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戦争下で闘うトルコ労働者 シリア侵略戦争に参戦したエルドアン政権と徹底対決

週刊『前進』06頁(2703号02面02)(2015/10/26)


戦争下で闘うトルコ労働者
 シリア侵略戦争に参戦したエルドアン政権と徹底対決

(写真 2015年のメーデーに参加したUID―DERの労働者【トルコ・ゲブゼ】)

 シリア侵略戦争と内戦の激化という情勢下でトルコの労働者階級は、労働組合を結集軸にしてゼネストでエルドアン政権と米帝に対する反撃に立ち上がっている。
 11・1労働者集会にはトルコで最も革命的な階級的労働運動を組織し闘っている国際労働者連帯協会(UID―DER)から2人の労働者が参加する。11・1労働者集会の大成功をかちとり、トルコと中東の労働者階級と団結する新たな闘いに立ち上がろう。そのためにトルコ情勢を正確に分析・把握しておこう。

「ISとの戦い」は口実にすぎず

 シリアに対する空爆に新たにトルコとロシアが踏み込んだことで、米欧帝国主義諸国とロシアを軸に、中東諸国を巻き込む中東戦争情勢が急速に激化している。
 トルコのエルドアン政権は7月20日にトルコ南東部のスルチで起きた爆弾テロを「イラク・シリア・イスラム国」(ISIS)の犯行だとして突如「テロとの戦い」を叫びだした。7月24日にはトルコ軍はシリア領内のISISを攻撃したと発表した。10月下旬現在も空爆を続けている。他方、トルコ政府はシリア国境近くにあるインジルリク空軍基地とディヤルバクル空軍基地の使用を米軍に許可し、米軍は両基地を使って効率的なシリア空爆を行うことが可能になった。
 米帝や有志連合、トルコは「ISISとの戦い」のためにシリアを空爆していると主張している。だがそれはシリア政府打倒を目指す戦争の口実にすぎない。空爆で破壊されているのは住宅、工場、病院、学校、道路、通信施設、上下水道、製油所、電気・ガス施設などである。ISISにはほとんど打撃を与えず、多くのシリア国民の命を奪い生活を徹底的に破壊することでシリアという国家を解体した上で支配しようとする極悪の侵略戦争なのだ。同時に、クルド人の自治獲得運動を解体する攻撃だ。
 それはシリア政府およびシリア政府を支援して参戦しているイランやレバノンのヒズボラや、シリア政府への武器援助をしているロシアとの緊張関係を一挙に高め、またクルド人との内戦を激化させて中東危機を激しく促進するものだ。
 エルドアン政権によるシリア空爆は実際には大部分がシリアとイラクのクルド人部隊に対するものであった。

空爆の大部分はクルド人部隊に

 エルドアンは自治を要求して闘っているトルコのクルド人組織であるPKK(クルディスタン労働者党)も「テロとの戦い」の主要対象としている。ISISに対する空爆よりもシリアのクルド民主党(PYD)の軍事部門であるクルド人民防衛隊(YPG)や北イラクのクルド自治区に駐留しているトルコのPKK部隊に対する空爆数が圧倒的に多い。
 エルドアン政権は、クルド系の政党でありPKKとも連携している人民民主党(HDP)が今年6月の選挙で13%の得票率で国会に80議席を獲得した結果、与党である公正発展党(AKP)が単独過半数を獲得できなかったことに強烈な打撃を受けた。トルコの政治的・経済的危機を暴力的にのりきるために選挙で単独過半数の議席を獲得して憲法を改悪し、大統領独裁体制を確立しようとするもくろみが完全に破産したからだ。
 エルドアンはこの危機をのりきるために、国内のPKK勢力とHDPを解体するとともに、PKKと連携しながらシリア領のトルコとの国境地帯に自治的区域を形成し始めたPYDを解体することを決断した。そのためにトルコ政府はトルコとの国境地帯のシリア領内に縦50×幅90`メートルの緩衝地帯=飛行禁止区域を設定することを米帝に承認させた。この地域はシリアのクルド人が実質的に自治を実施している地域であり、緩衝地帯はそれを破壊するためのものだ。
 エルドアンはシリアと北イラクの空爆でPKKとYPGを軍事的に解体し、国内ではISISの解体を掲げながら実際にはPKK解体戦争に突進した。10月中旬までに1700人のクルド人武装勢力が殺害され、逮捕されたクルド人は10月までに1千人を超えた。
 エルドアンはこのような内戦を激化させトルコ人とクルド人とを分断し、11月1日に予定されている選挙でなんとしても単独過半数を獲得しようとしているのだ。

労働者の虐殺に怒りのゼネスト

 エルドアン政権はHDP解体のためにさらに卑劣な攻撃に打って出た。それが10月10日の首都アンカラでの、シリア戦争参戦とPKKへの弾圧に反対する集会に対する爆弾テロ事件だ。この集会はHDPや公務員労組連盟(KESK)、革新的労組連盟(DISK)などの呼びかけで行われ、1万4千人が参加していた。その真ん中で2発の爆弾が爆発し、HDPや労働組合に所属する労働者を中心に100人以上が死亡、250人以上が重軽傷を負った。
 政府はこの事件はISISかPKK、トルコの左翼組織が起こした事件と発表した。だがトルコの多くの労働者人民は、エルドアン政権自身ないし政権の意をくんだ何らかの組織が関与していた可能性が高いと見ている。トルコの労働者人民は「殺人者エルドアン」という弾劾の声を上げ、10月10日と11日には全国で10万人が抗議行動に参加、12日と13日にはKESKやDISKなどの呼びかけに応え数万人がゼネストに立ち上がった。

ロシアの参戦で戦争は一層激化

 トルコのシリア空爆で中東戦争情勢が激化する中で9月30日、ロシア空軍機が突如シリアを空爆し、10月7日にはロシア海軍がカスピ海から巡航ミサイル26発をシリアに撃ち込んだ。これは中東戦争情勢を一挙に大規模戦争に発展させかねない危機をもたらした。
 シリアにはロシアの中東における唯一の海軍基地があり、ロシアの中東政策展開の拠点となっている。そのシリアのアサド政権を護持するために、ロシアはISISのみでなく、米帝の支援を受けているいわゆる穏健派反政府勢力(自由シリア軍やアルカイダ系のアルヌスラ戦線など)を空爆した。米帝は1年以上にわたって3千回以上も空爆したにもかかわらず、ISISに決定的打撃を与えることができず、ISISとの戦いは今後「何十年も続く戦争」と公言している。プーチンは、そこに米帝の隠された意図があることをかぎつけた。そしてロシア軍が短期間にISISに重大な打撃を与えることで、米帝の目的がISISへの攻撃を口実としてシリア国土を破壊することにあり、そのためにISISを徹底的にたたくのを回避していることを暴露して米帝に打撃を与えようとしている。
 だがこのような冒険的政策は、ロシアを中東戦争情勢に深く引きずり込むとともに、ロシアと米帝、NATO(北大西洋条約機構)諸国との対立を激化させ、中東大戦争の引き金を引く結果しかもたらさない。
 シリア侵略戦争とクルド人に対する戦争に突進するエルドアン政権と闘うトルコ労働者階級との国際連帯を、11・1集会を突破口にかちとろう。
〔丹沢 望〕