International Lavor Movement 2011/02/01(No.414 p48)
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2011/02/01発行 No.414
定価 315円(本体価格300円+税)
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月刊『国際労働運動』(414号1-1)(2011/02/01)
■羅針盤 動労千葉のストと反戦デモ
▼11・23延坪島砲撃戦とその後の展開が突き出していることは何か。それは、世界大恐慌のもとで、米帝がついに朝鮮侵略戦争の強行に踏み切り、歴史的背景を持つ朝鮮半島での帝国主義と残存スターリン主義の間の新たな戦争=侵略戦争が切迫しているということである。それは同時に、〈帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制が最後的に崩壊した〉ことを告げる歴史的事態でもある。米日帝による朝鮮侵略戦争の核心的狙いは、北朝鮮スターリン主義体制を転覆する侵略戦争を通して、韓国労働者階級、さらに世界の労働者階級の闘いを圧殺するところにある。
▼これに対して、労働者階級と人民の大反撃が12・3〜4動労千葉ストと渋谷デモとして断固として闘い抜かれた。12月3日正午、動労千葉は、〈12月ダイ改粉砕・検修外注化阻止〉のストライキに突入した。早朝からの大雨をついて駅とJR職場へのビラまきを行った支援の労働者と、スト直前まで組織拡大に全力をあげた動労千葉の組合員が、幕張車両センター前に結集した。その中を、正午を期してストライキに突入した幕張支部の組合員が職場から誇らしげに出てきて大合流した。幕張・京葉の検修職場と同時に、木更津、銚子、鴨川の検査派出もストライキに突入し、JR資本に大打撃を与えた。
▼動労千葉のストライキの熱気は、夕方の「朝鮮侵略戦争阻止・菅政権打倒」の渋谷デモに持ち込まれた。動労千葉のスト決起と3名の組合加入の報告は、参加者を奮い立たせた。440人の渋谷反戦デモは、開始された日米共同統合演習を徹底的に弾劾し、「大失業と戦争に突き進む菅民主党政権打倒!」の新たな戦闘宣言となった。
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月刊『国際労働運動』(414号2-1)(2011/02/01)
韓国
現代資本にドス突きつけた工場占拠スト
非正規職労組、25日間の籠城占拠を解く
□闘いは終わりではない
11月15日に始まった現代(ヒョンデ)自動車蔚山(ウルサン)非正規職支会の工場占拠スト闘争は12月9日午後4時、籠城(ろうじょう)を解除し、籠城団は整然と隊列を整えて堂々と工場正門を出た。
現代車非正規職支会組合員を外で待っていた連帯団体会員たちは拍手と「ご苦労さん」というあいさつで彼らを暖かく迎えた。
最後まで籠城場を守っていた組合員も、外で待っていた人たちも涙を流していた。ずっと待ち続けた末に抱き合った彼らは皆同じく「闘いは終わっていない」と言った。
現代自動車蔚山1工場で籠城に参加していたある組合員は「25日間、寒くて腹が減っていたけれど、外で粘り強く連帯してくれている人たちと家族対策委、そしてヤンジェ洞で籠城している同志たちのおかげで心の奥深いところに温かさを感じた」と言った。彼は「籠城場を出る足取りが重かったが、最後ではない、始まりだという考えで出てきた。現場に復帰してまた始めよう。まだ希望はある。われわれが始発点になってあらゆる非正規職が正規職になって、皆一つの労働者になることができるように現場で力いっぱい闘う」と言った。
(写真 11月9日午前、籠城場で開かれた組合員総会)
□9日、籠城解除を決定
非正規職労組(支会)は9日午前、緊急総会を開き「先ず交渉、その後籠城解除」案を決定し、イサンス非正規職支会長にあらゆる権限を委任していた。しかしこの日の午後1時30分頃、イサンス支会長がパクユギ金属労組委員長とイギョンフン現代車正規職労組(支部)支部長と会った3主体会議で「先ず籠城解除」に最終的に合意した。
3主体と現代車は△籠城場非正規職の告訴・告発、損害賠償、治療費の解決△今回の籠城者の雇用保障(蔚山、全州(チョンジュ)、牙山(アサン))△非正規職支会指導部の社内身辺保障△不法派遣交渉対策要求について交渉を開いた。
争議対策委とパクユギ委員長、イギョンフン支部長が午後2時10分頃、再び籠城場に上がって行った。争議対策委は「3主体協議結果、籠城を中断して現時間を期して私たちは籠城場を出る」と明らかにした。
非正規職支会1工場のキムソンウク代表は「イサンス支会長がつらい決断をした。われわれの要求を100%貫徹できなかったが70〜80%要求案を受容した。第2の拠点をつくって闘争を共にして行こう」と支会長の決定事項を伝えた。
キムソンウク代表は「われわれは25日間、奇跡を起こした。最後まで頭を下げずに堂々と進んで行こう。現時間をもって籠城場をたたむ」と宣言した。
工場占拠後、現代車元・下請け労資が初めて交渉テーブルについた。現代車非正規職支会イサンス支会長と役員ら、イギョンフン現代車支部長とカンジョンヒョン組織強化室長、金属労組パクユギ委員長とイジェイン団協室長、キムジュチョル民主労総ウルサン本部長が労働側代表として出て、会社側からはカンホンドン代表理事副社長(蔚山工場長)を始めとする幹部7名と、下請会社社長2名が出た。
金属労組、現代車支部、現代非正規職支会と現代車元・下請会社側が参加する「5者交渉」テーブルの性格について会社側は「今回のストライキにともなう特別協議体」とし、労働側は明確な「交渉」と主張して違いを見せ、この日の初顔合わせ会は35分で終わった。
(写真 1工場を出る組合員)
□“組合員は勝利した”
この25日間の工場占拠ストライキを現場で取材したチョソンウン記者が蔚山労働ニュースに次のような論評を寄せている。紹介しよう。
現代車非正規支会組合員は勝利した。彼らは非正規職労働者も闘いによって団結することができるし、工場を止めることができて、新しい世の中をつくり出すことが可能だという希望を持てるようになった。
現代車非正規職支会の組合員は闘争の中で代議員、現場委員、分任組など自らの闘争機関を建設した。集会と現場討論をとおしてあらゆる問題を討論し、論争して階級的立場をつくっていった。「あらゆる社内下請けを正規職化せよ」という3支会(蔚山、牙
山、全州支会)8大要求案を「雇用継承と懸案問題解決」に後退させた「3主体(金属労組、現代車支部、現代車非正規職支部)論議案」を「ゴミくず案」だとして糾弾し、揺れる指導部を叱咤(しった)した。
現代車非正規職支会組合員は不法派遣撤廃、正規職化が不可能な夢だと考えはしなかった。まさに今、ここで実現しなければならない当面した目標とした。
現代車非正規職支会組合員はチョンモング(現代自動車会長)を締め付ける闘争、頭の中で考えていた大部分のことをいっぺんにやった。工場占拠ストライキを、自分の闘争目標を実現するための実践的手段として選択した。資本の利潤に直接的に打撃を与えた。そして工場占拠ストライキを拡大するために現代車資本のすさまじい暴力に対して闘った。2工場、3工場のストライキを組織するために殴られても、殴られても闘争の現場に戻ってきた。病院のベットでも闘うと決意した。1工場占拠スト籠城場を死守して不法派遣撤廃、正規職化闘争の勝利のために自分を犠牲にして決起した。「同志という言葉がこんなにいいものだとは知らなかった」と家族までも変化させた。
現代車非正規職支会の組合員は自分の前で話をし、行動していた支援勢力が果たして真の友であるのかどうか評価することができた。正規職労組が立ちはだかる壁を乗り越えてこそ直接現代車と対決できるという、貴重な階級的経験を持つことができた。
現代車非正規職支会組合員たちはすでに「新しい人間」たちだ。生存のために正規職と競争して、同僚と競争して、同志と競争していた過去の非正規職労働者ではない。現代車非正規職組合員たちは資本の弾圧の中で生まれ、成長した、今は資本が恐れる新しい人間たちだ。
現代車非正規職支会組合員たちはスト破壊脅迫と孤立の中で籠城場から降りては来たが、すでに彼らはあまりに多くのことを経験したし、成長している。25日間の1工場占拠スト闘争は今すぐ手に取れる結果ではなく非正規職撤廃闘争のために何が不足しているのか、何を準備しなければならないのかを学ぶ闘争の学校だった。
現代自動車支部(正規職)は1工場2階の占拠籠城闘争場への会社側の侵奪を許さず体を張って闘った。会社側の妨害を貫いて籠城場に食料を送った。しかし、指導部の方針は非正規の闘いに真に連帯するものではなかった。
金属労組と現代車支部、民主労総蔚山本部は、今すぐここで実現されなければならない正規職化闘争を「懸案問題解決」に後退させた。1工場拠点ストライキ場から闘争を組織して闘争を拡大させる役割ではなく妥協し仲裁し調整し収拾し闘争を終わらせようとした。誰のための妥協と仲裁なのか? 誰のための収拾終結なのか? 籠城解除を最も望んでいる者はまさに現代車資本だ。
記者は最後に、「1工場拠点ストライキ組合員たちは『階級和解のための仲裁と妥協の機構』に対し、断固として闘う自分たちの指導部を建設しなければならないと自覚(「われわれは闘う準備ができている。指導部は絶対揺れるな」)しつつある。これが1工場占拠ストライキの要約だ」と記している。
今回の工場占拠籠城闘争は現代自動車という巨大資本に立ち向かって、現実に25日間生産を止めるという闘いを貫徹した。正規職労働者との真の連帯をかちとっていくことの重要性がますますはっきりした。現代自動車非正規職支部の労働者の中に固い団結と労働者階級の真の力に目覚めた多くの労働者を生み出した。これがこれからの闘いを牽引していく最大の力であり、韓国の労働運動を牽引して行く大きな成果だ。
(写真 正門前での整理集会)
(大森民雄)
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全北バス7支会がゼネスト 警察による72人連行を糾弾
全国運輸産業労組民主バス本部所属の全北地域7支会が12月8日午前4時から無期限ゼネストに突入した。
第一旅客、湖南高速、全北高速、シンソン旅客、市民旅客、プアンスマイル交通など七つの労組は前日7日、地労委の調停が終わるまで会社の態度変化がなく、対策会議を持ってゼネストを決議した。
午前10時30分、ゼネスト闘争に立った全北地域バス労働者闘争本部のゼネスト突入記者会見が開かれた。彼らは今回のストライキをとおして「バス労働者の人間らしい生活を必ずかちとる」と明らかにした。
これに先立ち警察は全州市民旅客の車両を阻止していた労働者26人をドクチン警察署に連行した。
午前10時頃、全北高速事業場周辺に集まった警察は11時30分頃、全北高速支会ストライキ現場がある駐車場を急襲して全北高速支会長を始めとする46人の組合員を全州ワンサン警察署に連行した。
合わせて72人が警察署に連行されたのだ。
現場にいた労組関係者は「会社側はあらかじめ警察が侵入する空間を準備しておいた」とし、「彼らはまた、組合員らが連れていかれると約束でもしていたかのように懸垂幕と労組施設などを素早く撤去した」と言い、会社側の準備した策謀を糾弾した。
これに対して午後2時、全州市庁広場で開かれた全北バス労働者ゼネスト闘争勝利決意大会では午前に起こった野蛮な弾圧を糾弾する声であふれた。
キムジョンイン公共運輸労組バス闘争対策委員長は「怒りに堪えない」と、言葉を詰まらせて「人間らしく生きようとする労働者を弾圧するのを見て、権力もまた資本家の犬」だと、警察の無差別連行に対して非難を浴びせた。
彼は「過度の労働で膀胱炎や胃腸病に苦しんで常時的事故の危険におかれているのがわれわれ労働者の現実」だとし、「公共の権利である移動権の次元としても全北バスを市民のものとして、労働者のものとして、必ず取り戻さなくてはならない」と述べた。
( 写真 全北バス労働者のゼネスト闘争勝利決意集会)
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月刊『国際労働運動』(414号2-2)(2011/02/01)
ヨーロッパ
緊縮政策に労働者・学生の怒り爆発
EUの“弱い環”でゼネストとデモの波
没落帝国主義米帝が、朝鮮侵略戦争にのめりこみ、対中国争闘戦を極限的に激化している一方、米日と対抗して世界支配を争うEU帝国主義が、EUの解体的危機に直面している。
新自由主義政策の矛盾を集中され、〈帝国主義の弱い環〉に陥れられた諸国、とりわけ、いわゆるPIIGS諸国と呼ばれるポルトガル・アイルランド・イタリア・ギリシア・スペインをはじめとする諸国で、労働者人民の積年の怒りが、ゼネスト、デモなどで爆発し、EU体制そのものを揺るがしているのだ。
□アイルランドの首都で10万人のデモ
財政危機から、アイルランドはついにEU・IMFに救済を要請し、EUは730億ポンドの銀行救済資金の提供を決定した。ギリシアと同様、緊急援助≠フ条件として、EU・IMFが要求している財政赤字削減のための緊縮政策に対して、労働者人民の怒りが、ついに爆発し始めている。
(写真 ダブリンの抗議デモ【11月27日】)
首都ダブリン市内で、11月27日、12月4日と連続してデモが行われた。とりわけ12月4日のデモには、10万人が全国各地から結集し、アイルランドにとって画期的な大闘争となった。教育労働者、公務員労働者、バスの運転士、テレコム労働者、看護師、そして年金生活者など、あらゆる領域の労働者が参加していた。子どもづれの母親もいた。学生は、すでに11月26日に、2000人の独自デモをやっている。
デモ隊の怒りは、危機の元凶=銀行資本とその手先である政権党、フィアナ・フォイル(共和党)と緑の党に対してだけ向けられたわけではない。長年にわたって政府の政策を支持し、労働者人民に犠牲を強いてきた野党、フィナ・ゲール(統一アイルランド党)と労働党、そしてその影響下にある労働組合会議(CTU)に対してもぶつけられた。
集会で、口先だけの政府批判をやった労組幹部の演説に対しては、「お前も、やつらと同じベッドで寝ていたではないか」「降伏した卑怯者!」などの野次がとび、「いますぐゼネストだ」の声が上がった。野党は、今回の緊急政策に対して議会で反対することすらせず、ゼネストどころか、デモでガス抜き≠試みると同時に、労働者の怒りの爆発を恐れて、11月27日のデモには、デモの過熱化を防ぐために=@組合官僚の手先の250人のデモ警備員を配置した。革命情勢への発展を恐れ、与野党はこぞって、労働者人民の怒りをデモ・スト、生産点での闘いの爆発から、来年の総選挙へと転換させようと反動的な策動を行っている。しかし、ついに労働者階級と既成労働組合指導部の間に亀裂が公然と現れ始めたことは確実である。
集会で、口先だけの政府批判をやった労組幹部の演説に対しては、「お前も、やつらと同じベッドで寝ていたではないか」「降伏した卑怯者!」などの野次がとび、「いますぐゼネストだ」の声が上がった。野党は、今回の緊急政策に対して議会で反対することすらせず、ゼネストどころか、デモでガス抜き≠試みると同時に、労働者の怒りの爆発を恐れて、11月27日のデモには、デモの過熱化を防ぐために=@組合官僚の手先の250人のデモ警備員を配置した。革命情勢への発展を恐れ、与野党はこぞって、労働者人民の怒りをデモ・スト、生産点での闘いの爆発から、来年の総選挙へと転換させようと反動的な策動を行っている。しかし、ついに労働者階級と既成労働組合指導部の間に亀裂が公然と現れ始めたことは確実である。
□ポルトガルのゼネストに80%を超える参加
11月24日、社会党政府の緊縮政策に反対して、巨大なゼネストが、全国、全産業、全社会分野で闘われた。統一ゼネストとしては、1988年以来初めてのことである。
ゼネストに参加した労働者の数は、200万人から300万人といわれる。ポルトガルの総人口が1千万人、労働人口が500万人だから、空前の労働者決起で、ポルトガル経済の中心部分を揺るがした。ゼネストへの参加率は80%を超えた。
( 写真 ポルトガルのゼネスト)
列車の80%がストップ。バスや、島との間のフェリー、地下鉄も運休。港湾労働者、海上運輸管制労働者が、全国の港湾の機能をストップさせ、空港では航空管制官と地上勤務員がストライキ。リスボン空港のチェックインカウンターも業務を停止し、リスボン発着の数十便がキャンセルになるなど、ポルトガルの陸海空の交通が止まった。
郵便配達労働者は、民間のスト破りのトラックの突入を阻止するために局前にピケットを張った。学校も、教員と職員が閉鎖した。健康関係から銀行に至るサービス業務もストップした。
ストの主力は公共部門の労働者であるが、民間の労働者も多数参加している。
リスボン近郊のフォルクスワーゲン・オートヨーロッパ工場は、ポルトガル最大の輸出元だが、3600人の労働者がストに参加し、日産500台の生産ラインを完全に止めた。工場はスト防衛のピケットで固められた。出勤したのは全労働者の10%足らず。
リスボン市内は、「ストに参加しよう!」と全労働者に呼びかけるのぼりであふれた。そして、市の中心部を、ゼネスト中の10万人の労働者が行進した。
今回の歴史的なゼネストへの参加率は、列車、リスボンとポルトの地下鉄、河川運送業務、全国各地の空港の地上勤務員、乗務員、航空管制労働者など、スト参加はほとんど100%に近く、全体としては85%。多くの都市で、ごみ収集はストップ(各所で1
00%の参加)。保健関係職場でも、参加率は高い。とりわけ健康センターや病院。
今回の緊縮政策反対の統一行動を指示した2大労働組合、CGTP(ポルトガル労働者総連合―ポルトガル共産党の影響下)とUGT(労働者総同盟―与党社会党の影響下)が共闘するのは、1974年にサラザール独裁政権を打倒して以来のことである。しかし、実は彼らは次のように公言している。「CGTPはゼネストを呼びかける。それは、新たな蜂起を行うためではなく、最悪の社会不安を避けるためである」(CGTP議長カルバリョ・デ・シルバ)。「愛国的で左翼的な政治を」(PCP/ポルトガル共産党)。「緊縮予算案の投票では、国の脆弱な経済を危機に追い込まないよう、反対投票をすることは差し控え、棄権に回る」(野党社会民主党)。これが、歴史的共闘≠フ中身だ。
注目すべきなのは、今回の巨大な歴史的ゼネストに先立って、4月26日に機関士労組(SMAC=Sindacato dos Maquinistas)が、5時間のストをやり、朝の通勤時間の都市交通を完全にストップさせていたことである。〔ストは、さらに4月27日、29日にも行われ、これには、バスの運転士や郵便労働者も参加した〕。そして、5月7日には、緊縮政策反対の巨大な抗議行動が行われた。ポルトガル労働運動の新たな出発だ。
注目すべきなのは、今回の巨大な歴史的ゼネストに先立って、4月26日に機関士労組(SMAC=Sindacato dos Maquinistas)が、5時間のストをやり、朝の通勤時間の都市交通を完全にストップさせていたことである。〔ストは、さらに4月27日、29日にも行われ、これには、バスの運転士や郵便労働者も参加した〕。そして、5月7日には、緊縮政策反対の巨大な抗議行動が行われた。ポルトガル労働運動の新たな出発だ。
□スペインでは1000万人のゼネスト
9月28日、スペインで、緊縮政策に反対する労働者が24時間のゼネストに決起。労働人口の半数以上の1000万人の労働者が参加した。ゼネストは、スペインでは8年ぶりのこと。高速列車の80%が運休、中距離輸送も混乱し、通勤電車は25%しか走らなかった。タクシー運転手もスト。スト中の工場の門前では、ピケ隊と警官隊との間に衝突が起きた。
マドリードやバルセロナの卸売市場では、配達を強行しようとしたトラックに卵や野菜などが投げつけられた。ごみの収集は止まり、ストライキを呼びかける組合のビラが街路を埋めた。
闘いは続き、議会が政府の緊縮案を可決した12月3日の夜、航空管制官たちが、組合の指令を待たずに「病欠」で職場を離れ、24時間の山猫ストに入った〔6月のマドリッド地下鉄のストも、組合の闘争方針がないなかで、事実上、職場大会での決定から始まった〕。労働時間に関する交渉が長期化したことへの抗議と緊縮政策反対が掲げられている。翌4日、これに対し、政府は軍事政権以後、初めての非常事態宣言を発し、442人のスト参加者に対する懲罰の攻撃を開始した。
ゼネスト後に、サパテロ首相〔PSOE=スペイン社会主義労働者党〕の内閣のサルガド経済相は「恐慌のさなか、労働組合はこれまで完璧に責任ある態度≠示してきてくれた」「この基本的姿勢が、これからも貫かれていくことを期待する」と述べた。スペインの労働組合、UGT(労働総同盟)とCC・OO(労働者協議会)は、財政危機の爆発以来ずっと政府に協力してきた。今年の1月、サパテロは、緊縮政策の立案にあたって、秘密裏に、この二大労組の指導部と会談をしており、UGTのメンデスは、「社会平和は、各人の望むところであり、また責任でもある。社会平和を破るつもりはないし、これからもそうである」などと言い、CC・OOのトクソ委員長は「ゼネストは、スペインにとって最悪の事態だ」と語っている。9月29日の行動については、「政府を代えようとするものではない。ただ、方向転換を要求するだけのものだ」と両労組の記者会見で言明した。
□逮捕の恫喝でスト中止命令するギリシャ政府
6月28日の24時間スト以来、ギリシャ労働者の闘いは続き、11月25日、アテネ市内を数百人が、緊縮政策に反対するデモを闘った。デモは、いくつかのグループ毎に、市内各所で行われた。退役軍人が、年金・健康保険を要求して、防衛省にデモ。さらに、11月30日、数百人のジャーナリストが首切り反対≠フプラカードを掲げ、アテネ市内デモ。ストで、テレビや新聞発行が止まった。12月2日、フェリーの乗務員が、職の防衛と失業手当を要求した8日間のストを終えて、仕事に戻る。政府が、スト中止を行政命令。逮捕の恫喝でスト中止を命令したのは、この半年で2回目だ。さらに、12月15日にも、闘争が予定されている。
EUの弱い環≠ネどと呼ばれているこれら諸国は、実は新自由主義政策のもとで、民営化、規制緩和、グローバリゼーション、外注化、組合つぶしなどの攻撃を集中的に受け、低賃金・無権利の労働力市場、投機資金(=過剰資本)のターゲットとして、EU帝国主義だけでなく、日米資本の延命のために、食い荒らされてきたのである。
その攻撃に対し、自ら屈服して協力してきたのが、体制内労働運動である。こうした諸国の労働者階級への攻撃は、独仏などEU帝国主義中心国の労働者に対しては、「より安い労働力」を求めての外注化(工場の海外移転)という恫喝による賃金抑制として襲い掛かった。これを容認してきたのは、やはりEUの体制内労働運動指導部だった。
今や、世界大恐慌・戦争に立ち向かい、勝利するためには、帝国主義の延命の手先、支柱となっている体制内労働運動の壁を打ち崩す、階級的労働運動の新たな国際的潮流の形成を、「万国の労働者、団結せよ!」の旗の下、闘いとっていくことが急務である。 (川武信夫)
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■EU各国の緊縮政策2010
アイルランド:公務員労働者の賃金カット(5%)/公共部門労働者、24,000人の解雇/社会保障関連支出、28億ユーロ削減/最低賃金の引き下げ:一時間7.65ユーロ($10/840円)へ/付加価値税(消費税)を現行の21%から、2013年に22%へ、2014年には24%へ引き上げ/子ども手当を、1カ月につき16ユーロ削減/定年退職の年齢を2014年までに68歳まで引き上げ
ギリシア:公的サービス労働者へのボーナス廃止/公的部門の賃金と年金を3年間にわたり凍結/消費税を19%から23%に引き上げ/燃料・アルコール・タバコ税の10%引き上げ
ポルトガル:公務員の賃金カット/年金の凍結/家族手当の廃止/学校への援助の中止/消費税引き上げ/交通費・医療費の引き上げ/国有・公共企業(航空・鉄道・郵便など)の民営化
スペイン:官庁労働者は、6月以来、5%の賃金カット、2011年まで賃金凍結/タバコ税28%の引き上げ/新生児の母親にたいする2500ユーロの現金給付が廃止/長期失業者にたいする月額426ユーロの補助金の打ち切り
■EU諸国の債務と財政赤字(2009年)/失業率
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債務総額(対GDP%) |
財政赤字(対GDP%) |
失業率(%)(2010.6) |
EU基準値 |
60 |
3 |
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イタリア |
115.8 |
5.3 |
8.3 |
ギリシア |
115.1 |
13.6 |
12.2 |
フランス |
77.6 |
7.5 |
9.8 |
ポルトガル |
76.8 |
9.4 |
11.1 |
ドイツ |
73.2 |
3.3 |
6.9 |
イギリス |
68.1 |
11.5 |
7.7 |
アイルランド |
64 |
14.3 |
13.7 |
スペイン |
53.2 |
11.2 |
20.2 |
(資料:EU統計局)
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月刊『国際労働運動』(414号2-3)(2011/02/01)
イラク・アフガン
オバマがアフガンを電撃訪問NATO、11年撤退開始―14年完了決定
世界恐慌の爆発の中で、米帝は北朝鮮・中国侵略戦争に訴えて世界支配を貫徹しようとしている。そうした中で、米帝のアフガニスタン、イラク侵略戦争はますます敗勢を深めている。
□NATO首脳会議開く
ポルトガルのリスボンで北大西洋条約機構(NATO、加盟28カ国)の首脳会議が11月20日開かれた。
アフガン情勢を協議した会議には、NATO率いる国際治安支援部隊(ISAF)の派兵国48カ国に加え、日本、国連、欧州連合(EU)の代表も参加し、11年前半から地元軍・警察への治安維持権限の移譲を本格化し、14年末に完了する行程表を承認した。
これは、アフガン情勢が改善したからというのでは全くなく、北朝鮮、中国侵略戦争に本格的に突入するための政策である。実際に2010年の1年間の国際部隊の死者は過去最多となり、690人を超えている(図参照)。米軍の地上部隊は戦闘には使えないような状態に陥っている。
米軍は11年からアフガニスタンに初めて「M1A1エイブラムス」戦車を投入することを決めた。10年1月以来、オバマがアフガン増派をしてきたにもかかわらず戦局を改善することはできず、逆に敗勢が深まったことによる戦力増強である。米帝はこの間、タリバンを和平交渉のテーブルに引き出すためにカルザイ政権を使って接触を図ってきたが、タリバンによって拒否され、和平交渉の道が完全に破綻してさらなる戦力増強に追い込まれた。タリバンは9年間のゲリラ戦の中で戦術的にも洗練されてきており、米帝が敗勢をひっくり返すことはほとんど不可能だ。
米帝オバマは、12月3日、アフガニスタンを電撃訪問し、負傷兵を慰問すると同時にバグラム空軍基地で101空挺師団の兵士を前に演説し、年末休暇の祝詞を述べ、「君たちは任務を達成しつつある」と言ったが、アフガンの大半をタリバンが制圧している状況であり、任務達成というにはほど遠い。101空挺師団は侵略最前線部隊として投入されており、今年だけで100人を超える死者を出しているのだ。
□カルザイ政権と軋み
こうした中で、米帝とカルザイ政権との関係に軋(きし)みが生じてきている。オバマの電撃訪問ではカルザイとの会談が行われず、テレビ電話での討論も、カルザイが拒んで単なる電話会談になった。オバマは、カルザイの汚職について批判を強めている。だが、実際には米帝が袋詰めの莫大な資金をカルザイに提供するようなやり方がカルザイ政権の腐敗を進行させたのであり、カルザイを汚職に導いたのは米帝である。
一方でカルザイは、米軍に夜間に民家のドアを蹴破って行われる捜索を止めるように求めている。ロシア軍と共同で行われた麻薬工場への爆撃についても非難している。軍事作戦が泥沼化する中で、この敗勢の責任を巡ってどちらにより大きな原因があるのかで責任のなすり合いになっているのだ。
□マリキが首相に再選
米帝の侵略戦争は、イラクでも行き詰まっている。10年3月に国民議会選挙が行われたが、11月になるまで政府の形が決まらず、混迷が続くような有り様だった。結局、最も権限を持つ首相にはマリキが再選されたが、シーア派とスンニ派、クルド人の三つの勢力の対立の中で、ようやく米帝の思惑を押しつけたのである。
米帝は、イラク人民のゲリラ戦闘を押さえつけるためにこの三つの勢力の分断と対立を煽り、スンニ派を中心としたゲリラ勢力に対してシーア派武装勢力の襲撃によって打撃を加えるやり方を取ったが、その生み出した現実としてイラク国内の勢力争いは収まるはずもなく、情勢の一層の不安定化は不可避である。そうした中で武装勢力の自爆戦闘などのゲリラ戦闘は現在も激しく続いている。
米帝は、10年8月に米軍の戦闘部隊を撤退させたとしているが、現実には5万の軍隊を始め傭兵を含めれば、10万人以上の戦闘部隊がイラクに残ったままである。米帝は首都バグダッドの真ん中のグリーンゾーンにバチカン市国よりも面積の広い大使館を建設しており、イラクを実質的に植民地支配することを目論んでいるのだ。
米帝のイラク占領支配の核心は、労働者階級の闘いを圧殺することにある。米帝は暫定統治の際にフセイン政権下で敷かれていた抑圧法の大半を廃止したが、公務員労働者と石油労働者から労働組合結成の権利や交渉権を奪う労働組合禁止法はそのまま維持した。労働者階級の決起だけはなんとしても阻止しようというのである。この労働運動弾圧法は、そのまま現在のマリキ政権に引き継がれている。
イラクの労働者階級は、不屈に闘い続けており、08年には、米のILWU(国際港湾倉庫労働組合)が「アフガン・イラク戦争阻止」を掲げ、軍事物資輸送阻止の西海岸すべてをぶっ止めるストライキに立ち上がった闘いに連帯してイラクの港湾労働者がストライキに立ち上がった。イラク政府は南部石油労働者の一時金値上げ要求の闘いに対して指導者をバグダッドに強制配転し、仕事を与えずに机に座らせておくといった弾圧を加えているが、労働者は元の職場に戻すことを要求して闘い抜いている。
世界恐慌の爆発が、帝国主義の世界戦争へと向かう中で、この攻撃を止められるのは労働者階級の広範な決起だけである。
(秋原義明)
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月刊『国際労働運動』(414号9-1)(2011/02/01)
■編集後記
11月23日の朝鮮半島における砲撃は、米帝の朝鮮侵略戦争の開始である。朝鮮半島を南北分断した朝鮮戦争の継続がある。米帝の一貫した戦争重圧があった。だが根本的には大恐慌の深まりがある。全ての帝国主義国、大国が経済的に完全に行き詰まっている。他国を蹴落とす以外に延命できなくなっている。
基軸帝国主義の米帝の危機は尋常ではない。米帝は、大恐慌からの延命をかけた新自由主義経済政策が自滅的になっている。ドル暴落の恐怖に震えながらやっている。その矛盾を対中国政策にぶつけて、排外主義的に乗り切ろうとしている。
戦後世界体制の崩壊が始まり戦争が始まった。労働者階級は巨大な反乱に決起していく。まさに革命情勢が成熟してくる。プロレタリアートは「帝国主義戦争を内乱へ」を掲げ革命の準備を開始する時が来た。
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