COMMUNE 2006/12/01(No.367 p48)

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12月号 (2006年11月1日発行)No.367号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  米の戦争切迫下の北朝鮮危機

□北朝鮮への経済危機で突出し戦争を煽る安倍
□慢性的食糧危機に喘ぐ北朝鮮経済の構造問題
□朝鮮半島はいかにして南北に分断されたのか

●翻訳資料  米国家安全保障戦略(下)

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/ノムヒョン政権打倒へゼネスト−−室田順子

    10・8千三里塚全国集会

三里塚ドキュメント(9月) 政治・軍事月報(9月)

労働月報(9月)  闘争日誌(8月)

コミューン表紙

     愛国心と排外主義

 安倍政権発足早々、北朝鮮による核実験実施発表とそれに対する国連安全保障理事会での制裁決議採択という重大事態が続いている。改憲突撃内閣として出発した安倍政権だが、もともと安倍自身、拉致問題での強硬姿勢で頭角を現したことに示されるように北朝鮮侵略戦争への突入を強烈に意識しており、まさに改憲を待たず、日米枢軸強化のもと北朝鮮侵略戦争が現実のものとなる情勢に突入した。国連安保理では日本が議長国となって、全会一致で国連憲章7章に基づく制裁決議1718を採択した。これは対北朝鮮の軍事行動に直結する決議である。米・日帝国主義が現実的に侵略戦争を発動するところまで事態は進んでいるのである。北朝鮮スターリン主義の断末魔の危機に乗じての侵略戦争発動に対して全力で対決する時が来た。
 世間では「北朝鮮の暴走に国際社会が一致してブレーキをかけようとしている」という解説が覆っている。たしかに北朝鮮スターリン主義の核実験は核廃絶を求める全世界の労働者階級の闘いに敵対するものであり、南北朝鮮人民の生命と生活を危機に追い込む許し難い暴挙である。しかし、それは労働者階級の立場に立ってのみ糾弾できるものである。このような窮境に追い込んだ帝国主義者が自分たちの侵略戦争を合理化するために北朝鮮非難をあおり立てることは絶対に許せない。そもそもアメリカはすでに一万発以上の核弾頭を持ち、核実験を繰り返し、現に劣化ウラン弾という核兵器をアフガニスタン、イラクの人民の頭上に撃ち込んでいるではないか。そうやって何万何十万という人民を規に虐殺しているのが米帝なのだ。
 そして日帝の中でも、北朝鮮核実験に乗じて「日本も(核武装について)議論しておくのは大事だ」という政権中枢の麻生外相や中川昭一自民党政調会長の発言が飛び出した (安倍首相自身が02年に核武装発言している)。とんでもないことである。日帝は世界第2の経済大国であり、戦後核政策によってすでに5千発の核爆弾を作れるプルトニウムを保有している。その気になればすぐにも核兵器を保有することができるのだ。そして日本が潜在的核大国であることは朝鮮・中国・アジアの人民は誰もが知っている。かつて侵略戦争で2000万人もの人民を虐殺し、自らも広島・長崎の原爆を被った日本が核武装の道に踏み込むことはどんなことがあっても許されないことであり、「論議」自体が人の道を外れているのだ。
 安倍極右改憲突撃政権の本性はこうして発足早々明らかになった。安倍は臨時国会において何よりも教育基本法改悪を最優先課題にしているが、その最大の狙いも北朝鮮侵略戦争に突入するための 「愛国心」教育の徹底にある。愛国心とは排外主義と一対である。国のために命を投げ出せ、国のために他国の何の恨みもない人びとを殺せということだ。愛国心教育と日教組壊滅(教育労働者の団結体の破壊)のための教基法改悪を阻止することが当面最大の闘いだ。「日の丸・君が代」の強制は違憲・違法だとした9・21東京地裁判決は、3年間にわたり不屈に不起立・不伴奏の闘いを貫いた教育労働者が切り開いたものだ。まさに少数であっても譲れないものは譲らずに闘いぬいた職場からの「戦争協力拒否闘争」の勝利の地平である。この力をバネに教育労働者を始め、全労働者階級の力で教基法改悪を絶対に阻止しょう。(た)

 

 

翻訳資料

 米国家安全保障戦略〔下〕

 ブッシュ・ドクトリン改訂版 2006年3月

 土岐一史・広田功訳

 第1章 Y.C.3.安定性と成長を確かなものにするための国際的な金融システムの改革(省略)

 第2章 Z 社会を開放し、民主主義の基盤を確立 することによって成長の循環を拡大する

 第1節 2002年国家安全保障戦略の総括

 世界の貧困者を救うことは、戦略的優先課題であり、道義的責務である。経済成長、責任ある統治、個人の自由は密接に結びついている。かつての腐敗した、非効率的な諸政府への海外援助は、窮迫している人々を助けることができなかった。それどころか、民主的改革を妨げ、腐敗を助長しただけだった。合州国は、実りのある改革、透明性の促進、人民の暮らしの向上などの、目に見える成果を達成する開発計画を推進しなければならない。合州国主導のもとで、国際社会は「モンテレイ合意」によってこうした方法を承認した。

 第2節 B.現在の情勢 成果と課題

・成長を促進し、改革を強化すること。本政権は、「ミレニアム・チャレンジ・アカウント・プログラム」によって開発戦略における革命の先駆者となり、正しく統治し、人民に投資し、経済的自由を推進している国々を支援している。……
・エイズなどの伝染病との闘いの形勢を一変させること。……
・債務持続可能性と私的資本市場への道を推進すること。……
・緊急の必要性にこたえ、人民に投資すること。……われわれはアフリカ農民の生産性を高めるために、科学、技術、市場面での刺激策を使い、アフリカ飢餓撲滅活動を開始した。……
・民間部門の力を解き放つこと。……
・腐敗と戦い、透明性を高めること。……
 だが、多くの課題が残っている。たとえば、
・貧困と病気に苦しみ続ける世界の何百万もの人々を救うこと。 
・援助の分配が、よい統治と健全な経済政策を強化するようにすること。
・貧困国が自国の開発戦略を主体的に運営する能力を養うこと。
 第3節 C.今後の方針
 アメリカの国益と道徳的価値は、われわれを同じ方向へ駆り立てる。世界の貧しい市民と最貧発展途上国を支援し、これら諸国が世界経済に編入されるのを援助することである。……
 開発は外交と国防を強化し、安定し、繁栄した、平和な社会を築くことによってわが国の国家安全保障への脅威を長期にわたって削減する。……
. 変革的な外交と効果的な民主主義
 変革的な外交とは、多くの国際的パートナーと協働して、市民の要求にこたえ、国際体制の中で責任をもった振る舞いを行う民主的で正しく統治された国家を築き、維持するということである。……われわれは、諸政府が自己を改革するための外部からの刺激策を作り出し、こうした過程を促進する手助けをするが、究極的には、開発のために必要な一歩を踏み出すことを決定しなければならないのはその国自身なのである。……
.海外支援をより効果的にする
 本政権は、国務省の中に海外援助責任者(DFA)のポストを新設した。DFAは、引き続き副長官レヴェルのポストとなる米国国際開発庁(USAID)の長官を兼任し、既存の法的要求に合致しつつ、国務省とUSAIDの海外援助についてのすべての権限を持つことになる。……
 この新たな権限によって、DFA兼USAID長官は、5年間の国別援助戦略や年度毎の国別援助事業計画など、調整された海外援助戦略を作成する。DFA兼USAID長官はまた、MCCや世界エイズ対策調整官室など、合州国政府の他の機関を通じて行われる援助についても指導する。……

 第3章 [.世界の他の主要勢力との共同行動のための計画を練り上げる

 第1節 A.2002年国家安全保障戦略の総括

 世界の最も強力な国々との関係は、米国家安全保障戦略の中心をなす。協力的関係の枠内で、とりわけ古くからの、また親しい友好国や同盟国との間でアメリカの利害を追求することをわれわれは最優先する。同時にわれわれは――歴史的には異例だが――強国同士の基本的な対立の不在という機会をつかまなければならない。次に優先されることは、それゆえ、過去の時代に世界を分断した強国同士の対立の再発を防止することである。新しい時代には新しいアプローチが必要である。それは友好国同士の間に無理からぬ意見の相違があるときでも効果的な行動ができるほど柔軟であり、それでいて世界が直面する課題に立ち向かえるほど強力なものである。

 第2節 B.現在の情勢成果と課題

 合州国は国家安全保障上の優先課題の多くに関してかつてない水準の協力を得てきた。
・反テロの地球規模の連合が、広範な協力と共通の決意をもって成長し、深化されてきた。……
・われわれは、世界中のあらゆる国や、数多くの多国籍機関と協働して、テロリストや国境を越えた犯罪者から国土を守るすべての国の能力を向上させてきた。
・われわれは、北朝鮮に核プログラムを放棄するよう圧力をかけるにあたり、歴史的ライバル同士の異例の協力を達成した。
・われわれはヨーロッパの同盟国や国際機関と協力して、イランに核不拡散の確約を尊重するよう圧力をかけてきた。
・北大西洋条約機構(NATO)は、現下の脅威に対処するために自らを変革し、バルカン半島やアフガニスタンの安定化のために主導的役割を果たし、またイラクの軍事指導部が自らの安全保障上の脅威に対処できるように訓練を施している。
・われわれは、何十年にもわたる不信を脇に置いて、インドとの関係を築いてきた。……
 同時に、合州国の他の国との関係は、意見の相違や率直な意見の交換に耐えうるほど強力なものになっている。
・われわれの古い緊密な友好国の中には、イラクでのアメリカの政策に反対する国もある。わが同盟国との間で、独特で発展的な本質をもつ地球規模のテロリストの脅威にいかにして最善の対処をするかについて継続中で深刻な論争がある。
・われわれは、WTOドーハラウンドの貿易交渉において、農業助成金を削減し、成功をかちとる道筋において決裂した。また、環境保護のための最も効果的な方法について、他の主要国とのコンセンサスを作りあげるに当たって問題に直面している。

 第3節 C.今後の方針

 戦闘的なイスラム過激主義との闘いは、21世紀初頭における重大なイデオロギー闘争であり、大国はすべて同じテロリストに反対する陣営に属している。このような状況は、20世紀のイデオロギー紛争のように、大国がイデオロギーにおいても国益においても分裂していたのとは大きく異なる。
 大国間の合意が実現する可能性は、合州国に大きなチャンスを与えている。とはいえ、いくつかの課題は克服しなければならない。変革の適切なペースについてわれわれと意見を異にする国もある。自由市場と効率的な民主主義を言葉では支持するが、自由のためにほとんど行動しない国もある。以下の5つの原則は、主要な大国の中央機関との関係に関するわが国の戦略を補強するものである。
・第1に、これらの関係は正しい脈絡に位置づけられなければならない。地域的、世界的な現実を無視した2国間政策には、成功の見込みがない。
・第2に、こうした諸関係は、協力関係をより恒久的、効果的、広範囲なものにするために、地域的・世界的にも適切な機関によって支援されなくてはならない。既存の機関で新たな課題に対応できるように、改革できるものについては、われわれはパートナー諸国と協力してそれを改革しなければならない。適切な機関が存在しない場合は、われわれはパートナー諸国と協力してそれを創設しなければならない。
・第3に、われわれは、諸国家によるそれらの国民の処遇のありかたによって、われわれの利害が影響を受けることはないかのような態度を取ることはできない。効率的な民主主義を促進することにアメリカが関心をもつのは、正しく統治されている国家は正しく行動する傾向があるという歴史的事実に基づいている。われわれは、すべてのパートナー諸国に対し、国民の繁栄を増進し、合州国との緊密な関係を強固なものにする最も確実な道として、自由を拡大し、法の支配や個人の尊厳を尊重することをすべてのパートナーに促していく。
・第4に、われわれは他国が行う選択を指図しようとするものではないが、そうした選択がよってたつ基準となっている評価に影響をおよぼすことは追求する。われわれはまた、諸国家が賢明ではない選択を行った場合は、適切にリスクを回避する措置を取らなければならない。
・第5にわれわれは必要ならば単独で行動する覚悟を固めなければならないが、同時に同盟諸国やパートナー諸国との持続した協力なしには、この世界で恒常的な成果を達成することはほとんど不可能であることを認識しなければならない。

1.西半球

 これらの原則は、合州国の国家安全保障の最前線である西半球で、他の諸国との諸関係を築く導きの指針となる。われわれの目標は完全に民主的で、善意や安全保障上の協力によって結合され、全国民が成功のチャンスを持つ半球である。圧制者やそれに追随する者は、異なった時代に属する者たちであり、彼らがこの20年間の進歩を逆戻りさせることを許してはならない。この半球の諸国は、持続的な政治的・経済的成長への道を歩むように支援されなければならない。反自由市場のポピュリズムの欺瞞的宣伝が政治的自由をむしばみ、この半球の最貧困層を貧困の悪循環に追いやることを許してはならない。アメリカの直近の隣国が安全でなく、安定していなければ、アメリカ人もまた安全ではないのである。
 西半球に関するわが国の戦略は、カナダとメキシコとの重要な関係を深化することから始まる。それは、この地域全体に拡大しうる共通の価値と協力的な政策の基礎をなす。われわれは、西半球の隣国と協力し続け、不法移民を減らし、進歩から取り残された人々にとっての経済機会の拡大を推進しなければならない。われわれはまた、中南米やカリブ海諸国の、民主的価値への関与を強めている地域指導者たちとの戦略的関係を強化しなければならない。そして、地域のパートナー諸国と協働し続け、OAS〔米州機構〕や米州開発銀行などの多国籍機関をより効果的にし、地域の安定、安全、繁栄、民主主義的発展を脅かす脅威に対処するための共同行動をよりよく推進できるようにしなければならない。これらのパートナーシップは、この地域で戦略的に優先されるべき以下の4つの活動を前進させる。すなわち安全を改善すること、民主主義的制度を強化すること、繁栄を促進すること、国民に投資することである。

2.アフリカ

 アフリカは地政学的重要性をますます高めており、わが政権の上位の優先課題である。……
 アフリカの潜在力はこれまで、植民地的な悪政と何人かのアフリカの指導者の誤った選択という苦々しい遺産によって抑え込まれていた。合州国は、わが国の安全保障が、アフリカの人々と協力して、脆弱で破産した国家を強くし、未統治地域を効果的な民主国家の支配下に置くことにかかっていることを認識している。……

3.中東

 広義の中東諸国は、今も世界の注目に値する地域である。あまりにも長い間、あまりにも多くの中東諸国が自由の欠如に苦しんできた。抑圧は、腐敗、経済の不均衡または停滞、政治的敵意、地域紛争、宗教的過激主義を助長してきた。……だが、中東の人々は世界の他の諸国民と同様の望みを抱いている。すなわち、自由、チャンス、正義、秩序、平和である。これらの望みは現在、改革を求める運動において表明されている。……
 われわれは、中東諸国が独立し、互いに平和共存し、商品・サービス・思想の開かれた地球規模の市場に全面的に参加することを求めている。われわれは、イスラエルとパレスチナ自治区が、平和的にかつ安全に2つの民主国家として共存することを可能にするフレームワークを作ることをめざしている。
 より広範な地域では、エジプトやサウジアラビアなどの従来からの同盟国での改革と自由のための取り組みの支援を継続していく。イランやシリアなどのような、国内では抑圧し、国外ではテロリズムを支援する抑圧的な体制は、われわれが悪政に反対して人民の側に立ち続けるだろうということを知っている。そしてイラクでは、イラク人民と、圧政から効果的な民主主義への彼らの歴史的な行進を支援し続けていく。われわれは自由の基盤を固め、拡大し、安全と持続する安定を作りだすために、自由な選挙で選出された、イラクの民主的な政府(テロとの戦争におけるわれわれの新たなパートナー)と協働するであろう。

4.ヨーロッパ

 NATOは依然としてアメリカの外交政策の死活的な柱である。……それはまた、ロシア、ウクライナ等々、他の主要なヨーロッパ諸国とのパートナーシップを築き、NATOの歴史的な変革をさらに拡大しつつある。NATOの構造、能力、手続きについての内部改革は、NATOが自らの任務を効果的に遂行できるように加速されなければならない。……

5.ロシア

 合州国は、共通の利害をもつ戦略的問題についてロシアと緊密に協働し、利害の異なる問題にも取り組もうとしている。地理的位置と国力という理由から、ロシアはヨーロッパや隣接する諸国だけでなく、われわれにとって死活的な利害をもつ他の多くの地域、たとえば広義の中東、南・中央アジア、東アジアにも大きな影響力をおよぼしている。われわれはロシアに、国内では自由と民主主義の価値を尊重し、これらの地域での自由と民主主義の大義を妨げないよう促さなければならない。……最近の傾向は、残念ながら民主的な自由や機関を作る努力を衰退させる方向に向かっている。……
 ロシアの隣国の安定と繁栄は、われわれとロシアとの関係を深めるだろうが、そうした安定も、この地域が効果的な民主国家によって統治されない限り玉虫色のものにとどまるだろう。……

6.南・中央アジア

 南・中央アジアは、アメリカの利害や価値観がかつてなく深く関わる大きな戦略的重要性をもっている地域である。インドは大きな民主国家であり、価値観の共有は、両国の良好な関係の基礎である。われわれは、パキスタンが安定し、安全で、民主的な道へ進むことを望む。……
 われわれは、アメリカとインドとの関係を変革する大きな一歩を踏み出した。インドは、自由、民主主義、法の支配へのわれわれのコミットメントを共有する大国である。2005年7月、両国は大胆な協定に署名した。両国が何十年もの間実現できなかった意味のある協力を実現するためのロードマップである。インドはいまや、大国にふさわしい方法で、合州国との協力の下に地球規模の義務を負う用意ができている。
 合州国がパキスタンとの戦略的関係を改善しているときにも、インドとの関係は前進が勝ち取られている。……同時に、われわれと南アジア諸国との関係は、中央アジア全体へのより深い関与の基礎として役立てることができる。そして、アフガニスタンが南アジアと中央アジアという2つの死活的な地域を結ぶ架け橋としての歴史的役割をますます担うことになるだろう。
 中央アジアは、わが外交政策にとっての永続的な優先課題である。……地域全体として見た場合、より大きな戦略の諸要素はそろっている。われわれはそれらの諸要素を同時に追求しなければならない。それは効果的な民主国家と自由市場への改革強化を推進すること、地球規模のエネルギー供給源を多様化すること、安全保障を強化してテロとの戦争に勝利することである。

7.東アジア

 東アジアは、大きなチャンスと長期の緊張とがある地域である。過去10年間、東アジアはたぐいまれな経済的活力の源であると同時に、経済的混乱の源でもあった。東アジアほど将来の繁栄の原動力、技術とグローバル化された貿易を効果的に利用している地域経済はほとんどない。しかしながら、東アジアほど過去の不信を克服するのが困難な地域はほとんどない。
 合州国は太平洋国家であり、東・東南アジア一帯に大きな利害を有している。この地域の安定と繁栄は、われわれの持続的な取り組みにかかっている。貿易と投資の拡大を通じて経済の一体化を支援し、民主主義と人権を推進しながら、前方防衛という考え方に支えられた強固なパートナーシップを維持することである。
……APECフォーラムや東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムなどの既存の機関が死活的な役割を果たしうる。米・ASEAN協力強化協定のような新しい協定や、6者協議やPSIなど、問題解決と行動に焦点を置いたその他の諸協定は、同じようにアジアの国々が共通の課題に対処するよう一致団結させることができる。……しかしながら、こうした国際機関の枠組みは、地域の主要国との健全な2国間関係の基礎のうえに築かれなければならない。
 日本との間では、合州国は1世代にわたって緊密な関係を享受している。世界の1位と2位の経済大国・援助大国として一致して行動することによって、互いの国力は増大し、地球規模の進歩への共同の貢献は増幅される。……
 オーストラリアとの間では、同盟の適用範囲は全地球に及ぶ。イラクやアフガニスタンから歴史的なFTAにいたるまで、両国は協働して安全、繁栄、拡大された自由を保障している。
 韓国との間では、繁栄し、民主的で、統一された朝鮮半島というビジョンを共有している。両国はまた、国内での民主主義へのコミットメントと海外での進歩という考えを共有しており、そうした共通の観点を21世紀における同盟関係を堅持する共同行動という形で実現している。
 東南アジアとの間では、われわれは拡大する経済的自由の活力を祝福し、ビルマの抑圧的な体制のもとで苦しむ人々を含め、地域のすべての人民の政治的自由をさらに拡大することをめざしている。経済的・政治的自由のさらなる拡大を推進することで、われわれはインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイなどの同盟国や主要友好国と緊密に協働するであろう。
 中国はアジアの劇的な経済的成功を集約した国であるが、中国の転換はまだ不充分である。1世代で、中国は貧困と孤立から国際経済体制への一体化へと進んだ。中国はかつて世界的機関に反対していた。いまや中国は、国連安保理やWTOの常任理事国である。中国が世界的な影響をおよぼす国になっている今、中国は自らの義務を果たし、合州国などと協働して成功を可能にする国際体制を前進させる責任ある利害関係者として行動しなければならない。中国が1世紀にわたる経済的貧困から抜けだすのに役立ってきた国際的なルールを履行すること、そうしたルールの体系に付随する経済的・政治的基準を尊重すること、合州国などの主要国と協働して国際的な安定と安全保障に貢献することである。
 中国の指導者は、平和的発展という変革的な道を歩む決定を下したと言明している。中国がこのような態度を守るならば、合州国は平和的で繁栄した中国、そして共通の課題と相互の利害に対処するためにわれわれと協力する中国の登場を歓迎するだろう。中国は、自らの経済成長を推進するに当たって、世界貿易の不均衡よりもむしろ内需の方に依存するようになるならば、世界の繁栄に重要な貢献をし、自らの繁栄を長期間保つことができる。……
 合州国は中国に、改革・開放の道を続けるよう促すものである。それは、この道でこそ中国の指導者は、中国人民の自由、安定、繁栄への正当な要求や熱望にこたえることができるからである。……この道を歩み続けることは、地域と国際的な安全保障に貢献することになるであろう。
 しかしながら中国の指導者は、地域や世界全体の懸念を増大させるような旧式の考えや振る舞いに固執し続けながら、平和的な道を歩み続けることはできないということに気づかなければならない。この旧式のあり方とは、次のようなものである。
・中国が不透明な方法で軍拡を続けていること。
・貿易を拡大しながら、何か自分たちが世界中のエネルギー供給を「ロックする」ことができるかのように、あるいは市場を開放するのではなく市場を指揮することができるかのように――信用を失っていた時代から持ち込んだ重商主義に従うことができるかのように――振る舞っていること。
・資源大国を、それらの国内での悪政、あるいはそれらの政府の対外的な横暴な態度にもかかわらず支持していること。
 中国と台湾は、どちらの側からの強制も一方的な行動もなしに、両者の不一致を平和的に解決しなければならない。
 究極的には、中国の指導者は、集会、演説、信仰の権利を否定したまま、自国の人民に売り買いや生産の自由をおおいに体験させることはできないということを理解しなければならない。中国人民にこうした基本的な自由や普遍的な権利を与えることによって初めて、中国は自らの憲法と国際的責務を尊重し、自らの潜在能力を全面的に発揮することができるのである。……

 第3章 \.アメリカの国家安全保障機関を21世紀の課題と機会に合ったものに変える

 第1節 A.2002年国家安全保 障戦略の総括

 アメリカの主要な国家安全保障機関は、異なった時代に異なった課題に対処することを目的としていた。これらの諸機関は改革されなければならない。

 第2節 B.現在の情勢 成果と課題

  この4年で、われわれは主要な国家安全保障機関の改革という点で重大な前進をした。
・国土安全保障省の創設によって、わが国を守り合州国内でテロリストからの攻撃を防ぐ重要な役割を果たす22の連邦組織が一つの省の下に置かれた。
 この省は国家安全保障にかかわる次の3つの優先課題を中心に扱う。すなわち、合州国内のテロリストの攻撃を防ぎ、アメリカのテロリズムに対する脆弱性を減少させ、被害を最小限にして攻撃された場合の回復を円滑にすることである。
・2004年、「情報関連部門」は1947年の「国家安全保障法」以来最も重要な組織再編を行った。この組織再編で核心的に重要なのは、「国家情報長官」という新しい役職である。それは「情報関連部門」をより統合され、より調和させられ、より効果的に一体化されたものにするために、増額された予算、要員獲得や任務上の拡大された権限や個人的権限を付与された。この変革には、テロと拡散という重要な分野での計画と行動を管理し調整する「国家対テロリズムセンター」と「国家対拡散センター」の新設も含まれる。情報機関としての能力について議論のあったFBIにも変革の手は伸び、現在は「情報関連部門」と全面的かつ効果的に統合されている。
・国防総省は2006年のQDRを完成させた。それには、新たな課題に対処するために国防総省をいかにして適応させ建設していくかが詳細に記述されている。
*われわれは国家、非国家の脅威(WMDの使用、物理的、情報領域でのテロリストの攻撃、機に乗じた侵略を含む)を予測・計算して抑止する将来の戦力を準備するとともに、同盟国を安心させ潜在的な競争者を抑止している。国防総省はまた、テロリスト過激派に対する長期戦に勝ち、敵対的な軍事競争者が合州国、その同盟国、パートナー諸国に挑戦することを思いとどまらせることに寄与するため、先進的通常兵器の開発に投資し、「特殊作戦部隊」を拡充している。
*国防総省は4つの分野の課題の全体についてその能力をよりバランスが取れたものにするために、自らを変革している。
1、強固に定着した軍事的対立のなかで、通常の陸軍、海軍、空軍を使用した諸国家によって引き起こされる、従来型の挑戦。
2、われわれの伝統的軍事優位に対抗するテロリズムや反乱といった手段を使用し、或いは地域の安定に脅威を与える海賊行為、麻薬取引などの犯罪行為に関わる国家および非国家集団による変則的挑戦。
3、国家および非国家集団によるWMDの取得、保有、使用、及びWMDのような効果を持つ破壊的な流行病や自然災害などによる破滅的挑戦。
4、現在合州国が享受している軍事的優位性に対抗する新しい方法での技術と能力(バイオ技術、サイバー・宇宙作戦、指向性エネルギー兵器など)を使用した国家および非国家集団による破壊的挑戦。

 第3節 C.今後の方針

 われわれは、国内外にわたって主要な機構の変革を拡大し強化しなければならない。
国内では3つの優先課題を追求する。
・現在進行中の国防総省、国土安全保障省、司法省、FBI、「情報関連部門」の変革を持続する。
・国務省を実効的な民主主義と責任ある統治を推進する変革的な外交ができるように再設定することを継続する。
・わが国の外交官は旧来の役割から一歩踏出し他の国家内の課題にいっそう深く関わり、直接これらの諸国を助け、支援の道を開き、これら諸国の経験から学ぶことができるようにならなければならない。こうした努力とは以下のような点である。
*新しい「海外援助責任・管理官」の活動を推進し、海外援助がわれわれの広範な外交政策の方針に合致するよう可能な限り効果的に使われるようにする。……
*紛争後の破綻国家状態に対する計画と対処の能力の改善。「復興・安定局」は復興と安定化を実施するために、関連した全ての合州国政府の資源と資産を統合する。この取組みは、秩序を回復し、成功を保証するための必要条件となる治安と法の支配の確立に焦点を当てなければならない。
*軍の予備役に類似した民間予備軍の構築。民間予備軍は、柔軟で時期を得たやり方で、国際的災害援助や紛争後の復興に必要な技術や能力の面でアメリカ国民の人的資源を役立てる。
*開かれた外交を強化する。われわれはそれによって合州国の政策と価値観をはっきりと、正確に、説得力もった方法で耳目をそばだてている世界に提唱する。……
・あらゆる種類の不測の事態や長期的課題に対応して、この機関の計画、準備、調整、統合、実行する能力を向上させること。
*省と機関が包括的で、結果重視の計画を立てる能力を強化する必要がある。
*旧来、国内のみで役割を果たしてきた機関が、外交・安全保障政策面で演ずるべき役割を持つようになってきている。このことは国内外でのいっそう統合された機関相互の活動を必要としている。
 国外においては、われわれは次の3つを優先して同盟国と共に取組む。
・以下のような国連の有意義な改革の推進
*財政的な説明責任、管理上・組織上の効率性を確実にする仕組みを創造する。
*構成員資格と加盟の権利は、責任ある行為、安全保障と安定という課題に関する負担分担によって得られという原則を明記する。
*国連および国連と提携する地域組織が、平和作戦のためのよく訓練され、直ちに派遣できる持続可能な軍と憲兵部隊を立ち上げる能力を向上させる。
*国連が時代遅れの機構に拘束されず、今日の地政学的現実を反映したものになるようにする。
*国連憲章に示されている民主主義と人権を育成するため、国連の活動を再活性化する。
・民主主義の役割と国際的・多国間的機関を通した民主主義の育成を強化する。
*「民主主義のコミュニティ」を強化し制度化する。
*アジア、中東、アフリカを始めとした各地域に民主主義に基礎を置いた制度の創生を推進する。
……
・新しい課題とチャンスに対応するためPSIをモデルとして結果重視のパートナーシップを構築する。これらのパートナーシップは国際的な官僚制度ではなく国際的協調を重視する。……

 第4章 ].チャンスをとらえ、グローバリゼーションの課題に立ち向かう

 近年、世界は2002年の国家安全保障戦略で間接的に対処してきた課題と一連のチャンスの重要性を目の当たりにしてきた。すなわちそれは、グローバリゼーションと国家安全保障との密接な関連という点である。
 グローバリゼーションは多くのチャンスを提供する。昨今の世界の繁栄と生活水準の改善は、ほとんどの場合、地球規模の貿易、投資、情報、技術の発展によってもたらされた。合州国は、このような発展を促すリーダーであった。そしてわれわれはこうした発展が合州国国民と世界中の人々の生活の質を目覚ましく改善したと確信している。他の諸国もこうしたチャンスをつかみ、同様に恩恵を得てきた。グローバリゼーションはまた、思想の市場と自由の思想を広めることで民主主義の前進に一役買っている。
 このような貿易、投資、情報、技術の新たな流れは国家安全保障のありかたを変化させた。グローバリゼーションは、新しい課題を顕在化させるとともに、旧来の挑戦がわれわれの利益と価値観に抵触したのと異なる在り方に直面させた。他方、それはわれわれの対応能力もおおいに向上させた。その例として、
・公衆衛生面では国境のない流行病(HIV/エイズ、鳥インフルエンザ)などに立ち向かっている。……
 これらの課題は、軍事や思想面での紛争といった従来の国家安全保障上の懸案事項とは違っている。だが、それらに対処しないと、それは国家の安全保障を脅かす。われわれは次のようなことを学んできた。
・これらの課題に対して準備し、処理するためには、従来の安全保障の手段も含めて国力の最大限の発動を必要とする。……
 合州国は、既存の機構の変革と新しい機構を創造する活動を先導しなければならない。それには、政府間あるいは非政府組織との間の、そしてまた多国籍組織や国際組織との間の新たなパートナーシップの構築も含まれる。
 例えば、違法貿易に対処するために、政府は「拡散安全保障イニシアチブ」と「APEC地域におけるAPEC安全貿易イニシアチブ」を展開した。双方とも違法貿易と闘うために政府が実施可能な措置に焦点を絞っている。……

 第5章 ]T.結語

 合州国が直面している課題は巨大である。しかしわれわれはこれらの課題に立ち向かうとてつもない力と信望がある。時代は意欲的な国家安全保障戦略を要求している。しかしそれは合州国ほどの強力な国家でさえ、一国だけで実現できるものには限界があることを自覚したものである。……
 かつては2つの太洋が他の大陸における問題によって影響を受けるのを防護する役割を果たした合州国は自ら実例を示してリードすることができた。そのような時代ははるか以前に終わった。もはや合州国は世界から身を引くことによって平和、安全保障、繁栄を保つことはできない。合州国は自ら実例を示すだけでなく、行動を示すことによってリードしなければならない。
 この国家安全保障戦略は、われわれがどうリードしていくかの計画であり、われわれの後に続く者に残す遺産である。