SANRIZUKA 日誌 HP版   2001/10/01〜31    

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 2001年10月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(10月2日) 成田中郷地区で市政懇談会(10/4千葉日報)

 成田空港の騒音地域であり、暫定平行滑走路の開業でさらに大きな影響を受ける成田市中郷地区の諸問題について、住民と市が話し合う「市政懇談会」が2日夜、中郷公民館で開かれた。
 懇談会ではまず、西和泉区の岩澤寛氏が成田空港の諸問題について質問した。防音工事から15年以上経過した民家の遮音効果が減退している問題では、小泉孝・空港対策部長が「どのような対策がとれるか、国・県・空港公団と検討し、その対策を強く要望していく」と回答。
 また、国交省が示した成田・中部・関西三空港の「上下分離」民営化案で岩澤氏が「利益重視の空港対策に変わる。地元対策が後退しないか」として市の見解を求めたのに対し、小川国彦市長は「民営化の流れの中に置かれることはやむを得ない」とした上で、「三空港の中で成田だけが内陸空港で性格が違う。私も同じ懸念を持っているので、近く開かれる民営化案の説明会で、しっかりした対応を求める」と話した。
 暫定平行滑走路の開業で谷間地区になる東和泉地区住民は「騒音が5割増しになるのに、地区の要望が実現していない」として不安を募らせた。小川市長は「移転する人、住み続ける人、両者のための徹底した対策が必要と思っている。対策のレベルアップを図っていく」と答えた。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の供用開始日が発表され、滑走路延長北側の住民に不安が広がっている。公団の民営化で防音などの住民対策が後退する懸念もおきている。それに対して、成田市の小川市長は「移転する人、住み続ける人」といいながらも、移転を積極的に進めている。久住中学の移転問題も「2180メートルの暫定滑走路は将来3300メートルに延長するので、騒音で授業はできない」とまでいって、久住地区外への統合移転、事実上の廃校を強引に進めている。
 成田市は国・県・空港公団に対して「対策を強く要望」といっているが、公団の民営化の中で、具体的対策は示せずに、逆に移転を奨励している始末である。やはり、空港は周辺に無人化を強制していくもので、けっして共生できるものではない。

(10月2日) 千葉県企画部交通計画課主幹で芝山鉄道を担当している生田昌司宅(千葉県睦沢町)と乗用車に火炎攻撃が敢行された。

 詳細は本紙参照。

(10月2日) 海外旅行8社の損失520億円(10/2毎日、日経、その他)

 国士交通省は2日、米国の9・11反米ゲリラの影響による国内の航空会社、旅行会社の影響実態をまとめた。それによると、海外旅行のキャンセルが主要8社の取扱高で約520億円(年間取扱高の1・4パーセントに相当)となり、営業収入べースでは約60億円の減収となった。キャンセル者数は約29万人に達したとしている。
 日経新聞が主要20社を対象に実施したアンケート調査では、662億円の減収になる見込み。中小旅行会社の中には経営破綻する例もでてきた。
 9・11後は消費者の海外旅行への不安感が強まったこともあり、多くの旅行会社がパック旅行を中止したり、無料でキャンセルを受け付けた。10月に入ってもキャンセルは高水準で、キャンセル率は米国方面へのツアーではJTBが35パーセント、近ツーが23パーセントに達している。米国向け以外でもJTBで18パーセント、近ツーで7パーセント。消費者が海外旅行全般に対して警戒感をぬぐえないでいることを示している。

 【本紙の解説】
 9・11反米ゲリラを契機とした航空需要の落ち込みで航空会社以上に経営危機に落ちているのが旅行業界だ。アメリカの大手の旅行会社は倒産を避けられないといわれているが、日本も例外ではない。日本からアメリカ本土への旅行が半減以上という激減ぶりで、アジアへの旅行も3割以上減っている。
 航空会社と旅行会社は、91年湾岸戦争時の需要の落ち込みが半年で回復、一年で元に戻ったとかいっているが、今回の落ち込みはその比ではない。さらに、米国の軍事報復戦争が開始され、その反撃が起こったら、回復どころか、いま以上の落ち込みになることは明らかである。そもそも9・11前にアメリカ経済はリセッションに突入しており、どのように事態が進展しても、今までの水準への回帰はあり得ない。経済の大停滞と業界再編で、過半におよぶ会社が倒産することも現実化している。日本の航空業界、旅行業界も同じである。

(10月2日) 欧州大手のスイス航空が倒産(10/3朝日)

 欧州航空大手のスイス航空は2日までに、約170億スイスフラン(1・3兆円)の負債を抱えて経営破綻し、子会社のクロスエアを使つて生き残りをはかることで主力取引銀行と合意した。9・11事件後、世界の大手航空会社の事実上の倒産は初めて。
 スイス航空は、多角経営に失敗し、資金繰りが苦しかった中で、9・11が追い打ちをかけた。大幅な人員整理と業務縮小をしたうえで、収益性のある部門をコストの安いクロスエアに移す。クロスエアは銀行管理のもとで事業を継続する。
 スイス航空は、ベルギー・サベナ航空の株式49。5パーセントを保有しおり、今後はサベナ航空への支援も打ち切られることになり、サベナ航空は連鎖倒産の危機に見舞われている。

 【本紙の解説】
 ついにフラッグキャリア(国策航空会社)の倒産がおこった。スイス空港の倒産は劇的だった。英国のロンドン・ヒースロー空港で2日、スイス航空の旅客機エアバス2機が空港管理当局によって差し押さえられた。理由は未払いの発着料約30万ポンド(約5300万円)の担保のためである。航空機を差し押さえられたスイス航空は、係争中のベルギー政府が機体を押収する恐れがあり、ベルギーのブリュッセル便を運休にした。その後スイス航空は、さらに機体を差し押さえられる事態を避けるためと、金融機関への債務返済猶予を求めるために、全路線の運航を停止した。
 しかし、空港使用料など当面の支払いに必要な資金を金融機関から調達することに失敗し、子会社のクロスエアに経営を移管、事実上破産した。
 スイス航空の破産の出発点は、欧州での運賃規制緩和など航空自由化である。87年に開始された自由化の最終段階として97年に運賃が自由化され、EU加盟国の航空会社は域内のどこでも運航できるようになった。このなかで欧州域内便専門の格安航空会社のラインエア(アイルランド)やイージージェット(イギリス)が急成長し、スイス航空は競争に負けた。スイス航空はベルギー・サベナ航空の主力株主であり、その融資ストップはサベナ経営危機の連鎖を生んだ。世界経済と欧州の経済停滞がスイス航空再建を妨げていたが、9・11以降の航空需要の落ち込みは致命的だった。

(10月2日) 航空保険、カバーできぬ額保証/20億ドル限度に政府保証(10/3各紙)

 政府は2日、9・11の反米ゲリラで航空保険契約の第三者損害賠償保険の保険金支払限度額が大幅に引き下げられたため、20億ドルを限度に保険契約でカバーできない額を保証する6ヵ月間の時限措置を閣議決定した。
 政府は今回の措置を「臨時かつ異例」として、同日から6ヵ月間に発生した航空機事故を対象にし、20億ドルを超える支払限度額が設定された段階で同措置を終了するとしている。9・11後、世界の損害保険会社は戦争やテロ、ハイジャックによる航空機、ビルなどの損傷に対する賠償責任保険の保険金支払限度額を、従来の20億ドルから5000万ドルに大幅に引き下げた。
 政府は「(保険金引き下げで)航空運送を安定的に維持するための環境が十分に確保されず、航空機事故が発生した場合に被害者救済が十分になされない恐れがある」と判断、保険差額分の保証を閣議決定した。

 【本紙の解説】
 日航、全日空は限度10億ドルの保険に加入したので、差額10億ドル(約1200億円)を政府保証するということである。現行の法例では予算化できない財政である。しかし、事故が起きない限り政府支払いとはならないこと、異例の事態ということで6ヵ月の時限措置とし、かつ保険会社が20億ドルを超える支払限度額が設定された段階で同措置を終了するという付帯事項付きで閣議決定した。実際に予算化しないので国会論議も、国会決議もなく決定している。
 この種の国家支出は、軍事費で有事費用なのである。日本には有事法制がない。この約1200億円の支払い保証は有事立法の先取り攻撃だ。「テロ対策特別措置法」に乗じて有事法制の中身が先取りされている。しかし、実際に事故が発生しない限り国に支払い義務が生じないこともあり、他業界の海運業界なども不問に付しているようだ。

(10月2日) 旅行会社が破産(10/3千葉日報) 

 名古屋市の旅行会社、ジェーアンドシートラベルが名古屋地裁に自己破産を申請していたことが2日、わかった。9・11反米ゲリラの影響により予約のキャンセルが相次いだことが引き金になった。帝国データバンクによると9・11による倒産第1号で、負債は約8億5000万円。
 同社などによると、海外旅行を中心に手掛けていたが、9・11後には北米向けをはじめ、オーストラリアやアジア向けなど全方面で旅行予約の約8割がキャンセルされたという。

 【本紙の解説】
 倒産したのは中小の旅行会社だが、今後、中堅、大手も巻き込まれる事態になるだろう。豊かさの一つの象徴でもあった海外旅行のイメージが完全に崩壊した。

(10月3日) 成田着ジャンボ機のエンジンカバー脱落(10/4読売千葉版、千葉日報)

 3日午前9時25分ごろ、インドネシアから成田空港に到着したガルーダ・インドネシア航空880便ジャンボ機(乗客乗員計327人)のエンジンのカバーの一部が脱落していたことがわかった。成田空港の滑走路などに異常はなく、飛行中に落ちた可能性が高いとみられる。同航空によると、なくなっていたのは第4エンジンのカバーの一部で、縦約15センチ、横約30センチのジュラルミンの外板。到着後の点検で脱落がわかった。

 【本紙の解説】
 このようなジュラルミン板が人を直撃したら即死である。建物にぶつかっても大惨事になる可能性が大きい。今回は海上か山林や畑に落ちたので問題になっていないだけだ。人口が密集する内陸部での空港建設は適さないのである。

(10月3日) べルギー国営航空も破綻(10/4読売)

 ベルギー国営のサベナ航空は3日、同国の裁判所に会社更生手続きを申請し、破綻した。同社の大株主で、経営破綻状態にあるスイス航空が同社への金融支援を打ち切ったため、再建を断念した。
 両社とも、もともと経営不振に苦しんでいたところに、9・11反米ゲリラによる乗客減や保険料の増額が直撃した。国を代表する航空会社(フラッグキャリア)が連鎖破綻する異例の事態となった。これを受けてベルギー政府は、サベナ航空の運転資金として、向こう1ヵ月間のつなぎ融資を実行することを決め、当面、運航は継続されることになった。サベナ航空は、ベルギー政府が50・5パーセント、スイス航空の親会社であるスイスエア・グループが49・5パーセントを出資している。

(10月4日) 日航・全日空、米国路線を減便(10/4朝日、毎日、日経)

 日航と全日空は10〜11月の減便計画を3日、国土交通省に届け出た。日航は9・11の影響で旅客が減っている太平洋路線(米本土とホノルル向け)について、週に計34便を減便・運休する。同路線は従来、週に計142便を運航しており、24パーセントにあたる。10月から11月にかけて順次運航を取りやめ、12月以降は需要動向を見て決める。代わりに、機材を有効活用するため韓国路線などを増便する。減便・運休は湾岸戦争当時なども含め過去最大規模という。日航の太平洋路線全体では、事件後に需要が約3分の2に落ち込んでいる。
 全日空は乗客が減少している関西―グアム路線を、週9便から7便に減らす。一部の便では機材を小型化する。当面、27日まで(夏ダイヤ期間中)の措置だが、28日以降(冬ダイヤ)も同様の態勢の見込みで、ほかの路線でも減便を検討中だ。

 【本紙の解説】
 米国の航空会社の減便に引き続き、日本の日航と全日空も減便計画を発表したが、事態の深刻さに追いついていない。日航の太平洋路線は9・11以降、搭乗率が5割前後に落ち込んでおり、実際上3割以上の減便をしなければ、採算の目安といわれる搭乗率70パーセントにはならない。24パーセントの減便でも赤字は累積していく。
 11月から韓国路線とベトナム路線を計8便増便することを同時に発表している。事業の好印象を演出する措置だ。しかしこれは、すでにあった計画を延期せず行うだけのことで、太平洋路線の代わりに増便するという話ではない。ベトナム便は今年の8月5日に、ベトナム航空と日航の共同運航として「今秋にも前倒しで実現したい」と発表していたものだ。スロットは日航が取りやめていた中国路線のものだ。決して太平洋路線の代替ではない。韓国便の増便も既存の計画である。
 日航としては株価対策もあり、事態を軽く見て、対策も甘くなっている。実際はアジア便も3割近く需要が落ち込んでおり、「人気」の韓国便も例外ではない。
 全日空も減便を軽く取られるように発表している。しかし、一部の便をB747(569席)からB767(216席)に小型化している。客席数からすると3分の1近いものになる。
 両社とも「今後の需要動向を見て増減便を機動的に実施、搭乗率低迷による収益悪化を防ぐ」とはいっているが、 米国の軍事報復戦争の開始の中で、航空需要はさらに決定的に落ち込むことが確実だ。
 成田空港全体でも3割以上の減便になる。暫定滑走路は前倒し開港を航空会社から強く要求され受け入れたのだが、肝心の需要がゼロ化してしまった。暫定滑走路の供用開始で「増便計画」と航空会社は言っていたが、現行滑走路も空きスロットだらけになった。
 公団は需要のない暫定滑走路を予定通り開港するのか。ただただ敷地内農民と周辺住民をたたき出すために、騒音をまき散らす航空機を飛ばすのか。これは国家の殺人行為であり犯罪である。

(10月4日) シベリア航空ツポレフ(TU)154型旅客機(乗客65人、乗員12人)が黒海で墜落(10/5各紙)

 ロシア航空当局によると、4日午後1時半(日本時間同日午後6時半)すぎ、イスラエルのテルアビブからロシアのノボシビルスク行きシベリア航空ツポレフ(TU)154型旅客機(乗客65人、乗員12人)が黒海で墜落した。
 ウクライナ大統領府は、墜落当時現場海域でウクライナ軍が地対空ミサイルの発射演習を実施していたと述べた。米政府高官はミサイルが誤射された可能性を示した。ウクライナ軍当局者はAFP通信に対し同機を誤射したことを認めたが、ロシア、ウクライナ国防省は4日段階で誤射を否定している。
 TU154は180人が搭乗可能。インタファクス通信によると乗客の大半はイスラエル人だった。
 イスラム過激派の標的ともなっているユダヤ人が主な乗客だったため、一時は米国での同時多発テロとの関連も危ぶまれた。プーチン大統領も同日開かれた閣僚会議で「テロリストに墜落させられた可能性がある」と徹底調査を指示していた。イスラエル運輸省当局者も「情報を収集中だが、テロも含めた要因を排除しない」と語っていた。

 【本紙の解説】
 真相は明らかでないが、アメリカは「誤射」にしたいのである。これが反米・反イスラエルのゲリラであった場合、アメリカ国内の情勢はより一層混迷し、とりわけ航空業界全体が最後的破綻を突きつけられることになるからだ。
 現段階で原因は不明だが、乗員乗客77人の生命は絶望的である。つまり、航空機は一般的航空機事故でも、軍隊の誤射でも、ゲリラでも乗客のほとんどが死亡する事実には変わりない。その危険性がこの間の事態で衝撃的に明らかになった。9・11情勢に加え、航空需要の落ち込みが加速することは避けられない。

(10月5日) 日航と全日空、賠償上限10億ドルに加入(10/5日経)

 日本航空、全日本空輸は戦争行為やテロによる事故の際に、第三者(ビル、建造物やそこにいて被災した人など)に対する賠償保険金額の上限が10億ドルとなる損害保険に加入した。航空会社の追加保険料は従来の追加分を合わせ、旅客1人につき3・1ドルとなる。
 日航や全日空の場合、年間の保険料は百数十億円と従来の10倍以上に増える計算となる。両社は「利用者に負担をお願いすることを考えざるをえない」としている。
 損保各社は9・11を受けて、戦争などに起因する第三者賠償保険について、まず、支払い保険金の上限を20億ドルから5000万ドルに引き下げたうえで、旅客1人あたり1・25ドルの追加保険料を徴収するとしていた。
 その後、0・35ドルの追加で上限を1億5000万ドルに引き上げる商品を提示、航空大手3社がすでに契約した。日航、全日空は、さらに1・5ドルを追加し、上限を10億ドルとした保険に今回契約した。

 【本紙の解説】
 今回、乗客1人あたりの追加保険料が適用され、最後的に3.1ドルになった。
 国交省まとめで、航空会社は9月11日〜24日の間、旅客・貨物収入が合計約107億円の減収、一年間の旅客収入の0.5パーセントに相当する額が減収となったことがわかった。減収は今後、さらに続きそうだ。
 そのうえに、この航空保険料の追加徴収で、航空会社全体では年間約400億円の費用増が発生する。日航や全日空の保険料支払いは、これまで年間10億円程度だったので、約40倍近い支払い額となる。これは年間旅客収入の2パーセントに相当する。航空保安体制強化にともなう費用増加もあり、各航空会社は、減便による営業収入の大幅減のみならず様々な経費が激増する見込みだ。
 唯一の経費減は減便によるジェット燃料の価格急落である。9・11直前に比べ18パーセント安い。しかし、これも米国の軍事報復戦争が本格化すれば、戦闘機向けに需要は盛り上がり、むしろ高騰するとの見方もある。
 国交省航空局でも、「9月末時点における短期的な影響だけでも、その影響は小さくなく、現在、航空会社において、年度ベースの具体的な影響見込額について算定を急いでいる」と状況を説明している。しかし実際は「年度ベースの具体的な影響見込額」など算定できないほどの危機である。

(10月5日) 成田、関空の民営化(10/6東京)

 石原伸晃行革担当相は5日午後、首相官邸で開かれた特殊法人改革推進本部(本部長・小泉純一郎首相)で、160の特殊法人と認可法人に関する組織見直し案を報告、公表した。新東京国際空港公団(成田空港)と関西国際空港株式会社など17法人の民営化、日本育英会など18法人の廃止・統合を打ち出したが、全体の3分の1にあたる54法人については「引き続き検討」として現段階での結論を先送りした。
 見直し案では、既に首相が民営化方針を示している日本道路公団など道路4公団や住宅金融公庫などのほか、新たに成田、関西両空港や、社会保険診療報酬支払基金など10法人が民営化の対象となった。このうち商工中金は国の関与の度合いが低い「民間法人化」を検討する。

 【本紙の解説】
 成田空港と関空、中部の3社を一体化し、空港を整備・管理する民間法人化と運営・営業の民間会社との上下分離案が認められたようだが、航空会社と同じように、経営危機に陥ったのが成田をはじめとする空港である。国際空港だけでなく、国内線の地方空港も例外ではない。
 成田空港は、世界一高い着陸料にもかかわらず黒字化していない。しかし、かろうじて採算はとれる可能性のある成田に、大赤字の関空と第2の関空候補生の中部国際を抱き合わせ、民営化することを、政府と国交省は考えていた。しかし、その前提がこの間の情勢で完全に崩れたのだ。成田も大赤字になることは確実で、民営化を引き受ける資本はいない。むりやり民間会社を作っても、関空の二の舞を演ずることになるだけだ。
 それでも民営化した場合、周辺住民が危惧しているように、空港は騒音と被害だけを持ち込み、空港周辺の無人化・廃村化が急激に進むことになる。

(10月7日) 三里塚全国総決起集会

 内容は本紙参照。集会プログラムと集会宣言全文を以下に掲載します。

●プログラム
今秋暫定滑走路完成―テスト飛行阻止、成田軍事空港建設粉砕
10・7全国総決起集会
 主催・三里塚芝山連合空港反対同盟
開会:2001年10月7日(日)正午  (於)成田市東峰

 司会挨拶  鈴木加代子  木内秀次
■開会宣言  伊藤信晴
■基調報告  北原鉱治
■特別報告  動労千葉
■暫定滑走路粉砕決戦アピール
  萩原進   敷地内の生活破壊を許さない
  市東孝雄  平行滑走路粉砕
  鈴木幸司  菱田廃村化阻止闘争報告
■三里塚裁判闘争報告  弁護団事務局
■カンパアピール  木内敦子
■決意表明
▽住民団体
関西新空港反対住民、北富士、反戦被爆者の会、部落解放同盟全国連合会、都政を革新する会、婦民全国協、「障害者」、山谷、反戦共同行動委員会、三里塚・木の根全国共闘、二期阻止全国共闘
▽共闘団体
中核派、解放派、戦旗派、蜂起派
■ 集会宣言  宮本麻子
■閉会宣言・デモコース説明・ガンバロー三唱
 *デモコースは小見川県道→東峰神社左折→青行団結の家右折→小見川県道→団結街道→現闘本部先まで約3.5キロ

●集会宣言
 本集会は来春四・一八暫定滑走路開港粉砕に向かう総決起集会である。今月末にも策動される工事終了―テスト飛行を徹底弾劾、粉砕し六ヶ月間の決戦に総決起する。
 二五〇〇メートル平行滑走路は破産した。これは三十余年に及ぶ農民殺しの結果である。このことを一顧だにせず、場当たり的に暫定滑走路に計画変更し、ジェット機を飛ばして追い出そうとするなどは言語道断である。地元住民と空港との「共生」はありえない。東峰神社の立木伐採は土地強奪と住民敵視の象徴である。反対同盟は空港廃港の日まで体を張って闘うことを決意も新たに宣言する。
 景気停滞にあえぐアメリカが九・一一反米ゲリラを口実に戦争を開始した。反対同盟はアフガン人民を殺戮する軍事報復に反対する。パレスチナに対するイスラエルの軍事侵攻を擁護しアラブ人民を抑圧してきたアメリカに反米ゲリラの原因があったのだ。
 小泉内閣はこの軍事報復への参戦を表明した。周辺事態法を踏み越える「自衛隊派兵新法」を国会に提出した。
 パキスタンに向かう自衛隊調査団が成田空港を軍事使用した。成田をアフガン人民殺戮の出撃基地としてはならない。反対同盟はあらゆる民族抑圧を許さず、侵略と戦争に反対する人民と共闘して参戦攻撃と闘う。
 「構造改革」の名の下の資本攻勢、農家切り捨てと闘おう。政治の腐敗、ファッショ的議会運営を許すな。土地収用法の改悪と教育関連法の反動立法を弾劾する。激化する有事法制・改憲攻撃と闘おう。
 暫定滑走路は開港を前に破綻をさらけだしている。二一八〇メートル短縮滑走路の航空需要は、予定の三分の一にも達しない。加えて反米ゲリラが世界的な航空危機をもたらし、成田空港を直撃している。開港は政府・公団の醜態を満天下にさらすであろう。即刻とりやめ暫定計画を破棄せよ。
 反対同盟は滑走路工事終了後のテスト飛行に対して現地緊急闘争に決起する。暫定滑走路開港阻止! 来春三・三一現地闘争―四・一四全国集会への総決起を訴える。
 二〇〇一年十月七日
 三里塚芝山連合空港反対同盟

(10月8日) 成田、再び厳戒態勢に(10/9朝日、読売、毎日、産経の各紙千葉版)

 県警警備課は8日午前3時前、警察庁から警戒強化の指示を受け、1500人の隊員を抱える空港警備隊が空港内外でハイジャックやテロ防止態勢をさらに強化した。防弾チョッキを着た警察官がターミナル内を巡回し、米本土やハワイなどに向かう航空機では、金属探知機などの検査に加え、搭乗直前にも手荷物検査を実施した。
 新東京国際空港公団は同日未明に対策本部を設置。入場ゲートでの身分確認や通行車両の検査を一層厳重にした。
 日本航空によると、未明の攻撃開始だったため、会社と連絡が取れないまま搭乗手続きを終えたが、会社からの連絡で海外出張を取りやめたビジネスマンらが午前中の同社の国際便だけで30人ほどいたという。
 県警では、空港へジェット燃料を運ぶパイプラインの拠点となる千葉市の千葉港石油ターミナルも重要警備施設として厳重に監視中。県内に複数ある無線などのレーダー施設も、所轄の警察署が警備している。

 【本紙の解説】
 成田空港は三重の警備体制の強化に入っている。
 ひとつは、成田空港が反米ゲリラの最大の警戒地点のひとつであり、そのための警備である。94年10月11日のマニラ発セブ島経由成田行きフィリピン航空機の爆破が、今回の9・11世界貿易センタービル破壊攻撃の出発点であると、ブッシュ大統領は10日、FBI(米連邦捜査局)で演説している。(10/12千葉日報から)
 そのため、太平洋線最大の離発着空港である成田は米国本土の空港以上の警戒に入った。アメリカの空爆開始で、警戒態勢は最高レベルの「フェーズE(非常態勢)」をさらに徹底強化したものとなった。空港と航空機と乗客に対する警備である。
 ふたつには、暫定滑走路供用開始阻止の三里塚闘争ゲリラからの警備強化である。暫定滑走路の供用開始のために飛行テストが開始される。そのために空港そのものと周辺関係地域の警備が強まっている。
 みっつには、自衛隊の出兵と軍事物資空輸のための警備である。10月6日に小牧基地から自衛隊C130が出兵したが、救援物資は今回、成田市和田にある救援物資倉庫から事前に小牧に運んでいた。今年1月インドの地震救援の時は、成田にC130を飛来させ、成田空港で物資を積み込んで飛び立った。今回もこのパターンでやる計画だったが、10・7三里塚全国集会の警備があり、空港内では「反米ゲリラ対策警備」があり、そこに自衛隊の救援物資搬入などの警備が重なると三重の警備になるので取りやめた。1月とは逆に成田空港から物資を民間貨物機で小牧に運び、小牧基地からの出発になった。
 今回、難民救援物資搬送のための自衛隊先遣隊(調査団)のパキスタン派遣は成田空港を使った。自衛隊の貨物輸送機も人員輸送機も飛行距離が短く、効率的に兵站作戦を行うためには、本来は民間機で成田空港を使うのがベストだといわれている。
 日本が実質的にアフガン・パキスタン侵略戦争に参戦した現実の中で、侵略参戦体制構築のためには治安的にも、政治的にも三里塚闘争の存在は相容れない。それゆえ暫定滑走路の供用開始を急ぎ、三里塚闘争を解体し、成田空港を全面的に軍事基地として使おうとしているのである。

(10月10日) 海外旅行の傷害保険/「戦争免責」適用へ(10/10日経)

 国内損害保険各社は米軍などによるアフガニスタン空爆開始を受けて、海外旅行中のけがを補償する傷害保険で保険金の支払いを制限することを決めた。戦争による被害を補償対象から外す「戦争保険免責」を適用する。旅行中に軍事行動や二次的なテロに巻き込まれてけがをしても、保険金を受け取れなくなる。
 保険金支払いの対象外になるのは、(1)米軍などによるアフガニスタンヘの武力行使、(2)武力行使に対する再度の報復措置として発生した2次テロ、(3)米国を離着陸した航空機が飛行中に遭遇したテロ――などによるけがや損害。旅行先がアフガニスタンや米国など直接の当事国でなくても、報復攻撃やそれに対する2次テロを原因とするけがなら補償が受けられなくなる。

 【本紙の解説】
 傷害保険では、戦争やそれに準ずる被害について補償の対象外となっている。「準ずる」とはさまざまな政治的ゲリラなどが含まれている。9・11の世界貿易センタービルヘの反米ゲリラは、本来ならば免責条項適用例だが、政治的配慮で「戦争やその他の変乱」にはあたらないとして、保険金の支払いが決まっている。理由は9・11に保険を適用しないと、保険業そのものの「信用」が落ち、旅行保険や傷害保険が成り立たなくなると保険会社が判断したことによる。
 いずれにしろ時代は「戦争と変乱」の時代で、海外旅行も命がけとなった。これは当然のことである。アメリカをはじめ、日本も欧州各国も、アジア、中央アジア、中東、アフリカ、中南米などを新植民地として支配し、抑圧・収奪し、そこから膨大な利益を吸い上げている。これまで、そうした「富」に支えられて世界中を「平和的に」旅行していた。それ自身が問題だったのである。
 海外旅行傷害保険の「戦争保険免責」の明確な決定で、日本のからの海外旅行がより一層減ることは確実だ。これで航空会社、旅行会社の経営危機に拍車が掛かることも間違いない。

(10月10日) 航空テロ対策運用開始/発生時、飛行と離陸禁止(10/11千葉日報)

 国土交通省は10日、9・11反米ゲリラを教訓に航空機を利用しだ同様のハイジャックが発生した場合、飛行中の航空機を最寄りの空港に速やかに着陸させ、出発機については離陸を禁止する、とのハイジャック対策の運用をはじめた。海外から日本に向かう国際線旅客機には引き返しを要請する。
 同省によると、緊急着陸や離陸の禁止でハイジャックを未然に防ぎ被害を抑える一方、ハイジャックされた航空機とほかの航空機の空中衝突を避けるのが狙い。

 【本紙の解説】
 10月に入り各省庁が一斉に「対テロ対策」をうちだした。国土交通省はこの航空「テロ」対策の運用を開始した。法務省も10日、松尾邦弘事務次宮を本部長とする「緊急テロ対策本部」を設置した。
 テロ対策を口実に入国管理局や刑事局、公安調査庁などで構成する統一的な情報管理システムを作り、外国人への治安弾圧を強めている。また、最高検察庁も9日に「テロ対策本部」を設置した。
 日本の各省庁は、9・11を口実に戦前的な治安体制の確立を一挙に図っている。これは、日本の参戦体制構築にむけた攻撃としてある。
 また、国土交通省のハイジャック対策が、発令した同日に適用される事件が発生した。成田発米国アトランタ行きデルタ航空56便が出発直後、「客席前方で異臭が発生したため引き返す」との緊急着陸の要請があり、午後5時20分すぎに着陸した。点検のため56便は欠航したが、異臭の種類や発生場所などははっきりしない。
 この影響で成田空港は一時、滑走路を閉鎖。消防車や救急車、警察官などが慌ただしく待機したため一時騒然となった。
 今後このようなことは頻発するであろう。

(10月10日) 欧州委/航空行政で米と一線/包括的救済認めぬ方針(10/11朝日、日経)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は10日、欧州航空業界に対する各国政府による大規模な救済策を認めない方針を決めた。補助金を極力抑制し、競争を促すというEUの基本方針に沿った措置で、米テロ事件後、米航空業界に150億ドルの支援を決めた米国とは一線を画した。これにより、欧州航空業界のリストラや再編が一層加速するとの見方が強まっている。
 デパラシオ委員(運輸政策)は記者会見で、航空各社の経営実態と、9・11以降に生じた損失とを区別する必要性を強調。損失全体を埋めるような支援には否定的な姿勢を示す一方、空港の安全対策強化や保険料増額による負担増に対しては、「共通基金の創設などによって支援する」と述べた。そのうえで各社に割り当てられた空港発着枠の見直しを進めるなど、域内の航空自由化を促す姿勢を示した。

 【本紙の解説】
 欧州ではこの間に、スイス航空、ベルギーのサベナ航空が相次いで経営破綻し、英国のブリティッシュ・エアウェイズも事業縮小を進めている。欧州議会は、その政府援助をめぐって論議が沸騰したが、政府援助は最小限度しか認めないことになった。航空会社の倒産を防ぐために総計500億ドル(内訳は9月26日付日誌参照)もの援助を決定したアメリカとは大違いである。
 しかし、9・11直後の強制的な運休にともなう損害や、安全対策強化にともなう各国政府の補助金支出は認めることになった。
 スイスやベルギー、イギリスなどはアメリカ並みの援助を主張したが、ドイツなどの反対でこのようになった。理由は「業界調整を禁止する競争法ルールを弾力的に運用」といっているが、実はドイツのルフトハンザドイツ航空などが、これをチャンスとばかりに倒産で運休になった路線への拡大や経営危機に陥っている航空会社のM&Aを進めているからだ。これで、欧州の航空会社も最後的な大競争時代に入り、3社ほどのメガキャリアへの合併再編に進むだろう。

(10月12日) 民間航空の祖 伊藤音次郎の願い「航空神社」を復元(10/12千葉日報)

 わが国民間航空界の先駆けとしてしられ、戦後は開拓農民として成田市東峰に入植した伊藤音次郎氏が習志野市津田沼に創建した「航空神社」がこのほど、成田空港に隣接した航空科学博物館(芝山町岩山)の敷地の一角に復元・建立された。音次郎氏とその子孫が自宅で祀(まつ)ってきた6神体を安置したもので、音次郎氏が気にかけ、果たせなかった願いが息子と孫により実現された。
 伊藤音次郎氏(1891〜1971)と言えば、わが国で2人目の純民間飛行家。戦前・戦中は伊藤飛行機製作所を経営。恵美1号や鶴羽号など単発の複葉機を製作し、その恵美1号で民間人として初めて東京訪問飛行を行った人物として知られる。
 音次郎氏の孫で、現在は成田市三里塚に住む伊藤幸雄さん(48)によると、1917(大正6)年、当初あった千葉市稲毛海岸の工場や格納庫が台風によって破壊されたため津田沼に移転。1940年になって、飛行訓練中に事故のため命を落としたパイロットたちの霊を鎮めるため音次郎氏が航空神社を創建した。ご神体はそのパイロットたちの名前を記した木のお札だという。
 終戦を迎え、飛行機製作を断念した音次郎氏は1953年、家族や従業員とともに県有地の払い下げを受けて成田市東峰に入植、開拓農民として恵美農場を経営した。
 この時に東峰の地区住民の鎮守さまとして建立されたのが東峰神社で、航空神社の6神体も「農民の神様」である二宮尊徳のお札と一緒に安置された。
 その後、成田空港建設が発表され、音次郎氏は用地売却の第1号として協力。東峰の地を離れ、再び津田沼に戻った。その際、6神体も一緒に持ってでた。音次郎氏は6神体を自宅に安置して祀っていたが、1971年に死去すると、三男の仁三郎さんが6神体を引き継いだ。その仁三郎さんも77歳。現在は重い病気を患っている。
 「航空の発展に尽くして亡くなった人たちの霊をこのまま自宅で祀っていくわけにはいかない。自分の代のうちにはっきりさせたい」という仁三郎さんの思いを聞いた息子の幸雄さんが、「航空に関連した場所に神社を復元・建立したい」と場所探しに奔走。成田空港に隣接する航空科学博物館が受け入れてくれた。
 航空神社は先月末、同博物館の屋外飛行機展示場の一角に完成、遷座式も行われた。高さ2・5メートル前後の小さなものだが、鳥居には「航空神社」の文字が掲げられた。
 幸雄さんは「音次郎も6神体を祀る場所を探していたと聞く。未来永劫にわたり6神体を伊藤家で祀るのは難しいし、建立できてよかった」と肩の荷を下ろした表情で語っている。

 【本紙の解説】
 伊藤氏が自宅で祀ってきた「航空神社」を航空博物館に遷座(せんざ)することで、東峰神社は東峰部落の「総有」であることが疑いもなく明らかになった。
 公団が東峰神社の立ち木を伐採した根拠は以下のようになっている。東峰神社は最初は「航空神社」であり、寺田氏所有の土地に伊藤氏がご神体を津田沼から持ってきた。その後、土地は寺田氏から浅沼氏が買い取り、それを公団が買収し登記したので、公団は自分のものだ。立ち木も土地と一体なので公団のものだ。しかし、これは東峰神社を個人所有の「氏神」(うじがみ)として扱った主張である。
 東峰神社は確かに、伊藤氏が個人的に持っていた氏神を津田沼から東峰に遷座してきたものだが、このときに勤労の神として、部落の産土神として「二宮尊徳」を合祀した。そのため、東峰神社の門柱の裏には「航空神社」と彫ってあるところをコンクリートで埋め、表側に東峰神社と彫り直してある。こうして東峰神社は部落の産土神となった。神社の土地も当然、部落所有の総有となった。公団の主張はこうした事実をすべて無視した暴論だ。
 部落所有の総有である点は論争の余地もないほど明白な事実だ。総有関係にある全員の同意なしには売買不可能であり、その登記は無効なのだ。総有という所有形態は近代的所有形態ではなく、登記にはなじまない。
 伊藤氏が移転したときに合祀していた「航空神」だけは移転先の三里塚に再び遷座した。したがって、東峰神社は二宮尊徳を神体とする正真正銘部落所有の産土神になったのである。
 なお、千葉日報は「航空神」を飛行訓練中に事故でなくなったパイロットとしているが、「航空神」は「天鳥船神(あまのとりふねのかみ)である。「出雲国譲りの神話」にでてくる神である。天鳥船神は神崎神社(千葉県神崎町)の祭神であり、天を翔け海を走る様が疾く鳥のような神であり、そのために航空の神、空軍の神になった。
 この天鳥船神に事故で亡くなった人6人を合祀したのであろう。(詳しくは2000年8月の「ウンチク講座」参照)

(10月12日) 成田空港暫定滑走路を公開/15日から飛行検査(10/13千葉日報)

 成田空港の2本目の滑走路として、来年4月18日にオープン予定の暫定平行滑走路がほぼ完成、12日に報道陣に公開された。
 完成したのは基本施設である2180メートルの滑走路本体と誘導路、航空保安無線施設、航空灯火施設など。まだ、航空保安無線施設や着陸帯整備、付け替え道路などで一部の工事が残っているが、今月末の工事完成に向け最後の追い込みに入っている。完成した滑走路には、4000メートル滑走路を離着陸する航空機が誤って着陸しないよう縦54メートル、横22メートル四方の巨大な×印が9カ所にわたりペイントされている。
 一方、基本施設の完成にともない、15日からは国土交通省による航空保安無線施設の飛行検査も始まる。同省の飛行検査官を乗せたYS―11が羽田空港から飛来。15日から19日までは、超短波無線標識・距離情報提供装置(北総VOR/DME)の基本性能をチェックするため、空港周辺を周回飛行する。22日から26日までは北総VOR/DMEの電波を受信して着陸進入し、コース誤差を検査する。29日からは計器着陸のための誘導電波施設(INS)の検査に入る。この検査は12月21日頃までかかる予定。さらに12月中に、滑走路わきに設置された進入角指示灯(PAPI)や進入灯検査も実施する。
 飛行検査が終了し、国交省から合格通知があれば、暫定平行滑走路の供用を世界に知らせるノータム(航空情報発信)の準備に入る。

 【本紙の解説】
 空港公団は、滑走路が完成もしていないのに、飛行テストを強行しようとしている。航空各社が5月20日開港予定の前倒しを要求したからだ。しかし、その航空会社自身が、暫定滑走路の供用開始で増便どころか、今や減便に大わらわなのである。前倒しの必要はないのだ。あるのは軍事目的だけだ。アフガン・パキスタン侵略戦争への日本の参戦で成田が補給のための兵站基地になるからである。政府・国土交通省は暫定滑走路で航空機を早く飛ばし、反対派地権者を追い出し、三里塚闘争を解体したいのだ。そのために飛行テストを急いでいる。
 A滑走路の時(77年)は、5月6日に鉄塔を倒した直後からYS11での飛行テストに入り、7月末のジャンボ機の発着テストをへて、11月26日に「飛行場・航空保安無線施設及び航空灯火の完成検査合格」が降りた。約6ヵ月かかっている。
 今度はそれを2ヵ月ほどでやろうとしている。またテスト自身もインチキでペテン的である。本来、騒音調査も飛行テストの項目のひとつだ。そのためにはボーイング767機やボーイング777機でのテストをしなければ騒音はわからない。騒音下住民もそのことを要求している。公団はかたくなにそれを拒否し、YS11の無線テストだけですまそうとしている。
 9・11で暫定滑走路の前倒し供用開始を要求する航空会社はなくなっていることを公団は一番よく知っている。にもかかわらず供用開始を急ぐのは、三里塚闘争解体と成田空港の軍事使用のためなのである。

(10月12日) 日本航空最終赤字 当期400億円に(10/13 朝日、産経)

 日本航空(JAL)は12日、02年3月期の業績見通しの下方修正を正式発表した。連結では、売上高が当初見込みより1700億円減り、経常損益が430億円の黒字から500億円の赤字に、当期損益は250億円の黒字から400億円の赤字に、それぞれ転落する。このため期末配当(3円)も見送る。航空保険料の引き上げに対応し、乗客1人当たり国際線で5ドル相当、国内線で500円の特別料金を運賃に上乗せすることも正式に決めた。
 連結の当期赤字と無配は4期ぶり。グループのリストラ計画を加速し、今年度の人員削減数に新規採用抑制などで600人を上積みする。グラウンドなどの資産も売却する。責任をとり、役員報酬を5〜15パーセント削減する。

 【本紙の解説】
 9・11以降、国際線の旅客数は前年同期比で3割減少で推移している。湾岸戦事時はイラク空爆が始まった91年1月以降の半年間で国際線旅客数が約1割減った。現在の減少率は、湾岸戦争時の3倍である。旅客数が前年比の3割減少ということは、搭乗率が5割前後になり、運航計画の全面見直しが必要になっている。太平洋路線だけは減便したが、そのレベルでは追いつかない。また10・8空爆開始でより減少するといわれている。外務省がトルコ、エジプトなど20カ国に旅行延期勧告を出したことも大きな影響を与えそうだ。
 9・11前のIATAの予測でも、加盟275社の2001年の損益が、総額25億ドルの損失になり、赤字計上になると予想していた。その赤字額が70億ドルに達する可能性もあると下方修正された。航空業界で未曽有の赤字だが、そのうえ景気後退もあり、実際の予測はできないほどだといわれている。
 日航は、保険料が国際線で3・1ドル増えたことに対して5ドルの乗客負担増としたが、保安コストの大幅上昇分もあり、営業収入の増加にはつながらない。
 すでに米国の国内線航空会社ミッドウェー航空が9・11直後の12日に倒産し、大手10社のうちコンチネンタル航空(全米5位)、USエアウェイズ(6位)、アメリカウェスト航空(7位)の3社が倒産の危機にあり、政府援助でかろうじて倒産をまぬがれている。欧州ではすでにスイス航空、サベナ・ベルギー航空というフラッグキャリア(国策航空会社)が倒産している。オセアニアでも、オーストラリアのアンセット・オーストラリア航空が9月14日に倒産した。日本人100人がブリスベンに置き去りになって問題になり、コードシェア(共同運航)していた全日空が救出に向かった。アンセット航空はニュージーランド航空の子会社でオーストラリアではカンタス・オーストラリア航空につぐ航空会社である。このアンセット航空の倒産により、ニュージーランドのフラッグキャリアであるニュージーランド航空の倒産も、政府援助がなければ確実といわれている。
 80年代の中頃からアメリカを中心に経済の中心的牽引業界のひとつであった航空業界が、アメリカ経済の後退による29年型恐慌への突入で大再編前の情勢にあった。それが9・11で一気に促進された。日本の航空会社もこの世界航空業界の大再編と無縁ではない。航空会社と運航便の過剰が問題であり、それは半減するとまでいわれている。
 暫定滑走路の経済的必要性はまったくなくなった。

(10月12日) 羽田空港 南風時の着陸検討を中断へ(10/13毎日)

 国土交通省は12日、南風時に東京国際空港・A滑走路に北側から有視界飛行で小型機定期便を着陸させる「ノースバード」運航計画について、検討作業を中断することを決めた。調査飛行の結果、視界不良などで就航率が悪く、運航を希望する航空会社がなかった。定期便ではない警察や海上保安庁などの公用機による運航は早期に実現したい意向だ。
 同省は同空港の効率的な利用のための方策として、南風時に「60人乗りまでの小型機を1日に15回まで」着陸させること構想。今年春と夏の2回、10フライトの調査飛行を計画したが、5回しか就航できなかった。航空会社へのアンケートでも運航を希望する会社はなく「ノースバード」の実現性は低いことがわかった。
 一方、同省では、小型機定期便運航会社や自治体から要望のある、有視界ではない計器飛行の可能性を探ることにしている。

 【本紙の解説】
 小型機で有視界飛行では需要はないだろう。いったん中止になったのは当然である。しかし、横浜ベイブリッジあたりから北上し、東京の三軒茶屋でUターンし、渋谷、五反田、大井を通り、羽田のA滑走路に着陸する「ノースバード」は、羽田の全面活用のためには絶対必要な運航計画である。国土交通省の本当の狙いは、計器飛行でジャンボ機の着陸コースにしたいのである。つまり、羽田A滑走路の南風時の北側からの着陸が可能となると、羽田空港の離発着能力は約50パーセント近く増加するといわれている。そのために今回の「失敗」にもかかわらず、今度は「計器飛行の可能性を探る」としているのである。
 国土交通省と石原東京都知事は横浜、川崎と大田区、品川区、渋谷区、世田谷区の住民を騒音地獄にたたき込もうとしている。

(10月13日) 成田空港「発着枠没収」停止へ(10/13読売夕刊)

 国土交通省は13日、日米線などを減便している国内外の航空会社に対し、成田空港の発着枠を十分に活用していない場合に発着枠を没収する国際ルール、「ULルール(use it or lose it )」の適用を停止する方針を決めた。通常は自社の発着枠を8割以上運航しないと没収されるが、11月末までルール適用を停止する。12月以降も航空各社の動向を見て、必要なら停止期間を延長する。米航空各社は利用客激減で日米線の2割程度を減便中。今後の運休が決定した路線もあり、このままでは、成田の発着枠を失う米航空会社が出るのが確実となっていた。このため米政府が、ULルールの適用停止を要請していた。

 【本紙の解説】
 国土交通省は11月のIATA(国際航空運送協会)の発着会議までに、日米航空交渉の決着を迫られていた。オープンスカイ政策に基づく発着枠のさらなる拡大を要求する米側と、米国シェアの縮小を要求する日本側の決裂は必至だった。決裂の場合、「補償措置(セーフティーネット)として後発会社(米企業)に2002年から2005年までに計週35便の増便を認める」との98年の交渉合意条項が発動されそうだった。日本側はその「週35便」を暫定滑走路枠の提供で済まそうとしていた。
 しかし暫定滑走路は中型機・近距離専用なので、米国本土直行便はもとよりハワイ行きも離陸できない。そのため日米航空交渉は決裂し、補償措置の約束不履行に陥る公算が大であった。
 ところが反米ゲリラの影響で日米航空交渉そのものの必要性がなくなってしまった。国土交通省は「一安心」で、アメリカのULルールの停止要求はすぐ受け入れた。
 しかし事態はそれ以上に発展している。成田空港の発着枠はがら空き状態になっている。米国の航空会社は太平洋路線を5割ほどまで減便したが、さらなる減便を決定している。暫定滑走路が供用されても、それを使う航空会社自体が運航便を縮小している。空港公団の経営危機も必至だ。いまや暫定滑走路の供用開始は公団の赤字づくりに「貢献」するだけである。

(10月13日) 旅客機導入費の融資制度廃止へ(10/14千葉日報)

 小泉内閣の特殊法人改革にともない、旅客機の新規導入時に航空会社が利用する財政投融資の制度が2002年度に廃止の見通しとなり、国内航空会社12社でつくる定期航空協会(会長・兼子勲日本航空社長)が、国土交通省に制度存続を要請していることが13日分かった。
 航空会社は、反米ゲリラによる大幅な旅客減少で減益必至。日航は連結決算で500億円の赤字の見込み。融資の廃止は経営圧迫を加速させ、新型機導入も遅れ、場合によっては運航計画の全面見直しにもなる。廃止される見通しの制度は、特殊法人の国際協力銀行(東京)の航空機輸入金融制度。費用の半額を融資し、返済期間は15年、利率も1.5パーセント前後の固定金利で、返済期間が数年程度の一般金融機関の融資にくらべ有利な条件になっている。
 協会などによると、日航、全日空、日本エアシステムの3社は02年度、最新ハイテク機ボーイング777ジャンボ機など計20機の採用を計画している。

 【本紙の解説】
 世界的に危機に陥っている航空会社の援助が問題化している。米国では、総計500億ドルの援助をすでに始めた。またEUでは、スイスやベルギーの「政府援助でフラッグ・キャリアを守ろう」との動きと、それでは「自由競争に反する」とのドイツ政府やルフトハンザ航空などの反対意見で真っ二つになっている。
 米国の政府援助で米国航空会社が格安運賃でダンピングを始めた。これを監視せよと、日本とEUの航空会社は叫んでいる。実際に米国の航空会社は格安チケットで米本土東海岸往復で5万を割った。旅行会社の関係者ならば2万5千円とか、グアム2人往復で5万とかのチケットを売り出しいる。米国の航空会社は経営破たんの危機に陥りながら、政府援助をテコにEUと日本の航空会社をたたきつぶそうとしてダンピングまがいの安売りをしている。9・11反米ゲリラを契機に各国航空会社の生き残り戦争が開始されたのだ。
 最終的に生き残るのは欧州で3社、米国で4社と言われる。日本は飲み込まれそうだ。
 日本政府は航空資本への政府援助を法的根拠なしにやっている。10月2日に「航空保険契約の第三者損害賠償保険」の保険金支払限度額が大幅に引き下げられたため、20億ドルを限度に保険契約でカバーできない額を保証する6カ月間の時限措置を「臨時かつ異例」としながらも閣議決定した。実際の財政は戦争その他で航空機事故が起こらなければ動かないので、議会内で反対は出なかった。
 旅客機導入時の財政投融資制度の廃止でも、財務省は代替措置を検討中だ。融資の形態はまだ未定だが、低利融資や無利子融資を検討している。
 国際協力銀行でも、来年度導入する航空機の前払い金に対して今年度中に200〜300億円前後の融資を行う方向で検討している。
 行政改革で、国際協力銀行による航空機購入のための財投は予定通り廃止される。しかしそれに変わる政府援助を必死に追求するのは、現代戦争において民間航空機と航空会社はもうひとつの巨大な軍隊だからという理由である。

(10月15日) 暫定滑走路の飛行テスト開始(10/16各紙)

 成田空港の2本目の滑走路として建設中の暫定滑走で15日、航空保安無線施設が正常に作動するかどうかを調べる国土交通省の飛行検査が始まった。12月21日までの予定で、同省の航空機で実施された。滑走路南端から約400メートルの成田市東峰には、反対派地権者の住居があり、その上空を通過するテスト飛行は今月下旬以降になるという。
 15日午前、同省のYS11型機が羽田空港を飛び立ち、成田空港で検査官や検査機器などを降ろした後、銚子市上空へ飛び立った。19日までの間、航空機に飛行位置を知らせる電波を地上から送る無線施設(VOR/DME)の性能検査する。施設は、滑走路から約800メートル北に設置されている。
 22〜26日には、着陸に際しての同施設の性能検査が予定されている。いずれも上空での検査で、暫定滑走路への着陸は行われない。
 その後、29日から12月21日まで計器着陸装置(ILS)の検査に移る。着陸の進入角度などをチェックするもので、前半は滑走路北側からの、後半は南側からの着陸検査を予定している。
 すべての検査終了後、問題がなければ、国土交通相から合格通知が出される。これを受けて、新東京国際空港公団は国交省に正式な供用開始日を届け出る。各国の航空機関、航空各社への周知期間を経て、来年4月に供用が姶まる。

 【本紙の解説】
 飛行テストを2カ月間に短縮して、4月18日の供用開始を急いでいる。だが、国土交通省自身が「成田空港の暫定滑走路供用開始時点の需要は、予測することさえ困難を極める」と言っている。それなのに開港を急ぐ目的は、ただ一点、地権者のたたき出しだけにある。開港重圧で三里塚闘争を解体することだけが目的なのだ。暫定滑走路を本来の2500メートル(3300メートル)に延長し、三里塚闘争を壊滅させ、日本のアフガニスタン侵略戦争参戦体制をつくりあげようとしている。

(10月15日) 反対同盟、飛行テスト阻止の緊急闘争

 闘争報告は本紙参照

(10月15日) 騒対協/「防音効果保つ定期的工事を」(10/16朝日)

 成田空港を発着する飛行機の騒音を抑えるため、周辺の住宅で施されてきた防音工事の効果が薄れているとして、成田市内の騒音下の住民でつくる「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(平山正吉会長)は15日、新東京国際空港公団と成田市に、防音効果を維持するための定期的な機能回復工事の実施などを求める要望書を提出した。
 要望書は、同協議会が7月に同市西和泉地区で実施した実態調査に基づき提出された。調査では、設計基準とされる25デシベル以上の防音効果が得られたのは、調査対象の35戸のうち12戸に過ぎなかった。原因について同協議会は「何らかに起因する経年劣化」と結論付けている。

 【本紙の解説】
 成田空港の民営化が既定方針になっている中で、騒対協が危機感を持っている。民営化すれば、いままで通りの騒音補償がなくなるとの不安である。成田空港での環境対策費はこれまでの総額で約2000億円にもなる。かつて運輸省職員は「成田空港への環境対策費で地方空港が3カ所出来る」とまで言って、その打ち切りをほのめかした。しかし98年7月に共生大綱が打ち出され、環境対策費は削減されず、むしろ増大した。単年度で約200億円以上にもなっている。
 しかし、暫定滑走路の完成でその打ち切りも問題になっている。公団民営化ならば打ち切り・縮小は確実だ。
 空港と周辺住民との共生はありえない。空港は周辺地域の無人化を必ずもたらす。騒音下は住居には適さず、土地価格は下落する。空港は周辺地域に甚大な経済的損失さえつくりだす。いままで公団、県と周辺自治体は、空港建設の経済効果は絶大であると宣伝してきた。そのため、周辺住民は空港建設に反対せず、むしろ協力の姿勢をとることが多かった。しかし里山の荒廃、土地の下落と公団買い上げの拒否、久住中学の統合移転=実質上の廃校、防音効果の低下など、空港周辺の被害がぞくぞくと表面化している。そのため、空港建設そのものに反対する声が強くあがっている。反対同盟への支持も強まっている。
 その危機感で、成田市と騒対協が「防音効果を維持」を理由に再度の住宅建て替え費用の要求をした。再度の周辺対策費のばらまき要求である。これで空港建設に協力を取り付けようとする試みである。しかしこのような「対策費」では解決できないほど、空港周辺、騒音地域は荒廃している。

(10月15日) 成田空港郵便局マスク義務付け(10/16産経)

 米国の炭疽菌の感染事件を受け、成田空港の新東京国際空港郵便局では15日から、郵便物に付着した炭疽菌を吸引しないよう、職員にマスクの着用を義務付けた。
 郵政事業庁では、全国の郵便局に対し、不審な郵便物などを発見した場合には届け出るよう指導しているが、海外の郵便物を扱う新東京国際空港郵便局では、独自の追加対応としてマスクをすることになり、一部職員は手袋も着用する。
 新東京国際空港郵便局は一日に60万〜90万通のエアメールが到着する国内では最大規模の国際郵便物拠点で、約150人の職員が24時間体制で勤務している。

 【本紙の解説】
 「テロ防止法案」の成立で日本のアフガニスタン侵略戦争への本格参戦で日本も米国、英国につぐゲリラの対象国になった。成田空港はその第一のターゲットである。成田空港から航空機に乗ることも命がけになったが、成田空港に入ることも命がけになりつつある。

(10月16日) 全日空、米路線9便減便(10/17日経)

 全日本空輸は16日、11月の国際線の事業計画を変更し、国土交通省に申請したと発表した。旅客が減少している米国路線を当初計画にくらべ合計で週9便減らす。
 米路線は各就航都市への直行便を見直し、成田一シカゴ線(週7便)と成田―ワシントン線(同)を統合。成田―シカゴ経田ワシントン線(同)とし、週7便分を減便する。関西国際空港―グアム線は週9便から7便に減らす。米路線の減便分はアジア路線に振り替える。成田―ソウル線を週1便から7便に、成田―大連線を週1便から週3便に増やす。テロ後の搭乗率が5割を切る米路線に対し、中国路線は8割弱を維持している。

 【本紙の解説】
 全日空は10月4日の減便発表のとき、一部の便は機材を小型化したが、実際の減便は関西―グアム路線を週9便から2便減らし7便にしただけであった。日航が太平洋路線を24パーセント削減したことにくらべ、今回の需要落ち込みを軽く見ていた節がある。
 その全日空も、米国路線を17パーセント削減に踏み切った。米路線の減便分をソウル、大連線に振り替えているが、アジア路線全体の需要も激減しており、全日空の思惑通りなるわけではない。

(10月16日) 米デルタ航空/日本への直行便3路線廃止発表(10/18読売)

 米航空第3位のデルタ航空は16日、ロサンゼルス―成田、ロサンゼルス―名古屋、ニューヨーク―成田の3路線を廃止すると発表した。旅客数の大幅減が続き、米国から日本への直行便の採算割れ長期化が懸念されるためだ。日本への直行便はアトランタ―成田便のみとなる。
 ロサンゼルス―成田間は91年2月から週6便、ロサンゼルスー名古屋間は今年4月から毎日、それぞれ運航しているが、今年12月1日で業務を打ち切る。

 【本紙の解説】
 デルタ航空はすでにデイリー(週7便)の成田―ニューヨーク線の運休を来年3月15日まで決めていた。それに加えて成田・名古屋−ロス線を12月から運休にした。計20便である。デルタの米国便は成田―アトランタ線のデイリー運航だけになる。
 約4分の3の削減になった。これが現在の航空需要の実状である。「長期化の懸念」もその通りになりそうだ。

(10月17日) 航空業支援拡大へ道/欧州委の批判抑える(10/18朝日)

 反米ゲリラで苦境に陥っている欧州航空業界への支援策をめぐって、欧州連合(EU)運輸相会合で激しい論争が繰り広げられた。フランスやイタリア、アイルランドなどの各国政府は17日、業界救済の必要性を主張し、航空行政のまとめ役である欧州委員会を押し切って支援拡大への道を認めさせた。
 150億ドルもの支援をする米政府の決定について、欧州委は市場の競争をゆがめかねないと批判してきた。16日ルクセンブルクで開かれた会合でも、デパラシオ委員(運輸政策)は、テロ事件後、米空港が閉鎖された4日間の減収など、直接の損失の補償に支援は限られるという考えを強調した。
 しかし、乗客減に直面する業界や欧州各国には、自国を代表する航空会社である「ナショナル・フラッグ」破たんへの危機感が強く、結局「ケース・バイ・ケースで補償を検討する」との言葉が声明に盛り込まれ、各国の政策判断がまず優先されることになった。
 その結果、ベルギー・サベナ航空に対して、ベルギー政府が1億2500万ユーロ(137億7500万円)の緊急融資をすることを認めた。期間は最高6カ月間で、サベナ航空は11月に新たなリストラ策を提示する。

 【本紙の解説】
 ルフトハンザ航空グループ(ルフトハンザ航空、スカンジナビア航空、オーストリア航空)は欧州委に、ベルギー政府が実施するサベナ航空向け融資への異議を申し立てていた。サベナ航空の倒産整理による営業権の一部獲得をにらんでいるためだ。
 EUの航空業界は、ルフトハンザ航空、ブリティッシュ航空、エアーフランスの3社に統合再編されるといわれている。
 航空資本は巨大な過剰資本を抱え過当競争に走っており、9・11前からその再編が問題になっていた。供給過剰の状態を旅行会社と連携しツアー旅行需要をつくりあげ乗り切ってきた。また、EUでは域内専門の格安航空会社の出現で、フラッグ・キャリアクラスの航空会社の経営破たんがより一層深刻化していた。それが9・11でつぶし合いの事態に発展したのである。

(10月18日) 成田着陸料値上げへ(10/18読売)

 国土交通省と、成田空港を管理・運営する新東京国際空港公団は、成田空港の国際線着陸料を来年4月から値上げする方向で調整に入った。18日から始まった、世界の航空会社で組織する国際航空運送協会(IATA)との着陸料の改定交渉で、航空機重量1トンあたり2400円の現行水準を、2600円に引き上げる案を提示する。
 成田の着陸料は、1984年から据え置かれており、国交省などは、人件費の上昇などを引き上げの理由にあげている。着陸料は現在、ボーイング747型(ジャンボ)機で、着陸1回あたり約95万円だが、値上げ後は約103万円になる。建設中の暫定平行滑走路が供用開始となる来年4月から適用する方針だ。
 もともと成田空港の着陸料は、世界でも有数の高さで、国内の航空会社で組織する定期航空協会が、着陸料引き下げを求めているほどだ。着陸料をさらに引き上げれば、成田に乗り入れている海外の航空会社が、着陸料の安い韓国の仁川国際空港などに移り、外国航空会社の日本離れが進む懸念もある。また利用者にとっては、着陸料の引き上げが運賃に転嫁される恐れもある。

 【本紙の解説】
 日本の航空会社は成田空港の着陸料の値下げ要求を申し出ていた。成田と羽田、関空の着陸料の高さで国際的競争力が削がれるという理由であった。また、それに対して国交省は9月14日の成田など3空港、管理運営を民営化方針の説明で、「民営会社の下で大規模な商業施設をターミナルビル内に誘致するなどして収益を向上させる。世界の主要国際空港とくらべて割高とされる着陸料の引き下げなどにつなげたい考えだ」とまでいっていた。
 韓国仁川空港の着陸用が成田の3分の1、ジャンボ機で30万ほどである。近隣空港との競争の面でも成田の着陸料の高さは是正が必要と言われていた。
 それを値上げした最大の理由は、暫定滑走路の建設とその供用開始にある。9・11以前の状況でも暫定滑走路の使用は最大で年間2万回ほどにしかならない。使い勝手の悪い短い滑走路だからである。最低3000メートルにすれば、採算をとれる滑走路にはなる。暫定滑走路の建設に着手して、軒先工事で地権者をたたき出すことが、採算のとれる滑走路になる唯一の手段だった。それが、2180メートルで終わり、近隣空港との競争にも不利になる値上げを余儀なくされたわけだ。
 9・11で航空需要が極端に落ち込む中で、今回の値上げが可能になったとしても、成田への年間離着陸回数は3割以上落ち込む。いずれにしても赤字は増大する。暫定滑走路が開港すると、赤字はさらに上乗せされる。

(10月19日) 成田空港着陸料/国内線は値下げ(10/20読売)

 国土交通省と成田空港を管理・運営している新東京国際空港公団は19日、成田空港の国内線着陸料を値下げする方針を固めた。航空機1トンあたり2400円の現行水準を、羽田空港の国内線着陸料と同額の1800円に値下げする方向で、建設中の暫定平行滑走路が供用開始となる来年4月からの適用を目指す。
 値下げによりボーイング747型機で着陸1回あたり約95万円の国内線着陸料が、約71一73万円に値下がりする見込みで、国際線に乗り継ぐ地方空港発の国内線を誘致することを狙っている。

 【本紙の解説】
 成田空港の国際線の値上げに対して、国内線の25パーセント値下げを発表した。国内線の値下げは今年の7月から検討に入っていた。国内線充実検討対策委員会の要望でもあった。羽田なみの着陸料にすることで国内線の乗り入れを促し、国際線との乗り継ぎでハブ(拠点)空港としての機能を高めるのが狙いだった。しかし、値下げのネックは海外の航空会社などからの国際線の値下げ要請であり、その調整の困難さであった。
 現在、成田空港では国際線が激減している。その中で、国際線の着陸料を値上げし、その分を国内線の値下げにまわし、国内線を増やそうというのだ。理由は、国内線は中型機が多いことや、50人乗りのリージョナル(地域航空)機と呼ばれる小型双発ジェット機を暫定滑走路に推奨していることもある。
 国交省と公団の本音は暫定滑走路の発着回数を多くして、何が何でも、地権者農民をたたき出し、ジャンボ機を飛ばせる滑走路に延長することだ。成田空港の国内空港化で、暫定滑走路の使用を多くしたいのである。
 このような国交省と公団の狙いを絶対に粉砕しなければならない。

(10月20日) 成田市立久住中移転問題で話し合い集会/市と住民、歩み寄らず(10/22千葉日報)

 来年4月から始まる成田暫定平行滑走路の運用で、飛行コース直下に置かれる成田市立久住中学校の移転間題をテーマに、20日夜、市側と久住地区住民との話し合い集会が同中体育館で開かれた。区民約250人が参加したが、「統合絶対反対」「久住地区に中学校を残そう」などの訴えを書いたプラカードを掲げた同中生徒や卒業生、久住第一、第二小の六年生が最前列に陣取ってアピールした。
 かつての空港反対運動での少年行動隊をイメージした市側は「大人同士が冷静に話し合うべき間題に、生徒を巻き込むのは良くない」と困惑。生徒たちを別室に移そうとしたが、これに反発する住民側と押し問答となり、集会は2時間余り空転した。
 中学生がプラカードを下に置いたことから話し合いがスタート。市側は久住中と成田中の暫定統合で、メリットや通学・学級編成・制服・教職員体制・事前の合同学習会の開催などを説明。新校舎建設は建設場所の決定から3年かかるなどと報告した。
 これに対し、久住中学校移転対策協議会(野平和美会長)が新校舎建設までの暫定移転で「久庄第一小の空き敷地か、久住地区内で騒音区域外に仮校舎を建設する」とし、移転先では市教委案の白紙撤回を要望したが、市側は「良好で安全な教育環境で授業させたい」と従来の方針を変えなかった。
 その後、質疑応答が約2時間行われ、市方針に賛成の住民意見もでたが、双方に歩み寄りはなかった。また、初めて参加した久住中の生徒も各学年を代表して3人が久住中に対する思いを切々と訴えた。
 最後に小川国彦市長は「市側も久住地区の子供の将来を考え抜いての発言。話し合いを続けて接点を見つけたい」と述べた。

 【本紙の解説】
 空港と空港行政に対する久住地区住民の怒りが爆発した。地区ぐるみの運動に発展している。中学廃校・統合に対する反対運動だが、核心は空港建設への怒りの表現であり、公団、成田市の住民無視に対する抗議運動である。
 「騒音と安全」を移転の理由にしているが、本当の理由は騒音下の過疎化による生徒数減少にある。生徒数は3学年で現在95人。1学年1クラスの中学だ。新校舎の建築費や人件費その他の経費が割高になるという財政的理由から、成田市は統合を提案している。「良好で安全な教育環境が必要」という市の答弁はつけたしの理由にすぎない。防音工事の方法はいくらでもある。危険を云々するなら、飛行コース直下をさける地区内移転という手段もある。
 空港建設で久住地区は廃村化の危機にある。市の行政はそれを加速させるだけである。住民の立場は何も考えていない。子どもたちのプラカードに反対同盟の闘いを思い出し、そのまま話し合うことを拒否した市の態度も論外だ。市は、住民無視の空港行政の結果に自ら恐怖している。
 開港から23年、暫定滑走路供用開始前から空港建設自体の矛盾や問題点がさまざま形で噴き出ている。反対同盟の闘いへの熱い期待も大きく広がっている。

(10月22日) 千葉県知事/完全平行滑走路実現に向け努力(10/23東京)

 成田空港の暫定滑走路が今月末に完成することに関連し、堂本知事は22日の会見で「完全平行滑走路の2500メートルに向け努力しなければならない。土地を持つ農家の方たちと徹底した話し合いで解決する必要がある」と、2500メートルの平行滑走路の完成に向け、話し合いを続ける方針をあらためて示した。
 暫定滑走路供用開始後について、堂本知事は「多くの農家の人たちが参加する地域振興を、この機会に実現したい」と述べ、国や空港公団、周辺自治体と協力し、移転農家を含めた地域振興を目指す意向を示した。

 【本紙の解説】
 堂本知事は現在もっとも悪らつな完全空港化論者である。「徹底した真摯な話し合い」と称し、国交省や公団を押しのけて農民切り崩しを策動している。しかも「話し合い」とは、あくまで2500メートル滑走路のゴリ押しだ。シンポジウムや円卓会議の、あのペテン的な「対等の話し合い」ですらない。あくまで完全空港化のための「話し合い」なのだ。最初から結論を公言している。これは断じて「話し合い」ではない。
 「話し合い」の手段も相変わらずの「地域振興」だ。税金と見返り事業のばらまきである。かつて自民党と運輸省が行った移転促進の「農業振興策」とどこが違うのか。手垢で汚れきった保守政治の手法そのものだ。
 反対同盟は35年間の闘いで空港反対闘争の根拠をあらゆる形で明らかにしてきた。堂本知事が「徹底的な話し合い」をいうなら、この三里塚闘争の歴史に対する見解や立場をまず「徹底的」に明らかにすることが最低限の責任だろう。完全空港を云々するなら三里塚闘争への反対論を展開してみよ。それもできず、農地強奪の結論ありきの「話し合い」とは、何という傲慢さか。「真摯」が聞いてあきれる。
 堂本知事と千葉県は必ずや、最も惨めな敗北をなめることになるだろう。

(10月23日) 米航空会社、45パーセント減収/9月前年比(10/25産経、10/26読売)

 米航空業協会が23日発表した9月の加盟各社の収入は、前年同月の45パーセント減、旅客数量は32パーセント減となった。平均搭乗率は59パーセントで、前年同月の69・9パーセントから大幅な落ち込み。9・11から航空機が敬遠されていることが鮮明に表れた。
 業界は、すでに政府援助50億ドルを受け取っているが、経営改善には結びついていない。運賃では一段の値下げを強いられており、平均航空運賃は同19パーセント下落している。航空業界の環境改善には時間がかかるとみられ、損失は来年も続くとみている。

 【本紙の解説】
 9月の前年同月比でこれほどの落ち込みである。9・11以降のデータではもっと激しく落ち込んでいるはずだ。運賃の19パーセント下落も大きな数字だ。空気を運ぶよりは、1ドルでも値段がつくものを運びたいという事態に陥っている。アメリカ航空各社がダンピング安売りを始めた結果だ。それでも搭乗率は9・11以降、50パーセントを割っている(国内線)。
 米商務省は米国への訪問者数の予測データを下方修正し、航空需要の落ち込みは向こう3年間は続くと発表した。これで米航空各社は減便、人員削減をより拡大する見込みといわれている。
 ちなみに日本人の米国訪問予測は2001年で約400万人。昨年の506万人を21パーセントも下回る数字だ。2005年になっても500万人台は回復しないとしている。日本の航空各社が経営再建の手だてを失うほどのデータである。
 暫定滑走路は使い勝手が悪いだけなく、無用の滑走路になりそうだ。

(10月24日) 旅行業界緊急融資を要請/国交省、前向きに対応方針(10/25読売)

 大手旅行会社で組織する日本旅行業協会(JATA)、中小旅行会社の全国旅行業協会(ANTA)は24日、米同時テロで海外旅行などのキャンセルが急増し、経営が悪化している旅行会社に対して緊急融資等を行うよう、扇国土交通相に要望したと発表した。
 要望書によると、9・11後に海外旅行や国内旅行をキャンセルした人数は大手11社だけで約75万人に達し、取り消された旅行代金の総額は約1200億円、損失収益は144億円に上る。旅行会社の95パーセントは従業員20人以下の零細企業で、運転資金がひっ迫する企業が増えているとしている。
 このため業界団体は、中小企業金融公庫などの政府系金融機関を通じ、無担保の緊急特別融資などを行うことを求めたもので、国交省は中小企業庁など関係省庁と協議しており、前向きに対応する方針だ。

 【本紙の解説】
 国土交通省の小幡政人事務次官は22日の記者会見で、航空・旅行業界への支援を「どういう形でできるか、財務省などに相当前向きに取り組んでいただいている」と述べている。
 具体的には、航空大手3社については、日本政策投資銀行が運転資金を低利融資し、国際協力銀行が3社の来年度の航空機購入費用計3200億円の50パーセント以上を債務保証するなどの緊急支援策の検討に着手している。旅行業界については、大手には日本政策投資銀行の融資、中小企業には中小企業金融公庫の緊急特別融資で無担保の融資を検討している。
 しかし、航空業界と旅行業界の需要の落ち込みは、さらに拡大・長期化することが確実な情勢だ。航空業界は政府援助を行っても結局は企業整理の道しか残されていない。
 日本政策投資銀行や国際協力銀行の緊急融資を検討しているが、これは新たな国策的事業のための資金調達銀行であり、倒産防止の政府援助のための銀行ではない。
 政府・自民党、そして保守党までが航空産業の軍事的重要性を認知し、その存続に躍起になっている。

(10月24日) エコノミークラス症候群、発症の9割が女性(10/24読売)

 航空機の狭い座席に長時間座っていた乗客が呼吸困難や心肺停止に陥る「エコノミークラス症候群」について、日本で初めて本格的な実態調査を行っていた国土交通省所管の財団法人「航空医学研究センター」の調査結果がまとまった。発症例は2000年までの8年間で44例(うち4人が死亡)で、その約9割が女性だった。同省では今回の調査結果をふまえ、各航空会社に対し予防策を周知するよう指導していく。
 今回の調査は、国際線が乗り入れている全国21の空港周辺にある計111の病院に対し、エコノミークラス症候群と疑われる症例の報告を求めた。
 回答例のうち、同症候群と判断できる肺血栓塞栓(けっせんそくせん)症と確定したのは44例。うち女性が40例を占め、平均年齢は61歳と高齢者に目立った。
 これらの平均搭乗時間は11・6時間で長距離線で発症しやすく、航空機内で席を離れた回数は約0・5回と、半数近くが飛行中に席を立っていなかった。また、31例がエコノミークラス、6例がビジネスクラスを利用していた。同センターは、調査結果について「高齢者、女性、離席回数の少ない人に発症しやすい傾向が明らかになった」と結論づけている。
 同症候群をめぐっては、成田空港で過去に25人の死亡例があったとする症例報告もあったが、今回の調査では、専門医3人が心筋こうそくや脳卒中など他の要因によると見られるケースを厳格に排除して精査した結果、死亡例は4例とされた。
 調査結果は来月1日、名古屋大学で開かれる日本宇宙航空環境医学会で報告される。

 【本紙の解説】
 エコノミー症候群についてはじめての政府機関の調査結果である。十数年前から問題になりながら公表しなかった航空会社と空港の責任は重大だ。
 今回の症例報告で「平均搭乗時間は11・6時間。長距離線で発症」となっている。この時間は成田発着の北米線の搭乗時間と同じだ。世界の空港で成田空港が一番の発病率といわれる理由はここにある。そのため成田日赤や印旛日本医大が症例を一番多く持っている。
 この実態を空港公団は発表せず、搭乗客への警告も徹底していない。航空会社はホームページや機内での注意アナウンスをようやく始めただけである。それもオーストラリアで患者たちが世界の航空会社を相手に訴訟を起こしたことから大慌てで始めたものだ。
 世界で何百人もの死亡例があるのに、ひた隠しにしていた罪は重い。また、成田は同症候群の最大の発病空港だ。今回の調査に盛りこまれなかった症例も数多い。これらの点について空港公団は早急に明らかにすべきである。

(10月24日) 成田新高速鉄道沿線など視察(10/25読売、毎日千葉版、千葉日報)

 本県など1都3県の自民党国会議員で構成し、「成田新高速鉄道」の実現を目指す「首都圏空港の高速鉄道アクセスを早期に実現する会」(会長・亀井善之衆院議員)のメンバー7人が25日、同鉄道の沿線などを視察した。沿線などの7市2村でつくる「成田新線鉄道促進期成同盟」の海老原栄副会長(印西市長)は、来年度政府予算に同鉄道の整備費をもりこむよう、働きかけを求める要望書を亀井会長に手渡した。亀井会長は「万全の態勢で努力することを約束する」と語った。
 成田新高速鉄道をめぐっては、国土交通省が今年8月、来年度政府予算の概算要求に、整備着手をもりこんでいる。従来18パーセントだった国の補助率を3分の1に引き上げ、おおむね10年後の開業を目指すとしている。

 【本紙の解説】
 成田新高速鉄道は千葉県が今年6月に発表した調査で「現行の補助制度の枠組みでは採算的には極めて厳しい」とし、「本事業が成立するためには現行補助制度に加え、負担金の導入、無利子融資、特急料金値上げ等を組み合わせる必要がある」とした事業だ。政府の無利子融資が事業費の18パーセントでは、事業として採算がとれないとの調査報告だ。政府の無利子融資を増やせというのが調査の結論であった。
 その結果、政府は今年8月に都市再生プロジェクト第2次案に成田新高速鉄道を取り込み、同時に、政府無利子融資をこれまでの18パーセントから33パーセントに増やす計画にした。それをふまえ、国交省は2002年度予算の概算要求に調査費を計上した。
 その理由は、千葉県と堂本知事に羽田国際化反対を言わせないためである。都市再生プロジェクトは羽田国際化を前提にしている。このプロジェクトに成田新高速鉄道を取り込んで、羽田国際化の承認と引き替えにしたものだ。
 しかし、都市再生プロジェクトは、空港立国的観点から立案され、不況下でも航空需要だけは右肩上がりとの予測を前提にした都市建設プランである。その右肩上りの前提が9・11で完全に崩れたのだ。責任ある国会議員ならば、成田新高速鉄道計画の再調査を提言すべきところだ。
 それを相変わらずの公共事業予算ばらまきにしがみついているのが「実現する会」である。

(10月24日) 厳戒成田、不審郵便物対応/マニュアル配布(10/24読売、東京各千葉版)

 米で炭疽(たんそ)菌の付着した郵便物による被害が相次いでいるのを受け、新東京国際空港公団は24日、成田空港内の航空会社や貨物取扱業者など空港内事業者(400カ所)に、不審郵便物を発見した際の対応をまとめたマニュアル配布を始めた。
 不審郵便物の特徴として空港公団は(1)あて名や肩書の誤記、(2)過剰な包装、(3)差出人の記載がない――などを挙げ、発見した場合は、振るなどの衝撃を与えずポリ袋で密閉し、直ちに通報をと呼び掛けている。

 【本紙の解説】
 成田空港で炭疽菌騒ぎが起こっている。19日には空港内の郵便局で起きた。マニュアルが出る1日前に、搭乗ゲート付近で「白い粉」騒ぎがあった。「第2旅客ビルに白い粉が落ちている」と110番通報があり、県警新東京空港署の捜査員らが駆けつけた。同ビル北側の搭乗ゲートにある2つの動く歩道終点付近の3か所に、直径約1・5センチの範囲で白い粉が散らばっていた。結論は4、5日かかるとしている。
 24日は出発便が約一時間半遅れた。午前10時ごろ、駐機場で出発を待っていたクアラルンプール行き全日空917便の機体後方貨物室で、乗客の荷物から白っぽい茶色の粉が漏れだしているのを作業員が見つけた。それは紅茶だった。
 このように炭疽菌問題で神経質になっている理由は、成田空港が日本におけるアフガニスタン侵略戦争の最大の拠点だからである。「軍事物資輸送」「医療援助」「難民支援」などの米軍支援法で人員と物資を輸送する最大拠点が成田空港なのだ。成田空港は戦場そのものである。

(10月25日) 公団総裁記者会見/国内線着陸料値下げへ(10/26読売、東京の各千葉版、千葉日報)

 新東京国際空港公団の中村徹総裁は25日、定例記者会見を行い、(1)成田空港暫定平行滑走路の完成日、(2)国内線の着陸料引き下げ方針、(3)9・11以降の1カ月で12億円の減収――などを明らかにした。また暫定滑走路の工事は今月31日に完了することを明らかにした。来年4月18日以降オープンを目指す。
 成田空港は現在、国際線も国内線も着陸料は同額だが、国内線を羽田なみに引き下げる。これにより、暫定平行滑走路でも発着できるB767―200クラスの中型機で約29万円から約21万円となる。
 国内線の引き下げ方針は、国際航空運送協会(IATA)の運賃部会に対し、国際線着陸料の引き上げと同時に提示済み。国際線の着陸料引き上げ交渉は難航必至だが、中村総裁は「両者は不可分ではない」として、国際線での交渉が決着しなくても国内線の引き下げは暫定滑走路供用とともに実施する考えを示唆した。
 一方、9・11以降の成田空港への影響について、今月10日までの1カ月で、空港公団として12億6000万円の減収と明らかにした。
 9月12日から今月16日まで成田―北米路線を運航している日本、米国、カナダの航空会社の欠航便は累計752便に達し、出国旅客数は10月に入っても対前年比で30パーセントの減少。特にハワイ・グアムなど太平洋線の落ち込みが著しい。
 さらに成田に乗り入れている各航空会社の2001年冬ダイヤも、前年の冬ダイヤと比べ週当たりの旅客便で27便、貨物便で4便の計31便の減少と影響が長引く様相を呈している。

 【本紙の解説】
 成田の国際線値上げは、10月19日のIATA運賃部会で合意に至らず継続協議となった。事実上の否決である。次回は年明け以降になる。
 国交省の小幡事務次官も「値上げは時節に適っていない」と否定的発言を述べている。これをふまえ中村総裁は、「国際線値上げと切り離して」、国内線の値下げを先行させたいとした。
 国交省の反対を見越して国際線値上げをIATAに提案した真意は、国交省の民営化案(上下分離、関西、中部との統合)反対の意志表示である。公団総裁として政府方針に逆らったことがない中村総裁としては、めずらしい「反乱」である。政府と国交省の空港整備方針に対し、定年を前にしての最後の「抵抗」でもある。
 しかし、成田空港の国際線値上げは常軌を逸することだ。世界の航空需要が大きく落ち込み業績が悪化している時期に、世界一高い着陸料金をさらに値上げするというのだ。B747で約95万円から約103万円になる。
 値上げ提案の真意は国内線の値下げにある。成田の国内線充実検討対策委員会から国内線値下げを提案され問題になったことは、「国内線を引き下げれば、海外の航空会社から国際線も値下げしろと要請され調整が難航する」ことであった。この国内線値下げへのIATAの文句を封じるために国際線値上げも同時提案したのである。案の定、19日のIATAでは、国際線値上げは反発されたが、国内線の値下げ案は論議もされなかった。中村総裁の「両者は不可分ではない」との言葉の裏が透けて見える。
 それにしても暫定滑走路の供用は、成田空港に大赤字を強制するものだ。国内線の着陸料を策を弄して値下げまでしなくては利用者も見込めない滑走路なのだ。
 日本の出国者数は、例年の30パーセント以上という激減だ。注目すべき点は、10・7のアフガン空爆以降の8日〜16日には35パーセント減と、さらに落ち込んでいることだ。
 公団は「少なくとも湾岸戦争並みの落ち込み」と予測している。湾岸戦争は開戦からわずか約1カ月で基本的に集結した。9月11日まで前年比で上回っていたデータが「湾岸戦争並」になるとは、9・11以降の落ち込みはその2〜3倍ということである。
 米商務省の予測では日本の米国訪問者は5年かかっても現状に回復しない。成田空港と暫定滑走路の運命もこのデータの通りになりそうだ。

(10月26日) 日航、減収補填政府に要望/全日空、減便拡大へ(10/27日経、産経)

 日本航空の兼子勲社長は26日の記者会見で、9・11反米ゲリラ以降、国際線を中心とした旅客減少で経営に深刻な影響が出ていることから、米の運航禁止措置で生じた減収分の補填などの支援を政府・与党に業界として要望したことを明らかにした。また、両社とも旅客が減少している北米路線について、12月以降も減便を継続する方針も明らかにした。
 要望は、国内航空会社12社が加盟する定期航空協会(兼子会長)として、25日の自民党国土交通部会で行った。政府に対し、9月11日―15日に米の運航禁止措置で発生した損害33億円の政府による補填のほか、航空機の特別償却制度など優遇措置の継続、運転資金確保のための緊急融資制度の創設――などを求めている。
 減便について、日航はすでに10月から11月にかけて、週142便の運航を計画していた北米路線を週108便に減らすことを決めていた。今回は現在の減便体制を来年2―3月まで継続するとともに、成田―ラスベガス経由サンフランシスコ線や仙台―ホノルル線などを追加運休することを決めた。これにより、10月―3月の北米路線は当初計画に比べ22パーセントの減便になる。
 全日空の大橋洋治社長も同日会見し、11月に成田発着の米国本土行きや関西国際空港―グアム線を減便し、米路線の月間便数を220便から182便に減らす計画を決めている。12月以降は「減便数をさらに増やす方向で検討している」(大橋社長)という。
 9月の国際線の旅客数については、日航は前年同月比で19・7パーセント減、全日空は27パーセント減になった。

 【本紙の解説】
 米国はこれまで産業への政府介入と規制に反対し、それが「自由市場経済」だと世界に誇示してきた。またそれを「グローバルスタンダード」として他国に強制し、「自由競争」をうながし、米国の企業利益を追求してきた。しかし、9・11反米ゲリラによって米国経済が未曽有の崩壊に直面したことから、いままでの「自由主義経済」の立場を一変させ、自国産業への巨額の政府援助を全面的に開始した。「規制反対、行政指導廃止、政府援助反対」などの厳しい対日批判はどこに行ってしまったのか。
 米政府の業界援助額は資金贈与50億ドル、債務の政府保証100億ドルの計150億ドル。さらに安全強化対策費や賠償責任軽減、保険対策の政府負担などもでている。
 この政府援助に危機意識をつのらせているのは、欧州の航空業界である。米航空会社は政府援助をダンピングに利用しているのではないかと警告している。スイス政府は欧州議会の反対を押しのけて、倒産したスイス航空に340億円の資本注入を行い、再建に躍起となっている。スイス航空の子会社であるサベナベルギー航空への資本注入も検討している。ニュージーランド航空も9・11で経営難に陥ったが、ニュージーランド政府が434億円を出資、株式の83パーセントを買い取り国有化することで倒産を免れた。
 この航空業界の危機の中で、日本の航空会社も全面的な政府援助を要求し始めた。
 各国政府がナショナルフラッグの維持に躍起になる理由は国家的体面だけではない。航空産業がもう一つの軍隊であることが、その最大の理由である。現代戦争における兵員や物資の輸送は民間航空に決定的に依存しており、また航空機産業は兵器産業の頂点に位置する。
 それにしても国際線需要の減退は止まるところを知らない。日航と全日空は10月4日に米国路線の減便を行ったが、さらに減便を追加した。「本紙の解説」(10月4日付日誌参照)で「米航空会社の減便に引き続き、日本の日航と全日空も減便計画を発表したが、事態の深刻さに追いついていない」と指摘した通りになっている。
 航空需要のより一層の減少は、10・7の米英によるアフガン空爆の開始から顕著になった。10・7以降の減少度合いは9・11直後よりも激しい。日本の自衛隊が参戦した暁には、出国者はさらに減るだろう。

(10月26日) 米航空大手は日本便1割減(10/27日経)

 日本に乗り入れている米航空大手5社の冬ダイヤ(10月28日―02年3月30日)がまとまった。9・11による旅客減を踏まえ、合計で週に日本発着便のほぼ1割に当たる約40便(往復)を減らす。
 大幅に減らすのはデルタ航空。12月2日から成田―ロサンゼルス線(週6便)と名古屋―ロサンゼルス線(週7便)を運休する。9・11後は一度も運航していない成田―ニューヨーク線も引き続き運休する。
 アメリカン航空は11月1日から関西国際空港―ダラス線を週7便から4便に減らす。ノースウエスト航空は11月3日から、週14便の成田―ミネアポリス線を8便にする。
 ユナイテッド航空とコンチネンタル航空は10月初めから減便している。冬ダイヤでも便数は増やさない。

 【本紙の解説】
 米航空会社は9・11直後に2割以上の減便を行っていた。ユナイテッド航空、アメリカン航空、コンチネンタル航空の3社は夏ダイヤの便数まで戻す計画を発表している。減便のままで冬ダイヤを組んでいるのはノースウエスト航空とデルタ航空である。米大手5社の総計で夏ダイヤとの比較で週40便、約1割の減便となった。
 米航空会社は政府援助で当面の経営危機に一息付き、これをテコに他国の航空会社を蹴落として生き残ろうとしている。ノースウエスト航空の2001年第3・四半期の業績が発表されたが、政府援助2億4900万ドルで赤字を免れ、ようやく1900万ドルの利益を確保した。政府援助がなければ、同社の第3・四半期の業績は1億ドル(約120億円)の純損失となるはずだった。旅客収益が18パーセント減でも純利益を計上という奇妙な事態だ。
 日本からの北米への出国者数は3割近く減っている。その傾向は当面続くとの予測データもある。そのため日本の航空会社は、太平洋路線を冬ダイヤで2割以上減便している。ユナイテッド、アメリカン、コンチネンタルの米航空3社は夏ダイヤとほぼ同じ便数で冬ダイヤを維持している。そして、それを格安運賃で運航している。80年代に米国国内と大西洋路線で行われた航空大競争が太平洋路線で始まったのだ。

(10月28日) 日航機機内に白い粉、出発遅れ(10/29読売千葉版、千葉日報)

 28日正午ごろ、成田空港に駐機していた同日午後1時発のミラノ行き日航417便ボーイング747―400型機の機内通路に、白い粉未が落ちているのを、出発前の点検をしていた同便の客室乗務員が発見した。
 空港署員が駆けつけたところ、機体中央付近の左側通路の床に、直径3センチほどの範囲に白い粉末が落ちていた。同署では粉末を採取し、県衛生研究所に成分の分析を依頼している。
 粉末が見つかった時、旅客は乗り込んでいなかったが、日本航空では、機体を変更し、同便は6時間遅れの午後7時に出発した。

 【本紙の解説】
 成田空港での3回目の炭疽菌騒ぎだ。「白い粉」がすべて炭疽菌に見えるのだ。それは成田空港が軍事空港であり、米国アフガン侵略戦争の中継基地のためだ。実際、自衛隊の参戦で成田空港は日本での最大のターゲットになった。

(10月29日) 成田暫定滑走路、ILSの飛行検査開始(10/30千葉日報、毎日千葉版)

 国土交通省は29日から、成田空港暫定平行滑走路のILS(計器着陸装置)に対する飛行検査をはじめた。ILSは、着陸のため進入中の航空機に指向性のある電波を発射し、滑走路への進入コースを指示する着陸援助施設。
 同検査は4種類あるが、滑走路への着陸進入を想定したアプローチ検査では、滑走路南側から進入した場合、成田市東峰の反対派農家宅の頭上約40メートルを飛行するため、現地周辺では緊張感が高まっている。
 同日は天候などの理由で、着陸進入の飛行検査は実施せず、滑走路北側約10キロ付近を等高度で扇型に飛行する検査だけを正午過ぎから行い、午後1時45分ごろには終了した。
 滑走路南側に自宅を構える反対派農家の島村昭治さん(54)は同検査が開始されたことについて、「30年間、国の一方的な政策を押し付けられた。今後も農業をやるだけだ」と厳しい表情で話した。
 また、成田空港の廃港を主張する三里塚芝山連合空港反対同盟は同日午前、空港周辺で反対同盟員や支援勢力約50人がデモ行進。熱田派も支援者ら20人が「テスト飛行阻止」などを訴えるシュプレヒコールを繰り返した。

 【本紙の解説】
 反対同盟は10月15日につづき、10・29飛行テスト阻止緊急闘争を80人で取り組んだ。(詳しくは本紙参照)
 飛行テストで公団が東峰地区に配布した文書では「騒音や大気質を測定する」などとなっているが、プロペラ機のYS11型機で、実際運航する中型機のB767機やDC10機などの航空機被害が分かるはずもない。
 暫定滑走路北側の飛行ルート直下になる下総町の住民から「騒音被害の実態を知りたい。供用開始前に、暫定滑走路を使用する中型機を試験的に飛行させてほしい」との要望があった。にもかかわらず、公団は「2本目の滑走路なので、供用開始前の慣熟飛行は必要ない」としている。騒音テストも住民の要求を「検討する」としか言っていない。そもそも騒音テストはやらない計画だった。
 ここに公団の住民無視の姿勢が現れている。この地で生涯生活していくために、騒音がどのようなものか、実感で確かめたい住民の気持ちを踏みにじっている。
 周辺住民と騒音でのトラブルが発生し、供用開始が遅れるのを避けたいというのが公団の本音だ。何が何でも暫定滑走路開港にたどり着きたい。供用開始にこぎつけるまで、住民の要求は一切拒否するという姿勢である。
 開港さえすれば、航空機の騒音で周辺住民はたたきだせると思っている。

(10月29日) 日航が割引運賃/成田―ロス4万9000円(10/30毎日)

 日本航空は29日、成田―ロサンゼルス4万90OO円など、来年2―3月の米国方面へのエコノミークラスの割引運賃を国土交通省に申請した。米国での9・11後、旅客需要が落ち込んでおり、格安料金の導入で「需要回復の起爆剤にしたい」としている。
 申請したのは割引航空券「スーパー前売り悟空」。来年2月1日から27日までの、成田―ロサンゼルス、サンフランシスコ、関西―ロサンゼルス、ハワイヘの同社グループ全路線を初めて5万円を切る4万9000円にするほか、成田―ラスベガス5万3000円、成田―シカゴ、ニューヨーク5万7000円、成田―グアム3万3000円などで、最太で正規料金の7割引となっている。
 同社は「現行の運賃制度では最下限の運賃」と説明。2月28日から3月19日まではハワイやグアムなどの路線は運賃を据え置くが、その他の路線は3000―4000円値上げする。発売期間は12月3日から23日までで、予約後72時間以内の航空券購入などが条件。

 【本紙の解説】
 太平洋路線の日米航空会社の値引き合戦が始まった。まず、米国の航空会社が米東海岸往復で5万を割ったものを出した。その半額の2万5千円もでている。ダンピング認定をさけるため、旅行会社の関係者だけとの条件は付けている。しかし、チケットを販売する旅行会社の人の「友人」にはだれでもなれる。グアム2人往復で5万は「好評」で、パックツアーも出ている。
 米航空会社の格安運賃に押され、日本の航空会社も大赤字にもかかわらず、空気を運ぶより少しでも値段がついた方がましという、採算度外視の航空運賃をだしてきた。
 米国内ではこのような安売り航空運賃合戦で競合航空会社が淘汰されたあげくに一社独占状態となり、以前の2―3倍の運賃になった路線が多くある。米航空会社はこの日米航空戦争で、日本の航空会社を倒産させるか系列下に組み込むことを目標にしている。
 資本の大きさ、シェアの大きさ、政府援助の規模の大きさ等の違いから、日本の航空会社が米航空会社に競り勝つ可能性はゼロパーセントである。

(10月30日) 航空各社向け政策銀が融資(10/31朝日、読売、東京)

 政府・国土交通省は30日、米国の9・11で影響を受けている国内航空各社向けに、日本政策投資銀行が低利融資を実施すると発表した。旅行会社など関連事業者向けにも、運転資金確保のため、政府系の中小企業金融機関の融資や信用保証協会の保証について別枠を設ける。
 航空会社には、同銀行の「緊急対応等支援制度」などを適用し、各社が民間金融機関から調達できない資金を補う。過去の設備投資資金の借り換えなどが対象で、期間は10年程度で金利1・5パーセント。また、旅行会社などには、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫が各8千万円、国民生活金融公庫が4千万円の融資枠を別枠で設定する。

 【本紙の解説】
 航空会社の経営危機の深刻化と米航空会社の太平洋路線ダンピング合戦で、日本政府も航空会社と旅行会社の援助に乗り出した。政府援助のもとで個別資本がつぶし合いの競争に走る。この資本競争の行き着く先は、戦争的手段をふくむ国家間の戦いになる。帝国主義戦争である。9・11をもって、90年代までのアメリカ的「自由競争」の建前は一挙に崩壊した。アメリカの航空資本が国家の援助をもって諸外国との競争と戦争に入ったのである。
 そのために日本政府と与党三党は、航空会社と旅行会社への全面的援助を決めた。

(10月30日) ノースウエスト航空/成田発着数来春3割増(10/31日経)

 米国の大手航空会社、ノースウエスト航空は2002年春をメドに成田空港発着の航空便数を約3割増やし、週150便強とする。国土交通省など航空当局と調整し年内にも正式決定する見通しで、全日本空輸とほぼ同規模の便数とする。同社のリチャード・アンダーソン最高経営責任者(CEO)が30日明らかにした。増便は主に成田とアジア各国を結ぶ新規路線が対象となるという。
 ノースウエストは9・11の影響で、9月だけで2億5千万ドルの減収となった。これを受けて、現在までに5万3千人いた従業員のうち1万人を削減、航空便数については旅客の減少に対応して全体の2割を削減している。
 ただ、日本市場についてアンダーソンCEOは「アジアと米国を結ぶ重要な拠点」と強調、「新機材導入などの投資を続ける」と述べた。
 ノースウエストの成田空港発着の便数は現在、週120便強。同空港は来春に発着枠が増える予定で、国内の航空各社も便数拡大に動いている。アンダーソンCEOは関西国際空港の発着については「地元経済に活力が乏しい」と指摘、減便を示唆した。

 【本紙の解説】
 ノースウエスト航空は、成田発着の冬ダイヤについて9・11以降減便したままである。週14便あった成田―ミネアポリスを8便にしている。同社は今回、需要回復のターゲットを成田―アジア便に向けてきた。現在の同社の成田発着便の合計は週120便前後。それを1日5便増やし、週35便、計150便強に増やす計画である。
 機材は暫定滑走路を使用できるエアバスA320機と言われている。路線はグアム・サイパンとアジアである。米国の航空会社がグアム・サイパンから成田経由で以遠権を行使し、アジア各地への路線に乗り込こもうということだ。グアム・サイパン中心とはいえ、米航空ビッグ3のひとつが日本市場をターゲットにアジア路線に全面的に乗り込む意味は大きい。
 しかし、日本人の外国旅行敬遠傾向は少なくとも数年は続くことが確実で、日本の航空会社は減便している。そこに赤字覚悟の格安運賃で乗り込んできても、他社路線を完全に駆逐できるかは疑問だ。むしろ自社が最初に路線廃止を余儀なくされる可能性が大きい。

(10月30日) 「船舶航行影響なし」 羽田再拡張で国交省(10/31千葉日報)

 国土交通省は30日、羽田空港の再拡張で新滑走路が東京湾内の船舶航行に与える影響を調査する検討会を開き、同湾内に大規模なごみ処分場を計画中の東京都の港湾計画に沿った航行水域が確保されれば、航行は可能とするシミュレーション結果を示した。
 同省航空局は(1)新滑走路建設に伴う航行水域の減少と制約、操船者が感じる困難や危険のストレスの調査、(2)最大級のコンテナ船を風速15メートルで2回針路を変えた場合の操船への影響を調査。調査結果で、操船者が航行にストレスを感じる頻度が増えるが、船舶航行はでき、針路変更にも問題はないとした。
 この結果に対し、海運業界は「航行実態を把握していない結果で、机上の論埋だ」と猛反発。ほかの委員からも「推計値と実態は違う。7割は実務者の意向をとり入れないといけない」との意見が出たが、国交省は「客観的な事実として結果をまとめる」と譲らず、議論は平行線のままで終了した。
 国交省は「年内には羽田再拡張の成案を得たい」としており、11月下旬の検討会で、新滑走路による船舶航行への死角の影響などの課題を取りまとめ、新滑走路の建設計画に反映させる方針だ。

 【本紙の解説】
 国交省は羽田空港の拡張と国際化に躍起になっており、海運業界の批判を完全に無視している。首都圏の空港整備の遅れを羽田の再拡張で何としても取り戻したいという思惑である。
 港湾施設の整備でも日本は遅れをとり、人件費の高さもあって、横浜港や東京港はアジア各国の主要港にたちうちできない状況に追い込まれている。世界主要港のコンテナ取扱量の1位は香港で、2位はシンガポール。釜山、高雄がそれにつづき、16位が東京港、神戸港が25位になっている。日本の海運業界は船舶航行の確保に必死なのだ。コンテナ港の機能が羽田空港の再拡張で失われる危機にある。それにしても旧運輸省、現国交省航空局が結論をゴリ押しする姿勢は成田でも羽田でも変わらない。

(10月31日) 成田空港暫定滑走路完成(11/1全紙の千葉版)

 成田空港で2本目の滑走路となる暫定平行滑走路が31日、すべての現場工事を終え、完成した。同滑走路では、当初の供用予定日であった来年5月20日を4月18日へと、約1カ月前倒しすることを決めたことから、工事完成期日も1カ月早まった。
 同日夕、新東京国際空港公団の工事関係者約50人が出席して、内輪の完成式が整備地区の工事局庁舎玄関ロビ−で行われた。
 一方、同滑走路周辺の上空では、航空保安無線施設などをチェックする飛行検査が同月22日から始まり、今週からILS(計器着陸装置)検査に入っている。
 同日は午前中から、検査機がエンジン音を大きく響かせながら滑走路北側から低空での着陸進入を繰り返し、初めて滑走路南側の平行滑走路用地内に住む島村昭治さん(54)宅や鶏舎などの頭上間近をかすめるように飛んだ。
 島村さんは「30年間、国の一方的な政策を押し付けられた。今後も農業をやるだけだ」と完成前に話していた。また、三里塚芝山連合空港反対同盟なども「力による反対農家の追い出しだ」と反発を強めている。
 着陸進入検査は12月21日まで累計で130回以上が断続的に実施される予定で、飛行検査全体も12月中に終了する見込み。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路は完全な欠陥滑走路である。誘導路が「くの字」に曲がっている部分の塗装は黒くして、上空からは分かりにくくしてある。滑走路と平行する誘導路は白いコンクリートになっている。南側から「逆くの字」に曲がっているところから天神峰現闘本部に向かう部分も、実際は誘導路でないが白いコンクリートになっている。理由は、着陸する航空機の機長が誤解しないためである。どんな空港でも誘導路は必ず滑走路と平行に設置されている。「くの字」誘導路など世界に例がない。航空機がこの「くの字」部分にいる時に着陸態勢に入る航空機の機長からは、この誘導路に入っている航空機の向きと平行して滑走路があると錯覚する。そのため、白いコンクリートだけでは不安で、信号機も設置し、航空機が着陸態勢の時は誘導路のくの字部分は通行停止にする。
 また、滑走路が短いことで、ジャンボ機が使えないだけでなく、着陸帯(滑走路をふくむ幅)が国際基準である300メートルの半分、150メートルしかない。国際基準の滑走路幅は60メートル。その両側に120メートルずつ着陸帯があり、計300メートルになる。着陸帯は航空機が滑走路をはずれた場合の安全地帯なのである。それが暫定滑走路では両側に45メートルしかとっていない。危険極まりない滑走路である。
 さらに、北側に延長した滑走路と誘導路の北端が管制塔から死角になっている。飛行機が滑走路北端に来たとき、また誘導路から暫定滑走路へ移動中にも航空機の機影が管制塔の視界から消える。暫定滑走路と管制塔の間に成田ウインズホテル、ホリディ・イン成田、それと民有地の杉林があり、死角をつくっている。このことを公団はひた隠しにし、いまだ問題にしていない。航空機の安全運航にとって致命的な欠陥である。
 管制塔から滑走路と誘導路のすべてが見えることは管制の絶対条件である。公団はモニターテレビを設置したというが、夜間でも正確に見えるのか。
 公団はこのような欠陥空港を、ただただ航空機を飛ばせさえすれば、地権者は騒音で逃げ出すという考えで建設したのである。公団は日本で最も悪質な地上げ屋だ。
 しかし、完成を前にした9・11反米ゲリラの影響で航空需要は落ち込み、暫定滑走路は使い勝手が悪いばかりか、使われない滑走路になりそうだ。暫定滑走路の前倒し開港を要求した航空関係者も「暫定滑走路への期待は減退した」といっている。公団は発着枠について「交渉は継続中。年末には決まる予定だったが、まったく読めなくなった」といっている。
 テスト飛行阻止、来年4月18日の開港阻止にむけ、3・31現地闘争、4・14全国闘争にむけ闘いぬこう。

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