞任しませんでしたが、その問題は、あらゆる問題を規定する分水嶺になりました。
 ――労働党の外に左翼的な代替政党を作るべきだという人がいますが、どう思いますか。
 私は、社会主義者の任務は、労働党を矯正し、労働組合と労働者の課題を反映する政治を取り戻すことだと、強い信念を持っています。その他のことが実行できるとは信じられません。
 実際、ウェールズでは、労働党がもっと左の政策体系を持っていて、国民健康サービス病院制度への攻撃などに反対し、年金受給者や「障害者」の交通費無料化などで有権者の支持を受けています。
 現在のブレア主義の弱点は、労組が自分たちに必要な種類の労働党を作るチャンスを持ってしまっているということです。ギャロウェイ〔労働党国会議員、反戦運動の先頭に立って処分された〕のような人が政治的にも個人的にもフラストレーションを感じることは理解します。CWU大会は、彼の処分撤回を要求しました。
 労働党の外の左翼は、この結合を断ち切ろうというプレッシャーが別の側から非常に強力に来ていることに注目すべきです。公的資金の問題をめぐってです。
 それは、労組と労働党のリンクを壊し、経済問題と政治的活動を結合するという非常に重要な思想を破壊してしまうでしょう。労組が単純に労働党から脱退して、社会民主党とか社会党に加盟できるという考えには同意できません。
 われわれは、労働党内で民主的変化を勝ち取れます。Unison労組は、現行の党内民主主義は、実行不可能だからそれを変えるべきだと言っています。CWUも他の労組も同じ意見だと思います。デーブ・プレンティス〔Unison〕、トニー・ウッドリー〔TGWU〕、デレク・シンプソン〔AMICUS〕の言っていることを聞けば、労組が協力して政治的要求を通すチャンスがあることがわかると思います。
 しかし、みなが私と同じ意見ではないことも知っています。労組運動でももっと広い政治的な場でも、運動をセクト的ではなく、統一戦線で一緒にやっていくことが重要だということは強調したいと思います。
 ――諸労組では今、何がおこっていますか。
 左翼指導者が選出されていることは、もっと広い変化の一部です。政治支配者たちは、掌握力を次々に失っています。労組運動でもそうだということです。
 労働者は、「不安定の時代」に反応しているのです。雇用をもっと安定させること、企業をもっと規制することを望んでいます。執行部選の立候補者は、ブレア・プロジェクトを支持するとは口にできません。自殺行為ですから。それが労組内の雰囲気です。
 ――消防士労組のストは、〔ブレアへの〕「非協力者」たち、特にギルクリスト〔同労組委員長〕にとって試練でした。このストの結果をどう評価しますか
 全面的な政治的取り組みと統一行動の必要性を示しています。この解決について詳細はまだ検討できていませんが、敗北ではないでしょう。確かに「近代化」の問題があることは明らかですが、大きな賃上げがあります。闘いは終わっていません。地域の消防署の閉鎖問題や、雇用、サービス削減では、次のラウンドがあります。
 TUC〔「労働組合会議」、ナショナルセンター〕は、消防サービスを守る闘いの一部になるべきです。実際、CWUは支部レベルで、消防署とサービスの防衛で共闘しています。
 このストは、労働党大臣に公正な和解を依存するのでは不十分だということを示しました。誰が自分の味方かを知らなければなりません。TUCはもっと積極的に動員する役割を果たすべきです。TUCが一致して消防士を支持したこと、戦争に反対したことは注目すべきです。
 しかし行動には移さなかった。TUCが反戦行動に参加しなかったのは誤りです。……
 私は開戦直前に欧州TUCでドイツにいましたが、ドイツ郵便労働者が15分間の労働停止で反戦抗議をしました。イギリスでもやるべきでした。できたはずです。左翼の組合活動家として、われわれは政治問題を取り上げる必要がありますが、日常的問題といわれることにも取り組むべきです。
 たとえば、われわれは組合員のスト投票をやって、郵便局の現金取扱いの外注化を止めました。われわれは、グローバル化という全般的問題と新自由主義が電信・郵便労働者にとって何を意味するかということを結びつけることができます。たとえば、ブリティッシュテレコムの仕事がインドに行くという問題があります。
 われわれは、BNP〔英国民党=ネオファシスト〕と戦うとともに、ブロードバンド接続が市場に委ねられることなどとも戦う必要があります。われわれは時々勝てます。意気消沈すべきではありません。戦争は起こりましたが、米軍は犠牲に直面しています。イラクはますます不安定化しています。
 権力にある人たちは、見かけほど強くはない。われわれは、強力な敵を前にしていますが、彼らは無敗ではない。われわれは影響を与えられるし、圧力を加え続けねばなりません。

 マーク・サーウォトカPCS委員長

 ――反戦運動で、われわれにはどんなタイプの政治組織が必要かという論議がもちあがりました。労働党の矯正が必要だという人がいます。どう考えますか。
 反戦運動は巨大でした。イギリス史上最大のデモを3つ経験しました。労組員、年金生活者、運動家、様々な政治をしている人々、ムスリム社会の人々を団結させました。デモは真の政治的チャンスをもたらしています。全員が社会主義的政治に引きつけられたという意味ではありません。しかし、多くの部分がそうなったといえるでしょう。われわれは、これをどう活用したら良いのでしょうか。
 労働党を矯正しようとしている人の健闘を祈りますが、私自身はやりません。それが成功するとは思えないんです。70年代、80年代には、おそらく、労働党内で闘っていた人は、その時は非常にうまくいっていると思っていたに違いありません。しかし現在労働党を矯正できるわずかな可能性でもあるという証拠が私には見えません。今こそ、枠を破る力をさらに増大させ、労働党の左に代替党を示すべきだと思います。
 この問題は、労組運動の中にいる人々、そして今までどの党にも属してこなかった人々に提起すべき問題だと思います。こういう人々は、この国の政治の無益性を見てきました。労働党政府が人民の意志を無視し、戦争しました。何か別のものを求めているんです。
 スコットランドでは、イギリスの他の地方に比べ、このプロジェクトがはるかに進んでいます。スコットランド社会党は驚異的です。労働党の外に代替物はありえないというウソを完全に暴きました。
 この党は、6人のスコットランド議会議員を持っています。これは、スコットランドの労組から支持を集めるのに、非常に広い基盤になるのです。イングランドでは、社会主義連合があります。これが、私が支持しているプロジェクトです。しかし、これも前進のためには真剣に針路を検討すべき段階にきています。
 選挙結果には失望した所もあります。プレストンの市議会選では勝ちました。ハックニーの市長選はいい結果でした。しかし、もっと進めるべきです。私は、社会主義連合がもっとアピールを広げることがカギだと思います。
 労働党議長マッカートニーが労組の党との関係の切断についての論議はつぶされて、すべてうまくいっていると自慢していました。奇妙な情勢判断です。RMT〔鉄道海運運輸労組〕やFBU〔消防士労組〕などには、労働党との関係を根本的に変えようという強力な動きがあります。
 他の労組は、関係を維持しようとしています。UnisonやCWUの中では現在、非常に健全な論議が行われています。
 社会主義連合が他の左翼に対して、より広範なレベルの支持を得られる選挙連合をする可能性があるか否か検討するよう呼びかけていることに私は賛成です。
 ――イギリスの労働者の雰囲気を、どう考えていますか
 ほんとうに沸騰しています。これから怒りの爆発があったとしても、私は驚きません。
 公共部門の年金への攻撃、民間部門の年金問題では、大闘争・大争議に労働者が引きつけられるでしょう。PCS組合員は、年金で立ち上がっています。組合集会に来たことがなかった人が、組合が年金で何をやろうとしているのか知りたくて来たというエピソードなどが多くあります。公共サービス部門では民営化と賃金問題が、爆発的な情勢になっています。
 Amicus労組ではデレク・シンプソン委員長が一週間で1万3千の職が失われたと言いました。この率では、製造業は09年には消滅です。保守党政権時代より多くの公務員が民営化で脅かされています。うちの組合では、民営化された組合員の4人に1人しか最終的に給与年金が得られません。
 …… 攻撃は、政府の側の統一戦線から来ています。労組は、統一した反撃が必要です。消防士についていえば、断固とした行動で、FBU内と労働運動全体からの支持がありました。
 FBUが経験したことは、国家の総力がFBUに襲いかかってきたということです。彼らは1つか2つの獲得物を得て、解決しました。望んだすべては得られませんでしたが、無傷で生き延び、粉砕はされませんでした。組合員は、組合が大争議戦を戦うことを期待していますが、私は、消防士労組への扱いは、政治問題を提起していると思います。組合員は、自分の組合がなぜ、公共部門労働者をこんなめに合わせる党に拠金するのか知りたがっています。
 ――これが労組の左翼指導者にとって何を意味すると思いますか。
 たとえば私は、2000年12月にPCSの委員長に選ばれました。それから右派のクーデターを経験し、たいへんな裁判もしました。私は今、委員長のポストを固めました。そして、全国執行委選の結果を待っているところです。長い年月の間で今が最高の展望がある時期です。期待が膨らんでいます。
 左翼指導者を選ぶということは、人々が現在の状況に抗議し、指導者にもっとやってくれと要求しているということです。TUCについては、左翼が定期的に戦術と戦略を討議するために会合するのが良いと思います。産別戦線で、統一戦略を持つべきです。
 PCSは現在、Unisonと公共サービス防衛の共闘について話しています。私の展望では、下から、小さい事務所から地域的規模に広げていくことです。そうやって闘争を一緒にやっていく。
 労働党が、人々を分断させる路線であることははっきりしています。私やボブ・クロー〔RMT委員長〕は、労組の役割は労働党を支えることではなく、組合員のために労働党に反対することだという意見をますます固めています。この違いについては、論議する必要があります。
 しかし、協力の展望はあります。たとえば、最良の労働党左派国会議員ジェレミー・コービン、アリス・マーン、アラン・シンプソンを支える仕事です。こういう人を支持するのは正しい。本当にいい社会主義者ですから。同時に、ストロー、ブランケット、ブレア不支持で団結することです。
 ――運動の展望について楽観していますか。
 非常に力強い運動があります。イギリスでも国際的にも。反資本主義、反グローバル化運動は、前進しています。だが、注意を促したい。こうした抗議運動があっても、この反対運動が焦点を結ぶ所、ひとつの媒体がなければ、分散してしまう危険があります。
 労働党・労働者階級の古くからの拠点地域の中には、労働党への幻滅を、BNPへの投票で表現してしまっている所もあります。これは警鐘です。
 ブランケット内相は、移民が「あふれている」、自分の家では英語を話すべきだと言いました。彼は、他の人びとをスケープゴートにして攻撃する者に迎合しています。彼は、意図的にせよ、そうでないにせよ、人種差別主義を煽っています。これが、BNPへの投票として現れたのです。
 あらゆるレベルでこれに挑戦すべきです。BNPが立っている地域では、政治的に挑戦し、また難民のために立ち上がるべきです。未来に夢中になり、楽観的になることは正しいことです。しかし、正確に理解しないと巨大なチャンスを逃してしまいます。この数カ月、数年で、今後数十年の姿が決まりかねません。
 社会主義者の役割は、人々にできるかぎりの希望と団結を与え、前進させることです。これが真の責任です。