International Lavor Movement 2012/06/01(No.430 p48)

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2012/06/01発行 No.430

定価 315円(本体価格300円+税)


第430号の目次

表紙の画像

六ケ所村核燃料再処理工場抗議闘争(4月8日 青森)

■羅針盤 国鉄闘争全国運動の前進を 記事を読む
■News & Review 韓国
 現代自動車下請労働者が大法院で勝訴   不当解雇、不当労働行為の取り消し訴訟
記事を読む
■News & Review シリア
 「シリア人民は一つだ」掲げる巨大なデモ   アサド政権の新自由主義うち破る革命の道
記事を読む
■News & Review アフガニスタン
 駐留米兵が夜襲し村人16人を虐殺   一打逆転へ「精鋭部隊」送り込んだ米軍
記事を読む
特集   新自由主義・橋下の全員解雇攻撃許すな 記事を読む
■討議資料 大阪市長・橋下徹の反革命語録 記事を読む
■Photo News 記事を読む
■世界経済の焦点 貿易赤字に転じた日帝
 電機・自動車の輸出競争力低下で脱落加速
記事を読む
■世界の労働組合 イタリア編   イタリア労働総同盟
 (Confederazione Generale Italiana del Lavoro:CGIL)
記事を読む
■国際労働運動の暦 6月4日   ■1989年天安門事件■
 大衆決起に血の弾圧   中国スターリン主義権力は労働者の階級的決起に恐怖して大虐殺
記事を読む
■日誌 2012 3月 記事を読む
■編集後記 記事を読む
裏表紙の写真 サンフランシスコの建物を占拠する青年たち(4月12日)

月刊『国際労働運動』(430号1-1)(2012/06/01)

羅針盤

■羅針盤 国鉄闘争全国運動の前進を

▼絶望的凶暴化を深める野田政権による消費大増税と原発再稼働の策動、ミサイル迎撃態勢突入=朝鮮侵略戦争体制構築の攻撃に、今や労働者階級人民の怒りは沸騰点に達している。これと真正面から対決する闘いと階級的労働運動路線の白熱的前進が、新たな階級闘争の時代を切り開きつつある。4〜6月決戦は、1〜3月の画期的な勝利の地平を打ち固め、国鉄決戦―国鉄闘争全国運動の発展を基軸にして、新自由主義の絶望的凶暴化を打ち破る歴史的な決戦である。
▼4〜6月決戦の本格的爆発を展望した時、あらためて3・11福島(郡山)大闘争と4・1外注化を阻止した動労千葉の闘い、これを頂点とする1〜3月決戦の感動的勝利の地平をがっちり確認することが決定的だ。その上で世界大恐慌の激化と3・11大震災―原発事故は何をもたらし、何を生み出したか。それは何よりも戦後体制下の一切の既成の価値観を崩壊させた。そして大破産した資本主義・帝国主義に代わる新たな社会の構築へと進む闘いの開始、プロレタリア革命の勝利へ総決起していく歴史的転機となった。
▼そして何よりも、国鉄闘争全国運動の前進と6・10国鉄大集会の成功をかちとり、2012年前半決戦の勝利を確定し、11月集会大結集への道を切り開くために闘おう。国鉄闘争全国運動をあらゆる職場・学園・地域に持ち込み、全国で6・10大結集運動を組織し、それを一切のベースに4〜6月決戦に総決起しよう。国鉄全国運動の発展と6・10大結集運動で原発再稼働、消費大増税、労働者全員解雇=非正規職化、戦争・改憲の日帝・野田政権を打倒し、2012年決戦の巨大な勝利へと進撃しよう。

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月刊『国際労働運動』(430号2-1)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review 韓国

現代自動車下請労働者が大法院で勝訴

不当解雇、不当労働行為の取り消し訴訟

 □2年以上は正規職

 2月23日、韓国大法院は現代(ヒョンデ)資本の提訴を棄却、蔚山(ウルサン)工場で下請労働者として働き、解雇されたチェビョンスン氏の不当解雇および不当労働行為の判定取り消し請求訴訟の勝訴が確定した。これは、現代自動車で2年以上働いた社内下請労働者は正規職と認めなければならないという趣旨の判決だ。これで、10年11月に現代車社内下請労働者1940人と、11年7月の起亜車社内下請労働者574人が各元請を提訴した「勤労者地位確認および賃金請求の件」も有利な展開が予想され、集団訴訟はさらに拡大しそうだ。
 続く2月29日、現代車(正規職)労組が「不法派遣判決!即刻正規職化しろ」と記者会見。チェビョンスン氏と同じ条件下にいる8000人の不法派遣該当者のための調査と、4月元下請連席会議の復元、6月元下請共同闘争を計画したと発表した。また起亜(キア)車支部と共同議題、共同交渉の展開を明らかにした。起亜車は現代資本の傘下だ。
 この日の午後、判決後最初の集会を蔚山工場本館前で非正規職支会とともに正規職化要求大会として開いた。「不法派遣を撤廃し鄭夢九(=現代車会長)を拘束しろ!」を掲げた。集会には勝訴したチェビョンスン氏も手配中にもかかわらず電話で発言した。正規職支部が起亜車支部と共同し、非正規職撤廃を非正規支会と共にするのは10年11月15日の非正規職組合員の工場占拠ストの時とは様変わりだ。1月上旬に正規職現場委員の焚身抗議など、相次ぐ現代資本への現場労働者の怒りが、正規職支部を突き動かしたのだ。
 現代車非正規職蔚山支会、牙山(アサン)支会、全州(チョンジュ)支会の3支会は昨年12月21日蔚山工場本館前で決意大会を開き、不法派遣非正規労働者の正規職化を要求した。また集会後臨時代議員大会を開き新しい非常対策委を構成した。3支会は本年1月10日〜15日、良才洞(ヤンジェドン)の本社前で集中闘争をした。
 そして3月2日、3支会は「すべての社内下請の正規職転換」を要求。資本側が「大法院判決は全体に拡大適用する判決ではない」とした資本の談話文に抗議し、10年7月から要求している不法派遣8要求≠確定して即刻交渉に応じろと要求した。
 4月4日、ついに蔚山の非正規職支会は、昨年2月の前執行部辞任から1年2カ月ぶりに支会の執行部を選出し、労組を正常化した。新たに選出されたのはパクヒョンジェ支会長、チョンウイボン事務長、カンソンヨン首席副支会長だ。投票者の95%の圧倒的賛成で選出された。
 「すべての非正規職を正規職に」は10年蔚山第1工場を25日間占拠した労働者の要求だ。その年の大法院の判決も今年2月の再上告審で確定した。パクヒョンジェ新支会長は「現場はとても崩れ、苦しむ組合員が多い」「支会組合員をさらに拡大し、非正規労働者を集める」とインタビューに答えた。そして現場の組合員の苦闘に「新執行部の考えは現場で生きよう≠セ。組合員と対話し、ともに悩み、闘いをつくる」と決意を述べた。最後に「われわれは全員の正規職化という目標を貫徹するために一生懸命に闘う。現代車非正規職の正規職化は、単にこの工場の中で終わる問題ではなく、大韓民国の非正規職に多くの影響を与えるだろう」と語った。
 歴史的な非正規職労働者の工場占拠闘争は現在このように、大規模懲戒の弾圧を乗り越え甦った。現代車と起亜車、双龍車は金属の大単産組合だ。民主労総が呼号する6月警告ゼネストも8月ゼネストも、現代車らの金属労働者、蔚山の労働者の闘い抜きには成り立たない。非正規職支会の新たな執行部誕生は、韓国労働者と民主労組運動に力強い拠点を形成する始まりだ。
(写真 当選した現代車蔚山非正規職支会のパクヒョンジン支会長【左】ら新役員【4月4日】)

 □言論労組、放送社労組、新聞社労組がスト

 言論労組は3月23日午後、ソウル駅前広場に2000人が集まり、「言論掌握のMB(李明博〔イミョンバク〕)審判総決起大会」を開いた。ストライキ中のMBC、KBS、YTNの放送3社と聨合ニュース、国民日報を始めSBS、CBSら言論労組支部、各地域支部が参加。金属労組、化学繊維労組、公共連盟も連帯し参加した。
 決起大会で言論労組のイガンテク委員長は「われわれはこの4年間の侮辱と羞恥に耐えられず出てきた。お前らは記者かという叱責、この政権とどこが違うのかという侮辱に耐えられない」「歴史は言論独立の新しい時代を開いたと評価するだろう」と話した。言論労組は「(李明博政権は)民間人査察文書でYTNとKBS内部を掌握し労組を無力化するために不法に介入した事実が明らかになった」とし、「忠誠心の高い人物」を落下傘社長に任命したと糾弾した。
 李明博政権の言論弾圧と統制に対抗し、落下傘社長の退陣を要求しているのだ。4月2日にはMBC労組のチョンヨンハ委員長とカンジウン事務局長が解雇され、現政権4年間で解雇されたジャーナリストは14人、懲戒は300人だ。MBC労組イヨンマ広報局長は「言論弾圧指数は現在14、弾圧指数がゼロになるまで闘い抜く」と、復職まで闘う決意を述べた。
 KBS新労組は4月4日、スト30日目を迎えた。キムインギュ社長を落下傘社長と規定し、公正放送回復を掲げて無期限の座り込みをしてストを続けているのだ。釜山(プサン)の国民日報は4月1日にスト突入から100日を越えた。言論労組のストは延べ200日を越えている。この言論ストは熱い社会的支持を受けている。YTN労組が3月8日にストに入り、史上初めて放送3社が合同ストとなって、共同集会を汝矣島(ヨイド)公園で開いた。ここで発表した3月16日のストライキコンサートには2万人が参加し、多くの民主労総組合員が現場を訪れた。
 言論スト勝利のための民主労総1日全面ストライキを発議する民主労総代議員たちは「言論ストが勝利すれば、民主労総と各産別連盟が計画する6月〜8月ストも弾みがつく」「これは鉄道労組のKTX民営化阻止闘争、貨物連帯の6月スト、金属労組の不法派遣正規職化闘争、労働時間短縮闘争に大きな刺激になる。清掃・看病・保育・学校非正規職など劣悪な環境で闘う労働者の士気に大きな影響を与える」「言論ストは政府と労働の勝負となった」と檄を飛ばした。
(写真 言論ストライキは熱い社会的支持を受け、ストライキコンサートには2万人が参加【3月16日】)

 □大学清掃非正規職労働者が複数労組制と対決

 国際婦人デーの3月8日午後、弘益(ホンイク)大正門前で生活賃金争奪のための女性非正規職共同闘争連帯≠ェ、「最低賃金大幅値上げ!生活賃金争奪!1万人宣言」突入を宣布した。公共運輸労組イスッキ弘益大分会長は「900万の非正規職労働者が最低か、それ以下の賃金だ。最低賃金ではなく、生活賃金を要求しなければならない」と劣悪な賃金の現実を弾劾した。
 記者会見の後、同所で民主労総公共運輸サービス労働組合が主催する「大学非正規職集団交渉ストライキ決意大会」が開かれた。決意大会参加者一同は決議文で「大学と資本は責任回避をやめ、学内非正規職問題を直接解決することを要求し、そのために強力なストライキ闘争を行うことを宣言する」とした。
 大学非正規職女性労働者は、複数労組制の下、交渉窓口単一化によって団体交渉が封鎖されているとし、闘争を宣布した。2月27日のソウル地方労働委員会の前で記者会見を開き「労働委員会が会社別窓口単一化手続きを要求して、労組の交渉権をはく奪している」と批判した。ソウル京畿(キョンギ)支部所属の弘益大、梨花(イファ)女子大、延世(ヨンセ)大、高麗(コリョ)大など六つの大学の清掃警備労働者は、昨年11月から14の業者と集団交渉を始め、2月7日の9次交渉を最後に交渉最終決裂を宣言した。
 決裂の主な原因は賃金交渉だ。労組側は5410ウォンを提示したが、使用者側は賃金凍結を宣言した。7日の交渉では4700ウォンを公式に提案したが立場の違いを狭められず結局交渉が決裂した。これにより、労組は今後ソウル地方労働委員会に争議調整申請をし、組合員の争議行為賛否投票をしてストなどの全面闘争に突入する。
 公共労組京畿支部を中心にした清掃・警備事業場の今回の闘争は、複数労組制の下での窓口単一化問題を解決する闘争に広がる方向だ。昨年7月1日から実施された複数労組窓口単一化で、京畿支部所属の弘益大、延世大、梨花女子大、慶煕(キョンヒ)大などでも使用者側が御用労組を設立し、現場の混乱が強まっていた。該当業者の管理者が組合脱退書を配るなど、組合脱退工作をした。清掃労働者の集団交渉にも赤信号がともった。
 3月8日の1万人宣言が宣布された。交渉窓口単一化に苦闘する労組は数多い。こうした攻撃と断固対決する、大学非正規職清掃、警備労働者の闘いが始まった。弘益大清掃労働者を先頭とする非正規職労働者が闘いの行方を握っているのだ。
(写真 弘益大、延世大、梨花女子大、高麗大など6つの大学の集団交渉が決裂、闘争局面に【2月7日】)

 □鉄道労組がKTX民営化と対決する定期大会

 全国鉄道労働組合は3月27日から2日間、忠南(チュンナム)牙山(アサン)市で定期代議員大会を開いて、全面ストを含む総力闘争を展開することを決めた。組織を争議対策委員会体制に転換し、政府がKTX民営化を強行すれば全面ストをする計画だ。▽KTX民営化阻止のためにストを含む総力闘争を展開する、▽百万人署名運動と汎国民対策委を拡大強化し、国民とともにする闘争で李明博政権とセヌリ党を審判する、▽争議対策委に転換し、4月18、19、20日にKTX民営化阻止の賛否投票を実施し、21日に3次総力決意大会を開く方針を全員一致で決めた。
 また定期代議員大会では▽解雇者復職、▽不足人員補充、▽職員福祉向上を目標とする12年賃金団体協議の核心要求も確定した。
 これに先立ち、鉄道労組はKTX民営化が大統領政務報告で出された昨年12月27日、ソウル駅広場で民営化阻止の幹部決意大会を開き、今年2月4日にはソウル駅広場で第1次総力決意大会を開き駅前を鉄道労組員が埋めた。1月18日には「KTX民営化阻止」汎国民対策委を民主労総と政党、社会団体など50の団体で発足させ、反対署名は1カ月で20万を超えた。
 鉄道労組は「人員削減(維持補修、整理業務に集中)により頻繁に事故が起きている」「5115人の定員削減による労働強化とストレスで11年に組合員の遺族への慰労は26件、1カ月に2人以上が死亡している」と弾劾した。また、4月までにKTXの事故はすでに4件発生している。鉄道労組は韓国労働運動の歴史を語る上で不可欠の存在であり、03年鉄道、ガス、発電ゼネスト以来何度もストに立ち上がり、激しい弾圧、解雇と懲戒を受けてもひるむことなく闘い抜いている。韓進重工業や現代自動車非正規職、双龍自動車労組など金属労組と並ぶ労働運動の要だ。KTX民営化阻止闘争は、韓国の労働者の闘いを新たな段階へ押し上げるだろう。
 (本木明信)
(写真 3月27日から2日間、忠南牙山市で開かれた鉄道労組の定期代議員大会】)

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月刊『国際労働運動』(430号2-2)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review シリア

「シリア人民は一つだ」掲げる巨大なデモ

アサド政権の新自由主義うち破る革命の道

 シリア労働者人民の反乱は、アサド政権の残虐な人民せん滅的攻撃に抗し、同時に米帝・中東反動諸政権による反革命的介入策動をも拒否しながら、ねばり強く闘い続けられている。「停戦合意」にもかかわらず政府軍の砲撃が続く中、4月13日には、「アサド政権打倒」「シリア人民は一つだ」を掲げた巨大なデモが各地で行われた。
 エジプトでは、ムバラク打倒から1年になる現在、なおも反動勢力と労働者人民との間の権力をめぐる死闘が続いている。地中海の対岸では、ギリシャ労働者階級が度重なるゼネストをもって、EU帝国主義の緊縮政策と不屈に闘っている。日本、そして韓国、アメリカの労働者人民の闘いも、世界大恐慌のもとでの新自由主義との闘いという点で、全世界の労働者人民とともに、死の苦悶にあえぐ帝国主義という共通の敵と対決しているのだ。まさに、プロレタリア世界革命情勢だ。
 本誌前号に引き続いて、シリア反乱の中東=西アジア・北アフリカ革命・世界革命にとっての位置について考えていきたい。

 □IMF「構造調整」に基づく新自由主義政策

 現在のバシャール=アル=アサド政権は、2000年に死去した前大統領・父ハフェズ=アル=アサドを継いで成立し、新自由主義政策を強権的に遂行してきた。新政権は、登場するやいなや、首都ダマスカスの中央広場に掲げられていた巨大なハフェズ=アル=アサドの肖像画を撤去し、代わりになんとリプトン紅茶≠フ大きな広告の看板を立てた。このパフォーマンスの背景には、シリアへの外国資本の直接投資が〈表1〉のように、1997年以来、激増しているという現実がある。絶対額は別として、エジプトに次ぐ劇的な変化である。2005年、政権政党=バース党の大会は、あらためて「社会的市場経済」を政策的に宣言し、2008年には、「競争促進・反独占法」によって、民間銀行の設立を認可し、株式市場・不動産市場の開設を決定した。さらに、「私有財産保護法」を制定、「居住者・不動産法」改悪によって、家主の居住者に対する立場の強化を図るなどした。2009年には、貿易自由化によって、輸入の国家独占・農業生産物への関税などが廃止され、同時にエネルギー部門(ディーゼル、ガソリン、ガス、水道など)の民営化が行われた。
 実は、この新自由主義政策はすべて、IMFからシリア政府に対して行われてきた「構造調整」の提案〔実際は指示〕に基づいているのである。これは、IMF・世界銀行と米財務省の間で行われたいわゆる〈ワシントン合意〉で定式化され、中南米諸国やアジア諸国で実行されてきた途上国¢ホ象の「改革政策」の中東版である。【2008年10月には、IMF当局とシリア政府が共同報告と声明を発表した】

 □〈アラブ社会主義〉的経済発展の破産

 だがシリアにおける新自由主義攻撃は、すでに前政権=ハフェズ=アル=アサドのもとで、基本的に着手されていたのである。それは74〜75年世界恐慌の爆発によって強制された新植民地主義体制下の〈アラブ社会主義〉的経済発展の破産に起因している。
 ハフェズ=アル=アサドが、無血クーデターで権力を握り、〈アラブ社会主義〉を名乗るバース党を基盤に政権を確立した1970年は、第2次世界大戦後の戦後世界体制の一大転換期の始まりの時期であった。1971年のニクソン・ショック(ドルの金との兌換の中止=戦後的管理通貨制度の崩壊・変動相場制への移行)、1973年の石油危機(アラブ産油国による原油価格値上げ)、1975年の米帝のベトナム戦争敗北は、ヤルタ=ジュネーブ体制(米帝とソ連スターリン主義の平和共存¢フ制とそれを補完する新植民地主義体制)のもとでの戦後発展の終わりを示すものだった。
 74〜75年世界恐慌は、29年恐慌―第2次世界大戦によって、なんら解決していない過剰資本・過剰生産力の蓄積(帝国主義=資本主義の根本的矛盾)を、あらためて突き出し、世界の階級闘争の転機を告げた。
 中東では、エジプトで「アラブ社会主義」を呼号していたナセルを1970年に継いだサダトが、1973年に「門戸開放政策」を打ち出してアメリカ資本を呼び込み、同時に労働者・農民への抑圧政策を強化した。この新自由主義政策への転換は、イスラエルへの接近の開始を意味した。【サダトは78年、米大統領クリントン、イスラエル首相ベギンと握手し、〈キャンプ・デービッドの中東和平〉を誓い、パレスチナ人民の解放闘争を公然と裏切るに至った】
 シリアでは1970年以来、アサド政権が、1963年来のバース党政権で急進派≠ノよって進められてきた農地改革、私企業の規制、貿易の国家管理、社会福祉政策などを解体し、新自由主義的政策を開始した。それは同時に、〈アラブ社会主義〉の名の下で、国家と社会の二つの柱とされてきた労働者と農民(小農)に対し、民営化政策のもとで登場してきた新興ブルジョアジーと癒着した軍事独裁政権を強化し、一切の反対派、反対勢力を、〈対イスラエル戦争〉の口実による非常事態法のもとに粉砕していく過程であった。
 もともと中東戦争の軍事司令官出身であるアサドは、対イスラエルの急先鋒を装いながら、実はパレスチナ人民に対して裏切りを重ねてきた。1970年、隣国ヨルダン政府が、パレスチナからの避難民を大虐殺し、解放運動をせん滅する攻撃をかけた(ブラック・セプテンバー)際に、これを見殺しにした。また、1975年、イスラエル軍がパレスチナ解放勢力をせん滅するために侵攻したレバノンで、レバノンの極右勢力に対するパレスチナ解放勢力の勝利の直前にシリア軍が介入して、パレスチナ解放勢力を攻撃し、極右勢力によるパレスチナ難民虐殺を容認した。これを見たサウジなどの反動的湾岸諸国は、シリアに経済援助を与える決定をした。【また、アサド政権は、反米≠フ看板にもかかわらず199
1年の湾岸戦争を支持している】
 74〜75年世界恐慌の影響下で、76年に経済危機を迎えたシリアは、ますます新自由主義政策にのめりこんでいく。決定的なのは、1986年の為替危機に際し、「経済多元化宣言」を行い、投資の自由化、価格統制の緩和、補助金の廃止、外国貿易・為替相場の自由化に踏み切り、さらに1991年、新規投資への免税措置を法律化した。
 21世紀初頭の世界大恐慌切迫情勢の中で、新自由主義政策の強行を決定的な段階に押し上げたのが、現政権であった。その結果が、シリア人民の3分の1が、生存ライン以下の生活を強いられ、20%を超える失業率に苦しめられ、農民が土地から追い出されているという現実である。
(写真 シリア北西部のイドリブに集まった、バシャール=アル=アサド政権に反対するデモ参加者ら【4月13日】)

 □スターリン主義の決定的な裏切り

 アサド政権の政治的基盤をなしていたバース党は、そもそもロシア革命の影響下で社会主義を掲げ、中東における民族解放闘争の生成・高揚の中で生まれた。
 第2次世界大戦後、中東の人民は、アジアにおける民族解放闘争の勝利と呼応し、英仏帝国主義の支配を、人民の蜂起をもって崩壊させていった。その旗印となったのが、〈アラブ社会主義〉であった。戦中からの反仏蜂起で勝利し、1946年独立をかちとったシリア、そして52年に王政を打倒したエジプトは、ともに反植民地主義の旗手として、〈アラブ社会主義〉を掲げた。しかし、その実体は軍事独裁政権が、経済(産業・貿易・金融)の管制高地を、国有化の名の下に独占的に掌握し、労働者・農民を強権的に包摂していこうという抑圧体制であった。とりわけ、シリア・レバノン・イラク(大シリア≠ニ呼ばれる)にわたって勢力を持っていたバース党は、マルクス主義を唱える部分をかかえこんだ政党で、中東全域の〈アラブ社会主義〉への統合を主張し、ナセルのエジプトとともに、〈アラブ連合共和国〉(58〜61年)を結成する。しかし、この〈アラブ社会主義〉は、帝国主義とスターリン主義の戦後世界体制を、労働者人民の自己解放の闘いで革命的に転覆する運動ではなく、国際政治の力関係の中でバランスをとって、結局は新植民地主義体制の内部で生き延びていこうという新興ブルジョアジーの軍事独裁体制の運動・国家であった。なぜ、そうなったのか。
 激動する戦後の中東情勢に、決定的なくさびを打ち込み、民族解放闘争を混乱させたのが、アメリカ帝国主義主導の「パレスチナ分割=イスラエル建国」とソ連スターリン主義によるその承認であった。米帝は、石油資源の決定的心臓部を、旧宗主国勢力=英仏帝国主義から奪い取り、同時に中東全域の民族解放闘争の分断を強行しようと、戦後まもなく1947年、中東のど真ん中に、軍事国家イスラエルをシオニストの軍事力でデッチあげ、パレスチナ人民を海外に追放したのである。第2次世界大戦で「反ファシズム」の名目で、米英帝国主義に加担したソ連スターリン主義は、戦後世界の分割でも米帝と協議して、帝国主義諸国の戦後革命、そして植民地諸国の民族解放闘争を裏切っていったのである。このソ連によるイラエル承認は、パレスチナ人民への背信行為、民族解放闘争の裏切りとして、中東における共産党の権威を破壊した。
 ソ連スターリン主義は、中東各国の共産党に「二段階革命戦略」を強制し、民族解放闘争が帝国主義打倒の世界革命に発展することを、全力で阻止しようとした。その結果、各国の共産党は、「植民地主義反対」をかかげる軍事独裁政権と協調することを路線とし、労働者人民の闘いを裏切っていったのである。
 ソ連は1956年、エジプトのナセル政権が、スエズ運河国有化を宣言した機会をとらえ、協力の手を差し伸べた。ナセルが、反共主義を掲げ、大量の共産党員を獄中に幽閉し、また土地を求める農民の運動を圧殺していることを容認したのである。
 ソ連スターリン主義崩壊を前後してのイスラム勢力の登場は、こうしたスターリン主義による民族解放闘争の裏切りから生じた空間を埋めるものとしてあった。

 □シリア反乱の未来を切り開く労働者人民

 西アジア・北アフリカの心臓部分におけるシリア反乱は、アサド政権の新自由主義的圧政にたいする全労働者・農民・人民の積年の怒りがついに爆発したものである。この闘いが、中東=西アジア・北アフリカを始めとするプロレタリア世界革命の勝利へ向けて前進するカギは、国境、民族、宗教を越えた階級的団結の回復と強化である。米帝や反動的中東諸国の承認・庇護、さらに武器援助によって、「ポスト・サダト」を狙っている「シリア国民評議会」や「自由シリア軍」ではなく、1年にわたるアサド政権の人民せん滅的な攻撃に抗して、職場で、学園で、地域で、そして街頭で、「アサド政権打倒でシリア人民は一つになっている」というスローガンを掲げて闘い続けている労働者・農民・人民こそが、全世界で新自由主義攻撃と闘っている労働者人民とともに、帝国主義を打倒して、未来を切り開くのだ。
 (川武信夫)

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月刊『国際労働運動』(430号2-3)(2012/06/01)

News&Reviw

■News & Review アフガニスタン

駐留米兵が夜襲し村人16人を虐殺

一打逆転へ「精鋭部隊」送り込んだ米軍

 アフガニスタン侵略戦争を続行する米軍は、今年に入ってから三つの重大な犯罪を起している。1月11日には、米海兵隊員4人が、タリバン戦闘員の遺体に放尿する場面を撮影した映像がインターネット上に流出する事件が起きた。1月20日に東部で、アフガン国軍兵士が銃を乱射し国際治安支援部隊(ISAF)のフランス軍兵士4人を射殺する事件が起きたが、乱射した兵士は、この遺体への放尿映像を見て決断したと供述しているという。
 2月20日には首都カブール北方のバグラム米空軍基地で、米兵らがコーランを含むイスラム教関連書籍を焼却しているのを基地で働くアフガン人労働者が目撃、焼却を止めさせ、燃えたコーランを手に基地外に飛び出し、兵士らの行為を非難した。
 イスラム教の聖典コーラン焼却に抗議する住民のデモがアフガン各地に広がった。24日もイスラム教の金曜礼拝後に抗議デモが起こり、首都カブールと西部ヘラートなどで少なくとも計10人が死亡した。米帝はオバマ大統領までが謝罪を表明したが沈静化の兆しは見えない。デモは4日連続。地元報道によると、24日までに住民ら30人近くが死亡した。
 23日には、東部ナンガルハル州でデモに加わっていたアフガン国軍兵が、ISAFの兵士に向けて発砲、米兵2人が死亡した。反政府武装勢力タリバンはこの日、コーラン焼却への報復として、駐留外国軍を攻撃するようアフガン国民らに呼び掛ける声明を出していた。25日には厳重な警戒にある内務省で米軍顧問2人が射殺された。タリバンが戦闘声明を発表している。
(写真 アフガニスタン東部のジャララバードで行われた反米デモで、星条旗を燃やす抗議者たち【2月24日】)

 □米兵が住民16人を虐殺

 コーラン焼却に対する抗議デモが続く3月11日には、南部カンダハル州で駐留米兵が基地から武器と暗視装置を持って外出し、民家3軒で銃を乱射し、子ども9人と女性3人を含む計16人を虐殺した。米兵は戻ってきたところを、無言のまま拘束されたという。
 この米兵はロバート・ベイルズという38歳の陸軍2等軍曹だった。
 オバマや米軍部は、ベイルズの行為は「アメリカ軍の価値観や態度を反映しているわけではない」とする公式声明を出した。ベイルズは例外だというのだ。
 このアメリカの公式声明に対して、アフガニスタンの村人やカルザイ大統領と国会下院が設置した調査委員会は、この虐殺は、単独の殺し屋の仕業ではなく、15人から20人もの米軍兵士によるものだと非難している。10年に及ぶイラク・アフガニスタン侵略戦争の中で日常茶飯事に起きた住民虐殺の一例だと弾劾している。
 アフガニスタン国会の調査員たちによれば、米軍は、タリバンによる数人の兵士を負傷させた爆弾戦闘に対する報復をするぞと警告していたと村人たちは証言している。

 □米軍の夜襲作戦

 アフガニスタン南部の住民にとって、今回のようなことは日常茶飯事のことだった。「アフガニスタン侵略戦争はオバマの戦争」と言われるが、オバマの米軍が最も多く実施している戦術が、夜襲だった。オバマは大統領就任以後、アフガニスタン侵略戦争を拡大し、大規模な兵力の増強を図ってきた。
 米軍は数万の海兵隊や特殊部隊を集中して南部の多くの村を占領し、タリバンを殺し、追い払うが、夕方には反撃を恐れて安全な基地に籠る。タリバンは夜になると村に戻り、村民と話し合い、村民が求めるもめごとや犯罪者の即決裁判をしたりして朝まで滞在することが多い。
 このため、米軍は、村や町を夜襲して、タリバンかもしれない男たちを捕まえ、少しでも抵抗すれば直ちに射殺する。村民は米軍の命令で夜は外出を禁じられ、モスクに祈りに行くこともできない。家の扉を厳重に閉ざしているが、米軍の夜襲の際には、扉を開けないと米軍は扉を破壊し、侵入して家人を拘束、家の中を滅茶苦茶にしてタリバン捜索をする。このため、今回の事件でも、襲われた家々では夜襲の時と同じように扉を開けたため、犯人は家々に侵入し、子どもや女性たちを射殺した。
 事件後、現場のパンジュワイ村に入った英BBCのアフガン人記者も、多くの村民は、犯人の単独犯行ではなく、米軍部隊の夜襲だったのではないかと疑っていると話している。ある女性は、午前2時ごろヘリコプターの轟音で起こされ、間もなく銃撃が始まり、1時間後に銃撃が鎮まったので、近くに住む兄弟の家に行くと、その一家の遺体が燃やされており、助けを求めて叫んだという。
 カルザイ大統領は、アフガン駐留米軍司令官に対して夜襲をやめるよう、再三、要請している。しかし米軍は一向に夜襲をやめない。米軍にとっては夜襲だけしかない。
 アフガニスタン人民が最も嫌悪し、憎悪する戦術にすがるしかないのは、まさに末期症状だ。
 オバマは、現在9万人の駐留米軍の大部分を2013年末までに撤退させると表明し、11年7月から部分的な撤退を開始しているが、今回の事件によって撤退を加速させることはないと発言した。米軍首脳部は、最後の大攻勢でタリバンに致命的な打撃を与えるため、精鋭の特殊部隊を増強中で、米軍撤退を急がないよう、大統領に強い圧力を掛けている。
 オバマ政権と米軍は、米軍・NATO軍に代わる40万人規模のアフガン国軍・警察の育成を達成しよう焦っている。しかし、BBCが2月に報じた英軍の秘密報告によると、国軍と警察の中にはタリバンと通じる兵士が増えつつある。コーラン焼却事件の後、米軍兵士6人以上が、タリバンに通じた国軍兵士と警察官によって殺された。

 □ベイルズ2等軍曹

 3月11日の虐殺の犯人とされたロバート・ベイルズは、01年9・11の反米ゲリラ戦争から数週間のうちに陸軍に入隊した。ITバブル崩壊後の株式市場の低迷で、短期間の投資家という職を辞めた後でもあった。
 ベイルズ2等軍曹は中西部オハイオ州で育ち、高校時代はアメリカンフットボールの有力選手として鳴らした。友人は「評判も良く正しいことを実行しようとする男だった」と話している。
 陸軍に入隊後、3度にわたりイラクに派遣され、戦闘中でも冷静に行動する模範的兵士として評価されていた。
 しかし、車両の横転事故などで2度負傷。軍隊内の昇進にも失敗した。次の赴任先としてドイツやハワイの基地を希望したが、4度目の戦地となるアフガン行きを命じられた時には「深く失望していた」(友人)。妻も離ればなれの生活を終わらせたいと望んでいたという。
 経済的困難にも直面。事件直前に西部ワシントン州の自宅を売りに出したところだった。ワシントン・ポスト紙などによると、夫を送り出した家族は請求の支払いや2人の子どもの養育に苦労の連続だったという。
 担当するブラウン弁護士は以下のように語っている。
 「彼はイラクで負傷した際に外傷性脳損傷(TBI)を患っており、彼が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っていたのかどうかが、裁判になった際に重要問題になるだろう」
 「3月11日の事件の前日、基地の近くで、米軍の小隊が地雷に接触するという事件があった。特に戦友が足を吹き飛ばされたシーンを目撃したことが、自身の片足切断に至る最初の負傷、また車両横転と爆風に晒された2度目の負傷と重なる中で、精神的に激しく動揺して事件に至った」という可能性である。事件に関するベイルズの記憶はショックで失われている。
 ベイルズのこの状態は、アメリカ全員志願兵′Rに所属する何十万人もの兵士が、イラクとアフガニスタンで、10年間も、同時並行する戦争を戦った後に直面している状態を示している。米軍兵士たちは死ぬまでこき使われ、あげく使い捨てにされているのだ。
 米軍は昨年7月にアフガニスタンからの撤退を開始した。確かに兵員数は減少したが、精鋭部隊を送り込んで、一打逆転を狙っている。
 ところがその精鋭部隊の実体がベイルズ2等軍曹であった。肉体的にも精神的にもボロボロに疲弊しつくしていたベイルズを戦場に送った。米帝は、イラクやアフガニスタン人民に対するのと同じく米軍兵士をも人間扱いしていないのだ。
 タリバン兵の遺体に対する放尿事件、コーラン焼却事件、そして子ども9人を含む16人の住民虐殺は米軍と米帝の末期症状であり、新自由主義の侵略戦争の大破産を示している。

 □新自由主義の侵略戦争

 根底には米帝の侵略戦争、とりわけ新自由主義の侵略戦争という問題がある。
 米帝ブッシュは、「対テロ戦争」を宣言し、アフガニスタン侵略戦争に突入した。
 次にブッシュは、イラクのフセインが「大量破壊兵器を隠し持っている」とデッチあげて03年3月、イラク侵略戦争に突進した。しかしイラクには大量破壊兵器などなかった。ブッシュ政権中枢の全世界を巻き込んだ詐欺行為に基づく侵略戦争だった。
 イラク侵略戦争とは最末期帝国主義の絶望的延命をかけた新自由主義の戦争だった。新自由主義による民営化攻撃が行き着いた社会的腐敗の極致として、軍隊と戦争までが民営化され、営利目的になり「戦争ビジネス」が誕生し、恐慌下・大不況下での金融資本と軍事産業の莫大な金儲けの手段になっていた。戦争それ自身がビジネス、営利事業となったのだ。
 帝国主義者が侵略戦争に動員する時に使う、「国のため」「国民のため」という美辞麗句がはぎ取られ、戦争は「企業の金儲けのため」ということが恥ずかしげもなく国家(政府)によって公言されるに至ったのだ。つまり金のために公然と他国に押し入り、国土を破壊し、人殺しをやるということだ。これでは自分が強盗であることを宣言するに等しい。これでは戦争に正義も大義も人道もないことを自認するものである。兵士は何のために戦争をするのか、人を殺すのか。兵士の前にいるのはイラクの労働者人民なのだ。労働者の兄弟なのだ。納得できるわけがない。だから数十万人の兵士がPTSDに苦しんでいる。こんな戦争が長続きするわけがないのだ。米陸軍は疲弊の極に達して半ば崩壊したのだ。これが新自由主義のイラク・アフガニスタン侵略戦争だった。

 □数百人がPTSDの診断を覆される

 さらに米帝が米兵を人間扱いしていない事例が明らかになった。
 米陸軍のマクヒュー長官は3月21日、上院の公聴会に出席し、軍の精神医療施設が、治療費を考慮した診断を行うことがないよう調査を開始したことを明らかにした。
 同調査は、PTSDと診断されて治療を受けていた兵士数百人が、その後にワシントン州にある施設で診断を覆されていたことが判明したのを受けてのものだ。
 ある精神科医がシアトル・タイムズ紙に語ったところによると、けがや病気などが原因で退役した兵士1人当たり、150万j(約1億2500万円)の税金がかかるという。節約のためにPTSDの診断を取り消したのではないかというのだ。イラクやアフガニスタンで従軍したことのある兵士200万人以上のうち、約20%がPTSDを患っている可能性があり、40億〜62億jの治療費がかかるが、少しでも節約しようというのだ。
 戦場から生きて帰ってきた兵士がこうした取り扱いを受けている。軍需産業のためには数兆円もの利益を保障しながら負傷米兵からは医療をも奪うのだ。
 新自由主義の侵略戦争に対しては、イラク・アフガニスタンの労働者人民、そして米国の労働者人民、全世界の労働者人民が反対し、全世界で反戦闘争が巻き起こった。この波は、今日ではエジプト革命を皮切りにヨーロッパへ、アジア、アメリカ、全世界に革命の渦となって波及している。
 (宇和島 洋)

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月刊『国際労働運動』(430号3-1)(2012/06/01)

(写真 八尾北医療センター労働組合、部落解放同盟全国連西郡支部を先頭に「橋本打倒」を訴えデモ【3月18日】)

特集

 特集

 新自由主義・橋下の全員解雇攻撃許すな

 はじめに

 大阪市長・橋下徹=「大阪維新の会」は、脱落日帝による新自由主義攻撃の最悪の先兵としての姿をむき出しにしてきた。橋下打倒の闘いは、360万公務員労働者の全員解雇・選別再雇用(=非正規職化)の攻撃を打ち破る最大の決戦である。それは、国鉄決戦、反原発闘争と一体のものとして、日本帝国主義を打倒し、プロレタリア革命を実現していく闘いの重要な一環である。
 本特集は、第1章で、橋下による現業労働者の全員解雇を始めとする労組破壊・民営化攻撃を暴露・弾劾する。
 第2章では、「大阪都構想」―道州制・改憲攻撃に焦点を当て、それが究極の新自由主義攻撃であることを暴き、同時に橋下のファシスト的正体について暴露する。
 第3章では、大阪の自治体労働者、教育労働者を先頭に、八尾北・西郡決戦と一体となって、動労千葉のように闘い、橋下反革命を打倒していく展望を明らかにする。

第1章

 公務員の全員解雇を企む ――労組破壊の不当労働行為

 大阪市長・橋下=「大阪維新の会」を弾劾するにあたって、冒頭に結論的に2点押さえておきたい。
 一つは、橋下=「維新の会」は、世界大恐慌の深化のもとで新自由主義の破産に直面し、国際争闘戦での脱落の危機に突き落とされている日帝ブルジョアジーの先兵として、その危機突破の道をなおも新自由主義の貫徹に求め、反革命的野望をむき出しにして登場してきたということである。東日本大震災を奇貨として「復興特区」と称して被災地を資本の貪欲な金儲けの場にしようとする、『ショック・ドクトリン』(ナオミ・クライン著)の日本版を遂行しようとしている。しかも、民主党や自民党などの既成政党にはできないファシスト的とも言える凶暴な手法をもって、労働者階級に襲いかかってきているのだ。
 二つに、新自由主義とは、市場原理主義を徹底させて公営事業の民営化、規制緩和による競争促進、労働者保護の撤廃を推進し、資本による搾取を極限的に強めようとするものであるが、橋下=「維新の会」は、その新自由主義攻撃の柱に労働者の全員解雇=非正規職化を据えたということである。したがって、これとの闘いの柱は、労働組合をめぐる激突である。ウソとデマとペテンを振りまき、労働組合を恫喝・敵視し労働者の雇用と生活と権利を徹底して破壊する橋下への怒りを爆発させよう。そして、4大産別を先頭に階級的労働運動を甦らせて団結して立ち向かうならば、絶対に橋下=「維新の会」を打倒できるということである。

 大阪市職員半減―全現業の民営化=解雇を打ち出した橋下市長

 国鉄分割・民営化攻撃 のエスカレートを狙う

 橋下=「維新の会」は、日本における新自由主義攻撃の本格的な出発点であった国鉄分割・民営化攻撃に倣って、それをエスカレートさせて民営化・首切り・労組破壊を強行しようとしている。
 橋下は昨年、大阪府知事を辞職し、大阪市長に立候補した。大阪府知事には、同じく「維新の会」の松井一郎を立候補させ、11月27日のダブル選挙で勝利した。その直前の10月30日に出版した『体制維新――大阪都』(文春新書。橋下徹、堺屋太一共著)という本がある。橋下反革命の綱領とも言えるものである。
 そこでは、まず堺屋が「第三の敗戦」(第一は徳川幕府末期、第二は太平洋戦争の敗戦)と言う現在の日帝の体制的危機の中で、「体制変更」が必要だとして、その成功例として国鉄分割・民営化とNTTの例を挙げている。
 「一九八五年、中曾根内閣は国鉄を分割民営化するという大胆な体制変更を打ち出しました」「この結果、国鉄を民営化して生れた六つの旅客会社と貨物会社は黒字となり、何千億円もの法人税を支払ってくれるほどになりました。体制(システム)を変えれば、同じ事業でもガラリと変るのです」
 「もっと新しい例は、NTTの分割民営化があるでしょう」
 堺屋(橋下)は、まったくのウソとペテンで、国鉄やNTTの分割・民営化を賛美している。国鉄分割・民営化から25年、三島・貨物会社の経営は破綻し、政府=鉄道運輸機構が株を100%保有する事実上の国有会社であり、毎年積み重なる膨大な赤字の補填のために今後20年間で8
490億円の支援策を実施することまで決定されている。
 JR東日本なども、鉄道業務のほとんどを外注化し、労働者を非正規職に突き落とすことでしか延命できない。その結果、安全は切り捨てられ、107人の乗員・乗客の命を奪った2005年4月の尼崎事故を始め重大事故が頻発している。
 しかも、国鉄分割・民営化では、国鉄赤字の責任はすべて国鉄労使にある∞国鉄労働者が働かないからだ≠ニして、国鉄労働者にすべて犠牲を押しつけ、20万人の首切りを強行したのである。1982年、中曽根・土光臨調は「増税なき財政再建」というスローガンを掲げて国鉄分割・民営化に突き進んだ。その結果はどうか。JRの経営破綻だけではなく、今や国家財政そのものの破綻が切迫し、労働者人民に消費大増税が襲いかかろうとしている。
 NTTはどうだったか。電電公社が1985年に民営化されたが、その時点では労働者の雇用は継続され、NTT全国1社体制でスタートした。しかし1999年、NTTは持株会社、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズに分割され(NTTドコモなどはその前に分離)、そこから「希望退職」などの激しい人員削減が行われ、2002年からの「構造改革」では、NTT東日本、NTT西日本の約11万人を対象にして、51歳以上の労働者に退職・再雇用の攻撃がかけられた。NTTをいったん退職させ、賃金が15〜30%削減されたアウトソーシング会社(OS)に再雇用するというものだ。NTT本体に残りたければ、全国どこへでも配転されることを承諾せよという攻撃だった。こうした合理化によって、NTT発足時に約30万人いた労働者はOS会社にバラバラにされ、グループ全体で約20万人に、NTT本体では3万人程度に減らされたのだ。
 国鉄もNTTも、労働者に徹底して犠牲を転嫁し、資本・国家が生き残ろうという許しがたい大量首切りが強行されたのだ。
 NTTの場合には、全電通―NTT労組が率先して首切り攻撃に協力した。だが、国鉄―JRの場合には、JR総連などの裏切りと屈服にもかかわらず、動労千葉の存在と闘いが業務の外注化を阻み、さらに1047名解雇撤回闘争が、2010年4・9「政治和解」に抗して国鉄闘争全国運動という形で継続・発展させられている。民営化と労組破壊攻撃は、階級的労働組合の存在と闘いがあれば破綻するということだ。
 堺屋(橋下)は、動労千葉の85〜86年の渾身のスト決起や25年に及ぶ1047名闘争の底力を知らないから、あのようなことが言えるのだ。国鉄分割・民営化反対闘争の継続としての国鉄闘争全国運動が発展するなら、たちどころにそのペテンが暴かれ、打倒されるのである。

 大阪市で2万人の首切りを狙う

 橋下は、早くも大阪市の職員3万9800人(非常勤等約1800人を含む)を4年間で半減させる方針を打ち出した。(3月7日、大阪市戦略会議)
 地下鉄・市バス(6800人)、病院(1900人)、水道(1800人)、下水道(1
500人)、ごみ収集・焼却(2500人)、保育園・幼稚園(1900人)の現業職場については、経営形態の変更による丸ごと民営化で1万6
400人全員を解雇。区役所の職員や学校の教員など2万
1600人についても退職不補充と業務委託、府市統合・組織改編などにより1350
人減らして、総職員数を2万350人(非常勤100
0人を含む)とし、4年で総数1万9550人もの大量解雇を断行するというものだ。
 橋下は、「(半減は)相当難しいが、経営形態を変更し、非公務員化を本気でやらないと僕が大ウソつきになる」「今回は財政負担の話は(脇に)置いている」と言っている。「財政負担」=「経費削減」のためでもなく、民営化のための民営化、首切りのための首切りを強行するというのである。
 橋下は、「身分が絶対的に保障される、つまり公務員はクビにできない、という価値観はあり得ません。公務員も能力や意欲がなければクビを切られるし降格もされる。労働基本権の問題は、この価値を前提に考えられるべき」(『体制維新――大阪都』)とうそぶき、自治体丸ごと民営化と公務員全員首切り=非正規職化の突破口としようとしている。

 市バスでは4割賃下げ

 さらに許しがたい攻撃が連続している。橋下の指示に基づいて大阪市交通局が2月27日、市バス運転手の賃金を38%引き下げる案をまとめた。市バス運転手の年収(平均739万円)を460万円程度にまで引き下げるというのだ。さすがに、これだけの賃下げを行う「労働条件の不利益変更」は違法であり、労働組合の同意など不可能だ。そのため4月1日実施には至っていないが、こんな攻撃が平然と打ち出されることに慄然とする。
 橋下は「これだけ赤字を垂れ流して、普通の企業で倒産したら(年収)ゼロでもおかしくない。いかに公務員の感覚がとち狂っているか(ママ)」と暴言を吐き、「民間並みに戻すということ。水準を変えるつもりはない」と言い切った。
 断じて許せない!! 公務員の賃金が高すぎると言いなし、4割も引き下げ、さらに民間の労働者全体の賃金を引き下げようとしているのだ。自分たちは労働者から搾り取って年収数千万・数億円も得ながら、こういうことを言うのだ。大恐慌下でも、ブルジョアジーは自分たちの取り分だけはあくどく取っている。その一方で、赤字を口実に賃金を引き下げられるのは労働者なのだ。労働者を全員解雇=非正規職化し、年収2
00万円以下のワーキングプアに突き落とすのが、橋下ら新自由主義者の狙いなのだ。
 今こそ、労働組合の存在意義が問われている。橋下は、こうした首切り・賃下げを強行するために労働組合を弱体化させ解体することに躍起となっている。それが次に見る「職員アンケート」の攻撃だ。

 労組解体の「職員アンケート」 首切り自由の「職員基本条例」

 

橋下は、大阪市長就任早々、次のように言い放った。
 「市役所の庁舎内で組合が政治活動をすることは絶対に許されない。大阪都構想の実現、大阪の統治機構を変えることと同時に、組合を適正化することに執念を燃やしていきたい」
 「ギリシャを見てください。公務員、公務員組合をのさばらせていくと国が破綻する。市役所の組合体質を是正、改善することで、日本全国の公務員の組合を改めていく。そのことにしか日本の再生はない」(2011年12月28日、施政方針演説)

(写真 大阪市長・橋本徹の署名で「業務命令」として配布された「職員アンケート」)

 職員アンケート調査とその破綻

 橋下は、2月9日、大阪市全職員に対して、業務命令による「労使関係アンケート調査」を通告した。「大阪市長・橋下徹」署名の庁内メールで配られた内容は、「回答しなければ処分」、密告すれば「処分を軽減する」と前置きした上で、22項目のアンケートに答えよとしている。それは、思想弾圧の意図がむき出しになったものだ。「氏名、職員番号、所属部署、職種、職員区分」の記入に始まり「組合活動に参加したことがあるか」「組合に誘った人、誘われた場所、誘われた時間」「職場で特定の政治家に投票するよう要請されたか」など労働組合の組織と活動、関わりを問うものだ。調査を請け負うのは、大阪市特別顧問の野村修也弁護士の法律事務所。橋下自身も弁護士だが、このように労働法規無視を平然と行う悪徳弁護士に調査させるとは何事か。許すまじき労組破壊・支配介入の不当労働行為そのものである。
 この背景には、大阪市長選で、大阪市労連が現職の平松を支持したことがある。橋下が大阪府知事を辞職し、大阪市長選(府知事選とのダブル選)に打って出たのは、大阪市の平松市長―大阪市労連(連合・自治労)の癒着体制(それ自身、反労働者的なものだが)により、橋下の攻撃が貫徹できないことに苛立ち、大阪市の現体制を破壊することが狙いだった。
 より根底には、動労千葉と共闘する全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部や全国金属機械労組港合同の存在があり、階級的労働運動派、国鉄闘争全国運動が本格的に発展しようとしている中で、橋下が大阪(全国)の労働運動に憎悪を燃やし、たたきつぶそうとしているということがある。連合・自治労本部―大阪市労連のように屈服した姿をさらしていようとも、労働組合と名乗っている限り容認できないのだ。
 橋下はダブル選勝利を受けて、「公務員による違法な政治活動」と難癖をつけ、大阪市労連の屈服を迫ってきた。大阪市労連の中村義男委員長は1月4日、腰を90度に折り、橋下に謝罪した。この屈服を見透かして、「アンケート」の強行を狙ってきたのだ。
 だが、2月13日、市労連組合員1千人が緊急抗議集会に結集し、反撃を開始した。市労連本部は、労働委員会に「不当労働行為」の救済の申し立てを行うことをもって闘争の鎮静化を狙い、市職本部にいたっては「回答拒否で職務命令に従わなければ、組合員に不利益が生じると想定されるので、アンケートは各自の判断で実施してもらう」などと通達するありさまだった。
 しかし「団結破壊アンケートを拒否しよう! 市職本部は拒否方針を今すぐ出せ!」という、関西労組交流センター自治体労働者部会の訴えが現場労働者の怒りと結びつき、その先頭で全体を牽引した。労働者の怒りの爆発によって2月17日に「凍結」に、3月1日には「破棄する」と言わざるを得ないところに追い込まれた。橋下は、それでもなお、「職員メール調査」など執拗に行ってきた。
 だが、この攻撃は完全に破綻した。4月6日には、野村弁護士自らが、市役所地下の駐車場で、公開の場で、アンケートのすべてを未開封のままシュレッダーにかけるなどして廃棄処分せざるを得なかった。野村は「違法とは思っていないが、職員への説明にはもう少し配慮すべきだった」と開き直りの姿勢をとったが、なんとも無様な姿をさらしたのである。

 大量首切りのための職員基本条例

 3月23日、大阪府議会は松井大阪府知事が提出した職員基本条例、教育行政基本条例と府立学校条例を可決・成立させた。同条例は4月1日に施行された。他方、大阪市議会では3月28日、職員基本条例案と教育2条例案(教育行政基本条例案、市立学校活性化条例案)の継続審議が決まった。
 大阪府のこの条例は、昨年9月に「大阪維新の会」が提出した教育基本条例を教育行政基本条例と府立学校条例の二つに分割し、分限処分・懲戒処分については教育労働者も職員基本条例を適用するなど若干の「修正」をしたものだ。
 職員基本条例の核心は何よりも自治体労働者・教育労働者の大量首切り条例であるということだ。この条例可決と同時に改悪された「職員の分限に関する条例(=以下、分限条例)」や「職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(=以下、懲戒条例)」と併せて見れば、それは明白だ。
(写真 上 「組合の政治活動」について橋下市長に謝罪する中村市労連【1月4日】 下 アンケートなどをシュレッダーで廃棄する大阪市特別顧問の野村弁護士【4月6日】)

 全員解雇のための分限条例改悪

 重大なのは、民営化などに伴う分限免職のやりたい放題だということである。分限条例第8条7項で「任命権者は、事業の全部または一部を国その他公共団体以外の法人または一部事務組合に譲渡し、または移管する場合において、当該事業に従事する職員に事業の譲渡または移管を受けた者に就職する機会が与えられているときは……当該職員を免職することができる」とし、民営化で公務員労働者の職場を奪った場合の全員解雇(選別再雇用=非正規職化)を合法化しようとしている。
 公務員に対する分限免職については、国家公務員法第78条4号、地方公民法第28条1項4号で、「業務の廃職、過員」による分限免職が規定されている。いわゆる「4号分限免職」だが、これは1949年の「定員法」で国鉄労働者10
万人首切りが強行された時に発動された。その後、50〜60年代に何度か発動された例はあるが、それ以降は事実上封印されてきた。公務員はスト権を剥奪された代償として、身分が保障されてきたのだ。それが社会保険庁の解体・民営化の時に半世紀ぶりに「4号分限免職」が発動された。それを前後して、分限免職が当たり前のようにまかり通ろうとしている。
 橋下による分限免職攻撃は、国鉄改革法による採用差別や社保庁の分限免職をもエスカレートさせた露骨な全員解雇である。国鉄分割・民営化の時でさえ、不採用者の雇用は3年間に限るが清算事業団に引き継がれ、社保庁の場合も形式上は就職斡旋は行われた。だが、橋下=「維新の会」は、まったく雇用承継もない分限免職を、現行の公務員法ではなく、条例によって強行するというのだ。ここに攻撃の核心がある。

 2年連続D評価で免職

 その上で、 職員基本条例は第15条で「任命権者は、相対評価により、人事評価を行う」とした上で、別表で第1区分から第5区分までの「分布の割合」を定め、「第5区分―100分の5」と明記した。人事評価を絶対評価から相対評価に変更し、毎年必ず5%の職員に第5区分=「D評価」を付けるということだ。
 そして分限条例第3条は「人事評価が継続して任命権者が定める基準を下回る場合であって、研修その他必要な措置を実施しても勤務実績の改善がない場合」は「これを降任し、または免職することができる」とした。さらに同第6条は「人事評価の結果の区分が2年以上継続して最下位の区分であって、勤務実績が良くないと認められる職員」には研修などを実施し、「改善されない場合は……降任または免職の処分が行われることがあることを文書で警告」するとした。
 つまり、毎年5%の職員にD評価を付け、管理職や行政当局による恣意的でデタラメな人事評価により、分限免職者を毎年出し続けようというのだ。

 不起立3回で免職

 職員基本条例第27条2項は「職務命令に違反する行為を繰り返し、その累計が5回(職務命令に違反する行為の内容が同じ場合にあっては、3回)となる職員に対する標準的な……処分は、免職とする」と定めた。「君が代」起立・斉唱を命じる職務命令に抗して不起立をしたら、3回で免職ということだ。
 しかも第29条1項は「懲戒処分を受けた職員に対し、指導、研修その他必要な措置を講じなければならない」と定め、1回目の処分で「指導、研修」を行うとした。同2項は「懲戒処分を受けた職員が、再度職務命令に違反した場合は……免職することがあることを文書で警告する」と、処分を2回受けた者には文書で恫喝することまで明記した。懲戒条例第9条では被処分者に「非違行為を反省し、今後非違行為を行わないことの誓約をさせることができる」と定めた。
 すでに2〜3月の府立高卒業式で「日の丸・君が代」強制に反対して不起立を貫いた教育労働者に、府教委は戒告処分を下すとともに研修を行い、今後は起立・斉唱を含む職務命令に従う≠ニいう誓約書への署名・捺印まで求めた。しかし不起立で処分を受けた教育労働者は、不当な誓約書提出を拒んで闘い抜いている。
 第2章で見る「維新の会」の「船中八策」ではこの職員基本条例を国の法律にすると言っている。絶対に許してはならない。
 公務員大量首切りを狙う橋下=「維新の会」の攻撃は極めて悪質かつ凶暴だ。しかし「処分と免職で脅せば屈する」という労働者をなめきった攻撃は、労働者が団結して立ち向かえば絶対に打ち破ることができる。橋下に全面屈服する組合幹部の制動を突き破り、職場にあふれる橋下への怒りを束ねて団結を押し広げ、大反撃に立ち上がろう。

 戦後教育の否定

 教育2条例も重大な攻撃だ。教育行政基本条例では、知事が府教委と協議して教育目標となる教育振興基本計画を作成すると規定した。知事が教育委員の罷免権を持つことも明文化した。府立学校条例は、府立高校の学区廃止や校長の権限強化、保護者らによる学校評価を導入した。
 この教育行政基本条例は、戦後教育の基本にあった教育委員会制度の実質的な否定である。教育委員会制度は、戦前の軍国主義教育を繰り返させないためにつくられた制度で、時の権力に左右されないよう、首長から独立した教育委員会が運営を担う形をとってきた。それ自体は時には反動的な教育を推進する機関になってきたという側面はある。だが、橋下らは「形骸化した教委は文部科学省を頂点とする上意下達の組織」と言い、選挙で選ばれた首長が教育に関与するべきだと主張してきた。これは、橋下らの意のままに新自由主義教育への転換を図る攻撃である。
 条例はまた、教育目標を含む教育振興基本計画の策定権を知事に持たせ、教委が反対しても知事の意向を優先させることを明文化。「高校の学区撤廃」や「3年連続定員割れの高校は再編整備の対象」など教育行政の根幹に関わる条項も盛り込んだ。戦後教育が破壊・転換されることを断じて許してはならない。

第2章

 「大阪都構想」は道州制攻撃――9条改憲を狙う極右の正体

 維新版「船中八策」で道州制・首切り・改憲攻撃を打ち出す

 橋下=「維新の会」は、「大阪都構想」を第一の目標に掲げる。大阪府と大阪市の二重行政を解消し、大阪都が都市間競争に打ち勝つ成長戦略などを打ち出すものとし、大阪市は8〜9の特別区に再編し、住民サービスを担う≠ニ言っている。しかし、それは単に大阪の行政レベルの問題ではなく、国政レベルで、国家統治機構の大再編を目指す第一歩である。
 前掲書『体制維新――大阪都』でも、すでに橋下は「地方が自立するためにも、僕は道州制に大賛成です」「大阪都によって、統治機構の変革の実践例を見せたいのです」と述べていた。

 「船中八策」で国政公約

 その上で、橋下=「維新の会」は3月10日、国政選挙の公約となる維新版「船中八策」の原案を発表した(骨子は既に2月に公表)。幕末維新期に坂本龍馬が示した新国家体制の「船中八策」になぞらえたものであるが、それは次のようなものである。
 タイトルを「日本再生のためのグレートリセット」と称し、「これまでの社会システムをリセット、そして再@構築」としている。
 そうして、8項目の公約を掲げている。
統治機構の作り直し
・中央集権型国家から地方分権型国家へ(国の政治力を強化するため国の役割を絞り込む。内政は地方・都市の自律的経営に任せる)
・統治機構(道州制。首相公選制。参議院改革→最終的には廃止も視野)
・税源の再配置(国の仕事は国の財源で、地方の仕事は地方の財布で)
A財政・行政改革
・財政改革(プライマリーバランス黒字化の目標設定)
・行政改革(国会・霞が関改革=役人が普通のビジネス感覚で仕事ができる環境に)
B公務員制度改革(公務員を身分から職業へ。大阪府教育基本条例をさらに発展、法制化)
C教育改革(教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革。大学も含めた教育バウチャー制度の導入。生徒・保護者による学校選択の保障。大阪府教育基本条例をさらに発展、教職員組合の適正化)
D社会保障制度改革(積立型、掛け捨て型年金制度の導入。税と社会保障の共通番号制の導入検討)
E経済政策・雇用政策・税制
・経済政策(産業の過度の保護から競争力の強化=徹底した就労支援→衰退産業から成長産業への人材移動。自由貿易圏の拡大→TPP/FTA)
・雇用政策(労働市場の流動化、自由化)
・税制(使った分〔設備投資、給料、消費〕は消費税以外は非課税。)
F外交・防衛(憲法9条についての国民投票〜政治家が決めなくて良いのか? 日米同盟を基軸。日本全体で沖縄負担の軽減を図る)
G憲法改正(憲法改正要件〔96条〕を3分の2から2分の1に緩和する)
 橋下=「維新の会」は3月24日、国政選挙に打って出ることを目指して「維新政治塾」を2000人余でスタートさせた。橋下はその開講式で「今の日本は危機的な状況。本気で変えるには大勝負をやらないといけない。国を変えるための戦とは選挙。大戦に備えて準備していこう」と強調した。そして、今後、「船中八策」を正式に決定することを明らかにしている。
 この原案を見るだけでも、それが極めて反動的であることは明らかだ。

 9条改憲にも踏み込む

 それは、「大阪都構想」という一地方の問題ではなく、国の統治機構の転換を打ち出している。その内容は、現憲法体制を大転換し、首相公選制(大統領並み権限強化)や9条改憲にも突き進むものだ。ついに極右の正体を現したのだ。橋下は2月24日、「憲法9条改正の是非を2年間議論し、国民投票にかけて決定すべきだ」「自己犠牲しないというのなら僕は別の国に住もうかと思う」と言い放った。
 さらに、「統治機構の作り直し」では、国の政治力を強化することと一体で、道州制が打ち出されている。

 職員基本条例の法制化

 公務員制度改革や教育改革も重大だ。ここでは、大阪府の職員基本条例と教育基本条例を法制化することが方針化されている。要するに公務員の全員解雇(→選別再雇用=非正規職化)に国を挙げて取り組むべきだということだ。
 外交・防衛政策では、日米同盟基軸を明確にしていることなど、その反動的正体をあらわにしている。

 NY・ジュリアーニ市長にならい「特区」・更地化を狙う

 「船中八策」などで打ち出された橋下=「維新の会」の政策は、まさに新自由主義的な国家改造計画である。
 今、大恐慌と大震災、原発事故、放射能汚染という未曽有の危機と困難、恐怖、不安を逆用し大資本が国家権力を使って「復興特区」を設定し、優遇税制を受け、労働法の規制を免れ、労働者を超低賃金・無権利状態において極限的に搾取しようとしている。
 橋下は、この機に乗じ、交通・水道・清掃・病院など公営企業の丸ごとの民営化と営利事業化、市バスなど不採算部門切り捨てを断行するとともに、「西成特区」と教育改革を押し立てて、「大阪経済の発展のため」と称して、大阪府・市の全資産の巨大資本への売り渡しへ突進しようとしている。それは、教育・医療・福祉の解体と社会の崩壊をもたらすものである。

 「西成特区」構想

 橋下が西成区を「特区」にしようとしている理由に、西成区の現状では他の区との合併による新たな特別区の創設ができないということがある。大阪市西成区は人口12万、日本最大の日雇い労働者の街「あいりん地区(旧釜が崎)」がある。ほぼ4人に1人が生活保護を受給。65歳以上が33・8%と突出している。だから橋下は「西成を変えることが大阪を変える第一歩」とし、2月15日、あらゆる規制を取り払う「西成特区構想」実現へプロジェクトチームを発足させた。そこでは、金のことは心配せずドーンとやれと激励し「ジュリアーニ前市長の号令でニューヨーク市が変わったように必ず変わる」と述べた。

 ジュリアーニ改革とは

 ジュリアーニは、1994年〜2001年にニューヨーク市長を務め、9・11反米ゲリラに際し、ブッシュ大統領とともに「テロとの戦い」を宣言し、「世界の市長」などと言われた。弁護士から連邦検事を経て、マフィア掃討作戦などの陣頭指揮を執った。
 「治安の回復」を目標に掲げ、「最も多く犯罪率を削減させた市長」と言われた。しかし、その裏で、有色人種のマイノリティーの権利が侵害された。白人警官たちが武器を携帯していなかったアフリカ系移民を指名手配犯と誤認し、41発の弾丸を撃ち込み射殺した事件では、大規模な抗議デモが起きた。その強権的手法に、「ジュリアーニはヒトラーだ」との声が上がった。
 「行財政改革と経済活性化」で、職員大量削減とともに公営企業の民営化を断行して資本の儲け口に転じ、地域全体の「高級化」と地上げによって地元の老舗店舗は一掃されて大手商業資本が制覇した。地価高騰によってそれまでの住人たちが追い出され、路頭に迷う事態が生まれた。職も住居も奪われてホームレスに転落した多くの人々は、民営化された家畜小屋のようなシェルターに強制収容されるか、刑務所に追いやられた。
 「学校教育の向上」と称して、ブッシュ政権による「落ちこぼれゼロ」法制定に先立つ形で、公立学校への競争原理の導入と統廃合、民営化が強行された。多くの教育労働者が解雇され、非正規職化を余儀なくされた。廃校となった公立校の敷地は更地化されて不動産資産と化し、そこに巨大資本が群がるとともに、民営化された学校は税控除の優遇措置の上に補填費用として多額の税金まで投入されてマイクロソフト・ビルゲイツ財団を始め巨大資本を潤すこととなった。低所得労働者の子どもたちは行くべき学校すら奪われた。生み出されたのは、公教育の産業化であり、崩壊であった。
 そして今、ニューヨークでは何が起きているか。それは昨年9月から始まったウォール街占拠(オキュパイ)運動である。「1%」の支配階級・資本家どもに対する「99%」の労働者階級の総反乱である。それは全米各地に広がり、西海岸のオークランドでは、ILWUローカル21(国際港湾倉庫労働組合第21支部)に対する労組破壊に反撃する闘いと一体となってゼネストが闘われている。
 橋下は、ジュリアーニに倣い、西成区を更地にし、大企業で制圧し、街を一変させようとしている。西成区に新住民を大量に入れ、「治安強化」の声を起こさせ、これに応えて警察を大量動員、「浄化作戦」を発動しようとしているのだ。簡易宿泊所の建て替え、ごみ不法投棄対策の強化、小中高一貫のスーパー進学校やスーパー保育園の設置、子育て世帯の転入者への市税減免などが提案される一方、生活保護受給者締め付けは先行実施されている。
 ウォール街占拠運動のように、「99%」の総反乱をたたきつけてやらなければならない。

 米ブッシュ政権の「落ちこぼれゼロ法」

 ここで、橋下の「船中八策」の一つの柱でもあり、最重要政策である教育改革について見てみたい。それは、ニューヨークの例で触れたように、米ブッシュ政権の「落ちこぼれゼロ法」(02年)を倣ったものである。
 「落ちこぼれゼロ法」は、学力アップにノルマを課し、果たせない学校は淘汰する。具体的には3〜8年生(日本では小3〜中2)に毎年英語と数学のテストを受けさせ、各学校は、12年後に「良」を取る生徒が100%になるよう目標を設定する。2年連続で目標達成に失敗すれば、保護者は子どもを転校させることができる。4年連続で失敗なら教職員総入れ替え。5年連続なら、閉校か民間委託。ダメな学校は淘汰され、落ちこぼれはいなくなる――というものだった。
 だが、「テストのための勉強」ばかりで、実際には学力が上がらず、ニューヨークでは学校の淘汰と教育労働者の退職だけが進んだ。ニューヨーク市内の公立小中高1750校のうち、テストの成績などが基準に達しない150校が閉校になり、市内の全教員の4分の3にあたる6万6千人が、定年に加え、強制的な配置転換や激務によるうつなどの病気で退職に追い込まれた。閉校した学校の校舎は、民間財団の寄付などで運営するチャータースクールが入った。要は、閉校と資本の進出、教育労働者の首切りだけが進んだということなのだ。

 「ショック・ドクトリン」

 2005年8月、米ルイジアナ州をハリケーン・カトリーナが襲った。なかでもニューオーリンズ市は街全体が水没する壊滅的被害を受けた。この時、新自由主義経済学の「教祖」であるフリードマンは、この悲劇を「教育システムを抜本的に改良する絶好の機会である」と説いた。公立校システムを民間団体が運営するチャータースクールに転換するというものだ。その結果、カトリーナの前は1
23校あった公立校が4校に激減した。教職員組合に組織されていた4700人の組合委員が解雇された。これが「ショック・ドクトリン」(惨事便乗型資本主義)の典型例だ。
 橋下の教育改革は、これらの日本版である。橋下が、府知事時代に推進した私立高校の授業料助成金制度の結果、すでに全日制公立高校の3割が定員割れとなり、統廃合の対象とされている。さらに、学力テストの結果を開示し、保護者が学校を選べるようにする。保護者の申し立てや校長の評価で、不適格教員を現場から外して研修させる。3年連続で定員割れした府立高校は再編整備する。小中学校でも学校選択制を導入し、統廃合も考慮する。
 以上のような教育改革と「日の丸・君が代」の強制―教育労働者への解雇攻撃は一体のものである。教育労働者を先頭とする総反撃をたたきつけなければならない。

 橋下のファシスト的ポピュリズム

 ここで、橋下=「維新の会」のファシスト的性格についても触れておきたい。大阪ダブル選や各種世論調査での「橋下人気」は、けっして侮ることのできないものがある。かつての「小泉劇場」にも比すべき世論操作の手法、ポピュリズム(大衆扇動政治家)とも言うべき性格があるからだ。
 橋下は、大恐慌下での労働者人民の生活苦と閉塞状況に対する怒りを「公務員バッシング」に向けさせようとしている。その極めて独裁的な政治は看過できない。橋下は、昨年6月29日、実質上の「大阪・秋の陣」の出陣式であった「大阪維新の会」の政治資金パーティーの席上で、次のようにまくしたてた。
 「今の日本の政治で、一番重要なのは独裁。独裁と言われるくらいの強い力だ」「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」「大阪都構想に反対する大阪市は、抵抗勢力だ。その権力を全部引き剥がして、新しい権力機構をつくる。これが都構想の意義だ」
 大阪に独裁的権力を打ち立て、それをテコに日本の政治を変えるというのだ。「抵抗勢力」を仕立て上げるのも、「郵政民営化」を掲げて「抵抗勢力の一掃」を叫んだ小泉を彷彿とさせる。
 また、橋下が府知事時代に「大阪の財政を黒字にした」というのは真っ赤なウソだ。橋下が府知事に就任した2008年度の「黒字」にはまやかしがあった。大阪府が出資する五つの法人に、それまで長期で貸し付けていた資金を、年度末の09年3月31日にいったん全額返済させ、翌日の年度初めである4月1日に、同じ5法人に同額の資金を再び貸し付けていたというのだ。この総額は1193億円にも達していた。もし、この「2日間の返済」がなければ、08年度での一般会計決算額は853億円の大赤字だった。つまり、大阪府による大規模な赤字隠しが行われていたというのだ。まさにウソとペテンの橋下流だ。
 さらに、本質的に極右反動政治家であるが、「沖縄基地負担軽減」や「脱原発(大飯原発再稼働反対)」など、日帝ブルジョアジーの基本政策に反対し、大衆の歓心を買うことも平然と掲げる。「革命児」などともてはやされており、その「下から」の「体制変更」の要求と併せて見る時、「ファシスト的」な性格を持っているとさえ言えるのだ。
 こうして、今や絶望的に追いつめられた日帝ブルジョアジーの最悪の救済者≠ノなろうとあがいているのが、橋下=「維新の会」なのだ。しかし、そのファシスト的なポピュリズムは、労働者階級の団結した力の前には無力なのである。

第3章

 「労働者の団結で打倒しよう――「維新」うち破る階級的労働運動を

 自治体労働者、教育労働者を先頭に大反撃を

 労組の存在意義かけて

 橋下=「維新の会」のこのような跳梁跋扈を食い止めるのは、労働者の団結した力である。橋下との対決の戦場は労働組合にある。職員基本条例や教育基本条例は、大阪市労連や大阪市教組などを徹底的に攻撃し、その「スピード感」と「激しさ」で平伏させ、階級的労働運動を壊滅させようとするところに核心がある。階級的労働運動派が絶対反対で立ちはだかり、職場に団結を組織した時、こんな攻撃は逆のものに転化することができる。
 第1章で見たように、デタラメな「職員アンケート」が破綻した原因は、そのあまりの不当労働行為性にあるが、核心は現場労働者の団結した力であった。「こんなにまで労働組合がなぶりものにされてたまるか」「労働者の誇りを奪われてなるものか」という根底からの怒りの決起だった。橋下は、この労働者の力を見くびっているが、本質的にはその力に恐怖しているのだ。
 橋下との闘いは、大阪のみならず、全国の労働運動の命運がかかった決戦だ。特に自治体労働運動にとっては、道州制―360万人公務員労働者の全員解雇・選別再雇用=非正規職化の攻撃の帰趨がかかっていると言って過言ではない。新自由主義と闘う階級的労働運動の発展をかけ、大阪の労働組合をめぐる攻防に勝ち抜こう。
 大阪市職本部は3月15日、組合事務所の「自主退去」を組合方針とするために臨時大会を開催し、「市役所内で争っても市民に支持されない」などと言い逃れている。さらには橋下にやり玉に上げられた「時間内組合活動」を「一部の不適切な事例」(組合執行部)として闘いを放棄し、組合員を差し出そうとしている。この裏切りを許すな!

 音楽団の分限免職強行

 こうした中で橋下は、4月5日、「施策・事業の見直し(試案)〜市役所のゼロベースのグレートリセット〜」を発表した。その中で、大阪市音楽団について「行政としての役割の整理を図る」とし、これについて橋下が「今まで音楽をやっていた人を単純に事務職に配置転換するのは、これからの時代、通用しない。仕事がないなら、分限(免職)だ」として、大阪市音楽団の音楽士36人を「分限免職」とすることを打ち出した。
 大阪市では、まだ職員基本条例は制定されていないが、それを先取りする分限免職が始まったのだ。断じて許すことはできない。

 教育労働者の「君が代」不起立闘争が闘われる

 橋下=「維新の会」に対して、労働者の渾身の決起が始まっている。
 昨年6月、橋下は大阪府の「君が代」起立条例を成立させたのに続いて、今年2月28日には、大阪市の「君が代」起立条例を成立させた。そして、「君が代」起立の職務命令が出される中で、大阪の教育労働者は、今春の卒業式・入学式での「日の丸・君が代」強制の攻撃に対して断固たる不起立闘争に決起した。府立学校、市立学校の卒業式では30人余りの教育労働者が不起立闘争を闘い抜いた。
 ある市立学校の教育労働者は、職場で「不起立宣言」を行い、体制内労組執行部と激突しながら分会で激しい論議を組織した。「不起立」宣言は、次のように言う。
 「学校選択制、学力テストの公表、学校の統廃合によって教育が破壊されると同時に、膨大な労働者が解雇されようとしています。基本条例では、『整理解雇』を合法化し、ありとあらゆることを個人の責任にして『評価』と『処分』をくり返し、アメリカ型の職員の首切りをやろうとしています。これはみんなの問題です。橋下は処分でおどせば労働者は屈服すると思っている。今、何もせずにいたとしても、どんどん容赦なしに襲いかかってくると思います。労働組合がどう闘うかが問われています。まずは職場から怒りの反撃をたたきつけましょう。あらゆる反撃が積み重なれば、力関係も変えられると思います」
 この闘いに追いつめられた橋下は、「立ちたくなければ欠席するのも大人の知恵」などと打撃感をあらわにした。これこそ労働者の職場支配を一掃できない橋下の敗北宣言そのものだ。

 橋下の住宅明け渡し・診療所廃院・更地化攻撃と闘う八尾北・西郡

 3・18全国集会の地平

 こうした労働者の決起と一体となって、橋下の道州制・「特区」・更地化攻撃との闘いの拠点である八尾北・西郡決戦が断固として闘い抜かれている。
 3月18日には、「住宅追い出し・病院つぶしの更地化粉砕/道州制・特区、改憲・労組破壊の橋下打倒/すべてを奪い返すぞ!全国総決起集会」が、地元の八尾北医療センター労組、部落解放同盟全国連西郡支部を先頭に、全国から600人の結集で闘い取られた。
 八尾北医療センター労組の藤木好枝委員長は基調報告で、3月14日に西郡支部の岡邨洋支部長の住宅に対する強制執行を阻止した勝利を受け、「ついに絶対反対の闘いが地域丸ごと獲得する状況をつくり出しました。西郡支部1千名建設の展望を圧倒的に開いたのです。これは八尾北・西郡だけでなく、絶対反対、資本と非和解を貫いて闘っているところ全体で起きている情勢です。『絶対反対、拠点建設、団結拡大』こそ勝利の路線です」と述べ、「医療センター明け渡し=全員解雇、西郡の更地化=廃村化の道州制攻撃を、団結拡大、労働運動を甦らせる決定的チャンスとして闘い抜こう」と訴えた。
 また、西郡支部の岡邨洋支部長は、部落解放闘争の新しい全国組織を立ち上げることを宣言。「全国連西郡支部は、八尾北労組とともに住民の団結と労働組合の団結を甦らせる部落解放運動をやっている。今までとはまったく違う、この新しい解放運動こそ西郡の未来、希望だ」「全国の労働者とともに闘うことでわれわれが社会の主人公であることがはっきりした」「全国水平社の熱い息吹を復権させ、新自由主義と真正面から闘う新しい全国組織を立ち上げよう」と訴えた。
 さらに、この集会には、動労千葉、関西地区生コン支部、港合同の労働者も駆けつけ、階級的労働運動の復権へともに闘うことを呼びかけた。
 この3・18全国集会・デモ、3月14、27日の二度にわたる岡邨洋西郡支部長宅に対する強制執行阻止の闘いは、橋下打倒の号砲を鳴らした。

 生き抜くための八尾北・西郡の闘い

 八尾北医療センター労働組合、部落解放同盟全国連西郡支部は、住宅明け渡し強制執行、診療所廃院、更地化攻撃を開始した八尾市と裁判所を徹底弾劾し、生き抜くために非妥協的に闘い抜いている。
 人間が生きていくためには住宅と医療機関は必要不可欠だ。住宅や診療所を整備し保障することはもともと自治体や国の責任である。だが八尾市当局は戦後、西郡部落に対して何の施策も行わなかった。そこで住民たちが自ら土地を提供し合い、市営住宅を建設させた。当然にも家賃は市と住民の協定で一律低家賃となった。
 ところが96年の公営住宅法改悪により応能応益家賃制度が導入され、西郡の住宅にも98年から適用された。多くの住民の家賃が一挙に2倍、3倍にされた。払えなければ出ていくしかない。住み続けるためには闘う以外にない。こうして家賃供託闘争が始まった。
 八尾北医療センターの前身は、地元住民がまったくの自前、自力で1951年に建設し、自主運営した西郡平和診療所だ。66年に幸生診療所と名を変えた後、1982年に八尾市の負担で八尾北医療センターが建設された。ところが八尾市は97年、医療センター売り渡し・民営化の攻撃を始めた。
 応能応益も診療所売り渡しも、「部落差別を解消する」ための同和対策事業を打ち切り、あとは自己責任で、という地対協(地域改善対策協議会)路線、すなわち新自由主義の攻撃だ。国鉄分割・民営化と一体のこの攻撃は、同和対策事業に依存することで成り立ってきた部落解放同盟をつぶすことを通して、解放同盟と密接不可分の自治労などの労働組合をつぶす攻撃でもあった。
 2000年に結成された八尾北医療センター労働組合は、03年、住宅闘争を闘う西郡の住民とともに大病院による乗っ取りを阻止した。八尾市は08年に医療センター売り渡し方針を打ち出し、土地建物の鑑定をしようとしてきたが、これを拒否し売り渡しを阻んできた。
 八尾市や裁判所には一片の正義もない。大恐慌と大震災・原発事故による日帝の未曽有の危機、それに付け込みすべてを奪おうとする日帝の先兵・橋下の台頭が攻撃に拍車をかけている。これに敢然と立ちはだかっているのが、強制執行による更地化攻撃と闘う八尾北・西郡決戦だ。
 この闘いと一体となって、橋下打倒へ闘い抜こう。
(写真 住宅追い出し攻撃と闘う14家族が次々と決意表明【3月18日 八尾市】)

 動労千葉のように闘い国鉄闘争全国運動の発展を

 分割・民営化との闘い

 これまで、橋下=「維新の会」の新自由主義攻撃には、労働者の階級的団結を武器に闘い抜くべきことを明らかにしてきた。では、どのように闘うのか。それは、動労千葉のように闘うということである。
 動労千葉は、国鉄分割・民営化攻撃に対して、「国鉄赤字の責任は国鉄労働者にはない」ということを鮮明にさせ、断固ストライキを打ち抜いて団結を守り抜いた。国鉄分割・民営化の最悪の先兵となった動労カクマルと対決し、またこの攻撃と一戦も交えることなく組織が切り崩された国労本部の屈服の道をも許さず闘い抜いたのである。

 検修外注化を阻止

 そして今、動労千葉は、検修・構内業務の全面外注化攻撃を10年以上にわたって阻止し続けている。JR東日本当局が狙った今年4月1日外注化実施をまたも阻止した。
 動労千葉は、なぜ4・1外注化を阻止できたのか。
 第一に、現場から、JR東労組や国労本部の裏切りを許さない職場丸ごとの大反乱をつくり出したことだ。とりわけ青年労働者を先頭とする外注化=出向・転籍攻撃への怒りが、会社や東労組も全面外注化の協約を簡単に結べない状況に追い込んだ。動労千葉が圧倒的な職場支配権を握りしめているのである。
 第二に、偽装請負を徹底弾劾したことだ。検修業務は、JR東日本の指示・監督のもとでしかなしえない。これを外注化することは偽装請負そのものだ。これを徹底追及し、JR東日本が過去10年にさかのぼって行ってきた保守部門外注化のすべてが偽装請負であることも暴かれる事態になりかねないところまで追い込んだ。
 第三に、外注化が検修職場で働く労働者を強制出向に出す以外に強行できないことをはっきりさせ、絶対に出向に行かないということを突きつけたことである。あくまで外注化を強行した場合、かつてない集団的な出向拒否闘争が爆発する可能性が資本を追いつめたのである。
 第四に、尼崎事故のような大事故が起きかねない根底的な安全崩壊への鉄道労働者としての怒りと危機感の爆発だ。動労千葉は、この10年間の闘いの過程で、レール破断の徹底追及などで安全運転闘争を闘ってきた。事故や安全崩壊に関する当局の責任を徹底的に追及し、72年船橋闘争以来の反合・運転保安闘争の力を徹底的に発揮して闘い抜いている。
 第五に、動労千葉の本格的圧倒的な組織拡大の現実性だ。JR資本はJR総連カクマルとの結託体制を清算し、資本による専一的な労務支配体制をつくろうとしているが、動労千葉の組織拡大は、その狙いを打ち砕くものだ。
 とりわけ、偽装請負告発の闘いは、普遍的意味を持っている。民営化・外注化はすべて偽装請負で成り立っている。JRだけでなく、今や日本の全産業が偽装請負を前提としていると言っても過言ではない。自治体職場の委託・非常勤化の攻撃なども偽装請負そのものだ。自治労本部などの屈服がそうした違法・脱法をまかり通らせてきた。偽装請負や出向・転籍に対して、労働組合が徹底抗戦した時、これまで進めてきた業務外注化が土台から覆される危険性さえはらんでいるのである。
 動労千葉による外注化阻止・非正規職撤廃、偽装請負弾劾の闘いは、新自由主義に打ち勝つ道を示している。
 資本・当局との絶対非和解性を鮮明に絶対反対を貫き、階級的団結を総括軸に闘い抜く階級的労働運動路線だけが闘いの勝利と労働者の未来を開く。動労千葉を先頭とする国鉄決戦に総決起するとともに、動労千葉のような闘いを、大阪―全国の自治体職場でやり抜こうということである。

 6・10国鉄闘争全国集会に大結集を

 今、労働運動をめぐって大反動が襲っている。象徴的なのは、動労千葉の運転士登用差別事件で2月23日、最高裁がJRの不当労働行為を認定した高裁判決を破棄する反動判決を出したことである。また、3月29、30日、東京地裁が、不当解雇撤回を求める日本航空機長組合、乗員組合の運航乗務員と日本航空キャビンクルーユニオンの客室乗務員の請求を棄却し「解雇有効」とする反動判決を下した。これらの極反動判決は、解雇自由を目指す新自由主義攻撃に拍車をかける。
 こうした中で、橋下=「維新の会」の労働組合破壊の矛先は大阪市・府の現業を始め公務員労働運動全体、4大産別、労働組合運動総体に向いている。それは全員解雇・非正規職化という新自由主義の本性をむき出しにしたものだ。労働組合絶滅を狙う橋下反革命を打倒することは全労働者階級の課題である。何度でも確認したいが、橋下は実は労働組合の底力を最も恐れているのだ。
 労働組合は、賃金を始め労働条件をめぐる日常的な闘いから革命に至るまで労働者階級の自己解放闘争を推進する武器、基礎的団結形態だ。こうした可能性と力を労働組合が発揮すれば、大恐慌・原発震災で脱落帝国主義化した日帝と、その最悪の先兵である橋下=「維新の会」を打倒することができる。そしてプロレタリア革命をたぐり寄せることができるのだ。
 1〜3月の闘いの地平の上に立って、国鉄・反原発決戦を闘おう。日帝・野田政権による原発再稼働策動を絶対に許すな。消費大増税を阻止しよう。米新軍事戦略のもとで強まる戦争政策と対決し、5・15沖縄闘争を闘おう。
 それらの闘いの一切の土台として、新自由主義と闘う国鉄闘争全国運動、動労千葉を支援する会の会員拡大をかちとり、6・10全国集会に大結集しよう!

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月刊『国際労働運動』(430号4-1)(2012/06/01)

討議資料

■討議資料 大阪市長・橋下徹の反革命語録

 『体制維新――大阪都』橋下徹 堺屋太一

 (文春新書、2011年10月31日発行)

▼国鉄改革が成功した理由

 一九八五年、中曾根内閣は国鉄を分割民営化するという大胆な体制変更を打ち出しました。これには国鉄の経営陣や労働組合などが大反対、一時は「ストライキで対抗する」と息巻いたものです。しかし、国民は国鉄改革を支持し、分割民営化が実現しました。国鉄職員にも、赤字を垂れ流す体制に失望して、改革を支持する者も増えていました。
 この結果、国鉄を民営化して生れた六つの旅客会社と貨物会社は黒字となり、何千億円もの法人税を支払ってくれるほどになりました。体制(システム)を変えれば、同じ事業でもガラリと変るのです。
 もっと新しい例は、NTTの分割民営化があるでしょう。
 国鉄と同じ時に民営化された電電公社は、黒字だったので十年間はほとんど公社時代と同じ体制でした。しかし、このことが日本の電気通信の進歩を阻み、NTT自身の経営も抑圧していたのです。一九九九年、NTTはNTTドコモ、NTTデータ、東西NTTなどに分割、さらに二〇〇〇年には民間通信会社によるNTT通信網の利用を促進する改正も行われました。この改正を担当したのは、当時経済企画庁長官と兼務で情報通信技術担当大臣を兼ねていた私自身です。
 この結果、日本の通信は急増、料金も大幅に低下、世界的に見ても安い方になりました。本当の改革とは、人事の交代や政策の変更ではなく、体制(システム)を変えることなのです。(以上、堺屋)

▼なぜ大阪都が必要か

 いまの大阪府庁も大阪市役所も解体して、新たな大阪都庁にする。そして大阪市内にある二十四区は中核市並みの権限と財源を持つ八区ほどの特別自治区に再編する、そして周辺市にも中核市並みの権限と財源を移譲するというものです。都は大阪全体の成長戦略や景気対策・雇用対策、インフラ整備などの広域行政を担い、特別自治区は基礎自治体として、教育、福祉といった住民サービスを受け持つことになります。
 世界は激しい都市間競争の時代になり、日本、特に都市部である大阪は著しい少子高齢化社会に突入します。このまま何もしなければ税収は減り続け、住民サービスは財源不足に陥り、大阪は衰退するのみ。そこで大阪の体制を変革し、大阪都によって大阪の都市としての活力・競争力を高め、大阪全体の経済成長を図り、加えて二重行政の解消という驚天動地の行政改革を達成することで財源を確保する。また特別自治区によって医療・福祉・教育サービスを充実させ、住民にやさしい都市を作るのが狙いです。
 これは体制の変革ですから、平松邦夫大阪市長をはじめ市の官僚や市議会議員の一部が猛反発している。ぼくは政治家の役割は政策よりも体制や政治の仕組みをどうするかを考えることが大事だと思っているんです。

▼公務員もクビにできる制度に

 私が代表を務める大阪維新の会は、大阪都構想に加えて、職員基本条例と教育基本条例の二つの条例案を議会に出しています。職員基本条例は大阪府、大阪市の職員、つまり公務員の解雇や降格人事を可能にするもので、教育基本条例は、同じく教員の懲罰規定の明確化と教育への政治の一定の関わりを盛り込んだものです。今この二つの条例案をめぐって大阪では大騒ぎになっています。
 ……
 身分が絶対的に保障される、つまり公務員はクビにできない、という価値観はあり得ません。公務員も能力や意欲がなければクビを切られるし降格もされる。労働基本権の問題は、この価値観を前提に考えられるべきなのです。

▼財政再建――破綻寸前からのスタート

 職員の人件費カットは、かなり大胆に行い、今、大阪府の職員の給料は都道府県で最低水準です。退職金も五%カットしました。退職金カットは日本の公務員の中で大阪府だけです。行政改革を徹底し、財政再建を進めた結果、十年連続して赤字だった府の財政を二年目に黒字に転換させたのです。

▼体制変更は政治家の使命

 体制の変更とは、既得権益を剥がしていくことです。いまの権力構造を変えて、権力の再配置をする。これはもう戦争です。

▼地域政党「大阪維新の会」

 府市の水道統合協議はなかなか進まない。平松市長は大阪府が悪い、橋下が責任を果たさなかったというが、結局、府市組織が別々であることが根源的な問題です。……二年協議を続けましたが、結局、水道一つも統合できない。協議だけでは、大阪の二重行政、二元行政が解消するはずがないと強く思いました。そして、いよいよ大阪問題の最終章に進む段階にきたと判断しました。大阪府と大阪市の長年の抗争に終止符をうつ「大阪都構想」です。

▼公立でも私立でも選べる環境に

 高校においても公立でも私立でもどちらでも選ぶことができる環境は、大阪がいま全国一です。これにより二〇一
一年は公立から市立に三千五
百人ほどの生徒が流れました。大阪ではいま、私立と公立が激しく切磋琢磨する状況になっています。公立校の尻にも火がついたのです。今までは、授業料が安いから、タダだから、という理由で生徒が入学していたのが、どんどん私立に流れるようになったため、定員割れの全日制公立高校が三割も出た。

▼政治マネジメント

 二〇一一年六月に府議会で成立した「君が代起立斉唱」条例は、その時点で議論を積み重ねる必要のないテーマでした。
 ……すでに〇二年の段階で文科省の通達に基づいて、大阪府教育委員会が国歌は「立って歌う」と決めていたのです。僕が決定したことではなく、教育委員会という教育行政の最高意思決定機関が起立して歌うことを決定し、教育現場を指導していた。現場の一部教員が無視していただけのことです。
 つまり、「君が代」斉唱時に起立すべきか否かという思想信条の自由に関する問題ではなく、組織として決めたことは守りましょうという組織論です。教育委員会が起立するようにという職務命令を出し、それが訴訟になって、最高裁でも合憲という判断が出ている。これはもはや議論の余地がありません。このうえ何を話し合う必要があるのでしょうか。あとは職員の規律の問題です。

▼議論が必要な案件と不要な案件を分ける

 先ほどの「君が代」の起立問題にしても、五年、十年と議論されてきたのです。……起立しない教員のように組織で決まったルールを平気で無視する公務員がいるなら、それを正すのが政治家の仕事です。公務員世界の職務命令は民間企業よりも重いのです。公務員世界での職務命令は民意の発露と考えられるからです。それが嫌なら公務員を辞めて、民間企業に勤めればいい。

▼教育現場の「治外法権化」を許すな

 教育基本条例も統治機構の変革、体制の変革への挑戦です。今の教育委員会制度は教育の中立性を錦の御旗に、教育現場が全てを仕切る仕組み、教育現場は半ば治外法権のような状態です。……
 戦前の軍国主義教育の反省から、政治が教育へ口を出せない制度として教育委員会制度が構築されました。しかし、その功罪はどうでしょうか? 政治的中立性が行き過ぎて、政治・民意と教育があまりにも離れてしまったのではないでしょうか。

▼露骨な地下鉄キャンペーン

 「大阪都構想」には大阪市営地下鉄の民営化が含まれます。その大阪市営地下鉄はいま、阪急電鉄や近鉄でもやらないような組織イメージを高めるテレビCMを大々的に流している。市の税金を数億円も投じて「市営地下鉄はこのままでいいんです」という大キャンペーンを張っているのです。
 ……
 一一年春の統一地方選挙前に、大阪維新の会は大阪市営地下鉄の民営化を唱えていました。それに対して市の交通局の労働組合は、民営化になると職員の給料が民間並みに落ちるので民営化は断固阻止しなければならないと堂々と主張して、労働組合が推す立候補者を必ず当選させようと気合を入れていました。民間並みに落ちる! などというのが市職員の感覚です。

 橋下徹大阪市長 施政方針演説(2011年12月28日)

▼「府民、市民不在の不毛な縄張り争い」に終止符

 これまでは市民、府民不在の不毛な縄張り争いで大阪のパワーが分断されてきました。大阪の力が満ちあふれていた高度成長時代はこれで良かったかもしれませんが、熾烈な都市間競争にさらされている今の時代では、このままだと日本、アジアの中で大阪の存在感が下がる一方ではないでしょうか。アジアとの競争に向かう今、大阪のパワーを分断させてはいけません。これが私の危機感です。私に与えられた使命は大阪を再生させることです。明治、大正、昭和と続いてきた府市100年戦争に松井一郎大阪府知事とともに終止符を打ちます。

▼「地下鉄やバスを抱える必要は全くない」

 大阪の成長のため、広域行政の本来の役割、仕事をいかに法律的、効果的に配分できるかを、ゼロベースで考え、決断して参ります。その結果、大阪市は市民の暮らしを守る基礎自治体の本来の役割に徹し、無駄をなくし、スリム化を図ることができると考えています。
 地下鉄やバスなどは行政で抱え込む必要は全くありません。民間に任せること、新たな経営軸を作っていくことも視野に入れています。

▼「既得権の破壊が私の使命」

 大阪市民へのサービスを図るために、区長に予算や人事の権限を与え、区民のためにしっかり働いてもらいます。市役所各局は市長の補助組織ですが、区長の補助組織にもなります。区長には私と同じ思いを抱く人を全国から公募しますが、身分保障は与えません。成果が上がらなければ罷免もあります。まさに公務員の絶対的身分保障への挑戦でもあります。
 住民サービスの展開では、これまでのやり方を徹底して変えます。特定の団体や市民への補助やサービス提供が続けられ、既得権となって固定化していましたが、選挙で市民はこれに「NO」を突きつけました。真摯に受け止め、あるべき姿としてサービスを必要とする人にサービスが届くようにすることが基本です。既得権を破壊することが私に与えられた使命だと思っております。
 民間でできることは民間に任せることを徹底させます。民間にお金を回すことによって地域経済の活性化や雇用の創出につながっていくという効果も期待できます。役所が抱えてきた仕事を民間に開放することも使命と考えます。

▼「私はしつこい 組合問題は執念燃やす」

 政治家でもある私に対して、行政マンである市役所職員には、行政的な視点からどんどん意見してもらいたいと考えておりますが、市役所職員が民意を語ることは許しません。そして、徹底した議論の上、私が下した政治決断には、行政組織の持てる力を結集してその実現に努めてほしいと考えております。さらに、市役所の組合問題にも執念を燃やして取り組んでいきたいと考えております。市役所の組合体質はやはり、おかしいと率直に感じます。庁舎内での政治活動は許されません。
 先日、公の施設内で政治活動が行われたことについて市民に対して謝罪を求めたところ、組合は謝罪文1枚で済まそうとしています。市民感覚とかけ離れております。あいさつやしつけをしっかりと子どものときにしてこなかった子どもは、ろくでもない大人になります。今の市役所の組合はあいさつすらできない状況だと思っています。
 私自身は非常にしつこい性格でありまして、もう一言、組合について述べさせてもらいたいと思うのですが、大阪市役所の組合の体質というものが、今の全国の公務員の組合の体質の象徴だと思っています。
 ギリシャを見てください。公務員と公務員の組合をのさばらせておくと国が破綻してしまいます。ですから、大阪市役所の組合を徹底的に市民感覚に合うように是正、改善していくことによって、日本全国の公務員の組合を改めていく、そのことにしか日本の再生の道はないと思っております。大阪都構想と組合の是正、これによって日本再生を果たしていきたいと思っております。

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月刊『国際労働運動』(430号5-1)(2012/06/01)

Photo News

■Photo News

●スペインでゼネスト

  (写真@A)

 3月29日、スペインでは、労働者の解雇を容易にする労働法の改悪に抗議してゼネストが行われた。運輸部門や工業部門での全面ストが行われるとともに、午後には首都マドリッドをはじめスペイン各地で大抗議デモが行われ、バルセロナでは80万人(写真@)、マドリッドでは90万人以上(写真A)が参加した。激しい怒りに燃えたデモ隊は各地で警察とも激突している。このデモには失業中の青年労働者も多数参加した。スペインの失業者は475万人(2月の失業率は23・6%。青年労働者の失業率は50%)に達しており、政府の新自由主義政策に対する労働者の怒りは極限に達している。

●エジプトで新たな闘い爆発

   (写真BC)

 4月9日、賃上げと危険手当や休日労働に対する手当てを要求してストライキに突入したエジプトの鉄道労働者はカイロ中央駅で座り込み闘争に立ち上がり、7時間にわたって列車の運行を停止させた(写真B 列車の運行がとまったカイロ中央駅)。ラマダン市では、正規職化を求めて4月4日から開始されたエクソン・モービルの非正規の石油労働者のストライキも7日には4日目に入った。アレクサンドリアのエクソン・モービルの非正規労働者も同様にストライキに入った。4月2日には、公共労働者も昨年9月労働者の闘いによって再国有化された工場の再度の民営化策動に反対して憲兵隊と衝突し、座り込みストライキに入った。4月11日にはラマダン市のエクソン・モービル社の門前で抗議闘争を行った(写真C)。エジプトの労働者は軍政府に対して一歩も引かずに闘いを継続している。

●中国労働者階級の闘い相次いで爆発

 

  (写真DEFG)

 4月15日、中国の電話会社である中国移動四川支社で、非正規派遣労働者がストライキに立ち上がった。この会社は50万3000人の労働者をかかえる大企業だが、そのうち35万8000人が派遣労働者だ。四川支社の派遣労働者たちは、賃金のピンはねに抗議してストライキに突入した(写真D)
 4月12日には、中国広東省莞市虎門大寧村にある日系リズム時計の工場の1000人の労働者全員が待遇改善を要求してストライキに立ち上がった(写真EF)。中国経済の破綻の進行のなかで経営危機に陥った外資系企業による、労働者への賃下げ、リストラ攻撃などの犠牲の転嫁に対する労働者の反撃が各地で始まっている。
 4月10日には重慶で数千人の労働者と学生が、中央政府と省政府による重慶市の万盛区と縉江県を合併し、経済開発区を設立したことによって万盛区の経済が落ち込み、福利が低下したとして、合併に抗議し、生きるための保障を求めてデモ行進を行った(写真G)。労働者や学生は武装警官による弾圧で死者や負傷者をだしながらも、深夜まで闘い続けた。この闘いは、経済危機乗り切りのための開発にともなう膨大な行政支出が労働者の福祉を後退させていることへの怒りの爆発だ。

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月刊『国際労働運動』(430号6-1)(2012/06/01)

世界経済の焦点

■世界経済の焦点 貿易赤字に転じた日帝

電機・自動車の輸出競争力低下で脱落加速

 □輸入増加に加え輸出減少で赤字

 2011年の貿易収支は、通関ベースで、▲(マイナス)2・5兆円と30年ぶりの赤字となった。経常収支も、黒字幅は9・6兆円で、前年の17・2兆円から急減。1995年以来の低水準である。輸出減少とともに輸入が増加し、両面から貿易赤字を押し上げた。
 対前年比の貿易収支落ち込み幅▲9・1兆円のうち、輸入価格上昇の影響が半分以上を占める。また、震災後をみれば、昨年2月と比較した12月の貿易赤字落ち込み額▲1・04兆円においては輸出数減少による影響が半分以上の大きな要因。
 輸入では、大震災やタイ大洪水によるサプライチェーン破断の影響で代替輸入数が増加した。原発停止に伴う代替燃料輸入数も増加した。燃料価格の上昇もある。この3点が目立つが、燃料価格上昇の影響が大きい。燃料の輸入数増加と価格上昇が輸入増加全体の4分の3に上る。
 代替輸入数量は復旧に伴い落ち着き、燃料輸入数は、原発がほとんど稼動停止した現状では、一層の急増はないと予測される。他方、原油など燃料輸入価格は、金融緩和マネーの流入、イラン情勢、新興国の急成長で、当面、輸入額を押し上げる要因となっていくと思われる。
 輸出では、自動車と電気機器の輸出数量の落ち込みが顕著である。大震災やタイ大洪水でのサプライチェーン破断による生産停止、EUの債務危機、円高などが大きく影響した。自動車の米国向けは持ち直しつつあるが、電気機器は、落ち続けている。債務危機の実体経済への影響が広がるEU向け輸出は減少、輸出の6割を占めるアジア向けも、電機を中心に、昨年夏場以降、弱い動きだ。
 貿易収支赤字の要因として、電気機器と自動車という基幹産業の輸出落ち込みが顕著であることは注目すべきことである。
(図 日本の貿易収支【四半期別】)

 □電機大手が軒並み大赤字で総崩れ

 2月3日に出そろった電機大手8社の2012年3月期決算予想は、パナソニックとシャープの純利益が過去最大の赤字となるなど、各社とも売上高や利益を大幅に減らした。純損益で、パナソニック▲7800億円、シャープ▲2900億円、ソニー▲2200億円、NEC▲1000億円など総崩れだ。さらに、2月末には、日本で唯一の記憶用半導体DRAMで、世界シェア3位のエルピーダメモリが、会社更正法を申請して破綻した。
 国産テレビの発売から半世紀、「家電の王様」であり続けたテレビ事業が、激しい価格下落で、赤字の元凶に転落したのが大きい。国内でも昨年1年間に価格が23・8%も下落した。販売台数でも地上デジタル放送移行後には急減し、11月は、前年同期より8%も減った。韓国メーカーとの競争に敗れ赤字が続くなか、タイの洪水や円高、欧州債務危機の影響が重くのしかかった。
 パナソニックは、2年前、プラズマテレビの尼崎第三工場を稼働させたが、昨年停止し、尼崎工場での生産を半減させた。尼崎工場には、05年以降、4250億円を投資していた。多額の投資をしたテレビ事業が4期連続で赤字の見通しとなったのである。
 シャープは液晶パネルの高品質・低コストの大量生産を目指し、亀山工場に加えて堺工場を増設した。しかしその堺工場は、事実上、台湾の鴻海(ホンハイ)との折半出資となる(後述)。
 日立は、テレビの自前の国内生産を打ち切り、来年度からは、中国や台湾メーカーに全面委託する。
 ソニーは昨年11月、2年前に策定した2013年3月期の液晶テレビ世界販売目標を半分の2000万台に半減させた。今回で、大幅赤字の見通しは4期連続となる。テレビ事業は出荷数で、サムスン、LGに次ぐ世界第3位でありながら、8期連続の営業赤字である。
 NECが1万人、ソニーも1万人以上の人員削減を計画し、シャープはEMS(電子機器の受託製造サービス)で世界最大手の台湾の鴻海精密工業と資本業務提携する。

 □円高やタイ洪水でサムスンに敗退

 こうした電機大手総崩壊の直接要因として、円高、タイ大洪水、欧州債務危機、買収失敗、電子部品価格の下落などがある。
 80年代、日本企業が世界の圧倒的シェアを占めていた半導体では、90年代以降、サムスンなど韓国勢がとって代わり、今はサムスンが世界シェア3割を占めている。薄型パネル事業において日本企業の後退とサムスンの進出は著しい。技術格差が僅少になった中では価格競争が大きな位置をもち、円高・ウォン安のもとでサムスンに敗北しているのだ。07年以降、円は3割上昇し、ウォンは2割下落している。
 タイ大洪水では、ソニーが約700億円の損失を出す。東芝も400億円の損失を予想する。
 さらに、欧州債務危機で円高ユーロ安が進み、「1円の円高で60億円の利益が吹っ飛ぶ」という。シャープが欧州に輸出していた太陽電池の需要も激減し、価格は1年前の半分に下落した。
 さらに、パナソニックは、三洋買収で6600億円を投じながら、莫大な損失を出した。三洋の主力商品リチウムイオン電池との事業融合で逡巡している間に、韓国勢の攻勢で価格が3割も下落し、この電池事業は赤字に転落してしまった。三洋が守り続けてきたリチウムイオン電池で世界首位の座も一昨年に韓国サムスンSDIに明け渡した。「サムスンの生産性は今では三洋の2倍も高い」といわれている。
 エルピーダメモリの負債総額は4480億円で、国内製造業では過去最大規模である。同社は、リーマン・ショックが直撃した09年に危機に陥ったが、「日本にDRAM産業を残す」という大義名分のもと、産業活力再生特措法による公的支援で延命した企業だ。ここでも「最先端の技術を使っているのに、おにぎりの半分の値段」といわれるDRAM価格下落で、昨年夏以降、単価は原価割れになっていた。

 □トヨタ「環境車」も世界から脱落へ

 次世代の自動車をめぐっても、ハイブリッドとは異なる流れが広がってきた。
 年間販売1800万台と世界最大の自動車市場の中国で、昨年売れたハイブリッド車の販売台数は約3千台。次に大きい米国市場でも約30万台で全体の2%にすぎない。
 「2020年には、中国市場の3分の1がエコカーとなる」との予測もあるが、最も普及するのは「ダウンサイジング」と呼ばれる簡素な技術になるという。フォルクスワーゲン(VW)が開発したダウンサイジング技術が、数年前から販売され、中国メーカーに急速に広がっている。エンジンの小型化とターボチャージャーを組み合わせてハイブリット車なみの走りと燃費を実現しコストも格段に安く済む、という。
 2015年に導入される燃費規制で、中国では2割の燃費向上が求められ、日米欧でも規制が強化され、技術が一新される。欧米では、BMWやフィアット、米国のゼネラル・モーターズなどもダウンサイジングに舵を切りつつある。
 「ライバルはトヨタではない、VWだ」と現代自動車会長は言う。昨年、トヨタの「カムリ」は販売が6%減り、現代の「ソナタ」は15%増えた。新興国での比率ではトヨタ37%、現代52%だ。現代は、今のところ成長市場である新興国で、デ・ファクト(事実上の標準)を握ろうとしている。
 帝国主義本国の自動車市場が飽和化し、市場の中心が新興国に移る中で、低価格車の大量生産を競う時代になった。トヨタは低価格車「エディオス」の生産をインドで始めた。さらに、ライバルの技術や品質を研究し、自社製品に取り込む「リバースエンジニアリング」と呼ばれる開発手法を、現代を目標にして取り入れた。低価格車の比重が決定的になってきた。

 □生産の海外移転とEMS提携が加速

 シャープは3月27日、EMSで世界最大手の台湾・鴻海精密工業と資本業務提携すると発表した。鴻海がシャープ株の10%を取得し、事実上の筆頭株主となる。堺工場にも46%出資し、生産量の半分を引き取る。
 鴻海は中国に生産子会社、富士康科技集団(フォックスコン)など、巨大な工場群を持ち、100万人を雇用して、アップルのスマートフォン等を受託生産する。売上高は10兆円に迫る。ソニーの生産委託先でもある。
 NECは、レノボグループとパソコン事業を統合し、パナソニックは中国海爾集団(ハイアール)の傘下に三洋電機の白物家電事業を売却した。
 自動車でも、2年前に日産は、小型車マーチの生産をすべてタイに移した。三菱自動車は4月から新小型車ミラージュをタイの新工場で作って世界に輸出する。
 電機も自動車も、他社より低賃金・高効率で部品を調達することで、大恐慌で生き残ろうと必死になっているのである。世界でダントツの業績をあげるアップルの携帯端末機は、鴻海の中国子会社、富士康科技集団でつくられている。
 そこでは粗末な食事と、深夜を問わない長時間で過酷な労働が行われている。
 一昨年、工場で自殺者が続出して問題になった。今年は、賃金を巡り100名の決死の籠城が闘われた。またサムスンは労働組合を作らせず、国家と癒着して利益をあげる企業だ。
 大恐慌が深化・激化するなかで、資本間の争いと国際競争は、ますます、低賃金・強労働の競争の様相を示している。日本をはじめアジアと世界の労働者の国境を越えたえた団結を強化しよう。

 □産業的基盤からも新自由主義が破綻

 30年ぶりの貿易赤字転落は、日本帝国主義の基幹産業が国際競争力を決定的に低下させ、今一つ脱落帝国主義と化していることを暴き出した。薄型パネルや半導体という電機の牽引事業が崩れてきている。大きな変化が起きている。
 日本帝国主義の危機を今ひとつ鮮明にする事態である。また、国鉄分割・民営化以来、新自由主義は「民は立派で、官はダメ」と宣伝しつづけてきた。しかしその「民」の代表格が崩れた。
 新自由主義が、国鉄だけでなく、産業的基盤でも大破綻してしまった日帝。これを脱落帝国主義と言わないで、なんと言おうか。
 帝国主義の過剰資本・過剰生産力のもとでの国際競争は、今や、製品開発や先端技術での付加価値ではなく、もっぱらの低価格競争の様相を呈している。それは、低賃金・強労働の競争であって、必ず労働者の国際連帯による巨大な反乱に転化させなければならない。
 その上で、日本の労働者階級にとって、これまでの巨額の貿易黒字こそ、搾取の結果だった。やはり労働運動の全体としての力関係が、日帝の基幹部を決定的に追い詰めていることを日本の貿易赤字転落からみてとることができる。
 大破産する日本資本は延命のために、従来の比ではない大リストラに訴えようとしている。動労千葉を先頭にした民営化・外注化阻止、非正規職撤廃の闘いこそ、労働者階級の回答である。
 (富田五郎)

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月刊『国際労働運動』(430号7-1)(2012/06/01)

世界の労働組合

■世界の労働組合 イタリア編

イタリア労働総同盟

(Confederazione Generale Italiana del Lavoro:CGIL)

 ■概要

 イタリアで3大ナショナルセンターと言われるのは、イタリア労働総同盟(CGIL)、イタリア労働者組合総同盟(CISL)、イタリア労働者同盟(UIL)である。
 CISL、UILは、もともとCGILから分離してできた組織である。CGILは、第2次大戦後の1944年6月に、ファシズム独裁の再来を避けることを眼目に発足した共和体制の下、社会党、共産党、キリスト教民主党の3党合意に基づく「ローマ協定」により結成された。しかし、1947年のゼネストを頂点とする戦後革命をめぐる抗争の結果、1950年までにキリスト教民主党、社会党の支持者が脱退し、それぞれがCISL、UILを結成した。CGILの発足当時は3党で同数の執行委員を分け合っていたが、分裂後は共産党系幹部主導の労働運動組織となった。だが、イタリア共産党の解体(1991年)に伴い、現在は政治的には中立である。
 組合員数570万人以上(退職、失業組合員含む)を誇るCGILは、イタリアのみでなくヨーロッパ全体の中で最大のナショナルセンターであり、国際労働組合総連合(ITUC)や欧州労連(ETUC)に所属し、また経済開発協力機構・労働組合諮問委員会(OECD-TUAC)の会員でもある。CGILには13の産別組織が加盟している。主要な産別は@公務(保健衛生、国家公務員、地方自治体)、A金属産業、B建築・建設・材木、C民間サービス(小売、ホテル、レストランなど)、D農業・食品であるが、すべての産業を網羅している。本部をローマに置き、21州に地域組織を持ち、郡レベルでは120の地区労働評議会(カーメラ・デル・ラヴォーロ)がある。現書記長は2010年に女性初の書記長として選出されたスザンナ・カムッソである。

 ■市民に開かれた労働組合組織

 CGILは、「自由な結社(アッソシエーション)で連帯した集団の自発的保護」を規約で謳っているように、企業雇用の現役労働者のほかにも協同組合や自主管理形態の雇用者、失業者、未就労者あるいは雇用前の者、年金者、高齢者も組合員の対象としている。
 総同盟救援協会(INCA)と呼ばれるCGILの外郭団体は、市民の相談事務所として年金などの社会保障、社会福祉、医療などの無料の援助サービスや所得税の自主申告時のサービスを提供し、また失業者、主婦、年金者、市民、イタリア在住の移民、外国人労働者、非定型労働者への情報提供もしている。2010年の1年間でCGILのサービスの提供を受けた人たちは約1000万人を数えた。

 ■解雇・不安定雇用の規制緩和に反対して闘う

 1969年に、劣悪な待遇に置かれていた未組織労働者たちが起こした抗議運動がイタリア全土に拡がった。これが「熱い秋」と呼ばれる社会運動の盛り上がりであり、その結果1970年に「労働者憲章」が制定された。この「労働者憲章」の第18条は、従業員15人以上の企業が労働者を解雇した場合、裁判所が不当解雇と判断すれば、企業にその労働者の再雇用を義務づけている。
 しかし、緊縮財政を掲げたベルルスコーニ政権時代の2002年7月、CISLとUILを含むほぼすべての労働団体が、解雇に関する労働者憲章法18条の修正に合意する「イタリア協定」を政府と締結した。解雇規制の緩和は人間の「尊厳と権利」を奪うものだと批判してきたCGILは、ゼネストを呼びかけ、イタリア全土でゼネストが行われた。ローマでは300万人の労働者が決起し、戦後最大規模のデモとなった。
(写真 ローマの270万人の抗議デモ【4月4日】)

 ■拡大する反政府デモ

 財政危機の深刻化で崩壊したベルルスコーニ政権に代わって2011年に登場したモンティ首相(EU元欧州委員の経済学者)の緊縮政策のもとで、イタリアでは現在、連日のようにストライキが激しく闘われている。モンティ政権は、解雇規制を緩和する法案の国会通過を狙っているが、国民の間にはこの「労働改革」への反発は根強く、CISLやUIL傘下の労働者もCGILのストに合流を表明するなど抗議の動きが拡大している。
 つい先日の4月4日、政府の金融危機対策に抗議してCGILが呼びかけたデモには労働者、年金生活者、移住者、学生など約270万人が参加した。2002年のゼネストの時と同じ会場のローマのチルコ・マッシモ(古代の競技場)は、赤い帽子をかぶったデモ参加者でうめ尽くされ、横断幕には「違う未来をいっしょに作ろう!」、「新しいムッソリーニを倒せ!」と書かれていた。

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月刊『国際労働運動』(430号8-1)(2012/06/01)

国際労働運動の暦

■国際労働運動の暦 6月4日

■1989年天安門事件■

大衆決起に血の弾圧

中国スターリン主義権力は労働者の階級的決起に恐怖して大虐殺

 中国の天安門事件とは、中国のスターリン主義権力と労働者人民が真っ向から衝突した歴史的事件だ。6月4日は中国の戒厳軍が人民に銃口を向けて襲いかかった日だ。それに至る1カ月半にわたって100万人の闘いが繰り広げられた、中国人民の大衆闘争の歴史上も特筆すべき重要な闘いであった。それは「改革・開放路線」を進み、共産党支配のもとでの資本主義化を図ろうとする中国スターリン主義、ケ小平の本質を暴くものだった。
 そしてまた、天安門事件は、その年の秋から始まった東欧の大激動、ベルリンの壁崩壊に始まる、チェコスロバキア、ルーマニアなど一連のスターリン主義権力の崩壊、91年のソ連崩壊に至るスターリン主義の大破産の序曲でもあった。
(写真 天安門広場近くで戒厳軍の装甲車に火を付ける学生【1989年6月4日】)

●装甲車と戦車で踏み潰す

 6月4日早朝、装甲車と戦車を先頭に立て、一方から陽動作戦を行いながら反対方向から一挙に天安門広場に突入し、一列横隊に機関銃を据え付け、記念碑に立てこもる学生に一斉射撃を浴びせ、ハンストテントに寝ていた学生に対しては装甲車と戦車で踏み潰すという徹底的に反人民的・強圧的な攻撃を加えた。学生側はバスや道路標識を使ってバリケードを築き、火炎瓶と投石をもって果敢に応戦し、闘ったが、老人、子どもまで見境なく銃撃を浴びせてくる血の弾圧の前に鎮圧された。

●80年代「民主化」運動
 1978年、ケ小平は中国共産党の実権を掌握し、ケ・胡耀邦・趙紫陽の体制で「改革・開放」政策を本格化させた。経済改革と政治改革の一体化がケ小平自身によって提起され、80年代の半ば以降、趙紫陽が主導する形で政治改革が進められていた。
 こうした政府の動きの中で、多くの知識人や学生の「民主化」運動が80年代後半に活発になる。87年1月に経済の過熱成長と民主化運動の爆発を抑えることができなかった責任を問われて胡耀邦党総書記が失脚し、趙紫陽が党総書記代行となった。87年に趙紫陽は、「党・政の分離」を方針とし、行政機関における党組織の廃止を打ち出すにいたる。この結果、末端の工会も党の直接の統制から相対的に自由になっていった。そして89年4〜5月の天安門広場に発展する。
 89年4月15日の胡耀邦の死を契機に「民主化」要求運動が強まり、学生が指導する天安門広場での運動に労働者も合流していく。五・四運動70周年の5月4日、さらに5月17、18日には広場を埋めつくす百万人の大集会となった。

●労働者が闘いの主役
 天安門事件というと、多くの人は学生を中心とした民主主義を求める運動と規定する。だが、実際は、その底で、労働者階級が階級的怒りを爆発させ、団結を拡大し、続々と自主労組に組織されていたのだ。
 中国共産党指導部が一番恐れていたのが労働者の決起であった。それが総工会(中国政府の御用組合)の統制の外で始まっていた。
 自主労組は、中国政府を「スターリニストの独裁」とあからさまに批判し、団結を呼びかけた。「愛国運動」「民主化運動」にとどまる学生と、「政府の打倒」を掲げてゼネストをも志向する労働者の間に方針の相違が生まれた。
 中国共産党・政府は労働者の階級的な団結と闘いの発展の中に、スターリン主義打倒のプロレタリア革命の未来を見た。労働者の虐殺を行った最大の根拠がここにあった。
 天安門事件以降、中国スターリン主義は経済での「改革・開放」政策は急速に進めながら、政治改革はストップさせ共産党の独裁、愛国教育の徹底、そして工会を通じた労働者支配の強化を進めていった。
 今日の広がる格差は、もはや天安門事件の時代の比ではない。年間10万件ともいわれるストライキや労働争議が、中国全土で多発している。青年労働者の闘いは、天安門事件の時の労働者の闘いを引き継ぎ、総工会や権力の暴力的支配体制と真っ向から対決している闘いである。 
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 天安門事件日誌

4.15 中国共産党の前総書記胡耀邦が死去
4.22 人民大会堂で党主催の追悼大会。胡の名誉回復を要求して20万人が北京の天安門広場に集まる
4.22 西安市で学生デモが政府庁舎に突入
5.4 各地で5・4運動記念デモ
5.13 学生ら、天安門広場でハンスト突入
5.17 天安門広場に100万人
5.18 自主労組結成始まる
5.20 北京に戒厳令
5.21 香港で100万人の支援デモ
5.23 北京で100万人デモ
6.3 政府が「反革命暴乱」と規定
6.4 戒厳部隊が出動、天安門広場を占拠中の学生・市民を戦車で制圧、死者数百人
6.24 中国共産党13期4中全会、趙紫陽総書記を〈暴乱〉に多大の責任ありとし、全職務から解任

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月刊『国際労働運動』(430号9-1)(2012/06/01)

日誌

■日誌 2012 3月

1日東京 江戸川区で下町デモ
放射能を考える下町ネットワークは「江戸川区は放射能汚染を隠すな! 下町デモ」を行った
3日福島 動労水戸平支部 いわきで講演会
動労水戸の平支部が、「原発事故と命の絆(きずな)を考える3・3いわき講演会」を開いた
3日東京 3・8国際婦人デーに150人
3・8国際婦人デー行動「命より金もうけの社会を変えよう!女たちの東電デモ&集会」が東京労組交流センター女性部や婦人民主クラブ全国協議会関東ブロックの会員を始め青年、学生ら150人の結集で大高揚した
4日千葉 動労千葉 12春闘勝利へ総決起集会
12春闘勝利に向けた動労千葉総決起集会が、千葉市民会館で開催された
4日宮城 国際婦人デー宮城集会
東北の国際婦人デー行動として仙台で3・4宮城集会が開かれた
5日東京 最高裁、福嶋昌男同志の上告を棄却
最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、迎賓館・横田爆取デッチあげ弾圧裁判において福嶋昌男同志の上告を棄却する反動決定を下した
6日東京 星野同志ビデオ国賠全証拠開示を
東京地裁民事第45部(石井浩裁判長)で星野文昭同志のビデオ国賠訴訟の第5回口頭弁論が開かれ、検察が持つ全証拠の開示を要求した
7日東京 国労組合員資格確認訴訟口頭弁論
国労組合員資格確認訴訟の第2回口頭弁論が、東京地裁民事第11部(白石哲裁判長)で開かれた
7日大阪 国際婦人デー関西集会、橋下打倒へ
エル大阪で、「2012年3・8国際婦人デー集会」が開催され100人が結集、3・11福島県民大集会と3・18八尾北・西郡決戦に総決起を宣言
10日千葉 動労千葉 銚子地区で総行動
動労千葉銚子支部の呼びかけで、銚子地区総行動が行われた。100人が結集して闘い抜いた
11日福島 郡山に1万6000人が大結集
「原発なくせ!」「この社会を変えよう!」。福島県内を始め全国から郡山市開成山野球場に1万6千人の労働者民衆が集まった。「フクシマの思い」を新たにし、怒りを増幅させ、全国・全世界に反原発の叫びを発した
10、11日郡山 原発いらない地球のつどい
「原発いらない!3・11福島県民大集会」を前にして、郡山市で「原発いらない!地球(いのち)のつどい」が開催された
11日 全国各地で3・11一周年闘争
北九州市 5000人が集まったメディアドーム前公園での「さよなら原発北九州集会」には、黒田征太郎さんライブペイントなどが出された
福岡市 須崎公園で「さよなら原発福岡集会」が5000人の参加で開かれ、九電本店を「人間の鎖」で包囲した
長崎市 中央公園では「さよなら原発3・11ナガサキ集会」が開かれ、1000人が参加した
佐賀市 玄海原発の地元・佐賀市では、「忘れないで3・11集会」が180人で行われた
佐賀県玄海町 650人が集会。玄海原発再稼働に「絶対反対」の強い意志を表した
高崎市 「力あわせる200万群馬/3・11さよなら原発アクション」が2500人で大成功した
福井県敦賀市 「さよなら原発・福井県集会IN敦賀」が開催され、1200人が参加した
札幌市 「さよなら原発1000万人アクション北海道」実行委による集会に2500人が集まった
愛媛県伊方町 伊方原発ゲート前では「原発さよならえひめネットワーク」呼びかけの抗議集会が70人で行われた
松山市 「伊方原発を止める会」による学習会とデモが行われ、300人以上が参加した
青森市 市文化会館で、「さようなら原発・核燃3・11県民集会」が約1700人が参加した
東京 日比谷公園や国会周辺の「3・11東京大行進」などに約1万人が参加した
大阪市 中之島公園や扇町公園で1万5000人が「なくそう原発」などと訴える集会を行った
名古屋市 「さようなら原発・明日につなげる大集会」は約5000人が参加し、浜岡原発の危険性を訴えた。豊橋市でも集会が行われた
広島市 中央公園での「さようなら原発」集会などに2000人以上が集まった
沖縄県那覇市 NAZEN沖縄の結成集会が那覇市の八汐荘で開かれた
<全世界で、全原発の廃止を求める統一行動>
全世界の21カ国、132の都市に及び、原発とそれを推進する各国政府・電力資本への根源的な怒りがたたきつけられた。
ドイツ 全土で数万人が「原発即時停止」を掲げて集会・デモを行った。アッセとブラウンシュバイク間で2万4000人が「核廃棄物処理問題は解決不可能だ」と訴えた。ハノーバーでは、ゴアレーベンの現地闘争団体をはじめ数千人が結集した。ブロックドルフ原発の周りを3000人が包囲し、グロナウ原発、ネッカーウェストハイム、グルントレミンゲンなどで、それぞれ数千人がデモした
フランス 6万人が南部のリヨンからアビニョンまでの235`をつなぐ「人間の鎖」行動を行った。バイヨンヌ、ボルドー、ブルゴーニュ、リール、ナントなどで人間の鎖行動が行われ、パリやフェッセンハイム、メッツでもデモが行われた
イギリス 西部のサマーセット州ヒンクリー・ポイント原発周辺で、1000人以上の労働者住民が、24時間原発封鎖デモ≠行った
スイス 5基の原発の即時廃止を要求して大規模なデモが行われた。中部のミューレベルク原発に対しては5000人以上がデモ行進した
アメリカ 1月31日に放射能もれを起こし、運転停止のトラブルが相次いだカリフォルニア州サンオノフレ原発に対し、300人がデモを行った。サンフランシスコでは、日本領事館と原子力産業のベクテル本社へのデモ、国際港湾倉庫労組第34支部のホールで福島原発事故1周年の抗議集会、ニューヨークでは400人が5番街をデモした
オーストラリア シドニーで数百人、メルボルンでは500人が反原発デモを行った。ウラン採鉱企業のBHPとリオ・ティント社に対し、「ウラン鉱の採掘をやめろ」と抗議行動を展開した
台湾 台北で、「さよなら原発」集会を開き、約5000人が総統府までデモ、台中市や高雄市でも集会があり、3都市で約1万人が参加した
14日 西郡支部、住宅明け渡し強制執行を粉砕
部落解放同盟全国連合会西郡支部の岡邨(おかむら)洋支部長宅への住宅明け渡し強制執行を中止させる大勝利をかちとった
16日広島 動労西日本 広島と五日市でスト
動労西日本は12春闘ストライキを闘った。スト拠点のJR五日市駅とJR広島支社前で街頭宣伝を行った
18日大阪 八尾北・西郡に600人が総決起
八尾市西郡に地元を始め全国から労働者と部落大衆、住民、学生など600人が続々と結集した
18日千葉 3・25へ千葉三里塚集会開く
千葉市のDC会館で第6回千葉県三里塚集会が実行委員会の主催で開かれた
22日東京 日教組臨大 労組交流センターが訴え
日教組第100回臨時大会が日本教育会館で開催された。全国労組交流センター教育労働者部会は会場前に登場し宣伝活動を展開した
25日千葉 労農連帯で農地死守
三里塚芝山連合空港反対同盟が主催する三里塚全国総決起集会が開かれた。集会は、@福島と連帯し原発再稼働を阻止する、A市東孝雄さんの農地を守る、という二つの闘いが結合した総決起の場になった。前日の雨もあがり、東峰十字路北の市東さんの畑を会場に、全国から労農学人民1055人が結集した
23日茨城 動労水戸、被曝労働強制やめろとスト
動労水戸は、JR東日本による被曝労働強制と検修業務外注化に反対して春闘ストライキに立ち上がった
24日東京 鈴コン闘争支援共闘(準)が発足
「解雇撤回!非正規職撤廃!東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会闘争支援・連帯集会」が赤羽会館小ホールで開催され、195人が集まり大成功した
24日東京 日比谷集会の先頭にNAZEN
野田政権が大飯原発3、4号機の再稼働への動きを強めるなか、「再稼働絶対反対!」の労働者人民の怒りの声が上がった
24日北海道 泊原発地元の岩内で1500人集会
「さよなら原発1000万人アクション北海道」の主催で反原発集会が岩内町で行われた
26日新潟 柏崎刈羽原発再稼働反対の申し入れ
東京電力柏崎刈羽原発6号機が停止した日に、「脱原発100万人アクションin新潟」が13人で同原発に対して再稼働反対の申し入れを行った
26日千葉 市東孝雄さんの行政訴訟・農地法裁判
三里塚芝山連合空港反対同盟・市東孝雄さんの行政訴訟・農地法裁判が千葉地裁民事第3部(多見谷寿郎裁判長)で開かれた
27日大阪 西郡明け渡し強制執行再び阻止
部落解放同盟全国連合会西郡支部の岡邨洋支部長宅への2回目の住宅明け渡し強制執行を再び強制執行を中止させた
28日千葉 動労千葉 強制配転通知に怒りの反撃
動労千葉は、佐倉運輸区・銚子運輸区発足に向けた強制配転の事前通知強行を弾劾し、総決起集会とJR東日本千葉支社への抗議行動に決起した

 (弾圧との闘い)

13日東京 転び公妨で卑劣な弾圧
警視庁公安部は、立川市内で、12年も前の旧運輸省幹部宅への徹底弾劾闘争を口実に、爆発物取締罰則違反なる罪名でA同志宅を家宅捜索するとともに、公務執行妨害罪でA同志を不当逮捕した
22日東京 A同志勾留理由開示公判徹底弾劾
東京地裁立川支部でA同志に対する勾留理由開示公判が行われ、多くの労働者、学生、同志たちが不当逮捕で勾留する裁判所を弾劾した
30日東京 「転び公妨」を粉砕、A同志を奪還
立川市内で転び公妨のデッチあげで逮捕されたA同志を奪還した。大勝利だ

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月刊『国際労働運動』(430号A-1)(2012/06/01)

編集後記

■編集後記

 脱落日帝と野田政権は、大恐慌と原発事故から逃れられない。だから消費大増税、原発再稼働、そして戦争・改憲攻撃で突破しようとあがいている。しかし日帝には、帝国主義日本を再生する力がもはやない。
 3・11郡山での原発いらない∞再稼働やめろ≠フ1万6千人決起と全国各地での10万人決起は、労働組合と労働運動をめぐる闘いを基礎とした反原発闘争の歴史的高揚であり、巨大なうねりであった。
 国労郡山工場支部は国鉄を始め全国の仲間に、「労働組合と市民がひとつとなり、開成山公園に2万人が集まれば、政府・東電に責任を取らせる闘いや、原発をとめる闘いの大きな力になっていくはずです。組合旗を掲げて開成山球場に結集してください」とアピールを発した。この決意をさらに実践し発展させて4〜6月決戦を闘おう。

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