2010年5月24日

5・18日比谷 “裁判員制度にとどめ刺そう” 1800人の大集会

週刊『前進』06頁(2440号6面1)(2010/05/24)

5・18日比谷 “裁判員制度にとどめ刺そう”
 「大運動」が1800人の大集会
 広がる“絶対つぶせる”の確信

 5月18日夕、東京・日比谷公会堂で「裁判員制度にとどめを! 全国集会」が1800人の参加で開かれた。主催はこの間、全国で廃止運動を闘ってきた「裁判員制度はいらない!大運動」。破綻の危機を深める裁判員制度にとどめを刺すため、さらに奮闘することを誓い合った。

 斎藤九大名誉教授が講演

 ”現代の赤紙”にとどめを刺そうと、会場には労働者人民が続々と詰めかけた。この日は国民投票法の施行日でもあり、「憲法改悪を絶対に許さない!」との決意を込めて集会は開かれた。
 開会あいさつを大運動呼びかけ人の今井亮一さん(交通ジャーナリスト)が行った。今井さんは、「この1年、運動は全国で闘われ、”制度はいらない、廃止せよ”の声は高まるばかりだ。10カ月余で裁判員裁判1662件中、まだ1218件が残っており、それに今年の起訴件数が加わっていく。裁判所職員から”たまらない つくった人がやってみろ”と悲鳴が上がる有様だ。世論調査で『義務でも行くつもりはない』と答えた人が25%もいる。制度廃止を私たちの力でかちとろう」と呼びかけた。
 続いて、メイン企画として、九州大学名誉教授(憲法学)の斎藤文男さんが「この国をどう変える〜『市民参加』の裏にあるものは〜」と題して40分間の講演を行った。
 斎藤さんは、裁判員制度は憲法のどこにも定められていない義務を国民に課し、国家による合法殺人に国民を動員するものであると批判、また「裁判所の一部民営化であり、裁判員は日雇いの民兵だ」と弾劾した。そして制度の狙いを、「市民が治安維持の片棒を担ぐものであり、”下からの治安国家づくり”だ。これをとおして福祉国家から治安国家への転換を狙っている」と断罪した。だからこそ「裁判員制度は運用上の手直しでよくなるとかいうものではなく、絶対にやめさせなければならない」ときっぱりと述べ、「憲法の”思想・良心の自由”という権利を行使して、制度を立ち枯れさせよう」と締めくくった。
 問題点と政府の狙いを分かりやすく述べた斎藤さんの講演は、参加者に圧倒的な確信と闘いのエネルギーをつくり出した。参加者は長く大きな拍手でこたえた。
 続いて弁護士の遠藤きみさんが特別アピールを行った。5年前まで裁判官だった遠藤さんは、制度が裁判所職員に大変な負担を強いるものであり、どこの裁判所でも処理し切れず混乱していることを暴いた。

 各界から多彩な怒りの発言

 さまざまな分野で活躍する人びとが裁判員制度への思いを語った。漫画家の蛭子能収(えびす・よしかず)さんは「とにかく反対。いきなり裁判の仕事をやれと言われても無理。職業選択の自由があるはず」ときっぱり。福島貴和さん(善光寺玄証院住職)は「人間は人間を裁けない。それが宗教の大原則です。宗教者は正義を振り回してはいけない」。映画監督の崔洋一さんは「感情や世論に流されず真実に向き合える保証がない限り、この制度はリンチであり、虚構の正義の積み重ねにしかならない。一市民として最後まで反対したい」と語った。
 福岡の大分哲照さん(浄土真宗本願寺派福岡時対協会長)は、「福岡では裁判員になった女性が審理で解剖写真を見せられてPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、10分間以上は車の運転が続けられなくなって退職を余儀なくされた。生活権さえ奪う裁判員制度に最後まで反対します」と決意を述べた。
 4氏のアピールは、それぞれの生活と活動の場からの、怒りと危機感のこもった発言だった。
 岐阜の白木章さんのビデオアピールが上映された。白木さんは裁判員に選ばれ昨年12月の裁判終了後の記者会見で「まるで徴兵制のよう。こんな制度は一刻も早くなくならねば」と述べた果樹園の経営者だ。ビデオでも、制度に反対する思いを語った。
 続いて昨年と今年の裁判員候補者ら8人が登壇した。組合員4人と家族1人に通知が届いた動労千葉も登壇、「裁判員制度は団結破壊。労働組合こそ反対運動の先頭に」とアピールした。
 圧巻だったのは、全国で闘う人々のリレーアピール。横断幕とのぼりを掲げ舞台を埋めて勢ぞろいした。ス労自主、法大文化連盟を始め、北海道から九州まで20以上の団体が闘争報告と闘いの決意を表明した。
 最後に、呼びかけ人の高山俊吉弁護士が次のようにまとめた。
 「国民の8割が反対している。だから、この闘いはまったく、茨の道ではない。最高裁の竹崎博允(ひろのぶ)長官が先日の記者会見で、判決が起訴数の4分の1にとどまっていることにふれ、『関係者が過度に慎重になっているのではないか』と述べた。つまり『適当にやれ』ということだ。”この国を大事”と思う心を植え付けるのが裁判員制度であり、改憲攻撃そのものだ。戦争と改憲の攻撃が強まっている今だからこそ、絶対反対は時代の先端を行く闘いだ。みんな頑張ろう。私たちは強い。制度に幕を引く最後の闘いを」
 参加者は高山さんの発言を圧倒的な拍手で確認し、一層の闘いを展開することを誓った。
 集会の大成功を引き継ぎ、国鉄闘争、安保・沖縄闘争と一体の闘いとして、裁判員制度廃止へ闘いを強めよう。