SANRIZUKA 日誌 HP版   2005/11/1〜30    

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 2005年11月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 


(11月1日) NAA 環境影響調査計画書を公表(10/31千葉日報、11/1毎日千葉版)

 成田国際空港の暫定平行滑走路の北伸について、成田国際空港会社は1日から、整備に伴う環境影響調査の計画書を県内13ヵ所で公表する。同社のホームページにも掲載する。
 環境影響調査は、同社が北伸による影響を事前に把握するために実施する。来年4月をめどに終了し、結果は同7月にまとめる予定。環境に悪影響があると認められたものについては、その対策も盛り込む。
 今回公表するのは、調査や評価の方法をまとめたもの。調査は騒音や大気、動植物生態系など18項目に及ぶ。
 公表場所は成田・富里など周辺9市町村の役所・役場の他、県空港地域振興課、同社空港情報センター。また、茨城県内でも4ヵ所で公表する。
 また今月30日まで、計画書に対する意見を郵送またはファクス、電子メールなどで受け付ける。

 【本紙の解説】
 この環境調査がアセスメント法に基づくものでないことは、すでに10月27日の日誌で明らかにした(05年10月27日付日誌参照)。計画書の「はじめに」の項目で「本事業は国の環境影響評価法、自治体の環境影響評価条例の対象外の事業」としているが、問題である。実質的には環境影響評価法の対象工事なのだ。北延伸工事の完成を羽田4本目の滑走路完成と同時期にしようということから、国交省と環境省が馴れ合って「対象外」としただけなのだ。何もしないと周辺住民から批判されるので「弊社では自主的に環境影響調査を行う」といっているが、騒音源たる会社が調査の主体になるとは、本来あり得ないことだ。
 また「計画書についてご意見のある方は、ご意見を郵送、FAX、メールにより提出することができます」となっているが、これは調査対象、調査方法に対する意見であり、その意見を検討するのは空港会社であり、自分の都合良いように聞くということでしかない。さらに「地域環境委員会の調査・審議を受けながら、調査、予測、評価を進めて参ります」となっているが、この「地域環境委員会」とはNAA黒野社長の諮問機関である。NAAの計画に齟齬をきたすような調査結果はあらかじめ出ない仕組みなのだ。

(11月3日) 滑走路北伸/着陸高度見直し 混雑緩和狙い検討(11/3朝日新聞千葉版)

 高度6000フィート(約1800メートル)以上から成田空港に着陸するという開港以来の飛行方法について、国土交通省が変更に向けて検討を始めた。暫定B滑走路の北側延伸で、着陸態勢に入るポイントから滑走路までの飛行距離が逆に短くなることから、より低い高度で進入する案が出ている。今年度中にも飛行コースに関係する自治体などから意見を聞く方針という。
 同空港に着陸する航空機の標準コースは、茨城県の霞ケ浦南東付近まで高度6000フィート以上で飛行し、このポイントから次第に飛行高度を落として着陸する。1978年の開港当初からの県と国の取り決めで、同省発行の航空路誌(AIP)に盛り込まれている。騒音対策が主な理由だ。
 暫定B滑走路が北側に320メートル北側に延伸することで、霞ケ浦南東の着陸ポイントからB滑走路までの距離は逆に短くなる。航空機の降下する角度が大きくなることから、急な降下をできるだけ避け、円滑な着陸を図るため、着陸態勢に入る高度を4000フィート以上に見直す案が浮上している。
 霞ケ浦南東の6000フィート上空には特に午後、着陸機が集中している。混雑を避けるため、標準コースから離れる機や、空中待機する航空機もある。飛行高度を緩和することで、混雑を解消し、航空機の遅れを防ぐ狙いもあるとみられる。
 同省は「取り決め当初に比べ、飛行機の性能が大幅に向上し、騒音も小さくなっている」と指摘。
 成田国際空港会社は「4000フィートになったとしても、10月に発表した騒音コンターに影響を与えるものではない」としている。

 【本紙の解説】
 成田空港にとって北側進入ポイントは飛行コースの最大の弱点である。東側に百里進入管制区、西側に東京進入管制区があり、狭まっているうえに、百里進入管制区と成田進入管制区は空域を階段状に高度によって分けているのである。そのために暫定滑走路が供用されて滑走路が2本になっても、空港北側からの進入経路は、この霞ケ浦上空の最終進入ポイントの1ヵ所しかないのである。A滑走路と暫定滑走路の着陸機が交互に使う以外にないのだ。
 この問題についてNAAは2003年9月の『ナリタ・エアポート・ニュース』で、「南風が多い夏場には航空機が進入待ちを強いられる場合が多く、上空待機と到着遅延が発生しやすい」と発表している。発着回数が年間17万回レベルでも航空機の待機・遅延が発生していたのだ。
 現在NAAは、北延伸後の年間発着回数について「22万回」にするとしている。しかし上記の北側最終進入ポイントの改善がない限り増便は無理なのだ。それゆえに、国交省とNAAはこの問題の改善策として、何とか進入ポイントの高度を下げようとしているのである。
 また、航空機エンジンの改善が進んだことで騒音が少なくなり、いままで6000フィートで飛行していたものを4000フィートにしても騒音コンターに影響を与えないとしているが、この弁明もデタラメだ。
 さる10月3日に発表された新騒音コンターは「騒音の少ない航空機」を基準に作成された。NAAはそのことを「航空機の低騒音化により1978年コンターよりも狭くした」としている。しかしこのコンターは6000フィートを飛ぶことが前提であり、飛行高度を下げる問題は含まれていない。これは重大なごまかしである。高度を下げる問題を検討していたのならば、それをコンターに反映させるべきなのだ。「取り決め当初に比べ、飛行機の騒音も小さくなった」などとよくも言えたものである。
 またそれ以上に、この空域は「狭く危険である」ことが指摘されてきた問題がある。そこに10月に発表された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した在日米軍の再編構想の中で、嘉手納基地のF15戦闘機の訓練を築城(福岡県)、新田原(宮崎県)両基地に加え、新たに千歳(北海道)、小松(石川県)とともに百里(茨城県)の3カ所でも実施するとなったのである。
 この危険空域でのF15戦闘機の訓練を行えば、その危険が倍増することは確実である。橋本茨城県知事は「百里基地は前から日米共同使用となっており問題ではない」としている。訓練を容認しているのだ。飛行コースの高度を下げることも米軍、防衛施設庁、自衛隊などとの交渉であり、そう簡単ではない。しかし、飛行コースを複線化しない限り、北延伸しても便数は増やせないのである。
 いずれにしろ、米軍F15戦闘機の訓練も加わって、民間機(羽田、成田)と自衛隊機の混雑空域になり、ますます危険になる。

(11月6日) 反対同盟 11月20日に現地闘争を呼びかけ

 反対同盟が11月20日の現地闘争を呼びかけている。成田空港会社は「東峰地区が合意しない限り、東峰の森は伐採しない」という約束を破り、新誘導路を建設しようとしている。また、一般廃棄物最終処分場のクリーンパークを違法に空港用地に転用しようとしている。
 それに抗議して、東峰地区に集合し、成田クリーンパークまでデモをする現地闘争を行う。以下は、反対同盟の呼びかけ文である。

■11・20三里塚現地闘争に総決起を!
               三里塚芝山連合空港反対同盟
 全国の闘う仲間のみなさん。
 政府・国交省と成田空港会社(NAA)は、8月4日の暫定滑走路北延伸決定に続いて、10月3日、施設計画案を公表しました。これによると、北側に320メートル延伸する一方、東峰地区東側に空港敷地をはみ出して新誘導路を建設するとしています。そのルートに、防風林等として地区の生活を守り、まだ、山菜取りや床土取りなどのために入会地的に使われてきた旧県有林=「東峰の森」があり、この森の破壊を狙っています。また、施設計画案の中に、未買収の「成田クリーンパーク」(一般廃棄物の最終処分場)があり、NAAは違法にこの処分場を埋め立てて、進入灯の建設を策動しています。私たちは、この「東緑の森」の破壊と、最終処分場の違法埋め立てを絶対に許さず、闘います。
 北延伸の狙いは、天神峰・東峰地区の闘争の解体であり、あくまでも当初計画への舞い戻りです。07年株式上場と09年羽田国際化がせまっており、空港をめぐる国家間競争が激しくなる中、空港会社はあがきにあがいています。この北延伸を断固阻止しよう。イラク参戦から朝鮮有事を想定した成田空港の軍事化を阻止しよう。
 11・20三里塚現地闘争への総決起を訴えます。
                      2005年11月6日
        記
  「東峰の森」破壊攻撃粉砕
  クリーンパークの違法埋め立て許すな
  東部方面隊のイラク出兵阻止
  11・20三里塚現地闘争
  日時:11月20日(日)午後1時30分
  集合場所:成田市東蜂 開拓組合道路
      (市東孝雄さん方南側)主催:三里塚芝山連合空港反対同盟
 (連絡先)事務局長・北原鉱治
   成田市三里塚115 電話0476(35)0062

(11月7日) 日航 燃料費負担増などで120億円最終赤字(11/8全紙)

 日本航空(JAL)が7日発表した05年9月中間連結決算では、原油高による燃料費負担の増加や、相次ぐ運航トラブルで国内線の旅客収入が減少したことから、最終(当期)損益が120億円の赤字になった。829億円の黒字だった前年同期から大幅に悪化、中間期としては03年9月中間決算以来、2年ぶりの赤字となった。
 売上高は1兆1123億円(前年同期比3.4パーセント増)、経常利益は97億円(前年同期比90・9パーセント減)の増収減益。
 このため、JALは、06年度の従業員給与を最大で10パーセント程度削減することや、国際線の赤字路線を運休することなどを柱とする経営再生計画をまとめ、同日午後、発表する。合理化によって、今後も継続すると見られる燃料費負担増などの影響を抑えるのが狙い。
 通期(06年3月期)の連結最終損益も470億円の赤字になる見通し。170億円の黒字としてきた従来予想を大幅に修正した。この結果、4円を見込んでいた今期の配当は取りやめる。

 【本紙の解説】
 日航の事故続出と経営不振は、航空業界の現状を示している。日航は2001年9・11以降の国際路線の需要後退を日本エアシステムとの合併で乗り切ろうとした。それは、国内路線へシェア拡大とスケールメリットで、日本における独占企業の位置をより確実にして、全日空を追いつめようとすることであった。
 しかし、それは完全に裏目にでた。効率経営のために安全性無視と社員の就業意識の低下で、事故と運航トラブルを続出した。その結果、顧客はかなりの数が全日空に流れている。
 赤字のもう一つの原因に原油高がある。日航は世界でも例がないほどのジャンボ機偏重の航空会社なのである。ジャンボ機は燃料効率が悪い。これは成田空港を基幹空港にしていることに原因がある。成田が1本だけの滑走路の時代が長かったので、乗客が多く搭乗できるジャンボ機の所有が多くなったのである。世界的にはジャンボ機の時代はすでに終わっている。航空機製造業もいまは、250人乗り前後の中型機の受注が中心になっている。三里塚闘争の結果が日航のジャンボ機偏重を作り出し、それが経営不振の原因の一つになっている。日航は中・小型機の導入で経費削減を図るそうだが、それが効を奏することになるのは数年先・十数年先になる。
 航空業界は過剰資本状態、供給過剰でここ数年、ナショナルフラッグであろうとも倒産が続出している。米国では航空会社の倒産は日常茶飯事であり、現在でも上位7社のうち、4社が会社更生手続きの保護下になっている。日航は経営不振の責任を労働者賃金の10パーセントカットと不採算路線からの撤退で乗り切ろうとしている。これも米国と同じである。この攻撃は、ノースウエスト航空の航空整備士労組(AMFA)などを先頭した闘争で失敗している。
 不採算路線からの撤退は成田空港に大打撃をあたえる。日航は1割の撤退を掲げた。成田空港での日航と関連会社のシェアは約3割にもなる。その1割なので成田空港にとって約3パーセントの路線の減少になる。諸外国の航空会社からの乗り入れ希望があるが、羽田空港4本目の滑走路完成も09年にあり、成田は確実に落日が沈むことになる。

(11月9日) 反対同盟 廃棄物処理場転用で市長に公開質問状(11/10毎日千葉版)
 成田国際空港の建設に反対する三里塚芝山連合空港反対同盟(北原鉱治事務局長)は9日、同空港の暫定平行滑走路の北伸で、滑走路北端にある一般廃棄物最終処分場の空港保安施設への転用について、「環境への影響が心配」として、成田市の小林攻市長に対し公開質問状を出した。
 同処分場は暫定滑走路の約400メートル北にあり、約9割が同空港会社の所有地で残りの約1割が市有地。質問状は、最終処分場の転用に関し(1)埋め立て物を撤去する際の安全確認、(2)廃棄物を撤去した場合の埋設物の移転先などをただし、今月17日までの文書回答を求めている。

 【本紙の解説】
 一般廃棄物最終処分場を他に転用する場合には、処分場を「終了」(廃棄物処理法では「閉鎖」)し「廃止」する以外にない。その場合に「終了」してから、一定期間、通例では数年から長期間にわたって安全性を確認してからしか「廃止」できない。廃止できない限り他への転用はできないと廃棄物処理法で厳しく規制されている。つまり、成田クリーンパークは暫定滑走路が北延伸した場合は、滑走路延長上の空港保安施設になり、他の建築物はあってはならない。そのために廃止し空港用地として転用する以外ない。しかし、そのためには安全性確認に数年間かかる。これでは北延伸は4年間という早期には完成しない。
 そのために、小林攻市長は「処分場の廃止以外の方法で対処できないか、県と相談したい」(05年8月30日付日誌を参照)。黒野空港会社社長は 「どう調整できるか市と相談している」として延伸計画の大幅な見直しをせずに空港用地に転用したいとしている(05年9月29日付日誌を参照)。
 別な方法での「廃止」は、埋め立て物を撤去してからの方法がある。それはそれできわめて危険な方法なのである。ダンプカー10万台分以上の移転であり、その過程でダイオキシンなどの危険物質を周辺にまき散らす可能性が大きい。また、撤去物は超高熱溶融処理しなればならない。それには膨大な費用がかかる。そのために、成田市と空港会社は埋め立て部分を空港用地から外し、「廃止」もせずにそのままにするという「解決」ならざる「解決策」、つまり脱法行為を県とともに検討しているのである。このような廃棄物処理場の違法な転用を許さず、反対同盟と三里塚闘争は、周辺住民とともに闘う決意である。以下は反対同盟の「公開質問状」である。

■公開質問状
 成田市長・小林 攻 殿

                 三里塚芝山連合空港反対同盟

 8月30日付読売新聞は、一般廃棄物最終処分場(成田クリーンパーク)の空港保安施設用地への転用問題について報道しました。暫定滑走路北延伸を急ぐ空港会社は、処分場を整地し空港用地に転用する意向を成田市に示しすぐにでも明け渡すよう要請したが、「成田市は転用には問題がある」として判断を留保していると伝えています。
 そもそも一般廃棄物の最終処分場は、埋設物の飛散や流出、浸出液や火災など環境破壊の危険から、法律・規則でその管理が厳しく規定されています。他への転用は埋設が終了し、一定期間にわたる適正な手続きを経て廃止された後でなければなりません。
 記事中、小林市長は「処分場の廃止以外の方法」も検討する旨示唆しており、空港による環境破壊に日々さらされている地元住民としては、この問題の先行きに重大な関心を払わざるを得ません。
 よって以下質問します。

(1)
 一般廃棄物最終処分場を空港用地に転用する場合は、処分場を廃止する方法によるしかないと考えるが、いかがか。廃止の場合、埋め立てた廃棄物の飛散や流出、浸出液による地下水汚染や火災が発生しないことなど安全確認のための検査・手続きが必要である。当該処分場の場合の検査方法と手続き期間を明らかにされたい。
(2)
 小林市長は廃止以外の方法も示唆しているが、これはいかなる方法によるものか。埋め立て物の全量撤去のことなのか。仮に全量撤去だとするなら、撤去物を溶融処理する等の処理が必要とされるが、処理の方法ならびに埋設物の移転先をどこにするか、明らかにされたい。
(3)
 空港用地に転用する場合、クリーンパークは埋め立て未了のまま廃止することになるが、これに代わる最終処分場をどこに新設するか、新設しないのであれば、廃棄物の新たな処理方法を明らかにされたい。
 以上、11月17日までに文書にて回答されるよう要望します。
                           2005年11月9日

(11月11日) 管制塔入室に生体認証システム導入(11/11朝日新聞千葉版)

 成田国際空港会社(NAA)と国土交通省成田−空港事務所は06年度、成田空港の管制塔などの出入り口に、顔の形など体の特徴で本人かどうかを識別する生体認証システムを導入する。航空機の運航上、要となる施設の安全対策強化が目的で、国内の3大国際空港の管制塔では、生体認証の導入は初めて。
 識別に活用するのは「顔の形」。データ化した個人の目や鼻、口などの特徴と顔写真の情報をTCカードとカード読み取り機の双方にあらかじめ登録しておく。ICカードを読み取り機にかざして本人確認ができれば、扉が開く。
 管制塔のほか、到着した航空機をターミナルに誘導するランプコントロールタワーにも同システムを導入する。
 一方、成田空港への立ち入りは現在、旅客は旅券や航空券、空港勤務者には立ち入り区分の重要度に合わせ、認識票などの提示が求められている。
 重要施設への立ち入りにはさらに、立ち入り証や特別な暗証番号が必要となっている。
 このうち、空港内の免税エリアや駐機場に入るための立ち入り証を、06年6月の第1ターミナル南ウイングの開業までにICカード化する方針だ。管制塔とは違い、生体認証に必要なデータは記録しないという。

 【本紙の解説】
 セキュリティのために生体認証(バイオメトリクス)システムがさまざまな分野に導入されてきた。指紋を使った携帯電話からノートパソコンから、銀行のキャッシュカード、マンションの鍵、企業の入退室などである。これは、爆発物検査装置の市場拡大(05年10月18日付日誌を参照)と同じように、2001年9・11の反米ゲリラ戦闘から巨大市場化してきた。米国は、ゲリラ対策のために外国人入国者の指紋採取と写真撮影を行って、バイオメトリクスで入国管理を強化している。
 成田空港でも、昨年の1月からバイオメトリクスを使った搭乗システムの実験が、成田空港と韓国・仁川国際空港で半年間行った(04年1月8日付日誌を参照)。結果は、手続きが簡単になった反面、虹彩や顔はコンタクトやけがで誤作動が多いと聞く。
 しかし、個人情報である指紋、虹彩から顔の輪郭までデータ化し登録しなければ出入国もできなくなりそうだ。これでは全員、犯罪者扱いである。空港内の免税エリア、駐機場というパブリックな場所の出入りにバイオメトリクスを使うのは問題がある。「データは記録しない」としているが、コンピュータはすべてを記録するものであり、それが消去されたかどうかの確認と保証はないからである。

(11月11日) 官製談合/成田空港の電機関連工事で配分表(11/11毎日)

 04年に民営化した「成田国際空港」(千葉県成田市)の前身「新東京国際空港公団」が発注した電機関連工事をめぐり、受注予定社を指定した「配分表」を旧公団側が作成していたことが、関係者の話で分かった。東京地検特捜部はすでに配分表を入手し、旧公団主導の官製談合が繰り返されていたとの疑いを強め、競売入札妨害などの容疑で、受注した重電メーカーの営業担当幹部から一斉に聴取を始めた模様だ。
 聴取されているのは、日立製作所(東京都千代田区)、東芝(港区)、三菱電機(千代田区)、富士電機システムズ(品川区)、明電舎(中央区)、高岳製作所(中央区)、日新電機(京都市右京区)など少なくとも7社。いずれも大型の電機設備を製造し、重電メーカーと呼ばれる。
 関係者によると、特捜部が入手した配分表は、7社のうち中堅メーカーが保管し、特捜部に任意提出した。配分表には、予定工事名とその金額、受注予定社などについて、旧公団側が差配していた内容の記載があったとされる。特捜部は、成田空港の滑走路を照らす照明設備、停電対策用の自家発電機、高圧電流の電圧を使用可能なレベルまで下げる「高圧受変電設備」など各工事の受注経緯について、幅広く説明を求めている模様だ。
 7社が国土交通省などに提出した工事実績によると、99年3月〜04年3月の旧公団での工事は64件で、それぞれ1080万〜19億7900万円で受注。受注件数は、東芝20件、三菱電機20件、富士電機14件、日新電機7件、明電舎2件、日立製作所1件と続く。
 民営化前の公団の入札方式は、談合の温床とされる指名競争入札(公募型を含む)。公団職員による受注予定社の指定や業者による談合は、刑法の競売入札妨害罪や談合罪(いずれも懲役2年以下または罰金250万円以下)に問われる。
 公団時代からトップを務める黒野匡彦・同社社長は、毎日新聞の取材に「談合はまったく知らない。配分表作成は一番悪いこと。職員がそんなことをするとは思えない」と答えた。
 一方、7社のうち明電舎は事情聴取を受けた事実を認めたものの、6社は「そのような事実はない」「回答できない」などと答えた。談合については全社が否定もしくは回答を保留した。

 【本紙の解説】
 成田空港での不正入札は前から評判になっていた。今回、問題になっているのは官製談合であり、より悪質である。いままで、贈収賄と談合は問題になっていた。大企業だけでなく、零細下請け業者までに賄賂を強要していることは成田周辺では評判になっており、常識にさえなっている。その氷山の一角が02年に暴露されている。当時、公団事業課長代理高村文彦が、寝具リース会社から賄賂を受け取った事件である(02年7月8日付日誌を参照)。
 当時の公団職員が企業からの賄賂は常識になっていたが、事件にすると三里塚闘争に利するとの判断で闇に葬られたのである。また、官製談合防止法の制定が02年7月であり、取り締まりが曖昧であったのである。
 官製談合とは公共入札に際し、談合では本来被害者になる発注側である公務員が不当な関与を行うことである。これは、成田などの国や自治体も多いが、政府特殊公団では当然のごとく行われている。成田空港会社の前身である新東京空港公団はそのメッカともいえる存在だったのである。
 黒野社長は「談合はまったく知らない。配分表作成は一番悪いこと。職員がそんなことをするとは思えない」といっているがそんなことはあり得ないのである。黒野社長がかんでいたかどうかは不明だが、公団がそういう体質であったことは、運輸省時代から知っているはずである。また、その公団体質は民営化されても変わってないことは、黒野社長が一番知っていることなのである。

(11月13日) 成田に米テロ対策官常駐を検討(11/13東京)

 国際テロ対策として、米国土安全保障省が担当官を成田空港に常駐させ、旅券の真偽などについて航空会社にアドバイス、要注意人物の情報を警察庁や法務省入国管理局に提供させることを日米両政府が検討していることが12日、分かった。
 国土安全保障省は、米中枢同時テロを機に新設された、米国内でのテロ対策を統括する政府機関。
 同省が推進する出入国助言プログラム(IAP)に基づき、同省税関国境保護局が派遣する担当官が成田空港内にオフィスを設け常駐。担当官は、乗客の旅券の真偽や、米国入国の条件を満たしているかどうか、といった米国線を運航する航空会社からの問い合わせに応じる。
 また、米当局が入国拒否する可能性の高い乗客の名前や旅券番号、拒否の理由などの情報を入管、警察当局や航空会社に伝える。
 しかし、任務は日本の法の枠内での助言や情報提供にとどめ、当該旅客を搭乗させるか搭乗拒否するかの判断は、航空会社の判断に任せるという。
 IAPは、米国線が就航しているオランダのスキポール空港、ポーランドのワルシャワ空港で既に試験導入されているという。

 【本紙の解説】
 米国は2001年9・11以降、設置された国土安全保障省が容疑者ノーフライリスト(搭乗拒否者名簿)を作成し各航空会社に示し、米国便に乗せないことを義務づけている。今年の5月30日に仁川空港を離陸した大韓航空便にノーフライリスト掲載者の搭乗が離陸後判明し、仁川空港までは引き返す燃料がなく、成田空港に着陸したことがあった。米国大使館駐在のFBI(米国連邦捜査局)が成田空港で事情聴取を行っている。
 日本はこの国際テロ組織の情報に疎く、治安情報・体制を米国に依拠している。そのために、成田空港内に米国の治外法権エリアを設置し、成田空港を統括させようとしている。しかし、日本には米国のノーフライリスト掲載者を入国規制する法律はない。また、日本国内の入国管理や治安対策を米国が行うと主権侵害になる。そのため、米国は「任務は日本の法の枠内での助言や情報提供にとどめ」などと言っているが、実際は日本政府は全面的に米国の指示に従おうとしている。日本政府はこれを契機に、米国的な暴力的治安体制を日本にも適用できるように法律や制度を整備しようとしているのである。

(11月14日) 暫定滑走路で成田共生委 北延伸に理解(11/15千葉日報)

 第三者の立場から成田空港の建設と運用を監視する「成田空港地域共生委員会」(代表委員、山本雄二郎・高千穂大学客員教授)が14日、成田市三里塚の共生委事務所で開かれ、成田空港暫定平行滑走路を北側に延伸して本来計画の2500メートルに整備する計画について、初めて見解をまとめた。
 見解では「北延伸はやむをえない判断」と共生委として理解を示したが、騒音対策や発着枠の拡大提案などでは地域への十分な説明を求めた。また、東峰地区地権者との話し合いでは、今後とも積極的な対応の必要性を訴えている。
 成田国際空港会社(NAA)は、暫定平行滑走路を北側に320メートル伸ばし2500メートル化する整備計画と予測騒音コンターを地元自治体などに説明、年間発着枠の拡大も提案している。
 これを受けてまとめた共生委の見解では、北延伸は本来計画と異なり残念な事態としながらも、「北伸案はやむをえない判断だったと認識する」と一定の理解を示している。
 その上で、問題解決の基本的視点として、北延伸選択が新たな紛争の火種とならないよう空港問題全体の解決を目指した取り組み、北延伸による成田空港の将来像の明示、双方向対話型による空港と地域の関係構築を挙げた。
 また、懸案事項の解決としては、平行滑走路北側など新たな対応が必要となる騒音対策は、地域住民への丁寧な説明により理解を得なければならないと指摘。
 空港会社からあった年間発着枠を現行の20万回から22万回へ拡大する提案に対しても、北延伸への理解を求めるのとは別に、十分な説明により理解を得るよう努めるべきとしている。
 用地交渉に応じない東峰地区地権者との折衝では、北側一雄国交相の指示である「話し合いの窓口を開いておくこと」から、より積極的な対応を要請。地権者、国・空港会社の双方の前向きかつ理性的な取り組みを希望している。
 記者会見した山本代表委員は「国、空港会社、県からは『共生委員会の見解を踏まえて対応する』という意見表明があった」ことを明らかにした。

 【本紙の解説】
 成田空港地域共生委員会は「第三者の立場から成田空港の建設と運用を監視する」という立場をかなぐり捨てて久しいが、北延伸問題では空港会社の完全な先兵となった。北延伸が周辺住民の立場を無視したものであることを、共生委員会は自覚している。彼らは「北延伸選択が新たな紛争の火種」になることを恐れている。そのため同委員会は「双方向対話型による空港と地域の関係構築」と称して地権者を「話し合い」に取り込み、切り崩そうとしているのである。

(11月14日) 千葉県 国民保護計画成立へ/成田空港への攻撃も想定(11/15朝日新聞千葉版)

 武力攻撃や大規模テロの発生時における住民の避難指示や救援など県の初動体制などを示した県国民保護計画を、県国民保護協議会(会長・堂本暁子知事)が14日、県の示した原案通り承認した。06年1月の閣議決定と同3月の県議会への報告を経て、正式に成立する見通し。
 県は、国から示された基本指針や計画を基に、成田空港や石油コンビナートが攻撃された場合を想定した独自の内容を盛り込んだ。
 発生の可能性が高い大規模テロについて、「A駅とN空港のN駅で電車が爆破されて600人以上が死傷した」とするシミュレーションも示した。知事を本部長とする緊急対策本部を設置。消防、警察、自衛隊などと連携。負傷者を県外に搬送したり、知事と県警本部長が被害状況や対応についてテレビ会見をしたりするなどの対応策を、県が協議会に説明した。
 協議会では、県民から寄せられた意見が紹介された。「国民保護の名で人権侵害がないよう第三者の監視が必要」「ラジオや防災行政無線が動かない場合、県民にどう広報や指示するのか」などだった。
 これに対し、県側は「基本的人権には最大限の配慮をする」「市町村の広報車などを活用して警報伝達や避難指示をする」との考えを示した。

 【本紙の解説】
 有事立法の「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」の千葉県版の具体化計画である。「国民保護」と称しているが、実際は国民の戦争動員計画だ。さらに、自治体関係者の医療、救援、兵站などの具体的任務の確認である。そのために“国民保護の名による人権侵害”が問題になっている。基本的人権を無視して戦争に動員する計画なのである。
 成田空港が石油コンビナートとともに、攻撃対象としてシミュレーションされているが、現代戦争では航空機が戦闘と兵站の主力兵器であり、動力源が石油だからである。はしなくも成田空港が軍事空港であることを、千葉県が認めているのだ。
 それにしても「成田駅で電車が爆破されて600人以上が死傷した」とするという想定に成田駅の周辺住民はこれから生きた心地がしなくなるのではないか。日本が侵略戦争を開始した場合には、成田空港とその関連施設が最大のターゲットになることは、現代戦争の航空機の巨大な役割から間違いないのである。

(11月15日) 成田市、公開質問状の回答が届く

 反対同盟が成田市へ提出した公開質問状(05年11月9日付日誌を参照)への回答が「成田空港の北延伸に伴う市の最終処分場について」と題して15日に届いた。
 本文は「平成17年11月9日付けでご質問のあったこのことについては、空港会社と協議中でありますので、詳細については回答できる段階にないことをご理解のほどお願いいたします」というだけであった。

 【本紙の解説】
 事実上の回答拒否である。一般廃棄物処理場の転用計画を成田市民に説明できないのだ。小林成田市長は「空港会社と協議中で詳細は回答できない」などと言っている。
 反対同盟の質問状の内容は、成田市は成田クリーンパークの転用に関して法に基づいてやるのかどうか、移転先はどこかが予定地なのかという質問であり、協議中だから「回答できない」ということはあり得ない。「クリーンパークの転用は適法に厳格に処理する」として現段階の検討事項を答えればいいことなのである。
 市長が回答できない理由は、空港会社との協議内容が《覆土するだけで直ちに転用する》という脱法行為だからである。それゆえ秘匿したいという願望なのである。
 しかし地方行政を司る者が、市民に「回答できない」ような行政行為を行っていいものだろうか。反対同盟と三里塚闘争は、成田市が法律に基づいた厳格な処理を行うかどうかを監視し違法を許さず闘い抜くだろう。

(11月18日) 成田空港会社を家宅捜索/電機設備談合で東京地検(11/18夕刊、11/19全紙)

 旧・新東京国際空港公団(現・成田国際空港会社)が発注した成田空港の電機設備工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は18日、競売入札妨害容疑で、同空港会社(成田市)や幹部社員の自宅などを家宅捜索した。押収資料の分析を進め、発注者側が関与した
「官製談合」の解明を進める。
 捜索を受けたのは、ほかに日新電機(京都市右京区)、同社東京支社(東京都千代田区)、明電舎(同中央区)など。
 関係者によると、成田空港工事で談合の疑いが持たれているのは、2003年11月7日に実施された南部貨物上屋第二期受変電設備工事の指名競争入札。捜索を受けた2社や三菱電機(東京)など6社が参加し、日新電機が1億9500万円で落札した。
 落札率(予定価格に対する落札価格の割合)は97・8パーセントで、複数のメーカー担当者は特捜部の調べに受注調整を認めている。特捜部は談合で決まった工事ごとの受注予定企業を記した「配分表」の提出も受け、旧公団担当者は配分表作成や受注企業決定を主導したことを認めているとされる。
 さらに、談合事件は、成田国際空港会社や同社の幹部社員宅などへの強制捜査に発展した。「民営化後、透明性のある経営に取り組んできたが」と、同社の黒野匡彦社長は談話を発表し、悔しさをにじませた。旧公団の担当者が作成したとされる工事の配分表について、別の幹部は「どうしても信じられない」と話す。
 成田市の成田空港敷地内にある同社本社ビルには午前9時50分ころ、係官6人が銀色のワゴン車で到着。捜索は午後7時半すぎまで続き、係官は段ポール約20箱分の資料を押収した。
 本社前では、電機メーカーに捜索が入った前日と同様、早朝から記者やカメラマン、テレビ局の中継車が捜査開始を待ち構えた。社員は騒ぎに慣れた様子で、いつも通り出社した。
 黒野社長は談話で「このような事態に至り、おわびする」と謝罪した。関係者によると、同社は既にパソコンや書類などを特捜部に任意提出しているという。
 同社の元幹部は「旧公団で官製談合とは信じられない。天下りはあったが(談合事件で幹部が逮捕、起訴された)旧日本道路公団と比べ、工事の規模が圧倒的に小さいので業者との癒着も考えられない」と話した。
 県内の幹部社員宅の捜索は、昼前に始まった。カーテンが閉め切られ、中の様子はうかがえなかった。一方、京都市右京区の日新電機本社では午前10時55分ごろ、特捜部の係官6人が乗ったワゴン車が正門から速度を落とさず、敷地内に進入した。

 【本紙の解説】
 東京地検特捜部による家宅捜索を受けたのは、17日は三菱電機、東芝、富士電機システムズの3社、18日は成田市にある成田国際空港会社(NAA)本社、明電舎、日新電機。競争入札を行った6社の中で捜査対象から外されているのは日立製作所だけである。
 この事件は、防衛施設庁発注の電機設備工事の談合事件を捜査している過程で、ある1社が官製談合と一目で分かる公団作成の「配分表」を任意提出したことから発覚した。捜索を受けているメーカーのある幹部は「任意捜査なのに、なぜ提出したのだ」と漏らしているという。
 公共事業でどの業界も談合は常識になっており、どこでもやっている。しかし立件は容易ではない。独禁法違反では公取委の告発が必要であり、贈収賄事件では証拠が基本的に隠滅されており、贈賄側、収賄側のどちらかの証言がなければ事件にならない。証言すれば自分も有罪になるので、証言を得ることはなかなか難しいのである。しかし、特捜部は「配分表」を手がかりに、競争入札妨害の事実を証明し、贈収賄事件に発展させようとしている。
 公団元工務部電気課長が官製談合を取り仕切っていた。受注予定のメーカーが事前にこの課長とメーカー担当者(天下りした公団OBが多い)と交渉して落札予定額を決め、他のメーカーへは「サクラ」としてのみ入札に参加させたのである。その結果、この課長が就任し部長に異動するまでに「受変電設備」入札で発注20件中、日新電機が9件、過半数近くを受注している。
 他の受注会社からの収賄容疑もあるが、日新電機との関係が異常であることから、メーカー内部から「告発」的に配分表が提出されたのである。空港会社が発注業者への収賄・たかりを行っていることは公団時代から有名だった。関連業者からの接待、付け届けは当然であり、自分の利権と思っている。
 しかし、公団当時は「たかり」「収賄」は、表沙汰にはならなかった。理由は、三里塚闘争があり、公団内部で事件が発覚すると反対派を利するとして検察、警察も問題にしなかったのである。そのために収賄体質は異常なまでに肥大化したのである。何と摘発された事件はいままでたったの1件だけだ。02年に貸布団の零細業者から収賄を受け、その金で何度もフィリピンへの遊興旅行に出かけていた高村事件(02年7月8日付日誌を参照)だ。これはあまりの腐敗と酷さのために見せしめ的に摘発されたのである。当時の公団は、高村個人の特殊的な遊興癖として扱った。しかし、この事件は公団が上から下まで収賄体質になっている結果として、零細業者にまで賄賂を要求していたという問題だ。
 今回の空港公団の官製談合事件は、国交省が成田重視からから羽田重視へとシフト換えし、成田を特別扱いできなくなったことの表れだ。地検特捜部も政治的配慮の矛先を変えて捜査を開始したのである。
 黒野社長は事件後、堂本千葉県知事に電話で「北延伸に影響がでないよう、十分に注意したい」と話したそうだが、これほど腐敗したNAAに北延伸工事をする資格はない。

(11月20日)北延伸阻止で反対同盟が現地闘争

 反対同盟は、暫定滑走路の北延伸を阻止する現地闘争を東峰地区で行った。首都圏から120人の労働者や学生、共闘団体が参加し、北延伸予定地で廃止をめぐる脱法行為が焦点化している廃棄物処理場に向かってデモ行進した。
 デモの後、参加者は反対同盟とともに廃棄物処理場や東峰の森(新誘導路予定地)を現地調査した。(詳細は本紙参照)

(11月22日) 空港で靴底消毒 範囲拡大へ 鳥インフルエンザで農水省(11/22朝日夕刊、11/23毎日)

 農林水産省は22日、強毒性の高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)が05年に発生したか、現在発生しているおそれの高い国から入国する人を対象に、国際空港で靴底消毒への協力を呼びかけ始めた。従来は対象を「発生国・地域で養鶏関係施設に立ち寄った帰国者」に限定していたが、新型インフルエンザに対する危機感の高まりを受けて、範囲を拡大することになった。
 空港は、成田、中部、関西、福岡の4空港。対象国は、ロシア、中国、インドネシア、モンゴル、ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ、カザフスタン、トルコ、ルーマニアとなっている。
 空港内の検疫ブースで、ウイルスを死滅させる薬剤をしみこませたマットの上を歩いてもらう。感染拡大の一因になる鶏ふんが靴底に付着して、国内に持ち込まれるのを防ぐのが狙いだ。

 【本紙の解説】
 鳥インフルエンザ感染による死者はすでに、中国、東南アジアを中心に60人以上になっている。しかし、実際の死者はその数倍になると言われている。中国衛生省は11月23日の発表で、新たに高病原性鳥インフルエンザの人への感染による死亡が確認され、合計3人となったとしている。しかし、中国語の情報ウェブサイト「博訊網」は11月21日までに、中国遼寧省で鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染し死亡した中国人14人の名簿を掲載している。
 鳥→ヒトの感染例はすでに多い。次の段階としてヒト→ヒトの感染も時間の問題と言われている。厚生労働省の試算でも、日本国内で最大3000万人以上が感染し、60万人超が死亡する可能性があるとしている。しかも今あるワクチンでは新型ウイルスに効果がない。新型出現後にワクチンを作り始めるしかないため、接種できるようになるまで6か月前後はかかる。それまでは、通常のインフルエンザ用の抗ウイルス薬を使うしかない。
 また、インフルエンザ治療薬の「タミフル」問題も起こっている。すでにタミフルの副作用の疑いで日本の子どもが12人死亡していると米国で発表された。タミフルとの因果関係は不明だが、突然死4人、心停止4人のほか、肺炎、窒息、膵炎(すいえん)が各1人、1人は自殺である。愛知県の14歳と岐阜県の17歳の少年が服用直後にトラックに飛び込むなどの異常行動で死亡していたことも判明した。
 タミフルは幻覚、異常行動など精神神経的な副作用症例が多く、極めて問題のある治療薬なのだ。しかし現在、インフルエンザに有効な治療薬はタミフルしかなく、厚生労働省はタミフルの備蓄を1500万人分から2500万人分に増やしている。
 いずれにしろ、鳥インフルエンザ・ウイルスがヒトからヒトへ感染するタイプに変異したら、中国、日本を中心にアジア全域に猛威をふるうことは間違いない。それも時間の問題だと指摘する専門家もいる。鳥インフルエンザは1918年の“スペイン風邪”に近いと言われている。スペイン風邪では世界中で2000万人から4000万人が死亡した。
 鳥インフルエンザのヒトへの大流行となれば、経済全体が収縮する影響も著しいが、とりわけ、航空業界は今の不況に追い打ちがかかり、半数以上の航空会社が倒産するであろう。

(11月24日) 空港着陸路変更 佐原市へ説明(11/25朝日千葉版)

 国土交通省は24日、成田空港に着陸する航空機のルートをこれまでの6000フィート以上の1本から、6000フィート以上と4000フィート以上の二つのルートに変更する案を佐原市議会の同空港対策特別委員会に説明した。
 ルート変更にかかわる県内自治体は佐原市、小見川町、山田町、栗源町の4市町。同省が正式に説明するのは、佐原市議会が初めて。
 説明によると、ルート変更による騒音予測値の平均は現在と比べ2デシベルの増加となるが、騒音対策を変更するほどの影響はないとしている。
 石指雅啓・成田国際空港課長は「できれば年内に了解をいただきたい」と話した。委員らからは市民に説明できる資料などの意見が相次いだ。

 【本紙の解説】
 11月3日の朝日新聞(05年11月3日付日誌を参照)では、北側進入ポイント(茨城県の霞ケ浦南東付近)の高度6000フィート以上を4000フィートに見直すと出ていた。理由は「暫定B滑走路が320メートル北側に延伸するので、着陸ポイントからB滑走路までの距離が短くなる。航空機の降下する角度が大きく、急な降下を避けるため、着陸態勢に入る高度を4000フィート以上に見直す」となっていた。
 今回の発表は6000フィートと4000フィートの二つルートにするという発表である。前回の発表は「320メートル北側へ延伸するので、航空機が急降下を避けるため」となっていたが、それがウソであったことがはっきりした。6000フィートのルートはそのまま維持し、別に4000フィートをつくることであった。実際に進入ポイントは滑走路から約20キロ先であり、滑走路が北側に320メートル延伸しても6000フィートからの進入角度は約5度15分から約5度20分になるだけで進入角度としは0度05分前後だけ急になるだけで、「急降下を避けるため」とはいえない。子どもだましのようなウソをついていたのである。
 変更の理由は11月3日の〈本紙解説〉で指摘したように、北側飛行ルートの混雑緩和が目的である。しかし、この空域は東側に百里空域、西側に東京(羽田)空域があり、百里と成田の空域は、高度によって分かれる階段状になっている。ここで成田空港への進入ポイントを下げることは百里空域に近づくことで危険が増大する。その結果、1971年7月30日に岩手県雫石上空でおこった全日空機と自衛隊機との衝突墜落事故の再現も危ぶまれる状態となる。雫石事故によって軍事空域と民間空域を厳格に分ける政策がとられた歴史を逆戻りさせる問題だ。
 またそれ以上に、ウソとペテンで進入ポイントの高度変更を企む国交省・空港会社が「騒音予測値の平均は現在と比べ2デシベルの増加となるが、騒音対策を変更するほどの影響はないとしている」などといっていることも、とうてい信用できない。

(11月24日) 成田官製談合で元次長らも聴取(11/25朝日、読売、毎日)

 「成田国際空港」(旧・新東京国際空港公団)発注の電機関連工事を巡る官製談合事件で、同社の黒野匡彦社長は24日の定例会見で、当時工務部電気課長だった部長(55)に加え、部長の上司だった元同部次長らが、東京地検の事情聴取を受けていることを明らかにした。「(部長)個人でやるのは難しい」と、関与が組織的だったとの見解を示した。

 【本紙の解説】
 黒野社長の月末定例会見は、談合事件の苦しい弁明の場となった。問題の元工務部電気課長だけでなく、その上司も事情聴取を受けており、工務部全体の官製談合であることが明らかになっているので、「個人でやるのは難しい」とそれを認めてはいる。ところが「公団あげての談合はなかったと断言できる」などと、とんでもない発言も飛び出している。
 「公団あげての談合」とは公団職員全員ということなるが、そんなことはだれも聞いていない。今は重電メーカーの談合が問題になっているが、工務部がかかわる工事全体が談合であったことは明らかなのだ。それは落札率(予定価格に対する落札価格の割合)の平均が、ほとんどの工事で90パーセント後半になっていることで事実上実証されている。
 残念ながら法廷で立証できる類の証拠が隠ぺい・隠滅されているので事件にならないが、成田空港の工事全体が談合なのだ。それも官製談合であり、旧公団や空港会社幹部の私利私欲のためなのだ。
 またこの記者会見では、今回の官製談合に加わった重電メーカー6社のうち3社に、1987年以降、公団職員が8人も天下りしていたことが明らかにされた。この天下り自身が巨大な「リベート」であり贈収賄事件なのである。この8人は全員が課長級以上を経験した幹部職員だった。空港会社(旧公団)の課長以上は全員、部署にかかわらず談合や贈収賄にかかわっていることは確実だ。
 北延伸工事もすでに巨大な官製談合の舞台になっている。空港会社は工事を発注する資格そのものを失ったと言うべきだ。北延伸工事を絶対に阻止しよう。

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