COMMUNE 2008/xxx/xx(No.3xx p48)

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04月号 (2008年4月1日発行)No.381号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉 労働運動の力で革命を

□こんな社会終わってる 革命こそが必要なのだ
□労働組合は賃金奴隷制を廃止するための武器
□マル青労同に結集して職場から闘い起こそう

●翻訳資料 米帝ブッシュの一般教書演説 08年1月28日  土岐一史

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/李明博政権発足を迎え撃つ−−室田順子

    米軍の少女暴行事件弾劾

三里塚ドキュメント(01月) 政治・軍事月報(01月)

労働月報(01月)  闘争日誌(11-12月)

コミューン表紙

羅針盤 3・16イラク反戦

▼3月20日、米帝ブッシュがイラクへ侵略戦争を開始してから5年を迎える。イラクでは、07年の米兵の死者は開戦後最高の901人に上り、開戦後5年で4000人を超えた。米帝はスンニ派部族指導者の取り込みなどで、一時的な「治安の安定化」を宣伝する一方、イラクへの長期駐留と3分割統治で、侵略と植民地支配を継続・強化しようとしている。しかしイラクの民族解放・革命戦争はますます激化するばかりだ。米帝は絶望的な敗北にのたうちまわっている。さらに、米帝はイラン侵略戦争をも挑発している。とんでもない事態だ。こうした中にあって日帝・航空自衛隊はイラクで米軍をバクダッドに輸送する侵略戦争を継続している。そして1月11日に給油新法再可決を強行し、24日には海上自衛隊の給油艦隊を直ちにインド洋に派兵した。米帝の侵略戦争に完全に加担している。断じて許されることではない。

▼今、イラク侵略戦争に派兵されているのは、アメリカ国内では生活に困窮するワーキングプアの青年労働者たちだ。失業したり、仕事があっても生活ができず、借金に追われ、米軍の募兵官による甘いウソにだまされて入隊した青年たちだ。耐えがたい現実を打破できるのは軍隊しかないという罠をつくりあげて青年を追い込んでいる。青年は、イラクに派兵され、これまでの酷い生活よりもはるかに苛酷な戦場を体験させられ、死ぬか、負傷するか、病気になるかして帰国する。「戦争が希望」などというのは粉々に砕かれた。米帝はアメリカには徴兵制はいらないと言う。新自由主義の下で、生きていけない生活状態に青年を追い詰めておけば、結局軍隊をめがけて来るしかないのだ。これがいつまでも続くわけがない。イラク侵略戦争・アフガニスタン侵略戦争は米帝の滅亡を決定づける戦争になる。アメリカの労働者階級人民、特に青年労働者が階級的団結を固め、米帝を打倒していく。

▼08年の最初から日本の階級闘争も激動している。1月30日、北海道教組が1時間の時限ストを敢行した。実に24年ぶりのストだ。2月2日、日教組本部が全国教研全体集会を中止した。分科会では、不屈に「君が代」不起立を貫く根津公子さんのレポートを排除した。教育労働者から徹底弾劾の声が上がっている。2月10日、沖縄でまたしても米海兵隊兵士による女子中学生暴行事件が起きた。直ちに怒りの抗議行動が激しく闘われている。沖縄の怒りは、沖縄戦での日本軍による「集団自決」の強要という史実を抹殺する教科書検定意見への怒りともども頂点に達している。2月12−14日、根津公子さんへの新たな処分策動を粉砕する大勝利がかちとられた。去年の3・18イラク反戦4周年闘争では、青年労働者が「労働運動の力で革命を」というスローガンを掲げて決起し、衝撃を与えた。この根底には2000万人青年労働者がワーキングプアに突き落とされている現実があった。日本においても青年労働者が「生きさせろ」と生存権をかけて革命を求めて決起していた。

▼3・16闘争は、イラク人民と連帯し、アメリカをはじめとする全世界の労働者人民と連帯して、侵略戦争を続ける帝国主義打倒のプロレタリア革命を実現していく。そのために職場で資本と闘い、労働者の階級的団結をつくりだし、組合権力を奪い返していく。それを基礎にして巨大な反戦闘争を大爆発させていこう。,(U)

 

 

翻訳資料

 翻訳資料

米帝ブッシュの一般教書演説 08年1月28日

土岐一史訳

【解説】

  今年の大統領一般教書演説の特徴は、大統領の議会に対する拒否権発動を強調していることだ。
  従来の大統領任期の最後の年は、大統領権力の弱体化は、当たり前のことだった。だが今年は、世界大恐慌情勢、イラク戦争・占領の崩壊的危機のため、なりふりかまわず権力の集中性を保たねばならないのだ。
  「わが国の経済は不確実な時期」「国中の家庭にわが国経済への先行き不安」
という言葉は単なる景気問題ではなく、ドル体制の危機、アメリカ帝国主義の存亡の危機の告白だ。

………………………………………

●08年大統領一般教書演説

  アメリカ人として、われわれは個人の力が、自らの運命を決し、歴史の道筋をつけることを信じている。わが国の最も信頼できる導きの糸は、普通の市民の結集した知恵だ。全ての任務において、自由な人民が賢明な決断を下す能力を信頼し、彼らが未来へ向かって自らの生活を改善できるようにせねばならない。
  繁栄する未来を築くためには、われわれは人民に彼ら自身の金をまかせ、彼らがわが国の経済を成長させられるようにせねばならない。現在、わが国の経済は不確実な時期を迎えている。アメリカの就業者は52カ月連続で増加しているが、増加のペースは鈍化している。賃金は上昇しているが、食料やガソリンの価格も上昇している。輸出は伸びているが、住宅市場は落ち込んでいる。国中の家庭に、わが国経済の先行きへの不安が存在する。
  長期的には、アメリカ人はわが国の経済成長について自信を持っていい。だが短期的には、周知の通り成長は鈍化している。そこで先週、わが政権はペロシ議長と共和党指導者ベーナーとのあいだで、個人や家族を対象にした減税や投資刺激策を含む強固な成長のための政策について合意に達した。法案にいろいろ盛り込もうという誘惑に駆られるだろう。だがそれは立法を遅らせ、あるいは頓挫させるものであり、他のいかなる選択肢も認められない。これはわが国の経済を成長させつづけ、わが人民を労働させつづける大事な合意だ。だからこの議会は、できるだけ早くこの法案を通過させなければならない。
  税金については他にもやるべき仕事がある。新たな法律ができないと、過去7年間に実現してきた減税のほとんどが元の木阿弥になってしまうだろう。
  ほとんどのアメリカ人は、税金が高すぎると感じている。家計をめぐって他にも多くの圧力がかかっているのだから、アメリカの家族が、連邦政府に自分の所得からより高額のカネが取られるのではないかという不安を感じないようにせねばならない。現在の不確実性を取り除く道はたったひとつ、減税恒久化だ、議員諸君は銘記すべきだ。いかなる増税案が私の執務室に届いても、私は拒否権を発動する。
  われわれがアメリカ人を信頼して彼ら自身の金をまかせるのと同様に、税金の賢明な使用によって彼らのわれわれへの信頼をかちとる必要がある。来週私は、無駄な、または肥大化しすぎた151のプログラムを廃止ないし大幅削減する予算案を提出する。総額180億j以上になる。その予算案によって、2012年に黒字に転換するコースを維持するだろう。
  人民の政府への信頼は、議会による予算の使途指定によって傷つけられている。この圧力団体の利害が、議論や論争もなく議会の終盤になってから押し込まれてくる。昨年私は、使途指定の数とコストを自主的に半分にするよう議会に要請した。私はまた、使途指定を議決にさえかけられない委員会リポートに横滑りさせることをやめるよう要請した。残念ながら、どちらも達成されていない。そこで今回、使途指定の数やコストを半分にしない予算計上を諸君が行った場合、私は拒否権をもって送り返す。
  明日私は、連邦省庁に議会で議決されない新たな使途指定を無視するよう指示する政令を発表する。これらの項目が本当に資金拠出に値するというなら、議会は公の場で論議し、公開投票にかけるべきだ。
  われわれが共有する責任は、税金や支出の問題より広範囲だ。住宅供給では、住宅所有責任を有するアメリカ人を信頼し、彼らが住宅市場の嵐を乗り越えられるようにせねばならない。わが政権はホープ・ナウ同盟を立ち上げた。これで多くの貧困住宅所有者が差押さえを避けられる。私はファニー・メイとフレディー・マック【いずれも連邦政府支援の住宅投資機関】を改革し、連邦住宅管理公団を近代化し、住宅所有者のローン借り換えのために州の住宅供給庁の非課税公債発行を認可した法案を諸君が通過させることを要請する。
  明日の良質な医療を築くためには、患者と医者の医療上の決断を信頼し、より良い情報とより良い選択肢で彼らを援助せねばならない。われわれの共通の目標は医療を全てのアメリカ人に手頃な値段で入手しやすいものにすることだ。目標の達成の最善の道は、消費者の選択肢の拡大であり、政府の統制ではない。そこで私は、雇用主から健康保険を受け取っていない人たちへの税法上の冷遇措置をなくすことを提案する。この1つの改革が民間保険の適用範囲を数百万人に広げるのであり、私は議会に、今年中にこれを通過させることを呼びかける。
  議会はまた、健康積立会計を拡充し、中小企業のために健康保険協会を設立し、健康情報技術を推進し、無意味な医療訴訟のまん延と対決せねばならない。こうした措置が、医療が連邦議事堂ではなく、医者の執務室の中で行われることを保障するのだ。
  教育では、生徒が、機会が与えられたら学ぶことを信頼し、親が学校から結果を要求できるようにせねばならない。全国津々浦々に夢を抱く少年少女がいる。適正な教育こそ、夢の実現のための唯一の希望だ。
  6年前、われわれは協力して落ちこぼれゼロ法を成立させた。今では誰もその成果を否定できる者はいない。昨年、4年生と8年生【中学2年生】は、数学で記録的な高得点をあげた。英語の点数も伸びている。アフリカ系アメリカ人やヒスパニックの生徒の点数も史上最高だ。今や協力して説明責任を拡大し、州や学区に柔軟性を与え、高校中退者数を減らし、貧窮する学校に特別の援助を与えなければならない。
  学校が一定水準に達しない場合、子どもたちを支援するためにもっと多くのことをしなければならない。諸君が承認したコロンビア特別区奨学金制度のおかげで、わが国の首都における2600人以上の最底辺の子どもたちが宗教系その他の私立学校へ進学する希望を見出した。悲しいことに、こうした学校はアメリカの多くの都心部で危機的な率で消失しつつある。そこで私は、この学問のライフラインの強化をめざしたホワイトハウス・サミットを開催する。そしてより多くの子どもたちにこうした学校への門戸を開くため、児童のためのペル奨学金という新たな3億jのプログラムを支援するよう呼びかける。ペル奨学金が、低所得大学生が自分の潜在能力を発揮するのにいかに役立ったかは周知の通りだ。われわれは協力して、この奨学金の規模と範囲を拡大した。今こそ同じ精神を適用して、だめになった公立学校に貧しいために閉じ込められている子どもを解放しよう。
  貿易では、アメリカの労働者が世界の誰とでも競争できることを信頼し、彼らが海外の新たな市場をこじ開けられるようにせねばならない。今や、アメリカの経済成長はますます、米国製品、農産物、サービスを世界中に売る能力に依存しつつある。それ故われわれは、できる限り貿易や投資の障壁を打ち砕くために尽力している。貿易交渉のドーハラウンドの成功のために全力を尽くしているが、今年中によい協定を結ばなければならない。同時に、自由貿易協定を通過させて新たな市場をこじ開ける機会を追求している。
  ペルーとの良き協定を議会が批准したことに感謝する。そして今、コロンビア、パナマ、韓国との協定を批准するよう訴える。現在これらの国からの製品はアメリカへ無関税で入っているが、米国製品は大幅な関税をかけられている。これらの協定は、競技場を平等にする。これによって米国は、1億人近くの顧客へのよりよいアクセスを得られるだろう。これは米国製品を作る世界最高の労働者の良き仕事を援助するだろう。
  これらの協定は同時に、アメリカの戦略的利益をも拡大する。最初に議会の議題に上るのはコロンビアとの協定だ。コロンビアはアメリカの友好国であり、暴力やテロに立ち向かい、麻薬密輸業者と戦っている。この協定を批准できなかったら、わが西半球における似非大衆主義の推進者をつけあがらせるだろう。だから一致協力して、この協定を通過させ、この地域の隣人に、民主主義こそよりよい暮らしをもたらすことを示さなければならない。
  エネルギーが安定的に供給される未来を築くためには、アメリカの研究者や起業家の創造的才能を信頼し、彼らが新世代クリーンエネルギー技術を開発できるようにせねばならない。わが国の安全保障、繁栄、環境のためには、石油依存を減らす必要がある。昨年、私は今後10年間で石油消費量を減らす法案を通すよう訴え、諸君はこれにこたえてくれた。いよいよ協力して次のステップへ進むべきだ。石炭並みのエネルギーを生み出し、なおかつ二酸化炭素の排出を抑える新たな技術に投資しよう。再生可能なエネルギー、二酸化炭素排出ゼロの核エネルギーの使用を増やそう。未来の乗用車やトラックの燃料となる先進蓄電池技術や再生可能燃料への投資をつづけよう。インドや中国のような発展途上国がクリーンエネルギー資源の使用を増やせるようにするために、新たな国際的クリーン技術基金を立ち上げよう。そして、温室効果ガスの増加を緩和、阻止、そして最終的には減少に転じることのできるような国際協定を締結しよう。
  この協定が有効なのは、あらゆる主要国経済のコミットメントを含み、いかなる国のただ乗りも許さない場合だけだ。合州国は、全力でエネルギーの安定供給を強化し、地球規模の気候変化に立ち向かっている。この目標を達成する最善の道は、アメリカがよりクリーンで、よりエネルギー効率の高い技術の開発への道を指導しつづけることだ。
  アメリカが将来にわたって競争力を維持するためには、わが国の科学者や技術者の技能を信頼し、彼らが明日のブレイクスルーを追求できるようにせねばならない。昨年、議会はアメリカ競争力イニシアティブを支援する法案を通過させたが、資金投下を完全にサボっている。資金投下が、米国の科学が最先端を歩みつづけるために不可欠なのだ。そこで私は議会に、物理科学における決定的な基礎研究への連邦の援助を倍にし、アメリカが地球上で最もダイナミックな国でありつづけことを保障するよう呼びかける。
  生命と科学の分野では、医学研究者の革新精神を信頼し、彼らが倫理的境界を尊重しつつ新治療法を発見できるようにせねばならない。昨年11月、成人の皮膚細胞を胚幹細胞のように振る舞えるようリプログラムする方法を発見する記念碑的成果があった。このブレイクスルーは人間の生命を破壊せずに医学の境界線を拡張し、過去の対立的論争を越えた地点に到達する可能性を持っている。
  だからわれわれは、この種の人道的医学研究への資金提供を拡大している。そして有望な研究の大道を探索するにあたって同時に、全ての生命がそれにふさわしい尊厳をもって扱われることを保障せねばならない。そこで私は議会に、人命の売買、人命に関する特許取得、クローン人間の製造といった非倫理的行為を禁ずる法案を可決するよう呼びかける。
  司法の領域では、建国者たちの知恵を信頼し、憲法を字義通り解釈することを理解した裁判官を支援せねばならない。私は既に、小槌の気まぐれでなく法律の文言によって判決を下す司法被指名者を提案している。これらの被指名者の多くが、任官を不当に遅らされている。彼らは承認されるに値するのであり、上院は各人について早急に信任投票を行うべきだ。
  全国のコミュニティーでは、アメリカ人民の良心を信頼し、彼らが困窮する隣人に奉仕できるようにせねばならない。過去7年間、ますます多くの市民が、幸福の追求が奉仕への道に繋がることに気がついた。アメリカ人は記録的な数でボランティア活動をしている。慈善寄附金は過去最高だ。宗教団体は絶望の懐に希望をもたらし、それらは連邦政府の新たな援助を受けている。そして連邦政府の資金提供をめぐって競争する中で宗教団体への平等な扱いを保障するために、私は諸君に、慈善基金を恒久的に拡大することを呼びかける。
  今宵も、慈悲の軍勢はメキシコ湾岸の新時代への行進をつづけている。今宵、私は喜ばしいニュースを発表する。この4月、カナダ、メキシコ、合州国の3カ国による北アメリカサミットを、ニューオーリンズという偉大な都市で開催する。
  このほかに2点、それは私がこの議会で繰り返し提起し、議会がそれにこたえてこなかった切迫する課題がある。公的給付の支出と移民問題だ。議員はみな、社会保障、メディケア、メディケイドといった公的給付への支出が、われわれが拠出しうるよりも急速に伸びていることを知っている。みな、アメリカがこの道を進みつづけた時に訪れる苦渋の選択を知っている。大幅増税、突如かつ劇的な給付カット、壊滅的赤字などだ。私はこれを改善するための提案を提示してきた。議員諸君に、子や孫のために、自分たちの提案を提出し、この死活的なプログラムを救うための超党派の解決策を見出すことを訴えたい。
  もう一つの切迫する課題は移民問題だ。米国は国境を守る必要がある。そして諸君の協力を得て、わが政権はそのための措置をとっている。密入国を阻止するために職場での摘発を強化し、フェンスを張り巡らし、最先端技術を駆使している。国境での「キャッチ・アンド・リリース」政策を効果的に終わらせ、今年の終わりまでには、国境警備隊の人数を倍にする予定だ。しかしながら同時に、外国人労働者がわが国へ来てわが国の経済を支える合法的道をつくり出さない限り、完全には国境を守れないことを認める必要がある。これによって国境への圧力は軽減し、危害を加える連中に法律の適用を集中できるだろう。そして同時に、わが国に違法状態で滞在する人々に分別ある人道的な態度で接する道を見出さなければならない。不法移民問題は複雑だが、解決できる。わが国の法律も高邁な理想も維持しながら解決せねばならない。
  これはわが国の国内での任務だ。だがわが市民が展望ある未来を築けるかどうかは、海外の敵と対決し、世界の紛争地域で自由を前進させられるどうかにもかかっている。
  過去7年間、われわれは酔いを醒ますような映像も見てきた。レバノンやパキスタンで、会葬者が群衆になって、暗殺者の手にかかった最愛の指導者の棺を掲げるのを見てきた。ヨルダンで結婚式の参列者が血まみれの装飾品をつけたままホテルからよろめき歩き、アフガン人やイラク人がモスクや市場で爆弾によって吹き飛ばされ、ロンドンやマドリードで列車が爆弾で粉々になるのを見てきた。ある9月の晴れた日、何千もの米国市民の命が一瞬に奪われるのを見てきた。これらの恐ろしい映像は、ぞっとするような現実を想起させる。自由の発展が、テロリストや過激派(自由を嫌悪し、アメリカを嫌悪し、何百万の人々を暴力的な支配に服従させることをたくらむ悪人たち)の反対に遭っているのだ。
  9・11以来、われわれはこうしたテロリストや過激派との戦いをおこなってきた。攻勢を維持し、圧力をかけつづけ、敵に正義の鉄槌をうち下ろすだろう。
  われわれは21世紀における決定的なイデオロギー闘争を行っている。テロリストは、われわれが敬愛する人間性と礼節のあらゆる原則に反対している。しかしこのテロとの戦争では、われわれと敵の一致点が一つだけある。長期的には、自分たちの運命を決定する自由があれば、人々は、テロを拒絶し、圧政の下で暮らすことを拒否するということだ。だからこそテロリストは、レバノンで、イラクで、アフガニスタンで、パキスタンで、パレスティナ自治区でこの選択肢を人民から閉ざすために戦っている。そしてだからこそ、アメリカの安全と世界の平和のために、われわれは自由の希望を押し広げているのだ。
  アフガニスタンでは、アメリカと、25のNATO同盟国、15の友好国が、アフガン人民が自由を守り、国を再建する手助けをしている。こうした武官・文官の勇気のおかげで、かつてアルカイダの安全地帯だった国は、今や少年少女が学校へ通い、新しい道路や病院が続々と建設され、人民が新たな希望を持って将来を見詰める若い民主主義国家となった。こうした成功は継続せねばならない。そこでわれわれは、アフガニスタンに3200人の海兵隊員を増強し、テロリストと戦い、アフガニスタンの陸軍と警察を訓練することにしている。タリバンとアルカイダへの勝利はわが国の安全にとって決定的であり、アメリカのアフガニスタンでの死活的な任務への議会の支持に感謝する。
  イラクでは、テロリストと過激派は、誇り高き民族の自由を否定するために戦い、また世界中を攻撃するための安全地帯を確立するために戦っている。1年前、敵はイラクを大混乱に陥れるたくらみに成功していた。そこでわれわれは、戦略を見直し、路線を変更した。われわれは米軍のイラク派兵の増強を断行した。部隊に新たな任務を与えた。イラク軍と協力してイラク人民を防衛し、敵を要塞から追い出し、テロリストの聖域を国のあらゆる地域から一掃することだ。
  イラク人民は、何か劇的なことが始まったことを急速に悟った。アメリカは自分たちを見捨てるのではないかと心配していた人たちが、逆に何万もの米軍が自国へやってくるのを見た。わが軍が津々浦々へ進軍し、テロリストを掃討し、敵が戻ってこないように駐留しつづけるのを見た。そしてわが軍が、外務職員をはじめとした有能な公務員を含む地方再建チームとともにやって来て、安全の向上によって日々の生活の向上がかちとられることを保証するのを見た。
  イラク人は自分自身の増強を開始した。2006年秋、スンニ派の部族指導者がアルカイダの野蛮に業を煮やし、「アンバルの目覚め」と呼ばれる大衆蜂起を開始した。この年、同じような運動が国の至るところに広がった。今日では、草の根の増強によって8万人以上ものイラク市民がテロリストと戦うに至っている。同時にバグダッドの政府も前進し、同年1年間で10万人のイラク人兵士と警察官を追加した。
  敵は依然として危険であり、任務も残っているが、アメリカとイラクの増強は、1年前にはほとんどの人が想像できなかったほどの成果を上げている。去年一般教書演説をした時には、多くの人が暴力の封じ込めは不可能と言っていた。1年たって、あからさまなテロ攻撃は減り、市民の死者は減り、宗派間の殺し合いも減った。
  去年一般教書演説をした時、過激派民兵(いくらかはイランで武装、訓練された者だが)がイラクの多くの地域を蹂躙していた。1年間で連合軍とイラク軍は、何百もの民兵を殺害・捕獲した。そしてあらゆる経歴のイラク人が、こうした民兵に勝利することが、自国の将来にとって決定的であることを自覚しつつある。
  去年一般教書演説をした時、アルカイダはイラクの多くの地域を聖域にしており、その指導者は米軍に国外撤退のため安全に通過させると申し出ていた。今や、安全通過の方法を探し回っているのはアルカイダの側だ。彼らはかつて占拠していた多くの要塞から一掃され、昨年1年間、われわれはイラクで数千もの過激派を捕獲・殺害した。その中には数百ものアルカイダの主要幹部やスパイもいる。
  先月、オサマ・ビン・ラディンはテープを公表し、アルカイダに刃向かうイラクの部族指導者を口汚く罵り、連合軍がイラクで優勢になっていることを認めている。皆さん、増強がうまくいっていないと言う人もいるが、テロリストのあいだでは次のことは明らかだ。アルカイダはイラクで敗走しており、この敵は打倒されるであろう。
  去年一般教書演説をした時、イラクでのわが軍のレベルは上昇しつつあった。今日、先程述べた前進があったおかげで、「勝利の帰還」政策を実行しており、イラクに追加派兵された軍隊は帰国を始めている。
  この前進は、米軍兵士の武勇と指揮官の優秀さの賜物だ。今宵、私は前線にいる男女に直接話かけたい。陸軍兵士、海軍兵士、空軍兵士、海兵隊兵士、沿岸警備隊員諸君。昨年、君たちは要請されたこと全て、いやそれ以上のことをやってくれた。わが国は君たちの勇気に感謝している。君たちの偉業を誇りに思う。
  イラクの敵は手ひどい打撃を受けている。しかしまだ打倒されたわけではないし、まだまだ行く手に厳しい戦闘が待っていると予測される。今年の目標は、07年の戦果を維持し、それを足場にして戦略の次の段階へと移行することだ。米軍は作戦指導から、イラク軍との共同作戦へ、そして最終的には、保護監督の任務へと移行しつつある。この移行の一環として、陸軍の1個戦闘旅団と海兵隊の1個遠征部隊が既に帰還しており、交替はなされない。今後数箇月で、陸軍の4個旅団と海兵隊の2個大隊が続くだろう。総計2万人以上が帰還する。
  米軍のさらなる削減は、イラクの状況や指揮官の勧告による。ペトレイアス将軍は、削減が速すぎると「イラク治安部隊の崩壊、アルカイダ・イラクの領土奪回、暴力の著しい増加」を招きかねないと警告している。議員諸君、かくも前進し、かくも多くのものを獲得したわれわれは、こんなことを許してはならない。
  今年、この前進に基づいてイラク人指導者が政治的和解に向かうにあたって、われわれは彼らと協力していく。地域レベルでは、スンニ派、シーア派、クルド人が協力してコミュニティーを再生し、生活を再建しはじめている。地方での前進も、バグダッドでの前進に遅れをとってはならない。われわれはいくつか心強い兆候を目の当たりにしている。全国政府は県と石油収益を分け合っている。議会は最近、年金法と脱バース党改革の双方を通過させた。彼らは現在、県の権限についての法律を論議している。イラク人はまだ旅行するには程遠い。だが、何十年もの独裁と宗派間暴力の苦痛のあとで、和解がおこなわれつつある。そしてイラク人民は、自分たちの未来の支配権を握りつつある。
  イラクでの任務は、困難で骨の折れるものだ。だがその成功は、合州国の死活的利益だ。自由なイラクは、アルカイダの安全地帯を否定するだろう。自由なイラクは、中東の何百万の人々に、自由の未来が可能であることを示す。自由なイラクはアメリカの味方となり、テロと戦う友好国となり、この世界の中の危険地帯の安定の源泉となるだろう。
  だが反対に、イラクで失敗すると、過激派をつけあがらせ、イランを強化し、テロリストに友好国、同盟国、そして米本国への新たな攻撃を仕掛ける基地を与える。敵は自分たちの意図を鮮明にしている。情勢が彼らに有利であるかのように思われていた時期、イラクのアルカイダの最高指揮官は、ここワシントンを攻撃するまで休息しないと宣言していた。アメリカ市民の皆さん。われわれも休息しない。敵の打倒まで休息しない。今日、困難な仕事をせねばならない。そうしたらいつの日か、人々は振り返って、この世代はこの瞬間に立ち上がり、厳しい戦いに勝利し、より希望に満ちあふれた地域とより安全なアメリカを遺したと言うだろう。
  われわれは聖地でも過激主義の軍勢と対決し、希望の萌芽をつかんでいる。パレスティナ人はテロとの対決が、人民が尊厳をもって生き、イスラエルと平和共存する国家の建設に不可欠だと理解した大統領を選出した。イスラエル人は、平和で民主的なパレスティナ国家こそ安全維持の源泉だと理解した指導者をいただいている。今月私はラマラとエルサレムを訪問し、双方の指導者に、アメリカが、そして私が、今年末までにパレスティナ国家を定義した平和協定を締結するためにできることは全てやると約束した。聖地に民主的イスラエルと民主的パレスティナが平和共存する日がやってきたのだ。
  われわれはまた、テヘランの体制に体現される過激主義の軍勢とも対決している。イランの支配者は善良で才能ある民族を抑圧している。そして中東で自由が前進する所ではどこでも、イランの体制がそれに反対していると思われる。イランはイラクの民兵グループに資金提供して彼らを訓練し、レバノンのテロリスト、ヒズボラを支援し、聖地の平和を掘り崩すハマスの策動を支持している。テヘランはまた、射程を伸ばした弾道ミサイルを開発し、核兵器開発に使われるうるウラン濃縮能力を高めつづけている。
  イラン人民へのわれわれのメッセージは鮮明だ。君たちとは争っていない。君たちの伝統と歴史を尊重する。君たちが自由をかちとる日を楽しみにしている。イランの指導者へのメッセージもまた鮮明だ。検証可能な形で核の濃縮を中止せよ。そうすれば協議が開始されるだろう。そして国際社会に復帰するために、君たちの核武装の意図と過去の行状を明らかにせよ。国内での抑圧をやめよ。外国のテロの支援をやめよ。だが何よりも、次のことを銘記せよ。アメリカ人は自国の部隊を脅かす者には対決する。同盟国とともに歩み、ペルシャ湾の死活的な利害を防衛する。
  本土戦線では、われわれは自国を守るためにあらゆる合法的かつ効果的な手段を行使しつづける。これは最も神聖な義務だ。9・11以降わが国土への攻撃がなかったことに感謝している。これは敵に欲求や策動が欠けていたからではない。過去6年間、われわれは数々の攻撃を阻止してきた。その中には、ロサンゼルスの最も高いビルに飛行機をぶつけるたくらみや、アメリカ行の旅客機を大西洋上で爆破するたくらみも含まれている。わが政府の献身的な男女が、テロリストが自らの陰謀を実行するのを阻止するために日夜骨を折ってきた。この良き市民たちがアメリカ人の命を守っているのであり、この議場にいる全ての人は、彼らに感謝する義務がある。
  われわれが彼らに与えうる最も重要な道具は、テロリストの通信を傍受する能力だ。アメリカを守るために、テロリストが誰と話し、何を言い、何をたくらんでいるかを知る必要がある。昨年、議会はそのための法案を通過させた。だが残念ながら、この法案は2月1日に期限切れとなる。つまり金曜日までに行動を起こさないと、テロリストの脅威を追跡する能力は弱まり、わが市民はより危険な状態に陥るのだ。議会は、この死活的な諜報の流れが途絶えないようにせねばならない。議会は、信用できる会社がアメリカ防衛の取り組みを援助したことに対する免責を通過させなければならない。まだ議論の時間は充分ある。行動すべき時は今なのだ。
  わが国を新世紀の危険から守るには、良質の諜報や強力な軍隊以上のものが必要だ。怨恨を生み、過激派が絶望を食い物にするのを許す情勢を転換することも必要だ。だからアメリカは、より自由で、より希望に満ちた、より慈悲深い世界を築くために自らの影響力を行使している。これはわが国益の反映だ。これはわが良心の叫びだ。
  アメリカはスーダン大虐殺に反対する。キューバ、ジンバブエからベラルーシ、ビルマに至るまであらゆる国で自由を支援する。
  アメリカは地球規模の飢餓との闘いを推進している。今日、世界の食糧支援の半分以上が合州国からのものだ。今宵、私は議会に、発展途上国で農家から直接食料を仕入れて食料援助をまかなうという革新的提案を支持することを訴える。それは地元の農業を強化し、凶作の連鎖を断ち切るためのものだ。
  人民を信頼して、わが建国者たちは、偉大で高貴な国は、全ての男女の心に属する自由に基礎をおいてこそ建設されると宣言した。人民を信頼して、それに続く世代は、脆弱な若い民主国家を地球上で最強の国家、幾百万の希望の松明へと変革した。人民を信頼しつづける限り、米国は繁栄し、わが自由は安全であり、わが連邦の状態は強力でありつづけるだろう。