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福島 汚染水の海洋投棄許すな 沿岸漁民・漁業に壊滅的打撃 経産省公聴会で怒りが爆発

週刊『前進』04頁(2997号03面01)(2018/12/10)


福島 汚染水の海洋投棄許すな
 沿岸漁民・漁業に壊滅的打撃
 経産省公聴会で怒りが爆発


 2011年3・11大震災から8年近くたつが、福島第一原発の事故対策にとって汚染水問題はいまだ第一級の課題だ。ところが、政府・東京電力は「汚染水を水で薄めて海洋投棄」という許しがたい攻撃に打って出ようとしている。これは、何よりも沿岸漁民に壊滅的打撃を与えるものであり、自らの事故責任を放棄し、汚染水問題をなかったことにする日本と全世界人民への大攻撃だ。汚染水の海洋投棄を絶対に許すな。

「汚染処理」のうそが露呈

 3基の原発がメルトダウンするという人類史上未曽有の大災害となった福島第一原発事故では、メルトダウンした核燃料のかたまりを冷やし続けるために大量の水を注入しているが、原子炉建屋も破損したため多くの地下水が流入し、両方が混じり合って日々大量の汚染水を発生させている。
 東電は、この汚染水に含まれる放射性物質をALPS(アルプス:多核種除去設備)を通してトリチウム(三重水素:図参照)だけにして、それを汚染水タンクにため続けていると称してきた。ところがその汚染水タンクの増設が不可能になってきたとして、経産省の小委員会が主催する公聴会を8月下旬にアリバイ的に開催し、「民意を聞いた」として早ければ今年度中にも海洋投棄を決定しようとしてきた。
 だが、公聴会直前の8月20日付、21日付の新聞各紙で「ALPS処理済みの汚染水にはトリチウムだけでなく、さまざまな放射性物質が法定基準以上残っていることを東電が認めた」という報道が行われた。
 これはこれまで政府・東電・原子力規制委員会が言ってきた「ALPS処理水はトリチウムだけで汚染水ではない」という前提が崩れたということだ。トリチウムだけでも問題なのに、ストロンチウム90、ヨウ素129、ルビジウム106などの放射性物質が残存していたという。
 原子力規制委の更田(ふけた)豊志委員長は今年1月から福島県内の各自治体を訪問し、「海洋放出が唯一の解決策」などと強弁して回り、汚染水海洋投棄の旗振り役を買って出た。それだけでも許しがたいが、トリチウム以外の放射性物質が残存しているとの報道があった直後の8月22日にも「トリチウム以外も希釈して放出すればよい」などと述べた。
 更田・規制委はまさに原子力村への「寄生」委員会に成り下がっている。打倒あるのみだ。

福島県の海が無くなる

 このような事態を受けて8月30日福島県富岡町、31日郡山市と東京で開かれた公聴会は、漁民を先頭に公述人や傍聴者が「まただまされた」と経産省の事務局や委員を問い詰める激しい怒りの場となった。
 とりわけ試験操業を行っている漁民からは「福島県の海に放出することは絶対に反対」「海を目の前にして自分の判断で海に行って魚が捕れない。この苦しさが分かるか」「勘違いしてもらっては困る。補償金を欲しくてやっているのではない」「福島県の海が無くなる」「補償金欲しくてはんこ押すことはあり得ない」と心の底からの怒りの糾弾があった。

これ以上放射能バラマキ許さぬ

 公述人の政府への批判に通底するものは何か。それは、「他の国でもトリチウムは放出している」だとか「今まで日本の原発でもトリチウムは放出してきたから」とか「基準を守りさえすればいい」という国と東電の姿勢への根本的な批判である。
 そもそも人類史上未曽有の大事故を起こし、政府が認めただけでも広島原爆約168発分のセシウム137(実際はこれをはるかに上回る)や、それ以外の放射性物質も大量に放出し、福島と全世界の人民に取り返しのつかない多大な被害をもたらしておきながら、それへの反省もなしにさらに際限なく放射性物質を地球環境に放出しようという無責任な姿勢への根源的な批判である。
 さらに、日本という国家のこのようなあり方を許せば、また再び福島第一原発事故と同じ、いやそれをも上回る大事故を引き起こしかねない、自分たちの子孫に対する責任において絶対に許してはならないという強烈な使命感である。
 これ以上いかに微量であっても放射性物質を環境にばらまくことは許されない。国家、資本の論理ではなく、労働者の自主管理によってしか被曝を最小限に抑え、全原発廃炉を実現していくことはできない。

トリチウム安全説も崩壊

 公聴会では、「トリチウムだけならば安全」という政府の見解への根底的批判も口々に出された。政府・規制委はトリチウム水は化学的には単なる水で体内に取り込まれてもすぐに排出され、毒性は弱いと言ってきたが、「有機トリチウム」は他の放射性物質よりも毒性が強い。この点の暴露が何人もの専門家からなされた(図の解説参照)。
 沸騰水型原子炉と違って加圧水型はトリチウムの放出量が1桁多い。加圧水型の北海道電力の泊(とまり)原発付近ではがんの死亡率が高く、九州電力の玄海原発直近では白血病死が多発している。桁違いのトリチウムを放出しているフランスのラアーグ、イギリスのセラフィールドの両再処理施設周辺でのがんの増加、重水炉を採用しているカナダでトリチウム被害が社会問題になっていることなども暴露された。
 さらに青森県六ケ所村の再処理工場から大量のトリチウムが放出されていることも地域住民から告発され、トリチウムの健康被害についての政府側の見解が完膚なきまでに粉砕される場となった。
 ところが国際原子力機関(IAEA)代表が来日し、11月13日には汚染水問題について「迅速に決定すべきだ」と海洋放出を促し、それを受け、読売新聞は、「福島原発処理水 IAEA報告は的を射ている」(11月18日付社説)などと、汚染水の海洋投棄をあおっている。
 一切の反動を許さず、汚染水の海洋放出を絶対に阻止しよう。

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トリチウム(三重水素)と有機トリチウム
水素原子は通常は、陽子だけで原子核を構成し、中性子を持たない。通常の水素原子(軽水素)が中性子を1個吸収すると重水素になる。さらに、重水素が中性子を1個吸収すると三重水素(トリチウム)となる。軽水素や重水素は安定しているが、トリチウムは不安定でベータ線を発してヘリウムに変化する放射性物質だ。トリチウムは化学的には水素そのもので大多数はトリチウム水として存在し、植物の光合成でデンプン内の有機トリチウムになる。有機トリチウムは人間がデンプンを摂取することで、体内のDNAやタンパク質の一部となる。DNAを構成するトリチウムがヘリウムになれば、ただちにDNAは破壊される。