ZENSHIN 2003/12/08(No2129 p08)

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週刊『前進』(2129号1面1)(2003/12/08)

革共同の12月アピール
労働運動と党建設の大前進を
自衛隊のイラク派兵阻止 小牧・北海道現地闘争に立て
 年金改悪・国民保護法制・治安弾圧をはね返し12月総決起へ

 この12月の闘いは、11・9労働者集会の成果を打ち固め、その地平をさらに発展させ、イラク反戦闘争と04春闘を軸とする04年1〜3月期の闘いの勝利の展望を切り開く決定的な位置をもっている。「11・9の後半戦」として「労働者の中へ」の闘いをやりぬき、12月自衛隊のイラク派兵阻止闘争への総決起、国労5・27臨大闘争弾圧の8被告を始めとする全獄中同志の奪還、年末一時金カンパと保釈金カンパ闘争をかちとろう。

 第1章 「11月」の高揚が新たな激突情勢を切り開いた

 11・9労働者集会の成功に対して日帝国家権力が襲いかかってきている。まさに革命の前進に対して反革命が密集してきたのである12月決戦の第一の課題は、この国家権力の弾圧をはね返し勝利するために、いっそう深く労働者人民の中に入り、根を張っていくことである。これが一切の前提である。
 敵権力の攻撃の一つは、11月17日のJR新小岩駅前で毎週月曜日に行われてきた『前進』販売活動に対する「軽犯罪法」違反を口実としたデッチあげである。「自衛隊のイラク派兵阻止」というのぼりを駅前広場のポールにしばりつけたとして20人の公安刑事が襲いかかり、A同志を逮捕した。これは、労働者人民に『前進』を販売することを禁圧する弾圧である。また、「軽犯罪法」は、戦前の治安法規で戦後まで生き延びた三つの法律の一つである警察犯処罰令が名称変更されたものである(他の二つは、爆発物取締罰則と暴力行為等処罰に関する法律)。そして警察庁は、8月に出した「緊急治安対策プログラム」の中で「軽犯罪法を使った取り締まりを積極的に行う」と指示していた。その発動として今回の弾圧はある。
 もう一つは、11月24日の「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」を口実としたデッチあげである。これまでに3人が逮捕され、2人が指名手配され、前進社本社を始め7カ所が家宅捜索されるという大規模な弾圧である。その逮捕や家宅捜索にものすごいエスカレーションがある。
 「01年9・11」―「03年3・20」情勢下、ますます強まる帝国主義間争闘戦の中で、日帝・小泉政権はその体制的危機ののりきりを、自衛隊のイラク派兵と大資本攻勢―階級的闘いの解体にかけてきている。その攻撃は労働者人民の不満と怒りを確実に高め、その秘められた戦闘力とエネルギーは社・共、連合・全労連・JR総連の既成指導部の反動的制動をのりこえて必ず爆発する。11・9労働者集会の現実の中に革共同がその決定的「触媒」となることをみてとり、それに恐怖した国家権力が治安弾圧攻撃にうって出てきたのだ。
 昨年の10・7弾圧(国労5・27臨大闘争弾圧)と一連の弾圧としてとらえ、労働組合運動・機関紙活動・党活動の基盤そのものへの弾圧攻撃と闘って勝利しよう。この弾圧攻防自体に勝ちぬき、自衛隊のイラク派兵阻止など12月の革命的大衆行動をうちぬき、社・共に代わる労働者党として革共同を建設することで反撃しよう。

 第2章 不屈に闘うイラク人民と連帯し参戦阻止せよ

 12月決戦の第二の課題は、自衛隊のイラク派兵阻止闘争に総決起することである。
 国際情勢を根本で規定しているのが米帝のイラク侵略戦争である。米英軍のイラク軍事占領に対するイラク―ムスリム人民の闘いは民族解放・革命戦争的発展のコースに入った。
 11月12日、米軍が新たな掃討作戦「アイアンハンマー」を開始し、バグダッドを空爆した。空爆は7日から始まっていたが、米軍が首都すら制圧できていないことが暴露されたのである。
 その後の大きなゲリラ戦をみていく。12日、南部ナーシリアのイタリア軍駐屯地への自爆戦闘。15日には北部モスルで米軍ヘリコプター2機が撃墜された。この間4件5機のヘリが撃墜され、ヘリの行動が米軍の弱点に転化してきている。
 20日のブッシュ大統領のイギリス訪問と米英首脳会談を狙いすましたように、トルコのイスタンブールでイギリス領事館と英系銀行への自爆戦闘が同時に敢行された。この間アラブ諸国のサウジアラビア、モロッコでもゲリラ戦が行われてきたが、イスラム諸国でありNATO加盟国であるトルコへの戦闘の拡大の意味は大きい。
 21日には、バグダッドで石油省と欧米メディアや企業の拠点となっているホテルにロケット弾が撃ち込まれた。22日、バグダッド空港を飛び立った民間貨物機にミサイルが命中し緊急着陸。同日、イラク中部の2都市で警察署に自爆戦闘が行われた。
 イラク―ムスリム人民の戦いは当初の個別分散的な状況を突破し、攻撃対象や攻撃方法の選択肢を多くもち、間断なき戦闘と戦略的エスカレーションを実現するという本格的なゲリラ戦争の段階に入りつつあることが示されている。
 こうしたイラク情勢に必死に対応するものとして、ブッシュ大統領の訪英と米英首脳会談(20日)、ラムズフェルド国防長官の訪日・訪沖・訪韓(14〜18日)が行われた。
 米英首脳会談では「イラク宣言」が出され、そこで「米英はイラクへの長期的な関与を再確認する」として、04年6月末の暫定政府樹立、05年末までの憲法と新政府樹立以降も「イラクに駐屯し続ける」と永続的な軍事占領方針を確認している。
 これに対してイギリスの労働者人民は20日、20万人の抗議デモに決起し、ブッシュ大統領の像をひき倒すなどして不屈に対決する決意を明らかにし、ブレア政権を追いつめている。

 派兵を確約した小泉

 他方、小泉首相はラムズフェルドとの会談で、「イラクをテロリストの巣窟(そうくつ)にしてはならない」「日本としてできるだけのことはやるつもりだ」と自衛隊のイラク派兵を約束した。石破防衛庁長官は「自衛隊の能力を活用したふさわしい責任の履行を早期に実現したい」と、より積極的な態度を表明した。
 これに対して16日、「(日本が軍隊を派遣すれば)われわれの攻撃は東京の心臓部に達するだろう」というアルカイダを名乗る声明が発表された。そして、同様の声明が21日にもアラブの報道機関に届けられた。小泉首相は「テロとの戦いは全世界共通の戦いだ」(16日)、「テロに屈してはならない」(21日)と自衛隊のイラク派兵を強行する姿勢を明らかにした。
 小泉政権は、イラクでのゲリラ戦争の激化に動揺している。だが日帝としては、時期の幅が一定程度あるにしろ自衛隊派兵を強行する以外にない。そこにしか帝国主義間争闘戦での敗退と日米関係の緊張激化を避ける道はないからだ。
 11・30広島・呉闘争を突破口に、12月小牧・北海道現地闘争に立とう。先遣隊派兵阻止決戦に全力で決起しよう。
 小泉政権の戦争と大失業攻撃に対する労働者人民の怒りが噴出し始めている。街頭や労働組合で呼びかけて、自衛隊のイラク派兵阻止の署名運動を推進しよう。
 アメリカの反戦団体ANSWERはイラク侵略戦争開戦1年の来年3月20日に国際統一行動を呼びかけている。11・9労働者集会でかちとった日米韓の労働者国際連帯の力をイラク反戦闘争において共同闘争として発展させ、3・20に日本で百万人規模の労働者人民の決起を実現しよう。

 名護新基地建設阻止

 イラク情勢の泥沼化の中で、ラムズフェルドの訪沖を契機に、米帝の沖縄政策が転換してきている。すなわち、沖縄人民の闘いを圧殺し、日帝による沖縄の売り渡しをさらに促進し、米軍基地の永久化とこれまで以上の自由使用を狙っているのである。その最大の攻撃として、名護新基地の建設がある。来年1月に予定されているボーリング工事着工との闘いをもって名護をめぐる攻防に全面的に突入しなくてはならない。
 イラク侵略戦争に向けた全土基地化の攻撃と対決して、沖縄を始め三里塚、北富士、関西新空港などでの闘いを強化しよう。
 米帝の北朝鮮侵略戦争策動は、一方で、六カ国協議に北朝鮮をとりこみつつ、他方で、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)理事会が軽水炉建設事業を1年間中断すると決定する(21日)など瀬戸際政策として展開されている。
 そして小泉政権は同じ21日、「国民保護法制の要旨」を決定した。来年通常国会での、米軍支援法も含めた有事法制制定の攻撃との闘いに向けて、「完成させない・発動させない・従わない」という闘う態勢を築き上げていこう。
 また来年の通常国会では、教育基本法改悪が策動されている。これは侵略戦争に労働者人民を動員する大攻撃であり、改憲の一里塚である。この闘いを一大政治決戦として爆発させる中で、日教組の階級的再生をかけた教育労働運動の発展をかちとろう。

 第3章 闘う動労千葉守りぬき資本攻勢粉砕の陣形を

 12月決戦の第三の課題は、日帝ブルジョアジーの大資本攻勢と労働組合解体攻撃と闘い勝利することである。
 まず国鉄決戦攻防である。国労9月定期大会後、北海道からの脱退者が出たのを始め、国労自己解体情勢が進行している。国労本部による闘争団切り捨てと国鉄1047名闘争解体の策動が強まっている。国労の存亡のかかった局面において、闘う主体の側にこれを突きぬけ、のりこえていく路線と組織が求められている。今こそ、国労本部を打倒し、国労の革命的再生をかちとろう。国労5・27臨大闘争弾圧を許さない会の賛同会員を国労内で拡大し、8被告を奪還して、国鉄決戦勝利の展望を切り開こう。
 動労千葉に対する組合解体攻撃との闘いは、国鉄決戦のもう一つの大攻防である。動労千葉は、12月習志野電車区廃止攻撃にストをもって反撃に立ち上がろうとしている。今こそ、動労千葉支援・防衛の闘いに決起しよう。
 次に全逓決戦情勢である。12・1〜2全逓臨時大会において、中央本部は組合の名称変更を決議しようとしている。これは戦闘的・階級的労働運動からの転向と変質の宣言であり、全逓労働者を売り渡す策動である。絶対粉砕あるのみだ。闘う全逓労働者の力で本部を打倒し、殺人的な深夜労働の強化の攻撃をはね返し、小泉政権の郵政民営化攻撃と闘う態勢を築き上げよう。
 そして都労連攻防である。石原都政の民営化と行革リストラ攻撃は都労連解体攻撃として全面的に激化している。国鉄1047名闘争支援陣形の最大勢力が都労連であることから、これは国労解体策動と一体である。都労連は秋闘では、賃下げと退職金削減などを受け入れて11月18日のストライキを中止した。ストなし妥結をのりこえ、都労連の階級的団結を今こそうち固めよう。
 さらに日教組決戦である。石原都政下で教育と教育労働者に対する攻撃が激化している。「日の丸・君が代」強制、右翼都議を先兵とする教育内容への露骨な介入、学校と教職員に対する管理統制といった攻撃が強まっている。これらすべてが、労働組合の影響力の一掃と組織解体の攻撃としてかけられてきているのだ。既成の労働運動指導部の屈服と無力化をのりこえて、職場・組合の団結と抵抗・反撃の闘いをつくりだし、日教組の階級的再生をかちとろう。
 その他すべての産別においても、労働者が団結し闘わなければ生きていけない、労働組合の死活をかけたぎりぎりの攻防が闘われている。これらすべてに勝利していく核心点が11・9労働者集会の団結と国際連帯の力にある。そのことを訴えるために、『11・9全国労働者総決起集会報告集』を、11・9に向けた闘いを上回る勢いで労働者・労働組合に持ち込もう。

 年金改悪粉砕しよう

 今回の総選挙の争点の一つが年金問題だと言われたように、04春闘を始めとして年金改革が重大テーマとなってきている。年金改革案については政府・与党内、および政府とブルジョアジーとの内部矛盾によって確定まで難航している。
 04年改革の最大の特徴は、これまでの部分的な見直しや調整とは違って、年金制度の基本構造の改革だということにある。その一つは、保険料の値上げと給付額の引き下げである。いわゆる「保険料固定方式」では、厚生年金のモデルケースで、現在13・58%の保険料率を2022年ころまでに20%(約1・5倍)まで引き上げ、それで固定する。他方、年金給付額は、最低でも12%、最高なら24%の引き下げになる。引き下げの終了年度は2032年ないし2043年とされている。30〜40年間引き下げ続けるということである。日本経団連はこれにも反対して、資本家の負担を減らすために保険料率は15%以下にしろと主張している。そうなると、給付額は30%もの引き下げになる。
 二つは、「マクロ経済スライド」という新制度をつくることで、物価以外の少子化率や経済成長率などの変動を口実として、すでに年金を受け取っている人の給付額をも自動的に切り下げるということである。
 その他、「短時間労働者の厚生年金適用拡大策」や「国民年金保険料の徴収強化策」といったかたちで、低所得の労働者や零細・小企業の経営者からも保険料をとることが盛り込まれている。
 また日本の年金制度は、01年3月末の積立金の累積額が約196兆円(年金給付額の5・4年分)あり、それが財政投融資にまわされているという特徴をもっている。年金制度はじつは労働者人民からの収奪機構なのである。
 こうした年金制度を改悪する狙いは、日帝の侵略戦争参戦に対応した戦時財政に転換していくことにあり、それは戦前の歴史からも明らかである。教育、福祉・民生関連の予算が減らされ、戦争と戦争体制関係の予算が増やされている中での年金改悪だということである。
 他方、年金改悪は、日経連路線の終身雇用制解体攻撃そのものであり、一個の大資本攻勢である。また奥田ビジョンの攻撃として、年金の国庫負担を増やすという口実のもとに消費税増税がたくらまれている。
 その裏で資本家の負担を減らすことが狙われており、年金改悪攻撃の核心はあくまでも企業を救済し、労働者に犠牲を転嫁しようということにある。
 職場や街頭で労働者人民の声を聞くと、その不満と怒りが年金改悪にむかっている。年金改悪攻撃が、小泉政権の戦争と大失業攻撃と一体のものであることを暴露しぬき、小泉政権打倒へ労働者人民の決起をかちとろう。

 党の強化と拡大を

 12月決戦の第四の課題は、弾圧攻防の勝利、機関紙・財政闘争をとおして党建設の闘いの画期的な前進をかちとることである。
 まず何よりも、11・9労働者集会の意義と成果、切り開いた展望と課せられた飛躍の課題を全体的にも個別的にもしっかりと確認し、新指導路線での一致と党の自己変革をかちとり、次の実践に踏み込んでいかなくてはならない。〈路線的一致→方針形成→実践→総括→路線的一致の深化→……>のサイクルを確立して、新指導路線の前進をかちとろう。
 二つに、第一の課題として確認したように、日帝国家権力の弾圧との闘いに勝利することが一切の前提である。
 三つに、機関紙拡大闘争への取り組みである。11・9労働者集会への参加者数と『前進』読者を獲得する闘いには相関関係があること、労働組合役員や活動家の獲得をめぐる党派闘争において『前進』こそが決定的な武器であること、大衆的なパンフレットと『前進』を組み合わせたオルグが効果的であることなどの教訓がある。労働組合活動家が『前進』購読の勧誘を待っているのに、党員の側が遠慮しているという例が少なくなかった。問題は『前進』を持ち込むべき主体の側にあるのだ(本紙2126号5面「機関紙拡大闘争に取り組み労働者細胞を建設しよう」参照)。
 四つに、年末一時金カンパ闘争、獄中同志奪還カンパ闘争などの財政闘争に勝利することである。職場の仲間に、さらにこの間、交流を深めた多くの労組活動家にカンパ闘争への協力を大胆に訴えよう。また、11・9総選挙後の街頭情勢は一変している。翼賛選挙そして小泉政権の自衛隊のイラク派兵や年金改悪への怒りが噴き出し、署名とカンパが集まっている。これは労働者人民の政治意識と行動が活性化していることの氷山の一角である。今こそ、「労働者の中へ」の闘いの最大の環としてカンパを訴える闘いに立とう。
 総じて、こうした闘いをとおして04年の革命的大衆行動(政治闘争、労働運動、革命的議会主義)を労働者人民の先頭に立って闘う革共同の戦闘態勢を築き上げよう。

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週刊『前進』(2129号1面2)(2003/12/08)

不当逮捕・捜索を徹底弾劾する 東京・福島・仙台など 警視庁の暴挙許すな

 11月17日に東京・JR新小岩駅前で『前進』販売を準備中のA同志を「軽犯罪法」違反で不当逮捕(前号既報)した警視庁は、24日には自動車登録に関する「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」をデッチあげ、新たにB同志ら3人を不当逮捕した。そしてこの二つの弾圧を口実に24日、前進社本社(東京都江戸川区)と「都政を革新する会」事務所(同杉並区)を家宅捜索し、25、26日にも仙台や福島の事務所などへの不当捜索を強行した。警視庁はさらに弾圧の拡大を狙っている。(28日にA同志を奪還した)
 今回の逮捕・捜索はまったく違法・不当なものであり、逮捕された同志たちは百パーセント無実である。革共同を弾圧し、活動家を逮捕するために「事件」をねつ造し、強行された政治弾圧である。
 何よりも直接的には、3労組呼びかけによる11・9労働者集会の大爆発が日帝権力に激しい打撃を与えたのである。日帝権力は、ここに「革命のヒドラ」を見て、労働者人民の先頭で闘う革共同に弾圧を強めているのだ。絶対に許すことはできない。警視庁は直ちに弾圧をやめろ! 逮捕した同志らを釈放しろ!
 わが革共同はこの不当きわまる弾圧に猛然と怒りを爆発させ、全党が火の玉となって弾圧粉砕へ総決起する。そして自衛隊のイラク派兵を阻止し、労働者国際連帯の闘いを壮大に発展させ、帝国主義打倒・プロレタリア世界革命の闘いに必ず勝利する。
 権力は焦りと危機感にかられて暴力性むき出しに家宅捜索と不当逮捕を強行した。前進社本社のドアの破壊を試み、杉並の事務所では窓枠を破って侵入しようとした。だが、同志たちの戦闘的で原則的な闘いによって、権力の暴力的襲撃は粉砕された。
 今回の弾圧は破防法型の弾圧であり、絶対に許されない。捜索に来た警視庁の刑事は、「容疑」について「組織的に行っている」と強調し、革共同が組織として団結して闘っていること自体を「犯罪」と見なしてきた。また『前進』バックナンバーの特定の数号を「『前進』の拡大を呼びかけているから」という理由で押収していった。
 これは人民の団結そのものを「犯罪」として弾圧する共謀罪の先取りであり、また自由な出版・言論活動に対する大弾圧である。日帝・警視庁は『前進』の影響力の拡大に危機感を深め、『前進』の発行・販売自体をつぶそうとしてきている。
 この攻撃はまた、戦争反対の言論と運動を押しつぶし、労働者人民をイラク・北朝鮮侵略戦争に屈服させようとするものである。侵略戦争の凶暴性に対応した戦時下の治安弾圧である。
 だが、どんな凶暴な弾圧も労働者人民と革共同の前進を阻むことはできない。 今こそ党の戦闘体制を圧倒的に強化し、新指導路線のもとに、労働者階級の中に深く根を張って闘おう。一切の弾圧を粉砕し、獄中の全同志を奪還しよう。

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週刊『前進』(2129号3面1)(2003/12/08)

国労弾圧 8被告の年内奪還を
11・21公判 酒田委員長が携帯で弾圧要請 “逮捕できないですかね” ビデオに通話の声
 鈴木尋問で決定的事実

 11月21日、国労5・27臨大闘争弾圧の第15回公判が東京地裁刑事第10部(青柳勤裁判長)で行われた。東京地本の鈴木勉法対部長に対する3回目の尋問が行われた。この日の公判では、彼が撮影し、警察に任意提出したビデオテープの中に、携帯電話で公安刑事に弾圧を要請している酒田充・東京地本委員長(当時)の声が残っていることが明らかになった。国労本部派が組合員を売り渡したという弾圧の真相は、物証によっても裏付けられたのだ。弁護団とともに被告たちも鈴木法対部長を徹底的に追及した。裁判闘争はますます重大な攻防に入っている。被告の保釈奪還を実現する闘いも、最大の山場を迎えている。1年を超える長期勾留を徹底弾劾し、8被告をなんとしても年内に取り戻そう。

 “もうパクるしかねえだろう”

 冒頭、浅野史生弁護人と羽廣憲被告が、即時保釈を求める意見を述べた。浅野弁護人は、国労の存亡をめぐる重大情勢のただ中で、被告たちは不当な勾留によってこの情勢に関与できない状態に置かれていることを指弾した。羽廣被告は、「保釈を認めない理由は何もない」と声を強めた。
 鈴木証人が入廷した。前回にも増して憔悴(しょうすい)の色を深めている。
 萱野一樹弁護人が、「今からビデオを再生するが、車内のものと思われる音を聞いてもらいたい」と尋問を切り出した。法廷に用意された画面に、ビデオの一部が映し出された。被告たちが本部派を弾劾する声に混じって、「おい、110番しろ、110番」という音声がかすかに聞き取れる。鈴木証人のビデオは、組合員を権力に売り渡す目的で撮影されたものだ。だが、図らずもそこには、ホテルから大会会場に向かうバスの中で、本部派役員らが交わした会話が残されていたのである。
 萱野弁護人が、「警察を呼べと言っている。組合幹部としてどう考えるのか」と問いただした。鈴木証人は、「暴力行為があり、自力でバスに乗り込むのは不可能な状況があって、110番という声が出た」と弁解した。
 ビデオ再生が続く。「全部撮ってる?」「撮ってるよ、撮ってる、撮ってる」という会話が明瞭(めいりょう)に聞き取れる。誰の声かという質問に、鈴木証人は酒田委員長と証人自身の声であることを認めた。ビデオには「もうパクるしかねえだろう」という何者かの声も入っていた。
 さらに決定的な事実が暴かれた。再生されたビデオから、「中核派がね……バスに乗ろうとするのを……逮捕できないですかね……110番したんですけどね、ちょっと見てるだけなんですよ……要請してあるんですけどね……中核が暴力振るっているもんですから。ええ、はい、よろしく」という音声が、だんだん大きく聞こえてくる。画像からは声の主は分からないが、明らかに誰かが警察と携帯電話で通話している音声だ。
 弁護団は、「誰の声か」と追及した。鈴木証人は「声の質から、酒田委員長」と返答した。
 萱野弁護人が、「次に見ていただくのは音声でなく画像」と尋問を続けた。画面には、バスの前部乗降口付近に立つ男性の首を、後ろからつかんでいる手首の映像が映し出された。「つかんでいるのは誰か」という質問に、証人は「私です」と白状した。「首を絞めるのは立派な暴行」「危険で卑怯な行為ではないか」と追及する弁護団に、鈴木証人は「道を開けてもらいたかった」と弁解した末、「尋問には答えない」と居直って沈黙した。
 追及の焦点は、ビデオを警察に提出する経緯に移った。前回公判で、鈴木証人は以下の事実を認めていた。@大会当日の27日夜に自宅でダビングテープを作成したが、それは原本を部分的に複写したものだった。A28日には、警察がホテル前の事件について捜査に動いていることを、酒田委員長から聞いた。B29日に、笹原財政部長(当時)から画像のすべてが入ったテープをダビングしてほしいと要請され、東京地本でダビングし、酒田委員長に手渡した。
 さらに、そのテープが警察の手に渡り、30日に酒田委員長と星、関らの公安刑事が荒川署でテープを再生し、見ていたことも、すでに明らかになっている。
 河村健夫弁護人が、「警察に出すことを前提にダビングしたのか」と問いつめた。鈴木証人は「警察が見たいというのでテープが必要だった」と認めた。
 弁護団はさらに、鈴木証人が6月3日にオリジナルのテープを任意提出した時のことを追及した。「本当に自分の意思で提出したのか」と問うと、証人は「任意提出しなければ強制手続きに移ると言われた」と答えた。だから「拒否する態度はとらなかった」と言うのである。また彼は、提出に先だってビデオを再生した際、誰が組合員で誰が組合員ではないかを警察に説明したとも証言した。

 “犯罪者集団は説得の対象外”

 休憩をはさみ、検察側が尋問した。検事は、鈴木証人が現場でビデオ撮影した経緯を一通り聞き出した後、「国労共闘とはどういう組織か」「中核派とは」「中核派と国労共闘の関係は」などと質問し始めた。だが、検事の意図をつかみ損ねた鈴木証人の証言は、7人の被告が国労組合員であることを印象づける結果に終わった。
 検察側主尋問に対する弁護側の反対尋問が行われ、佐藤昭夫弁護団長が口火を切った。佐藤弁護人は、「執行部の一員として、反対派組合員を説得する気持ちはなかったのか」と問いかけた。証人は「そのような状況になかった」と言い逃れる。佐藤弁護人が「説得する気持ちがあったのか、なかったのか」と語気を強めて証人に迫った。鈴木証人は「ありませんでした」と白状した。
 佐藤弁護人はさらに、「あなたが中核派と呼ぶ人に対して、説得しようと試みたか」とたたみかけた。たまりかねた証人は、「中核派は犯罪者集団。説得する対象ではない」と口走った。権力と寸部違わない言い方で、組合員を売り渡した大罪を逃れようというのである。法廷は強い怒りに包まれた。
 「組合員に対しても処罰を求めるのか」と追及が続いた。鈴木証人はついに、「処罰を求める」と本音を吐いた。

 被告が次々と鈴木証人を弾劾

 被告自身が尋問に立ち、まず羽廣被告が質問した。
 鈴木証人は、ビデオカメラを準備した理由の一つに、01年10月の大会で「秋田の代議員とのトラブルがあった」ことを挙げていた。羽廣被告は、「その代議員は今も国労組合員か」と質問した。証人は「確認していない」としらを切る。だが、国労幹部が秋田におけるチャレンジ一派の分裂・脱退問題を知らないはずがない。「分裂活動している代議員を弾劾するのは当然ではないか」と羽廣被告が詰め寄った。鈴木証人は渋々、「背景は知っていた」と認めた。
 富田益行被告が、前々回の公判で「大会会場内は国労の自治」と述べた鈴木証言を取り上げ、「自治というなら、大会でけが人が出たことを、検事がいる法廷でなぜ言うのか」と指摘した。鈴木証人は「けが人が出たのは会場の外」と全面的に居直った。
 松崎博己被告が、「7・1大会を流会させたのは中核派か」と問いつめた。証人は「『前進』の記事から見てそう」とうそぶいた。松崎被告はまた、話し合いにも応じず、ただビデオを回していた事件当日の証人の行動を、「それが役員のすることか」と弾劾した。
 橘日出夫被告は、会場内の様子も写ったビデオを警察に差し出した証人の行為に怒りをぶつけ、「われわれの人生をめちゃくちゃにした。被害届は取り下げるべきだ」と迫った。鈴木証人は「被告が被害者に謝罪すべき」と開き直った。
 原田隆司被告が、「国労手帳の中の、弾圧に対する心がけは読んだか」と質問した。鈴木証人はやむなく「弾圧に対しては黙秘して闘えと書いてある」と返答した。「それでなぜ、ビデオを任意提出したのか。それが法対部長のすることか」と声を強める被告を前に、鈴木証人は一言もなくうなだれた。

 被告とり戻す最大の決戦に

 公判に先立ち、被告家族と国労組合員は、国労本部に被告の保釈に向けて協力を求める要請をした。事前の申し入れにもかかわらず、委員長も書記長も姿を見せない。芝崎辰郎執行委員だけが、要請行動を妨害する目的で現れた。彼は、要請文を読み上げる被告家族に、「文句があるなら中核派の最高責任者に言え。中核派の方針が間違っていたから逮捕されたんだ」と暴言を吐き、要請文を破りゴミ箱に投げ捨てた。
 これが酒田−吉田執行部の正体だ。夫や父親を獄中にとらわれた家族の切実な思いをこれみよがしに踏みにじり、どこまでも権力の手先になって生き延びる以外に道がないのだ。だが、それは反弾圧闘争の発展に心底からおびえる彼らの姿を示している。
 被告の勾留は、すでに1年を超えた。これ以上の勾留は一刻たりとも許されない。被告を奪還する闘いは、12月を頂点に最大の山場に入っている。許さない会の会員を拡大し、10万人保釈署名と保釈金カンパを集めきろう。8被告をなんとしても年内に取り戻すための決戦に立とう。

 (資料) 鈴木ビデオに酒田委員長の声が残っていた!
 中核がね、あの……バスに乗ろうとするのを……逮捕できないですかね。……ええ、グリーンホテルです。淡路町ですよ、淡路町。ええ、淡路町2丁目、千代田区の。ええ、あの、このね、あの、110番したんですけどね、ちょっと見てるだけなんですよ。ちょっと、あの、要請してあるんですけどね、われわれはね。あの、暴力、中核、中核が暴力振るっているもんですから。ええ、はい、よろしく。

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週刊『前進』(2129号4面1)(2003/12/08)

国際連帯でイラク派兵阻止 呉・小牧・旭川現地闘争に立とう
自衛隊を1人もイラクに出すな
 占領統治揺るがす抵抗闘争 国際機関・石油省も標的に すべての侵略軍をたたき出せ

 人民の自由は圧殺復興の利権は独占

 フセイン政権崩壊後、イラクは米英の暫定占領当局(CPA)による占領統治下にある。CPAは「自由なイラクの樹立」「イラク復興」を掲げるが、実態は正反対である。戦争は終結せず、米軍による空爆が再開され、イラク抵抗勢力の掃討作戦が続いている。イラク人民の生活は破壊されたままである。水や電力の供給は回復せず、石油産出国にもかかわらずガソリンも手に入らない。街頭には失業者があふれ、未払いの給料を要求する失業者のデモに米軍は発砲している。

 拷問や殺害も

 米軍は、フセイン政権の残党狩りや武器の捜索と称して無差別に家宅捜索を行っている。米軍は、抵抗勢力の潜むアジトと見なすと家屋の中の住民を問答無用で殺害・拘束し、逃げる人間を後ろから撃ち殺している。最後は家屋をすべて破壊する。拘束された人はどこにいるのか、生死さえも分からないケースも多い。そこでは拷問的な虐待や恣意(しい)的殺害が常態化している。米軍の「誤射」による住民死亡事件も相次いでいる。「イスラエル軍と似ている」(ワシントン・ポスト紙)占領・抑圧政策が行われているのだ。
 米軍はイラクのテレビやラジオ、新聞を厳しい統制下に置き、米軍に都合の悪いことを報じたメディアに対し、会社を閉鎖したり罰金を科している。「イラクのメディアに自由な発言はない。情報を流す前に米軍の検閲を受けているから米軍の意にかなった情報しか手に入らない」
 イラク解放を掲げる米軍は、実際にはイラクの自由を徹底的に抑圧している。

 劣化ウラン汚染

 米軍によって破壊されたイラク軍の残骸(ざんがい)がイラク全土で放置されている。不発弾の処理は行われず、不発弾に対する知識のない子どもがクラスター爆弾などの不発弾に触れ、爆発事故で殺されている。戦車の残骸の大半は、劣化ウラン弾によって破壊されたものだ。
 劣化ウラン弾は、天然ウランを濃縮処理する過程で発生する核廃棄物の劣化ウランを利用した弾丸である。米軍は91年の湾岸戦争でも大量に使用し、劣化ウラン弾が使われた地域のガン患者は、湾岸戦争以前の数倍から十数倍に上る。
 米軍は今回の戦争で31万発以上の劣化ウラン弾を使用したことを認めている。核医学の第一人者であるアサフ博士が所長を務める「ウラニウム医療研究センター」がバグダッド、バスラなどイラク国内15カ所で住民の尿や遺体の組織、土、水、大気などを調査したところ、分析された放射能は、比較対照したカナダの都市トロントの水や空気の数千倍に達するものもあるという。
 防衛庁は、イラクに派兵する自衛隊には、放射能の検知器を携行させると言っているが、イラク人民は日常的に、半永久的で深刻なウラン放射能の汚染にさらされているのだ。イラクの医師は、最近急激に白血病やガン患者が増えていると報告している。

 利権は米資本に

 イラク復興事業は、ブッシュ政権とつながりのある米企業が独占的に受注している。
 例えば、油田修復事業では、米陸軍が競争入札なしでケロッグ・ブラウン&ルート社に発注した。ケロッグ社の親会社はエネルギー大手のハリバートン社。チェイニー米副大統領が就任直前まで最高経営責任者だった会社だ。チェイニーは、現在も年額16万jの手当を受け取っている。ケロッグ社が独占受注した契約額は最大70億j(約7600億円)という。
 イラク暫定内閣が発表したイラク経済の自由化を目指す再建計画は@外銀6行に5年以内にイラクの銀行の100%所有を許可、A外銀の参入制限を撤廃する、B外国人は不動産を所有できないが、40年間のリースを認める――というもので、石油部門を除き外国資本にイラク企業の100%保有を認めるものだ。
 これは、フセイン政権の国家統制経済にあった国営企業をすべて民営化して、米帝(国際帝)資本がその巨大な資本力ですべて支配することを意味する。携帯電話や自動車などの米資本が「イラク復興事業」に殺到している。「イラクの復興」とは、米資本によるイラク利権の独占的強奪でしかないのだ。
 特に石油利権は米軍の占領政策のかなめだ。イラクは世界第2位の埋蔵量を誇る。イラク石油省は、戦争中も空爆をまったく受けず、米軍は、バグダッド制圧とともに真っ先に石油省を接収し、イラクの石油収入のすべてを「イラクの復興費用に充てる」としてCPAが管理している。
 CPAによる占領統治の狙いが米英帝によるイラク再植民地化であることは、イラク人民に自明だ。米英帝のイラク占領統治は、イラク人民の怒りの標的であり、打倒対象だ。フセイン体制を崩壊させた米英軍に期待を持っていた住民や、傍観していた住民たちもデモやゲリラに加わって米軍を弾劾し、攻撃している。

 米兵死者が激増しバスラCPA閉鎖

 米英軍の軍事占領に対するイラク人民の抵抗闘争(レジスタンス)は、日増しに強まっている。攻撃による米軍の死者は、6月に20人台だったが10月には32人となり、11月下旬には60人を超えた。3月20日の開戦以降の米軍の死者は、事故死なども含めると500人近くになる。
 闘うイラク人民は、バグダッド中心部にあるCPA本部そのものをロケット弾で攻撃している。CPAの中枢施設が集中し、ブレマー代表らも滞在する「グリーンゾーン」地区を厳重な警備態勢を突破して連日攻撃している。11月21日には、占領統治の象徴である石油省やパレスチナホテルも同時攻撃した。
 ヘリコプターに対するロケット弾攻撃も相次ぎ、10月末から計5件、死者も50人近くだ。11月22日には、バグダッド国際空港を離陸直後の民間機が地対空ミサイルで攻撃され、翼から火を出して同空港に緊急着陸した。米軍の制空権は破綻(はたん)しつつある。
 米軍に加え、国連や赤十字国際委員会(ICRC)も攻撃している。8月の国連現地本部爆破に続き、10月末には、ICRCの現地本部近くで爆発物を積んだ救急車が爆発し、職員ら11人以上が死亡した。国連はイラクから完全撤退し、ICRCもバグダッドとバスラの2拠点を閉鎖した。
 米英軍以外の外国軍に対する攻撃も始まっている。イラク南部のナーシリヤに駐留するイタリア警察の駐屯地で11月12日、自爆攻撃が行われ、警察軍やイタリア軍兵士19人が死亡した。イラクに駐留する米英軍以外の外国軍の根拠地が攻撃対象になったのは、これが初めてだ。この戦闘によってCPAのバスラ本部は一時閉鎖に追い込まれた。8月にはデンマーク兵1人、11月6日にポーランド兵1人が銃撃戦などで死亡している。バグダッドの日本大使館でも11月18日、銃撃戦になっている。
 日帝とともにイラク侵略戦争を支持し、イラク復興支援国会議のホスト国になるなど米英帝支持の先頭に立ってきたスペインは、外交官が殺害された事件を機にバグダッド駐在の同国外交官らを引き揚げさせると表明した。ポーランド軍も早期撤退を表明している。

 軍事占領の破綻

 米英軍の軍事占領統治はイラク人民の心を獲得できず、ゲリラ戦闘の波状的展開は、占領統治を軍事的にも困難にさせている。
 米軍は10月に入ってからアイアンハンマー作戦と称する掃討作戦を展開し、空爆も再開した。F15やF16戦闘機を出動させ、多数の500ポンドや千ポンド爆弾を投下。軍事衛星を使って誘導する2千ポンド(約1d)の精密誘導爆弾(JDAM)も使用している。米軍は、10月だけで1500回の攻撃をかけ、千人以上を殺害・拘束したと言っている。米軍によるイラク人民虐殺(ジェノサイド)の侵略戦争は継続しているのだ。
 しかし、駐留長期化と侵略戦争に対する疑問で米軍の士気は著しく下がり、家族の不満も高まっている。「これは抑圧された人びとを解放したり……独裁者を世界から取り除くための聖戦ではなく、他国の天然資源を支配する聖戦のようである。石油……私たちがイラクにいる理由がそこにあるように見える」(第101空挺部隊の兵士の手紙)
 ラムズフェルド米国防長官は11月6日、13万人余のイラク駐留米軍を来年1月から大幅に交代させると発表した。陸軍と海兵隊から計8万5千人を動員し、足りない4万人余を州兵と予備役から動員する。重傷や精神面でのトラブルから米国に送り返された兵士も数千人単位で存在する。
 多国籍軍についても、10月16日の国連安保理の決議で多国籍軍派兵が決まって1カ月以上経過するが、派兵を申し入れる国がなく名称さえ決まらない。1万人規模の派兵を計画していたトルコでは、連続自爆テロで英総領事が死亡。トルコは派兵を断念した。米帝は韓国に5千人規模の戦闘部隊を要求したが、イラク派兵反対闘争の高揚の中で、ノムヒョン政権は工兵・医療部隊主軸の3千人規模の派兵案を提示した。

 レジスタンス

 ブッシュは「自由なイラクの樹立は世界的な民主的革命の重大な転機になる。自由は、そのために戦い、死ぬ価値がある」(11月6日の演説)と言った。ふざけるな。この戦争は、イラクを再植民地化し、石油を独占するための帝国主義強盗戦争、侵略戦争だ。イラクを軍事占領し、人民を虐殺し、抑圧し、生活を破壊する不正義の侵略戦争だ。中東支配と石油利権のための帝国主義ブルジョアジーの利害のための侵略戦争なのだ。国際プロレタリアートは、イラク人民に侵略の銃を向けてはならない、その銃口は帝国主義者にこそ向けるべきなのだ。
 米英軍の占領統治に対するイラク人民の闘争は、パレスチナ人民のインティファーダや南ベトナム民族解放戦線の戦い、フランスの植民地支配に対するアルジェリア人民の武装解放闘争、第2次大戦中の中国・朝鮮人民の抗日闘争、ナチス・ドイツに対するレジスタンスなど、古今東西、人民の圧倒的な支持に依拠して闘われている正義の抵抗闘争(レジスタンス)であり、民族解放闘争である。
 ラムズフェルドらは「2300万人のイラク国民のうち数千人が不満を持っている」「(抵抗勢力は)最大でも5000人」などと言うが、本気でそう考えているのなら、米帝の敗北は百パーセント確実である。米帝が直面しているのは、米英帝の侵略戦争、民族抑圧、占領統治に対するイラク人民、ムスリム人民総体の怒りと闘いなのだ。この人民の中に怒りと闘いの意思がある限り、占領軍が撤退するまで闘いは続く。

 大失業と侵略戦争で米帝危機も激化

 来年11月2日に米大統領選が行われる。3月20日開戦からバグダッド陥落でブッシュの支持率は一定持ち直したが、イラク侵略戦争の泥沼化と破産に比例するように支持率は下がり続けている。米帝の戦争の是非がこれほど争点になるのは、ベトナム戦争以来である。ブッシュは10月28日、「私の指導力のもとで世界は平和で自由になり、米国は安全になった」と大統領選の主張を発表したが、事実はまったく逆だ。
 最新の世論調査によると、ブッシュ(共和党)と民主党候補のどちらを支持するかでは48%と47%で拮抗している。イラク政策については過半数が反対である。イラク侵略戦争の泥沼化は、ブッシュ再選の危機を激化させている。
 イラク占領統治の動揺に対してブッシュ政権はなんら「有効」な方針が出せない。イスラエル軍のような赤裸々な暴力で、イラク人民を抑圧し、人民のさらなる闘いを引き出すだけだ。占領政策をめぐるブッシュ政権中枢の対立や不協和音も報道されている。
 イラク侵略戦争の泥沼化で戦費問題と米経済の矛盾がブッシュ政権を揺るがす。米軍のイラク駐留費などを含めた補正予算は875億j(約9兆6千億円)、過去最大の追加予算だ。議会予算局は13年までにさらに850〜2千億jが必要になる可能性を指摘している。米帝の軍事費は実質で前年比5割増しの大軍拡で、朝鮮戦争以来だ。クリントン政権時代に黒字だった財政も03会計年度(02年10月〜03年9月)で過去最大の赤字3742億jとなった。経常赤字も5千億jを突破する勢いだ。
 今年7〜9月期の成長率が8・2%を記録したと米帝経済の好調が宣伝されているが、イラク侵略戦争による国防費の大幅アップ、金利低下に伴う家計債務の増加に依存した消費拡大など、人為的なものだ。特に問題なのは、「ブッシュ政権は、金持ち減税に1兆jを使い、1兆jの借金を残し、320万人に解雇通知を配った」「雇用を失う景気回復」と批判されるように、労働者人民に対する大失業攻撃による「好調」であることだ。ブッシュは「大恐慌期のフーバー政権以来、在職中に就業者数を減らした初の大統領」なのだ。大失業と侵略戦争は表裏一体である。

 派兵強行狙う小泉百万デモで阻止を

 9・11反米ゲリラは、戦後帝国主義体制の盟主、米帝の深刻な体制的危機を露呈させた。これを契機に米帝ブッシュは世界戦争政策を発動し、全世界を戦火で覆おうとしている。この米帝の世界戦争政策の激しい展開の中で、英・日・独・仏などの帝国主義諸国は存亡をかけて帝国主義的軍事外交をくりひろげている。
 イラクに派兵予定の自衛隊は、陸海空3自衛隊と文民合わせて約1200人。陸上自衛隊700人は、イラク南部のサマワ周辺に展開する計画である。海上自衛隊は、陸上で使用する車両や機材を運ぶため、「おおすみ」型輸送艦、護衛艦と乗員約300人をペルシャ湾に派兵する。航空自衛隊は150人規模でクウェートに拠点を置き、C130輸送機3機でバグダッドやバスラの空港に物資を空輸する。
 陸自は従来の国連平和維持活動(PKO)などで携行してきた短銃や機関銃に加え、携行式の対戦車砲や無反動砲を携行する方針だ。軽装甲機動車や装輪装甲車も持っていく方針だ。「相手が撃たないと武器が使用できないわけではない」と言って、米軍同様のイラク人民虐殺を行おうとしている。
 当初、派兵期間は従来のPKOと同じように半年間とされたが、半分の3カ月程度で交代する予定だ。陸上自衛隊の派兵部隊は北海道の北部方面隊を中心に編成され、第1陣は第2師団(旭川市)中心の部隊編成で、第2陣も第11師団(札幌市)を中心に編成される。空自は愛知県の小牧基地から、海自は広島県の呉基地から派兵される。
 自衛隊の年内派兵方針は二転三転しているが、小泉は「現在の状況でも、自衛隊の派遣が無理だと断定する状況にない」と強弁し、あくまで派兵を強行しようとしている。海・空自の先行派兵論も出ている。
 日本の労働者人民は、重大局面に直面している。小泉政権は、重武装の軍隊を送り、米英軍とともにイラク人民の抵抗闘争を圧殺しようとしているのだ。日帝の本格的な侵略戦争の突入である。日本の労働者人民のイラク派兵阻止の闘いが歴史を決する。

 自衛隊戦死狙う

 自爆テロで19人が死亡したイタリアでは、派兵に反対してきた左翼民主党や再建共産党が政治休戦し、国葬に参列した。マスコミは「犠牲者の意思を継ぎ、テロに屈せずイラク復興を促進する」という論調で報道している。
 小泉はある意味でこのような政治状況を狙っているのだ。自衛隊の戦死を意識的に追求し、「自衛隊員の死の犠牲に文句を付けるのか!」という恫喝で、社・共などの既成勢力の最終的な屈服を強要し、挙国一致の侵略戦争体制をつくりだし、改憲−北朝鮮侵略戦争へと突き進もうとしているのだ。
 日帝の自衛隊派兵に対して、反帝国主義の武装勢力による「イラクに自衛隊を派兵するなら東京を攻撃する」という警告が連続で発せられている。日帝のイラク派兵とは当然、゛日本における9・11゛をも引き起こす問題なのだ。イラク人民からも自衛隊派兵に重大な警告が発せられている。
 なぜ東京が狙われるのか? なぜ自衛隊員の生命が危険にさらされるのか? それは日帝(自衛隊)こそ、米英軍によるイラクの軍事占領に加担し、イラク人民の虐殺、抑圧、生活破壊の侵略戦争に参戦しようとしているからだ。自衛隊は「イラク人民の解放」「イラクの復興」のために行くのでは断じてない。自衛隊は、日帝の利害(イラク・中東の支配と利権)のための侵略戦争に動員されるのだ。
 イラク人民、ムスリム人民の激しい怒りと抵抗闘争に連帯して、自衛隊を日本から一歩たりとも出さない闘いをやろう。ロンドンではトルコの英総領事館への自爆テロの最中に、ブッシュとブレアこそ一切の元凶という立場を鮮明にして、ブッシュ訪英に対して20万人デモが展開された。ロンドンに続き、日本の地で自衛隊のイラク派兵阻止の百万人デモを実現しよう。
 イラク人民・ムスリム人民の闘いを突破口に、全世界で米帝ブッシュの世界戦争路線に対し、国際的な連帯闘争が始まっている。今春のイラク反戦の再度の高揚を実現しよう。11・9労働者集会で提起された日米韓の国際連帯事業を推進し、大失業と戦争と対決する労働者の団結と闘いをつくりだそう。
 12月イラク派兵阻止の大決戦に決起しよう。呉・小牧・札幌・旭川の派兵阻止現地闘争に決起しよう。イラク派兵反対の署名を全国で組織しよう。戦争と大失業の小泉政権を打倒せよ。
 〔片瀬 涼〕

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週刊『前進』(2129号5面1)(2003/12/08)

国際連帯でイラク派兵阻止 呉・小牧・旭川現地闘争に立とう
自衛隊員は出兵を拒否しよう インタビュー 反戦兵士 小多基実夫さんの訴え
 イラク人民に侵略の銃を向けるな 自衛官が拒めば出兵は止められる

 自衛隊のイラク派兵を絶対阻止するために反戦兵士の小多基実夫さんに自衛隊員と全国の闘う人びとへの訴えを語ってもらった。(編集局)

 これは米軍の侵略戦争

――イラクのイタリア軍基地に自爆攻撃がありましたが、政府は派兵を強行しようとしていますね。
 政府の方はどんなことがあっても自衛隊をイラクに送ろうとしています。しかし、一般の兵士や幹部(将校)の動揺は激しいということを見ておく必要があります。
 イラク特措法の前提条件である平和になっているというのがまったくない。戦闘状態どころか、ブッシュ自身が「これは戦争である」と言っている。法的な大前提が崩れているのにあえて自衛隊を派兵しようとしている。
 ゲリラ勢力は日本が軍隊を送ればターゲットにすると名指ししています。すでに日本大使館が銃撃されているわけです。必ず自衛隊に犠牲がでる。
 また、ゲリラはどこからどう攻撃してくるかわからないわけで、武器を手にしていたらイラクの人たちに危害を加えることになる。米軍と同じようにイラクの民衆を虐殺していくことになる。イラクの民衆がゲリラを守っているわけです。
 そして実際に自衛隊員が死ぬという事態になれば、日本社会は一変すると思います。自衛隊がイラクに行けば、家族は事故があった、戦闘があったと聞けば気が気でないわけで、パニックのような状態になる。
――反動の側も一挙に国家主義的な攻撃を強めてくるでしょうね。
 政治的に大きな攻防になると思います。政府の側はそうした危機にたいして凶暴化して「死を無駄にするな」というキャンペーンをしてくるでしょう。それに対して、反戦闘争の側も腹をくくって闘っていかなくてはならない。
 現場ではっきり言わなければならないのは、「政府によって殺されたんだ」ということです。米軍のイラク戦争は侵略戦争であり、軍事占領に対してイラク人民は反撃する正当な権利を持っているわけで、自衛隊は占領されている人たちに対して銃を向ける権利はないんだということをはっきりさせなければいけない。

 戦争目的は支配と略奪

――復興支援ということがいわれていますが、これについてどうですか。
 そもそものアメリカの戦争の目的はイラクを植民地支配し、資源を奪うということです。
 今回のイラク戦争では、石油の強奪だけでなく、航空機産業を始め軍需産業が特需で大もうけしているし、イラクの市場支配、資源強奪をしようとしている。そこに日本も利権から排除されまいと割り込もうとしているわけです。
 自衛官の側も、イラクに行かされる場合に、占領支援というと抵抗があるけど、復興支援だということでそれを心の支えにしようとしているところもあると思う。また、治安回復がイラクの人たちのためになる、自分はそのために行くんだとか。しかし占領軍の米軍を追い出すことがイラクの民衆に対する一番の支援だということをはっきりさせなければならない。
 そもそもの戦争の目的、占領の目的をはっきりさせれば、米軍も自衛隊も誰もそんなことはやりたくない。それをごまかすための「復興支援」というカンバンなんですね。独裁をなくすだとか、テロ支援国家を変え民主化するとか、そのウソをはっきりさせないといけないですね。
――イラクにいるアメリカ兵の間でもそのウソが明らかになりつつありますね。
 戦争目的のウソがはっきりしつつあるという点では米軍兵士が殺されるかもしれないという危険性、恐怖を感じていることがものすごく大きいと思います。
 イラクの民衆の武装闘争が闘われていて、これが米軍やイギリス軍に動揺を与えていて、戦争の目的は何なのかと疑問を抱く契機にもなっているし、自衛隊もこれに動揺している。
 それは日本を始め国際的な反戦闘争を闘う民衆への援助になっている。イラクの闘っている人たち、占領に反対して決起している民衆との連帯をもう一つの大きな柱としてやっていく必要があると思います。
 各国の労働者たちがイラクの運動との連帯を強めて、運動をとおしてイラクにいるそれぞれ自国の軍隊に働きかけていくようにならないといけない。そのイラクの民衆と反戦運動が結びついて民衆の側に兵士を獲得していく必要がある。そして派兵されている軍隊がイラクの解放戦線と手を結び交歓するようになれば、戦争は必ず止まるということです。
――今、自衛隊の派兵が世界的に注目されています。
 自衛隊派兵は日本の民衆が止めなければならない。まずそれが大前提だと思います。自衛隊が実際の戦力としてどれほど役に立つのかといったら大して役には立たないと思います。しかし、自衛隊派兵を止められれば占領軍とイラク民衆双方に与える政治的、精神的影響は大きいと思います。
 そして実際に自衛官が抵抗闘争を始めれば戦争はできなくなってしまうわけです。海自の護衛艦でペルシャ湾に派兵されるときに内部告発で整備不良があるといって、それでその船は行けなかったわけで、そういうことがあちこちで起これば戦争はできなくなっていくわけです。

 全国で兵士に訴えよう

――自衛官の家族が自分で派兵反対署名を集めて署名運動に送っていると聞きました。
 署名というのも一つの行動ですよね。現在運動に参加しているというわけではありませんが、その必死さという点で一番熱心にがんばっているのが家族とかそういう人たちではないかと思います。その人たちがそのように必死になっているところに自衛隊が今直面している危機の深さと、運動の可能性が見えます。
 ただ、そこまで自衛官とか家族が思っているときに運動の側の認識がまだまだ甘いと思います。もっと重視してほしいですね。署名運動を含めて街頭などで接する機会がどんどん増えてくると思います。そのときにきちんと対応できるかどうかです。
 出兵部隊を当初は旭川(第2師団)から始めて半年交替と考えていたのが、自衛隊の中でかなり動揺があるから3カ月交替にするということが言われている。残りの3カ月は札幌・真駒内の第11師団ということになっている。これは大変な事態だと思う。というのは、半年は嫌だけど3カ月ならいいということではないわけです。しかも3カ月ごとに次の部隊が行くわけだから、その対象が倍になり、2年半で10個の部隊になる。兵士の動揺を抑えるどころか、逆に駆り立てることになる。
 もう一つは、空自は小牧からC130を出すことになっていますが、第一航空団だけが対象ですが、危険度という点では陸自とそんなに変わらないわけです。あれだけ米軍の航空機が落とされている。しかも今回米軍はAC130を使って空からの攻撃作戦をやっている。これはぱっと見にはC130と同じわけです。それが米軍の管制の下でバグダッドの空港を使うことなる。ますます危険になっている。
 こういうことを考えると派兵される部隊は絶望的な感じですね。そういう中で誰が展望を指し示すのかということです。政府は死んだら1億円出すということしか言わない。9月に市ケ谷のメモリアルゾーンが完成したが、早速ブッシュが献花したけど、イラク戦争で戦死者が出るからそのために造ったといわんばかりのものです。こんなもので死に追いやられた自衛官や家族が喜ぶでしょうか。
 そこで反戦運動がどう対応していくかです。派兵される部隊に対して働きかけていかなければならない。特に陸自は全国の部隊が対象になります。その地域で最大限可能な形で闘いを準備して、地域の力で闘いを切り開くということが重要だと思います。
 というのは、全国結集の闘いは出兵するその日だけの闘いですが、自衛官とその家族は出ていったその時からより大変な過程が始まるわけです。殺されるかもしれない、人を殺すかもしれないという不安な毎日が始まるわけです。恒常的な闘いで家族や自衛官の気持ちに入り込んでいかなくてはいけない。
 有事立法が通って、イラク特措法ができて、国会も2大政党に近づいて大変な側面はあるけど、逆に反戦運動でそれを止めて、ひっくり返していく展望も出てきたと言っていいと思う。戦争が近づいてきたから、逆に民衆が全力で闘えば展望が開ける時代が来たということです。

 いま決断が問われてる

――自衛隊兵士に何を訴えたいですか。
 自衛官のみなさんも大半の人は戦争はないと思っていて、安定した職業だから、公務員だからということで入った人が多いと思うんです。イラクの民衆に銃を向けたいと思っている人はいないと思います。命令だから行かざるをえないと思っているかもしれませんが、遠慮する必要はありません。世論の70%は、イラク派兵に反対しています。イラク派兵反対が民衆の意思だということで「出兵は嫌だ」と堂々と主張して下さい。自衛隊の現場にいる人が声を上げることが重要なんです。
 政府は、死んだときにはいくら金を出すというようなことしか言えない。大金を出すと言えば黙るだろうと人を見下した態度をとっている。自衛官と家族の力が反戦運動に集まれば必ずイラク派兵を止めることができるし、それがイラクの人びとを救うことになります。日本が戦争国家になることを止めるのは反戦運動しかありません。反戦運動の仲間と一緒に闘いましょう。それが他の25万人の自衛官を助けることにもなります。
 また11月21日付の東京新聞夕刊の1面に、自衛隊が派兵されようとしているサマワで劣化ウラン弾が使われたという記事が出ていました。たとえ攻撃されなかった場合でも、ウランの放射能でガンや白血病になったり、生まれてくる子どもが先天性疾患になる危険があります。自衛隊はウランに被曝することにたいして何も知らせずなんの対策も行っていません。ウランによる被曝でガンや白血病にならないためにも派兵を拒否してください。
 アメリカでも大勢の兵士が劣化ウランによる病気で苦しんでいます。イラクの人たちにはもっともっと深刻な被害が出ており、しかもそこに住み続けなければならないのです。この戦争を起こしたブッシュ大統領やこれに加担した小泉首相に責任をとらせなければなりません。
 自衛官のみなさん、イラクで民衆に銃弾の雨を降らせないでほしい。いま決断が問われています。私たちは、自衛官や家族のみなさんの決断を待っているし、一緒に闘い、出兵を止めたいと思っています。私たちの力で自衛隊派兵をやめさせ、この戦争を止めるために一緒に運動に参加してください。

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週刊『前進』(2129号5面2)(2003/12/08)

国民保護法制は北朝鮮侵略戦争への人民の戦争動員法
 罰則強化し、“テロ”にも準用

 通常国会提出を阻止しよう

 政府は11月21日、「国民保護法制整備本部」(本部長・福田康夫官房長官)を開き、「国民保護法制の要旨」を決定した。井上喜一有事法制担当相は同会合で、@米軍への支援法制A捕虜などの扱いを定める国際人道法関連法制B電波利用の優先的割り当てなどの自衛隊関連法制とともに一括して次期通常国会に提出する方針を明らかにした。
 これらが成立すれば、有事法制の整備がひとまず整い、法律的にはいつでも北朝鮮侵略戦争に突入できることになる。与党は日帝単独で北朝鮮への経済制裁発動が可能となる外国為替・外国貿易法改悪案も、通常国会に提出しようとしている。小泉首相は衆院予算委員会で25日、「(北朝鮮が)この状況をさらに悪化させれば、(経済制裁を)検討しなければならない」と答弁し、改憲についても意欲を示した。
 この重大な情勢と対決するために、以下「国民保護法制の要旨」を批判する。

 戦争遂行優先し戦災を強制

 国民保護法制は、6月に成立した武力攻撃事態法などとセットの、北朝鮮侵略戦争のための戦争法である。「国民保護」の名目で人民を巻き込んだ防戦体制を構築するためのものであり、北朝鮮侵略戦争に向かって人民を排外主義的に組織しようとする攻撃だ。
 国民保護法制は第一に、何よりも北朝鮮侵略戦争を具体的に想定した国民の統制・動員の戦争法である。
 要旨は、日本への「武力攻撃事態等」に際し、「国全体として万全な態勢を整備し、国民保護のための措置を総合的に推進」することが、国民保護法制の目的であるとした。
 久間章生元防衛庁長官が「北朝鮮が先に攻めてきたり、侵略してくることは現実的にはないと思う」と述べているように、日本を侵略してくる国家は軍事上想定されていない。
 今日の有事法制が想定しているのは、米帝が「悪の枢軸」と名指しした朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する侵略戦争を発動する際に、日帝が全面的に参戦するということである。その場合、米日帝の圧倒的な軍事攻撃に対し、北朝鮮が一定のミサイル攻撃や特殊的なゲリラ戦として限定的ではあるが必死の反撃を試みることを想定し、これに備えた国民防戦体制を作ろうとしているのだ。
 国民保護法制が「国全体として万全な態勢を整備し、総合的に推進」などと言うとき、何よりも政府が戦争での勝利を最優先し、都道府県や市町村などが行う避難や救援措置をその観点から指揮することを意味している。
 国民保護法制は、日米帝が北朝鮮への軍事攻撃を発動しようとする段階(=武力攻撃予測事態)から、人民を防戦体制に組み敷くことで、反戦運動の高揚を阻止し、人民を排外主義的に組織し、侵略戦争に動員していくためのものである。侵略戦争遂行のために、人民が戦災に見舞われ、死傷し、逃げまどうことを前提に、そのプロセスを軍事・治安優先で統制しようとしている。「国民保護」などと言うが、それは侵略戦争遂行の一環をなすものであり、それ自身が戦争政策の一部をなしているのだ。
 さらに要旨で、「武力攻撃事態に準ずる大規模テロが発生した事態」にも国民保護法制を準用する方針が盛り込まれたことは重大だ。日帝はイラク侵略戦争を突破口に米帝の対テロ戦争にどこまでも食らいつき参戦していこうとしている。そうした中で被抑圧民族人民が日帝に対し命がけの反撃戦に決起してくることを想定し、これに対処するとして人民の権利の制限と治安弾圧をさらに強化し、国家による人民の統制と戦争動員を恒常的に進めようとしているのだ。

 首相の独裁で自治体を動員

 国民保護法制は第二に、首相に全権限を集中し、地方公共団体、指定公共機関を使って人民を統制し、動員しようとするものだ。
 国民保護法制は、武力攻撃事態対策本部長(=内閣総理大臣)が、戦争遂行上の全体的課題の一環として、戦時下(「予測事態」も含む)、被災下の人民を国家が上から組織しようとするものとしてある。
 政府は武力攻撃事態に備え、あらかじめ「国民の保護に関する基本指針」を作成する。基本指針は安全保障会議に諮問され、閣議決定する。国会の承認は必要とされない。この基本指針に基づき、指定行政機関の長と都道府県知事は「国民の保護に関する計画」を、指定公共機関は「業務計画」を作成する。この都道府県知事の「計画」に基づき、市町村長は「国民の保護に関する計画」を、指定地方公共機関は「業務計画」を作成する。
 地方公共団体は、都道府県対策本部、市町村対策本部を設置し、必要があれば都道府県対策本部の会議に防衛庁長官が指名する職員を出席させる。「指定行政機関の長等は、それぞれまたは共同して訓練を実施する」と、平素からの民間防衛訓練を行うことも義務づけられた。
 こうしたトップ・ダウン方式のもとで、以下のような対処が行われる。
(1)警報の発令
 対策本部長(首相)が、@武力攻撃事態等の現状および予測A武力攻撃が迫り、または武力攻撃が発生したと認められる地域B住民および公私の団体に対し周知させるべき事項について警報を発令する。NHKと指定を受けた民放は政府の発表内容をそのまま報道しなくてはならない。日本民間放送連盟は「報道の自由を侵害する」とし、「指定公共機関」から放送機関をはずすよう要請してきたが、認められなかった。
(2)避難の指示・誘導
 都道府県知事は、対策本部長からの指示を受けて、市町村長を通じて住民に避難を指示する。この際、「市町村長は、警察もしくは海上保安庁または自衛隊に避難住民の誘導を要請することができる」「避難住民を誘導する者は、危険を生じさせ、または危害を受けるおそれのある者に対し、必要な警告または指示」を行うとされ、治安弾圧的な観点を強力に押し出している。
 こうした取り組みがどんなものになるかは、鳥取県の住民避難マニュアル(別掲)を見れば明らかだ。そこでは軍隊と警察が指導的な役割を果たし、軍事と治安政策上の観点から住民を統制することが打ち出されている。
(3)救援
 被災者や避難民の救援は、対策本部長の指示に基づき都道府県知事が主に実施し、一部を市町村や日本赤十字社に行わせる。知事は@医薬品、食品等の緊急物資についての保管を命令し、売り渡しを要請A収容施設または臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋または物資を使用B医療関係者に医療の実施を要請する。いずれの場合も当該の事業者や個人、医療関係者が「正当な理由なく」拒否しても強制的に行う。
 住民の避難、救援のいずれについても、都道府県知事が避難誘導や強権的な収用、徴用を拒否したり、内閣総理大臣が自治体まかせでは「適切に行われない」と判断すれば、「是正措置」として強制代執行できる。すべて首相の独裁的な権限のもとに行われるのだ。
(4)武力攻撃災害への対処措置
 指定行政機関の長は、原子力事業者や危険物質取扱者に対して施設、取扱所の使用停止等を命じることができる。また指定行政機関の長と都道府県知事は、生活関連施設の管理者に警備の強化などを要請する。
 市町村長または都道府県知事は応急措置として、警察官、海上保安官、自衛官の支援を受けて、@武力攻撃災害を拡大させるおそれがある設備又は物件を除却A退避の指示B土地、建物等の一時使用等および支障物件の除却C警戒区域の設定を行う。

 家屋など収用を拒めば罰則

 国民保護法制は第三に、罰則規定まで設けて、民間防衛に人民を強制動員しようとしている。
 要旨では、「国民は、協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努める。協力は、国民の自発的な意思にゆだねられる」としている。自発性を強調する表現をとっているが、実際は協力義務の強い規定としてあり、°必要な協力は自発的にやるべきだ″と積極的な動員を図ろうとするものだ。
 要旨は、@原子炉、危険物質等による危険防止のための措置命令に従わなかった者A物資の保管命令に従わず、または保管命令等に伴う立ち入り検査を拒んだ者B交通規制または警戒区域の立ち入り制限に従わなかった者など、国民統制のための罰則規定を4月概要から大きく拡大した。土地・家屋などの収用に従わない者への罰則も明記した。また、政府への協力が義務づけられる民間機関(指定公共機関)として、電気、ガス、運送、電気通信、日本郵政公社、医療、日本赤十字社、放送などの事業者を列挙した。
 さらに退避の指示、土地や建物などの一時使用、警戒区域の設定、車両の移動などの通行確保のための措置を、自衛隊が軍事作戦を優先するために自ら実施できる規定も盛り込んだ。「生活関連物資等の価格安定」など国民生活と経済を統制する措置も明記した。
 こうして国民保護法制は、侵略戦争を遂行する自衛隊と米軍の行動を最優先で保障するために、人民の権利を奪い弾圧する悪法である。国民保護などと言う名目にごまかされてはならない。そもそも人民は日帝によって戦争被害から保護されるような存在ではなく、戦争の加害者や被害者とならないために日帝と闘う存在なのだ。
 闘うイラク人民と連帯し、日帝のイラク侵略戦争への本格参戦を阻止し、その力で有事法制の完成と改憲攻撃を粉砕しよう。

 鳥取県住民避難マニュアル(研究案抜粋) 7月9日
■交通規制の必要性
 「有事における避難は、避難措置に関係する車両相互あるいは避難車両と防衛出動する自衛隊車両との錯綜防止を図ることが必要」
■共同検問所の設置
 「住民が避難した地区への、避難者の舞戻りの防止とゲリラ等の活動を阻止するため、各要所地点に検問所を設置する。警察、自衛隊との共同運営とする」
n避難所開設・運営−立ち入り制限
■「避難地域については、立ち入りが制限され、自衛隊に安全確保義務が生じる(武力攻撃事態法17条)」「不穏分子(テロ)とボランティアとの見分けが必要となる」

 国民保護法制の強制措置・罰則(抜粋)
■@医薬品、食品の保管命令と売り渡しの要請
 A土地、家屋、物資の使用
 B医療の実施の要請については、当事者が拒否しても知事が強制的に行う。知事が拒否した場合は、内閣総理大臣が強制代執行
■「物資の保管命令に従わなかった者」「通行の禁止や制限に従わなかった車両の運転者」「土地、家屋の使用や物資の収用に関し、立ち入り検査を拒み、妨げ、または忌避した者」「警戒区域や立ち入り制限区域への立ち入り制限や禁止、退去命令に従わなかった者」など10項目に該当する人物は処罰

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