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フランスで噴出する労働者人民の怒り

週刊『前進』04頁(3006号02面03)(2019/01/28)


フランスで噴出する労働者人民の怒り

(写真 フランス各地で行われた第10回行動【1月19日 ボルドー】)

マクロン辞任求める「黄色いベスト」運動

政権との非和解性がより鮮明に

 燃料税の引き上げを契機に昨年11月からフランス全土で闘われている「ジレジョーヌ」(黄色いベスト)運動は、年明けも不屈に続けられている。1月5日には全国で5万人、12日は8万2千人、10回目となった19日は8万4千人と、参加者は増え続けている。
 マクロン大統領は12月10日、一部の増税凍結や月額100ユーロ(約1万3千円)の最低賃金引き上げを表明したが、労働者人民が求めてきた富裕税の復活は拒否。大みそかのテレビ演説では、立ち上がった人々を「憎悪に満ちた群衆」と呼ぶなど敵意をむき出しにした。さらに公的支出の増額は解決にならないと述べ、「貧困は生き方の問題」「現実を受け入れろ」と居丈高に述べた。
 さらに政府は年明けに、デモへの取り締まり強化を発表。参加者への放水銃や催涙弾、火炎弾、ゴム弾などによる殺人的な攻撃をエスカレートさせている。
 マクロンは1月中旬から各地で自治体首長を集め、「税制、国家機構、民主主義、市民権」の四つのテーマについての国民討論会を始めたが、労働者人民の怒りは募るばかりだ。ジレジョーヌの参加者たちは、公共事業の拡充やマクロンの辞任とあわせて立法や法律の撤回、憲法改正、大統領を含めた全議員の罷免(ひめん)を可能にする国民投票を要求している。

地方切り捨てと社会崩壊が進行

 パリからたった百数十`離れるだけで、そこには華やかなパリとは全く違う、「もう一つのフランス」がある。労働者人民の積もりに積もった怒りは地方でこそ噴き出し、闘いが日常になりつつある。
 「鉄道は1970年に廃線になり、車なしには生活できない」「スクールバスが唯一の公共交通機関」「村の公共施設は役場だけだが、週2日しか開かない」----これが地方の現実だ。「地方分権化」の名の下に政府が進めてきたことは、地方の切り捨てに他ならなかった。新自由主義の下で都市と地方の格差は極限まで拡大し、地方の郵便局、医療施設、産院といった公共機関は次々と閉鎖され、人々は生きるすべと尊厳を奪われてきた。一貫して企業の利害を代弁してきたマクロンは、この現実にいっそう拍車をかけた。
 今や黄色いベストは緊縮財政政策や既存の体制に対する反逆のシンボルとなり、運動はEU(欧州連合)全域に拡大している。そしてこの闘いは、大資本と富裕層への救済・減税、軍拡、戦争を推し進め、それらと引き換えに子どもたちから教育を奪ってきた新自由主義にノーを突きつけた米UTLA(ロサンゼルス統一教組)の大ストライキともつながっている。
 労働組合の下に団結した闘いこそが、社会を崩壊させた新自由主義を打倒する力だ。ジレジョーヌ運動は体制内化した既成の労働組合運動への不信から直接民主主義を要求する「指導者のいない運動」となっているが、この現状を打破しようとするSUD(連帯労組)が運動との結合を追求している。フランスの労働者人民と連帯し、階級的労働運動の再生へ闘おう。

「ゴーン逮捕は当然」ルノー労働者は語る

 日産自動車、三菱自動車工業の前会長カルロス・ゴーンへの怒りは、フランス・ルノーの労働者も変わらない。1月20日付毎日新聞は、ルノー・フラン工場の労働者への取材記事を掲載した。以下紹介する。

ずっと刑務所に入っていてくれ

 「ずっと刑務所に入っていてほしい。逮捕されて当然だ」。「コストカッター」の異名を取るゴーンが断行したリストラに対して、生産現場には強い怒りの声があふれていた。ゴーンはルノーの指揮を執るようになった2005年以降、人員削減を徹底。パリから北西へ約20`のフラン工場でも、50代の労働者は冒頭の言葉に加え、ゴーンを「泥棒」と言い切った。46歳の労働者も「従業員は皆うんざりしていた。よく今まで逮捕されなかったと思う」と話した。
 ゴーンは日産やルノー、ロシアやルーマニアの傘下メーカーの経営再建でも人員削減を進めた。フラン工場でも労働者の半数近くが1〜3カ月未満の短期雇用労働者になった。労働組合代表は「明日になったらプジョーで働く者もいる。ルノーの車を造ることに誇りを持つ者がいなくなった」と嘆き、「ゴーンは世界中の労働者の敵だ」と語気を荒らげた。
 ゴーンは昨年10月、「仕事をすることが重要なのではない。生産性を上げることが重要なのだ」と訓示した。工場では「生産性の向上」という言葉が説法のように唱えられている。労働環境は過酷さを増したが、移民労働者が多いため、滞在許可の取り消しを恐れて労働条件の改善を口にできる雰囲気にはない。早朝の勤務シフトは午前5時に始まり、午後1時までトイレ休憩の2回を除いて持ち場を離れることが禁止され、トイレを我慢できずに泣き出す者もいる。組み立てラインの担当者は「ノルマ達成のために労働者同士の競争も求められる。単純労働を長時間繰り返すことで、心身に不調をきたす者も少なくない」と訴えた。
 怒りの矛先はルノー筆頭株主のフランス政府にも向かう。労働者の事務所には政府を批判する掲示物が大量に張られ、反政府デモで身にまとう黄色いベストも散在していた。デモに参加した46歳の男性は「ゴーンにもマクロン(大統領)にも怒りしかない」と話した。ルノー労組の代表は「政府が興味を持っているのは株主配当だけ。従業員には目も向けない。(ゴーンは)従業員を減らし、給料を減らし、我々の健康まで傷つけた」と怒りをあらわにした。

政府倒すストやデモを日本でも

 これが資本主義の本性であり、資本と政府への怒りは日本の労働者も同じだ。「経営再建」と称して、日産自動車グループだけで4万1千人に及ぶ労働者の首を切ってぼろもうけし、その金をわがものとしてきたのがゴーンを筆頭とする経営者たちだ。そうした強欲・極悪の資本家たちの政府がマクロン政権であり、安倍政権である。
 ゴーンは1999年の日産の最高執行責任者(COO)への就任以降、退任後受け取れるように隠した金額も含め毎年20億円に上る報酬を得てきた。それ以外にも数十億円を私的に流用し、失敗した投機の穴埋めにあてたり、世界各地に別宅などの不動産を取得したりして蓄財してきた。全てが労働者から搾り取った利潤の分け前だ。09年リーマン・ショック後の大リストラで首を切られた派遣社員と期間工は「我々の生活を犠牲にして(巨額の報酬を)得ていたのか」「(解雇後)年収200万円にも満たなくなり、苦しい10年を過ごしてきた」と怒りの声を上げた。労働組合に結集し、解雇撤回を求めて闘っている。
 年俸20億円超と年収200万円以下----資本主義のこの許しがたい階級的搾取構造をひっくり返すストライキとデモを、フランス、アメリカ、韓国に続き、日本で実現しよう。