COMMUNE 2005/7/01(No.351 p48)

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7月号 (2005年7月1日発行)No.351号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 圧制打倒へ氾濫渦巻く中央アジア

□キルギスに続きウズベキスタンでも人民蜂起
□ロシア革命後の中央アジア諸国の歴史と現状

●翻訳資料1 AFL−CIO再建をめぐる論戦
●翻訳資料2 ロサンゼルス教組執行部選、左派圧勝

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/非正規職闘争が攻防の焦点−−室田順子

    5・15沖縄闘争

三里塚ドキュメント(4月) 政治・軍事月報(4月)

労働月報(4月)  闘争日誌(3月)

コミューン表紙

   石原打倒の絶好機

 JR尼崎事故は、国鉄分割・民営化が何をもたらすかをきわめて衝撃的につきだした。利益優先の経営が、安全無視の極致として、107人の乗客乗員の命を奪ったのだ。マスコミは、JR西日本における労務管理や安全対策についていろいろ批判するが、これは西日本に限ったことではなく、JR体制全体の問題なのだ。JR東日本では、動労千葉がレール破断の現実を暴き、ストライキをもって安全確保の闘いに決起している。まさに「闘いなくして安全なし」という原則に立つ者だけがこのような現実と闘うことができる。西日本では資本に見捨てられ少数派に転落しているJR総連が、JR西日本批判のポーズをとっているが、JR総連こそ、国鉄分割・民営化に率先して協力した最大の裏切り者だということを忘れてはならない。

 JR事故は、民営化とは素晴らしいものという宣伝のインチキを暴いた。郵政民営化法案が閣議決定され、小泉政権は会期を8月まで延ばしてもこの法案の今国会での成立を図ろうとしている。自民党を二分する形で、既存の利権を維持するかどうかの争いが展開されているが、双方とも、最大の核心が全逓労働者の公務員資格の剥奪と大量のリストラ、労組破壊、労働運動解体にあることを覆い隠している。実際、民営化になったら、今でさえ分秒刻みの業務を強いられ、命をすり減らされている全逓労働者は、ますます追いつめられ、大きな事故が起こる事態が現出するのだ。戦争と民営化、労組破壊の小泉=奥田路線と対決する、全逓、教労、自治体、国鉄の4大産別決戦の軸として、この郵政民営化攻撃を粉砕しよう。

 「新しい歴史教科書をつくる会」教科書の採択を阻止する闘いは、ますます重要な意義をもっている。帝国主義が危機を深め、戦争に突き進まなければ延命できなくなっている中で、「戦争のできる国」「戦争のできる国民」をつくるために、教育内容そのものに踏み込んで、これまでの戦後的価値観を転覆し、「国のために命をささげる」子どもを育てようとしてきているのである。今春の「日の丸・君が代」強制拒否の闘いの地平を引き継いで、この「つくる会」教科書採択を阻止する闘いにすべての力を投入することが課せられている。そして、敵の側がその最大の突破口と目して攻撃を集中してきている東京・杉並で大衆的に阻止することが必要なのだ。しかもそれは7月3日の都議会議員選挙闘争の過程と完全に重なっている。

 今回の都議選は、戦争と民営化・労組破壊の小泉=奥田路線の先兵、石原ファシズム都政を打倒することをめざした選挙である。石原打倒を掲げて闘う候補は、都政を革新する会の長谷川英憲氏しかいない。日本共産党は、石原都政に真っ向から対決することを避けている。彼らは教育問題で「30人学級」を掲げているが、今や問題は教育内容だ。まさに「戦争は教室から」なのだ。日共の方針は「つくる会」教科書を阻止する闘いを中心課題にすることを放棄したものでしかない。また、「自治市民」の福士敬子都議は、「私は反石原ではない」「面白いところもある石原都政」と、完全に石原に迎合する姿勢を示している。野党を掲げる党派にしてこのありさまなのだ。基本的に石原ファシストのもとで都議会はオール与党と化している。これを真っ向から断ち切る議員として、長谷川英憲氏を都議会に送り込もう。(た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

 AFL-CIO再建をめぐる論戦

 『ティックン』誌05年5月号スティーブ・アーリー

 村上和幸訳 

【解説】

 アメリカの労働運動は、1955年のAFLとCIOの合同以来かつてなかった大流動過程に突入している。これまでの労働運動のあり方は、完全に壁につきあたった。
 昨年の大統領選過程では、AFL−CIOスウィーニー執行部と傘下諸労組の執行部は、民主党ケリー支持運動に労働運動の全力を投入した。だから結局、民主党に受け入れられないことはやってはならないということになった。
 多くの労働組合員とその家族がイラクの戦場に送られているのに、イラク反戦闘争に対して強力な制動がかけられた。
 また、600万人から時間外手当を一方的に奪うという労働運動の根幹にかかわる攻撃に対しても、AFL−CIO執行部と諸労組中央は、労働組合員の大動員で反撃することは、一切やらなかった。医療・年金の破壊に対しても闘っていない。
 だが、大統領選のためにこれほどの犠牲を払ったにもかかわらず、ケリーは敗北したばかりでなく、開票直後に自ら進んでブッシュの勝利を祝福したのだ。
 しかも、この昨年の過程では、現場労働者の中から新たな潮流運動が登場してきた。一切をケリー支持に流し込む既成指導部のやり方に対して、明確な批判が最初から突きつけられていたのだ。
 昨年登場した百万人労働者行進運動(MWM)は、民主党への従属を拒否し、労働者自身の独立した運動の建設を掲げて、350万人の組合員を代表する労組・労組団体の賛同を獲得した。
 AFL−CIO執行部は、MWM賛同禁止の指令を出し、AFSCME(自治体などの組合)の賛同に歯止めをかけた。MWMは、AFL−CIOの重圧によって試練にかけられた。
 だが、MWMが既成指導部と激闘しつつ貫徹されたことは、今も既成指導部に対する打撃となっている。また、多くの戦闘的潮流に対する激励となったのだ。
 そこで、本号では、翻訳資料1としてAFL−CIO大会での次期執行部選挙に向かう情勢の中で書かれた論文を掲載する。これは、現職のスウィーニー執行部に対して、SEIU(サービス従業員国際組合)のスターン委員長らが反対派を形成しているという対立構造に対して、それは労組官僚内の対立にすぎないという立場から批判している。
 筆者のスティーブ・アーリー氏は、CWA(アメリカ通信労組)のボストン地域のオルグで、左派系の労働運動誌『レーバーノーツ』にたびたび寄稿している。
 スウィーニー執行部とスターンらとの論争では、イラク戦争のことも米政府主導のベネズエラのクーデターへのAFL-CIOの加担のことについても双方が沈黙したままだ。ブッシュ政権の「年金・医療改革」についても沈黙している。これによっても、両者が労働者階級の利益とは正反対の存在であることがわかる。
【( )内は原文。〔 〕内は訳者による解説】

………………………………………

 労働組合運動がかつてなく成長した時期に、米国労働総同盟(AFL)と当時ラディカルだった産業別組合会議(CIO)は、激しいイデオロギー的対立をしていたが、その後結局、両者は1955年に合併した。このかつて敵対的だった2つのナショナルセンターの合併は、職能別組合と産業別組合の紛争を抑えたのだが、不健康な「労組間の平和」をもたらした。この平和を維持するために、労働組合運動は反省、内部論争、労組における意見の不一致を公然と明らかにすることを回避した。一方で団体交渉に対する経営側の抵抗は増大しつづけ、他方、労組に結集する労働者の割合は、長い間、少しずつ減り続けた。1950年代初頭のピーク時には、全労働者の35%が組合員だったが、現在は全労働者の12%(民間部門ではたった8%)が組合員だ。
 1995年、労働運動のうわべの統一も衰退しはじめた。現AFL−CIO会長のジョン・スウィーニーが、冷戦期の労働運動指導者、レーン・カークランドとジョージ・ミーニーの後継者、トム・ドナヒューに果敢に挑戦したのだ。彼とドナヒューとの選挙戦が行なわれた時期には、綱領的な論争が行なわれ、労働組合運動の戦術・戦略についての不一致が明らかになるという稀な事態が発生した。確かに、彼らの選挙戦は、AFL−CIO執行委員会内の競合派閥を基礎にしたものだったが、そもそも選挙戦が存在したということそのものが、労働運動の下部での反対派や論争の存在に市民権を与えるものとなった。AFL−CIO全国大会は、改革派のスウィーニーが現職のドナヒューを破って選出され、近年のAFL−CIOの歴史の中で初めて、全国大会は、実際に出席するに値するものとなった。
 そして今度は、労働運動の退潮を止めることにスウィーニーが失敗したことが、この数カ月間の「批判/自己批判」のサイクルを生み出している。そして今度は、前回よりさらに論議の参加者が増えている。この論争の経過をみれば、7月のAFL−CIO「50周年」大会におけるAFL−CIO指導部の選挙に向けて、反対派候補者たちが出てくることは明らかだが、それが誰になるのかは、まだはっきりしていない。今のところ、スウィーニーに対する挑戦は、反対派労組ブロック――「新しい団結にむけての連帯」(NUP)から行なわれてきた。NUPは、2003年9月15日、『ビジネス・ウィーク』誌で、「AFL−CIOに従わず」と題する論文を発表し、AFL−CIOの現状への批判を開始した。AFL−CIOが支援した民主党大統領候補ケリーのみじめな敗北の後、NUPの最大の労組――160万人のサービス従業員国際組合(SEIU)――は、AFL−CIOに対する最後通告を突きつけるにいたった。早急に変革しなければSEIUは脱退すると。このSEIU委員長スターンのセンセーショナルな動きは、すぐに裏目に出た。NUPに入っていたブルース・レイナーとジョン・ウィルヘルム――全米縫製・繊維労組(UNITE)とホテル・レストラン従業員組合(HERE)の委員長で、最近合併してUNITE−HEREを結成した――らが、SEIUとの同盟関係からたちまち撤退したのだ。しかし、これで労働運動の戦略と枠組みをめぐる論争が終結したわけではない。
 現在の労働組合運動に対するSEIUの批判の核心は、小さな組合が多すぎるということだ。スターンは、こうした小組合は規模・政治的な影響力・交渉における力が欠如しているために、米国社会を支配する(ウォールマートのような)巨大企業や(大薬品会社のような)寡占企業に遅れをとっていると主張している。スターンによれば、大きな労組組織においても、「一定の産業部門への集中性」が十分でなく、いくつかの別々の組合が同一の企業の労働者を代表しているということが問題なのだという。労働組合員は、AFL−CIOの58の傘下労組が15ないし20の労組に統合され、それぞれが特定の産業に集中し、同じ管轄範囲での他労組との競合がもっと少なくなり、もっと多くの資金・人材をそこに投入できるようになるまでは、1930年代のような攻勢にでることはできないのだという。SEIUは、AFL−CIO内の最大労組、もっとも急速に拡大している労組として、自分たちを組織拡大、近代化、官僚組織統合のモデルにしようとしているのだ。SEIUは、新しいタイプの「上級管理者」、ほとんどが一般組合員以外から募集された大卒の現場スタッフを持っている。
 1996年にスターンがスウィーニーの後を継いでSEIU委員長になってから、50以上のローカル〔支部〕――全体の約14%――がSEIUの「新たな力、統一」計画にのっとって、本部管理の下に入れられた(本部管理とはローカルに対する本部の支配の一形態で、そのローカルで選挙された役員がSEIU本部に指名された役員に一時的にとりかえられる)。SEIUの医療、ビル管理、公共部門の組合員は再編されて、別組織とされた。州規模の、あるいはいくつかの州にまたがった「ローカル」が13万人とか24万人とかの組合員をかかえるようになった。比較的小さな地域組織は、それがいかに民主的であり活動的であったとしても、「企業合併の時代」にあっては時代錯誤であるとスターンは主張している。そういう組織は、「何年も前には意義があった」が、現在では、本当にローカルな組合組織構造は、労働者を助けることにはならず、阻害要因になるだけだという。
 効率的なものになるためには、労働組合は、市場の範囲を反映したものでなければならず、大企業の構造を模倣しなければならないとSEIUは主張しているのだ。経営者を団体交渉に入るように説得するためには、組合は、企業に「価値を付加する」ことができることを示す必要がある――たとえば、民間介護施設や病院に患者のケアのための公的資金からの払戻金がもっと入るようにするとか、患者からの訴訟を回避するとか。また、立法への影響力を高めるために、労働組合は、SEIUのように、何千万ドルもの金、有給スタッフ、労組員のボランティアをディーン支持、ケリー支持運動や、「アメリカンズ・カミング・トゥゲザー(ACT)」*に投入するということだ。
〔* ACTは、民主党候補支援のための資金集め、メディアを使った広告のための団体。ジョージ・ソロスなどの大富豪が巨額の寄付をしていることで知られている〕
 大マスコミでは、このプラグマティックな協調組合主義の一見非常に効果的なモデルが、衰退する労働組合の「労組ボス」たちの超保守的な姿に対置されてきた。「労組ボス」たちの一人、国際機械工・航空機工連合(IAM)のトーマス・バッフェンバーガー委員長は、ニューヨークタイムズ日曜版1月30日号の特集のインタビューで、歯に衣着せずスターンのマスコミ通ぶりをからかった。「ブログ」を立ち上げたりして、ドナルド・トランプ*のように「自前のテレビ・ショー」をやりたがったりしているのだと。バッフェンバーガーがスターンが一番嫌いな所は、「彼は、あまりにも経営者に似ている。姿も言うことも」。他の保守派も、スターン、ウィルヘルム、レイナーがアイビー・リーグ卒だということに嫌悪感を表明している。AFL−CIOの建設部門部会のリーダー、エド・サリバンは、最近のスウィーニーへの書簡の中で、「われわれは、大工道具も知らない『教祖』様のアドバイスを受けたくはないし、その必要もない」
〔* ドナルド・トランプ 不動産などで巨富を築き上げた実業家。自分を主人公にしたドラマにみずから出演している〕
 こうしたブルーカラーの罵倒は、あまり生産的ではない。これは、対立の実質的な問題――SEIUをモデルにした労組の再生が適切か否かということ――から目をそらす効果しかない。真の問題は、変革が必要か否かではない。変革がトップダウンで行なわれるべきか、ボトムアップで行なわれるべきかということなのだ。スターンの提案は、執行部に基礎をおいた、トップダウンの方法だ。ランク・アンド・ファイルの多くは、たとえば、デトロイトの労働運動誌『レーバーノーツ』などに書いている人びとは、以前から「労働運動に活力を取り戻すためには」草の根の活動をもっと盛んにする必要があると論じてきた。『レーバーノーツ』の執筆者、ジェーン・スローターとダン・ラボッツが編集したダイジェスト集『トラブルメーカーのハンドブック――自分の職場で反撃し、勝つ方法』の中で、たとえ組合本部役員のもっとも練り上げられたプランでも、職場とコミュニティーでの労組の活動の仕方の改革に対応していないかぎり、労働運動の退潮を逆転させることはできないとして、次のように書いている。
 「組織化と長期的アプローチの必要性を理解している労組指導者もいるし、それを非常に野心的に考えている労組指導者もいる。だが、こうした指導者は、野心的なプランを遂行するために必要な力をどうやってつくりだすのかという点で、往々にして挫折してしまう……。彼らは、労働者たちは脇役で、労組役員やスタッフが本当の主役、スターだと思っている。しかし、労組に入る可能性がある労働者に、本当に労働者を基礎にした組織、そして良い労働協約を勝ち取れる組織を示さないで、どうして労働組合に魅力を感じさせることができるであろうか」
 『トラブルメーカー』は、安全・衛生のための闘い、差別反対闘争、医療保険を守るためのスト、移民の権利を守るための闘いの多くの実例をあげている。労働組合は、労働協約について交渉し、新たな組合員を募り、政治活動をするためのものであるばかりではなく、こうした諸活動をするためのものでもあるというわけだ。この本に登場するチームスターズ、食肉加工労働者、農場労働者、客室乗務員、看護師、公務員、工場労働者は、「仲間同士が日常的な信頼関係、協力、日常的な勇気ある行動を築き上げたために」職場の組織を強力にすることができたということだ。職場の仲間の一人対一人の関係が重要だということだ。
 ケンタッキー大学のポール・ジャーリー教授は、『レーバー・スタディーズ・ジャーナル』最新号で、「多くの労働組合では、組織の惰性が邪魔をしているが、そういうものがない場合でも、この職場での労働組合の共同体づくりの創造・再創造の任務に非常に困難なものだ」「郊外化現状、労働力の流動化、離職率の高さのために、労働者が互いに他人になっている」「産業別労働組合が20世紀初期から中期にかけて形成された時期には存在しなかった、在宅勤務、派遣労働、(コールセンターなどの)職場の物理的なレイアウトなどによって、労働者は相互に隔離されている」と述べている。
 マサチューセッツ州立大学アマースト校のダン・クローソン教授(『次の高揚』の著者)は、学問的研究と自分自身のホワイトカラー労組のリーダーとしての経験の双方に基づいて、労働組合は、課題指向で人間中心のアプローチをしなければならないと主張し、また、長期的関係を作ることを強調して、次のように論じている。
 「私の組合では、生活にかかわる問題で組合が方針を決定する集まり、重要な問題がかかっている集まりでは、人が一番集まる。たしかに、食べたり飲んだりして、組合員が古くからの友人と交わり、また新しい組合員に会う機会を作ることは重要だ。しかし、組合員が心配している問題に労働組合が取り組むこと、そして労働組合があるとないとでは大違いだ――少なくともそうなる可能性がある――ということを示すことも重要なのだ」
 「連帯で強くなれる」の歌詞の最後のフレーズは、『われわれは新しい世界を生み出すことができる』ということだ。われわれが労働者に新しいものを生み出す展望を示さないかぎり、そしてそのための信頼性がある手段を示さないかぎり、彼らは、他のネットワークの代わりに労働組合のネットワークを求めようという気にならないのは当然だ。ニューヨークタイムズ日曜版は、アンディー・スターンの特集の3カ月前に、労働組合と競合する職場での宗教を基礎にした新たなネットワークについてラッセル・ショートが書いた「神とともに机に向かう」という記事を掲載している。この記事では、福音主義キリスト教〔キリスト教右派、キリスト教原理主義〕や他の宗教が、経営側の容認のもとに職場でサークルとして台頭している様子を描いている。ボストン・グローブ紙も2月1日、ホワイトカラーの職場でも、ブルーカラーの職場でも、「同宗派の従業員が信仰を職場に持ち込んでいる」ことを報じている。こうしたグループは、インテルなどのハイテク企業の経営者が始めた「多様性推進計画」を隠れ蓑にして組織されていることが多い。こうした企業は、これまでずっと従業員が組合の組織化によって「共通の利害」を育て上げることを妨害していたのだ。
 宗教をベースにしたグループでも、それほど保守的ではないものは、職場での労組組織化をコミュニティーで支えていくものになりうる。「職場に公正を」(JWJ)や「諸宗教の労働者の正義」(IWJ)などの全国的なネットワークを通じて、団体交渉や場合によってはストライキを支援するものにもなりうるのだ。ボストンでは、解放の神学の影響を受けたカトリック神父を含む40の個人・団体が労働運動とコミュニティー組織の連合をつくってJWJを構成している。彼らは、そこの教区内の介護施設で最近行なわれているブラジル人、ハイチ人、ラティノ労働者の組合組織化を積極的に支持してきた。JWJには、移民をベースにした小規模なプロテスタント福音教会の在家牧師たちも参加している。彼ら自身が移民であることが多く、またその信徒団体は職場での問題を抱えているのだ。
 AFL−CIO傘下の組合の中で、JWJともっとも関わりが深いのは、アメリカ通信労働組合(CWA)だ。CWAは、コミュニティーと労働組合の協力を先頭にたって推進してきたし、実際の職場に根を張った労働組合活性化を推進してきた。CWAは「一般労組」であり、広範な職種、広範な産業部門(電信電話、製造業、航空、新聞・電子メディア、印刷・出版、高等教育、医療、公務員を含む)の労働者を団結させようとしてきたのだ。CWAは、ニューヨーク州のバッファローやポキプシーのような比較的小さな町でも、「町の大きな組合」になっている。さまざまな交渉単位の労働者、さまざまな出身の労働者の間での相互援助と連帯を推進し、職能組合・単一産別組合の偏狭さや民間と公務員の壁を乗り越えるようにしてきた。
 昨年12月にニューヨーク市立大学クイーンズ校で行なわれた労働運動の将来を論ずる会議で、ラリー・コーエンCWA執行副委員長は、「労働組合を維持しているのは、労働組合の内部での活動だ」「職場での権利に対する経営側の民主主義国で最悪の抑圧によって団体交渉の危機に陥っているが、活動的な組合員こそがこの趨勢を逆転させる唯一にして最上の力だ」「組合員をどのようにして動員するかということを基礎にしないで、労働者の権利を守ろうと考える者は、自分を欺いているのだ」と語っている。
 コーエンは、たしかに自発的な労組統合は支持している。CWAには、これによって数十万の組合員が加わったのだ。だが、彼は、「組合の合併によって労働組合の職場がどう変わるのか、活動的な職場委員が増えるのかどうか、そして組合員が労働組合活動にもっと参加するようになるかどうかこそが、真の問題なのだ」といっている。今年1月、CWAの執行委員会は、「労働組合は、職場からボトムアップで組織される時に、一番うまくいくのだ。トップダウンではうまくいかない。労働協約交渉、組織拡大、政治活動を効果的なものにしていくためには、職場委員の役割と職場での動員の組織者の役割を強化することが決定的である。力のある職場委員がいなければ、こうした問題で成功することは難しい。……あらゆるレベルの指導部は、若年労働者を含むCWA組合員の多様性を反映しなければならない。新たな指導部は、われわれの組合員の中から育てられ、昇進させていかねばならない」と述べている。
 CWAのボトムアップ戦略について、その先進的なローカルの活動家がうまく説明している。ニュージャージー州ニューアークのローカル1037のヘティー・ローゼンシュタインによると、「ローカル1037の組合員数は、4800人から7700人に増加した。この増加のほとんどが、職場委員の組織拡大活動の成果だ」という。ローカル1037の組合員は、ソーシャル・ワーカーとして州に雇われているか、州成年家族局(DYFS)の仕事を請け負っている民間非営利事業所に雇われている。ローカル1037では、「組合は、雇用者の構造を反映して、300人の職場委員が州北部の13の郡にある十数か所のDYFSの事業所で活動している」という。
 こうした事業所のどこかに行って、そこの労働者に聞いても、そのローカルの名前、ナンバーも正しく答えられるとは限らない。ローゼンシュタインの名も、全員が知っているとは限らない。彼女は、民営化に反対する主要な論客であり、最近あった児童虐待スキャンダルの際にもマスコミのインタビューを受けて、ソーシャルワーカー一人当たりの取り扱い件数に上限を設け、ソーシャルワーカーの数を増やし、訓練とサポート体制を充実させて、DYFSのサービスを改善すべきだというキャンペーンをはって成功させた人なのだが。
 しかし、ローカル1037の組合員は、ほとんど全員、自分たちの職場委員が誰なのかは知っているのだ。ローカルは、職場における基盤を作っている人びと、職場委員の募集、訓練、育成のために重点的に投資しているのだ。ローゼンスタインは、「優れた職場委員が決定的だ。組合は、労働者から何マイルも離れた組合事務所ではなく、労働者が8時間、9時間すごす場所にこそ存在すべきものだ」と言っている。
 ローカル1037では、職場委員は、新規採用された労働者全員を組合に加入させている。そして職場委員は、組合員の人事問題(および個人的問題)を支援し、労働協約や立法の問題についての情報を配布し、同僚たちの経営側との話し合いを代弁し、労組バッジや労組Tシャツの着用を勧め――毎週木曜には、多くの労働者が赤い服(赤はCWAの色)を着て働く――、政治活動のための戸別訪問員を募集している。ローゼンシュタインによれば、「18か月前に、州はDYFSを解体しようとしていた。州の元々の『改革』計画は、われわれの業務のほとんどを、組合のない民間業者の下請けに出すというものだった。しかし、ほとんどのDYFSには、活動的な職場委員と組合員――つまり、本当の職場指導部――がいるので、われわれはこれを議会と局の中で逆転することができた」ということだ。
 「こういうことが、巨大ローカルでも可能だろうか。私は、そうは思わない。巨大ローカルの指導部というものは、数千人のソーシャルワーカーのことなど、そんなに気にする時間はないし、またそうしたいとも思わないものだ。仮に、彼らが気にしたとしても、ソーシャルワーカーの仕事をよく知らないはずだから、州との協約の内容になる取り扱い件数の上限や新規雇用のことなどの詳細について交渉することはできない。こうした内容こそが問題なのだ。われわれのローカルは十分に小さいから、組合員とサービス利用者がもっとも関心を持っている点に焦点を合わせることができる」
 ほとんどの他の改革派と同様に、ローゼンシュタインは、アンディ・スターンの強制的なローカル統合、全国労組統合は、「草の根のリーダーを育てるための時間もその素質のある人もいない」と考えてる人たちが手っ取り早く解決しようとしているもので、逆効果にしかならないと考えている。労働運動が必要としているものは、そんなものではなくて、何千人もの新たな職場委員だと彼女は考えている。鮮明な、多角的な戦略によって団結するならば、活動的な組合員は、別の職場、別のローカルの組合員――国内の組合員とも国外の組合員とも――と結びつくことができ、国の政策を再編させ、また最大規模の大企業をも打ち破ることに成功できる。

 

翻訳資料

 翻訳資料-2

 ロサンゼルス教組執行部選、左派圧勝

 05年3月2日ロサンゼルスタイムズ紙 カラ・ミーア・ディマッサ記者

 土岐一史訳 

【解説】 

 ロサンゼルス統一教員組合(UTLA、4万6千人)の執行部選挙で戦闘的潮流が地すべり的勝利をもぎとった。
 UTLAは、1970年のロサンゼルス地域の教員の大ストライキの時、米国教員連盟(AFT)傘下の組合と全米教育協会(NEA)傘下の組合などが合同して結成された。現在もAFTとNEAの両方に加盟している。そして、その後も1990年のスクール・バウチャー制度(成績主義による転校の強要等)導入や他のロサンゼルス学区解体策動の阻止など、戦闘的な闘争を貫徹してきた。
 だが、UTLA執行部は、戦時下のブッシュ政権の労働者攻撃に対決できていない。執行部の2004年の運動方針は、ケリー大統領候補の支援に一切を集中するというものだった。だが、そのケリーは、ブッシュ政権の教育政策の柱である「ノー・チャイルド・レフト・ビハンド法」に賛成投票をしていたのである。
 ノー・チャイルド・レフト・ビハンド法とは、文字通りには、「どんな子どもも置いてきぼりにしない法」だが、内容は名前とは正反対だ。
▽州、学区、保護者への「説明責任」の名のもとに、教員の事務作業を激増させ、教員の監視を厳しくする。標準化学力テストの導入。
▽「学校選択の自由」を推進し、親の経済力の差によって子どもが受けられる教育の格差を拡大する。
▽公設民営化、民営化をさらに推進する。
▽軍の募兵官に校内への立ち入りを認めるだけでなく、各生徒の募兵情報を与えなければ、学校への補助金がカットされる。
 これをケリーも推進し、UTLA執行部もそれに屈服したのだ。
 また執行部は、医療・年金破壊攻撃に対する実力反撃を組織せず、インフレ率にも届かない「賃上げ」――実質上の賃下げ――を受け入れるなど、屈服を深めてきた。そして、大衆的な労働協約闘争を組織しようとしなかったために、労働協約をかちとれず、無協約状態が続いてきた。
 こうした中で、UTLA内の戦闘的な諸潮流が、「教育改革」への対決を鮮明にし、労働協約を闘い取ることを宣言して、合同し、「ユナイテッド・アクション」(統一行動)というフラクションを作っていった。
 この過程は同時に、UTLAの活動家がMWM運動を積極的に担っていく過程でもあった。MWMの準備過程で行なわれて多くの小集会がUTLA活動家によって組織されている。そして、UTLAの上部団体の一つであり、アメリカ最大、270万人の労組であるNEAの全国代議員大会でMWM賛同決議を勝ち取る闘いで、ユナイテッド・アクション系の代議員が大きな役割を果たした。また、10月17日のMWM集会では、UTLAからは、UTLA人権委員会議長のアンディー・グリッグ氏ら2名が発言している。

………………………………………

 ロサンゼルス教員組合、新執行部を選出

 ロサンゼルスの教員は火曜日〔3月1日〕、組合の現執行部のほとんどを落選させ、社会正義を中心にした政策をかかげた新しい陣営の候補者たちと、新しい委員長を当選させた。新委員長は、学区内の古参組合員で、35年間の長い活動歴をもつ活動家A・J・ダッフィーで、パームズ中学の「障害児」教育の教員である。
 教員たちは、現職委員長のジョン・ペレスに2000票以上の差をつけて、彼を選んだ。1万1300人の教員(組合員4万1000人の27%)が投票した。
 ロサンジェルス統一教員組合(UTLA)35年の歴史で、現職委員長とその陣営が失脚したのは初めてだ。
 ダッフィーは言う。「これは完璧に、上から下まで、UTLAの新しい顔ぶれです。すべて活動家です! すべて組織者です。地域社会と一緒に仕事をしているのです」
 ダッフィーは、新しく結成された「ユナイテッド・アクション」派の支援を受けた。この陣営は、次期UTLA指導者の一人の言葉によれば「戦闘的ランク・アンド・ファイル組合運動」を追求してきた陣営である。この陣営の当選者の中には、元教員で現在は女性州下院議員で、州議会教育委員会の委員長を務めるジャッキー・ゴールドバーグ(民主党、ロサンジェルス選出)の甥、デイヴィッド・ゴールドバーグもいる。
 組合の次期副委員長ジョシュア・ペチタルトは言う。「わが陣営は、どの選挙にもことごとく勝ちました。上から下まで。これは組合の大変動です」
 ペレス――前回2002年の選挙で、わずか100票未満の差で組合のトップに選ばれた――は、協約交渉問題が敗北の主な要因であることを認めている。彼は言う。「組合員は、18ヵ月も無協約状態がつづいていることに動揺しているようだ。ロサンゼルス統一学区〔LAUSD、教育行政機関〕に対してもっと攻撃的な態度をとってほしいと思っているようだ」
 LAUSDの首脳陣は火曜日、新指導部に対して歓迎の意と融和的言辞を伝えた。学区最高責任者ロイ・ローマーは、UTLAの指導部と懇意になりたいと言う。「彼らと一緒にやっていくためにできることはすべてやる。積極的な態度で彼らと交渉をはじめたい」
 最近2年間にわたって、ローマーとペレスは日増しに対立を深めていた。組合委員長ペレスが、彼が言うところの学区の「官僚的傲慢」を繰りかえし糾弾してきたからだ。舞台裏では彼は、学区主導の教員の教室査定を廃止するなど、組合有利な改革を推し進めた。そして彼の指導のもとで、組合は2人の現職教育委員、カプリース・ヤングとジェネシア・ハドリー=ヘインズを2002年の選挙で落選させることに成功した。
 ペレスがいくつか成功をおさめたことを認めつつも、ダッフィーは、3年間のペレス執行部は、口先だけで行動が伴わないという言葉で総括できるという。
 選挙運動の一環として、ダッフィーは、UTLAの支部指導者としての業績を宣伝した10分間のビデオを教員たちに配布した。彼は、12人の校長が解任されたことには彼の働きによるところが大きい言っている。ダッフィーはまた、1980年代後半、教員たちが9日間ストをしたころに組合が享受していた強力な地位をとりもどし、学区の官僚主義や無駄遣いと闘争すると約束した。
 現職の組合指導者たちは、火曜日の選挙の勝者たちは、学区の予算案との闘争や、上意下達との闘争や、連邦ノー・チャイルド・レフト・ビハインド法の害悪への取り組みにおいて、自分たちよりはるかに口やかましく言うだろうという。はたしてユナイテッド・アクション陣営に、学区とのきびしい交渉に耐えられるだけの指導的技量があるのか疑問だとしている。
 だがダッフィーを支持する教員たちは、組合の現執行部が、新協約をめぐって18ヵ月も交渉を先送りしてきたことを責めているのだという。
 ローマーは先日、教員側に1・5%の賃上げを回答した。これに対してペレスは、教員に少なくとも2%の賃上げをすべきだと反論した。ダッフィーは選挙資料の中で、生活費が上昇しているので、「7%未満の賃上げは賃下げに等しい」と教員たちに訴えている。
 UTLAの代議員で、パームズ小学校2年生の教員をしているアンドレア・コブは、ダッフィーを支持した理由を次のように述べている。「私らは学区内を何度も何度も歩きまわることしかできないんだから! 私の意見だけど、ダッフィーは口先だけじゃない指導力がある。絶対何かやってくれる! いっぱい話もしてきたし」
 教員たちは何よりも協約に関心がある、とペチタルトは言う。「いい協約を結べたら、組合員の支持をつなぎとめることができる。ペレスにはもうそんなことはできない」
 学区内で36年間勤めてきたペレス(58歳)は、任期が切れる7月1日に引退するつもりだという。「私は本当にこの組合とこの職業を愛しています。新しい役員には、学区とのやりあいについてあらゆる幸運を祈りたい」
 しかし、退任前に新しい協約は結んでおきたいと彼は語った。