COMMUNE 2008/xxx/xx(No.3xx p48)

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11月号 (2008年11月1日発行)No.388号

定価 315円(本体価格300円+税)


〈特集〉  米帝の中東・中央アジア資源略奪戦

□新たな世界戦争の発火点に浮上したグルジア
□イラク油田権益独占へ駐留恒久化を狙う米軍
□深刻化するアフガニスタン・パキスタン情勢
□ペルシャ湾に空母増派しイラン侵略態勢突入

●討論資料 EUの対米・対ロ争闘戦が激化 川武 信夫

●国際労働運動 南朝鮮・韓国/“公共機関の民営化中断せよ”−−室田順子

    休載

三里塚ドキュメント(8月) 政治・軍事月報(8月)

労働月報(8月)  闘争日誌(7月)

コミューン表紙

羅針盤 金融大恐慌の開始

▼3世紀続いてきた資本主義の最大の危機が始まった。世界金融大恐慌に突入した。だがこれは入り口にすぎない。今日の世界情勢を規定するのは資本主義・帝国主義の最末期の根本矛盾そのものだ。実体経済の何倍にも膨張させた投機マネーで世界中の労働者や農民から搾取と収奪の限りを尽くしてきたブルジョアジーの命脈は尽きた。社会主義の客観的前提条件はある。資本主義・帝国主義の危機の激化こそ革命の原動力だ。
▼米証券5位ベアー・スターンズの実質破綻からわずか半年。今度は一夜にして3、4位の証券2社が経営破綻と救済合併に追い込まれた。翌日には世界最大の保険会社AIGが米政府の管理下に置かれた。9月15日に経営破綻した米証券4位のリーマン・ブラザーズの負債総額は約63兆円。米国で過去最大の倒産だ。同3位のメリルリンチは、バンク・オブ・アメリカに身売りした。同2位のモルガン・スタンレーの株価も急落し、経営破綻か身売りは不可避だ。FRB(米連邦準備制度理事会)は翌16日、経営危機に直面するAIGを救済するため9兆円を緊急融資すると発表。実質的に公的管理下に置いた。1月に60jだったAIG株価は一時1j台に急降下し、倒産は必至だった。世界の金融市場で急速な株安とドル安が続く。日米欧の中央銀行が36兆円を超える資金供給を行った。だが株安はまったく止まらない。
▼特にAIGのCDS(信用リスクを転嫁した金融派生商品)は、サブプライム関連の証券化商品の「保険」として重宝され、住宅ブームに乗って急速に事業を拡大した。AIGは、本業の生損保事業は順調だったのだが、ここ数年は利ざやが薄くなっていた。それで本業の保険からCDSへ手を広げたのだ。CDSの保証残高は4千億j(約42兆円)超。自己資本の5倍以上に当たる。サブプライム危機から1年。AIGは、投資家から次々と保証金の支払いを求められた。経営が悪化し、格付け会社がAIG本体の格下げに動いた。資金繰りが一気に悪化した。破綻直前だったのだ。CDS市場大手のAIGが破綻すれば、契約を結んでいた金融機関は、直ちにサブプライム関連などの損失を避ける「保険」を失い、巨額の損失が世界の金融機関に広がる。AIGはデリバティブの形で転売されるリスクの「終着駅」だったのだ。ここからFRBは前日に経営破綻したリーマンには行わなかった9兆円という巨額の融資を決めたのだ。米国発の金融恐慌とドル暴落を食い止めるために必死なのだ。今回のリーマンに端を発した金融恐慌は、完全にドル暴落の危機を引き寄せているのだ。しかも公的資金の投入は、イラク戦費、景気対策費などで限界に近い。財政赤字はさらに悪化し、ドル暴落のより巨大な要因となるしかない。
▼帝国主義は延命するために労働者をトコトン犠牲にしてきた。これが新自由主義の核心問題だ。それが破局を迎えている。資本主義の危機を根本的な社会変革(革命)へと転ずる人びと、すなわち労働者階級の闘いを生み出しているのだ。資本家階級にとっては史上最大の危機、労働者階級にとっては1917年のロシア革命を引き継ぐ世界革命の時代の到来を告げている。10・24国鉄闘争幕引き集会は敗北と絶望の道だ。民営化絶対反対と解雇撤回を貫く動労千葉のように闘おう。世界大恐慌を迎え撃ち、11・2労働者集会に結集しよう。(U)

 

 

翻訳資料

 討論資料-1

 ●討論資料 EUの対米・対ロ争闘戦が激化

 グルジアが新たな戦争の発火点

 世界大恐慌が爆発する中で、帝国主義間争闘戦が、グルジア戦争をもって、明らかに新たな段階に入りつつある。そのなかで、ロシアの凶暴化に対抗しつつ、EU帝国主義の軍事的突出が激しく行われている。
  エネルギー資源の供給の圧倒的部分をロシアに依存しているEU諸国(天然ガスが40%、石油が30%)にとって、ロシアからEUへのパイプラインの通路であるグルジアとウクライナは、資源戦略的に死活的な位置をもっている。とりわけグルジアは、ロシア・イラン・アフガニスタン・中央アジア、そして黒海をつうじて地中海に連なる戦略的要衝であり、この地域を誰が制するかは、帝国主義間争闘戦にとって軍事的にも死活的な問題である。
  9・11以後、米帝がグルジアに対する軍事援助をてことしてこの地域に進出し、ロシアの絶望的反撃を引き出し、それがまた世界的な規模での争闘戦を激化させるにいたった。問題になっているのは、延命の道を求める最末期帝国主義にとっての世界的勢力圏構築の可否であり、つぶすかつぶされるかの争いなのだ。

 ●  転換示す二つの事態

 この間、二つの重要な出来事が起きた。ひとつは、7月下旬、イランの海上封鎖を想定して大西洋上(アメリカ東海岸)で行われた米英主導のNATO合同軍事演習に、フランスの海軍と空軍が初めて参加したことだ。米帝のイラク開戦に反対していたフランスが、今年6月に発表した『国防白書08年』でNATO軍事部門への復帰を宣言して直後のことであり、世界戦争情勢へのフランス帝国主義の踏み込みを示すものだ。
  もう一つは、8月中旬、黒海のグルジア沿岸海域に、アメリカ艦隊とともにドイツ海軍が出動したことだ。フランス帝国主義と違って核戦力をもたず、海外派兵にも基本法(憲法)上の制約のあるドイツ帝国主義が、石油・天然ガス資源の確保を動機として、ついにロシア・トルコ・コーカサス諸国をつなぐ黒海という戦略拠点に、軍事的介入の第一歩をしるした。
  この二つの事態は、ソ連スターリン主義崩壊後、そして9・11後の世界情勢において、米帝との争闘戦の巨大な対極を形成するEU帝国主義の中軸である独仏両国が、新自由主義攻撃の破産のなかで、「内へ向かっての階級戦争、外へ向かっての侵略戦争」へ、新たに踏み込んできたことを示すものである。

 ●  仏がペルシャ湾に軍事基地

 昨年来、フランス帝国主義は激しい勢いで、軍事・外交政策を展開している。まず、今年1月、サルコジ大統領が、UAE(アラブ首長国連邦)を訪問し、軍事協定を締結した。この協定により、ペルシャ湾のアブダビにフランスの海軍基地を建設することが合意され、3月には実現した。
  これは、戦後、米帝が独占的軍事支配を形成してきた中東地域に、フランスがEU帝国主義として初めて進出する拠点であり、しかも中東石油の輸送路である戦略的要衝ホルムズ海峡を制する地点に、軍事基地をつくったということである。イラクの石油資源へのにらみをきかすだけではない。対岸のイランに対する重圧をかけ、さらにアフガニスタンに駐留するフランス軍への兵站基地としての意味ももつものである。
  中東の地中海側では、ドイツ帝国主義が、2年前からレバノン沖に、「武器密輸」の監視・阻止という名目で海軍を派遣しているが、この間、派遣期間をさらに15カ月延長することを閣議決定した。ドイツは、この間米帝から執拗(しつよう)に要求されていたアフガニスタン増派を6月に承諾し、アフガニスタン戦争にさらにのめりこんだ。フランスの中東政策のエスカレーションは、対米と同時に、こうしたドイツへの牽制(けんせい)をも含むものだ。

 ●  EU=地中海同盟の結成

 フランス帝国主義は、中東へ進出するなかで、旧植民地諸国を含む北アフリカの再勢力圏化を図っている。アルジェリア(旧植民地でサハラ砂漠に天然ガスを保有する資源国)と昨年12月に原子力協定を、今年6月には軍事協定を締結した。旧植民地ではないが、リビアとのあいだで、アメリカを出し抜いて、昨年原発協定を締結している。
  そして、こうした動きを集約するものとして7月、地中海沿岸諸国とEU全加盟国を包含する地中海同盟結成を主導した。もともとのフランスの狙いは、EUの拡大が、もっぱら東へむかって中東欧諸国の加盟として発展し、ドイツの勢力圏の強化になっていることに対し、旧植民地諸国であるアフリカ諸国を、新たに「フランス圏」に抱え込もうとするものであった。しかし、こうした構想は、ドイツをはじめとするEU諸国の反発を買い、結局EU全体が形成する組織とならざるをえなかったのである。

 ●  ゙独自の核。主張のサルコジ 

 注目すべき点は、フランスの軍事・外交政策の展開において、核エネルギー、原発、さらに核戦力がテコとされていることである。
  このフランスの動きは、現在、全世界的に広がっている原発建設ブームが帝国主義間の新たな争闘戦として展開されているなかで起こっている。 アメリカのスリーマイル島原発事故(1979年)と旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)以来、「核エネルギーからの撤退」が世界的な傾向となっていた。
  EUにおいてはフランス帝国主義だけが、原発の維持強化政策を固持し、軍事的にもEU随一の核大国(イギリスとならぶ)として、米帝主導のNATOからの距離を保ってきた。この核保有が、<核兵器をもたない経済大国〉であるドイツ帝国主義を政治的軍事的に牽制して、EUのヘゲモニーをフランスがドイツと共有するテコとなってきた。
  この間、石油価格の高騰の圧力が高まり、また地球温暖化・大気汚染が深刻化するなかで、<割安の資源〉<きれいなエネルギー源〉として、「原発の復権」がアメリカを先頭とする帝国主義諸国によって推進され【05年米議会が「包括エネルギー法」を可決】ている。
  イスラム発展途上8カ国(イラン・エジプト・トルコ・インドネシアなど)も06年5月、原発利用を決議、さらにBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)をもまきこんだ<原発バブル〉が吹き荒れている。今年の洞爺湖G8サミットは、原発推進を宣言し、世界の原発市場をめぐる争闘戦が激化している。
  EUにおける経済的ヘゲモニーという意味では、ドイツに圧倒的にひきまわされているフランス帝国主義は、自らの保有する核戦力を背景としながら、エネルギー資源問題の死活性、さらにフランス原発産業の利益をもかけて、全世界的な軍事外交政策を展開している。
  ドイツでも、「2020年までに原発を完全撤廃する」という連邦議会決議に対して、「原発の見直し」がドイツ経団連などを中心に叫ばれ、首相メルケルはもとより、社民党の内部からも、これに同調する動きが始まっている。

 ●仏独で頻発する原発事故

 こうした最中に、フランスとドイツで重大な原発事故が頻発している。
  南仏トリカスタンの原子力発電所で、9月8日、核燃料の取り付け作業中に事故が発生し、原発は稼働を中止した。トリカスタンのウラン濃縮工場から出る廃液処理施設では7月8日に、廃液がタンクからあふれ出て、付近の河川に流入するという事故があったばかりで、原子力企業アレバの責任が問われている。7月18日には、同じく南仏ロマンシュルイゼールの研究用核燃料製造工場で配管が破れ、ウランを含む放射性物質が、かなり長期にわたって漏れだしていたことが発覚している。
  一方、ドイツでも、9月3日、ザクセン州の原子力企業Asseの放射能廃棄物貯蔵庫で、内部に浸水があり、危険な状態にあることが暴露され、同設備の管理責任が、Asseから取り上げられ、放射能保護庁に移管されることになった、と発表された。放射性廃棄物の処理のずさんさが、ドイツ国内で大問題になっている。
  「核エネルギーへの復帰」が叫ばれはじめていることに対して、原発反対運動が再び活発になりつつある。ドイツの労働者人民にとって、核の脅威とは、EU内のポーランドやチェコに対する米帝のMD配備とならんで、国内の放射性廃棄物問題が、現実的な問題となりつつある。
  米帝は、イランと北朝鮮に核抑制を強制し、それをテコに世界戦争情勢を激化させつつ、核不拡散条約を批准していないインドに核燃料を供給する決定を強行した。この背後には、原発建設をめぐる国際資本間の激しい争闘戦が渦巻いている。米国原発市場をめぐる日米原子力産業の争奪のラッシュが起きている。
  世界金融恐慌の底知れぬ激化のなかで、帝国主義者の核開発・核戦力強化の攻撃は、新自由主義攻撃の破綻と闘う労働者の怒りの火にますます油を注ぐものである。
  (川武信夫)

 

翻訳資料

 討論資料-2

 フランス08年国防白書

 地中海からペルシア湾をめざす

  フランスの国防白書が6月16日発表された。サルコジの狙いは、帝国主義間争闘戦の世界的激化のなかで、フランス帝国主義の軍事的政治的位置を、NATO、EUという枠組みを足場にして、世界的戦場にむけて飛躍させることである。白書は、NATO軍事組織へのフランスの復帰を宣言し(注)、フランス帝国主義にとっての戦略的基軸として地中海から中東・アジアにいたる地域を設定した。そして、独自の「核抑止力」の堅持・拡大を、こうした戦略構想を支える軍事力の核心として再確認している。同時に、挙国一致的な戦争動員体制の構築を呼びかけ、新たな階級戦争宣言をしている。
(注)フランスは66年、ドゴール大統領のもとで、米帝からの核戦力の独立を宣言して以来、NATOの統一的軍事指揮系統への編入を拒否してきた。

 白書の特徴

1 白書は、「前回白書を発表した1994年から、とりわけグローバリゼーションの衝撃のなかで、世界は根本的に変わった」「ジハードを志向するテロリズムが、フランスとヨーロッパを狙っている」そして「2025年までには、フランスとヨーロッパは、新しい勢力によって開発される弾道ミサイルの標的内に入るであろう」と危機感をあおりたてている。そうした脅威に対応するための新たな「戦略的展望」を提出することが今回白書の課題であるとする。

2 白書は、このような新たな状況のなかにおける安全保障問題とは、「一国家の生命を危険に陥れるようなすべての脅威、危険に対処することである。それは、国防政策を含むだけでなく、国内治安政策をも含む」と提起し、国防と治安を表裏の関係にあるものとして強調している。

3 国家安全保障の確保のために、防衛・治安部隊は次の五つの戦略的機能に習熟すべきであるとする。「@予知と待ち受け、A予防、B抑止、C防御、D出動(攻撃)」。「予知と待ち受け」は、「新たな、最優先の戦略機能である」とされ、「不確実で不安定な世界において、予知能力」が重要として、宇宙からの情報を含むあらゆる種類の情報の重要性を強調する。「防御」は、「危機管理能力と即応システムの強化」を提起し、「その中心は、通信情報システムと民間警報システムである」と、その役割を担う「民間組織と軍の協働関係」を新しい戦略の原則の一つとして規定している。

4 軍事力の重点配置を行う地域として、「大西洋から地中海、ペルシャ湾、そしてインド洋にいたる地域」を「フランスとヨーロッパの最も重大な戦略的利害がかかっている」戦略的基軸として設定している。さらに、フランス帝国主義の旧来の勢力圏である「アフリカの東西海岸、サハラ砂漠」において、「予防的行動的な軍事力を保持する」と、アフリカ平和維持軍の強化を宣言している。これは地中海同盟を狙うものだ。

5「独立した核戦力の保持」を強調している。具体的には、「海上発射弾道ミサイル潜水艦、および核戦闘可能な戦闘機に搭載する空中発射ミサイルである」と書いている。これは、明らかに地中海からペルシャ湾、インド洋へかけての戦略的基軸での実戦を想定して言っているのだ。

6 EUとの関係について「危機管理と国際安全保障の主役はEUであるべきだということは、われわれの根本的信念である」と宣言しつつも、実際にはNATOから独立した、すなわち米帝の指揮に従属しないEU独自の戦略的展開、しかもフランスの核戦力をバックとした展開を主張している。

7 白書は、そのうえで、「EUとNATOの役割が相互補完的である」として、NATOとフランスの関係調整の問題に入っていく。つまりフランスはNATOに復帰するが、平時において永続的にNATO軍の指揮下におかれるということはないと、対米独立性を主張し、フランス帝国主義の階級的国家的利害をつきだしている。

8 フランスブルジョアジーの軍事産業の利益を、対米的に押し出している。

9 最後に、見過ごせないのは、公務員労働者の戦争動員と教育の軍事化である。

白書は、争闘戦激化の宣言であり、階級戦争の宣言であり、戦争動員指令である。