2008年3月31日

米経済が金融恐慌に突入

週刊『前進』06頁(2337号5面1)(2008/03/31)
 

米経済が金融恐慌に突入
 信用収縮で大手証券破綻
 ドル暴落も始まった! 最末期帝国主義打倒へ
 島崎光晴

 3月半ば、米大手証券のベアー・スターンズが実質的に経営破綻(はたん)した。米住宅バブル崩壊はついに、アメリカ金融恐慌という段階に至った。同時に、ドル暴落が本格的に始まっている。基軸国である米帝の金融恐慌とドル暴落は、世界金融大恐慌をいよいよ現実化させる。そういう重大情勢に入った。プロレタリア世界革命を達成する時が真にやってきたのだ。階級的労働運動で帝国主義を打倒しよう。7月洞爺湖サミット粉砕へ総決起しよう。

 第1章 信用市場がメルトダウン 優良ローン証券も危機に

 3月半ば、米証券会社で第5位の規模を持つベアー・スターンズが実質的に経営破綻した。ベアーは住宅ローンの証券化業務では業界トップクラスであり、影響を最も受けた。
 3月11日には手元資金が約350億㌦(約3・5兆円)もあったが、13日にはほぼ底をついた。大手銀行がベアーから融資を一斉に引き揚げるとともに、顧客が預けている資産を一気に引き出したためだ。銀行による貸しはがしと「取り付け」が同時に起こったのだ。
 しかも、ベアーはファニーメイなどの住宅公社が保証をつけた住宅ローン担保証券などを担保にして短期資金を調達していた。米国債を含め優良な証券・債券を担保に短期資金を調達する仕組みで「レポ取引」と言われる。しかし、その優良な住宅ローン担保証券も暴落したものだから(後述)、この資金繰りができなくなった。
 債務担保証券=CDOなどを担保にした手形=コマーシャルペーパーによる短期資金の調達は昨夏に崩壊していたが、より優良な資産を担保にした短期資金の調達もできなくなったのだ。「信用市場のメルトダウン(炉心溶解)」と言われるほど深刻な信用収縮に陥った。この時点でベアーは実質的に経営破綻した。これは金融恐慌そのものだ。97~98年の日本の金融恐慌と比べても、破綻に至るテンポは早く、破綻の規模も大きい。
 これに対し14日、ニューヨーク連銀が米大手銀行JPモルガン・チェースを通じて、ベアーに緊急融資する計画を発表した。市場に大量の資金供給もした。
 しかし、それでも危機は収まらず、ベアーの取引先の連鎖破綻が起きそうになった。そこで大慌てで16日、JPモルガン・チェースがベアーの買収を発表、ひとまず連鎖破綻を食い止めた。さらにFRB(連邦準備制度理事会)はベアーへの直接融資に踏み切った。
 米金融危機の噴出は昨年8~9月、年末に続き3回目。ついに大手証券の経営破綻に至った。いまやどれほど優良な住宅ローン担保証券を持っていても、その価格暴落と資金繰り難から、あっというまに経営破綻する。
 ベアーだけでなく米大手金融機関すべてが同じ状況だ。現にリーマン・ブラザーズは破綻の恐れから、18日には株価が一時48%安まで売られた。「第2、第3のベアー」は必至である。アメリカ金融恐慌が音をたてて進み始めたのだ。

 第1節 プライムでも差し押さえ増

 ベアー・スターンズ破綻の背景には、3つの重大事態がある。第1は、住宅ローン返済の焦げつきと住宅の差し押さえが、サブプライムローン(低所得者向け高金利型住宅ローン)だけでなく、プライム(最優良)ローンにも広がっている。昨年1年間の差し押さえは前年比79%増の220万件にもなった。
 10~12月期の差し押さえの内訳をみると、サブプライム54%に対しプライムが38%にも上った。米住宅ローンの総額は約10兆㌦(約1千兆円)。プライムローンを含めて、これらが次々に焦げついていく局面が始まっているのだ。
 第2に、この影響で3月に入って、サブプライム関連の住宅ローン担保証券だけでなく、優良とされてきた住宅ローン担保証券も価格が暴落し始めた。住宅公社ファニーメイ保証の住宅ローン担保証券は、実質的な政府保証とみなされて信用が厚かったが、それすらも投げ売りされるまでになった。元本の40%にまで下落する例も出てきている。単なる「サブプライム危機」ではなくなったのだ。
 サブプライムローン残高は1・5兆㌦(約150兆円)で、うち約8割が証券化されている。しかし、優良なローンを含めると住宅ローン10兆㌦のうち7・2兆㌦(約720兆円)もが証券化されている。このとてつもない額の証券化商品全体が暴落する過程が始まったのだ。

 第2節 ファンド勢が優良証券売り

 第3に、大手金融機関の貸し渋りが、優良な住宅ローン担保証券の暴落に拍車をかけている。
 大手金融機関は、保有する住宅ローン担保証券、あるいはその再証券化商品(CDO)の価値の暴落により、巨額の評価損をこうむっている。米大手銀行・証券・保険の計10社のサブプライム関連損失はすでに1千億㌦(約10兆円)を超えた。損失を処理しても新しい不良証券が次々に生まれている。企業向け融資でも損失が激増中だ。IMF(国際通貨基金)の試算では、金融危機の深刻化による関連損失は約8千億㌦(約80兆円)に拡大する。
 サブプライム関連の損失で窮地に陥った米金融機関は、さまざまなファンドへの融資を絞り、さらには融資の返済を求め始めた。貸し渋り、貸しはがしは何よりも、ヘッジファンドなどの投資ファンドに対して起きている。このためファンド側は、換金性の高い優良な住宅ローン担保証券を売って返済せざるをえなくなっている。だから、優良な住宅ローン担保証券までもが暴落するに至ったのだ。
 以上、プライムローンの焦げつき・差し押さえの拡大、銀行の貸し渋り・貸しはがし、優良な住宅ローン担保証券の暴落、これらによる信用収縮の深まり――こうした新局面の中でついに大手証券が破綻し、金融恐慌に突入したのだ。

 第2章 米帝の金融的延命が崩壊 恐慌対策がインフレ加速

 米金融恐慌の始まりと同時に、ドル暴落も始まっている。3月半ばには、95年以来1㌦=100円の大台を突破してドルは全面安となった。従来の円高・ドル安は、米帝が対日貿易赤字を減らすために自らドル安を誘導した結果だった。しかし今回は、米金融恐慌を震源にドルへの信認が崩れていることによる。
 米帝は95年以来、「強いドル」政策を取ってきた。世界の余剰マネーを米資産の購入に向かわせ、そうやって米国に流入した資金を米金融市場で増殖しつつ、それを再び世界に投資する構図だった。
 90年代後半は、米株高により米株式市場に国外資金を引き寄せた。そのIT(情報技術)バブルが崩壊した後は、特に03年以降、国外資金の対米流入は証券化商品の購入という形をとった。ハイリスク・ハイリターンのサブプライム関連の証券化商品が、世界から資金を集める象徴となっていた。
 米への資金流入は、何かの米資産が値上がりし続けるという大勢の中で、初めて成り立っていたにすぎない。それが崩れたのだ。
 これは単にドル暴落と米金融危機を促進するだけではない。米帝の帝国主義としての根幹を瓦解(がかい)させるものだ。米帝は、74~75年恐慌以降、製造業での国際競争力の低下を巻き返すこともできないまま、主に金融大国として延命しようとしてきた。そのために90年代半ばから「強いドル」政策を採用し、ITをもっぱら金融技術として使ってきた。しかし、そうした金融大国としての延命策も吹っ飛んだのだ。米帝の没落は新段階を迎えた。
 米帝を初め帝国主義は、74~75年恐慌で世界的な過剰資本・過剰生産力に陥って以降、実に30年以上にもわたってマネーゲームにひたり、バブルを繰り返して生き延びてきた。世界の金融資産総額は140兆㌦、約1京4千兆円(06年末)にも上る。「京(けい)」という単位になるのはこの金融資産額くらいだ。
 しかし、金融投機で30年以上も生き延びてきた帝国主義も、ついに終わりを迎えた。こういう延命だったからこそ、積もりに積もった矛盾が今や世界金融大恐慌として爆発しているのだ。こんな帝国主義は一刻も早く打倒する以外にない。

 第1節 供給資金は商品市場に流入

 米帝はすでに恐慌対策を発動し始めている。FRBは市場に大量の資金を供給し、政策金利も物価上昇率を差し引いた実質ではゼロに引き下げた。しかし、どんな対策をとってもバブル崩壊を途中で食い止めることは絶対にできない。
 むしろこの間はっきりしたのは、恐慌対策がインフレ促進という逆効果を及ぼしている。市場への資金供給や金利引き下げは、投資マネーを増幅し、商品市場に流入させる結果になっている。原油や穀物などの商品価格が高騰し、インフレが加速しつつある。
 金融恐慌とインフレの同時進行というのは、本来ありえない。しかし、何十年も実体経済とかけ離れて金融を肥大化させてきた結果、金融がコントロールできない。自業自得だ。しかも、米金融市場を国際的な商品市場とリンクさせてきたため、米金融市場に資金を投入しているつもりでも、国際商品市場に資金が移動してしまう。これも金融の国際化の結果であり、自業自得だ。
 米金融の自由化・国際化に手を染めてきた新自由主義者どもは、この危機に震えあがるがいい! マネーの世界で生き延びてきた資本家連中は、そのマネーの世界で恐るべき報復を受けつつある。こうした事態をも含め世界金融大恐慌なのだ。
 米帝がどんなにあがいても、すでに米金融恐慌が始まり、世界金融大恐慌はいよいよ現実化していく。ドル暴落と米帝の一層の没落は、世界経済の分裂とブロック化、そして帝国主義間争闘戦をまったく新しい次元にエスカレートさせる。本当に1930年代から第2次大戦に至るような帝国主義の激突と戦争の時代が現実になるのだ。
 同時に、帝国主義は労働者の搾取・収奪・分断と労働組合破壊攻撃を強め、労働者をますます生きられない状況に追いこむ。革命的情勢がいよいよ急接近するのだ。

 第2節 7月サミット粉砕決戦へ!

 腐朽し世界戦争に転落していく帝国主義を、プロレタリア世界革命で打倒しよう。3・16闘争の地平を発展させ、帝国主義の洞爺湖サミットを労働運動の力で粉砕しよう。帝国主義強盗どもの集まりに対し、全世界の労働者の怒りをたたきつけるのだ。何よりも階級的労働運動の実践ですべてをこじ開けよう。