COMMUNE 2004/07/01(No340 p48)

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7月号 (2004年7月1日発行)No340号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 民族抹殺と闘うパレスチナ

口軍事侵攻・自治区破壊・暗殺・家屋破壊に反撃
口分離壁建設とパレスチナ人追放・領土併合策
口危機に直面するシャロン政権とイスラエル軍

●翻訳資料1 米食品スーパーのストライキ
●翻訳資料2 アメリカ『SNAFU』から

国際労働運動 南朝鮮・韓国/全力でイラク派兵撤回−−室田順子

    名護新基地建設着工阻止

三里塚ドキュメント(4月) 政治・軍事月報(4月)

労働月報(4月)  闘争日誌(3月)

コミューン表紙

  不正義の占領支配

 米英占領軍によるアブグレイブ収容所などでのイラク人に対する拷問・虐待の発覚は、まさにこの侵略戦争と占領支配の不正義性、反人民性を全面的に証明するものである。それは、帝国主義軍隊によって組織的に実行された国家的犯罪である。イラク人民の頭上に雨あられと爆弾を撃ち込んでの大量虐殺と一体となった民族抹殺の攻撃である。ナチスのユダヤ人虐殺、日帝の中国での三光作戦や731部隊の虐殺、そして今日ではイスラエルによるパレスチナ人虐殺・抑圧に比すべき民族抹殺攻撃である。「フセインからの解放」とか「自由と民主主義をイラクにもたらす」とか、勝手なことを言ってきたことの内実、実態がこれなのだ。そして、この非人間性の極限を現実のものにするのが帝国主義の戦争というものなのだ。

 このような侵略戦争の実態が明確になる中で、自衛隊のイラクへの駐留、第2次の派兵の不正義性も一段と明らかになっている。サマワでついに、迫撃弾戦闘によってオランダ軍兵士に死者が出、銃撃戦が展開されるに至った。イラク人民の民族解放戦争と帝国主義の占領とは、サマワにおいても激しく衝突を開始したのだ。もはや「非戦闘地域」などとごまかすことはできないところにきているのだ。日帝は危機にのたうち回りながらも、帝国主義であるかぎり、日本の国益にとってこれしかないものとして、自衛隊出兵政策を継続する以外にない。イラクで拘束された5人を「反日分子」とののしる自民党議員が象徴しているように、まさに「イラク軍事占領反対・自衛隊即時撤退」は、日帝と激突し、小泉打倒に直結する闘いである。

 有事7法案・3協定条約承認案は、昨年の有事3法の成立に続き、有事法制として完成させるものである。これらの法案・協定条約は、米帝のイラク侵略戦争やアフガニスタン侵略戦争を米帝と共同・競合して継続・激化・拡大すると同時に、北朝鮮、ひいては中国に対する侵略戦争を準備し、発動する、その体制づくりのための攻撃である。特に今回のACSA改定は、「武力攻撃事態」とその「予測事態」に、日米間で物品・役務と弾薬を相互提供できるようにし、北朝鮮侵略戦争において日米が共同作戦を行い、米軍が日本全土を出撃基地として自由に使うことを可能にするものだ。20労組が提唱した「有事法制を完成させない、発動させない、協力しない」の3ない運動の真価が問われる国会終盤の決戦に勝利しよう。

 有事立法をめぐる攻撃と同時に、「内への階級戦争」として年金改悪の攻撃がさし迫っている。6閣僚の年金未納が発覚したのに続いて、民主党・菅、公明党・神崎、そしてついに小泉までと、ぞろぞろと未納が発覚した。こうして国会議員の多数が年金未納という状態で、それを隠して与党と民主党の談合で衆院を通過させられるという許せない事態が進行している。人民に負担増と給付減を強いる年金改悪法案をこんなでたらめな国会で成立させようというのだ。いわば老後の心配のないものが、圧倒的多数の労働者人民の生活と未来を破壊しようとしているのだ。年金改悪は、帝国主義がもはや労働者人民を食わせていくことができず、老後の生活を保障することもできなくなったことの現れである。体制的破産にあえいでいるのである。帝国主義を打倒し労働者の権力を打ち建てることが唯一の解決の道なのである。(た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

  米食品スーパーのストライキ

 村上和幸訳

【解説】

 翻訳資料の@は、昨年秋から今年冬にかけ南カリフォルニアの7万人の労働者が闘った史上最大のスーパーマーケット長期ストおよびロックアウトとの闘いと、新たな労働協約についての『レーバーノーツ』誌のスタッフによる記事、Aは、今年の夏から秋にかけて労働協約の改定期を迎える北カリフォルニアの食品スーパーの労働者の闘いの課題についての労組の現場活動家の投稿だ。
 @は、UFCW(国際食品商業労働組合)の指導部が締結した労働協約の裏切り性の暴露が中心になっているが、それを理解する前提として、南カリフォルニアのストが空前の長期大ストライキだったことをみておこう。
 ストは2月末まで続いたが、すでに12月末の段階で、多くの労働者が食費にも事欠き、家賃を払えずに住居を追い出されるという困難に直面した。食うために、夜間のアルバイトとピケラインを毎日往復し、過労で交通事故死した労働者もいた。しかし、労働者は2月末まで不屈にピケラインを守りつづけたのだ。
 彼らの合言葉は、「1日でも長く」だった。会社側より長く闘い続けることで勝利しようということだ。ストは、会社が賃金・諸手当の体系を二層化しようとしていること、そして店舗の陳列棚管理を、低賃金の労働者に行なわせようとしていること、そしてこれまでに闘い取ってきた年金、健康保険の権利を破壊しようとしていることに対して闘われた。
 このストには、ILWU(国際港湾倉庫労組)を始めとする地域の労組の組合員が大挙して支援にかけつけた。ピケラインにともに立ち、炊き出しをし、買い物のボイコットを組織した。スーパーストは、地域全体の労働運動の活性化に火をつけたのだ。多くの住民が、ピケを尊重してスト対象の店舗での買い物を止めた。
 だが、一般組合員の不屈の決起にもかかわらず、UFCWの指導部は、全国的な闘いを組織せず、南カリフォルニアだけの闘いに限定しようとして必死に制動をかけた。UFCW指導部による地域住民へのスーパーボイコットの呼びかけも、UFCWの近隣の支部さえこのストのピケラインを守るたたかいに決起させないことを隠蔽するアリバイ方針でしかなかった。ILWU第10支部は、スト支援集会で、「港湾や倉庫にピケを張ってくれ。ILWU組合員はピケを越えない。そうすればスーパーへの商品納入は大幅にカットされる」と呼びかけた。だが、こうした労組間の共闘の呼びかけも、UFCW指導部は無視した。住民との共闘は重要であるが、あらゆる地域のUFCWの組合員全体を決起させること、そして、他の労組との団結を強化することという労働組合運動の軸をおろそかにして行なわれる住民へ呼びかけは、本当の労働運動ではない。
 UFCW指導部は、資本に屈服した条件で労働協約を結んでストを終わらせた。
 こうしたUFCW幹部の裏切りにもかかわらず、一般組合員は戦闘力を保っている。だが、労組の団結の根幹にかかわる屈服的な労働協約を飲まされたことも事実だ。UFCW労働者の闘いが壊滅的打撃をこうむるか、それとも圧倒的な戦闘的な高揚を勝ち取ることができるかは、今後の闘いにかかっているといえよう。
 その意味で、この夏と秋に労働協約改定を迎える北カルフォルニアのUFCWの諸支部の闘いは、非常に重要だ。

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 @食品スーパー労働協約の二層化に怒りと疑問

 北カリフォルニアの諸支部は抵抗を誓う

 『レーバーノーツ』04年4月号レヌカ・ウタパ(同誌スタッフ)

 2月29日、南カリフォルニアの食品スーパーチェーン、フォンズ/パビリオン(セイフウェイが所有)、アルバートソンズ、ラルフズのスト中の労働者とロックアウトされていた労働者は、闘争を終了させた。
 新たな二層化された協約とUFCW指導部のストへの対応は、多くの一般組合員の怒りをかっている。一般組合員は、協約の有効期間である3年間の間に多額の出費を強いられることになる。それ以降もおそらくそれが続くことになる。しかし、こうした悔しさから、組合員は、もっと積極的に組合にかかわらねばならないと感じだしている。
 ロサンゼルスのハリー・ブリッジス研究所とコミュニティー労働センターの所長、シャノン・ダナトは、「なぜ、全国的なキャンペーンがもっと早くからやられなかったのか。誰がそれを妨害してきたのか」と言っている。
 ミネソタ州のUFCW第789支部の元委員長、ビル・ピアソンは、このストを注意深く見てきたが、彼によれば、会社側は、店舗の二層システム化について、2001年のUFCWの本部委員長と100の支部の委員長、そしてセイフウェイ、アルバートソンズ、クローガーの代表が参加した会合ですでに明らかしていたという。
 「各支部の委員長は、『ノー』といっていた。本部委員長は、2年前からストになることを知っていたわけだ。なぜ、組合大会でそれを議題にしなかったのかが問題だ」

 成功?

 妥結直後に辞任したUFCWのダグラス・ドリティー前委員長は、このストを「歴史上、もっとも成功したスト」だと言った。これには、組合員から疑問の声があがっている。
 ベーカーズフィールドの第1036支部の一般組合員、ロニー・ハーディーは、「彼らは二層化に成功した。われわれが反対していたものを全部、彼らは獲得した。5カ月間のストは、何かしらは獲得したい、現在持っているものは失いたくないと思ってやったのに」と言っている。

 健康保険の二層化

 おそらく、もっとも重要なことは、この協約が賃金・諸手当の体系に二層システムを導入したことであろう。
 具体的には、
▽初めて、労働者が健康保険の保険料を支払うことになる。支払いは、協約有効期間の第3年目に始まることになる。独身者は週に5j、子持ちは週に10j、配偶者と子どもがいると、週に15jだ。
▽組合と共同で管理される健康保険基金への会社の拠出には、上限が設けられる。もしも医療費が高騰すると、労働者が医療を受ける時の自己負担が増えることになる。長期労働者が、新たに雇用された労働者で置き換えられていくと、健康保険基金はさらに劣化していく。
▽会社は、現在雇用している労働者には3・80jを拠出するが、新規雇用の労働者には1・10jしか拠出しない。新規雇用者が医療を受けると、会社側拠出分の20%相当額を、自己負担しなければならない。
▽現在の労働者については、会社の年金基金への拠出額が35%カットされる。新規雇用者については、65%カットされる。
▽現在の「熟練食品クラーク」は、時間当たり17・10jが最高賃金だが、新規雇用の「熟練食品クラーク」は、初任給が時間当たり8・90jで、昇給しても15・10jにしかならない。
▽下の層の労働者は、昇進を受ける場合に、どんな職種へも自動的に「昇進」されることになる。
 これまでの協約では、「食品クラーク」とされた労働者だけが陳列棚の商品の入れ替え、補充をすることができたが、新たな協約では、「食品クラーク」より時間当たり4j賃金が少なく、勤務年数も少ない「一般商品クラーク」がこうした商品の入れ替え、補充をすることができる。
 北カリフォルニアの第588支部の組合員、スコット・シュレーダー(25)は、これを聞いて、「新協約は、われわれ長期労働者をターゲットにしているということだな」と語った。

 組合の影響

 ドナトは、自分の店舗での組織化を決意した労働者がいると語ってくれた。ストや組合について語る集会を開催しているという。組合の集会に初めて参加する労働者もいる。「この攻撃は、それを経験した労働者を、良い組合員にした。彼らは、会社の従業員だという考え方を捨てて、労働運動の一員なのだと思うようになった」
 UFCW第1442支部のキャサリン・ローワンは、「ストの前は、組合費を払うほかは、組合に入っていないようなものだった。今は、組合がやることに大いに関心がある。私の払った組合費がどういう行動に使われているのか関心がある」
 第1036支部のハーディーは、「組合役員は、ストをちゃんと準備していなかったと思う。彼らは、ストが長期になることを知っていた。会社が彼らにそう言っていたはずだ」と語った。
 別の組合員ウィルソンは、「組合は、われわれを売った。交渉にあたった役員に『役員はわれわれのために何もしてくれなかった。われわれは役員を解任し、別の役員を入れたい』という手紙を書き、それへの同意署名を集めるために各職場委員に会いに行く計画を立てている」という。
 第588支部のシュレーダーは、「みんな組合が自分たちのためになることをやってくれると、楽観しすぎていた。われわれが参加しないかぎり、大変なことになる。私は、職場で、この現実を直視するように大声で訴えている」という。

 A北カルフォルニアのスーパー労組の課題

 『レーバーノーツ』04年5月号 ビンセント・バーバーグ

サンフランシスコ湾岸地域の食品スーパー労組支部は、南カルフォルニアで行われた譲歩を避けるためには、ハードルを越えねばならない

 南カリフォルニアのストライキの余韻がまだ残っている中で、UFCWの北カリフォルニアの8つの支部の店員たちは、来る9月11日の労働協約の期限切れの日を最後の審判の日として迎えようとしている。
 北カリフォルニアの別の2万1000人の店員は、第588支部に所属しているが、別の労働協約を結んでいて、7月17日が期限切れになる。会社からの圧力は強く、UFCW本部の幹部からの屈服しろという圧力も強い。 

 闘いの準備

 湾岸地域の諸支部は、アメリカ全土の小売業を襲ったコンセッション(労働者側からの資本への「譲歩」という名の大後退、屈服)の波に従う必要はないと思っている。湾岸連合(BAC――8つの支部の連合)は、この数年間、今われわれが直面している厳しい交渉環境のために、前倒しで計画を立てるために大きな役割をはたしてきた。
 BACは、協約期限切れのはるかに前から、経営側との対決的な戦略を練ってきた。資金を蓄積し、オルガナイザーと対企業キャンペーンの専門家を雇い、組合員の中に厳しい闘いへの覚悟を作ってきた。
 宗教団体と労組の組織との連合によって、雇用主との公正な交渉をする力と能力が増大してきた。
 BACの戦略の他の側面は、全国的に更新期に入っている多くの労働協約を、強力な交渉の武器にしていくということだ。これまでBACは、UFCW本部を説得することにはあまり成功してこなかったが、本部との来月の会合は、ロッキー山脈以西の労働協約を一緒にしていくことが効果的であると示すことができるであろう。
 湾岸地域の組合の連合は、かつては強力であったが、年ごとに弱体化してきた。1990年代は、協力する能力が著しく衰えた。この衰退の原因はUFCW本部の上級副委員長、ジャック・ラボールが権力を握ったことだと思っている者は多い。
 ラボールは、1984年にカリフォルニアのUFCW第588支部を握り、他の支部の合併・吸収によって、この支部を2万2000人まで拡大した。彼のこうしたやり方は、高圧的だとも受け取られている。

 弱体化した交渉力

 ラボールは、90年代にBACを押しのけて、北カリフォルニアのUFCWのスポークスマン、団体交渉のトップとなることができた。彼は、湾岸地域のすべての諸支部の集団的な意見を求めるという通常の手続なしに、労働協約について交渉することができた。
 95年の8日間のストは、ラボールによる交渉で、労働協約の大後退という結果に終わった。ピケを担った労働者たちは、こんなにストが成功したのに、何も成果が得られないのは何故だと悩まねばならなかった。
 97年の食品産業での交渉は、ほとんど始まる前に終わってしまった。セーフウェイとラッキーの店舗とのラボールの密室協議で決着したのだ。
 97年には、賃金、手当の改善について交渉された。だが、それはわれわれの年金基金をとりくずして支払われたにすぎない。雇用者側は、何年間も年金資金への拠出をまぬかれることになった。
 拠出の延期は、会社側と労働者側がそれぞれ行なうことになった。会社側がその85%、労働者側がその15%を得たのだ。
 ラボールは、われわれの膨大な健康保険・福祉のための積立基金を雲散霧消させてしまうことを容認した。この積立金は、それまで医療コストの高騰を相殺する役割を果たしてきた重要なものだったのだ。彼は、3万5000人の湾岸地域の組合員の団結の力を無視し、すでにずっと前からわれわれが獲得してきたものを、自分の交渉の手柄にしている。
 2001年の協約交渉でも、ラボールは交渉し、湾岸の諸支部より先に妥結した。
 BACは、「第588支部による協約の締結が、北カリフォルニアのスーパーの交渉の結果を決めるものではない。それは、われわれ3万5000人の組合員の経済的要求やその他の要求に応えるものではない。組合員の優先課題に応えていない」と語った。
 9月11日の事件が発生し、それがバランスを覆した時、湾岸の諸支部は団結し、共に賃金交渉をした。BACは、スト権投票で61%の賛成票しか得られなかった。多くの組合員が、この国全体のムードにおびえていたのだ。だが、それにもかかわらず、BACは労働協約の文言の22個の重要な改善を勝ち取ることができた。

 もう交渉ずみ?

 今日の現状では、予測不可能だ。BACの一部のリーダーは、ラボールは経営側とすでに交渉しており、また湾岸の諸支部を出し抜くのではないかと考えている。
 再び、組合員からかけ離れた組合幹部によって、われわれの力が浪費されるかもしれない。また、全国的な強力な労働契約を結ぶチャンスが失われるかもしれない。そうしないためには、組合員、支部が、効果的で強力なキャンペーンをしなければならない。

 

翻訳資料

 翻訳資料-2

  アメリカ反軍紙『SNAFU』から

 村上和幸訳 

【解説】

 アメリカの反軍新聞『SNAFU』(軍人、家族、退役軍人のためのニュースレター)第2号(04年1、2月号)から、米軍兵士・家族への呼びかけ文(@)と、米軍兵士の同新聞への手紙(AB)を紹介する。
 Cは、その発行団体のホームページに最近掲載された記事で、兵士の公然たる帰隊拒否の闘いを伝えている。
 『SNAFU』には、その他、イスラエルの兵役拒否者の運動の紹介や、イラク戦争の不正義性の階級的な暴露という全体的な宣伝から、隊内での政治活動の権利の守り方、良心的兵役拒否者になる方法などの具体的なアドバイスまで掲載されている。
 現在、イラクに送られた米軍兵士は毎日、イラク人民が米軍を憎み、戦っている姿に直面している。数々のゲリラ戦からストライキ、非武装デモから武装デモにいたるあらゆる形態でイラク人民は戦っている。
 米帝のイラク戦争の根本思想は、「ショックと恐怖」だ。「日本人は、二つの核爆弾が使用されるまでは、自殺抵抗をする覚悟だった。これらの兵器の衝撃は、平均的日本市民の思考様式と指導部の展望の双方を、この゛ショックと恐怖゛の状況を通して変えるに十分であった」(96年の国防大学の研究報告書『ショックと恐怖』)として、民間施設、市街地の破壊と民間人の殺傷を意図的に徹底的に残虐化、大規模化して、反撃の意志を砕くということだ。米軍は、この戦争概念に基づいて、イラクで悪逆非道のかぎりを尽くしている。
 だが、抵抗の意志は砕かれるどころか、逆にますますイラク人民は戦いに立ち上がっている。ファルージャの大虐殺に対して、住民がねこそぎ英雄的に決起し、撃退したことは「ショックと恐怖」作戦の根本的破産を突きつけた。
 そしてアメリカ国内でも、ブッシュ政権のなりふりかまわぬ報道管制、反戦運動への弾圧にもかかわらず、ついにアメリカ社会のすみずみまで、イラク戦争・占領の不正義性がつきつけられることになった。アブ・グレイブ収容所での拷問現場の写真と証言の発表は、米軍の拷問の実態を衝撃的に暴露することになった。
 今回の資料は、この事態の前に発表されたものだが、イラク現地で侵略戦争の実態に直面してきた米軍兵士の生の声を伝えている。アメリカの反戦運動、反軍運動は、こうした兵士を獲得するために今、必死になって闘っている。この資料からもわかるように、兵士の組織化は、階級的な立場に徹底的に立ちきることによってこそ可能になる。
 われわれ日本の労働者階級人民も、自衛隊の内部からの反戦の闘いの組織化を強力に推進していこう。

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 @死傷者の増加につれ、無許可離隊が増加

 ブッシュは、州兵部隊から無許可離隊(AWOL)した経歴を持つ。多くの兵士が彼の例にならおうとしている。
 士気は、ますます低下している。兵士たちは、国防省に裏切られたと感じている。国防省に聞かされたことは何から何までウソだった。戦争の理由はデタラメだったし、自分たちの部隊の交替の期日も、何度も先延ばしされた。
 生活状態は、ひどい。食料も水も医療も。毎日、死や重傷の危険にさらされている。そのうえに、ブッシュのイラク侵略と占領についての幻滅が重なっているのだ。
 特に予備役兵は、士気が低い。予備役兵は装備が悪く、医療を受けるときも、いつも余分に待たされる。
 毎日、イラクでは兵士が、ウソに基づく戦争で死んでいる。ウォルターリードなどの軍病院に収容されている負傷兵は、定員いっぱいまでふくれあがってる。「障害」が一生残る兵士も多い。
 だから、兵士たちは、他の道を求めだしている。
 03年10月5日のニューヨークポスト紙〔保守系のタブロイド紙〕によれば、兵士のカウンセリングを行っているネットワーク、「GIホットライン」への相談は、3か月で75%も増加したという。その多くが、AWOLをした場合の懲罰についての質問だ。
 休暇でイラクから帰郷中の兵士たちがよく電話してくるが、ある兵士は、「(イラクに)戻らなかったら、私の身に何が起こるんですか」と聞いてきた。別の兵士は、「自分の足を銃で撃つつもりだ」と電話してきた。
 『スターズ・アンド・ストライプス』(米軍準機関紙)の最近の調査によれば、湾岸地域に派遣されている兵士は、疑いもなく士気を低下させており、米軍の中に混乱が広がっている。その調査では、驚くべきことに回答者の31%がイラク戦争について「ほとんど価値がない」あるいは「全く価値がない」と答えた。自分たちの任務が明確に規定されているかという質問には、3分の1以上が、「非常に不明確」ないし「全く不明確」だと答えている。
 また、AP通信の報道によれば、脱走も全国的に増加しているという。フォート・ブラッグ基地〔カリフォルニア州〕では、前年の2倍の脱走が発生している。
 軍の中での不満の増大は、ベトナム戦争時に匹敵する危機をもたらす可能性がある。当時、脱走、戦闘拒否、上官殺傷は、兵士のフラストレーションが高まるにつれて、日常茶飯事になっていった。1970年までに、陸軍の脱走兵は、6万5643人に達した。歩兵師団4つ分に相当する数だ。軍内の大衆的抵抗は、アメリカのベトナムからの撤退の要因の一つとなった。兵士たちは、自分の運命を自分で決める力はないと思っている者が多かったが、組織化と抵抗運動を通じて、世界最大の軍事力をも止められることが分かってきたのだ。
 抵抗運動は、まだ当時と同じ規模には達していない。しかし、兵士たちはますます不満の声をあげるようになってきている。SNAFUには、毎日、軍から抜けようとしている兵士からの電話やメールが寄せられている。また、軍の内部で組織化をしようとしている兵士もいるのだ。

 A「武器を投げ捨て、拒否する」

 予備役兵ディードラ・コッブ

 21歳の陸軍予備役兵、ディードラ・コッブは、イラク攻撃のために現役として召集された。彼女は、参加しないことを決め、良心的兵役拒否者としての召集免除を申請した。最初の申請は却下されたが、彼女は異議を申し立てた。大勢の人が彼女を支援している。彼女は、次のように書いている。
 「良心にもとづく拒否は、〔イラクに〕派遣するという通知を受け取る前から決めていたことです。私は抵抗することが義務だと感じてきたからです。平和は戦争によっては達成されません。良心的兵役拒否者の資格を得るための公正な審査を受けることは、私の権利です。
 私が陸軍に入ったのは、地球上でもっとも偉大で強力な国のもっとも大きな理想を支持したからです。忠誠、義務、尊敬、無私、奉仕、名誉、高潔、勇気、これらは陸軍の7つの徳義であり、この価値観こそ、私が大切にし、持ちたいものです。
 ほとんど毎日、私は兵器の爆発実験の音を聞いています。建物は土台から振動しています。しかし、これを耐えて待っている私の時間は、われわれの武器がターゲットにしている人びとにもたらしている恐怖とは比べ物にならないと思います。だからこそ、私は、やりつづけなければならないのです。
 私は、米陸軍の情報分析官として、私の武器を投げ捨て、いわゆる敵を倒すことを拒否します。
 私は、大いなる心理的欺瞞についてよく知っています。企業のエリートたちは、軍の福祉を切り捨て、それに大げさなタイトルをつけました。巨大企業が所有するメディアは、アメリカの徳義を打ち立てる魅惑的な、衝撃的画像を流し、国民に正当化の理由を提供しています。私は、この汚い徳義と人道的悲劇に、永遠に別れを告げます。大統領殿、私はあなたのおかげで目が覚めました。陸軍は、この7つの徳目を兵士に教え込んで、良いことをしたことは一度もありません。忠誠、義務、尊敬、無私、奉仕、名誉、高潔、勇気は、私の兵役拒否手続を導いた徳目です」

 Bわれわれは理由なきに死に直面している

 ティム・プレドモア(第101空挺部隊の現役兵、モスル近郊に駐留)

 私が、今まで6か月間参加してきた「イラクの自由作戦」は、巨大な近代的なウソだ。
 2001年9月11日の恐ろしい事件の後で、アフガニスタンでの戦闘によって、イラク侵略へのレールが敷かれた。「ショックと恐怖」という言葉が、「イラクの自由作戦」の開始にあたっての力の誇示を表すために使われた。米軍・英軍兵器の先進技術や軍事的な強さをドラマチックにクローズアップして誇示しようとするものだった。
 イラクで勤務している兵士として、われわれは、イラクの人びとに必要な軍事的・人道的な援助を行うことが目的だと聞かされてきた。それなら、最近2人の小さな子どもの母親が米軍キャンプに治療を求めてきたという記事が『スターズ・アンド・ストライプス』に載ったが、そのどこに人道があるのか聞いてみたいものだ。
 2人の子どもは、そうとは知らずに爆発物を見つけて遊んでいて、ひどい火傷を受けた。この記事は、2人の子が1時間待たされた後で米軍の医師に治療された様子を書いている。そして、1人の兵士が、この事件が米軍が起こした多くの「残虐事件」の1つだと言っている。
 幸い、私は個人的には残虐事件を経験していない。もちろん、イラク戦争自体が究極の残虐事件だということを別にすればだが。
 では、いったい何がわれわれのここにいる目的なのか。この侵略は、何度も聞かされて来たように、大量破壊兵器が原因なのか。そうとすれば、大量破壊兵器はどこにあるのか。イラクのリーダーと体制がオサマ・ビン・ラディンと密接な関係があったからか。それなら、その証拠はどこにあるのか。
 あるいは、われわれの侵入は、われわれ自身の経済的な利益のためなのだろうか。イラクの石油は、世界中でもっとも低コストで精製できる。これは、現代の十字軍が、抑圧された人びとを解放するため、あるいはあくなき征服と支配をこととする悪魔的な独裁者を世界から取り除くためではなく、他国の天然資源を支配するために行われることを示していると思われる。少なくとも私にとっては、石油が、ここに駐留している理由だと思える。
 真実は1つしかない。そしてアメリカ人が死んでいっている。毎日、10から14の攻撃が、イラクにいる米軍兵士に対して行われている。死者数が増えつづけ、近い将来の戦争終結のめどは立たない。
 以前は、私は「米国憲法を支え、守る」という大義のために軍に勤務していると信じていた。もうそれは信じていない。確信を失い、決意も失った。もう、私の軍勤務を、中途半端な真実や鉄面皮なウソによって正当化することはできない。
 私と同僚たちのここでの時間は、間もなく終えようとしている。われわれは皆、イラクで理由も正当性もなく、死に直面してきた。あと何人が死なねばならないのだろうか。アメリカ人が目覚めて、自分たちを守ることが仕事である兵士たちを、国のリーダーたちの利益を守る仕事をやめさせ、帰還させることを要求するようになるまでに、どれだけの涙が流されねばならないのだろうか。

 C戦争抵抗者、カミロ・メヒアを釈放せよ

 「私はイラクに行き、暴力の道具になった。そして今、平和の道具になろうと決心した」

 カミロ・メヒア二等軍曹は、イラクでの戦争に戻らないことを決めたことをこのように説明した。メヒア二等軍曹は、5か月間イラクで勤務した。10月、彼は14日間の休暇の後で勤務に戻ることを拒否した。そして3月16日火曜日、北マイアミ州兵訓練センターにあるフロリダ州兵部隊に出頭し、「私は明確な信念があるから、刑務所に入る覚悟ができている。私は胸の内に良心を持っており、その良心に従っている」と述べた。彼の父母も、出頭に同行した。
 メヒア二等軍曹は、ニカラグアで生まれマイアミで育った。彼は良心的兵役拒否を宣言し、米軍がその資格のために要求している書類に署名した。彼は、その前の約5か月間をほとんどニューヨークで過ごした。
 「これは、石油のために起こされた戦争だ。私には、石油のための戦争に参加しようとしている兵士がいるとは考えられない。私は、地球を半周して抑圧のための道具になるために軍に参加したのではない」
 「われわれは大量破壊兵器を探しにいくとか、テロとの戦いに行くとか言われたが、全部ウソだった。これは、石油とカネが動機の戦争だ」
 イラクでは、彼は分隊のリーダーだったが、幻滅を深めていった。州兵は、装備がひどかったという。州兵の司令官は、「能力がなかった」。彼は、イラクの反乱者を戦闘におびき寄せるための餌として米兵が使われていることについて、また民間人の死傷者にまったく無頓着に作戦が行われていることについても訴えた。
 「軍に入る時には、戦争とはどういうものかみんな分かっていないものだ。たまたま悪い場所に悪い時にいた者が、そのことの代償を自分の血で払うことになる」
 メジアの戦争反対の意志は、イラク人のデモに対する発砲を命じられて、いっそう堅くなった。「人間に対して発砲したのは、あれが初めてだった。私の殺人の開始だったと言えるかもしれない」
 アメリカ合州国に居住するニカラグア移民、メヒアは、3年間陸軍に勤務し、フロリダ州兵部隊に5年間勤務してからイラクに送られた。現在、米軍部隊に勤務している非米国市民は、3万7000人以上にのぼる。募兵者は、特にラティノ系のコミュニティーを狙っている。イラクで最初に死んだ米兵の一人、ホセ・グティエレスは、孤児になったグアテマラ人で、死の時点でも米国市民ではなかった。軍に勧誘される者の多くが教育や職業訓練のための金を持っていない若者だ。これは、「経済的徴兵制」だ。国防省は、これによって°大砲の餌食″になる兵士たちを貧困層や非白人コミュニティーから常時補充することができる。ピュー・ヒスパニック・センターによれば、ラティノは、戦場でもっとも危険な所に高い比率で配置されているという。歩兵部隊などだ。
 脱走で裁判にかけられるリスクを犯して、メヒアは人種差別主義的な戦争に対して公然と挑戦した初めてのイラク帰還兵となった。勤務期間が延長され、死傷者がますます増加する中で、彼に続く者がでてくるのは確実だ。
 第1節 ● カミロ・メヒアを支持する方法

 ▽フォート・スチュアート基地のウェブスター将軍に電話し、彼の釈放を訴えよう。カミロ・メヒア二等軍曹を良心的兵役拒否者として除隊させ、裁判にかけないように要求しよう。
 ▽ www.VotetoImpeach.org のホームページを見よう。真の戦争犯罪人を裁判にかけよう。