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米で教育労働者が大スト 労働運動後退の歴史を大逆転

週刊『前進』02頁(2930号02面03)(2018/04/05)


米で教育労働者が大スト
 労働運動後退の歴史を大逆転

(写真 州議事堂前でスト集会【3月6日】)

 2月初旬、米ウェストバージニア州南部の学校でランク&ファイル(一般組合員)が組織した山猫スト(非公認スト)が始まり州全体へ広がり始めた。これをみてNEA(全米教育協会)系、AFT(アメリカ教員連盟)系の教員組合と学校スタッフ(用務員、給食、スクールバス)組合は組合員投票を行い、22日から全州ストに突入した。非組合員も含め、全労働者が参加し、州内の全校が閉じられた。
 同州の公務員は団体交渉権もスト権も州法で奪われている。「スト参加者は解雇」と言われる中の全州ストは数十年来なかったことだ。NBC、CNNなど全米ネットの各テレビ局がこの闘いを連日大々的に報道した。

現場組合員が決起

 3月1日、州知事は5%賃上げ要求を受け入れ、州下院も承認決議をあげたので3労組指導部はスト終結をはかった。
 だが、集会ではランク&ファイルから次々に「履行される保障はあるのか?」「最後まで闘え」「組合が労働者を売り渡した!」の声が上がり、スト続行が決定された。上院は5%賃上げに反対しており、またそれ以上に大きい公務員健康保険制度の問題が何も決着していなかったからだ。常時「ゴー365」というアプリで健康管理させ、アプリを使わない者の保険料は上げるという案は、究極の管理統制であり、労働者の誇りを奪う。またチャータースクール(公設民営校)の大量増設は公立学校を破壊する大攻撃だ。そして先任権制度(当局・資本の恣意によるレイオフ対象者・復職対象者選定を排除するもの)の廃止は労働組合の生死にかかわる。
 その後、上院も柔軟化したため3組合指導部は妥結しようとしたが、各地区の組合員集会で次々にスト続行が決議された。マリオン郡の教育長は「小さな小学校の普段やさしい先生たちが、100%職場復帰に反対した」「このままでは危機がエスカレートする」と報告した。地域集会の様子が次々と他の地域に伝わり、スト続行決議が全州を覆った。
 3月6日、州側はついに5項目要求すべてを認めた。州議事堂で労働者は「誰が歴史をつくった? われわれが歴史をつくった!」というコールを繰り返した。数十年の労働運動の敗北、変質、大後退をついに逆転した。新たな歴史をつくったという歓喜の爆発だ。

「炭鉱戦争」を継承

 もともとウェストバージニアでは、炭鉱労働組合を軸にしてあらゆる部門の労働運動が強力だった。これが、80年代からの外注化・生産拠点の移転、労組破壊攻撃に対する労働運動指導部の屈服・協力によって弱体化させられた。大量解雇、非正規職化の結果、社会全体が荒廃させられ、貧困率は17%にも達している。教師は全米第3位の低賃金でダブルジョブ、トリプルジョブをしなければ食えない。多くの生徒が家で食事できず、学校で出される朝食・昼食で飢えをしのいでいる。金曜日には、学校から「食料パック」を家に持ち帰る。これは教師がポケットマネーを出し、教会などと協力して地域の募金で運営されている。
 炭鉱では事故が続発した。06年の炭鉱爆発では12人、10年の炭鉱爆発では29人が殺されている。
 08年のリーマン・ショックを受けたオバマ政権の金融資本救済策は、五大湖周辺からウェストバージニア州や近隣諸州に至る労働運動の伝統的な拠点への総攻撃になった。巨大産業と自治体の「倒産」を機に労働協約や年金契約が一挙にキャンセルされた。「働く権利法」という州法が導入され、〈労働組合は労働者の「働く権利」を奪うもの〉という転倒した大キャンペーンが行われ、労働組合の法的権利が破壊された。80年代のレーガン政権下での大後退を上回る既成労組指導部の屈服・後退が強いられた。トランプはこの状況につけこみ、ウェストバージニアでは大統領選挙で68%得票した。
 だが、法的権利がなくても、団結して闘えば道は開ける。もともとウェストバージニアの炭鉱労働者は、労働組合そのものが「違法」とされていた時代に、国家権力、資本、民間労組破壊会社の炭鉱町全体の監視と疑わしい労働者へのテロ・リンチをかいくぐり、極秘裏に巨大な連絡網を作り上げた。そして米史上最大の労働者蜂起=1919〜20年の「炭鉱戦争」を経て、労働者は法的権利を勝ち取ったのだ。今年2〜3月のストライキ集会では、多くの労働者が赤いTシャツや「炭鉱戦争」のシンボルである赤いバンダナを身につけた。「組織し組織し組織し、実力で権利をもぎ取る」という意思を示したのだ。
 触発されて、他産業の労働者の大ストライキが始まっている。オハイオ、ケンタッキー、アリゾナなどでも4月の州丸ごとの学校ストに動いている。地域生活の核である学校から、全社会の革命が始まっている。