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トルコ大使館前で何が起きたか 事件の核心はエルドアン政権によるクルド人襲撃

週刊『前進』06頁(2706号04面03)(2015/11/16)


トルコ大使館前で何が起きたか
 事件の核心はエルドアン政権によるクルド人襲撃


 10月25日、マスコミはトップニュースで「トルコ大使館前で乱闘」と報じました。ここで何が起き、なぜこの事件が起きたのかについて、クルド人たちの古くからの友人として記します。

トルコ情勢反映

 10月25日の事件は、トルコ・エルドアン大統領の出身政党AKP(公正発展党)によるクルド人に対する襲撃そのものです。今年6月の総選挙におけるAKPの大敗とクルド人政党HDP(人民民主党)の躍進が背景にあります。
 新自由主義下、大混乱に陥っている中東の最大の親日国トルコ。エルドアン大統領派はトルコ憲法改悪(大統領権限の強化など)をもくろんだ今回のやり直し選挙にあらゆる策動を行いました。
 クルド人多住地域であるトルコ・スルチでの爆弾テロ(7月20日)、7月24日以降のIS(イスラム国)への空爆を口実としたPKK(クルディスタン労働者党)拠点へのシリア空爆、アンカラでのHDP支持者が120人以上も犠牲となった爆弾テロ(10月10日)など、トルコ至上主義でクルド人への差別・排外主義をあおる襲撃が相次ぎました。
 一方で貧困地域での給食サービス、金のばらまきでAKPへの支持を得ようとする露骨な買収も大々的に行われました。

在外選挙めぐり

 日本にいるトルコ国籍者は約1万人、そのうちトルコ国籍のクルド人は約2千人で、主に埼玉県を中心に首都圏に住んでいます。
 今年6月7日のトルコ総選挙時、日本に住むクルド人は初めて在外投票に取り組みました。トルコ人は名古屋・大阪・横浜、新潟などに多く居住していますが、日本で在外投票ができるのは東京・渋谷のトルコ大使館1カ所のみ。クルド文化協会のとりまとめにより選挙人登録が行われ、在外投票日の5月31日、クルド人たちは大使館前に早朝より家族中で並び、深夜まで投票が行われました。途中、投票順番をめぐり小競り合いもありましたが大過なく終了。結果はHDPが6割の票を取り、AKPは2割の得票、クルド人たちの圧勝でした。
 トルコ総選挙の結果、HDPが50議席増の80議席を獲得する大躍進をし、AKP・エルドアンは歴史的な敗北を喫しました。その後、エルドアンは議会における連立政権構想に失敗し、クーデター的手法で今回の再選挙を行ったのです。
 10月11日にはHDPの共同代表・セバハット女史が来日し、選挙講演会には大勢のクルド人が参加して大変な盛り上がりを見せました。
 10月7日にはエルドアン大統領も来日して、安倍首相と会談。トルコ大使館に対して名古屋などのトルコ人に選挙の便宜を図るように指示。大使館関係者によるフェイスブックなどを使ってのクルド人に対する選挙妨害指示があふれました。
 投票日である10月25日午前6時半、トルコ大使館前路上に駐車して仮眠を取っていたクルドの青年4人に対し、名古屋からバスをチャーターして来たAKP支持者が車のドアを開けさせ、いきなり殴る蹴るの暴行を行いました。「どうして殴るのか!」の問いに「クルド人を殴るのに理由はいらない!」と。青年たちは救急車で病院に運ばれ、駆けつけた親戚が抗議し、次々にクルド人たちが大使館前に集まり始め大乱闘になりました。
 今回の事態は世界中にさまざまな媒体で流れ、日本においても通常はクルド人コミュニティで仲良く暮らすトルコ人との間にも少なからぬ傷をつくりました。

国際連帯の力で

 11月1日のトルコ総選挙は、さまざまな妨害にもかかわらず、HDPは得票率10%枠を死守して51議席を獲得しましたが、AKPは右翼民族主義政党の議席も取り込み過半数を奪いました。
 早速、エルドアンはPKKを絶滅に追い込むと宣言し、クルド人居住地域に戒厳令を出しています。新自由主義政策の破綻の中で経済の低迷にあえいでいるエルドアン政権は、クルド人に対する差別・排外主義をあおることで危機を乗り切ろうとしています。
 トルコの労働者階級、UID―DER(ウィダル、国際労働者連帯協会)や公務員労組などに参加する人びとの「真の敵はエルドアン、資本家階級だ!」という闘いは、クルド人たちの隊列とともにあり、分断をのりこえ、連帯と団結を強固にするでしょう。11月1日「国際連帯・労働者集会」のために来日したウィダルの主張は、「万国の労働者団結せよ」そのものです。
 今や新自由主義の破綻は世界中に大動乱=「世界革命か世界大戦か」の情勢をつくり出し、難民・移民として生きざるを得ない人びとの大群をも生み出し、帝国主義本国の存立を揺るがしています。日本でも昨年5千人の難民申請がありましたが難民認定はたった11人。今年の申請は7千人を超えるだろうと言われています。国際的批判の中で法務省は難民申請中の特定活動者の激増に「紛争待避機会」という在留資格を新設、一方で難民認定の審査の厳格化を徹底すると言います。
 11・1労働者集会で「国際連帯で戦争を止めよう」と新たな闘いに踏み込んだ地平から、この地に生きる正規・非正規を問わない滞日・在日外国人と団結し、一つの敵に立ち向かう時は今です。連帯・団結!
(外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会 T)