SANRIZUKA 日誌 HP版   2004/01/01〜31    

ホームページへ週刊『前進』月刊『コミューン』季刊『共産主義者』週刊『三里塚』出版物案内販売書店案内連絡先English

 

 2004年1月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(1月4日) 英国航空、テロ警戒し連日欠航(1/4読売)

 国際テロ組織「アル・カーイダ」が、年末年始に運航する旅客機を複数ハイジャックし、米国のワシントンや核関連施設などに突っ込む同時多発テロを計画していた、との通報が情報機関にもたらされていたことがわかった。英日曜紙サンデー・タイムズが4日、報じた。
 それによると、計画は、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、エールフランス、メキシコ航空の米国便をイスラム過激派がハイジャックし、「ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルスの3都市のほか、米国の石油供給パイプラインの拠点であるアラスカ州のバルデズ港と、東海岸の核関連施設に墜落させる」という内容だったという。
 そのために、英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、連日のキャンセル便を出している。BA社は1、2の両日、ロンドンのヒースロー空港発米ワシントン郊外のダレス国際空港行き223便をキャンセルしたのに続き、3日のヒースロー空港発サウジアラビア・リヤド空港行き263便もキャンセルした。
 米政府は先月21日、年末年始の休暇を前に、米国でのテロ発生の危険度を最も危険な状態に次ぐ「オレンジ(高い危険)」へと引き上げており、英政府の対応も、米のテロ情報に基づくのは間違いない。
 米政府のテロ予防策は、他のメキシコ、フランスなどの航空路線にも影響を与えている。先月25日には、エールフランスのパリ―ロサンゼルス間が6便、31、1の両日はメキシコ航空のメキシコ市―ロサンゼルス間の各1便がキャンセルとなった。他にも目的地外着陸などで遅延が出ており、航空各社などの間では「米の過剰反応では」との不満も出始めている。

 【本紙の解説】
 04年の最初に世界を駆けめぐった航空情報のビッグニュースは、1月3日に乗客乗員の全員148人が死亡したエジプト機の墜落と、この米本土への航空機を使ったゲリラ情報であった。04年を象徴するものだ。イラク占領=イラク侵略戦争の継続と、それに対するイラク人民の反撃の激化は、世界的ゲリラ戦をより拡大させるであろう。
 これまでは、イラク現地、アラブとともに米国と欧州がターゲットの中心であったが、自衛隊のイラク派兵が本格的に開始され、日本も有力なターゲットとなった。その最大の攻撃対象は成田空港であり、また成田空港を使ったゲリラ戦争であることは明らかである。日本の治安当局も躍起になって防衛策をとっているが、有効な対策をとりきれるはずもない。

(1月6日) 空港公団の黒野総裁新年挨拶/「B滑走路の延長に全力」(1/6朝日新聞千葉版)

 新東京国際空港公団の黒野匡彦総裁は5日の新年会見で、用地交渉が難航している暫定B滑走路の2500メートル化について、「暫定滑走路の延長に全力投入して、着実にこの1年、前進していきたい」と述べ、改めて前向きな姿勢を示した。
 昨年末、黒野総裁は「2500メートル化の猶予は数ヵ月以内」と語り、空港反対派の農家が残る同滑走路南側の用地取得が進まなかった場合、04年内にも同滑走路を北側へ延伸する考えを示している。

 【本紙の解説】
 黒野総裁は2日に、空港公団のホームページに「新年挨拶」を載せ、その中で「世界トップレベルの空港であるためには、暫定平行滑走路の2500メートル化は必ず実現しなければならない課題です。2500メートル化の目途がついていないということでは、国民の皆様、世界のお客様にも納得していただけません。今後も地権者の方々のご理解とご協力が得られるよう、誠意を持って努力してまいります」と事実上の北延伸強行を宣言している。
 これは、昨年12月26日の記者会見での北延伸発言に続いたものであり、今年の4月1日の民営化とともに、北側再延伸を最終決定し、04年度中にも工事を開始するということである。住民の生活をまったく顧みずに、「国民の皆様、世界のお客様にも納得していただけません」という論理だけで、一方的に農民たちを犠牲にし、虫けらのように扱っている。これは三里塚闘争の歴史の出発点を作り出した農民無視そのものである。
 04年の三里塚闘争は、北側再延伸攻撃との闘いになった。

(1月8日) 顔や瞳で本人確認システム 日韓の空港で実験開始(1/9読売、産経、毎日千葉版、千葉日報)

 顔の輪郭や虹彩など生体認証(バイオメトリクス)を使った航空機の搭乗システム「e―チェックイン」の実証実験が8日、成田空港と韓国・仁川国際空港で同時に始まった。空港セキュリティー(保安)と利便性の向上が目的で、国土交通省と新東京国際空港公団、日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、NTTデータなどが技術開発を進めている。
 この日始まったチェックインはJALの旅客約5000人が対象で、事前に顔の輪郭や虹彩(光の量を調節する薄い膜)のデータを登録。これらの情報を記録したICカードを、専用の読み取り機が確認する仕組み。セキュリティーゲートでも虹彩の認証を行うが、これまでと比べ、混雑時で約15分程度の待ち時間の短縮が可能だという。6月30日まで行われる。

 【本紙の解説】
 アイリス(虹彩)認証では、他人を「本人」と間違える割合(他人誤認率)は、「120万分の1」程度で、かなり正確な認識率と言われている。しかし、それを使った搭乗システムは、事前に顔とアイリス(虹彩)を登録する必要があり、事実上、空港セキュリティーには適さないようだ。登録した人しか認証しないので、ゲリラ目的の乗客は登録するはずもなく、何ら意味をなさない。当面5000人に限定しているが、その人の利便性向上にはなるであろう。
 しかし、ハードコンタクトなどをしていたら、他人と認証される恐れはないのであろうか。便利なものはその機能が十全に働かないと悲惨な目に遭うことがある。アイリス認証で自分の部屋や研究室などの出入りを管理していて、けがなどでアイリスに損傷が起こった場合は自分の部屋に入室できなくなる。疾病などによるアイリスへの影響はほとんどないといわれているが、それはあくまで眼球内部の疾病であり、けがなどは想定していない。

(1月8日) 成田空港/トイレでボヤ騒ぎ(1/9毎日千葉版、千葉日報)

 8日午後零時40分ごろ、成田空港第第1ターミナルビル中央棟3階の一般公衆トイレで火災報知器が鳴り警備員が駆け付けたところ、男子用トイレ内の洋式便座が焦げているのが見つかった。
 新東京空港署の調べでは、便座用のシーティングペーパー数枚を重ねて燃やした熱で便座が焦げたらしい、同署はゲリラなどではなくいたずらが目的とみて器物損壊事件として捜査している。現場はエスカレーターの通過階。レストランや物販店もないため旅行客の人通りが少なく、大きな混乱はなかった。

(1月8日) 新型肺炎/成田空港 水際発見へ熱探知(1/9読売新聞千葉版)

 中国・広東省広州市でSARSに男性(32)が感染したのに続き、女性(20)にも感染の疑いが出たことで、成田空港で警戒感が高まっている。
 厚生労働省成田空港検疫所は、男性が「感染の疑いがある」とされた昨年末から連日、広州から到着した旅客を対象に熱を感知するサーモグラフィーを使った検温を実施。
 38度以上の熱があるとモニター画面に赤く表示されるもので、自覚症状はないが発熱している患者などの早期発見に役立つという。

 【本紙の解説】
 ついにSARSの再発が始まったようだ。昨年とちがい、中国衛生部の早い対応と報道により、本格的感染は防げているようだが、防ぎきれるかどうか春の4月ごろまでわからない。結局、ワクチンは完成せず、感染源もいまだ正確には分かっていない。しかし疑いをかけられているハクビシンはその食用を禁止され、1万匹が処分される運命のようだ。
 成田空港から出発する中国便は、価格破壊的安売りツアーで何とか乗客を確保していたが、これからはそれでも乗客は集まらなくなりそうである。

(1月8日) 年末年始の出入国/昨年同期比2パーセント減(1/9読売千葉版)

 成田空港の年末年始(昨年12月20日―1月4日)の出入国者数は約114万5700人(速報値)で、過去最高を記録した昨年同期より約2パーセント減少したと、東京入管成田支局が8日、発表した。
 新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)やテロヘの不安から、日本人の出国者数は41万7200人と約5パーセント減少した。

 【本紙の解説】
 昨年に12月11日に公団は、「成田空港年末年始利用客 過去最高の見通し」と予測していた(03年12月11日付日誌を参照)。
 それは、「12月19日から来年1月5日までの18日間に成田空港を利用する旅客は約133万人で、前年同期の約131万人を上回る見込み」となっていた。実際はそこまでいかず、かなりの減少となった。やはり原因はSARSであり、イラク侵略戦争の影響であった。多くの日本人は海外格安ツアーより、国内旅行を選んだようだ。

(1月11日) 反対同盟旗開き

 反対同盟旗開きが1月11日、成田市並木町の「はなまさ」で約百人の参加を得て開かれた。今年の旗開きは、成田空港を使った自衛隊派遣が相次いで行われていることに対決し戦闘的に持たれた。1月15、16日に陸上自衛隊の先遣隊派兵が行われるという報道の中で、16日に反対同盟主催で「陸上自衛隊イラク派兵阻止闘争」の呼びかけが、旗開きの席上で発せられた。

 【日時】1月16日 10時    天神峰結集 
           10時45分 デモ出発

 *以下は旗開きで発せられた反対同盟の「2004年闘争宣言」。
 
 ■2004年闘争宣言■

 2004年の新年を迎え、反対同盟はますます意気高く闘いぬいている。成田空港民営化のための暫定滑走路延長攻撃を粉砕し、成田空港を使った自衛隊のイラク出兵と総力をあげて闘う決意である。
 4月1日の成田空港民営化を前に、おいつめられた黒野公団総裁は暫定滑走路延長(2500メートル化)をうちだし、「当初計画の完成が不可能ならここ数カ月のうちに北側延伸を決断する」と躍起になっている。昨年末には、条件移転者からの用地買収を公表し、「へ」の字の誘導路を直線化したい旨表明した。親子三代にわたって耕作する市東同盟員に対して貸借契約の解除を求め、野戦病院や岩山団結小屋の居住者には退去を強要する文書を送達してきた。粉砕あるのみだ。
 暫定滑走路延長の目的は民営化にともなう株価つり上げである。これがもたらすものは天神峰・東峰地区と小泉地区など北側直下住民へのさらなる騒音地獄であり、欠陥性と危険性の増幅である。再度の工事実施計画変更は断じて許されない。
 反対同盟は暫定滑走路の延長を全国の支援者とともに粉砕する。東峰神社裁判闘争の勝利は、滑走路のど真ん中の拠点を守り抜いた。ジェットブラスト防護林の移植は不屈の闘いの表明である。反対同盟はなんとしても権利を守り滑走路延長を阻止する。
 小泉内閣は、成田空港から民間機を使って、航空自衛隊の先遣隊をイラクに派遣した。明日にも陸自先遣隊を成田空港から出発させようとしている。これはイラク占領のための軍事行動である。反対同盟は「軍事空港建設反対」を掲げて闘ってきたが、いよいよその真価を発揮する時がきた。
 国際社会から孤立する米・ブッシュ政権は戦争・核戦争を引き起こす元凶である。小泉内閣はその共犯者である。有事法制と改憲、戦争のための法改悪に反対して決起しよう。「労農連帯」の旗のもと、動労千葉を始めとする闘う労働者と連帯して闘おう。陸自派遣阻止の1・16現地闘争に決起し、3・28全国集会で民営化を迎え撃ち、暫定滑走路延長を阻止する三年間決戦に勝利しよう。

 2004年1月11日
      三里塚芝山連合空港反対同盟

(1月15日) 危機管理チーム設置(1/16千葉日報)

 政府は15日、国際テロをはじめとする国際組織犯罪を未然に防止するため、警察、海上保安、国土交通など関係省庁の課長級18人で構成する「水際危機管理チーム」を16日付で内閣官房に設置することを決めた。
 また同日付で成田、関西両空港に「空港危機管理官」、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の5港に「港湾危機管理官」を各1人任命する。
 政府は昨年12月の「テロ対策関係省庁会議」で危機管理チームの設置を決めていた。小泉純一郎首相は15日夜、首相官邸で記者団に「テロはいつ起きるか分からない。その強化策の一環として怠りなく目配りしながらやっている。油断はできない」と強調した。
 福田康夫官房長官は記者会見で「テロの可能性、脅威が増してきている情勢を反映したものだ。危機管理体制を必要に応じてその都度改善していくのは政府の務めだ」と述べた。

 【本紙の解説】
 昨年12月に政府決定(03年12月12日付日誌を参照)したことが、陸自の先遣隊が翌日に出発するという時期に施行された。これにともなって、千葉県警は内閣参事官として派遣される空港危機管理官のもとに空港危機管理室を立ち上げ、同室は空港公団本社ビルに置かれ、スタッフ5人が常駐するという。
 「水際危機管理チーム」が、「テロリスト入国のおそれがある」と指示した場合に、空港危機管理室は、空港の手荷物検査やパトロールの人数や回数を増やすなど必要な措置をすることになるという。同日に警察庁は、首相官邸や原発、米国関係施設に加え、主要な空港・駅でも警備を強化することを決めている。成田空港でも千葉県警が警備犬を使ってパトロールを実施している。
 空港・港湾で「テロリスト」の入国を阻止すればゲリラ戦闘を防止できるという考え方が間違っている。空港そのものが第一級のターゲットであり、入国も空港・港湾を使わない方法が可能である。また、対策する空港は成田と関西だけになっているが、国際線が運航している地方空港はいくらでもある。
 米国の9・11も警備の厳しい国際線でなく、国内線が狙われた。ゲリラ戦闘はあらゆる弱点を突いて敢行されるものであり、このような泥縄的対策で決して防げるものではない。

(1月15日) 航空法改正で機内迷惑行為に罰則(1/16毎日、朝日千葉版、千葉日報、日経夕刊)

 携帯電話の使用やトイレでの喫煙など「航空機内の迷惑行為」を禁止する改正航空法が15日施行された。
 機内での迷惑行為は年々急増、2000年には570件に達した。テロ対策検査強化などでその後、減る傾向にはあるが、代替空港に着陸するなど重大事態を招いた事案が年40件を超えるなど高止まりで推移。
 改正航空法では、乗降口の扉を理由なく操作したり、離着陸時にシートベルトを着用しない行為や携帯電話の身勝手な使用など「8行為」を禁止命令対象と定め、機長が口頭で注意しても従わない悪質な乗客には、最高で50万円の罰金が科せられる。
 テロやハイジャック防止の機内安全対策の一環として迷惑行為の規制強化を求める声が強まる中で、機内の全面禁煙化に続き、02年5月からは果物ナイフやハサミの機内持ち込みが禁止されたが、一方で周知不足や身勝手な乗客のモラル低下が指摘されていた。

 【本紙の解説】
 航空機の安全運航を阻害する迷惑行為を禁止すること自体は必要なことであるが、このような法律化は、治安弾圧法として悪用されるのが常である。この迷惑行為禁止法も数年前から法文化が問題になっていたが、9・11以降、航空機ゲリラが現実化したなかで昨年7月11日に成立した。単純に迷惑行為禁止だけが目的ではなく、治安法的観点で成立が急がれたのである。

(1月16日) 成田空港から陸自先遣隊30人が出発(全紙)

 イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊派遣の中核となる陸上自衛隊部隊のうち、先遣隊約30人が16日夜、成田空港から民間機で経由地のクウェートに向け出発した。今月下旬には派遣先のイラク南部サマワに入り、本隊派遣の準備を始める。
 米軍などへの攻撃が続き、国内世論も賛否両論に割れる中、自衛隊派遣は本格段階へ一歩を踏み出した。今後は、派遣隊員の安全確保が最大の課題となる。
 同日午後、記者会見した石破茂防衛庁長官は「国際社会の多くの国々がイラクの復興に努力している。その目的のため(日本が)一緒になって活動することを期待されている」と述べ、派遣の意義を強調した。
 これに先立ち先遣隊は東京・市谷の防衛庁で編成完結式に臨んだ。先崎一陸上幕僚長は「出番の日を迎えた。本番開始だ。日本の代表、陸自の代表として存分に頑張ってきてほしい」と、先遣隊長の佐藤正久一等陸佐ら隊員を激励した。
 北海道・新千歳空港では16日午後、ロシアからチャーターしたアントノフ輸送機が、先遣隊が現地で移動に使う軽装甲機動車を載せ、クウェートに向け離陸。車体は左右のドアと後部に日の丸を付け「JAPAN」などと書かれた。
 先遣隊員らは17日にクウェートに到着。同国西部の砂漠地帯にある米陸軍のキャンプ・バージニアで、準備訓練や軽装甲機動車の点検を行い、下旬に陸路でサマワに入る。
 日本とは一変する気候など環境条件の調査や、治安情勢を確認。一部の隊員は本隊の派遣に備え帰国し、政府与党に報告する。
 復興支援活動が可能と判断されれば、月内にも本隊第一陣の施設部隊が出発する。

 【本紙の解説】
 陸自のイラク先遣隊派兵は日本による海外侵略戦争の事実上の開始である。歴史が戦後から戦前・戦中へと回旋したことを意味する。この前日に治安体制も、戦時型治安弾圧体制に一変した。
 兵員の派兵は成田空港から民間機で行われた。成田空港は軍事空港になっている。兵員移動は民間機を使うことが現代戦争では常識である。米国の航空会社は、CRAF(Civil Reserve Air Freet、通称クラフ)に組織されている。クラフとは、米国の有事立法による民間航空機の国防目的への徴用制度で、指定された航空機は平常時から連邦政府の予算で機体の整備改修が施されている。アフガニスタン侵略戦争で米軍は、クラフによる民間航空機による兵員・物資の輸送量は全体の41パーセントであった。兵員移動そのものは大半が民間機で行われている。
 三里塚闘争は空港の位置決定が地元農民に事前に知らされず、寝耳に水だったことから始まった。その三里塚闘争がここまで長期に闘いぬかれた根拠は全国の反戦闘争・団体との結合があった。
 空港に反対するかどうかを決めるために地元農民が羽田空港を視察に行った67年当時、羽田はベトナムの兵員輸送と物資輸送のための米軍チャーター機があふれかえっていた。農民たちは「羽田が手狭になったという政府の説明は、ベトナム戦争の米軍機が羽田を使っているからだ。成田空港を造るのも軍事空港づくりだ」と直感、その後の三里塚闘争の重要なスローガンとなる「軍事空港反対」という主張が生まれた。それが全国的な反戦闘争と結合し発展していった。時代は30年以上経過したが、戦争に際して軍が民間空港と民間機に依拠する割合は、当時より増大している。
 陸自の軽装甲機動車を千歳空港から輸送したののは、ロシアの民間輸送会社からチャーターしたアントノフ124であった。アントノフ124は旧ソ連時代の1980年代半ばから軍用機として生産が開始され、90年から民間機としても利用が始まった。最大積載貨物量は120トン。米国最大級の民間輸送機ボーイング747Fの100トンを上回る。また、機体後部の貨物の出し入れ口や収納スペースが大きく、長さ30メートル、幅6・3メートル、高さ4・3メートルもある。長さと幅はボーイングのほぼ倍で、はるかに大型の貨物を運べるのが特徴だ。防衛庁も94年のルワンダ、2002年の東ティモールでのPKO派兵の際に使用した。現在、民間で同機を保有するのは、ロシアとウクライナの3社で、合わせて20機である。
 軍隊が大型車両などを大量に運ぶ際は軍用貨物機を使うことが基本である。現在、米軍は大型の長距離輸送機C5Aギャラクシー(ロッキード社製)およびC17(M・ダグラス社製)を持ち、ロシア軍は、スペースシャトル輸送用に開発されたアントノフ225(最大積載量250トン)と今回のアントノフ124を保有している。しかし、いざ開戦の時は保有軍用機だけでは間に合わず、民間機を大量に使うことになる。現在の戦争は民間空港と民間航空機があらかじめ軍隊の一構成要素になっているのである。
 日米帝国主義の朝鮮侵略戦争が始まった場合、米国民間機による兵員移送にとどまらず、軍用輸送機と戦闘機も成田に飛来することが日米の政府間では取り決められている。
 今回の陸自先遣隊が使った航空機はノースウエスト航空であった。空自先遣隊の派遣はブリティッシュ・エアウェイズ(BA)であった。それは日本の反戦闘争と航空連などの闘いにより、日航がターゲットにされることを恐れて日航機を使わせなかったからである。このことを日本政府と防衛庁はひた隠しにしている。それは、本格的派兵の第一歩のイラク派兵にナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)を使えなかったこと、国家にとって屈辱だからである。それは、派兵に関しての国民的合意がない中で小泉政権が強引に推し進めていることを示しているのである。
 防衛庁は、今後も陸自の施設部隊、本隊の派兵も政府専用機だけでまかなうことはできずに成田空港から民間機を使うことを計画している。
 三里塚闘争は軍事空港反対をより大きく掲げ闘いぬく決意である。この1月16日には反対同盟主催で50人の参加で、陸自先遣隊派兵反対闘争を闘いぬいた(詳しくは本紙参照)。

(1月19日) 成田空港でテロ訓練(1/20朝日、毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 陸上自衛隊の先遣隊がイラクに派遣されてから警戒が強化されている成田空港で19日、テロ攻撃を想定した大規模な訓練が、県警と新東京国際空港公団などが協力して行われた。県警の銃器対策部隊、爆発物処理班のほか、核物質や生物化学物質などを処理するため、16日に機動隊と空港警備隊内に設置されたばかりのNBC対策部隊も参加した。
 NBC対策部隊は、国内線旅客用コンコースでサリンがまかれたという想定で訓練をした。隊員は化学防護服をまとい、検知班2人が生物化学検知器で現場の状況を確認した後、「被害者」の救助と物質の撤去にあたった。
 ターミナルビル近くの駐車場では、防爆スーツに身を包んだ爆発物処理班が、車の中から爆発物を取り出して専用の車両で処理する訓練を行った。銃器対策部隊は機関銃の点検などをした。
 訓練の前には、成田空港の関係21団体で構成する空港保安委員会があり、内閣官房の堀内文隆危機管理審議官は「テロ対策を効果的に行うためには関係機関の連携が必要。情勢に応じ、テロの水際対策を徹底したい」と述べた。

 【本紙の解説】
 昨年11月21日に、政令案件として「緊急事態に対する政府の初動対処体制及び緊急事態発生時における閣僚の参集等の対応」が決定された。いままでの政府の緊急事態対処体制は、95年阪神・淡路大震災以降、大規模自然災害を中心に整備されていた。それでは、01年9・11反米ゲリラなどについては、「想定していなかった新しい事態に対応できない」(内閣官房)として、「様々な事態に柔軟、適切に対処する観点」から、いままでのマニュアルを泥縄的に一本化したにすぎないものであった。9・11的事態に対応できないというマスコミなどの批判が多かった。しかし、9・11などのゲリラ戦闘に対応する警備方針などというものはない。あったとしてもゲリラ戦闘はその裏や逆をついて戦闘を敢行するものである。また、自爆戦闘に万全に対応する警備対策などというものはありえないのである。
 成田での「テロ対策訓練」は、爆弾処理班の出動とNBC(核、生物、化学兵器)対策班が初出動した。また、銃器対策部隊は軽機関銃(サブ・マシンガン)の操作を実施している。いままで、ハイジャック対策などのSAT部隊が使用していたマシンガンが日本の階級闘争の中に公然と登場した。しかし、その物々しさにもかかわらず、「空港の安全を期す」「ゲリラを未然に防ぐ」という対ゲリラ対策としては無力感が漂うものであったとのこと。

(1月19日) 「動く隔離室」成田に導入 感染症患者の移動、安全に

 成田空港の「日本医大新東京国際空港クリニック」はこのほど、新型肺炎(SARS)や鶏インフルエンザなどの感染症患者の発生に備え、陰圧装置付きの車いすを導入した。
 車いすをビニールカーテンで覆って内部の気圧を外部より低く保ち、病原体を封じ込める仕組み。座ったまま、酸素吸入や点滴もできる。
 到着客の中には体調に異常があっても検疫ブースで申告せずに入国審査を通過し、空港内で倒れてクリニックで受診するケースも多い。
 従来は感染症患者を診察した場合、隔離室から診察室への移動や転院の際に患者が触れた場所をすべて消毒する必要があったが、そうした二次感染予防の手間が大幅に省けるという。

 【本紙の解説】
 SARSがアジアで流行し始め、成田空港から日本に上陸してくることは防ぎようがなくなっている。そのために、問題は第二次感染をどう最小限度にするのかが、SARS感染者発見とともに、SARS対策の最前線になっているようだ。
 また、SARSの本格化する前に鶏インフルエンザが猛威をふるっている。1924年に千葉県で発生したのが最後とされていたものが、79年ぶりに日本で発生した。鶏インフルエンザウィルスは、中国華南地方の鶏が宿主で、変異によって人間に感染するようになった。
 これは、宿主がハクビシンらしいというSARSと同じである。これまでは人間には伝染しないと考えられ、動物を宿主にしていたウィルスが変異ウィルスによって人畜(人獣)共通感染症になったものである。
 人間の食生活、移動がこの100年に一大変化を遂げていることが、この種の地域的疾病が世界的に流行する最大の原因である。したがって、この種の疾病はまだまだ多く発生することは間違いない。

(1月23日) 第2給油センター完成/航空燃料を安定確保(1/23千葉日報)

 航空燃料の安定供給を図るため、成田空港の平行滑走路北東部に整備が進められていた「第2給油センター」(敷地面積13ヘクタール、備蓄量3万9000キロリットル)が完成した。試運転期間を経て4月から供用を開始する。
 第2給油センターの増設で、成田空港の備蓄量は既存の第1給油センター(9万9000キロリットル)分と合わせ13万8000キロリットルとなり、8・8日分の航空燃料が確保される。
 航空燃料の安定供給には空港内に1週間分の備蓄が必要とされているが、現在は6・3日分しかない。第2センターの完成で「当分はこれで対応できる」と新東京国際空港公団。
 施設は6000キロリットル級のタンクが8基あり、1基の大きさは高さ12メートル、直径32メートルでドラム缶にして3万本分、タンクローリーでは430台分の容量。
 一昨年3月に着工した。将来的は18基まで建設が可能。現在、配管のフラッシング(管内洗浄)など試運転が行われている。
 成田空港では、年間17万6000回(14年度実績)の航空機が離発着しており、給油量は1日あたり1万6000キロリットル。年間576万キロリットルが消費される。タンク1基でボーイング747型ジャンボ機の場合、成田―ニューヨーク間を18往復できる計算。

 【本紙の解説】
 第2給油センターは平行滑走路が完全完成し、ジャンボ機が飛び交い、給油タンクが不足するとの計算から建設された。しかし、平行滑走路の発着回数が当初計算の7万5000回に遠く及ばす、4万回レベルであり、また中型機以下なので、第2給油センターは事実上必要なくなっている。事実、第1給油センターだけで6・3日分の備蓄もあり、「安定供給」の基準である1週間分の備蓄に若干足りないだけなのである。

(1月23日) 東京税関が成田に新出張所(1/24毎日千葉版)

 成田空港で急増している貨物の通関手続きの効率化を図るため、東京税関(東京都江東区)は23日までに、空港南側の地区に、新たな航空貨物出張所の設置を決めた。今年7月のスタートを目指す。
 成田空港の貨物取扱量は02年度約200万トンで、国内最大の取扱量。これまで同空港を通過する貨物は、生鮮類や緊急の貨物は空港内にある「成田航空貨物出張所」で、それ以外は市川市の「東京税関東京航空貨物出張所」で行われてきた。
 しかし、通関業務の規制緩和で、これらの仕分け基準が撤廃(96年)されたことを受け、時間やコスト面でロスが少ない空港周辺の芝山町などの工業団地に移転する企業の保税施設が急増したことから、業者から「空港南側に新たな出張所を」との要望が出ていた。
 新しい出張所は「東京税関成田南部航空貨物出張所(仮称)」で、鉄骨2階建て。芝山、多古の2町にある保税施設が通関手続きの対象となる見込みで、税関職員は100人以上の規模になるという。航空貨物出張所の関係者は「従来の負担が軽減され、貨物の審査・検査がしっかり出来るようになるだろう」と話している。

 【本紙の解説】
 成田空港でこの1年間でもっともめざましい発展を遂げているのは貨物関連の施設と企業である。乗客の利用はSARSやイラク侵略戦争で低減傾向にある。また羽田の国際化により、アジア便の大半が羽田に移動することで数年先はよりはっきりしてくる。しかし、貨物分はそれに比して増大しそうである。現代の貨物輸送は旅客機と一緒になっているものが過半を占めているが、貨物専用機も多い。成田のアジア便が羽田に移った後を埋めるのは、貨物便であるといわれている。

(1月25日) 全日空第1旅客ビルへ 成田空港

 改装工事中の成田空港第1旅客ターミナルビル南ウイングが06年に完成するのに合わせ、新東京国際空港公団は、第1、第2旅客ビルを使用する各航空会社の配置換えの最終案をまとめ、同空港航空会社運営者協議会などに提示した。各社とも大筋で了承する見通し。配置案では、現在第2旅客ビルを使用している全日空(ANA)と日本航空(JAL)が第1、第2にわかれるため、旅客の混雑緩和が期待され、航空連合や共同運航の便が同じターミナルビルになって、利用客の利便性が高まる。
 成田空港に乗り入れているのは現在、計68社。便数の多い国内2社が第2を使っているため、第1と第2の発着便数比は34対66と2倍近い差がある。混雑時の第2旅客ビルの出国審査場には、手続きを待つ利用客の行列ができて、不満の声が絶えない。
 南ウイングが完成すると、ANAなど約20社が移動し、第1と第2の発着便数の割合は54対46と逆転し、発着便数のピークは分散されるという。
 第1の駐機場も17カ所増えて、バスを使ってビルから離れた駐機場に行く「沖止め」は減りそうだ。
 また、航空連合や共同運航を意識した再配置となり、乗り継ぎなどがスムーズになる。
 ANA、ユナイテッド航空(UAL)など15社が加盟する最大の航空連合「スターアライアンス」は、UALが第1、ANAが第2にわかれているため、現在は乗り継ぎの場合、連絡バスなどでビルを移動しているが、再配置後は、移動が楽になる。
 両社の共同運航便は、UALの航空券で全日空機に乗る場合などがあるが、ビルを間違えたり、戸惑ったりする利用者は多いという。同空港の共同運航便週946便のうち、626便はビルが異なっている。再配置後はこれが24便まで減る見通しだ。
 南ウイングの工事は05年12月までに終了。06年4月から各社が順次移動し、07年度内にすべて完了する予定だ。

【本紙の解説】
 そもそも成田空港の最初の設計では、4000メートル滑走路は欧米便中心で第1ターミナルビルは欧米の航空会社が入り、平行滑走路はアジア便中心で、第2ターミナルビルは日本とアジアの航空会社が入ることになっていた。その関係で、94年に第2ターミナルビルが完成したときから、日航と全日空は第2ターミナルビルに入った。成田空港二期工事は第2ターミナルビルと平行滑走路が同時完成の予定であった。それと木の根を通る誘導路が完成していれば、2ビルに日本の航空会社2社がいても、これほどの混雑はなかったのである。それに輪をかけたのが、航空会社のアライアンス(航空連合)であり、コードシェア(共同運航)である。例えば、成田19時発ニューヨーク行きで、「JL5014」という便のチケットは日航が売っているが、実は、アメリカン航空運航とのコードシェアで「AA168」という便であり、それは1ビルから乗ることになる。日航のチケットを買ったので、2ビルに行ったが、それは間違いとなってしまうのである。
 成田空港の計画、設計が40年近く前であり、航空事情も一変し、それもいまだ完成していない。不便さの原因はそこにあり、1ビルと2ビルの航空会社の配置を替えたとしても根本的解決にはならない。

(1月28日) 成田空港公団 トヨタ方式でコスト減 落札後再び交渉、着陸料値下げへ

 完全民営化に向け4月に株式会社化される成田空港の新東京国際空港公団が、航空機の着陸料引き下げに向け、工事落札企業との間で再度価格交渉をおこなう「価格交渉型入札方式」を初めて導入した。
 中部国際空港(愛知県)の建設などでも採用された、いわゆる「トヨタ方式」のコスト削減策だ。これにより、先行して始まっている既存事業で約20パーセンのコストを削減できる見通しだ。
 07年の完全民営化に向け、4月に「成田国際空港株式会社」となる同公団の最大の課題は、世界でもっとも高額水準にある着陸料(ジャンボ機1機当たり約94万8000円)の引き下げだ。公団側は空港内の免税店事業など副収入増加を図る一方で、空港の建設費や改修費を削減して引き下げ原資を捻出(ねんしゅつ)したいとしている。
 今回、新しい発注方式を導入したのも、こうしたコスト削減策の一環だ。第1旅客ターミナルビルの改修で、工事を落札した後に公団と業者がさらに価格交渉を行い、公団が業者にさまざまなコスト削減案を求めた。建設するトンネルの内空断面(トンネルの内側部分)の規格以外の工事方法を業者の自由裁量に任せ、安価な工法を検討させたほか、工事に必要な土留め工事で、業者側から安価な工法の提案があったという。
 従来の「自動落札方式」では、落札すると自動的に契約が決まったが、今回の新方式で、当初の見通しでは10億円を超えていた工事費が、最終的に8億円程度にまで減額された。
 同公団は「初めての試みだったが昨年末にようやく契約できた。今後の建設・改修でも活用していきたい。完全民営化に向け、トヨタ方式の採用でコスト削減を図る」(工務部)として、今後も同方式による工事入札を増やす考えだ。
 同様の入札方式は日本郵政公社も導入しており、民間企業を見習ったコスト削減手法は今後も官公庁に広がりそうだ。

【本紙の解説】
 公団民営化のコスト削減の基本方向がここにある。発注業者へのしわ寄せであり、空港内で利益を上げているテナント業者に対して家主である有利さで競合し、競り落とすことである。さらに出入りのメンテナンス会社、警備会社などの契約を決定的に縮小し、経費を削減すると言われている。いままで、警備、メンテナンス会社は元の地権者で条件派の人たちで経営されているケースが多い。空港建設で「お世話になった」ということで優遇してきたといわれている。その優遇をすべて奪い取り、警備、メンテナンス会社の大手に契約集中するとの見方が出ている。旧地権者は30数年前に土地を買い上げられ、そのなけなしの金を資金に空港関連会社を設立したが、こんどはその会社を公団民営化でつぶされようとしているのである。
 しかし、この程度の経費削減では、民営化のためのコスト削減はまかなえない。通称、真水予算といわえれる返済義務のない約100億円が、毎年政府から無条件に出ていた。これが入らなくなる。また、その予算のいままでの合計が「政府出資金」として総額3000億円の債務となり、その半分の1500億円分の返済が30年期限で始まる。利子はつかないので、年間50億円である(政府出資金のうち残りは、資本金として株式として上場し、その代金は政府に入る)。それに加え、いままで課税されなかった固定資産税など民間企業としての税金がかかる。当然、法人税もかかるようになる。いずれにしろ、収入の増加はそうは見込めないので、約200億円近いコスト削減が必要になる。上記の下請け、出入り業者へのしわ寄せだけでは無理がある。そのために、環境対策と安全対策が決定的に軽視されるであろう。

(1月29日) 空港公団が民営化の組織再編を発表

 4月の株式会社化を前に新東京(成田)国際空港公団は29日、経営戦略部門を統括する「総合企画本部」と空港全体の環境対策を一元的にマネジメントする「エコ・エアポート推進室」を来月1日から発足させると発表した。
 昨秋から取り組んでいた新会社への組織再編がこれで完了する。空港公団は昨年10月、空港運用、空港事業の2本部制を敷き、課長職を廃止してグループマネージャー制を導入した。
 第2弾の今回は、会社経営の核となる「総合企画本部」を新たに設けて経営管理、投資、空港施設計画やグループ経営の戦略部門を統括し、本部内に経営計画部と関連事業部を置く。民営化効果の副収入アップを図るグループ会社の管理、育成や新会社の設立は関連事業部が担う。
 環境対策を一元的に推進させる「エコ・エアポート推進室」は、地球的視野に立った循環型空港づくりを目指す「エコ・エアポート基本構想」の実現を会社運営組織に位置づけたもの。
 また、監査室とは別にコンプライアンス(法令順守)体制の確立と内部監査を強化する組織として業務管理部を新たに設けるほか、企画室に置かれていた広報室、国際業務室をトップ直結部署に格上げする。
 空港公団の黒野匡彦総裁は「これで組織再編が完成する。民営化まで残り63日と迫ったが、2〜3月は助走期間、4月から完全疾(しっ)走する。動きやすく、かつ反応時間の早いスピーディーな経営を目指したい」と語った。
 なお、公団では組織再編にともなう人事を1日付で発令の予定。

【本紙の解説】
 民営化にともなって公団の役職を名称変更しているが、仕事のあり方はそうかわらない。ただ、部課長廃止で中間管理職のリストラ、出向が多く出たとのこと。この改革で大きなことのひとつは「空港全体の環境対策を一元的にマネジメントする」するための「エコ・エアポート推進室」の設立である。これは周辺の環境・騒音対策を縮小し、最後にはゼロ化し、環境問題を「循環型空港」に解消しようということである。エコ・エアポート構想と称して、環境、騒音対策を廃棄物の処理や太陽光発電などの問題にすり替え、周辺環境対策を棚上げすることである。
 もうひとつは、「グループ会社の管理、育成や新会社の設立」を行う関連事業部の設立である。もうかっている出入り業者と同じ職種の会社を設立し、それを優遇すること、同業他社をつぶし、利益を独占すること。さらに、いままでの関連子会社の収入アップを図ろうとするものである。
 このように、安全が第一でなければならない空港に変わって利益が第一の空港になろうとしている。成田空港は、空港反対闘争前にして「事故だけは起こすな、反対派を利することなる」ということが不文律であった。そのことを大きな要因として、大事故がいままで起こらなかったのである。この不文律が崩れ、利益第一になることで、成田空港の大事故はここ数年で起こると予想する人もいる。

(1月29日) 発着回数は過去最多も旅客数は前年比8バーセント減(1/30読売千葉版)

 空港公団は29日、2003年の成田空港の航空機発着回数は前年より約5パーセント多い約17万600回で過去最高を記録したと発表した。
 2002年は、4月中旬まで暫定平行滑走路が供用されていなかったことが主因。航空各社が、ビジネス客向けに上海などの中国路線を増やしたことも寄与した。
 一方、旅客数は前年比約8パーセント減の約2673万人。新型肺炎(重症急性呼吸器症候群)の影響で、日本人観光客を中心に、5月に前年同月比39パーセント、6月に同30パーセントと大幅に落ち込んだことが響いた。
 給油量は、SARSの影密で利用者が減り、航空機が小型化されたため、前年より1パーセント少ない547万キロリットルだった。

【本紙の解説】

 成田空港の発着回数の観点から02年と03年を比べると、暫定滑走路滑走路の供用開始が02年4月18日であり、3カ月半ほど、03年の方が暫定滑走路の運用が長い。03年1〜3月期の暫定滑走路の発着回数は、1万1000回以上になっている。その分を減らすと、03年は16万回を切る。02年の運用は約16万3000回である。実体的にみると増加とは言えない。
 その上で、発着回数で約7500回増加しているにもかかわらず、旅客数は、SARSその他で減少している。しかしこの傾向は当面つづき、羽田の09年国際化で成田の利用は激減するであろう。
 給油量が前年より1パーセント減少したことを、航空機が小型化されたためと説明している。中型機、小型機を使っているのは、暫定滑走路の発着分であり、その点では暫定発着便の給油量は増加しているはずである。A滑走路発着の便数はあまり変わっていないはずである。にもかかわらず、給油量が減り、その説明に「航空機が小型化されたため」としていることは、A滑走路のいままでジャンボ機の便が小型化していることである。給油をもっとも必要としているのは、ノンストップで太平洋を飛ぶ北米便のジャンボ機である。給油量の減少は、北米便のジャンボ機が減ったということである。この北米線ジャンボ機が仁川空港、香港空港に移り、成田―北米便は中型機、小型機化が進んだのである。これは、成田空港の国際的位置の決定的低下である。
 先週、第2給油センター完成の記事が出て、「第2給油センターは事実上必要なくなっている」と解説したが(04年1月23日付日誌を参照)、その通りの事態になっている。

(1月31日) イラク派遣、陸自先遣隊 日航、全日空が輸送断る(2/1産経)

 イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊のイラク派遣で、防衛庁が昨年秋、日本航空と全日本空輸に対し陸上自衛隊先遣隊の輸送を打診したところ、両社とも安全確保の困難などを理由に断っていたことが31日分かった。陸自先遣隊は1月16日、米国の航空会社のノースウエスト機で出国した。各国の民間機がクウェートまで運航している中での2社の対応に、自民党の防衛関係議員や派遣隊員の家族らから疑問の声も出ている。
 日航、全日空とも産経新聞社の取材に対し、防衛庁から先遣隊輸送の要請や打診があったことを認めていないが、業界を含む複数の関係者によると、防衛庁は昨秋、2社に対して陸自先遣隊をチャーター機でクウェートへ運ぶか、クウェートへの航空便がある途中経由地までの定期便による輸送ができないかを打診した。これに対し、日航は昨冬になって役員レベルを含む社内での検討を行い、(1)現地の治安情勢の悪化が懸念され、テロの恐れがあり、運航の安全確保が難しい(2)乗員組合の反対が懸念される−などを理由に断った。
 全日空も同様の理由で要請に応じられないことを伝えた。ただ両社ともに今後、安全確保が見込まれれば協力する方針を伝えたという。
 防衛庁は国連平和維持活動(PKO)の自衛隊派遣で、日本や外国の民間機も利用。カンボジアPKO(92年)や東ティモールPKO(02年)では日航チャーター便で隊員を運んだ。同庁は今回も、隊員の士気を考慮して「日の丸のついた」(政府関係者)日本の航空会社の利用を望んだが実現しなかった。
 外国では、韓国陸軍のイラク派遣部隊が昨年4月、韓国のナショナルフラッグ(=国旗から転じて国を代表する民間航空会社の意味)の大韓航空機で出国するなどの例が珍しくない。
 自民党防衛関係議員からは「クウェートには欧州などの民間機が乗り入れており、断るのは過剰反応だ」と不満が出ているほか、派遣隊員の家族からも「飛行機会社にも日本の一員という意識がほしい」(北海道在住の家族)との声がある。
 前内閣府副大臣の米田建三・帝京平成大教授は「自衛隊の自前の海外輸送力が弱いからこうなる。国際協力に赴く隊員を自国の会社が輸送しないとは、ナショナルフラッグの矜持(きょうじ)がうかがえない。防衛庁は他国の飛行機ばかりで運ぶのは忍びないから政府専用機の活用を始めたようだが、現在の2機では限界がある」と話す。また、「両社はテロを恐れて利用者が減る『風評被害』を経営上懸念したもので、やむを得ない」(関係者)との指摘もある。
 両社はそれぞれ広報部を通じて「正式な要請はない。販売担当者の段階の個別ケースの話は控えたい」(日航)、「打診も含め要請の事実はない」(全日空)などとコメントしている。

 【本紙の解説】
 日航がイラク派兵のチャーター機を拒否したことは、イラク反戦闘争の高揚と航空労組などの闘いの成果である。
 政府はこのことのために、航空会社が経営危機に陥ったときに無利子融資、低額融資などで支援してきたのである。しかし、今回の事態はイラク派兵への国民的一致がなく、小泉首相自身が「国論二分」といっているように、反対が多い中での強行が日航などに拒否の理由を与えているのある。
 「自衛隊に自前の海外輸送力が弱いからこうなる」ということも一知半解な主張である。自衛隊はそもそも、海外派兵を計画していないので、当然にも海外輸送力はないのである。また、現代戦争の輸送力はその大半を民間航空会社に依拠している。現代戦争は巨大な物量作戦であり、民間航空会社、貨物輸送会社を完全に軍事的に支配しないかぎり作戦の遂行はできないのである。
 その点で航空運輸労働者が職場を拠点にストライキなどの闘いに決起することで侵略戦争を阻止できるのである。第一次世界大戦、第二次世界大戦の時と比べても、軍隊の民間依存度は極端に高くなっている。労働者の決起と闘いで侵略戦争は拒否できる。この日航と全日空のチャーター便の拒否はその代表例である。

TOPへ  週刊『三里塚』