SANRIZUKA 日誌 HP版   2002/05/01〜/31    

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 2002年5月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(5月1日) 土屋駅設置目指す実行委員会が発足 成田新高速鉄道(5/3読売千葉版、千葉日報)

 成田新高速鉄道の整備で、新駅が設置される予定の成田市で1日、市や成田商工会議所などで構成する「駅づくり、まちづくり実行委員会」(委員長・小川国彦市長)が発足し、初会合が開かれた。今年度政府予算に盛り込まれなかった同市土屋地区の新駅設置などを目指すという。
 国や県などは、同市西部の成田ニュータウン北部に新駅を1カ所設置する方針だが、同市や地元住民が求める仮称・土屋駅の設置には、採算面などから難色を示している。これに対し、同市や土屋地区の住民らは土屋駅の設置を求めており、実行委員会でも、土屋駅設置を目指すことにした。小川委員長は会合の冒頭で「成田市全体の地域振興を考えると、2駅は必要不可欠。土屋駅設置の実現を期したい」とあいさつした。
 実行委員会は今後、土屋駅の実現や2つの新駅を生かした地域振興策をテーマに、「駅づくり、まちづくりフォーラム・イン・成田」を開くことにしており、第1回フォーラムを19日に同市土屋の成田国際文化会館で開催する予定だ。

 【本紙の解説】
 成田市では1月17日に、成田市土屋地区への新駅設置を働きかける「成田新高速鉄道(仮称)土屋駅誘致促進協議会」(会長・安井民夫土屋区長)を発足させている。これは成田市が土屋駅周辺の住民を中心として結成させたものである。
 1月21日に、促進協議会は県や国土交通省まで出かけ陳情した。1月26日には、住民など200人が集まり総決起大会を開いた。
 しかし、成田市では土屋地区に任しているだけでは埒が明かないので、小川国彦市長自身が委員長になり「駅づくり、まちづくり実行委員会」を発足させた。
 促進協議会はこの実行委員会に参加した形式になっているが、実際は吸収され活動は解消している。
 成田市は土屋駅の設置要求を無視され国交省と千葉県に抗議している。今年の3月20日の成田市議会で、成田新高速鉄道の新会社への出資金・負担金に対する補正予算案の上程を見送った。小川市長は「鉄道は空港アクセスが第一だが、地域振興の視点もある」として、土屋駅の設置をどうしても譲らない。成田新高速鉄道のもっとも熱心な推進者であった小川市長が土屋駅のないことを知らなかったのか。それも問題だが、計画にない土屋駅を前提に「駅前広場」を整備している。これは、市長の適格性が疑われる問題である。
 しかし、小川市長の実際の目的はどうも違うところにありそうだ。来年4月が成田市長選挙である。この「駅づくり、まちづくり実行委員会」を基盤にして再選を狙うことに真意があるらしい。

(5月2日) 成田暫定滑走路に犬が侵入、10分間閉鎖(5/3読売社会面、毎日千葉版)

 2日午後6時ごろ、成田空港の暫定滑走路に着陸した名古屋発の中日本エアラインサービス3204便(F50型機)が誘導路を地上走行していたところ、同便のパイロットが、暫定滑走路敷地内を走っている犬を見つけ、国土交通省新東京空港事務所の管制官に連絡した。新東京国際空港公団は暫定滑走路を10分間閉鎖して点検したが、犬は見つからなかった。空港公団などによると、成田空港の滑走路近くに犬が紛れ込んだのは初めてという。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の中に犬が入ってもおかしくはない。成田空港周辺は無人化が進み、山里の荒廃も激しい。そのために、ゴミの不法投棄も多い。同じように、捨て犬も多いところだ。また、暫定滑走路はフェンスに被われているが、フェンスからは何でも投げ込めるそうだ。人家の中に無理に空港を建設したのだから当然である。監視カメラは周辺住民を不当に見張っている。しかし、その監視カメラでもカバーできないところは、いくらでもありそうだ。管制塔からも誘導路の3分の2が死角になっているのだから、仕方がない。
 犬が空港内に入り込んだことが問題ではなく、犬が入りやすいところに空港を無理やりに建設したことが問題なのである。

(5月3日) 8空整/日本にハブ空港不要 国交省が方針を転換(5/4産経)

 国土交通省は3日、来年度にスタートする「第8次空港整備計画(8空整)」で、これまで日本国内にも建設が必要とされてきた国際的な乗り継ぎ空港として使われる「国際ハブ空港」の整備について、「日本には適当でない」との考え方に180度転換する方針を固めた。
 新規建設、成田や関西新空港などの既存空港の活用のどちらにしても、財政や環境問題の両面で国民の負担が大きくなりすぎると判断し、大幅な見直しを決めた。
 8空整は国交相の諮問機関である交通政策審議会の空港整備部会で検討されており、来年度予算の概算要求が行われる今年8月末までに中間報告をまとめる。国交省が同部会に提出した今後の空港行政に関する見解によると、成田、関西、中部の各空港は、3大都市圏の最終発着需要に対応する「国際拠点空港」と位置付け、そのうえで「日本の国力、経済力に比べ、まだ脆弱で、十分な容量確保が必要だ」として、成田空港B滑走路の延長や、関空二期工事の推進など、整備の必要性が訴えられている。
 国交省では国際ハブ空港の建設には滑走路1本につき「1兆円規模」の財政支出が必要とし、環境への影響も大きいため、「東アジアのゲートウエー(玄関口)を目指す時代は終わった」と強調している。
 アジアでは、シンガポールのチャンギ国際空港に続き、香港新国際空港、上海浦東国際空港、韓国・仁川国際空港と、大空港が続々と開業。日本が対抗する空港を建設しても、競争力には疑問が高まっていた。
 航空局は今後、(1)雇用機会の拡大以外に格別の経済効果が期待できない、(2)アジア各国も経済成長が進み、欧米との直行便を運航できるようになった、(3)航空機の大型化で航続距離が伸び、今後は米国、中国、東南アジア間などの直行がさらに容易になる、といった考え方を広く訴えていく。
 国際ハブ空港は「競争力の高い国際空港の理想形」と評価されてきただけに、ハブを国家戦略に掲げるアジア各国との空港の格差拡大を懸念する反発も出てきそうだ。

 【本紙の解説】
 「ハブ空港」と「アジアのゲートウエー」の否定は、国交省がこれまでの空港整備計画の根本的破産を認めたに等しい。これまで成田空港建設は、「アジアのゲートウエー」としての位置付けと「国際ハブ空港」を目指すという口実で、農民の生活を無視して強引に推し進められてきた。このことを国交省はどう説明するのか。成田空港B滑走路の延長も盛られているが、これは今回の国交省の説明でも「都市圏の最終発着需要」のためと称している。
 しかし、流血の事態もいとわず強引に推し進めてきた成田空港建設の大義名分は、国家的事業としての国際空港造りであった。それが暫定滑走路が供用開始された瞬間、成田空港は「ハブ空港」ではなく「東京圏の最終発着需要」のためと宗旨替えされたのである。
 いままでの理不尽な空港建設の歴史と、今回の無責任な「ハブ空港」建設方針の撤回を、国交省はどう説明するのか。農民に犠牲を押し付けたきた責任はあまりに重大である。
 しかし現実問題として、アジアの周辺諸国の巨大空港建設に完敗しているのは事実である。韓国の仁川はじめとしたアジアの巨大空港と「ハブ空港」争いを行っても勝ち目はない。
 このような事態に国交省をたたき込んだのは三里塚闘争である。また、国交省が三里塚闘争解体のために、成田空港建設に治安政策的な側面から固執しすぎた結果である。国交省は成田を優先させるあまり、首都圏第3空港建設の論議を20年も先延ばしにしてきた。その結果、周辺諸国の空港に完敗したのである。
 成田空港建設の発端は1963年に航空審議会が第1候補地を富里付近と発表したことから始まる。65年に富里空港設置を閣議で内定する。しかし、それが富里の反対闘争に粉砕され、66年7月4日、富里案の5本の滑走路を3本に縮小した「暫定空港」として三里塚に位置を変更するとの閣議決定がなされた。まず、羽田の代替空港(暫定的)として成田をつくり、本格空港の建設は先のばしにされたのである。現在の成田空港は、実は40年前の富里空港を縮小した暫定案にすぎないのだ。
 40年前にはジャンボ機もまだ就航していなかった。ジェット輸送機は、58年にイギリスのコメット4型、アメリカのボーイング707型が就航したのが最初である。ボーイング747超大型ジェット機が69年に初飛行し、その後70年代から本格的に就航することになった。そのために世界の主要空港はジャンボ機に対応した拡大・拡張に全力をあげた。ヨーロッパの主要空港であるシャルル・ドゴール、ヒースロー、スキポール、フランクフルトの4大空港も拡充した結果として、現在でも年間発着回数40万、利用旅客数4000万人以上のハブ空港に発展している。
 成田空港はジャンボ機が本格的に就航する前に計画された時代遅れの40年前の案である。その時代錯誤的な空港に40年間も固執し、首都圏第3空港を先のばししてきた。周辺諸国の巨大空港建設に立ち後れ、世界の「ハブ空港」からの撤退も当然の帰結である。

(5月7日) GW旅客数前年割れ(5/8日経、朝日、読売、東京)

 大型連休中の鉄道と国内航空各社の利用状況が7日まとまった。今年は期間中に平日が3日入る「分散型」で連続休暇が取りにくかった影響からか、利用者数は軒並み前年より減少した。
 JR各社の先月26日から今月6日までの利用者は、前年より約18万9000人少ない約1031万人にとどまった。
 客足が伸びなかった理由について、JR東日本では、東北地方の桜が連休前に満開となったため、花見客が減ったことも影響したとみている。
 一方、先月27日から今月6日までの空の便の利用者数も、国際線が前年に比べ7・6パーセント減の22万7000人と落ち込んだ。国内線も4・4パーセント減の約257万8000人。
 一方、日本航空、全日空など航空各社が同日まとめた4月27日―5月6日の輸送状況によると、国内線は前年より4・4パーセント(約10万人)減少。国際線は成田空港の新滑走路運用開始の影響もあり、昨年9月の米同時テロ以降の落ち込みから回復を見せたが、前年より7・6パーセント(約2万人)減少した。
 国内線の総搭乗者数は、257万2519人。前年を8・6パーセント下回った全日空は、ほぼ前年並みだった沖縄方面を除き、軒並み減少。同社は「連休前の3日間は前年を上回っており、人出が分散化したのではないか」としている。
 国際線は、約1万9000人減の22万6989人。米国方面は日航が18・5パーセント減、全日空が23・4パーセント減と、前年を下回ったものの、成田空港の新滑走路運用開始の影響などで、アジア方面が好調に。日航は中国方面が19・2パーセント増、ベトナムが38パーセント増だったほか、全日空も中国線が倍増した。

 【本紙の解説】
 空港各社は4月19日に、ゴールデンウイークの旅客便予約状況を発表している。それでは国際線の予約客数は前年比8・4パーセント減となっていた。結果は7・6パーセント減となり、ほぼ予想通りの結果となった。米国方面は2社とも20パーセント前後の落ち込みで昨年の9・11以降の落ち込みは今年の正月休み、ゴールデンウイークをもってしても回復できなかった。全体で8パーセント前後の落ち込みにとどまったことは、成田暫定滑走路の供用開始によるアジア便の増便と格安チケット、格安ツアー料金によっている。
 9・11以降の航空需要の落ち込みは一時的な現象ではなく、世界経済の停滞もあいまって構造的なものであり、1年や2年で回復できるものでないことは確実である。日航など航空各社は02年後半には回復すると予想していたが、今年のゴールデンウイークの実績はその予想が甘いことを突きつけている。

(5月9日) 成田空港GW過去最高の63万7千人利用(5/10千葉日報、東京)

 成田空港のゴールデンウイーク期間中(4月27日―5月6日)の利用者は前年比で2万5692人(約4パーセント)増加し、過去最高の63万7738人だったことが9日、東京入管成田空港支局のまとめで分かった。
 利用者増について同支局は「暫定滑走路オープンで便数が増えたのと、9・11反米ゲリラ後に落ち込んだ客足が回復傾向にあるため」と分析している。
 まとめでは、出国者は31万1120人(前年比1万3570人増)。帰国・入国者は過去最高の32万6618人(前年比1万2122人増)だった。旅行先は中国、韓国などアジア諸国の人気が高かったという。

 【本紙の解説】
 5月7日の「GW旅客数前年割れ」の報道は国内航空各社の利用者の数で、成田空港だけの集計でない。成田空港の利用者の数は、東京入管局の集計で外国の航空会社の利用者も含まれている。
 国内航空会社の利用者が減り、成田空港の利用者だけが増えているということは、成田空港で外国航空会社のチケットを使っている人と、関空エリアの人が成田を利用しているということになる。ゴールデンウイークには外国人の入国者は多くはない。
 暫定滑走路の供用開始でアジア便を中心とする安売りチケットが多く出回ったことと、北米路線では米国航空会社のダンピング的安売りチケットに乗り換えたということになる。
 つまり、成田空港での利用者の増大は、関空の利用者を食っているということである。今年のゴールデンウイークに関空を利用した人は約27万人で、去年の約34万人から約7万人減少している。つまり、成田の2万5692人の増加のほとんどは、関空の7万人の減少分が成田に回ってきたものである。航空会社、旅行会社、空港関係者ともに、成田の利用者が増えたといって景気の回復の兆しとして受け止めることはできない。
 また成田の増加も、航空便がアジア線を中心に20パーセント強の増便になっているにもかかわらず、利用者は前年比でわずか4パーセントの増加なのである。大増便した成田空港発のアジア路線の搭乗率はゴールデンウイーク期間中でも68パーセントであった。これでは採算ぎりぎりである。通常期間では赤字運航は確実となった。暫定滑走路の便数も減便になるのは時間の問題である。

(5月15日) 日韓/入国事前審査始める(5/16千葉日報)

 サッカーのワールドカップ(W杯)開催にむけ、日韓両国間の人の流れをスムーズにするため、航空機搭乗前に相手国で入国手続きを済ませる「プレクリアランス」(事前審査)が15日、成田空港、韓国・仁川空港で始まった。W杯が終了する6月30日まで行われる。事前審査により、両空港に到着後の審査は簡素化されるため、東京入管成田空港支局は「入国審査ブースでの混雑が大幅に緩和される」と話している。
 成田空港支局によると、日韓両国の入国管理局は、それぞれ14人の審査官を互いに成田、仁川両空港に派遣した。事前審査の対象は、入国する国から見た外国人で、パスすると到着後は簡単な本人確認だけで入国を認める。

【本誌の解説】
 プレクリアランス方式の入国審査は、羽田空港に昼間、韓国からの国際線を運航させるための苦肉の策なのである。
 シカゴ条約には、一定距離内のすべての国を平等に扱うという規則がある。そのため、韓国便だけを国内専用空港である羽田で運航することはできない。しかし、相互に入国審査官を派遣する「プレクリアランス協定」を結ぶ国に限って「準国内線扱い」するという例外規定がある。これを運用して羽田―仁川便を運航可能としたのである。
 プレクリアランス方式は米国と近隣諸国の間で使われている。米ワシントンDCナショナル空港、NYラガーディア空港からのカナダとか、英領バミューダ、バハマなどにもプレクリアランスで運航している。 米国の例もそうだが、「準国内線扱い」ということは、同一経済圏内での運航ということである。日本と韓国は同一の経済圏ではない。日韓便にシカゴ条約の例外規定を適用し運航することは、立法趣旨に反するものである。

(5月15日) 「成田空港周辺議会連絡協」が早期完全化などを決議

 成田空港周辺市町村議会連絡協議会(会長・相川堅治富里市議会議長、空港周辺11市町村加盟)は15日、芝山町内で02年度総会を開き、(1)過激派ゲリラの徹底的な取り締まり、(2)成田空港の早期完全空港化、(3)空港周辺道路整備にむけた積極的な財源確保――を決議した。

 【本紙の解説】
 国土交通省は8空整で空港整備の全面見直しをやり、いままでの空港建設のやり方を一変させようとしている。雨後の竹の子のような地方空港建設からの全面撤退と、国際空港のハブ空港争いからの敗退である。そのため、成田の連絡協も元気がない。通り一遍の決議で終わっている。連絡協はもはや組織的使命を終えたのである。
 連絡協は空港建設推進のために設置された。これまで「羽田国際化反対」や、最近では「3国際空港の民営化反対、成田単独の民営化」の活動をやってきた。その目的は「空港周辺道路の整備」などの要求である。空港事業の見返り要求機関であった。しかし、羽田の国際化も本決まりになり、民営化の方向も3空港になりそうな雲行きである。その影響で、見返り事業も少なくなってきた。
 それ以上に、航空機騒音、航空機からの落下物などの空港被害が問題化している。そのことにより、周辺土地価格の下落まで起こっている。周辺自治体の議会として、全面的に空港推進に動くこともできなくなっているのである。

(5月15日) サッカーW杯開催控え/成田空港重点警戒/県警が警備対策室を設置(5/16千葉日報)

 31日に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)に備え、県警は15日、警備対策室を設置した。29日からは警備本部に格上げされ、最大で約3000人を動員。多くの選手団やサポーターが出入国する成田空港をメーンに、アイルランド代表チームが滞在する千葉市内などで警戒に当たる。
 県警警備部などによると、約1カ月の大会期間中の出入国者は約40万人と見られ、ハイジャックなどの国際テロ対策が重点となる。
 フーリガン対策としては空港内に情報センターを設置。警察庁の同センターを通じて、各国からもたらされるフーリガンの出国情報を基に、英国などから派遣される「スポッター」(面割り捜査官)と県警警察官のペアを空港の到着ゲートに配備。水際で入国を阻止する。
 空港以外でも、アイルランド代表チームがキャンプを張る千葉市美浜区内の球技場やホテル付近、25日から7月2日まで審判団本部となる木更津市内のホテル周辺も警戒を強化する。
 また、来月2日、5日、8日に茨城県のカシマサッカースタジアムで行われる3試合では、宿泊先のないサポーターらが成田市街や空港周辺で野宿する可能性を考え、機動隊員が巡回。高速道路やJRの主要駅にも人員を配置するという。

 【本紙の解説】
 サッカーW杯で日本の治安政策は一変しようとしている。サッカーW杯を口実にして日本全土が有事体制、厳戒態勢になる。航空自衛隊はAWACS(早期空中警戒機)で試合中にレーダー監視し、不審航空機があった場合、待機させている戦闘機で撃墜体制に入ることが確認されている(4月4日4月11日付日誌参照)
 各県警も警備対策室や警備本部を設置し、戦後最大級の治安体制を作り上げようとしている。ほとんどが関係都道府県になる。競技場、キャンプ場、宿泊施設などのW杯に直接関係するところだけでなく、空港、新幹線などの主要交通機関と原子力発電所などの重要ライフラインのほとんどが厳戒態勢になる。
 さらに競技場周辺の住民を「自警団」として組織している。それまでのW杯歓迎のための自主的ボランティア活動を禁圧し、自警団に再組織化している。
 行政機関も警戒態勢に入る。札幌地裁、札幌高裁はイングランド対アイルランド戦の試合日はすべて休廷になる。
 国会で審議している有事法制の先取り的実施である。W杯は有事立法体制の確立に貢献している。させられているというべきか。

(5月16日) テロリスト乗っ取り飛行機の撃墜は可能/衆院特別委 防衛庁長官が答弁(5/17毎日)

 中谷元防衛庁長官は16日の衆院武力攻撃事態特別委員会で、昨年9月の米同時多発ゲリラ同様のケースが日本で発生した場合の自衛隊の対応について、「ハイジャックされた民間航空機やテロリストの乗った小型航空機に対して武器を使用することは、法理論上は可能だ」述べた。
 小泉純一郎首相は9日の答弁で「撃ち落とすなんてことは実際にできないと思う」と、現実的には困難との見方を示した。中谷氏の答弁は首相答弁を軌道修正した格好だ。

 【本紙の解説】
 中谷防衛庁長官は「法理論上」といっているが、これは現実の問題の論議である。国会で論議されている有事法制そのものが、米国の「テロ撲滅」を口実とし、世界戦争、具体的には日米帝国主義の朝鮮侵略戦争にむけた実戦的準備のためである。理論上ではなく、現実の問題なのである。中谷が「理論上」としたのは、9日の首相見解との整合性をつけるためだ。
 すでにW杯のサーカー場上空では自衛隊は不審機の撃墜体制に入ることになっている。「競技開始2時間前から終了1時間後の間、競技場を中心に半径3キロ以内、高さ約750メートル以下の飛行」をした不審機はハイジャック機であるか否かを問わず、戦闘機で撃墜することになっている。
 単に現実的でどうかでなく、すでに発動されているのである。しかし、このことで航空需要の回復はより遠のくだろう。

(5月16日) 旅客機に武装警察官搭乗認める/国交省(5/17毎日)

 サッカーW杯のハイジャックなどテロ対策で、国土交通省は16日、警察庁と協力し民間旅客機に武装した私服の警察官を搭乗させることを決めた。5月下旬からW杯終了までの暫定的な措置で、武装警察官の民間旅客機搭乗は初めて。

 【本紙の解説】
 これは日本がW杯対策としてアメリカ並みの警備に入ることを示している。これは、事実上の戦争状態に入っている国がとる警備である。自国の民間航空機や商船の警備として軍隊の海外派遣、侵略は開始されていく。サッカーW杯を口実に有事体制、戦争体制に一挙に突入しているといわなければならない。

(5月16日) 成田空港で消火訓練/救難協力隊初出動(5/17読売千葉版、千葉日報)

 成田空港で16日、消火救難訓練が行われた。4000メートル滑走路上でジャンボ機が着陸に失敗、乗客・乗員にけが人が出たとの想定で、空港公団や成田市消防本部、航空会社などから約280人が参加した。
 今回は、これまで社員に任意で参加してもらっていた航空会社など成田空港内の各企業から、素早く確実に救護活動に社員を出してもらうため、今年2月に空港公団と各企業が設立した「救難協力隊」の“初出動”となった。
 4000メートル滑走路脇の訓練会場では、消防車がサイレンを鳴らして到着し、公団職員が医療用テントを圧縮空気で膨らませる中、救難協力隊の参加者も、けが人を担架に乗せて運び、医師の指示で救護の手伝いをするなど奮闘した。訓練は、航空機の絵が描かれた看板を事故機に見立て、消防車が一斉に放水して終了した。

 【本紙の解説】
 自主的な消火訓練が今回から、空港内にある企業の義務的参加となった。成田空港は昨年の9・11以降、警戒体制は「フェーズE(非常態勢)」のままである。成田空港は米国にとって太平洋線最大の離発着空港である。そのため、成田は米国本土の主要空港と同じ警戒に入っている。その警戒態勢の一環として成田空港に救難協力隊ができ、今回の初出動となった。この16日からアルゼンチン代表選手団をはじめてとして続々と到着している。サッカーW杯で千葉県警は15日に警備対策室を設置している。この消火救難訓練は例年の行事でもあるが、サッカーW杯警備の一環として行われたものである。

(5月17日) 国内線の航空旅客2007年度1億人突破(5/18日経)

 国土交通省は17日へ交通政策審議会(国交相の諮問機関)の空港整備部会を開催、航空旅客数の予測を報告した。2007年度の国内線の旅客数は2000年度比17パーセント増の約1億700万人、国際線は28パーセント増の6800万人。国交省は2003年度から始まる次期空港整備計画に反映させる方針だ。
 同日の空港整備部会では、成田、関西、中部の国際3空港の経営形態見直しも討議された。国交省は3空港の管理運営事業を民営化する一方、建設事業は一本化して公的法人が担う「上下分離」方式を改めて提示。管理運営と建設事業を合わせて民営化する案には否定的な見解を示した。

 【本紙の解説】
 交通政策審議会の空港整備部会は相変わらずの予測データを提出している。交通政策審議会の航空分科会や空港整備部は現実離れしたデータで関空、中部や地方空港を乱造させた張本人である。
 国際線が2007年度に28パーセント増になるということは、年率で平均約3・6パーセントの増加を続けるというデータである。経済の成長率も鈍化しマイナス成長という時代に、航空需要だけが右肩上がりで上昇するわけがない。むしろ現実は、昨年の9・11以降、バブル的に作り上げられた航空需要が一挙に落ち込み、回復の見通しも立っていない状況だ。にもかかわらず、このような無責任なデータを交通審議会はなぜ出すのであろうか。
 国交省は8空整での空港整備の抑制への転換に見られるように、空港需要はあまり拡大しないとの立場に立っている。そのため、建設業界を始めとして空港建設で「稼ぎたい」立場のグループがこのデータを作らせ、8空整でも積極的に空港整備を進めようという算段なのである。

(5月19日) 成田で駅づくりフォーラム(5/20千葉日報)

 成田新高速鉄道の整備に合わせ、成田市域での駅づくりを通した地域振興策を探る「駅づくり、まちづくりフォーラム・イン・成田」が19日、成田国際文化会館で開催され、参加した約450人の市民がパネリストの発言に聞き入った。
 冒頭、主催者である同フォーラム実行委員長の小川国彦市長が「JR成田駅の市街地再開発事業、JR久住駅の土地区画整理事業を含め、駅づくりは市の一貫して重要な課題になっている。パネリストの先生の話を出発点として、まちづくりを進めたい」とあいさつ。
 続いて、パネリストである静岡県掛川市の榛村純一市長が「都市づくりと駅の機能と地域活性化戦略」、元小田急電鉄常務の劔持廣隆氏が「まちづくりと駅について」と題して講演した。
 このうち、榛村市長は東海道新幹線掛川駅の誘致を実現した仕掛け人。市民から1戸10万円、企業は1社100万円の募金を得て駅の建設資金の4分の1に当たる30億円を集めるなど、大胆かつユニークな発想のまちづくりを進めている。
 成田市の駅づくりでは「緑の自然・門前町の精神と国際空港のハイテクの両方をどう共存させるかがカギ。それで市民の心をまとめていけばいい」とアドバイスした。
 劔持氏も「どういう性格の駅にしたいのか、目的性を持つことが大切。小田急・開成駅は昭和38年に駅設置の運動が始まり、完成したのは60年」として地元の熱意を強調した。

 【本紙の解説】
 成田市は国交省、県、公団と成田新高速鉄道の新駅設置問題で決定的に争うつもりらしい。空港のために鉄道を設置しても成田市と成田市民の利益につながらないことになりそうだ。鉄道建設の歴史で駅が設置されない町は、騒音をもちこまれるだけで、その町は最後にはすたれていくことがほとんどである。成田もその例になることを恐れている。
 しかし、鉄道以上に空港建設は空港周辺の無人化を強制している。空港周辺約10キロ、飛行コース下約20キロを無人化する。成田空港周辺でもこのことが、次第に明らかになっている。騒音被害や土地価格の下落で廃村化が極端に進んでいるのである。
 しかし、土屋駅を設置したとしても、停車する電車は少ないので、小川市長がいうようにはならない。成田新高速鉄道は都心と空港とのアクセスのために建設されるものであり、成田市と都心を結ぶものではない。また、都心とのアクセスにしても、JR、京成本線と三つどもえの競合線であり、採算が合う鉄道ではない。
 土屋駅設置の見込みはまったくない。ではなぜこのようなフォーラムをやるのか。それは実行委員長である小川国彦市長の来年の選挙活動のためであるとのもっぱらの評判である。

(5月20日) 芝生に巨大な「FIFA」(朝日、読売、産経、千葉日報、東京千葉版)

 成田空港暫定滑走路脇の芝生が20日、刈り込まれ、巨大な「2002FIF WORLD CUP」の文字が徐々に浮かび上がった。
 文字は長さ約300メートル、幅25メートル。サッカーのワールドカップ(W杯)開催までに、平行する4000メートル滑走路でも草刈りが行われ、空の玄関口から日本を訪れるサポーターらに大会をPRする。
 新滑走路は空港建設に反対する農家の土地を避け、本来の計画より短い暫定版として、旅客量の大幅増が予想されるW杯前の完成を目指し建設された。そんな経緯もあり、トラクターや草刈り機を使って作業に当たった約20人の空港職員らは感慨深げだった。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の建設強行はサッカーW杯の日本開催が口実であった。W杯のために、地権者農民と周辺住民の生活を無視抹殺して工事を強行したのである。しかし、W杯では開催期間中であっても、航空需要もそれほど拡大しない見通しになっている。羽田の昼間の国際路線として特例で決めた羽田―仁川線も発着枠を多く残していて、使う予定はないとのこと。成田でも増便はない。W杯のために建設された暫定滑走路の大義名分がなくなっている。
 そのため、成田空港では異例な芝生での演出となった。しかし、芝生の文字より、反対同盟の大看板の赤文字の「DOWN WITH NARITA AIRPORT」のほうが5月の空に映え、国際的にアピールしている。

(5月20日) 離陸機で低周波発生/新東京国際空港公団が調査(5/21千葉日報)

 成田空港を離発着する航空機による低周波音の測定調査をしていた新東京国際空港公団は20日、その調査結果を公表した。
 調査は今年3月中旬、成田空港北側の成田市和泉と、同南側の芝山町小池の民家3軒で行われた。低周波が発生すると、ガラス窓や障子などがガタガタ音をたてて振動する。調査では着陸機ではこうした振動はなく、離陸機のうち南北両側とも約半数の上空通過時に障子やガラス戸に振動や「カタカタ」という振動音が発生した。特にB747、B747−400が通過した際での発生が多かった。
 一方、民家住民の心理的、生理的、睡眠への影響、および障子等のがたつきといった物的影響のいずれも環境省の評価値以下で、航空機の低騒音化による低周波音の明らかな増加は確認できなかったという。
 地域住民からは夏場での振動が多発するとの声もあり、空港公団では夏季に再調査するとしている。

 【本紙の解説】
 この低周波音はかねてより、木の根、東峰、天神峰、菱田などで問題になり、公団に抗議してきた。今回の低周波音は航空機の離陸の時のことだが、夜間の航空機のエンジンテストの時も発生する。これは深夜であり、長時間つづく。風向きによっては、ガラス戸のガラスが割れると思うぐらいの振動がある。耳で聞こえる騒音より、直接的に体に悪い。
 低周波とは、耳に聞こえない音で周波数の低い音のことである。人間の耳に聞こえる音の周波数は20−20000Hzである。1−20Hzぐらいの耳には聞こえない低い周波数の音が超低周波音、100Hz以下の音は低周波音と呼ばれ、両者を共にして低周波音としている。音の波には周波数と波長というのがある。1秒間に振動する回数を周波数、1ヘルツの周波数の音の波長は350メートルであり、100ヘルツの音で3・5メートルになる。
 物体には固有な共鳴周波数というのがあり、同じ周波数の音がくると「共鳴」という現象を起こし、振動が増幅される。人間にも共鳴振動数がある。例えば、外からの振動の周波数がほぼ5Hzのときに背骨が最も振動するといわれている。この背骨が低周波に共鳴すると、その振動で交感神経などが影響を受け、自律神経失調症をひき起こすといわれている。また、その振動が脳にも到達する。その結果、不眠、気分が優れない、頭が痛い、気持ちが悪いなどの症状があらわれる。症状が進むと自律神経失調症となる。
 一般騒音も90デシベル以上になると人の精神を圧迫するほどのものがあるが、低周波音は人の身体に忍び寄って、潜入し、身体機能をむしばんでいくものである。
 ここでも、空港と人間は共生できないことが示されている。

(5月21日) 共生委員会/航空機騒音で議論(読売、毎日、東京、産経の各千葉版、千葉日報)

 成田空港地域共生委員会(山本雄二郎代表委員)は20日、会合を開いた。その中で、先月から運用を始めた成田空港暫定平行滑走路で、滑走路南側に隣接する成田市東峰地区の状況について論議があり、委員から「防音工事など、東峰地区住民の要望・苦情をきちんと把握、理解しようと努力しているか」との声が相次ぎ、対応を求めた。
 東峰地区は暫定平行滑走路から航空機が頭上40メートルを離発着。90デシベルを超える鉄道ガード下並みの騒音下で、空港反対派農民が居住、ラッキョウ工場などもある。
 新東京国際空港公団は「同地区住民から防音工事の申請・要望はでていない」と述べたが、共生委員からは「非常に残念な事態。申請があってもなくても、90デシベルを超す騒音下で生活している。一種の人道問題だ」として、さらに同地区住民の声を聞くよう求めた。また、同委員会内に空港立地のプラス面を研究する「地域づくり部会」が新設され、今年度は調査研究と10月の芝山鉄道開業に合わせた広域的なイベント開催に取り組むことになった。

 【本紙の解説】
 共生委員が、騒音で「90デシベルを超す騒音下で生活している。一種の人道問題だ」として、「同地区住民の声を聞くよう求めた」と“殊勝な”ことをいっているが、実態は許し難いことである。
 99年11月8日、共生委員会が「暫定滑走路建設は地域の多数意見だ」と承認したことによって、同年12月3日からの工事が始まったのである。共生委員会はこのとき、運輸省・公団に対して「反対派との話し合いの要請(移転の強要)と、新たな騒音被害への対策」を求めたことと引き替えに、工事開始を承認したのである。その後、共生委員会は「第三者」的立場も投げ捨て、国交省・公団も正式メンバーに加え、「空港のマイナス面から空港のプラス面へ」と称して、公然たる空港建設推進機関に成り下がった。
 ここで、共生委員会が騒音を問題にしている意味は、地権者切り崩しをやることであり、それを公団にもっと積極化せよといっているのである。
 また「90デシベル以上」は東峰だけでない。天神峰の市東さんの家でもそうだ。東峰も天神峰も、騒音下での生活条件に違いはない。にもかかわらず、共生委員会は東峰のことは問題にしても、天神峰は問題にしたことがない。理由は東峰地区を「話し合い」に持ち込み、移転交渉にもちこむ(暫定滑走路の3500メートル化)ことが、共生委員会の組織存在の目的だからである。

(5月22日) 成田空港第2ターミナルビル/チェックインカウンター増設(読売、産経の各千葉版)

 成田空港では22日、サッカーW杯にむけて建設が続けられていた第2ターミナルビルの増設工事が完了、新しい40のチェックインカウンターが姿をみせた。
 第2ターミナルビルは午前と夕方の混雑が激しく、ピーク時には旅行客が行列をつくる。このため新東京国際空港公団は混雑緩和策の一環として、昨年からチェックインカウンターの増設工事を進めてきた。
 増設分は全日空と同社がチェックイン業務を受託している外国航空会社が使用、全日空のブースは従来の66から106に大幅に増える。公団では「W杯で成田空港を利用するお客さまの混雑緩和になれば」と話している。

(5月23日) 民間ヘリ初乗り入れ (5/24朝日千葉版)

 アクセス改善が課題になっている成田空港で、国際線への乗り継ぎを目的とした民間の自家用ヘリコプターが23日、初めて乗り入れた。サッカー・ワールドカップの開幕を控え、旅客増が見込まれることなどから、新東京国際空港公団が乗り入れ条件を緩和した。ヘリを所有する企業などの利用を見込んでいる。
 民間ヘリについて、空港公団は警備上の理由などから不定期便の乗り入れを認めていなかった。定期便は88年に成田―羽田間に路線が開設されたが、利用客が少なく91年に廃止されていた。
 だが、空港へのアクセスの多様化を求める経団連などが乗り継ぎ用ヘリを認めるよう要望。公団は4月に新滑走路(B滑走路)が供用を開始したことや、旅客増が見込まれることから、5月13日に条件を緩和した。ただし、ヘリを受け入れる場合、公団がヘリの管理者や運用に関する事前審査をする。
 この日、乗り入れ第一号となったのは、市川市内の貸倉庫会社が所有するヘリ。外国に出張する役員らを乗せて成田空港に到着した。

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の国内線使用枠が余っていることが、成田空港への今回の民間ヘリコプター解禁となったことの原因である。航空機とヘリコプターは飛行コースが違うため、混雑空港では着陸を認められる例は少ない。結局、暫定滑走路の発着枠が余っているということにすぎない。

(5月24日) 防音済み住宅経年変化/当初計画の3割達せず(5/24千葉日報)
 成田空港4000メートル滑走路の騒音地域で、年数が経過した防音工事済み住宅の遮音効果について調査していた新東京国際空港公団は、実態調査の中間報告をまとめた。
 調査では成田市、芝山・松尾・横芝・河内(茨城県)町で防音工事実施後、10年以上経過した民家約275戸に対し、建築士による目視調査を実施。さらに、無作為に抽出した70戸について実際の騒音測定を行った。
 このうち、騒音測定では人間の耳に聞こえる範囲の航空機騒音の遮音効果については、約3割の民家で当初計画の遮音量に達していないことがわかった。
 また、暫定平行滑走路の運用が始まったことで、空港公団では同滑走路の騒音地域でも30戸について同様の調査をしており、6月中にもまとまる調査結果と合わせ、参考データとして示す考え。

 【本紙の解説】
 空港と航空機被害が顕著に明らかになって、公団もようやく、防音済み住宅経年変化の調査に乗り出した。この調査は今年の3月18日から開始したものである。(02年3月18日付日誌参照)
 防音工事後、一定年数が経過した民家では遮音効果が低下するのは明らかである。しかし、現状の騒防法では騒音工事の再助成は新築と改築の場合に限られ、補修や増築ではない。家の耐久年数を考慮にいれない防音工事の補助であった。防音工事の助成は空港開港後の周辺対策として農業振興策の成田用水工事などと同じ時期に施行された。それは二期工事の着工にむけた三里塚闘争の解体を目的にしたものであった。
 今回、暫定滑走路の供用開始による航空機騒音の拡大への住民不安と反発に対して、この調査は開始された。しかし、成田空港の民営化問題もあり、騒音対策費による再助成はいまだ検討されてはいない。今回はそのための調査をしているが、再助成の見込みはまだまったくない。あくまで、住民不安と不満が続出しているために、調査に乗り出したにすぎない。

(5月24日) 3空港整備一体化に反対/知事と9市町村首長が確認(5/25朝日、読売、毎日、各千葉版)

 堂本暁子・千葉県知事は24日、成田市や芝山町など成田空港周辺の9市町村の首長と、成田空港を運営する空港公団の民営化問題を協議し、成田・関西・中部3国際空港の空港整備部門を一体化する国土交通省案に反対し、騒音対策などの確実な実施を求めていく方針を確認した。県は27日、来年度からの空港整備の指針となる「第8次空港整備計画」の策定を進めている国土交通相の諮問機関にこの方針を伝える。
 民営化問題では、国土交通省が昨年9月、3空港を運営する公団など3団体の空港整備部門を団体から分離、一体化して公的法人とし、残る管理・運営部門を、それぞれ民営化させる改革案を示し、県や市町村は反発していた。 
 県などは同省案のうち、特に空港整備部門の一体化について、(1)成田空港の歴史や、内陸空港で騒音被害が広範囲に及ぶ地域実情を踏まえた対応が困難になる、(2)他空港の債務償還を成田空港が負担することで、成田空港の自由で活力ある経営が阻害されると問題点を指摘。民営化する際の絶対条件として、(1)2500メートル平行滑走路の完成、(2)成田新高速鉄道などアクセスの整備、(3)騒音対策の継続と充実、(4)地域振興策と共生策の継続と充実――の4点を確実に実施するよう国に求めることとした。

 【本紙の解説】
 成田空港周辺自治体の見返り要求が、3空港一体の民営化問題で危機に瀕している。そのために、空港の「下物」整備で、成田・中部・関空の3国際空港一体の民営化に反対の動きにでてきた。
 周辺自治体は、いままで成田空港推進で協力してきたのも、騒音対策、地域振興策、共生策などの財政補償があったからである。しかし、国交省がハブ空港論からの転換と3空港の整備部門の一体での民営化で、その財政的補助はいままで通りにはいかなくなりそうだ。
 いままで、成田空港建設の見返りとして、成田財特法(新東京国際空港周辺整備のための財政上の特別措置法)による補助金がでていた。70年に10年間の期限の時限立法として制定され、その後2度も延長された。98年段階で4905億円が投入されている。2000年度打ち切りの予定であったが、暫定滑走路の工事が開始されるために、99年3月に5年間延長が決まった。これ以上の再延長はないとの確認で、いままで10年の期限だったものを5年にして延長されたのである。2005年度で成田財特はなくなる。そのうえに、成田の民営化が3空港一体でなされた場合、周辺自治体への財政補助という見返りは完全になくなってしまう。
 空港は周辺住民の生活と相容れないだけでなく、周辺自治体の発展の阻害要因になることも明白になりつつある。にもかかわらず、千葉県と周辺自治体は「2500メートル平行滑走路の完成」要求にみられるように、いまや最大の空港建設推進団体である。いままで、千葉県は周辺自治体の見返り、補助金要求とは歩調をかならずしも合わせてこなかった。しかし今回、堂本知事の下で完全に同一歩調となった。堂本知事の政治手法は、手あかで汚れた鈴木宗男的な地域振興(利益誘導)型である。

(5月24日) 反対同盟/周辺宣伝を開始

 反対同盟は、暫定滑走路の供用開始後、飛行コース直下での騒音、航空機からの落下物や、航空機事故の不安に対して周辺宣伝を開始した。反対同盟のビラや、アンケート取り、周辺地域での辻説法などを始めた。この周辺宣伝は何回かにわたり、約1カ月間の予定である。詳しくは本紙参照。
 ここでは、反対同盟が配っているビラを紹介する。

◎(資料1) 反対同盟ビラ

■開港後1ヶ月 80〜100デシベルの大騒音/暫定滑走路の延長阻止し廃港へ/“上空飛行をただちにやめろ”/住民の生活破壊する空港公団に怒り

 飛行直下の住民のみなさん。暫定滑走路の開港から1カ月が過ぎました。騒音は北側の成田市十余三、小泉、成毛、土室などで80から90デシベルに達し、南側の芝山町は7割近い地域が騒音下に入りました。窓が振動するなどの低周波騒音の被害が報告されています。芝山上空では着陸のために燃料を捨てる航空機が目撃されました。人を人とも思わない空港公団に怒りをおさえることができません。

 ●ガード下並の騒音とジェット噴射の排ガス被害
 誘導路から50メートルに位置する成田市天神峰と、上空40メートルを飛行する東峰の民家では100デシベルを超える騒音です。ジェット噴射が直撃するところでは、試験的においた紙が茶色く変色し、大気汚染が心配されています。
 これは許されない生活破壊、人権侵害です。政府・運輸省(当時)は、「成田空港シンポジウム」と「円卓会議」で、「地元住民の合意がなければ平行滑走路の工事はしない」と公約しました。これをホゴにし、地元住民の反対の声を踏みにじって暫定滑走路を強行したのです。国なら何をしても良いというのでしょうか。
 しかも空港公団は暫定滑走路を南に延長したいと考えています。北側に移動した800メートルはそのままにして、滑走路予定地の天神峰と東峰の農家を移転させ、神社と墓地、開拓組合道路と一坪共有地を取り上げたいと考えています。
 これを許せば、暫定滑走路は最長で3700メートルになります。ジャンボ機が飛び、飛行地域一帯には今をはるかに超える大騒音がおしよせます。私たちは絶対に土地を渡しません。国に負けず、地域の自然と暮らしを守り続ける決意です。

 ●地域の反対運動が飛行を阻止し暫定滑走路の破綻を促進する
 暫定滑走路の延長は阻止できます。欠陥だらけの暫定滑走路を無用の長物と化すこともできるのです。
 早くも暫定滑走路の限界があらわれました。航空管制の混乱から国際線の2機が着陸できず羽田に回されました(4月30日)。原因は、暫定滑走路の欠陥(誘導路が「へ」の字。管制塔に死角など)と空域制限です。
 滑走路が2本になっても、制約だらけの成田では同時に発着できないのです。発着回数は年間6万5千回とされていますが、その3分の1が限界です。国交省は、成田の国際ハブ空港(基幹空港)からの撤退を決めました。
 地域から「反対」の声をあげること、滑走路の延長を阻止すること、これらが飛行の数を減らし、生活を守ることにつながります。いまこそ力を合わせ、騒音と生活破壊の根を断とう。

 2002年5月24日 

 ●読売社説の中傷に抗議声明
 空港反対運動を中傷する社説を掲載した読売新聞社に対して、反対同盟は抗議声明を出しました。別紙に要旨を掲載しましたのでご覧ください。反対同盟は運動への中傷と妨害に負けることなく闘います。
 三里塚芝山連合空港反対同盟
 (連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

◎(資料2)読売新聞社への抗議文の要旨

■空港反対闘争を中傷する読売社説の撤回と謝罪を要求する(声明要旨)
  三里塚芝山連合空港反対同盟

 四月十七日付読売新聞は「用地への居座りは国民的迷惑だ」と題する社説を掲載した。これは三十六年間にわたる政府・空港公団の強権的空港建設の事実を押し隠し、空港反対闘争の歴史を歪曲する主張である。抗議し撤回と謝罪を要求する。

 ●この地に「居座っている」のは空港である
 読売社説は「代替地も用意されている以上、居座りは国民的迷惑としか言いようがない」と書いている。これは読むに耐えない暴言である。反対同盟は誰一人として代替地を頼んだわけでもなければ、「居座っている」のでもない。
 一九六六年、われわれ地元農民に何の話もなく、この地に空港がやってきた。政府、行政の側が話し合いを拒否し、われわれを門前払いした。七一年強制代執行の時には同盟員一人ひとりが自らの意志で地下壕に入り命がけで闘った。この闘いに共感した人々が全国から三里塚にかけつけた。国の横暴と闘う者を「非国民」呼ばわりして排除しようとする読売新聞を弾劾する。

 ●暫定滑走路の欠陥は政府・公団の責任
 読売社説は、「ジャンボ機は離発着できない」「中型機も大量の燃料を積む遠距離便は離陸できず、香港、サイパン以遠への運航は難しい」と書いている。「へ」の字の誘導路や航空機の地上での渋滞を恐れ、舗装済み滑走路への誤進入の危険性など欠陥空港ぶりを指摘している。
 これらの欠陥を「空港反対派が用地買収を拒否したから」として、反対同盟のせいにしようとするのは筋違いである。
 責任はあげて政府の強権的な空港建設にある。暫定滑走路が危険な欠陥滑走路であることを、政府・公団は計画段階から知っていたのである。
 政府・公団は、シンポ・円卓会議の過程で「反省」の弁を述べ、空港建設を「白紙撤回」した。その舌の根も乾かぬうちに平行滑走路建設をうちだした。そして「2000年完成」方針が破産するや、暫定滑走路計画を出したのである。
 「反省」「白紙撤回」は空港建設のためのペテンであった。「滑走路の延長」構想が暴露されているが、これは政府の脅迫であり、断じて屈しない。

 ●戦争のためには「個人の利益を制限せよ」と主張
 読売社説は「親譲りの土地に対する愛着は尊重されるべき」と「理解」を示すふりをしながら、「公共の利益」のためには「個人の利益はおのずと制限される」と言ってこれを否定している。
 成田空港からPKO(国連平和維持活動)出兵がくり返され、国会に有事立法が提出されている。空港建設を容認することは米国の戦争拡大と自衛隊の参戦、イスラエル・シャロン政権のパレスチナ人民虐殺を許すことにつながる。
 読売新聞は同日掲載のもう一本の社説で「有事法制推進」の立場を鮮明にしている。読売の主張は「公共の利益」(戦争)のためなら「個人の利益は制限せよ」ということであり、「国民的迷惑」ということをもって、軍事空港に反対する反対同盟を「国賊」「非国民」として抹殺しろというものである。

 ●小泉内閣の農民殺しを代弁する読売社説
 読売社説の結論は、「そろそろ法的手段による解決を検討すべき」というものだ。収用委員会を再建し、強制代執行で農地をとりあげろと主張している。だが、成田空港をめぐっては、事業認定が失効し土地収用法は適用できない。読売社説は有事立法(戦時徴発)で土地をとりあげろとあおるものである。
 読売社説は四・一八開港後の小泉内閣の攻撃を代弁するものである。反対同盟はこのような攻撃に対して、さらに「百年闘い抜く」決意である。
 「報道の自由」「表現の自由」は、権力の横暴と対決してこそ意味がある。権力の言葉を代弁し、そのお先棒を担ぐことは、自らの首をしめ民衆の自由をも押しつぶすことになる。

 以上、反対同盟は読売新聞社に対して厳重に抗議し、社説の撤回・謝罪を要求する。
 二〇〇二年四月二十七日
 (連絡先)反対同盟事務局長・北原鉱治  成田市三里塚115

(5月29日) 千葉県警 W杯で警備本部設置/成田空港でフーリガンやテロ対策(5/30読売千葉版、千葉日報)

 サッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕を31日に控え、県警は29日、成田空港内に警備本部を設置した。 
 成田空港では、透明で軽い強化プラスチック製の防護盾や木製の警棒など、フーリガンに対抗する“新兵器”が登場。火薬類の臭いをかぎ分ける警備犬もフーリガンや国際テロの対策に配備された。
 県警は大会期間中、最大で約3000人を動員。警察官が航空機に乗り込みハイジャックなどの国際テロ防止に当たるほか、各国から招へいしたスポッター(面割り捜査官)とペアでフーリガンの入国を水際で阻止する。 
 また、アイルランドチームがキャンプを張る千葉市美浜区内やレフリー本部となる木更津市内も警戒。茨城県のカシマサッカースタジアムで試合がある来月2日、5日、8日には、選手らが宿泊する可能性がある成田市内を中心に重点的に警備を行うという。

 【本紙の解説】
 ワールドカップ警備は有事体制そのものである。競技場を中心に5キロ、高度約750メートル(韓国では3000メートル)を試合2時間前から終了後1時間後までは飛行禁止にし、AWACS(早期空中警戒機)によるレーダー監視のうえ、戦闘機と武装ヘリコプターが上空で配置につき、海上では米空母も待機している。韓国では地対空ミサイルも配備している。米日韓の軍事実戦そのものである。
 今回のワールドカップ警備の中心は競技場と空港と航空機となっている。空港と航空機が戦争になった場合の最大のターゲットであることがこのことで明白になった。有事には成田空港周辺はミサイルやゲリラの最大の標的になる。その理由は空港そのものが軍事施設だからである。空港と住民はその点でも決して共生はできない。

(5月29日) 下総町で新滑走路の飛行コース直下の騒音調査(5/30千葉日報)

 成田空港・暫定平行滑走路運用の飛行コース直下となった下総町で、町と町議会による「飛行コース勉強会」が29日午後行われた。可瀬町長、町議、空港対策担当の町職員らが新東京国際空港公団の職員とルート直下地点で航空機飛行状況の現地調査を行った。 
 同町は新滑走路の運用に伴い、西部地域の一部が騒音区域に入るなど、騒音の影響が増大。新滑走路の全離着陸機が上空を通るため落下物などの懸念も広がっている。
 勉強会は役場内で公団側の概要説明を行い、可瀬町長が「町民から、飛行機がコースを離脱して飛んでいるのではなどと、さまざまな苦情が寄せられている。落下物の問題も含め、町として真剣に考えねばならない課題だ」と指摘した。公団の富澤哲也地域共生部長は「安全上不可避など正当な理由がないコース離脱は、従来通りその航空会社を厳しく指導していく」と答えた。
 調査は下総町内2カ所と神崎町、茨城県新利根町各1カ所で実施され、飛行コース直下に当たる3カ所では上空を通過した9機の騒音測定も行ったが、最大デシベル値は町内では滑川が74・5、西大須賀が74・3、新利根町では72・0となり、横風の影響などで騒音はやや低水準。ルート逸脱もなかった。
 調査終了後、公団関係者は「騒音については今後もきめ細かな測定体制で監視に努め、万全の対策を講じていく」と町側に約束した。 

 【本紙の解説】
 暫定滑走路の北端から約6キロで下総町にはいり、町の中心である滑川は約8キロの地点である。南端から約6キロは木内秀次さん宅がある白枡(しらます)部落、8キロは郡司一司さん宅の小原子(おばらく)部落である。下総町は騒音直下の町である。その下総町などの空港周辺地区では落下物、騒音など空港に対する苦情、不安、不満が充満している。その住民対策を下総町と公団で「勉強会」と称して行っている。
 公団は騒音測定を細かくやるというだけである。航空騒音は対策を「万全の対策を講じ」ようにも講じようがない。落下物や飛行コースの問題も責任は各航空会社にあり、公団がいくら「厳しく指導」しても効き目がないのが実情である。

(5月29日) 1日も早い開業を/成田新高速鉄道/促進同盟が総会(5/30千葉日報)

 成田新高速鉄道の沿線9市村で構成する「成田新線鉄道促進期成同盟」(会長・小川国彦成田市長)の総会が29日、成田のホテルで開かれ、13年度事業報告や決算報告、14年度事業計画案や予算案を承認した。
 成田新高速鉄道の建設主体である新会社「成田高速鉄道アクセス株式会社」が先月25日に設立、2010年度の開業を目指して整備事業がスタートしたことを受け、小川会長は「明るい雰囲気で総会を持つことができた。課題はなお多いが、目標より一日も早く開業させたい」と、まだ最終決着していない整備事業費の地方負担問題などをにじませながらあいさつ。
 一方、名誉会長である堂本知事代理の石塚・県総合企画部理事は「会社は近々、鉄道事業の許可申請を行い、環境アセスメントなどに入る。県では成田と千葉ニュータウン地域を一体的に業務核都市として整備する。そのためにも新高速鉄道の早期整備が不可欠」として沿線自治体の協力を求めた。

 【本紙の解説】
 小川成田市長は「明るい雰囲気」とい

っているが、千葉県と成田市は「土屋駅」設置問題で全面的な「ケンカ」状態である。小川市長は土屋駅設置がなければ応分な地方負担金の責任はとらないといいきり、県の石塚理事は「成田を業務核都市」として重点整備するというだけで、土屋駅の設置問題にはふれなかった。
 「1日も早く開業」(成田市)、「早期整備」(千葉県)といいながらも、それぞれの思惑は違う。成田新高速鉄道のレールは、まだまだカーブを描き遠回りしそうだ。

(5月30日)反対同盟 騒音とジェット噴射による排気ガス問題で成田市に抗議行動

 反対同盟は30日、天神峰の市東孝雄さん宅へのジェット噴射による排ガス被害に対する成田市への抗議、申し入れ行動を行った。
 成田市職員を天神峰に呼び、反対同盟が行っている排ガス被害の調査表を示し、実際の排ガスの実情を調査させた。反対同盟が行っている調査は白紙を掲示板にはりつけているだけの単純なものだが、数日間で縞模様に黄色に変色するほどであった。今後、反対同盟では本格的調査を行う予定。
 空港公団は、防音壁を市東さんのところだけ約3メートルと低くしている。十余三では約10・4メートルであり、東峰では住宅の近くは9・4メートルで離れるにしたがって低くなり最低が6・4メートルである。その理由は、管制塔からの見通しの問題もあるが、騒音と排ガスで市東さんをたたき出すことが本当の理由である。(詳細は本紙参照)

(5月31日) 8次空整で整備空港名明記せず 国交省方針(6/1朝日、毎日)

 国土交通省は、03年度から始まる第8次空港整備計画に、個別空港の滑走路新設・延長計画を盛り込まない方針を固め、31日、交通政策審議会航空分科会の空港整備部会(部会長=杉山武彦・一橋大学教授)に示した。従来は個別の計画を「別表」などの形で明記していたため、いったん名前があがると建設を約束したような形になり、事業の硬直性を招くとして批判されていた。
 96年度からの7次空整では、新千歳、南紀白浜などの滑走路延長計画が盛り込まれたが、計画地の1つだった徳島空港では延長工事に反対する知事が当選し、工事存続をめぐり議論が起きている。石川県の能登空港新設も明記されていたが、国交省はすでに地方空港の新設を凍結する方針を明らかにしている。
 国交省は、8次空整では空港名を明記しない代わりに「整備指針」を示し、個別計画ごとに住民や学識経験者の意見を取り入れる手法を採用し、工事の必要性を慎重に検討する考えだ。

 【本紙の解説】
 8空整で日本の空港整備は180度転換するようだ。「国際ハブ空港」の整備は「日本には適当でない」として、アジアの周辺諸国との競争での敗退を認め全面撤退を決めた。また、離島以外の地方空港は抑制するとの方針をすでに決めている。具体的には新設予定であった、びわこ、播磨、小笠原、新石垣の4空港、滑走路延長が新千歳、秋田、山形、福島、新潟、佐渡、福井の7空港で抑制の対象であった。そのうち、小笠原と新石垣は離島であるとの理由で「抑制」から外されたが、小笠原は最終的に建設中止が決定。新石垣は地元自治体が誘致に熱心である。さらに7空整で盛り込まれた能登、南紀白浜、徳島も凍結のもようだ。
 したがって、8空整の整備は「成田の暫定滑走路の延長」「中部国際空港」「関空二期工事」がメインであり、地方空港は住民の反対を押し切って工事を進めている静岡ぐらいになるのか。整備の焦点は福岡空港の新設、拡大問題である。
 日本の戦後経済成長は、交通網では新幹線と空港整備が牽引した。その点で空港整備からの全面撤退は日本経済の終焉を見るようでもある。また、日本が空港整備と航空運輸業からの基本的後退・撤退を国の政策として決めることは、三里塚闘争の勝利であり、国・国交省の全面敗北といってもいいのである。

(5月31日) 成田新高速鉄道/鉄道事業の許可申請(6/1朝日、毎日、東京、産経の各千葉版、日経)

 県の第三セクター、成田高速鉄道アクセスと京成電鉄は31日、「成田新高速鉄道」について、扇千景・国土交通相に事業許可申請を行ったと発表した。
 成田高速鉄道アクセスが申請したのは、都市基盤整備公団線印旛日本医大駅から成田空港高速鉄道線の接続地点までの10・7キロ区間。京成鉄道は、同区間を含む京成高砂駅から成田空港駅までの51・4キロ区間。成田市などが要望していた新駅の複数建設については受け入れておらず、従来通り「成田ニュータウン北駅」(仮称)のみを申請している。

 【本紙の解説】
 成田新高速鉄道は成田市が要望している土屋駅の設置は認めずに、事業認可を申請した。地方分担金の割り振りも決まらないなかでの見切り発車となった。成田市の土屋駅設置問題はまったく現実性のないものである。予定の「成田ニュータウン駅」から土屋駅は約2キロのところである。2キロで次の駅とは山手線並の駅間の距離である。
 成田市が主張する国との「約束」とは、70年2月に成田市が開港に向けた45項目要望の一つとして土屋駅設置を上げたもの。当時の運輸省幹部から「十分考慮する」との回答があった点を理由にしている。当時国は、空港建設に成田市を全面協力させるために「考慮」するとしたにすぎない。また当時はまだ、成田ニュータウンも整備前のことであり、当時の運輸省も「ニュータウン北駅」でなく「土屋駅」と考えていたのであろう。
 「高速鉄道」と銘打つ鉄道に同じ市内で2キロの距離に駅設置を要求すること自体が無理押しの要求である。国交省、県、京成電車もこの土屋駅設置運動は小川市長の来春に行われる市長選挙のための運動であると見越して、実際には無視するようだ。
 しかし、成田新高速鉄道のコースは印旛沼を架橋するものであり、自然破壊も甚だしいものである。絶滅危惧種のサンカノゴイ(サギ科)やオオセツカ(ウグイス科)が繁殖している。「環境派」の堂本知事はこのことを無視し環境破壊の先頭にたっている。この問題についての知事のコメントが一度もなされないことも異常である。

(5月31日) 反対同盟が東峰神社裁判第1回公判への公判傍聴を訴え

 東峰部落の住民が4月9日、東峰神社の土地名義書き換え要求と、立ち木伐採の原状回復を求めて空港公団を提訴した裁判の第1回公判が、6月24日(月)に千葉地裁で行われます。反対同盟から公判傍聴の「お知らせ」が配布されたので、ここに掲載します。
 多くの皆さんが初公判への傍聴に参加されることを呼びかけます。東峰裁判の内容については、「神社の木伐採で空港公団を提訴」(2002年4月9日付日誌参照)と「うんちく講座」(2000年8月24日付日誌参照)を参照してください。

◎お知らせ
                  三里塚芝山連合空港反対同盟

 反対同盟員ならびに支援のみなさん。
 空港公団は昨年6月16日、東峰神社の立木を、暫定滑走路の飛行の障害になるとして伐採しました。この立木盗伐について、空港公団は「神社の土地の所有権は公団にあり、そこに立つ樹木も公団の所有物である」という、白を黒と言いくるめる大嘘でその犯罪を開き直りました。
 これに対して東峰部落は、神社の土地所有権が部落にある(総有関係)ことの確認と、違法に公団名義とされた登記名義を真正な名義(部落各戸の名義)に回復すること、伐採した立木を原状に戻すこと等を求める裁判をおこしました。その初公判の日程が決まりましたのでお知らせします。反対同盟としましては、傍聴の取り組みをおこないたいと思いますので、よろしくお願いします。

 《記》
  東峰神社裁判第1回公判
  【日時】6月24日(月)午後1時10分
  【法廷】千葉地方裁判所

 ※上記の通りですが、当日は、被告・空港公団関係者等の傍聴が予想されます。傍聴券確保のため反対同盟、支援の皆さんは正午・千葉地裁前に集合していただきたいと思いますので、よろしくご協力をお願い致します。

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