COMMUNE 2007/7/01(No.373 p48)

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7月号 (2007年7月1日発行)No.373号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  ●特集/米・EUと緊張高めるロシア

□対米協調主義から全面的に転換したプーチン
口東欧諸国へのMD配備とNATO拡大が火種
□東欧・バルト諸国に厳しく独仏伊英に優しく
口「KGB」勢力が台頭し経済利権の掌握を図る

●翻訳資料 アーミテージ報告改訂版(下) 2020年までアジアをいかに正しい方向に導くのか

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/韓国FTA無効へ6月総力闘争−−室田順子

    5・15沖縄闘争

三里塚ドキュメント(4月) 政治・軍事月報(4月)

労働月報(4月)  闘争日誌(3月)

コミューン表紙

 改憲の安倍打倒を

▼5月14日、「改憲へ一直線」を狙う改憲投票法案が強行採決された。今後3年間、改憲をめぐってすさまじい階級的激突が始まる。日帝・安倍は「戦後レジームからの脱却」と称して反革命のクーデターを狙っている。その核心は労働組合・労働運動、すなわち階級闘争の解体・一掃にある。ゆえに労働者階級人民にとっては、4大産別を柱に労働組合・労働運動を既成の体制内労働運動から階級的労働運動に変革し、労働組合・労働運動の力で日帝打倒の革命をもって応えることだ。これがきわめてリアリティのある革命的情勢に入った。

▼その根底に戦後帝国主義体制の崩壊、特に米帝の歴史的没落がある。米帝のイラク侵略戦争の戦略的敗勢と、経済的没落である。米帝経済は住宅バブルの崩壊が進行し、巨大な貿易赤字と財政赤字を抱え、ドル暴落と世界金融恐慌の恐怖に日夜さらされている。帝国主義ブルジョアジーは、プロレタリア革命の恐怖に脅えているのだ。帝国主義は最末期状態にある。ここから抜け出すために帝国主義は80年代から戦争・民営化・労組破壊の新自由主義を開始した。社会福祉政策を投げ捨て労働組合を破壊して、資本の利潤拡大のために市場原理主義、資本への規制緩和、そして戦争を全面化させてきた。今やグローバリズムと称して帝国主義の巨大企業が全世界に入り込み、弱肉強食の世界が展開している。帝国主義間競争も同じだ。弱い帝国主義は他の帝国主義によって粉砕打倒されかねない時代になったのだ。

▼日帝は国際帝国主義の最弱の環だ。今日の日帝を規定しているのは第2次世界大戦における敗戦帝国主義の歴史的事実だ。戦後の日帝を規定する国際・国内の諸関係をそのままにしておいて、激烈な帝国主義間争闘戦が開始された今、日帝は滅亡するしかない。日帝・安倍の「戦後レジームからの脱却」は第1次世界大戦後のドイツで、ヒトラーが掲げた「戦後体制(国際的にはベルサイユ体制と国内的にはワイマール体制)の打破」とまったく同じ意味だ。日米同盟の強化と改憲で一切を突破しようとしているのだ。アーミテージ報告が提起しているように、米帝は日帝に対してその世界戦略の一環としての日米枢軸の強化、集団的自衛権の行使、改憲を要求している。安倍はそれにを格好の口実として、改憲を内閣の正面課題に設定した。しかし日帝が帝国主義である限り、対米対決は不可避である。当面、日米同盟強化を選択しているにすぎないのだ。日帝は戦前のアジア諸国人民に対して凶行した侵略戦争の戦争責任をまったく果たしていない。靖国、教科書問題は深刻化し、軍隊慰安婦問題では、朝鮮、中国、アジア諸国人民からも、米国内からも追及されている。日帝は戦前のアジア侵略戦争をまったく反省していないということだ。日帝・日本経団連は「東アジア経済圏構想」などとぶちあげているが問題にもならない。

▼そして日本の労働者階級の存在と闘いがある。戦後階級闘争における資本との攻防に勝ち抜き、4大産別の中から既成の体制内労働運動を打ち破る階級的労働運動を切り開いてきた動労千葉労働運動が存在している。情勢は完全に新しい情勢に入った。危機は日帝の側にある。闘えば勝てる。青年労働者が提起する「労働運動で革命をやろう」は新しい時代のスローガンだ。改憲阻止へ革命の息吹を燃え上がらせて闘い抜こう。(う)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料-1

 アーミテージ報告改訂版(下)  −2020年までアジアをいかに正しい方向に導くのか

 リチャード・アーミテージとジョセフ・ナイ 2007年2月

 丹沢 望訳

 【解説】

【解説】
 5月号に掲載した解説で、アーミテージ報告改訂版がアメリカ帝国主義のアジア戦略の基本的枠を決める戦略文書であると述べた。
 その上で、ここで歴史的に振り返りつつ若干補足しよう。
 この文書は、2000年の第一次アーミテージ報告(「米国と日本――成熟した協力関係への前進」本誌01年3月号掲載)と同様、共和党のアーミテージと民主党のナイらの共同執筆である。民主・共和を越えた、米支配階級全体の戦略的利害を示している。
 第一次アーミテージ報告では、第一節で″冷戦後の日米同盟の漂流”を述べ、90年代の日本帝国主義の対米対抗的な登場と深刻な経済対立について述べている。その上で、それを1996年の日米安保共同宣言による同盟の「再定義」として集約していく過程を論じている。
 1995年の沖縄の労働者人民の怒りの大爆発に直面した日米帝国主義が必死に闘いを圧殺しようとし、96年の日米特別行動委員会(SACO)合意、米軍基地の再編・強化の合意が行われることをのべている。
 こうした第一次アーミテージ報告で米帝は、日帝の改憲を事実上推進する立場を表明した。米帝の歴史的転換だ。だが、この第一次報告では、「改憲」という語は、明示には使っていない。
 今回の改訂版では、前回の第一次報告とはトーンがかなり変っている。同盟の危機や対立・競争をあからさまに述べていた論調をやや抑えて、同盟の積極的強化を主張する論調になっている。
 そして、何よりも明示の形で「改憲」に言及し、推進の立場を表明している。もはや引き返せない踏み切りをしたということだ。
 この6年半で日米の争闘戦が軽減したのではない。逆である。米帝の基幹中の基幹である自動車産業がトヨタなどの日本のメーカーとの競争で没落し、「ビッグスリー」の債券が軒並み「ガラクタ債」と格付けされるという事態に陥っている。アジアを始めとする勢力圏をめぐる争闘戦も熾烈だ。
 米帝は、イラク侵略戦争の泥沼的敗北の中で、巨大な対中侵略戦争を射程に入れた戦略的決断をした。日米同盟が対中戦争の最大の戦略的な柱なのだ。
……………………………………

 第1節 ● 安全保障

 米日同盟の安全保障的側面は、この数年間に顕著に成熟してきた。小泉首相のリーダーシップと政治的意思は、インド洋、イラク、そして中東の他の地域への派兵を行うことによって、世界的舞台における日本の地位を前進させてきた。この点に関しては、米日同盟の相対的強さを示す2つの特筆すべき指標がある。第1のものは、同盟がどこまで深化したかという考察に基づくものである。第2のものは、同盟の今日的有効性と、将来この有効性を維持するために何が必要かという点に基づくものである。
 われわれの安全保障関係について前進があったことは否定できない。米日同盟の全存続期間を通じて米日の安全保障関係は次の2つの基本原則の下に機能してきた。すなわち、アメリカは日本とその統治下にある地域を防衛し、日本は極東の安全保障のために日本国内の米軍に基地と施設を提供するというものである。これは、日本が自らに課した防衛面での抑制とも相まって、最近まで不可避的に兄・弟関係的パートナーシップにならざるをえない安全保障の枠組みを形成するものであった。「不朽の自由作戦」を支援する日本の自衛隊のインド洋への派遣や復興活動を支援するためのイラクとその周辺地域への派遣は、東アジアという地理的範囲をはるかに越えて貢献活動を行うという日本の主導的自発性を示した。日本の積極的な海外活動は、その世界的関心を反映するものであり、過去の米日関係の特徴である安全保障上の上下関係をなくす助けとなった。
 アメリカと日本はまた、04年12月の南西アジアの津波災害以降、人道的援助のために緊急に必要とされている軍事的、資金的貢献を行うために、05年に協力して活動してきた。さらに、アメリカと日本は、インドやオーストラリアとともに、国連が国際的援助活動を担う準備ができるまでの間、そうした活動を調整し管理するために「中核グループ」を創設した。他国と協力しながら、われわれの同盟は、この巨大な規模の災害に迅速に必要とされている内容と規模をもって対処した。
 この地域において増大するミサイル拡散の脅威に対処するために、アメリカと日本はミサイル防衛技術とその構想を開発する協力を行ってきた。アメリカと日本は今や、世界の2大経済大国の技術能力を共有しながら、ミサイル防衛システムの生産と配備の過程にある。この重要なベンチャーで協力することによって、日本は、その共同作戦システムを改善し、決定的な情報を迅速に共有する相互の能力を向上させるなど、ミサイル防衛の指揮・統制システムから生ずる相乗効果から利益を得るだろう。ミサイル防衛システムを協力して成功裏に作り出し、配備するために、日本は軍事関連輸出の禁止規定を変え、アメリカへの輸出を認めた。これらのすべての措置を通じて、米日同盟は現在の安全保障環境がもたらす諸課題に対処するための防衛協力において急速な前進をした。
 第2の指標は、同盟の現在の有効性と、将来の課題に対処するためにわれわれが何をすべきかを基礎に置いたものである。この点に関しては、この5年間に起きた肯定的な変化を考慮しつつも、われわれの安全保障関係を前進させ、アジア域内でのわれわれの先手にまわる積極的なプレゼンスを支えるために更に多くのことを行えると理解している。これに関して必要なのは、安全保障問題に関するより広範な協力だけでなく、安全保障問題における日本の役割と自己認識を変えることである。日本は世界的な影響力を持つ国なのである。
 だが最近まで日本は安全保障問題に関する権限領域を厳格に制限してきた。この領域で突出したがらない日本の態度は、日本の歴史によって説明できるが、将来の課題と日本自身の世界的な指導的役割を求める欲求を考えると、こうした考え方で十分なのかどうかについて、将来、一致した見解が要求される。
 日本の平和維持活動、災害救援、人道支援の活動は、世界中の諸地域に顕著な貢献を行ってきた。同様にこの数年間、日本の安全保障環境は顕著に挑戦を受けるものとなり、複雑化してきている。米日同盟は日本の安全保障のカギをなす構成要素である。だが、日本が自国の防衛の主要な支持者を防護する責任を担うことは重要である。これには、自国民や重要施設や在日米軍施設を適切に防護するミサイル防衛能力が含まれる。日本の側の適切な防衛活動には、効果的な共同作戦指揮・統制・通信・情報・監視・偵察(C3ISR)能力と、さまざまな不測事態に対処する能力も含まれる。アメリカは日本の安全保障の重要な担い手であり続けるだろう。だが、日本は自国の防衛のために必要とされる領域を適切に整備して、米日同盟をより同格的にしなければならない。

 第1章 ●  合州国に何が求められているか?

 良かれ悪しかれ将来の東アジアに影響を与える最も重要な一つの変数が、アメリカの地位にも関連していることについて認識していなければ、われわれは怠慢であろう。国力のほとんど全ての面で、アメリカの卓越性は2020年まで維持されることはほとんど疑いの余地がないが、アジアにおける諸事件に決定的影響を与えるアメリカの相対的影響力がいずれは削減される可能性を軽視することはできない。それは確実にそうだというものではないが、アジア地域でリーダー的役割を維持するためには、アメリカの政治家はアメリカの影響力を浸食する挑戦に対して警戒し続けなければならない。言い換えれば、アジアにおけるアメリカの優越性は永久ではないし、また永久ではないものとして扱われるべきである。
 まずなによりも、アメリカは自分自身を一アジア・太平洋勢力と見て、アジアで起きていることのすべてに関与することを決断しなければならない。最もうまくいっているときでも、アメリカは狭い国内的利害やイデオロギー的要請にかられる気まぐれな国だと、多くのアジア人から見られている。だがさらにまずいことにはアジア人の多くから、アメリカはアジアに長い間関心を持たない傾向があると思われていることだ。アメリカが現在、世界の他の地域への戦略的没頭で苦しんでいることは疑いない。
 アジアへの関与がエピソード的なものであったり、アメリカの上級レベルの当局者の十分な関与がなかったりしたら、この地域の力関係の変動が起きる可能性がある。
 緊急事態が起きなかった場合でも、中国がその影響範囲を拡大し続け、アジア地域全体でアメリカの持久力への信頼が失われるならば、アメリカの影響力が次第に衰退する。アメリカがアジアで積極的に活動し続けるためには、多くの課題がある。
 2020年までアメリカがアジアで効果的に活動するための財政的、軍事的手段を確保できるか否かについては深刻な問題がある。国家予算の大幅赤字、国家債務の増大、軍の過剰展開、国内的要求の圧力(高齢化する人口のための医療、社会保障から公教育再建の必要性に至るまでのすべて)、これらはすべて政府の意思にかかわらず、アメリカのアジアでの影響力に影響を与えるであろう。
 にもかかわらず、アジアでの影響力を確保しようと決断したアメリカの政治家には利用しうる解決策はある。だが、アジアにおける二国間・多国間の関係を器用に管理しても、部分的解決策しか見いだせないであろう。われわれが前進するに際して、われわれの課題に関する冷静な自己認識も必要とされる。われわれは国内の経済を整備するために活動するだけでなく、わが国の軍事的必要性についても対処しなければならない。
 われわれはアジア地域や域外の諸問題に対してソフトパワー【訳注】を行使する日本の能力に注目した。われわれは、ハードパワーとソフトパワーの双方を提示する能力を改善する必要性を認識している。アジア・太平洋地域は地理的には太洋、海洋、戦略的海峡などが主要な部分を成している。それは海洋軍事力〔海軍・・海兵隊・・沿岸警備隊〕の活動領域であり、アメリカは軍需品の調達を追求し続ける必要がある。同時にこの活動領域に適合した適切な関連軍事諸戦略を採用する必要がある。
 【ソフトパワー ナイが提唱した用語。文化、価値観、イデオロギーなどによって吸引する力。直接的な軍事力(ハードパワー)や経済的報償などに対比した概念】

 第2章 ● 提言 2020年の課題

 われわれはこの提言を4つの範疇に分けた。それはなによりもこの報告に関心を持つ読者が、4つの範疇に分けなければ長々しく扱いにくい内容を要約して理解できるようにするためである。われわれが選んだ範疇は、必ずしも優先順位や順序づけをしたものではないし、範疇間の得失評価をしたものではない。提言リストは総体として検討されるべきである。それは広範で確固たる検討課題を暗示しているものである。われわれは以下の点に関して提言を行う。すなわち日本(日本政府が行うべき単独の措置について)、米日同盟(大部分が二国間関係内での活動について)、地域政策(アジアの他の諸国に対してアメリカと日本が追求すべき活動と多国間の協調について)、世界政策(アジア域外の諸国や地域に関してアメリカと日本が追求すべき行動と世界規模の諸問題について)である。

 第1項 ● 日本への提言

 日本は国内的性格の多くの問題に関する個々の決断を迫られるであろう。日本がどのように自国を組織し、憲法問題を解決し、資源を消費するかに関する非常に具体的な決断は、日本自身が行うべき決断であるが、米日のパートナーシップに大きな期待をしている同盟のパートナーであるアメリカは、日本がこれらの問題にどのようにアプローチするかについては強い関心を持っている。このような精神でアメリカは、日本の国内的決断に関して客観的観察者が行えるであろう正しい指摘を日本に提案する。
1.日本は最も効果的な決定を行うことを可能にする国家安全保障機構と官僚的基盤を強化し続けるべきである。現代的課題は、日本が外交と安全保障政策を管理運営する能力を持つことを要求する。とりわけ、危機の時代には、国内の調整と諜報・情報面の安全保障を維持しながら、この管理・運営を迅速に、敏捷に、柔軟に行う能力が要求される。
2.憲法に関して現在日本で行われている論議は、アジアと世界の安全保障問題への日本の関心の強まりを反映するものとして心強いものである。この論議は、米日同盟の協力に関して現在存在する制約が両国の結合された能力を制限していることを認識している。われわれが2000年に同意したように、この論議の結論は、純粋に日本国民によって出されるべきものであるが、アメリカは両国の共通した安全保障上の利害が影響をうけるかもしれない問題に関して、同盟のパートナーである日本が非常に自由に取り組むことをおおいに歓迎するであろう。
3.(個別のケースごとに臨時の法律が必要な現在の制度と異なって)一定の条件の下に日本の軍事力の海外への展開を認める法律に関して進行中の議論にも希望が持てる。アメリカは、安全保障上のパートナーが、情勢が要求する時には緊急展開するための大きな柔軟性を備えていることを望んでいる。
4.CIAによって発表された数字によれば、日本は総防衛支出の点で世界の上位5位に入る。だが、GDPに占める防衛予算の割合では世界の第134位である。日本の防衛支出額がどの程度なら妥当なのかについて、われわれは特別な見解をもってはいない。だが、日本の防衛省と自衛隊が近代化と改革を目指すためには適正な予算が与えられることが極めて重要であると、われわれは考えている。
 日本の財政状態からみて、予算は確かに限られている。だが、日本の増大する地域的・世界的責任は、新たな能力と供給されるべき支援を必要とするであろう。
5.自己規制に関する日本での論議は、国連安保理事会の常任理事国になりたいという日本の欲求と一体である。常任理事国になれば、日本は政策決定機関の一翼を担い、場合によっては他の国に対して力を行使してもその決定に従わせる役割を任される。ありうべき対処行動の全領域に参加することなしには、この政策決定への参加は不公平なものになるということを、日本は常任理事国になることを追求するにあたって検討すべきであろう。アメリカは日本がめざすこの目的を積極的に支援し続けるべきである。

 第2項 ● 米日同盟に関する提言

 2000年の報告以来の顕著な前進にもかかわらず、経済面・安全保障面の情勢が変化し続けていることに対処するために、米日の二国間関係における投資と活動は強化されなければならない。補足文書の冒頭に記されているように、われわれはこの報告の主要部分に記載された諸提言の性格の一貫性を追求した。したがって、多くの場合、戦術的で、特殊で、難解な軍事と安全保障の分野に関する提案については、それを提示するために補足文書を付けた。ここで以下に記載するものは、より広い視野にたった提案である。
1.アメリカと日本は、さまざまな特別の措置(補足文書を参照)を通じて、軍事的・安全保障的協力関係を強化し続けるべきである。
2.アメリカと日本の総合的な同盟は恒久的で建設的な力であり続ける。日本を核攻撃から防衛するアメリカの活動を含めたアメリカの安全保障活動の基本的態勢は、最上級の当局者によって維持・継続され、強化されるべきである。
3.アメリカと日本は、包括的な自由貿易協定に関する交渉を開始する意思を明らかにすべきである。大統領貿易促進権限法がペンディングされたまま期限切れを迎えるなかで、近いうちのFTAの成立はありそうにないが、にもかかわらずアメリカと日本の指導者は、これを実現することを視野に入れておくべきである。ドーハラウンドと矛盾しない協定は、アメリカと日本に直接的な経済的利益をもたらし、アジア・太平洋地域の全ての国にとって政治的、戦略的利益はさらに大きくなるであろう。

 第3項 ● 地域政策に関する提言

 米日同盟はアジアの将来を形成し続けるであろう。だが、同盟がアジア地域に対してどのように対するか、その在り方次第でアジアの2つの非常に異なった将来が考えられる。一つは、狭く限定された孤立的な関与であるだろう。それは最良とは言えない結果をもたらす。二つ目は、一つめと対照的なアジアの将来が、アジア地域の経済面、政治面、安全保障面でのポジティブな発展のために先手を打つ力としての米日同盟によって規定されるであろう。われわれの提言は、アジアとアジア諸国の国民がよりよい生活ができるような計画を大胆に下敷きにして積極的な方針を決定し、実施するためのものである。それは、アジアの未来を構築するために確固たる基本方針をもつ米日同盟を形成するためである。 
1.米国と日本が中国の将来の針路によってもっとも影響される2つの国であることは確かであろう。そしてまた、両国が中国の針路にもっとも大きな影響を及ぼす国であることも確かであろう。米国と日本は、中国に対して協調してアプローチする同盟関係を築いていくために緊密に協議する必要がある。このアプローチの一部には、中国の利害がある種の領域では米日の利害と一致するのであるから、3カ国協力を追求すべきであり、それによって利益が得られることが見込まれることを承認することが含まれる。たしかに中国の利害はアメリカと日本の利害と重なるが、同一のものではない。アメリカと日本は、中国が責任ある利害共有国となるための道を照らし出すことを追求すべきである。北朝鮮やイランのような政権にその行動を改めさせるための中国のより積極的な協力と、台湾へのアプローチの際に平和的手段のみを行使することを要求することがそのキーポイントをなす。
2.アメリカと日本は、それぞれインドとの戦略的パートナーシップを強化し、3国間の協力のための適切なチャンスを探るべきである。民主主義と人間的自由についての共通の信念は、紐帯を強化する政治的基礎となろう。だがアメリカと日本は、インドが市場に基礎を置く経済改革と、その戦略的態勢の基盤としての規制緩和を質的に深化するのを支持し促進するために働きかけるべきである。
3.アメリカと日本は、朝鮮半島に短期的関心を集中させつづけ、安全保障面での協力の強化の努力を強め続けるべきである。さらに、アメリカと日本は、北東アジアの5主要国(アメリカ、日本、中国、韓国、ロシア)の間で、それぞれの役割を定めていくことに先手をうっていくべきである。それは、問題解決のための多国間アプローチにふさわしいものである。そのような努力がアメリカと日本の利益をもたらすのに役立つならば、北東アジアの枠組みは大きな地域的構造内の小地域的構成部分になるであろう。
4.アメリカと日本は、アセアンの統合を促進すべきである。それは、アメリカや中国、日本との関係を拡大するばかりでなく、アメリカと日本が信奉する基準や安全保障上の慣行に基づいてアセアン内部の問題に対処するものでもある。アセアンの将来にとって重要なことは、単一の経済・金融圏を創設する目的を実現することである。インドネシアの指導者たちはそのようなアセアンの未来について考えている。だが各国間の協力の余地は、アセアン自身の経済成長とアセアン諸国の市民の繁栄がどれほど実現されるかによって影響されるであろう。アメリカと日本は、アセアン諸国に繁栄と民主主義、安全保障をもたらそうとするインドネシアの努力を支援すべきである。
5.オーストラリアと日本の関係、そしてアメリカ・オーストラリア・日本の間の3国間関係は、開始されたばかりであるが発展し続けている。アメリカと日本は人権と信教の自由から経済的成功を広げていくことに至るまでの問題について同じ考えを持っている。アメリカと日本は、この3つの長い民主主義の歴史をもつ国の間の3国間協力から得られる相乗効果の全面的活用を保証する努力を強化すべきである。この3国間協力は政治的協力であると同時に作戦上の協力でもあるべきである。
6.シーレーンはアジアの生命線である。海洋国家としてのアメリカと日本は、海洋の安全保障や海賊対策のような問題について、重要な能力を発揮している。アジア地域でシーレーンの安全保障と公海の安全に関する多国間の検討が行われているのであるから、アメリカと日本は、アジア地域の海運の安全保障政策の確立と実施という点で指導的役割を維持すべきであろう。
7.アメリカと日本は、先進経済の自由化に関するボゴール目標の達成期限である2010年に日本で行われるAPECサミットの準備を行うために活動を開始すべきである。これはアジア・太平洋自由貿易圏をめざすアメリカのビジョンを実現する足がかりになるであろう。〔原注〕
8.アメリカと日本は協力して、東アジアサミットのような汎アジアフォーラム間や、太平洋横断的な機構、とりわけAPECやアセアン地域フォーラムなどの間の相互補完的な関係を形成するために活動すべきである。アメリカと日本は、この地域の諸機構に対して民主主義と法の支配を支持する政策を促進するように促すために、両国の間で、また両国と価値観を共有する諸国と定期的に協議すべきである。
 〔原注〕1994年のインドネシアのボゴールでのAPEC会議で、APECの指導者たちは「アジア・太平洋地域における自由で開放的な貿易と投資という長期目標」の2020年以前の達成のために努力することに合意した。

 第4項 ●  世界政策に関する提言

 米日同盟の影響範囲は世界的であり、世界的影響力を持つ。大きな能力を持ち、明確な政治的コミットメントを行えるこの同盟は、広範な世界的問題に対するポジティブな力を発揮することができる。われわれは、2020年までアメリカと日本は文字通り地球のすみずみのできごとに対しても影響力を行使しうる経済的・軍事的手段を有する2つの最も重要な民主主義国家であり続けると期待している。これは負担と責任を伴うものであり、われわれの見解では、同盟としての世界的関与に関する精緻な戦略を必要としている。
1.アメリカと日本は、エネルギー問題に関する協力を強化すべきである。いかなる国家にとっても個別的なエネルギー安全保障をもたらさない領土的主張や資源をめぐる競争に訴えるよりも、主要なエネルギー消費国(アメリカ、日本、中国、インド、韓国)の間の対話によって、市場取引、エネルギー効率、テクノロジーなどをサポートしつつ、石油輸入国家としての共通利害に基づく政策課題を立案すべきである。エネルギーの安全保障はゼロサムゲームではないということを原則にすべきだ。日本人を国際エネルギー機関の長に指名したことは、中国やインドのような将来共同のエネルギー安全保障政策面で責任を増大させるだろう国をこの機関に全面的に加入させることの重要性を浮き彫りにした。
2.米日同盟は、アジアと世界の工業化した諸国と発展途上国の間の橋渡しとして行動しており、気候の変動に対処する国家的、地域的活動を強化し、統合する役割を果たすのに適している。
3.「地球規模のテロリズムとの戦争」とは、問題を正確に識別することに失敗して誤ってつけられた呼称だ。実際にはそれは、過激主義に対する戦いであり、この戦いのごく一部だけが軍事的手段によって対処しうるものである。過激主義に反撃し、アラブ世界における進歩を促進するに当たっては、国連アラブ開発報告に概略が示されているように、日本の豊富なソフトパワーを、長期にわたって維持されてきた過激主義の根源に対して振り向けることができるだろう。拡大する過激主義に対決し、それに変わるものを与えるために開発援助のような日本のソフトパワーを戦略的に配置することは、日本にとって価値のある世界的任務である。
4.日本は、貧困を改善し伝染病を緩和する活動で世界的なリーダーとなるには理想的に適しており、こうした役割を続行するよう奨励すべきである。アメリカと日本は、可能なところでは相乗効果を追求し、賢明な分業を行うために、お互いの対外援助戦略に関して定期的に協議すべきである。
5.アメリカと日本は、世界貿易機関や国際通貨基金、世界銀行、世界保健機関などの国際機関において特別の責任を有している。アメリカと日本は、これら重要な機関への関与を維持すべきであり、世界の経済や保健に関する課題の解決を支援するために両国が全面的に力を注ぐことができるように、これらの機関がそれぞれの政策課題を策定するに当たってリーダーシップを発揮すべきである。

 第3章 ● 結論

 6年前に出された報告では、われわれは米日関係の歴史について熟考した。150年以上にわたって「米日関係は、良きにつけ悪しきにつけ、日本とアジアの歴史を形成してきた」。この報告は、新世紀の課題を見越して、以下のようなかたちの見解で締めくくっている。「両国の個別の、そして同盟パートナーとしての対応は、アジア・太平洋の安全保障と安定だけでなく、新世紀の可能性を大きく規定するものとなるであろう……」
 このような判断は現在でも通用する。実際、新世紀の諸課題−西欧的価値観に対する過激なイスラム原理主義の攻撃、テロリズムを含む国際的過激主義、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散、岐路に立つ国家の増大−は、個別的にあるいは同盟のパートナーとして、日本とアメリカに対してさらに大きな努力を要求するであろう。われわれの関心は安定にある。これに関しては、アメリカ、日本、中国、そして東アジアのすべての国家がそれを支える役割を果たすことができる。特に東アジアの安定は、米日中の3国関係の上に成り立つであろう。アメリカの日本との強力な同盟に加えて、この3国関係が形成されるべきである。アフガニスタンでの日本によるアメリカの支援や、イラクでの戦後復興への貢献、拡散に対する安全保障構想への早期の参加などの日本の協力活動は、将来の緊密な関係の土台を置くものとなった。われわれはこの報告を「多く与えられた者は、多く求められる」〔ルカによる福音書〕という言葉で締めくくりたい。

 第4章 ● 補足 安全保障と軍事協力

 われわれは、アメリカと日本の間の安全保障と軍事協力の質の改善を目指す多くの非常に具体的な提案をもっている。この報告に収められた長い提案リストをなす上記の見解では、われわれは軍事分野での提案と経済的・政治的・外交的分野での提案の間には性格の相違があることを見た。
 軍事的提案の大部分が戦術的で具体的で難解なものであるのに対して、他の領域に関するわれわれの提案はより戦略的で全般的なものである。したがって、われわれの報告の主要な部分で述べた諸提言の間の実質的な整合性を保つために、われわれは軍事と安全保障に関する領域でのわれわれの提案を提示するこの補足を行うことで一致した。
 われわれは米日間の安全保障と軍事協力の質を改善するために、以下の諸措置を提案する。
□□アメリカと日本は切迫した危機に対応するための能力を強化すべきである。平和維持と人道援助、災害援助の任務を行う日本の能力も強化されるべきである。日本は人質救出の計画を立て、それに必要な専門技術を開発すべきである。日本は現在の法律で概略的に記載されているこれらの任務領域の優先度を高めることを検討すべきである。日本が2020年までに直面する自衛隊の展開状況と安全保障環境を考えれば、これらの領域において適切に対処する日本の防衛能力を高めることが必要である。
□□日本は最近、米日ミサイル防衛計画に大々的に参加できるように、いわゆる武器輸出三原則を修正した。次のステップとして、日本は残存している禁止条項を廃止すべきである。日本政府はまた、国土の安全保障と国家防衛のための技術を発展させるに当たって、民間産業の大きな関与を積極的に促進すべきである。また日本の豊富な科学技術予算から防衛関連技術の開発計画に予算を振り向けることを承認すべきである。とりわけ、最近の情勢に照らして、日本は弾道ミサイル防衛関連の特別予算の計上を考えるべきである。
□□アメリカと日本はCG(X)というタイコンデルガ級イージス・ミサイル巡洋艦の後継艦に関する主要システム、サブシステム、関連技術の共同開発の機会について検討すべきである。CG(X)は、国家ミサイル防衛と次世代の脅威に対抗する航空防衛の双方において決定的役割を果たすべきものである。
□□アメリカと日本の政府間および軍隊間の関係が改善するにともなって、われわれは防衛産業面での緊密な協力関係も構築しなければならない。アメリカへの武器輸出を認める日本の決断は、ますますコストが高くなる防衛装備の開発、整備、生産の面で大きく効率性を高める機会を提示し、相互運用性を高める。
 政府間で共有する機密情報の安全を保持するための包括的協定に合意することは、このような方向に向けた重要な一ステップである。さらにアメリカと日本は機密情報公開に関する論議を行うフォーラムを作るべきである。
□□よりよい協力のために、アメリカはPACOM(米軍太平洋司令部)に日本の自衛隊の代表を置くことと、米軍の代表を自衛隊の統合幕僚監部に置くことを推進すべきである。これは、集団的自衛に関する日本の国内的決定にかかわりなく行われるこの地域の作戦上の統合を強化する方向に向けた最初のステップと見なされるべきである。
□□米日防衛協力ガイドライン締結の際に創設された二国間調整メカニズムは、すばらしい枠組みである。だが米日間協力は、二国間統合作戦司令センターの全面的発動によって作戦レベルまで拡大されるべきである。
□□情報共有は急速に改善されている。情報面での協力は核兵器やミサイルの拡散、過激主義とテロ活動、その他の世界的な偶発事件に対処するためにさらに強化されなければならない。この改善を促進するために、日本はより大量の情報成果を受け取り、処理する能力を強化すべきである。アメリカと日本は、アメリカ国家地球空間情報局の活動において緊密に連携すべきである。
□□われわれは通信、早期警戒、情報の諸分野における安全保障面の協力を強化するために宇宙空間を利用することに関する日本の関心を歓迎し、日本の国会がこの問題について積極的に論議するのを興味深く注目している。
□□アメリカはF22一個飛行隊をできる限り早い時期に日本に配備すべきである。アメリカは日本の航空自衛隊が、F18E/F、F22、F35、あるいは現在のF15の改良機などのアメリカが販売しうる最新鋭の航空戦闘システムを利用できるようにすることを追求すべきである。
□□安全保障環境やわれわれの世界的利害に対処する方法が進化したため、二国間協力を強化し、その能力を強化すべき領域を確定し、両国の二国間指揮・統制システムを改善するために、同盟はその役割と任務を再検討すべきである。
 (終り)