SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/08/1〜31    

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 2005年8月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(8月2日) 千葉県、周辺9市町村北延伸受け入れ合意(8/3朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定平行滑走路を北側に延伸する問題で、成田空港周辺の9市町村(成田、富里、芝山、大栄、多古、下総、横芝、松尾、蓮沼)でつくる「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小林攻成田市長)は2日、成田市内で会合を開き、近く国が正式決定する北延伸について、用地交渉の継続など「4項目の履行」を条件に北延伸の受け入れを決めた。合意文は3日、北側一雄国土交通相に提出される。一方、県はこれとは別に同日、国交省に5項目の申入書を提出する。
 合意文は「4項目の要望の履行を前提に理解する」とし、北側国交祖に(1)騒音区域の抜本的な見直しと騒音、落下物対策、地域振興策などの実施、(2)空港民営化に関する覚書(2003年2月)の未達成事項の早期解決、(3)空港整備の手続き、騒音対策の実施などで地域自治体、地域住民への十分な説明責任、(4)本来計画予定地内の地権者と北延伸決定後も交渉を継続し、将来に禍根を残さない問題解決の努力を求めた。
 同協議会は、滑走路直下の成田市久住地区や下総町の住民に北延伸による騒音増大の不安が高まっていることから、7月28日の会合で、国による住民説明を実施した後、地元自治体としての意見決定をすることにしていた。
 小林会長は会合後に会見し、住民説明会で北延伸に批判的な意見が相次いだことから「今後さらに空港会社、地元との協議を重ね、国は『説明責任』を果たすべき」と話した。国交省と空港会社は7月、地権者との交渉が不調に終わり、滑走路用地取得内のめどが立たないとして、暫定平行滑走路の北延伸で合意している。

□国交省へ県も申入書
 県は2日、県議会の全員協議会で、国土交通省に提出する申入書を明らかにした。
 申入書は堂本暁子知事と成田空港周辺の9自治体の連名で、(1)北側延伸を県や地元に説明し、コンセンサスを得るよう努める、(2)騒音などマイナス影響について調査を行い地元関係者に公開する、(3)騒音対策の抜本的な見直しと対策、(4)地権者との話し合いの継続、(5)国交省、県、空港周辺9市町村、成田国際空港会社の4者で合意した事項を文書で確認する―の5項目。
 全員協議会では、国交省の井出憲文審議官が「北延伸」の経緯について説明。県議らに対し、改めて理解を求めた。

 【本紙の解説】
 周辺自治体も千葉県も騒音対策見直し、説明、地権者への交渉継続などを条件に北延伸を受け入れた。「条件付き同意」などとマスコミに言われているが、国交省への全面屈服である。地権者、騒音下の住民の立場を明確にすべきである。騒音対策が決定する前に合意文書を出すとは、国へのおもねりだ。国の施策に逆らうと国からの周辺対策費が削られるという思惑である。
 これでは、住民の生活を防衛しなければならない地方自治体の存在意義はない。天神峰、東峰の地権者住民にこれ以上の騒音を強制するものであり、成田市久住地区、下総町の反対の声を圧殺する行為である。

(8月3日) 千葉県知事、成田市長/成田北延長で申入書(読売、毎日、日経、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の暫定滑走路を本来計画と逆側の北に延長する問題で3日、県と9市町村の連名で条件付き容認の申入書を北側一雄国土交通相に手渡した堂本暁子知事は、「かつてあったような国とのあつれきを繰り返さないように」と、住民への十分な説明を求めた。
 暫定滑走路北側の飛行ルート直下の住民からは騒音に不満が出ており、堂本知事は「ジャンボ機が飛ぶようになった後も調査して、継続して対応を」と要求。県も加わって、協議していく意向も示した。北側国交相は「これから十分に調査する」と答えたという。
 堂本知事は、本来計画用地に住む地権者の騒音問題については、北延長完成まで5年以上あることから「県も国も、まだ少しある時間を大事にしたい」と、話し合いを続ける姿勢を強調した。地権者との交渉継続を求めたところ、北側国交相も「交渉は続けます」と応じたという。
 堂本知事と北側国交相の会談に先立ち、午前には空港周辺の9市町村の首長らも、国交省を訪問した。騒音対策や地域振興などを条件に、北延長を認める9市町村単独の決議文を渡した。

 【本紙の解説】
 成田空港圏自治体連絡協議会の要望書にある4項目に国交省井手憲文大臣官房審議官は「4項目にまったく同感」と答えたという。当然であろう。国交省の北延伸に全面賛成し、要望書の内容も具体的要求はなく、周辺対策の強化、住民への説明、地権者の交渉の継続であり、国交省の北延伸を縛るものはない。
 しかし、井手審議官の「同感」という言葉は住民を愚弄している。周辺対策と言っても騒音コンターの見直しも確約しない代物である。地権者との交渉継続にしても、国交省は「国側から積極的に話しかけるつもりはない」としている。つまり条件付き合意といっても条件にならない条件で合意ということである。

(8月4日) 国交省 滑走路北伸を成田空港会社に指示(8/4朝日、読売、毎日、日経各夕刊、8/5朝日、読売、毎日、日経各全国版、8/5全紙の千葉版)

 成田空港の暫定平行滑走路延伸問題で、北側一雄国土交通相が未買収用地を避けての「北延伸」を正式に指示したことを受け、成田国際空港会社は4日、関係部署幹部らによる平行滑走路整備推進本部(本部長・黒野匡彦社長)を設置、作業に着手した。同社は約6年間と見込まれる工期の短縮を最優先に取り組む一方、地権者との用地交渉も継続しながら、羽田空港が再拡張される平成21年度中の供用開始を目指す。工費は本来計画の2倍近い約330億円を見込んでいる。
 北側国交相は北延伸と同時に、(1)工期の最大限の短縮(2)周辺地域への騒音対策(3)本来計画予定地(成田市東峰)の地権者との話し合い――を指示。これを受け、推進本部の初会合では、工程の再検討による早期着工と早期完成を確認した。
 航空需要の増加で「一本半」の滑走路では、発着数が限界に近い同空港で、暫定滑走路の2500メートル化は「待ったなし」(国交省)の状況。会見した黒野社長は、4年後には近距離国際線を飛ばす羽田空港について「大変大事なポイント」とし、この時期に間に合うように工期を早める検討を急ぐ考えを示した。
 ただ、滑走路の延伸には航空法に基づく飛行場施設の変更手続きや地元住民への公聴会などが必要で、着工までに最短でも1年半程度かかる見込み。工事も大掛かりなもので、工期短縮は難しいとの見方も多い。
 同社によると、滑走路の北端部で交差する国道51号はトンネル化されているが、航空機の着地点に近いため、補強とともに位置をずらして道路を付け替える大規模工事が不可欠という。
 同社は「供用開始と同時に年間発着枠を(20万回から)22万回まで増やす」とし、必要な平行滑走路とターミナルを結ぶ誘導路を増設する。このほか、滑走路の先端が管制塔から視認できないという問題も残っている。
 黒野社長は「北延伸による2500メートル化は最善ではない。東峰地区の方々と話がまとまれば次のステップに進める」と、今後も積極的に話し合いを継続する方針を明らかにした。

 【本紙の解説】
 予定通りの北延伸の最終決定だが、いくつかの問題点が浮き彫りになった。
 第一は、6年強の工事期間の短縮が問題になっている。2年短縮して羽田が国際化する09年度中に建設せよということである。これは、本紙が北延伸と言っても羽田の国際化の後であり、近距離便が羽田に移行してからであり、空港間競争の中では建設の意味がないと言ってきたことに対応している。しかし、国道51号線のトンネル化をはじめ難工事があり、クレーンを使う工事は、滑走路が閉鎖している深夜のみであり、4年間では無理がある。
 第二は、法律に基づく環境アセスメント調査はやらずに、「1年程度の環境調査を実施する」としたことである。これは新たな設計図であり問題がある。工期短縮要求のために、黒野社長が環境アセスメントを実施すると言ったことも覆すことになる。
 第三は、発着回数をいままでの20万回の枠を22万回にするとなったことである。北延伸しても発着回数は増加しないという批判の中で、無理矢理22万回にしたのである。これは、連絡誘導路の新設とその運用によるが、東側に新設誘導路をつくったとしても渋滞は免れず、B滑走路は現状以上の増便は困難だ。むしろ、前から問題になっていたA滑走路の増便を行うのではないか。
 第四は、現状の管制塔からの視界がきかないため補完管制塔建設が問題になっている。ジャンボ機を飛ばすために、増便も2万便にしかならないのに、公表330億円の建設費とその枠外で管制塔の建設までしたら、民営化した成田空港の経営の破綻は目に見えている。
 第五は、東側の新誘導路の建設を決定したことである。滑走路延長上を2回も横切り、信号機がつく誘導路は世界中で見たことも聞いたこともない珍無類のものであり、世界中から危険性が指摘され笑いものになるものである。
 工期の短縮、新誘導路建設、増便など、北延伸の滑走路は危険がいっぱいだ。果たして、これで国際空港の滑走路なのであろうか。それ以上に果たして完成するのであろうか。反対同盟と三里塚闘争は北延伸攻撃を粉砕し、暫定滑走路を運用停止に追い込むであろう。
 以下は、反対同盟の「弾劾声明」である。


■弾劾声明
                      三里塚芝山連合空港反対同盟
           (連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

 政府・国交省は地元住民の声を押し切って、成田空港会社(NAA)に暫定滑走路の北延伸を指示した。住民を無視して暫定滑走路を強行し、行きづまって再度の北延伸に踏みきるばかりか、なおも東峰・天神峰に移転を迫る場当たり的な施策には心底から怒りがこみあげる。
 空港会社はこの北延伸によって、民家の上空40メートルでジャンボ機を飛ばすと公言している。これを人の命と権利の侵害と言わずして何と言うか。
 当初計画から1120メートルも北にせり上がった滑走路からジャンボを飛ばせば、十余三、小泉、大室、土室、成毛、幡谷、そして下総町の住民の生活はかくだんに侵害される。しかし国交省は騒音コンターをまたも違法に見直さない旨示唆しはじめた。環境アセス法に義務づけられている影響評価の手続きさえも違法に踏み破ろうとしている。
 こればかりではない。空港会社は最近になってジャンボ機がいまの連絡誘導路を走行できない事実を認め、代わりに東側に大きく迂回する新誘導路の計画を漏らしたが、その内容は、滑走路南端のオーバーラン帯間際を航空機が横断するという他に例のない危険なものである。
 これはことの一端にすぎず、東関東自動車道が危険区域を横断し、緊急着陸のための「着陸帯」には段差4メートルの穴があり、管制塔から滑走路が目視できないなど、欠陥だらけである。
 JR福知山線、日本航空と重大事故が相次いだ。昨日も羽田で重大事故につながりかねない大失態をひきおこしている。国交大臣の監督責任が問われるさなかの北延伸強行は、なおも過ちを顧みない無責任と人命軽視の象徴である。
 09年に羽田が国際化すれば、アジア便の大半が成田空港から羽田に移る。工期6年を要することからしても、北延伸はまったく無意味である。その真のねらいは、07年上場予定のNAA株価のつり上げである。
 6月の日米防衛首脳会談で、有事の成田空港の軍事使用が合意された。戦争に反対する立場から、成田空港の軍事化に反対する。
 北延伸はぶざまな破産を遂げるであろう。反対同盟は農地を守り、飛行直下の住民とともに不当な延伸を阻止する決意である。
                          2005年8月4日


(8月7日) 反対同盟 成田市久住地区、下総町へ宣伝活動
 反対同盟は8月7日、北原事務局長を先頭にJR成田線久住駅、滑川駅を中心に成田市久住地区、下総町全域に北延伸反対の宣伝活動を行った。両地域とも北延伸に反対であり、北原事務局長の演説を熱心に聞き、反対同盟のビラも食い入るように読んでいた。詳しくは本紙参照。
 以下は反対同盟のビラです。(PDFファイル参照

(8月8日) 北延伸正式決定で成田市に協力要請(8/9千葉日報)

 暫定平行滑走路の延伸問題で成田国際空港会社の黒野社長は8日、成田市役所を訪問、小林攻市長に国交省の「北延伸」正式決定と空港会社への指示を報告した。
 騒音下にある平行滑走路北側の同市久住地区住民は反対の姿勢を崩していないが、正式決定の区切りを迎え、今後の地元協議を前に「よろしくお願いしたい」と協力要請した。
 小林市長は「騒音対策など申し出の内容に沿って本格協議を進める必要があり、市としての取り組みを強めたい」と話した。空港会社では同日までに担当役員らが空港周辺自治体を訪問、正式決定を報告した。
 空港周辺9市町村による「成田空港圏自治体連絡協議会」(会長・小林攻成田市長)は、騒音区域の抜本的見直しなど4項目の申し入れ書を国交省に提出している。

【本紙の解説】
 成田市は北延伸の騒音被害が拡大する久住地区を抱えていながら、「本格協議を強めたい」としか空港会社に言えないのである。これでは久住地区の住民や、来年成田市と編入合併する下総町住民は納得しないだろう。
 騒音コンターの見直しが最大の問題になっている。騒音コンターの枠が広がったとしても、地価は下落し、人が住める条件はなくなっている。そのことは飛行コース直下の芝山町菱田地区や大里地区を見れば明白である。基本的に無人化が進んでいるのだ。最低の保障もなく、土地も二束三文となり、里山は崩壊し、無人化が進行する事態を、騒音下住民は絶対に容認しないだろう。空港は本質的に周辺住民をたたき出す存在なのだ。それを隠ぺいするために、空港との「共存共栄」や「共生」などのスローガンが叫ばれるのだ。
 久住地区は、地区存続か廃村化の道をたどるかの岐路に立たされている。

(8月11日) JAL機のパネル脱落 後続着陸の大韓機パンク(8/12朝日、読売、毎日、日経、東京各全国版、産経千葉版、千葉日報)

 11日午前6時6分に成田空港A滑走路に着陸したシンガポール発成田行き日本航空710便B777−300型機(乗客乗員104人)から、機体下部にある点検口のドアパネル(長さ約2メートル、幅約40センチ、厚さ約2センチ)1枚が脱落。また、3分後にこの滑走路に着陸したロサンゼルス発の大韓航空貨物便B747−400型ジャンボ機の主脚タイヤ一本がパンクした。けが人はなかった。
 成田国際空港会社が同滑走路を閉鎖して点検した結果、日航機のパネルの破片6個が見つかった。一方、大韓航空は「着陸後の検査でタイヤに金属片が刺さっていた」としており、日航機の脱落した部品が原因でパンクした可能性が大きい。
 日航によると、脱落したパネルはグラスファイバー製で、エアコンの熱交換器などを点検する際に開閉する。4カ所あるちょうつがい部分がすべてちぎれていた。同機は7月28日にメーカーから納入され、旅客を乗せた初フライトでシンガポールから戻ってきたところだった。
 日航は「同型の35機を点検し、再発防止に努める」としている

【本紙の解説】
 事故をおこした同機は初フライトであり、日航ではなくメーカーに問題があると主張したいようだが、メーカーとともに日航の責任も重い。初フライトだから整備は万全でなければならないのだ。もしも、後続の大韓航空機が横転炎上でもしていたら、大惨事になっていたのである。航空機の事故は些細な問題が大惨事につながることが多いので、その整備は厳格でなければならないのである。
 しかも、この翌日におこった福岡の日航機事故で整備の問題点が全面的に暴露された。
 12日福岡空港を離陸したホノルル行きJALウェルズ58便は左翼エンジンから炎が噴出し、2〜3センチ大の金属片約600個を福岡市東区の住宅地に降らせ、小中学生3人が火傷などの怪我をしたのである。つまり、住民から見れば空から散弾銃を打ち込まれたようなものだ。福岡空港北端から飛行コースで約1キロ先(福岡市東区社領)までが“絨毯(じゅうたん)爆撃”されたのだ。空港周辺の飛行コース直下は、このような危険に充ち満ちている。
 この事故は日航と国交省の馴れ合いから発生した。国土交通省は今年の6月8日付で「DC10のエンジン内部が破損して破片が飛散する恐れがある」として各航空会社に防止措置をとるよう求める「耐空性改善通報(TDC)」を出していた。これは米連邦航空局(FAA)が5月13日に通達を出したことを受けたものだ。しかし、日航グループは「2010年4月までにエンジン部分を改良型に交換する」と報告し、国交省はそれを承認していた。そのためか、この事故を国交省は「重大インシデントにも該当しない」と言い張っている。航空機事故の前触れでないとして、国交省航空・鉄道事故調査委員会による原因調査もしないのである。
 この日航グループは同型機を実は来年3月で退役させる計画だった。つまり、TDCに対してエンジンを5年後までに交換すると報告しているが、それまでに同型機は退役させる計画だったのである。つまり、交換などするつもりはなかったのである。国交省もそれを承知で認めている。国交省はこれほどの事故であっても同型機の運航中止も求めないのである。
 群馬の御巣鷹山での日航機事故から20年目のこの日にこのような事故がおきても、継続事故の防止策を国交省、航空会社の双方がとらないのである。
 航空業界の競争激化の中で、整備は分社化・外注化の時代になっている。航空機の安全性は、20年前よりも現在の方がより軽視されているのである。

(8月18日) 下総町長と住民代表ら、国に移転補償など申し入れ(8/19朝日、読売、毎日、産経、東京各千葉版、千葉日報)

 成田国際空港の暫定平行滑走路の北側にある下総町の可瀬力町長と住民代表らが18日、騒音区域の見直しや移転補償を求める申し入れ書を国土交通省と同空港会社に提出した。来週中に堂本暁子知事にも提出する予定という。
 申し入れ書は、320メートルの北伸によって本来計画より滑走路が合計1120メートル北側に延びるとしたうえで、(1)主滑走路(4000メートル)と比べ不公平にならないよう騒音区域を見直し、集落の分断を避ける(2)騒音被害が増大する地域の移転補償を検討する(3)地域振興に協力する―の3点を求める内容。
 空港会社の黒野匡彦社長は「移転補償などは検討中だが、議論の前提となる騒音コンター(等騒音レベル線図)を来月初旬までに作り、地元の声を聞きながら対応していく」と話した。可瀬町長は「住民の一番の心配は騒音問題。早期の対応が地域の願いだ」と話していた。

【本紙の解説】
 下総町の申し入れは、条件を満たしてくれれば空港建設に賛成するというものであり、三里塚闘争とは立場を異にするが、真っ当な要求である。
 国交省は、下総町の要求にあるように滑走路が1120メートル北側に延びるのであるにもかかわらず、騒音コンターを変えないと言っている。暫定滑走路開港(2002年)の時は、ジャンボ機は飛ばないからとの理由で、騒音コンターは変更しなかった。しかし今回の「北延伸」は便数も増やす計画なので、騒音コンターをそのままにはできないはずだ。
 NAAは何を考えているのか。騒音コンターの変更はそれだけで数年掛かりの大事業だ。北延伸工事の工期短縮が株式上場(2007年)との関係で至上命令となる中で、空港会社としてコンター見直しなど絶対にやりたくないのである。
 しかし国交省と空港会社が住民の要求を無視し、騒音コンターの見直しすら拒否するなら、久住地区、下総町の住民の闘いは「北延伸」そのものを揺るがす闘いに発展するだろう。

(8月19日) 着陸事故 グアム空港でNW機、日本人ら3人が軽いけが(8/20朝日、毎日、東京)

 19日午後1時18分ごろ、成田発グアム行きノースウエスト航空74便(ボーイング747―200型機、乗員乗客335人)がグアム島のグアム国際空港に着陸した際、前輪の軸が折れたため、機首の底部を滑走路にこすりながら停止した。乗客は緊急脱出用シューターで機外に逃げたが、日本人1人と米国人2人の計3人がけがをした。
 現地の日本総領事館によると、けがをした日本人は、家族4人で旅行に来た静岡県の男性(71)。シューターで避難する際、ほかの乗客と接触して頭を打ち、軽傷を負った。
 また、この事故の影響で滑走路は閉鎖され、グアム空港に向かう飛行機は近くの米軍基地を利用している。
 ノースウエスト航空日本支社広報部によると、同機は着陸の際、前輪が降りたものの、滑走路を走行中に前輪の軸が折れ、前のめりの状態になったまま停止した。火災や煙は出なかった。乗客のほとんどは日本人で、夏休み中のためほぼ満席。乗客のうち7人は乳児だった。

 【本紙の解説】
 事故機は、10年以上の古い機種で、事故原因は金属疲労といわれている。しかし、金属疲労の問題も、整備で安全性のチェックを怠らなければ、事故は未然に防げる。
 最近、航空機事故が異常なまでに頻発している。その理由は、航空産業の規制緩和による競争激化で、安全性が軽視されているからだ。航空機の整備点検費用も切りつめられている。今年からジェット燃料価格が50パーセントも高騰し、その分、人員削減と安全性軽視に拍車がかかっているのである。
 米航空大手のノースウエスト航空はその典型的で、整備部門、客室乗務員などの人員削減を柱とする資本攻勢が吹き荒れている。具体的には、従業員の1割強の4400人が加盟する労働組合(AMFA航空整備友愛組合)に対し、人員の50パーセント削減、賃金の26パーセント削減、保険料などの医療給付削減、年金の15年凍結などを提案していた。組合側は19日までの交渉で提案受け入れを拒否し、20日未明からストライキに突入している。
 ノースウエスト航空は、ストライキに対して「仕事は管理職や外部整備士で代替し、運航は平常通りの予定」だとしている。そのために臨時整備士1500人を雇いいれ、訓練費用として1億ドルを使っている。
 このように安全運航の軽視は、労働組合の破壊と労働強化の中で起こるのである。今回の事故もこのような問題が遠因になっているのである。

(8月21日)カンタス航空機 出火示す警告灯が誤作動(8/22朝日、読売、毎日、日経、産経、東京、千葉日報)

 成田発パース(オーストラリア)行きカンタス航空70便A330型(乗客乗員194人)が21日未明、関西国際空港に緊急着陸したトラブルで、調査官を派遣した国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、同機貨物室に火災の跡がなく、出火を示す警告灯が誤作動したとの見方を示した。病院に運ばれた負傷者は日本人6人、オーストラリア人2人、中国人1人の計9人で、うち日本人女性(20)が骨盤骨折で重傷。大阪府警は業務上過失傷害容疑で現場検証するなど捜査を始めた。
 乗客181人全員は脱出用シューター(滑り台)で機外に降りたが、「乗務員にせかされた」と話す乗客もいた。事故調は乗務員の誘導に問題がなかったか調べている。
 事故調による調査後の21日深夜、乗客のうち161人が臨時便でパースに出発した。
 乗客は「墜落」と「爆発」の恐怖を感じながらカンタス機を脱出した。
 複数の乗客の話では、離陸の約2時間後、「コンピュータエラーで念のため日本に戻ります」と機内放送があった。その後、「機長が『フリーズ』といったら、頭を前のシートに倒してください」と放送が流れ、乗客の間に「墜落するのか」という不安が広がった。無事着陸すると拍手が起きたが、今度は「外に出て、機体からできるだけ離れてください」と指示が出た。
 シューターが取り付けられると、乗務員が「ハリーアップ(急げ)」とせかしたため、「爆発するのでは」と乗客はパニック状態に。東京都渋谷区の男性会社員(36)は「手荷物を持たずに我先にと脱出口に詰め掛けた」と話す。病院に運ばれた9人はいずれも脱出時にけがをしたためだった。

 【本紙の解説】
 この事故はコンピュータエラーによる「出火を示す警告灯が誤作動」となっている。これも整備問題である。それだけでなく、アルカイダの日本攻撃がうわさになる中での航空機内での火災警報である。事故多発とゲリラ恐怖の中で、乗務員はパニックに陥ったのであろう。その煽りを受けた乗客は、「急げ」と乗務員にいわれ、乗務員以上のパニック状態になり、脱出過程で負傷した9人が病院に送られ、そのうち1人は骨盤骨折の重傷を負ったのである。

(8月22日) 日航機、給油口キャップ脱落 成田着陸後に発見(8/23読売、毎日各全国版)

 22日午後4時25分ごろ、成田国際空港に着陸したロサンゼルス発の日本航空61便(ボーイング747−400型機、乗員乗客計349人)の点検で、右主翼下にある給油口のアルミ製キャップがなくなっているのが分かった。同空港会社は着陸した滑走路を一時閉鎖して探したが、見つからなかった。
 日航などによると、キャップがなくなっていたのは両側主翼下に計4カ所ある給油口の一つ。キャップは円形(直径10センチ)で120度回転させて開閉する。チェーンで主翼に固定されているが、外れた個所のチェーンはちぎれていた。キャップの閉じ方が甘く、外れた後、飛行中に引っ張られたらしい。給油口は下を向いているが、中にある弁は外部から高圧を加えないと開かないため、燃料漏れの恐れはないとしている。同機は前日、出発地のロサンゼルスで給油したという。

 【本紙の解説】
 日航は燃料漏れの恐れはないと発表しているが、燃料漏れの第一歩手前までいっているのである。こういうものは、大半がダブルセイフティ構造になっていて、一つが故障してももう一つが十全に動いていれば致命的事態は回避できることになっている。たが、一つが故障した場合にその原因を決定的に追及し、問題点を対外的にもはっきりさせることで本格的事故が防げるのである。これは重大インシデントであり、そのように扱うべきなのだ。それを「燃料漏れの恐れはない」と発表する姿勢が次の事故を引き起こすのである。

(8月23日) 羽田・成田、空の管理一元化 09年めど(8/23朝日全国版)、効率もアップ

 国土交通省は羽田空港と成田空港がそれぞれ民間機の管制を担当している空域を09年をめどに一元化することを決めた。両空域は自衛隊と米軍の空域に挟まれて狭い上、発着便が互いの空域を行き来できないため、発着数の制限や遅延の原因になっている。一元化によって首都圏上空の混雑解消をめざし、航空需要増に対応する。
 対象は、羽田と成田の「ターミナルレーダー管制」空域。着陸便に着陸の順番や先行機との間隔、高度などを指示し、出発便の高度やルートを指示する、空港近くの「交通整理」を担っている。
 レーダー管制空域は空港をつくるごとに個別に設定されており、航空機は危険防止のため、原則として隣接する空域には入れない。朝夕のラッシュ時に発着便が重なると、管制官は狭い空域内で飛行間隔をとりながら航空機を誘導しなければならない。
 国交省の新たな計画では、羽田と成田の上空約6000メートルまでを一元化。成田のレーダー管制官を羽田に集約し、両空港の発着便をレーダーで管理し、一体化した空域で、両空港の発着便をコントロールする。
 現行より、飛行間隔や高度に余裕を持たせられるため、遅れの解消や、発着数増が見込める。またニアミス(異常接近)などの危険性も減るという。
 羽田は09年に4本目の滑走路ができて発着数が1.4倍の年間約40万回に、成田も暫定滑走路が同時期に北延伸で2500メートルに整備されるめどがたち、発着数は2万回増えて22万回になる見込みだ。
 しかし、滑走路の整備だけでは発着数は増やせないため、一元化を検討していた。
 同じ空域に羽田便と成田便が混在することになり、国交省は空域に入った順に管制官の画面上に発着の番号を振って、機体を見分ける新型レーダーの導入を決定。来年度概算要求に関連費用を盛り込む。
 また一元化に備えて、広がった空域に対応できるよう管制官の訓練をする。同省航空局は「新型レーダーによって、航空機の順番を間違えたり見落としたりするミスを防ぐことができる。狭いところを無理して飛ぶよりも、安全性を高められる」としている。
 現在、関東上空は茨城県側に自衛隊が管理する百里空域、西には米軍横田基地が管理する横田空域が広がっている。日米間に横田空域の返還に向けた動きがあり、国交省は実現した場合、横田空域も加えて一元化する方向で検討を進める。

 【本紙の解説】
 羽田と成田の一元化となっているが、問題は羽田発着便が成田空域に入り込むことになるだけである。羽田や成田の発着便が互いの空域に自由に出入りでききるというお題目だが、羽田の着陸便の待機場所が房総半島まで拡大することがこの一元化の本質だ。現在でもラッシュ時には羽田着陸を待っている飛行機が東京湾上空の狭い空域に隊列で順番待ちしている。これを房総半島の東側(従来の成田管制空域)の太平洋上も使う体制に変更するということである。
 09年から一元化としているが、09年は羽田の4本目の滑走路が完成し供用開始の時である。発着回数能力は40万回になる。そうするといままでの空域ではラッシュ時に東京湾上でのより一層の渋滞は避けられない。そのために、成田空港空域への拡大が絶対に必要なのである。成田発着便が羽田空域に進入する事例は基本的にない。したがって、一元的管制といっても羽田主導の一元化である。その結果、成田空域での危険性は増加する。
 羽田は年間40万回で国際化を推進、成田はその後、暫定滑走路の2500メートル化(北延伸)が完成しても、公称22万回/年の空港にしかならない。発着能力や利便性のポテンシャルからいって、09年には首都圏空港の首座は完全に羽田となる。その一つの現れが今回の羽田主導の空域一元化なのである。

(8月25日) 日中航空協議、物別れに(8/26日経、東京)

 国土交通省は25日、増便などをめぐり北京で24日まで2日間の日程で開かれた日本と中国の航空当局間協議が、物別れに終わったと発表した。中国は前回同様、成田や羽田空港など東京圏の利用拡大を要求した。
 同協議は1月、6月に続き今年3度目。いずれも合意に至らず、両国間の輸送便の枠は2003年7月から据え置かれている。次回協議を開催することでは合意したが、日程は未定。
 日本側は6月協議同様、新滑走路が3月に完成した上海・浦東空港への増便を要求。中国側は成田空港の発着枠拡大や、昼間は国内線でいっぱいの羽田空港への定期便就航を主張した。日本側が成田の増便は困難で、羽田は余裕がある早朝と深夜なら就航可能などと説明したが、中国側が昼間の就航を主張したため合意には至らなかった。

 【本紙の解説】
 日本側の上海・浦東空港への乗り入れ希望が強いと見て、中国側は強気で成田発着枠の増便、羽田への新規定期便乗り入れを要求してきた。しかし、日本側は6月と同じ中部国際空港の枠か、羽田の早朝・深夜枠しか提示しなかった。しかし羽田の深夜・早朝枠といっても、それは事実上の国際線定期便である。羽田の深夜・早朝の国際線乗り入れも、国交省と千葉県の間でもめた末に、チャーター便のみOKとなった経緯がある。しかも羽田からは、さまざまな観光地に定期便的な「チャーター機」が飛んでいるのが実情だ。日韓線に至っては、サッカーワールドカップを口実に昼間のチャーター便が「シャトル便」となり、1日8便が飛ぶ事実上の定期便となってしまった。
 本紙では、09年を待たずに羽田国際化は進行すると予想してきたが、その通りになった。成田暫定滑走路の北延伸決定で2500メートル化にめどがたったことから、千葉県も「成田が未完成」という理由で羽田の国際化に反対できなくなったからだ。国交省は次の課題として、成田が閉鎖している深夜・早朝に国際貨物便の羽田乗り入れを計画している。
 中部国際空港に貨物便のシェア(占有率)をかなりとられ、成田空港の経営実態は徐々に厳しくなっている。今後、最大のライバルは羽田の国際線となる。しかし「ライバル」というよりも、羽田のポテンシャルの高さは圧倒的だ。アジア便の羽田移行の枠を決める国交省によって成田の運命は握られている。民営化した成田空港は利益を出すことが最優先課題で、いままで以上に国交省の隷属下に置かれそうだ。

(8月26日) 車を使った成田空港不法侵入備え訓練(8/27毎日千葉版、千葉日報)

 県警や成田国際空港会社は26日、同空港への車の不法侵入に備えた訓練を行った。04年4月に羽田空港の滑走路に車が侵入した事件を受けて始まったもので、昨年に続き2回目。
 訓練は、旅客ターミナルビル内で職務質問された男2入が、外に止めてあった車を奪い貨物地区まで逃走するという設定。285人が参加した。犯人役の警察官が猛スピードの乗用車で同地区に侵入すると、パトカーなどが追い詰め、叫びながら逃走を続けようとする犯人役を取り押さえた。
 同社によると、今回は、不法侵入者を関係機関に知らせるホットライン設置後初の訓練だったが、うまくいったという。担当者は「もしもの時に備え、体が動くように訓練を重ねたい」と話した。

 【本紙の解説】
 昨年6月25日実施した「侵入事件を想定した訓練」を急きょやったのは、7月に窃盗の指名手配容疑者が逃走したからであろう。しかし、その準備過程で再び事件は起こった。今月20日朝、成田空港第2ターミナルビルで、グアムに出発するために出国審査を受けた男が、旅券により警視庁から指名手配中と判明した。出国審査官が待機を命じたが、連絡中にいなくなったという。その男は、保安検査場を逆行してターミナル外に出たらしい。空港署が空港内などを捜したが見つからなかったという。第二の逃亡劇が発生したことで、警察も空港も面子がなく、逃亡の事実をこの訓練の日まで伏せておいたのである。
 「水際警備」だとか称しているが、その実体はザルそのもののようだ。

(8月28日) 成田空港 中国機立ち往生 滑走路一時閉鎖(8/29読売、毎日、日経、産経)

 28日午後4時ごろ、成田空港B滑走路に着陸した上海発成田行き中国東方航空521便エアバスA300−600型機(乗客乗員290人)が、ハンドル系の故障のため、滑走路上で動けなくなるトラブルがあった。けが人はなく、成田国際空港会社では、機体を牽引してスポットに移動するまで、滑走路を55分間閉鎖した。国土交通省成田空港事務所などによると、着陸後、機長から「ステアリング(方向転換装置)故障で、機体の方向性が維持できない」という内容の連絡があったという。
 その後の機体点検では、外見上に異常は見られず、同航空などで原因を詳しく調べている。

【本紙の解説】
 この事故は中国機のステアリングの故障であり、暫定滑走路に問題があるわけでない。しかし、ステアリングの故障でエプロン(駐機場)に牽引するまでの55分間閉鎖しなければならなかったのは、暫定滑走路の構造的欠陥である。通常、誘導路は補助誘導路がついており、故障機などはそこを使ってエプロンや整備場に向かうのである。暫定滑走路は、その補助誘導路どころか一方通行の連絡誘導路を使わなければならず、これほど長時間の閉鎖になったのであろう。
 エアバスA300機はエアバス社が72年に最初に造った航空機であり、当時のベストセラー機であった。その改良機としてA300−600が、1984年に製造され今も生産されている。ステアリングの故障であり、相当古い機種かと思っていたが、そうでもなさそうである。整備不良が原因であろう。

(8月29日) 反対同盟、9・19現地闘争への結集を呼びかけ
 反対同盟は、北延伸決定後、さまざまな現地攻撃が激しくなっており、急きょ現地緊急集会を決定し、各支援に動員を呼びかけている。 (PDFファイル添付

(8月30日) 北延伸に処分場転用難題に(8/30読売千葉版)

 成田空港暫定平行滑走路の北延伸計画で、延伸予定地の北端にある成田市の一般廃棄物最終処分場の扱いが問題になっている。成田国際空港会社が空港用地転用を打診したところ、市側は廃棄物処理法などの制約から「問題点がある」として同意しておらず、処分場廃止の場合も廃棄物の再処分先や費用負担の問題がある。空港会社は打開策について市との協議に入った。
 処分場は同滑走路の北端から約400メートル北にあり、敷地面積4万2000平方メートルのうち約3万7000平方メートルが空港会社からの賃借地で、残りは市有地。1989年から、市のゴミ焼却施設で出た焼却灰などを埋め立て、現在は空港内で出たゴミの焼却灰と市の不燃ゴミを処理した後の廃棄物が持ち込まれている。廃棄物と覆土を合わせた埋め立て量は約12万立方メートル。
 計画通りに北延伸すれば、処分場は新たな滑走路北端から数十メートルとなる。空港会社では、「滑走路付近の凹凸はオーバーランの際に危険」などとして、処分場を整地し保安施設用地に転用する方針だ。
 8月4日の計画着手以降、空港会社は市に処分場敷地の明け渡しを打診。しかし市は、「廃棄物処理法や行政財産の譲渡を制限する地方自治法の規定上、転用には問題がある」として、判断を留保している。
 一般廃棄物最終処分場の許認可を所管する県資源循環推進課によると、空港用地への転用は処分場の廃止が前提となる。廃止の場合、手続き期間などから、埋め立て物の全量撤去が現実的だ。その場合でも、撤去物の高温溶融などが必要で、市と空港会社は撤去物の受け入れ先の選定や費用負担について協議が必要だ。
 小林攻市長は「処分場の廃止以外の方法で対処できないか、県と相談したい」と話している。

【本紙の解説】
 この一般廃棄物最終処分場の「成田クリーンパーク」は、東関道とともに、暫定滑走路が2180メートルになった原因の場所である。滑走路の延長上は、900メートルにわたって30メートル間隔で進入灯の設置が義務づけられている。しかし、暫定滑走路の場合、北端から約500メートルの距離にこのゴミ処理場があり、敷地内に2カ所に設置できたが、その先の敷地外には設置できなかった。その結果、滑走路北側の進入灯の距離は500メートルになり、滑走路の中に400メートル分の進入灯が埋め込まれている。そのために、暫定滑走路は北側からの進入の時は、滑走路は実質1780メートルしか使えないのである。北側発進の場合は2180メートル使えるが、進入は無理なのである。したがって、暫定滑走路の実質上の長さは現在1780メートルなのである。
 すべての滑走路は、風向き次第で進入方向が180度変わってしまう。そのため、暫定滑走路は1780メートルで着陸できる航空機しか使えないのが現状である。
 このゴミ処理場と東関道トンネル化の問題がクリアできれば最初から暫定滑走路は2500メートルで建設できたのである。
 この難問が再び、問題になった。ゴミ処理の最終処分場の廃止は、「埋め立て物の全量撤去」が基本であり、それも、「撤去物の高温溶融などが必要」となっている。これは数年間かかる事業であり、航空会社はゴミの埋め立て地をそのままにして、「処分場を整地し保安施設用地に転用する方針だ」となっている。これは行政法からも逸脱である。このようなデタラメを許すことなく、北側住民とともに、暫定滑走路の北側再延伸を絶対に阻止する。
 さらに東関道問題もある。再延伸した北端の先、400メートル地点に東関道があり、ここに進入灯の設置も必要になる。そのために東関道のトンネル化か屋根を取り付けなければならない。これも東関道を一旦通行止めにするほどの大工事である。やはり暫定滑走路が2180メートルにとどまったことには理由があり、それを突破することは至難の業のようだ。

(8月31日) 敷地はみ出し誘導路新設(9/1千葉日報)

 成田空港の暫定滑走路北延伸に伴い、滑走路とターミナルをつなぐ新連絡誘導路建設計画案の概要が31日、明らかになった。空港反対派が所有する未買収地を迂回(うかい)するため空港敷地をはみ出し、大回りして滑走路に接続する異例の形になる。
 成田国際空港会社は既に住民に計画案を打診。9月中にも正式に地元説明し、環境調査に入る方針だが、反対派農家らが住む未買収地の四方を空港施設が取り囲むことになるため反発は必至だ。
 計画によると、新誘導路は暫定滑走路南端から、未買収地を避け基本計画敷地を東に大きくはみ出して設置、長さは2キロ弱に達する。未買収地の合間を縫って短い距離で設置する案もあったが、着陸機を誘導する電波の障害になる恐れがあり「迂回案」を採用した。
 現在、連絡誘導路は幅が狭く湾曲した1本だけ。誘導路を増設し2本にすれば、出発機と到着機がそれぞれ一方通行で便えるため運用がスムーズになる。現在は通行できないジャンボ機の運用も可能になり、年間発着回数は23万5000回まで拡大できる。
 航空会社は「大型機が利用できる機能が確保される」と評価するが、地上走行距離が長く燃料コストがかさむことも指摘している。

【本紙の解説】
 新誘導路の計画図は第2ターミナルの南側から、横堀のC滑走路予定地に出て、反対同盟が集会場として使う萩原事務局次長の「清水の畑」のより東側にある県有林に入り、東峰の生活道路を横切って暫定滑走路の南端に取り付き、同南端を横断して現在の平行誘導路に合流するという計画になっている(PDFファイル参照)。第2ターミナルから滑走路南端に取り付くまでの走行距離は3000メートルにも達する。
 これが仮に完成すると、東峰地区は西は第2ターミナル、東は新誘導路、北は暫定滑走路、南はB滑走路の一部という形で、四方を空港にとり囲まれてしまう。萩原さんの畑に行くのも、新誘導路の下を潜るトンネルを通らなければならなくなる。
 空港用地からはみ出し県有林の森は通称「東峰の森」と命名され、東峰地区の航空機騒音などのバッファーゾーンとして位置づけられている。そのために、旧公団は、この森は未来永劫残すと約束している。この約束は大きく、県有林であるが、東峰地区に正式に説明を行うのはそのためである。東峰地区が拒否すれば、この新誘導路は建設できないのである。滑走路が2500メートルに延長されてもジャンボ機は飛べないことになってしまうのだ。
 しかも萩原進さんの畑の東側には北原事務局長らが所有する一坪共有地がある。畑と共有地の距離は100メートルに満たない。これは狭すぎて、誘導路を造る基準(航空法施行規則)からも逸脱する。またもや空港会社は基準以下の誘導路を造り、危険を重ねようとしているのだ。
 もし仮に建設されたとしても、長すぎる誘導路なので航空会社は歓迎していない。ジャンボ機は誘導路を自走する時は、飛行中の10倍前後のジェット燃料を消費する。飛行中はリッター50〜60メートル。自走ではわずか6メートル前後だ。現在ですら自走の燃費が問題になっているのに、そのうえに新誘導路問題が重なれば、暫定滑走路でジャンボ機を飛ばす航空会社はなくなってしまうかも知れない。
 そもそも、滑走路延長上を横切る誘導路とは、世界中探してもあり得ない代物だそうだ。着陸機が危険に陥るからである。当然信号機がつくはずだが、暫定滑走路の誘導路は信号だらけになる。
 2本の誘導路になれば「出発機と到着機がそれぞれ一方通行で便えるため運用がスムーズになる」といっているが、ジャンボ機の場合は現行の誘導路を使えないので、極めて複雑な運用になる。誘導路上での事故も発生の危険が高まることは必至だ。
 誘導路が2本になって成田空港の発着回数が23万回まで増えるというのは大ウソである。

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