COMMUNE 2006/05/01(No.360 p48)

ホームページへ週刊『前進』季刊『共産主義者』月刊『コミューン』出版物案内週刊『三里塚』販売書店案内連絡先English

5月号 (2006年5月1日発行)No.360号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  圧制の米国内で階級反乱が噴出

口ハイテク技術大幅赤字、ドル暴落・大恐慌必至
□「長い戦争」を宣言したブッシュ一般教書演説
□9・11の重圧乗り越えストで闘う労組が続出

●翻訳資料1 英・国際婦人デーにおけるパレスチナ代表の講演
●翻訳資料2  ドバイ・ポート・ワールド社騒動について港湾労働者の階級的見解

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/20万ゼネストで非正規悪法阻む−−室田順子

    3・5沖縄県民大会

三里塚ドキュメント(2月) 政治・軍事月報(2月)

労働月報(2月)  闘争日誌(1月)

コミューン表紙

   権力の恐怖と焦り

 法政大学当局と権力が結託した3・14弾圧は、今年の改憲阻止闘争において全学連が巨大な力を発揮することを恐怖した攻撃である。法政大学当局の一方的な「立て看板規制・ビラ規制」は、窮極の言論弾圧、学生運動弾圧であり、これを許していたら、大学は戦争国家体制づくりの砦となる。法大生を始め全国の学生がこのことに危機感をもってデモに立ち上がったのは当然である。大学周辺をデモし、学内で看板撤去に反対しただけで、200人の私服警官が一斉に襲いかかり、29人を連行・逮捕したのだ。戦後一貫して戦闘的学生運動の拠点であった法政大学から一挙に闘う学生を一掃しようとしている。この弾圧への怒りの総決起で、日帝・小泉の改憲攻撃、国民投票法案攻撃を粉砕する全国学生ゼネストをかちとろう。

 動労千葉は、反合・運転保安春闘に立ち上がった。昨年来の尼崎事故、羽越線事故、伯備線事故を弾劾し、「闘いなくして安全なし」をスローガンに、安全運転行動と旅客全乗務員のストライキに突入したのだ。とりわけ3月10日からの安全運転行動は、成田エクスプレスを始め10`の減速闘争で、当局の監視が動労千葉の運転する全列車に2人ずつ張り付くという重圧を打ち破って勝ちとられた。そしてストライキの貫徹は、動労千葉の底力を示した。少数とは言え、動労千葉が組合の団結をもって不退転の決起を勝ちとっていることは、実に重大だ。この闘いを先頭にしてこそ国鉄1047名闘争の勝利も切り開くことができる。国労5・27臨大弾圧を粉砕する闘いと併せて、動労千葉を支援・防衛する闘いをかちぬこう。

 今春の「日の丸・君が代」不起立決起は、03年10・23都教委通達以来3度目の卒業式・入学式闘争であったが、大量処分攻撃を恐れず、「戦争協力に向かう君が代斉唱はできない」という当然の良心の闘いが、一昨年、昨年の闘いを引き継いで、闘いとられた。石原・都教委の狙いは、「日の丸・君が代」強制通達をもって、一糸乱れぬ儀式を貫徹し、それを全国に広げようというものであったが、3年連続の不屈の決起は、この処分恫喝の10・23通達をまったく無力化させてしまった。処分は生活に直接打撃を与えるものであるから、そこには一人ひとりの苦悩や煩悶があるが、だからこそそれをのりこえての決起は実に巨大な力がある。少数の闘いでも、原則的に貫かれるならば、それは全労働者に広がる質をもっているのだ。

 イラク侵略戦争開戦から3年、米帝のイラク占領はいよいよ行き詰まり、泥沼に突入している。しかし、米帝は帝国主義であるかぎり、どこまでも戦争にのめり込むほかない。そしてイランへ、中国・北朝鮮へと戦争を拡大しようとしている。日帝・小泉は、この米帝と日米枢軸を強め、イラク撤兵どころか、さらに派兵を継続しイラク占領支配の一翼を担い続けようとしている。米軍再編攻撃に対して、3・5沖縄県民大会への3万5千人の大結集、3・12岩国市の住民投票の9割の「移駐反対」票、座間・相模原・横須賀などの闘いの前進と、全国に闘いが渦巻いている。この力で、イラク撤兵・米軍再編粉砕、改憲阻止・国民投票法案粉砕、教育基本法改悪阻止へ、4大産別を先頭に労働者階級人民の闘いを巻き起こそう。共謀罪法案の成立を阻止しよう。1〜3月の前進は、闘いの展望を切り開いている。(た)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料1

 英・国際婦人デーにおけるパレスチナ代表の講演

 真の英雄は女性たちである

 丹沢 望訳

 【解説】

 この講演は06年3月7日に、英・シェフィールドでの国際婦人デーで、パレスチナの女性医師、モナ・エル・ファラ氏によって行われた講演である。パレスチナ解放運動において女性が直面している諸困難について詳細に論じられるとともに、パレスチナ女性がこの困難を乗り越えて闘っている姿について明らかにされている。
 とりわけアルアクサ・インティファーダ以降の5年間、女性があらゆる困難に直面しながら、パレスチナ解放運動を最先端で担って闘う姿を鮮明に描きだしている。占領下での矛盾と困難の女性への集中的しわよせと、伝統的社会での厳しい制約を受けながら英雄的に闘う女性の姿は、ともすればパレスチナの解放運動の輝かしい発展の裏面に隠れがちである。しかし、パレスチナ解放運動の真の発展は、こうした女性の闘いによってこそ実現されてきたことをわれわれは決して忘れてはならい。

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 親愛なる皆さん。
 今日はこの集会に参加して下さってありがとうございます。国際婦人デーにあたってパレスチナの女性を代表してこの集会に共に参加できたことは非常に光栄です。
 パレスチナ人民の闘いの全過程を通して、特にこの5年間のアルアクサ・インティファーダの過程を通して、未だに続く占領に対する抵抗と断固とした態度について思いをいたすにつけ、私は真の英雄は女性たちであると強く確信しています。それは、占領下の日常生活において諸困難と直面することを強いられ、また、女性を全般的に制約する価値観を内包した強固な社会的伝統に直面しているさまざまな難民キャンプや、町、村の普通の女性たちです。
 イスラエルの占領は全パレスチナ人に影響を与えていますが、女性への影響は特に重要です。
 占領は、経済、健康、教育の面でも、移動・旅行・労働の自由の制限などの面でも、またとりわけ安全の欠如の面でも女性の全生活を制約しています。
 教師、医師、看護士、農民、主婦として働く普通の女性たちは、危険を感じながら家庭の内外で働いています。イスラエル軍のブルドーザーが、夜昼の区別を問わず、事前の警告なしに家を破壊しに来た時には、多くの女性が自分たちの子どもを家から引っ張り出すことを強いられています。2000年に開始された第2次インティファーダ以来、ガザでは数千件の家屋が破壊されました。
 これらの普通の女性たちこそ、パレスチナ人民の占領に対する断固たる態度と自由と独立を目指す闘いの伝説を作り上げた英雄なのです。
 2001年12月以降の私の日記の一部を紹介しましょう。
 2001年11月、イスラエル軍はアルガララ村の26軒の家屋を破壊し、数千本の樹木を引き抜き、広大な面積の農地を破壊しました。多くの家族が家を失い、テントで生活しなければならなくなりました。こうした形で現在のパレスチナ人の家屋と農業基盤の破壊が開始されたのです。この侵略行為が行われた直後に、私は医療面や生活面での援助を提供し、人々が何を必要としているかを調査するためにこの村を訪問しました。

 陣痛発作中に一晩中歩く

 私は、ちょうど男の赤ちゃんを産んだばかりの女性に会いました。陣痛があり、強い子宮収縮があったのに、彼女は病院への最寄りの交通機関に到達するために厳寒の中を1時間も歩かなければなりませんでした。乗用車も救急車も午後8時以降はこの地域の道には入ってくることを禁止されていました。イスラエル軍はここを通る車には警告なしに発砲するのです。病院での出産は難産でした。赤ちゃんは大丈夫でしたが、母親はこの苦難で衰弱していました。
 私は未だにこの苦痛の経験から立ち直っていません。栄養不良の赤ちゃんにも会いました。私は緊急の医療支援を手配しました。私は女性たちに「平和がくることを信じていますか」と尋ねますが、どの女性たちもみな「屈辱的ではない公正な真の平和が来ることを祈っています」と強い調子で即答します。私も彼女たちと同様に、「私ちを分断するような平和は望まない」と言いたいのです。
 インティファーダの期間中は、陣痛発作中に検問所で待っている間に出産したり、救急車の中や乗用車の後部座席で出産した女性もいます。61人の女性が検問所で出産し、生まれた子どものうち36人が出産中あるいは出産直後に死亡しています。
 日常生活では、パレスチナの女性たちはしばしば夫を失い、家族の住む家を失うという非常に困難な状況下で、家族全体の低収入という現実に立ち向かっています。60%が失業しているという経済崩壊状態にあるなかで、女性たちは家族を食べさせる責任を負っています。貧困ライン以下の収入しかないパレスチナ人家庭のうち11%が女性が戸主の一人親家庭です。
 女性たちがこの紛争の直接の被害者であるにもかかわらず、新たな役割が彼女たちの責任として付け加わるのです。彼女たちはこうした役割を果たすためにしっかりしなければならないし、打撃から立ち直らなければならないのです。女性たちは息子や夫を失ったことに耐え、非常に貧弱な施設で特別の看護を必要とする負傷したり「障害者」になった家族の面倒を見なければならないのです。統計によれば4万3771人が負傷し、6188人が「障害者」になっています。そのうち2660人(43%)が18歳以下の子どもたちであり、4241人が女性です。
 女性たちは家族や学校の友達を失うという悪夢のような経験をしたことから精神的「障害」に苦しむ子どもたちの世話をしています。しかし、特殊な条件下では、普通のこどもたちの日常の健康維持に必要な措置を行うためだけでも、女性たちは強制的な検問所で移動制限が行われていることから医療施設に行くことができないという非常に大きなプレッシャーを感じているのです。
 栄養不良になるのは女性と子どもたちです。諸調査ではパレスチナの出産可能年齢の女性の33%と、5歳以下の子どもたちの35%が貧血状態にあると報告されています。このような健康状態は、ガザや西岸地区の封鎖、度重なる夜間外出禁止令などのイスラエル軍の諸措置や高い失業率などと関係があるのです。
 もちろん数字を挙げるだけでは不十分です。犠牲者や負傷者、身体「障害」者の数を挙げても、一人息子を失った年老いた女性や自分の家と2人の子どもを失った女性の痛みと苦悩を明らかにしたことにはならないのです。
 多数の女性が仕事や学校、自宅に行く際に殺されています。私はガザ南部のネッツァリム入植地近くのテントで社会問題に関する集会をもっていてファシストに殺された3人のパレスチナ人のベドウィン女性や、孫への贈り物を買いに行った際に車の中で他の2人の女性(負傷)と共に撃たれたラマラ出身の90歳のファトマについてまだ覚えています。イスラエル軍との衝突や抵抗運動のメンバーを運んでいた車への砲撃に巻き込まれた女性たちもいます。

 インティファーダ開始後の現実

 この間、233人の女性を含む3856人が殺されました。暗殺された殉教者は330人です。129人の患者(ガン患者や腎臓透析を受けている患者を含む)がイスラエルの軍事検問所で殺されています。
 35人の救急隊員や救急車の運転手が任務中に殺されました。372件の救急車攻撃が行われ、443人の救急車の運転手と救急隊員が負傷しています。医療施設への攻撃は349回に及びます。救急車の活動妨害は1905回です。
 銃撃、砲撃、暗殺などの日々のパレスチナ人民に対する攻撃は、パレスチナ人女性の精神的健康に影響を与えています。
 占領を原因とするプレッシャーに加え、女性たちは女性を全般的に制約する価値観を持ち、それを女性に強制する伝統社会の内部で生きている。
 現在も闘われているインティファーダは、特に女性と子どもたちに影響を与えている。家庭内の女性は、テレビが虐殺や家屋破壊などについて報道すると、それに反応して苦しんだり悩んだり、感情を露わにするが、同時に彼女らは他の家族の成員の苦悩や恐れの感情を和らげてあげなければならないのです。女性たちは二重の役割を演じなければならないし、二重の影響を受けることを強いられます。男性に比べて女性が、彼女たちが感じる日々の悪夢的経験を原因として、睡眠障害や、不安、悪夢などのさまざな心理的障害に悩みがちなのはこうした理由からです。
 国際婦人デーに際して、われわれはイスラエルの監獄には6000人の政治犯がいることを忘れてはなりません。うち121人は女性であり、2人は獄中で出産し、この2人の子どもたちは牢獄の中にいます。
 1967年から2005年までの間に、65万人のパレスチナ人が牢獄を経験しています。
 パレスチナの女性の自由と独立をめざす闘いは、不当行為にたいする民族的な闘いや、あらゆる種類の不正と搾取から解放された市民のためのよりよい社会をめざす闘いと不可分のものです。私たちの間の連帯は、私たちすべてにとって自由でよりよい未来をめざす闘いの強力な武器なのです。

 結論

 占領と社会的伝統、社会的・経済的喪失を原因として以上のようなあらゆるストレスを受けているにもかかわらず、彼女たちはパレスチナ人民の反占領闘争とわれわれの共同体の発展のための闘いにおいては真の英雄なのです。このことを確認したうえで私は一人の活動家として、われわれの共同体の内部で将来、女性たちが大きな役割を果たすことを強く信じています。占領と諸制約にもかかわらず、最近おこなわれたパレスチナ議会選挙への女性の参加は広範なものでした。
 女性たちは、国会議員選挙と地方選挙のいずれにおいても、法的に認められた20%の議席割り当て分を獲得しました。実際には国会での議席の22%を獲得しています。彼女たちは、自分の属する諸団体や市民社会の諸組織、政党などの全社会機構のなかでのたゆみない強力な活動を通じてこの成果を実現したのです。
 このような成果は、今後の数年間、最近の選挙でのハマスの勝利という情勢下でも、パレスチナの女性の地位向上のために生かされなければなりません。

 女性の投票動向

 1月25日の国会議員選挙では、投票した人の53%が女性であり、うち73%がハマスに投票しました。過去5年間のインティファーダの期間、パレスチナ人民に対する攻撃は激烈でした。そして、ハマスを選ぶことによって、投票した人々は、占領を拒否し、抵抗闘争を支持し、パレスチナ自治政府の腐敗に対する拒否の意思を表明しました。人々は、ハマスは人民の利益を保護し、占領と対決して人民の生活を防衛できる党であると考えたのです。
 ハマスによる女性のモスクでの宗教教育への参加の勧誘は、強固な伝統的社会から拒否されませんでした。そこでは、戦争が人々の、とりわけ女性と子どもの心理的安定を破壊しているのです。女性にとっては比較的容認された活動を行うためということで家から外へ出るチャンスだったのです。
 ハマスは地域のイスラム政治勢力の支援を受けて、強力に組織され財政的にも豊かな党です。他方、左翼諸政党などの他の政党は、世界の社会主義的政党が勢力を持っていた時代に受けていた強力な政治的支援を失いました。
 諸団体や諸政党、仕事や組合活動への女性の参加については今後大きな期待が持てるとはいえ、女性の基本的な社会的権利を保証する社会的・政治的政策を実現するために、パレスチナ女性のために、そしてパレスチナ女性と共に成すべき仕事はまだたくさんあります。こうした観点から、帝国主義と対決する国際連帯の一環である女性の間の連帯は巨大なインパクトを与え、大きな影響を与えるでしょう。
 国際婦人デーにおける私の全女性に対するメッセージは、われわれは強く、さらに強くならなければならないということです。また、さまざまな領域における組織的で継続的な活動によって将来のよりよい世界をめざす真の変革を実現できるということです。

翻訳資料

 翻訳資料-2

 ドバイ・ポート・ワールド社騒動について

 港湾労働者の階級的見解

 
06年3月10日  丹沢 望訳

 【解説】

  原文は、ランク・アンド・ファイルの港湾労働者のために港湾をめぐる階級闘争について解説する『マリタイム・ワーカー・モニター』第8号に掲載された論文(米・レーバー・ネットに掲載)。このパンフレットは、ILWUローカル10のジャック・ヘイマン氏らが編集者となり、これまで港湾労働者の階級的労働運動を発展させるために論陣を張ってきた。
 今回の論文は、アラブ首長国連邦の構成国であるドバイの港湾関連企業のドバイ・ポート・ワールド社に米東海岸の諸港湾の貨物取り扱い施設を売却することを承認するという問題をめぐる、ブッシュ政権の思惑と、それに対する労働組合の既成指導部の反階級的対応を批判したものである。
 ブッシュ政権はアラブ保守政権への米港湾利権の売却を通じて、アラブ保守諸国を取り込み、石油利権の確保とイラク侵略戦争へのさらなる協力を取り付けようとした(とりわけドバイは、米軍の船舶に軍需物資などの供給を行い、イラク侵略戦争に全面協力してきた)。
 ブッシュのこうした策動に対し共和・民主両党からアラブへの米港湾施設の売り渡しは、米の国家安全保障を損なうとして、激しい反対運動が開始された。
 問題は港湾関係の労組既成指導部がこうした反対運動の動きに呼応して、「国家の安全保障」が危機に陥るという論理を前面に掲げて、ブッシュの港湾施設売却に反対する運動に港湾労働者を組織する活動を開始したことである。
 ブッシュが港湾施設のドバイの企業への売却を推進している真の目的を暴露し、それと闘うのではなく、港湾労働者を「テロとの闘い」「国家の安全保障」のために動員しながら、右からブッシュと対抗するという方法は完全に間違っている。
 このパンフレットは、ブッシュの米港湾のドバイの企業への売却の真の目的が、イラク侵略戦争体制の再建と石油資源略奪戦略の強化であることを暴露するとともに、外資による港湾運営が、米の労働法の適用除外や組合潰しに結びつくこと、他方で、港湾の安全保障という論理が労働組合破壊をもたらすことを批判して闘わなければならないことを明らかにしている。とりわけ港湾関係の労働組合の既成指導部が民主党指導部と一体となって行っている排外主義的宣伝に反対し、階級的労働運動を対置し、港湾労働者が国際的に連帯して闘うことの重要性を鮮明にしているのである。

………………………………………

 イギリス所有のP&O社(半島・東洋汽船交通会社)から、アラブ所有のドバイ・ポート・ワールド社(DPワールド)への、アメリカ東海岸にある諸港湾の貨物取り扱いターミナルの売却に関してさまざまな騒ぎが起きている。この売却は港の安全を害するだろうか? 反組合的なドバイ・ポートの経営者は、1998年のオーストラリアの港湾労働者の協約をめぐる争議の際にスト破りを育成しているのだから、ILAの港湾労働者に対しては今日、何を仕掛けてくるであろうか? われわれの雇用は外国資本が所有する会社の経営者によって脅かされるであろうか? なぜブッシュ大統領はアメリカの港湾の売却を支持しているのだろうか?
 これに対し、海運労働者は注視し、注意深く観察する必要がある。鳴り物入りの愛国心を煽り立てる活動がなされているなかで、共和党と民主党、組合役員とCEO(最高経営責任者)たち、国家安全保障担当の諸機関と選挙に出馬しようとしている政治家たちの間に何らかの意見の相違を見つけだすことは難しい。
 そもそも海運業の性格は国際的なものである。海運業は、コロンブスがアメリカ大陸沿岸に上陸する以前にさえ、香料諸島(モルッカ諸島)への最短路を発見しようとしていた。今日では、アメリカの港湾で荷揚げされる乾性貨物の95%はほとんど外国籍の船舶で運搬されており、アメリカの港湾のほとんどの積み降ろし施設は外国企業が所有しているものである。ドックや船舶が米企業所有のものであろうと、外国企業所有のものであろうと、われわれはそこでの組合の活動条件の改善のために闘ってきた。同様のことは、自動車のようにアウトソーシングで生産された製品に対する態度にもあてはまる。キーポイントは、それが組合労働者によって作られているということを確認することだ。アメリカには組合員が車を生産しているカリフォルニア州フレモントのトヨタのように外国資本の自動車生産工場が存在する。他方、フォードのようにケンタッキー州の組合のない工場でサターンを生産しているアメリカ資本所有の企業もある。国旗の色にではなく、組合員が生産しているか否かに注目してほしい。

 船主の組合破壊の詐欺行為はどのように行われているか

 第2次世界大戦後、アメリカの船主は、船舶を外国籍に登録し始めた。これらの船舶は、籍をおいた国の港に寄港したことは決してなかった。主に第3世界諸国出身の船員は、登録した国の港から来たわけではないし、アメリカやヨーロッパに居住する金持ちの船主も、登録した国の出身ではなかった。ではなぜ、船主は船を外国籍に登録したのか? もちろん利益のためである! 船尾に「便宜置籍船」の旗である外国の国旗を掲げることによって、これらの船舶はアメリカの法律の適用を逃れた。つまり、課税もされず、非組合を認められ、環境規制からも除外されたのである。共和党政権、民主党政権のいずれにせよ大企業が支配しているアメリカ政府からのゴーサインが出たので、どん欲な船主にとっては順調な船出となった。外洋航海船に乗り組む船員を組織する組合は、船籍いかんにかかわらず船員を組織する有効な組織計画を立てていなかった。資本家たちが同様のことを行った北アメリカでもヨーロッパでも組合は打撃を受けた。資本家たちは、反撃するための組合もなく奴隷的条件で働いていた第3世界の船員達を徹底的に搾取して巨大な利益をあげたのである。

 赤狩りが海運労組の首を切る

 同時に政府と資本家は反共魔女狩りを行った。それは特に海運労組を対象にしたものであった。AFLとCIOの双方の海運労組を建設する際に活躍した多くの戦闘的な海運労働者がパージされた。全国海運労組の偉大な雄弁家であったフェルディナンド・スミスなどはジャマイカに追放された。船員・コック・客室係の組合の委員長であったヒュー・ブリゾンは、魔女狩りのための議会内委員会であったHUAC(非米活動委員会)に対する偽証罪で投獄された。海上消防士組合のビル・ベイリーと船員組合のシャウン・マロニーはパージされた。政府はILWU委員長のハリー・ブリッジズも4回にわたって追放しようとしたが失敗した。ジム・ハーマンを含む多くの者がILWUに新天地を見いだし、この組合内で指導的役割を果たした。
 恐らく最悪の組合破壊は第2次世界大戦後、カナダで行われた。船員たちは戦後、労働条件の改善のためにストを行った。船舶所有者はカナダ船員組合の指導部に対してレッド・カードを出した。船というものは世界各地でのさまざまな関係をもっているので、カナダの船員たちは国際的なスト支援を受けたが、にもかかわらず、船舶所有者は政府の支援を受けて指導部を分裂させ、組合を破壊し、すべてのカナダの船舶を外国籍に置くことができた(エレーヌ・ブリエールの「裏切られし者」という映画はこの悲劇的闘争を非常によく記録している)。

 「便宜置籍船」から「便宜置籍港」へ

 海運業の他の側面、つまり陸地業務あるいは船内荷役の面は、コンテナ化の出現によって革命的に変化した。この部門では港湾労組は弱体化されたが、船員労組のように破壊されはしなかった。常により多くの利益を求めていたレーガン−サッチャー時代の資本家の持論は規制緩和と民営化であった。それは容赦のない非組合企業の競争の拡大と資本主義的弱肉強食を認め、鉄道や港湾施設、炭鉱や森林などの公有財産を売り払うことを認めるものであった。鉱山労働者を徹底的にうち砕いた後、イギリスのサッチャー首相は、労働運動の側からの何らかの組織的反対もなしに、1989年に港湾労働者に雇用保証を与えていた全国港湾労働機構を廃止することができた。各地の港湾では、組合に組織された港湾労働者が臨時の労働者に取って代わられるにつれて、次々と組合が解体していった。リバプールの港湾労働者はイギリスの港湾で最後の決定的な闘いにうって出た。彼らは勇敢に闘ったが、裏切った組合指導部によって孤立させられ、ついには敗北した。しかし、彼らが世界中の港湾労働者に与えた教訓は資本主義の下では、労働者にとって雇用の保障などは存在しないということであった。
 現在では、「自由貿易協定」(FTA)が世界を席巻している。資本家にとっては、それは雇用、賃金、労働時間、利潤などのすべてに関して雇用側が自由に行動できるように労働法を変えることを意味し、他方、組合側は、ストライキ行動を法的にできなくなるようにされることを意味する。組合官僚は「自由貿易」協定を何もしないことの口実にしている。彼らは、民主党の「労働者の友」を選挙で選出することに焦点を移そうとしている。他方で、諸航空会社は罰せられることなしに組合との協約を破っている。リバプールの港湾労働者が挑戦的に資本家たちや政府や何もしない組合指導部に示したように、労働者側の主要な武器は国際的連帯行動である。
 先月、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカの数千人の港湾労働者がヨーロッパ議会の前で、港湾の規制緩和計画に反対してデモを行い勝利した。ストラスブールの抗議行動以来、依然として8人のベルギーの港湾労働者が投獄されている。港湾労働者の組合は彼らの解放を要求すべきである。
 この規制緩和計画が通っていたら、「便宜置籍船」という反組合的な船上流行病をタラップをつうじて港湾へと拡大していたであろう。この計画は、貨物取り扱い業者が組合との協約を無視して、港湾や船舶での作業をさせるために船の乗組員や臨時の非組合員の陸上労働者を使うことができるようにするものだ。これらが、東海岸の貨物ターミナルを売却したイギリスの会社P&Oがオーストラリア籍で登録するように試みた理由だ。すべての海運労働者、船員、港湾労働者、臨時雇いは、世界規模の海運業者、船主、貨物取り扱い業者、荷役会社に対する現在進行中の闘いにおいて、それらのオーナーがどのような国籍を持つかに関係なく、国際的に団結する必要がある。世界貿易が急発展すれば、われわれは船舶上でも、港湾でも全員が組合にとってよりよい労働条件を獲得することができる。このドバイ・ポート・ワールドのやり方への保護主義的な反動として国際貿易が抑制されれば、労働者の雇用もまた失われる。
 労働者間の連帯のもう一つの輝かしい例は、アメリカ籍の組合のない企業であるウインヤー荷役会社に対するピケットをはっている最中に数百人の機動警察隊員に攻撃されたチャールストンの港湾労組が勝利をおさめた協約闘争である。スペインの港湾労働者の組合であるラ・コオルディナドーラの支援を得て、ILAローカル1422は、デンマークの船会社のノルダーナとの協約に調印することができた。戦闘的なピケットラインに参加したとしてサウス・カロライナ州によって弾圧されたアフリカン・アメリカンと白人の港湾労働者のチャールストン5の勝利は、強力な労働者間の国際的連帯を通して勝ち取られたものである。

  「良い」雇用者対「悪い」雇用者という神話

 今回の事態は、アメリカの政府や市町村、州などが所有している港湾ではない港湾施設の売却の問題だ。外国籍の会社に対する港湾施設の売却はこれまでもずっと行われてきた。西海岸の港湾では、大部分の貨物が外国籍の会社によって操業されている荷揚げ施設で処理されている。マエスク(デンマーク)、コスコ(中国)、APL/NOL(シンガポール)、三井(日本)、ハンジン(韓国)などがそうである。このうちいくつかは、政府が部分的に所有しているものもある。
 すべての雇用者はみな同じである。アメリカの雇用主はよくて、外国の雇用主は悪いと考えるのは事態を見誤らせるものだ。彼らは自由に雇用や諸手当を削減し、労働条件を引き下げることができるように組合の力を骨抜きにしながら、われわれ労働者をなにがなんでも徹底的に搾取して利潤をあげようとしているのだ。これらの泥棒たちは、トランプ・ゲームのように「自由貿易」のテーブルに座って、労働者を抑えつけて利益を最大にすることのみを考えて、会社を運営する策を練っているのである。これが資本主義の野獣の本質なのだ。1993年にサンフランシスコでILWUの主催で開催された環太平洋港湾労働者会議では、パナマの代表がパナマ運河地帯のSSA(アメリカ貨物取り扱いサービス社)の港湾施設で港湾労働者を組織しようとして組合のオルグがどのようにして殺害されたかについて明らかにした。オークランド港のSSAの貨物取り扱い施設の門前では、イラク戦争開戦時に港湾労働者とデモ隊がいわゆる非致死性の武器で、背中や顔を撃たれた。最近のILWUとPMA(太平洋海事協会)との間の港湾協定を拒否しようとしたのもこの同じ会社である。1998年のオーストラリアの港湾労働者のストライキの際に、ドバイ社の管理する港はスト破りを訓練するために提供された。まったく同様に、ドバイ社はアメリカのイラク戦争のために、その管理する港を提供した。SSAとDPワールド社にとってはすべては金、金、金なのだ。
 海運貨物荷揚げ施設をDPワールド社に売却したイギリスのP&O社の血にまみれた手について見てみよう。2004年、P&O社はブエノスアイレスの荷揚げ施設を手にいれ、組合(SUTAP)との交渉や組合の職場世話役のダルド・ビアーニの復職を拒否することによって、組合がストライキをせざるをえない状況を強制した。P&O社の経営者であるシロ・デ・マルチーニは、数千人の組合闘士や左翼が「行方不明」となった残虐な軍事独裁者・ビデラ将軍(1977〜1983)の時代に裁判官であった。それは、アメリカの財界の利益の安全を図るために、民主的に選挙されたアジェンデ政権を軍隊が転覆した1973年のチリの血にまみれたクーデターの場合と同様である。1998年には、オーストラリアのP&O社は、港湾労働者たちと闘っていたパトリック・貨物取り扱い会社に支援されて、MUA(オーストラリア海運労組)に対する法律的攻撃を選択した。その前年にはP&O社は、MUAを破壊するために産業関係相のピーター・レイスの秘密計画に関与した。それが公的に暴露されると、この計画は放棄された。

 ハリー・ブリッジズの言葉

 「国家の安全保障」とは労働者に対して振り下ろされる棍棒だ、と
ハリー・ブリッジズは言っている。多くの港湾労働者は港湾の安全という問題に関心をもっている。国家の安全保障問題が取りあげられたのはこれが初めてではない。ハリー・ブリッジズの指導下で、ILWUは、「国家の安全保障」という詐欺的言辞に対し、それが海運労働者に対する選別攻撃だとして反対し、政府の「安全保障」委員会に参加することを拒否した。元委員長のジミー・ハーマンは、海上臨検に反対する委員会を主宰した。なぜならば、ILWUがマッカーシー時代には、沿岸警備隊や海上警察による臨検を海運産業の組合闘士を禁圧する手段として見ていたからである。
 だが、今日、ILWU本部の役員であるスピノザ委員長、マッケラスとその仲間連中は方針を変え、「国家安全保障」戦略へと戻った。彼らは海事安全保障法を受け入れ、政府の「安全保障」委員会に参加した。9・11以来、われわれは諸港湾の軍事化を目撃してきた。われわれは人権侵害的な経歴調査や、無人で鍵のかかった門での写真付き身分証明書の提示を受け入れることを強制され、休憩室を含む港湾施設においてカメラで監視されている。そして現在では、船舶の入口に入るための身分証明用のブレスレットを着用することを強いられている。次は何だ。鎖か? 国土安全保障省は、ムスリムや中東・アフリカ・アジア出身のILWU組合員の経歴調査をやるようになるのだろうか? 
組合の権限であるハイヤリングホール(雇用事務所)が港湾で誰が働けるかを決定するのではなく、政府の経歴調査によってそれが決められるようになるのだろうか? 国土安全保障省や政府は、かつてILWU委員長のジム・ハーマンや他の港湾労働者を「国家の安全保障」への脅威として港湾から排除したように、組合闘士を「港湾の安全」を脅かすものとして排除するであろう。
 2002年の協約交渉の際に、国土安全保障省の長官のトム・リッジは西海岸の港湾を軍隊で占領すると脅した。彼は、なぜならILWUの港湾争議は国家の安全保障を崩壊させるからだと主張した。もし港が軍事基地のように運営されれば、ストライキや抗議の権利などの基本的権利はどうなるであろうか? ILWU本部の役員たちは、右翼的で反組合的な言葉をオウムのように繰り返している。「われわれは防衛の第一線にいるのだ」と。「テロリスト」と闘っているとされている警察は、デモ隊が合州国憲法第一修正条項で規定されている権利を平和的に行使しているだけなのに、オークランド港での反戦抗議闘争の際に港湾労働者を銃で撃った。「テロとの戦争」を行うことは危険なゲームである。なぜならば、労働者は「テロリスト」の脅威を明確に定義していないのに、政府はそれを明確に定義しているからである。ではだれがわれわれを支持
しているか。オークランド市長のジェリー・ブラウンではない。彼は、「港湾の安全保障」にとって脅威になると宣伝されている貨物取り扱い施設のドバイ・ポート・ワールド社への売却に反対し、ずうずうしくもAPLでの集会に現れた。だが、彼は港湾労働者やデモ隊に対する警官の残虐な攻撃を支持しているのである。
 ブッシュは、DPワールド社への貨物取り扱い施設の売却についてふざけた見解を述べている。ブッシュは、この取引を断念すればアラブ世界の反米感情を挑発するだろうなどとどうして言うことができるのだろう。ブッシュとその父親は、数万人のアラブ人男女と子どもを殺害し、中東をアメリカ帝国主義に対して怒りで燃え上がらせた2度の対イラク戦争を行った。これまでと同様に、ブッシュ家は中東との強力な絆を利用して石油への巨大な投資を行ってきた。DPワールド社への貨物取り扱い施設の売却は、港湾労働者にとっては何の変化ももたらすはずはない。だが、組合は「港湾の安全保障」が、組合の権利をさらに制約するために利用されないように警戒しなければならない。
 「港湾の安全保障」問題は、共和党を右から後追いする民主党によって利用された。両党は組合破壊の「自由貿易」協定を支持し、奴隷労働法であるタフト・ハートレー法を支持し、対イラク戦争を支持した。港湾労働者は公有の港湾を守り、組合を通じた海運業の労働者管理を貫くことによって自分たち自身を防衛しなければならない。だがそれは簡単で安易な闘いではない。企業によって全面的に支配されている現在の政府を取り替えるには、海運業を国有化する労働者政府のために闘う労働者党を建設することである。