SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/05/1〜31    

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 2005年5月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(5月1日) 本来計画通り強調 黒野社長が東峰地区訪問(5/3読売、毎日産経各千葉版、千葉日報、5/4朝日千葉版)

 成田空港暫定平行滑走路の2500メートル化問題で、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は1、2の両日で滑走路南側の成田市東峰地区にある未買収地(約3・1ヘクタール)の地権者3戸を訪問した。同社としては地権者との話し合いで、南側に延ばす本来計画での延伸を目指す考えに変わりないことを伝えた。
 この問題で国土交通省は、保安用地などを活用し、滑走路を本来計画とは逆の北側に延伸する方針を固めており、4月30日には同省幹部が地権者を訪問。「(用地買収への)理解が得られなければ、本来計画を断念し北延伸する」との北側国交相名の書簡を手渡し、事実上の“最後通告”を行っている。
 本来計画による延伸を目指す同社の黒野社長は、4月下旬から未買収地の地権者(計7戸)を訪ねて話し合いを続けていたが、国交省の訪問には地権者側の反発が強く、1、2日に訪れた地権者には、同社の方針を改めて伝えることにした。
 訪問後、黒野社長は記者団に、「(大臣書簡は)かなり厳しく、思い切った内容。当方としては最大限の努力をし、国交省に考えを変えてもらう」と述べ、ぎりぎりまで地権者との交渉を続ける考えを示した。
 地権者によると、黒野社長は、自分の考えが国交省とは異なっていることを伝えたうえで、書簡について「申し訳なかった」と述べたという。

 【本紙の解説】
 前日30日に岩崎貞二航空局長がもってきた北側国交相の手紙の内容があまりにひどく(最後通牒)、地権者・農民の怒りが高まっていることを逆手にとって、黒野社長は「国交相の手紙はひどすぎる」と批判、農民に取り入ってろう絡しようとしているのである。農民を騒音地獄にたたき込んで土地買収に動く黒野と、土地を売らないなら北へ伸ばすと脅す国交省とは五十歩百歩だ。
 そしてこの黒野社長の思惑に乗っているのが脱落派である。用地買収の一点で見え見えのすり寄りを行う黒野社長に対し、「個人的には黒野社長の努力は認める」「空港会社の努力は認める」などとこの期に及んでエールを送っているのだ。破たんしたシンポジウム・円卓会議の焼き直しである。
 攻撃が強まると「話し合い」を掲げて政府にすり寄り、反対闘争を「空港との共存共栄」や「共生」などの条件運動に転落させたのがシンポジウム・円卓会議である。その屈服が暫定滑走路の強行開港を許したのだ。
 ところで黒野社長は、北延伸は「誘導路の配置、現管制塔からの視認距離、エプロンの形状、各旅客ターミナルビルの距離」など問題点がありすぎるなどといっている。われわれが指摘してきた誘導路の狭さ、「へ」の字の屈曲、管制塔からの視野の大半が遮られるなどの問題点だ。黒野はこれを完全に認めた。
 国道51号線のトンネル化工事の問題は深刻だ。クレーンを林立させての工事で夜間だけの工事(昼間は航空機の運航で不可)となり、昼間はクレーンを解体して撤去しなければならない。午後10時からクレーンを組み立て、作業を始めるとすぐに朝の滑走路運用時刻となり、また解体・撤去するというくり返しだ。実際の工事期間は予測もできないと関係者がこぼしている始末だ。
 北延伸工事は「決定」するにしても、その実現は限りなく不可能に近い。絶対に阻止・粉砕できる。
 ピエロは黒野社長である。農民を脅すための、ためにする材料として「用地交渉が不調なら北延伸だ」と自分でいっていたのだが、いつの間にか国交省に別の意図(株式の上場益など)から「北延伸」を使われ、本当に無駄な投資を迫られているのである。
(5月9日) 地権者の4戸、空港会社の謝罪受け入れ(5/10産経全国版、読売、毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路の延伸問題で、成田国際空港会社の黒野匡彦社長は9日、成田市東峰地区の滑走路予定地地権者7戸のうち4戸と2回目の会談を行い、地区の同意を得ずに暫定平行滑走路を建設、運用したことに対する黒野社長名の謝罪文を提出。4地権者は謝罪を受け入れ、空港問題の根本解決に向け、東峰区に話し合い解決開始を提起することで合意した。これを受け、黒野社長は国土交通省に、滑走路南側にある未買収地を避け本来計画とは逆方向の北側に延伸する判断の延期を要請。同省も1カ月程度、交渉を見守る考えを示した。しかし、1回目の会談に参加し、予定地内に最大の土地を持つ地権者は今回参加せず、謝罪を受け入れた地権者も「用地交渉を前提としない」としており、同省では進展がない場合は交渉の打ち切りを指示、北側延伸を決める考えだ。
 謝罪文は暫定平行滑走路整備にあたり、「東峰地区住民との合意形成がないまま一方的に計画を策定、航空機運用の妨げになる東峰神社の木を無断伐採したことや供用開始を1カ月前倒したことで住民の生活環境が破壊された」とした。
 そのうえで「空港問題発生からの長期間にわたる地権者のご苦労や失われた名誉、尊厳に十分心を砕かなければならなかったと痛感し深くお詫びする。あくまでも話し合いで平行滑走路問題を解決したい」と謝罪した。
 謝罪を受け入れた地権者4戸と空港会社は「空港問題の根本的な解決に向けて話し合い開始を東峰区に提起する」ことで合意した。
 次回会談では、同地区住民から示された(1)暫定滑走路から出る騒音、振動・風圧(2)運用時間(3)オーバーランなど事故と影響(4)第2ターミナルビルなど空港内から発生する騒音(5)住居、職場の防音対策(6)飛行による健康被害(7)空港建設による農地・環境への影響(8)東峰区内未利用地の入り会い的利用―の8項目について対策を示す。
 また、空港会社は謝罪文と一緒に回答書も提出した。その中では「今後の空港、平行滑走路のあり方」が示され、「増大する航空需要に対応できない容量不足を解消するためには2500メートル化が喫緊の課題」とする国の立場を改めて説明。
 次回、目に見える成果がなければ「国によって北延伸決定の可能性があることも事実」であり、本来計画が実現できない場合は住民に「さらにひどい苦痛を与える結果になり、空港をめぐる対立構造を再燃させ半永久化させる」として、従来計画による平和的な問題解決の要望を伝えた。

 【本紙の解説】
 「謝罪を受け入れた」ということは三里塚闘争に対する重大な裏切りであり敵対である。謝罪の内容は暫定滑走路建設の強行である。三里塚闘争のこの歴史的大罪を許容し、頭上40メートルに航空機を飛ばし続けることを認めるというものである。さらに、暫定滑走路の「2500メートル化は喫緊の課題」ということも受け入れているのである。
 また、石井恒司、小泉英政、平野(漬物工場)、樋ケ(ひのけ)の4人だけで「話し合い」を行うだけでなく、「話し合いを開始することを、東峰区に提起する」ことを空港会社との「了解事項」とした。これはもはや裏切りという以上に、地権者切り崩しのためのNAAの先兵ともいうべき行為だ。
 三里塚闘争で今まで重大な「話し合い」問題は3回あった。78年の島「話し合い」、81年の石橋「話し合い」、91年シンポ・円卓会議である。「話し合い」の結果はすべて明らかなように屈服と裏切りである。開港攻撃、二期攻撃、治安法攻撃という大攻撃に対して屈服し、「話し合い」において何とか逃れようという発想である。しかし、すべて敗北している。今回の「話し合い」も結論は同じである。
 このグループは黒野社長とNAAについて「個人的には黒野社長の努力は認める」とか「空港会社の努力は見守る」などと評価している始末である。国交省・北側大臣による北延伸強行と、NAA黒野社長が本来計画を進めようとしていることの間に矛盾はない。どちらも農民の意志を踏みにじって力ずくで空港を建設することに変わりはない。国交省と空港会社が北延伸と本来計画との間で“対立”しているとしても、空港建設の一方の当事者と組むことはその要求を受け入れることが前提である。この「話し合い」でも、現空港の承認と2500メートル化を「話し合い」のテーマとして受け入れている。「用地交渉を前提としない」としているが、2500メートル化が俎上に上ること自体が、事実上の用地交渉の開始なのだ。
 いずれにせよ、4者とNAAが「話し合い」を「東峰区に提起」(両者の合意文書)するとは、用地交渉を容認する意図がむきだしだ。当然、他の3軒はこれを即座に峻拒した。そんな交渉を「東峰区に提起」すること自体が間違っていると反対農家は指摘している。案の定、国交省は「1カ月程は交渉を見守る」が「用地交渉にならなければ北延伸を決断する」と公言している。「話し合い」に参加した4人が何といおうとも、北延伸という攻撃に屈服して敵の軍門に降ったことに変わりはないのである。

(5月9日) 空対協/「北延伸決断すべき」(5/10朝日千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で地元経済団体などが組織する成田空港対策協議会(豊田磐会長、36団体)は9日、成田市役所で全体会議を開き、「北延伸を決断すべき時期」とする対応方針を国に提出することを決めた。東峰地区地権者4人が成田国際空港会社の謝罪文を受け入れるという情勢変化を踏まえ、文案を一部修正のうえ近く国交省や空港会社、県、市を訪れ要望する。
 空対協では昨年11月、2009年までに平行滑走路2500メートル化を実現させ、供用を開始するよう求める要望を行ったが、暫定滑走路の南側を整備する「本来計画」実現に向けた用地内地権者との移転交渉に大きな進展がみられないことから、これ以上、用地交渉に時間を費やす余裕はないとして「北延伸を決断すべき時期」と国に最終判断を迫る内容。
 全体会議では前回要望を再確認、延伸問題などの現状が報告された。
 同日、空港会社と地権者の2回目の会談がセットされたことを受け「空港会社のマイナスになることはすべきでない」との慎重論の一方、「成田問題は今まで地元が意見をいわないまま、ここまで来た」、「地元が何を望んでいるか、国にはっきり意思表示すべき時期だ」などと活発な意見が交わされた。
 豊田会長は「本来計画が優れているのはだれもが承知だが、エンドレスの交渉余地はない。この半年間で大きく変化し、空港をめぐる変化は一刻の猶予も許されない。このままでは成田が空港間、都市間競争の中で置いてきぼりにされる」と危機感を述べた。

 【本紙の解説】
 北延伸派を強硬に後押ししているのは国交省と空対協で、地元では空対協だけである。周辺自治体や騒対協は北延伸には反対している。空対協は地元の商工業者を中心に構成されている利害団体であり、空港の経済効果だけを問題にしている。生活、環境にはとんと関心がない。「このままでは成田が空港間競争で置いてきぼりにされる」との危機感で北延伸の決定を国に迫っているのだ。
 彼らは「置いてきぼり」にならないために、2009年までに2500メートル化を実現しろと要求しているが、北延伸の工事期間は「短くても6年強」(黒野)だ。実は本紙が指摘したように最低でも7年以上はかかる。今年決定し予算化して来年06年から着手しても、完成は2012年以降になるのである。
 騒対協が09年までにこだわるのは理由がある。羽田の4本目の滑走路がその年に供用されるからだ。しかし北延伸ではそれに間に合わないのである。
 もう一つは北延伸による経済効果への期待だ。しかしこれは的はずれである。暫定滑走路が北延伸で2500メートル化しても誘導路の拡張なしにはジャンボ機は飛ばないし、エプロンから滑走路まで誘導路の距離があり、交互の一方通行であり、これ以上増便できない。誘導路渋滞がおこるので、これ以上の増便は不可能なのである。
 それゆえ空港会社は経済効率から北延伸はやりたくないのである。北延伸で2500メートル化しても航空機の増便はなく経済効果の期待はできない。
 費用対効果の面でも黒野社長は北延伸をやりたくない。投資額は莫大だが、それによる収入増は見込めないのである。
 ちなみに黒野社長は、北延伸工事の51号トンネル化を謝罪文書案では「難工事」といっていたが、「長期間を必要とする」に書き換えた。苦心さんたんだが、いずれにしろ北延伸の工事は難工事で長期間の工事になる。工事費もかさむ。環境アセスメント、騒音コンターの策定も相当時間がかかる。
 いずれにせよ成田空港は中部国際空港の開港、09年羽田国際化、仁川空港などの近隣諸外国空港の整備ですでに「置いてきぼり」になっており、経済的にみても採算にあわない工事である。
 国交省はとにもかくにも07年株式上場のために2500メートル化を「決定」したいのである。しかし「決定」後の成り行きはきわめて不安定だ。完全民営化すれば国交省の経営権限はなくなる。北延伸は決定しても実現しない可能性が高いのだ。空港会社としては、あくまで本来計画を実現したいので、この北延伸攻撃を「話し合い」に取り込むチャンスとして使っているのである。

(5月11日) 国が騒対協と初会談(2/12朝日、毎日各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定B滑走路延伸問題で国土交通省は11日、騒音下で暮らす成田市の住民団体「成田空港騒音対策地域連絡協議会」(騒対協=平山正吉会長)と会談、東峰区での用地交渉の現状や「進展がない場合は近く(北延伸を)最終判断する」とした大臣方針などこれまでの国の取り組みを説明した。
 騒対協と国が会談するのは初めて。国交省が呼びかけた。午後1時半から約1時間、市役所で行われ、平山会長はじめ市内4地区(遠山、久住、中郷、豊住)空対協代表らの幹部9人が出席。
 国交省の石指雅啓成田国際空港課長は、平行滑走路の2500メートル化は待ったなしの状況にあるとの認識を示し、本来計画実現に向けた地権者交渉を当面見守るが、事態の進展によって再度、地元説明したいと話した。
 会談後、記者会見した騒対協幹部は「今回は国の話を聞く立場。息の長い話し合いを望む」としている。
 騒対協は先月下旬、成田市と成田国際空港会社に「北延伸には根強い不信、不満の声が強く、到底容認できるものではない」とする騒音下住民の要望書を提出、滑走路南側を整備(南伸)する本来計画での2500メートル化実現を国などに働きかけるよう求めていた。
 一方、空港会社は滑走路南側用地の地権者7戸のうち4戸と9日、2回目の会談を行い黒野匡彦社長名の謝罪文を提出。4戸はこれを受け入れ、東峰区に話し合い解決開始を提案することで合意した。空港会社は国に北延伸への判断延期を要請している。
 先月30日、国交省は地権者を訪問して国の考えを伝える大臣書簡を渡したが、空港会社の要請には「目に見える成果」を要求、1カ月程度交渉を見守る方針。

 【本紙の解説】
 国交省が三里塚闘争の中で初めて騒対協との会合を持った。異例なことである。北側大臣は一挙に北延伸を決定しようとしていた。昨年年末までに用地交渉の進展がなければ、決定に持ち込もうとしていた。黒野空港会社社長が延長を要求し、その期限が3月末になり、遅くとも連休前までに最終決定にする計画だった。しかし、空港会社の反対だけでなく、周辺自治体、騒対協などの反対に遭遇し、あわてふためいているのである。
 会談も異例だが、国交省が呼びかけたことも異例である。騒対協が陳情にいって形式だけ面会ということはあったにしろ、国交省が成田まで出向いての会談である。騒対協と周辺自治体の要求がどのような要求か、経済的要求なのか、見返り事業や対策費の増額でことが済むのかを見極めにきたのである。

(5月12日) GW出入国者は過去最高 成田空港、85万6000人(5/13朝日、読売各千葉版、千葉日報)

 東京入管成田空港支局は12日、ゴールデンウイーク期間中(4月28日−5月9日)の成田空港の出入国者数を約85万6000人(速報値)と発表した。前年の大型連休期間と比べ約1万人の増。
 連休の日数が年により異なるため単純に比較できないが、同支局は「毎年増加傾向にあり、今年は過去最高とみられる」としている。
 ただ、成田国際空港会社が航空券の予約状況をもとに事前に推計した約89万7000人を下回った。同支局は中部国際空港の開港や中国の反日デモの影響で、微増にとどまったとみている。
 出国のピークは4月29日の約5万6000人、帰国ピークは5月5日の約5万1000人だった。

 【本紙の解説】
 昨年のゴールデンウイーク期間中の出入国数は約84万7000人であり、増加は1万人を切り、約1パーセント増に過ぎなかった。予測では、「89万7637人、前年同期に比べ、5.9パーセント(5万134人)増」(05年4月18日付日誌を参照)と発表していた。本紙でも「成田出国では中国を中心とするアジア便が過半数を超えている。その中国でキャンセルが相次いでいる」と書いた。航空需要はその約半分が観光旅行であり、政治情勢などによって変動を受けやすい、航空業界の基盤のもろさを示すものと指摘したが、その通りになったようだ。
 ただ、開港したばかりの中部空港のゴールデンウイークの出国者数は、前年の名古屋空港比で17・6パーセント増になっている。それも北米への出国が3倍強に増えている。中部空港は成田、関西の両空港と比べ国内線の路線・便数が多く、特に初便の到着時間が早い福岡や仙台、鹿児島、新潟などからの海外渡航が便利になったといわれている。これは開港人気だけでなく、国内から国際線への乗り継ぎ空港として、成田、関空のシェアを食っている傾向を示している。
 中部空港の好調な発展、さらに羽田国際化を控えて成田空港の将来は限りなく暗くなっている。

(5月12日) 成田空港B滑走路で事故訓練(5/13朝日、産経、東京各千葉版)

 成田空港で12日、航空機事故を想定した消火と救難訓練があった。毎年実施しているが、B滑走路での事故を想定した訓練は初めて。
 航空機が着陸に失敗して炎上、20人の負傷者が出たとの想定。空港会社や成田市消防本部など18機関から約340人、車両55台が参加した。
 会場となったB滑走路わきの芝地では、放水の後、乗客救助のため機体に見立てたコンテナを救助工具で切断した。治療の優先順位を決めるために負傷者を選別し、救護所のテントへ搬送。参加者は機敏な動きで、それぞれの役割をこなしていた。

 【本紙の解説】
 航空関係でもこの間、アクシデント(事故)直前の重大インシデントが連続している。
5月8日におきたサンパウロ発成田行き日航47便の新千歳空港への緊急着陸は、客室内の気圧が激変し、8000メートルまで急降下して難を免れたが、20年前の御巣鷹山の大事故を想起させる事故である。航空機の破損による減圧でなく、単なる与圧システムの不具合だったらしいが、検査・整備が定期的に行われていればめったにおこらない事故である。
 また羽田空港の管制ミスもアクシデントにはならなかったとはいえ、恐ろしい事態である。
 ハインリッヒの法則(05年4月14日付日誌を参照)からしても航空機の大事故は間近というしかない。航空機事故は福知山線の列車事故以上の大惨事になりかねない。その想定が成田の暫定滑走路というのもうなずけるから恐ろしい。日本の国際空港で、オーバーラン、接触事故などヒヤリハット(事故の予兆)や重大インシデントが多いのは成田の暫定滑走路だからである。

(5月14日) 反対同盟、現闘本部裁判傍聴への参加を要請

 反対同盟は6月9日に千葉地裁で行われる天神峰現闘本部裁判の第5回口頭弁論への傍聴を要請するアピール文を発した。以下は全文。
     *     *
■天神峰現闘本部裁判 傍聴のお願い
 三里塚芝山連合空港反対同盟
(連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

 天神峰現闘本部に対する不当な撤去攻撃と闘う裁判の第6回口頭弁論が、6月9日午前10時30分から千葉地裁で行われます。
 この裁判は、成田空港暫定滑走路の「へ」の字誘導路の直線化のために、旧空港公団(現・成田国際空港会社)が反対同盟を被告に起こした裁判です。旧地主の石橋政次の相続者から底地を買収したとして、その上に建つ現闘本部の撤去を要求しています。しかし土地は、当時副委員長の石橋政次が反対同盟に提供したものであり、旧現闘本部の建物(鉄骨造り増築前の木造建物)は建築時に反対同盟が登記しており、提訴には法的根拠がありません。
 反対同盟は前回裁判後に、旧現闘本部の存否についての釈明を空港会社に要求しました。これに対して空港会社側は、「木造建物は解体され、これを吸収する形で鉄骨造り建物が建築された」として、その存在を否定したのです。裁判はついに「地上権」をめぐる大攻防に突入しました。
 本部建物の外観である鉄骨造り建物は88年に増築したものです。この建物は二重構造になっており、中には建物登記した木造建物(旧現闘本部)がそっくり残されています。
 この登記建物が現存すれば、反対同盟には「地上権(土地を使用する正当な権利)」があることになります。だから空港会社は木造建物の存在を絶対に認めることができないのです。
 6月9日の口頭弁論は、準備書面で明らかになった空港会社の暴論を徹底的に追及し反対同盟の正当性を論証する、裁判上の決戦です。
 小泉内閣・国交省は、切り崩しの破たんを受けて暫定滑走路の北延伸を強行する構えです。現闘本部建物は、「へ」の字誘導路を阻止して市東孝雄さんの農地を守るとともに、暫定滑走路と北延伸そのものに致命的な打撃を与える闘争拠点です。これを守る裁判闘争は現地攻防とともに、北延伸阻止の決定的な闘いです。千葉地裁からあふれ出すほどの傍聴参加をお願いします。
 2005年5月14日
   記
天神峰現闘本部裁判第6回口頭弁論
【日時】6月9日(木)午前10時30分
【法廷】千葉地裁501号法廷
※当日は多数の傍聴が予想されます。反対同盟は、傍聴席確保のために午前9時30分をめどに正門前に集合したいと思いますので、よろしくお願いします。
     *     *

(5月15日) 北延伸攻撃阻止で反対同盟が現地集会とデモ

 国交省とNAA(空港会社)による暫定滑走路の北延伸攻撃と東峰区住民への買収・脅迫の攻撃が高まる中、反対同盟は三里塚現地で100人で決起集会とデモを行い、北延伸の阻止と暫定滑走路の閉鎖へ闘い抜く決意を改めて明確にした。
 事務局次長の萩原進さんは、集会発言で「北延伸攻撃は必ず破産する」との見通しをつぶさに強調。さらに「東峰区のシンポ・円卓会議に参加した元熱田派メンバーは、NAA黒野社長との『話し合い』に応じ、これを東峰区全体に押しつけようとして12日に地区集会をもった。私は、『国交省とNAAの立場は実は同じだ。黒野の“謝罪”もあり得ない。用地交渉を容認する話し合いには到底応じられない』と発言し会合から退席してきた。同じ東峰区の島村さんも『話し合い』は無用だとして会合を欠席した。国交省・NAAの思惑は必ず破産する」と言い切った。

(5月16日) 共生委/国交省は情報公開を(5/17読売、毎日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の運用を監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」の山本雄二郎代表委員(高千穂大教授)は16日、成田市内で開かれた会合後に会見し、平行滑走路の北延長問題について「何が問題になるのか項目を提起して、国土交通省と情報や意見を交換したい」と、想定される騒音問題や発着回数、飛行コースなどの情報公開を求めることを明らかにした。
 共生委は、大学教授や住民代表ら委員16人で構成。騒音など周辺住民へのマイナス影響を点検するため、円卓会議(1993〜94年)で合意した22項目を調査している。
 山本代表委員は延長問題について「重大な関心を持って推移を見守っている」としながらも、滑走路南側の地権者と空港会社の交渉は「当事者の話し合いで解決する問題」と関与しない考えを示した。

【本紙の解説】
 共生委は地元の地権者、住民に成り代わって「話し合い」を進める反動的な役割を果たそうとしている。そのことを「情報や意見を交換」、「双方向対話型で進める。近く国にボールをなげたい」と称している。共生委はそもそも、「成田空港からのマイナスの影響を点検する第三者機関」という建前の組織であった。空港の建設と運用の結果を点検する機関である。それが、構成メンバーに国交省、空港会社も入り、第三者的立場から空港建設推進への方向転換してきた。今回の発表は、住民に代わって「話し合い」を行おうというのだから、さらに悪質だ。あらかじめ結果が決まっている出来レースの「話し合い」だ。
 しかし騒音問題、発着回数、飛行コースなどの質問事項に国交省は答えようがない。北へ320メートル延伸したとしても誘導路はそのままであり、飛行回数が増えるはずもないのである。またジャンボ機も誘導路の狭さから飛べない。つまり経済的利益向上になるものはないのである。ただ一点、07年株式上場のためにのみ、2500メートル化が必要ということだ。

(5月17日) 空港対策協議会/「北延伸で整備」選択を(5/18読売、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港暫定平行滑走路の2500メートル化問題で、成田商工会議所など成田市内の36団体で構成する「成田空港対策協議会」(豊田磐会長)は17日、「北延伸による整備を選択すべきだ」とする要望書を国土交通省に提出した。
 豊田会長らが同省を訪れ、岩村敬事務次官と鈴木久泰航空局次長にそれぞれ要望書を手渡し、約15分ずつ会談した。要望書は北側国交相あてで、「(南に延伸する)本来計画による平行滑走路完成を望んでいるが、成田市の将来を考えれば用地交渉に時間を費やす余裕は残されておらず、北延伸による整備を選択すべきだ」としている。
 会談後、豊田会長は「北側国交相が用地交渉の期限とした3月末は過ぎている。(滑走路整備の遅れで)成田は厳しい状況にあり、地域の将来を考えた場合、(平行滑走路完全化を)実現させなくてはならない」と話した。会談で岩村次官は、成田国際空港会社と地権者との話し合いを見守っているとしながらも、「数か月待つということは考えられない」などと述べたという。
 同協議会は、同じ要望書を県と成田市にも提出した。昨年11月にも、北延伸を視野に平行滑走路早期完成を求める要望書を同省などに出している。

【本紙の解説】
 成田商工会議者を中心とする空対協は北延伸が先延ばしされそうな情勢にいら立っている。しかし空対協も相当勘違いしている。09年までに暫定滑走路が2500メートル化しなと成田は厳しくなる、そのために北延伸の決断が必要と要望している。しかしこの要望は大きな勘違いに基づいている。
 ひとつは、北延伸による2500メートル化完成の時期が早くとも2012年になることだ。また完成したとしても誘導路はそのままなのでジャンボ機は飛べず、便数も増えない。そのため、建設費を莫大に使っても営業利益は変わらないので、民営化した空港会社も本来計画での2500メートル化以外はやりたくないのだ。
 空対協は、無駄な投資でも建設業界だけはここ数年間は空港建設需要で潤う、ということを求めているのであろうか。

(5月18日) 村田・国家公安委員長、警備状況など視察(5/19朝日、毎日各千葉版)

 村田吉隆・国家公安委員長は18日、成田空港を訪れ、警備状況などを視察した。県警によると、国家公安委員長の同空港視察は、01年8月の当時の村井仁委員長以来で、村田委員長は就任後初。
 村田委員長は県警空港警備隊を査閲した後、二つの旅客ターミナルビルを訪れ、警戒中の警察犬の視察などを行った。村田委員長は警備隊員らを前に、「空港の暫定滑走路延伸問題は大きな山場を迎えている。延伸問題を巡る動きは少なからず反対闘争の動きに影響する。国民の安全を守るためにも皆さんの努力を期待する」と話した。

【本紙の解説】
 4年ぶりの国家公安委員長の成田空港視察は北延伸問題が国家的使命を帯びたものであることを示している。国家公安委員長が5年前に訪れたのは、2001年であり、その翌春に暫定滑走路が共用開始される時であった。その前の視察は、96年であり、4月に日米安保共同宣言が出され、第7次空港整備計画を策定し、成田空港二期工事の「2000年度完成」計画が打ち出され、平行滑走路建設が決定された時であった。
  今回の動きは、三里塚への国家権力の攻撃が強まり、三里塚闘争の歴史的結節点が再び近づいたことを示している。三里塚闘争と空港反対派農民の圧殺を目的にしているのである。しかし、三里塚闘争はこの国家権力=国家公安委員会の目論見を粉砕し、勝利してきた歴史である。

(5月18日) 成田新高速鉄道で自然保護協会が県に要望(5/19千葉日報)

 成田空港と都心を結ぶ新たな交通アクセスとなる成田新高速鉄道と北千葉道路(印旛〜成田間)建設事業に対する環境影響評価準備書に対し、日本自然保護協会(本部・東京)は18日までに、北印旛沼地域を通過するルート案について、トンネル化かルート変更を再検討するよう求める要望書を県に提出した。
 要望書では、北総を代表する印旛沼とその周辺の里山・谷津田の自然環境を分断すると指摘。その上で、(1)県立自然公園に橋梁をつくるべきでない、(2)湿地生態系の分断は代替のヨシ原の造成では不十分、(3)貴重種サシバの営巣・生息を阻害する、などとしている。

【本紙の解説】
 環境アセスメントでは、環境影響に関して「方法書手続き」、「準備書手続き」、「評価書手続き」、「事後調査」となっている。方法書、準備書の段階で環境の保全から県民その他から意見が述べられる。
 すでに今年の1月に、日本野鳥の会千葉県支部(志村英雄支部長)と県野鳥の会(富谷健三会長)が意見書を提出している(05年1月18日付日誌を参照)。意見書では、ルート上にオオタカやサンカノゴイ(サギ科)などの貴重な鳥類が生息しているので、路線変更か地下トンネル工法を採用するよう求めている。
 日本自然保護協会は、尾瀬のダム建設を阻止するために1949年に発足した「尾瀬保存期成同盟」が、1951年、広く日本各地の自然を守るため名称を変更した組織である。現在では、ジュゴンが生息する沖縄の海や、ダム建設が計画されている熊本・川辺川における環境保全に取り組んでいる団体である。
 環境アセスメントでは県知事の意見が結果を決定的に左右する。「環境派」を任じる堂本知事はあらかじめこの自然保護をフタして成田高速鉄道を強引に推し進めてきたのである。成田高速鉄道建設問題は、東京湾三番瀬保全問題と同じように堂本知事の正体をさらすものとなった。
 それとともに、日本自然協会が成田新高速鉄道の北印旛沼ルートについてトンネル化やルート変更を求めているということは、鉄道建設が長期に遅れることが確実になったようだ。09年の羽田空港国際化によって新鉄道は必要なくなる公算すら出てきた。

(5月20日) 国際線着陸料値下げ方針 今秋から実施(5/21日経、千葉日報)

 成田国際空港会社(黒野匡彦社長)は20日までに、「世界で最も高い」とされる成田空港の国際線着陸料について、騒音の小さい航空機ほど着陸料を安くする「騒音別料金体系」を導入するとともに、大幅に値下げする方針を固めた。十月からの実施をめざす。
 同空港の現行着陸料は、機種にかかわらず1トンあたり一律2400円。実現すれば、航空会社の負担が軽減され、航空運賃値下げなど旅客の利益も期待できる。
 最新鋭旅客機ボーイング777は、ジャンボ機の最新型と比べても離陸時の騒音が約10パーセント小さい。同社は、空港周辺の環境対策の観点から騒音別料金で航空会社に低騒音機導入を促したい考え。低騒音エンジンが普及すると減収になるが、同社は「経営に大きな影響はない」とみている。
 着陸料の値下げは、全機種平均で15パーセントを超えるとみられる。アジアで大規模空港の整備が進む中、成田空港は着陸料の引き下げによる国際競争力強化が課題だった。昨年4月の成田空港民営化に際し、黒野社長が経営効率化による着陸料値下げの意向を示していた。
 一方、同社は中部国際空港や関西空港で徴収している搭乗橋使用料の新設なども検討するが、航空会社が空港に払う空港使用料全体では値下げとなるよう調整する方針。
 新しい空港使用料案は、6月初めにも世界の航空会社約260社で構成する国際空港運送協会(IATA)に提示。協会との協議で合意すれば、国土交通省に料金変更を届ける。
 IATAのジョバンニ・ビジャニャーニ事務総長は先月中旬に来日した際、「航空会社は競争しており、空港もコストを下げる努力をお願いしたい」として、成田空港の着陸料に対し「20パーセント削減という案がでてくれば歓迎する」との意向を示していた。

【本紙の解説】
 成田空港を民営化する理由は経営の合理化だった。世界一高い着陸料を値下げするためだ。IATAからの再三再四の値下げ要求をここで断った場合、民営化の失敗になってしまう。経営状態を顧みない、かなり強制的値下げでもある。しかし、それだけではなさそうだ。中部国際空港の着陸料が成田の約7割であり、その強みもあって羽田国際化の前に成田のシェアを奪われそうなのである。そのために、約2割の値下げで対抗しようとしているのである。さらに、仁川空港が成田の約3割の着陸料であり、このままでは競争力がなくなってしまうからである。
 表向きには20パーセントの値下げとなっているが、旧来の航空機を使っている騒音の大きい航空機にはそれまでほどの値下げ適用はないようだ。また、搭乗橋の使用料が関空、中部国際では1便で約1万5000円取っているので、新設するとのこと。成田における旅客便の年間発着回数は約14万回であり、便計算では7万便、約10億円の増収が見込まれる。着陸料の完全20パーセント減は約100億円の減収になるが、騒音による値下げ幅の圧縮があり、事実上減収は70億円ぐらいと見込んでいるようだ。さらに搭乗橋利用料や、その他の増収があり、事業収入全体では約50億円の減額になる。成田空港の収入合計は約2000億円であり、そこからの約50億円はかなり厳しいものになる。
 この財務状態で収入増を伴わない暫定滑走路の北側延長は経営的には難しいので、空港会社が国交省に抵抗していることにも理由があると言える。

(5月23日) 成田空港周辺市町村議会連協/「早期完全化」を決議(5/24朝日、読売、毎日、産経各千葉版、千葉日報)

 成田空港圏の11自治体で構成する「成田空港周辺市町村議会連絡協議会」(会長・森田清市富里市議会議長)は23日、成田市内のホテルで総会を開き、「空港の早期完全化」と「周辺対策実施」を求める決議案を採択した。国交省にきょう24日、県と成田国際空港会社に来月1日、それぞれ提出する。
 成田、冨里2市と大栄、多古、芝山、下総、松尾、横芝、神崎、栗源8町、蓮沼村の11市町村議会代表ら約50人が出席した。
 早期完全化の決議は、空港特区の認定や成田新高速鉄道線、北千葉道路建設事業着手など国際空港としての条件は整いつつあるが、再拡張による羽田空港国際化が取りざたされる中で「成田空港完全化は必要不可欠である」としている。
 原案に対し成田市、下総、大栄町議会代表から「本来計画である2500メートル化による早期完成への努力継続」を文言に入れるべきだとする意見が出され紛糾。「本来計画」を「完全空港化」と表現する折衷案で一致したが、北延伸が決まった場合に影響を受けるとされる空港北側3自治体と南側自治体の対立が表面化した。
 また、周辺対策の実施では「空港会社とは民営化に関する覚書を交わしており、今後とも地域との共生を最優先課題として引き続き停滞することなく確実かつ着実に取り組むよう望む」と共生策継続を強く求めた。
 総会後、国交省航空局成田国際空港課、石指雅啓課長と空港会社地域共生部、伊藤斉部長が空港を取り巻く最近の状況と展望を講演。

 【本紙の解説】
 市町村としては、成田空港空港圏自治体連絡協議会に神崎町、栗源町を加え、議会で構成されているのが成田空港周辺市町村議会連絡協議会である。空港圏自治体連絡協議会でも北延伸問題での対立がでたが、今回は成田市、下総町、大栄町は「本来計画の実施」という文言を入れ、北延伸には反対の立場を貫こうとしたが、他の市町村は北延伸賛成の立場を表明した。
 本来、北延伸で実際の騒音被害を被る北側3自治体の要求を尊重するのが、いままでの両連絡協議会であった。ここまで対立を深めている要因は2つある。それは成田空港の民営化に伴って周辺対策費が激減しており、国交省寄りに身を置くことによってその見返り事業を獲得しようというものである。もう一つの要因は市町村合併の失敗のしこりである。そもそも、成田市を中心にこの成田空港空港圏自治体連絡協議会の11自治体から蓮沼村を除いて、栄町を入れ成田地域2市8町で合併する予定であった。成田市の豊富な財政をあてにしての合併であった。いろいろ経過があり、結局、成田市は下総町、大栄町との3自治体合併になった。そのしこりが、今回の対立に持ち込まれたのである。
 空港圏自治体連絡協議会にしろ、成田空港周辺市町村議会連協にしろ、国交省と空港の空港建設に全面的に協力・推進する目的で結成されたものである。その連絡協議会の事実上の分裂的対立は空港建設と周辺住民との本質的な対立が明白になったことを示しているのである。

(5月24日) 空港で爆発物騒ぎ(5/25東京、千葉日報)

 24日午後1時ごろ、成田空港第1ターミナルビルの荷さばき場から「乗り継ぎ客のスーツケースが爆発物検査装置に反応した」と、空港会社に連絡があった。県警の爆発物処理班が出動する騒ぎになったが、中身はノートパソコン2台や雑誌などだった。
 同社によると、CTスキャンの結果、スーツケース内に爆発物に近い質量値や電源用コードを検知したことから、爆発物処理の態勢を整えた。検査装置は、爆発物以外に反応することもあるという。
 スーツケースは、インドネシア・デンパサール発日航機から、米国デトロイト行きノースウエスト航空機に、成田で乗り継ぐ米国人女性客の所有だった。

 【本紙の解説】
 空港は国際情勢や治安情勢が最も反映する場所である。このようにして空港に爆発物が持ち込まれる事件は今後も頻発するだろう。この誤作動はその予兆を示すものだ。
 それにしてもパソコンと本だけで誤作動では、空港利用客は迷惑至極だろう。

(5月26日) 用地交渉 「来月下旬までにメド」(5/27朝日、読売、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社の黒野匡彦社長は26日の定例会見で、暫定平行滑走路南側にある未買収地(約3・1ヘクタール)の地権者との話し合いについて、「私の推測」と断った上で「国土交通省も、(待っても)あと1か月という感じではないか」と述べ、6月下旬までに用地交渉に何らかのメドをつけたいとの考えを示した。
 また黒野社長は、地権者との3回目の会談について「近く開催できると期待している」と強調。今月9日に行われた2回目の会談に参加しなかった最大地を所有する農業男性(58)については、「もし別行動を取るなら個人的に話し合いをして、(会談に参加している)4人とゴールラインを同じところに持っていきたい」と述べ、個別の対応で引き続き対話を求めていく考えを示した。
 一方、国交省の岩村敬次官は26日の定例会見で、黒野社長が示唆した地権者との対話の期限について、「話し合いが進んでいるからこそ我々は推移を見守っている。『ひと月ありき』ではない」と否定。その上で、「(3回目の会談を)近々行うと聞いており、期待を込めて待っている」と述べた。

 【本紙の解説】
 成田空港は66年に閣議決定し、当初は二期工事区も含めて70年代初めには完成する予定だった。それが30年以上も遅れているのである。その原因はあげて運輸省(国交省)にある。地元に一切知らせず閣議決定し、問答無用の土地強奪を行ってきたことに全ての出発点はある。
 さて、30年間以上遅れたものを1カ月も待てないとはいかなる了見か? 07年株式上場のためである。北延伸が決定したとしても、事実上の工事開始は環境アセスメント、騒音コンター策定が前提なので早くとも08年度になる。株式上場後である。
 上場すれば完全民営化となり国交省の監督権限はなくなる。空港化会社が経営権を百パーセント握ることになる。したがって今回の決定が国交省による形だけにものになることは明らかだ。北延伸は経済的合理性もゼロであり、完成するはずもない。
 にもかかわらず、最終決定を「1カ月もまたず」とは、上場時の株価つり上げ目的以外にないのだ。国交省による北延伸決定は上場時の株価つり上げ操作にすぎない。
 また黒野社長も国交省の北延伸攻撃をテコとして地権者の切り崩しに躍起になっている。国交省と共犯である。
 その黒野社長を国交省よりましだとして「話し合い」に応じることは三里塚闘争からの離脱を目的にしているだけである。三里塚闘争への裏切りである。

(5月26日) 成田空港 民営化後初の3月期連結決算(5/27東京全国版、毎日千葉版、千葉日報)

 成田国際空港会社の黒野匡彦社長は26日、民営化後初となる05年3月期連結決算を発表した。売上高は1716億円で、前身の成田国際空港公団時代を含めて最高を記録した。しかし、旅客・貨物とも発着枠をほぼ使い切っていることから、営業収益は04年度水準が上限に近い。暫定平行滑走路(2180メートル)を本来計画で早期に2500メートル化することが、経営的にも最大の課題になっているのが現状だ。
 同社によると、SARS(重症急性呼吸器症候群)などの悪影響が予想以上に少なく、04年度は旅客数3177万人、貨物量約230万トンとも1978年の開港以来、最高を記録。高水準の売上高に寄与した。
 経費などを差し引いた純利益は64億円で、空港会社単体の当初目標101億円さえ下回った。これは、不要になった地権者の移転代替地の評価損など、固定資産の減損会計を1年度繰り上げて適用し、90億円の損失を計上したためである。閣議で24日に再任が了解された黒野社長は、「うみは出し切った。2期目は重みを背負うことなく経営できる」と述べた。
 07年度の東京証券取引所上場に向け、まずは無難に初年度を乗り切った形だが、今秋以降には、騒音が低い航空機ほど着陸料を安くする「騒音別料金体系」の導入で、空港施設利用料の10%程度の値下げが見込まれる。関連会社の芝山鉄道の不振など減収要因も多い。
 また公団時代の負債を18年度まで毎年度、111億円ずつ国に返すという重い負担もある。仮に暫定滑走路問題の話し合い解決が失敗し、滑走路を北に伸ばして2500メートル化することになれば、施設本体だけで330億円の新規投資が必要になる。

 【本紙の解説】
 03年度までは公団であり、民営化された会計は違うので単純に比較は出来ないが、発表された空港会社単体の営業収益は1625億円となっている。03年度の総収入は、1555億円であり、約70億円の増収である。空港使用料が約45億円増収で約620億円、旅客施設使用料が同じく約45億円増収で約260億円、給油施設使用料やその他使用料などが減収になっている。増収は航空機の発着回数によっている。03年度の発着回数が約17・1万回、04年度が約18・6万回である。民営化で増収を期待された空港外収入は、連結会計をみても目立った増収はない。他方、減収は分社化や原油高などがその理由であろう。
 成田空港の現状の施設では発着回数は限度である。これ以上の増収は見込めないのである。北延伸で発着回数の増便を期待しているが、これは誤解であり、北に伸びたとしても増便はできない。
 来年度から成田空港はこれ以上の営業利益増は見込めない。空港利用料の値下げはかなりきついだろう。約70億円の減収がすでに予想されている。中部空港の開港により、貨物シェアだけでなく旅客シェアも奪われ始めた。09年の羽田国際化は成田空港への最後的ダメージなりそうである。
 また、航空機需要が国際政治情勢や感染症の流行などによって左右されやすいことがこの数年はっきりしてきた。今年のゴールデンウイークから始まった中国旅行の減少傾向はまだ続いている。今回の決算は株式上場に向けたものだが、06年3月、07年3月とさらに2年間、同様の黒字決算を計上することはきわめて難しい。
 また、この状態では、政府予算(一般会計)がない中で、北延伸工事の予算は出てきそうにもない。政府補償債で工事をするにしても、それは返済義務があり、利子分を含めて成田空港会社の借金体質をより大きくするだけだ。空港会社の今後の経営をまともに考えれば、北延伸を選択する余地は皆無なのである。巨大な設備投資にもかかわらず増収はまったく見込めないのだから、どうしようもない。滑走路本体だけで330億円と計算しているらしいが、付帯工事を含めるとその3倍以上はかかるとのことだ。

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