2008年7月 7日

マルクス主義は労働者の理論

週刊『前進』08頁(2350号4面3)(2008/07/07)

マルクス主義は労働者の理論

 小林多喜二『蟹工船』が大ブームだ。新潮文庫版の増刷部数は今年6月までに35万7千部に上り、例年の70倍のペースという。
 新潮社によると、購読者層は10〜20代が30%、30〜40代が45%と、若者や働き盛り世代が7割以上を占めるという。マンガ版も出版され、ネットで小説もマンガ版も公開されている。おそらく百万人単位で青年労働者が読んでいるのではないか。
 『蟹工船』は過酷な労働で虐げられる労働者が最後は団結してストライキに立ち上がるまでを描く。1929年に発表されたプロレタリア文学の代表作だ。多喜二はその後31年に非合法の日本共産党に入党、33年に特高警察に逮捕され、拷問によって虐殺された。
 なぜいま『蟹工船』なのか。『蟹工船』現象とは何か。
 少し前までは凄惨(せいさん)な弾圧と悲劇的な労働者の決起の物語として読まれてきた。かつては多喜二の最期と重ねて読んで、ある種の悲壮感を持って革命運動を決意した。今どきの若者には通用しない時代遅れの小説というのが多くの人の評価ではないか。
 今は違う。百万人単位の青年労働者が『蟹工船』を読み、自分たちの現実そのものだ、と感じている。
 90年代のバブル崩壊以降、小泉政権の新自由主義的構造改革を経て、戦後的社会は一挙的に崩壊した。高校や大学を卒業しても就職先は派遣会社、2人に1人が一生時給いくらの非正規雇用。職場でも学校でも出口が見えない。そんな中で若者が『蟹工船』をむさぼり読んでいる。
 若者が『蟹工船』に強く共鳴していることに体制側が底知れぬ恐怖を感じていることは間違いない。戦後的社会が崩壊し始めた90年代以降に社会に出た世代の持つ感覚、感情を象徴的に示しているのが『蟹工船』ブームであり、この世代の絶望感と閉塞(へいそく)感を示しているのが秋葉原事件ではないのか。
●労働者の理論
 『蟹工船』が大きな共感を伴って団結の書として読まれているのだ。百万人単位の青年労働者・学生が団結の中に希望を見ている。そんな労働者・学生にマルクスの『共産党宣言』を読むことを勧めたい。
 自らの境遇と重なる『蟹工船』こそ、現代の資本主義がもたらす典型的現実であること、しかし、労働者はこの社会の真の主人公であり、労働者階級が資本主義を覆す墓掘り人であることがマルクスの『共産党宣言』には書いてある。
 マルクス主義こそ労働者の理論である。これまでの階級社会の歴史で理論や思想はすべて支配階級の独占物だった。だが資本主義の時代に入って、被支配階級でありながら労働者階級は自分の理論を持った。それがマルクス主義だ。
 被支配階級でありながら支配階級になる意志と能力がある階級——それが労働者階級だ。労働者が支配階級の思想を拒否して、自分の理論を持ったら世の中をひっくり返せるのだ。労働者とはどんな存在なのか……それを指し示すのがマルクス主義なのだ。
 『蟹工船』と同じように、すべての労働者が働く現場では、工場や機械、原材料などを社会的に独占している一握りの資本家が多数の労働者を雇い入れ、その労働によって生産を行い、ボロもうけしている。
 しかし、実際には、そんな資本主義を支えているのは労働者なのだ。ところが、その労働者が社会の主人公ではなく、資本の支配のもとでモノ扱いされ、過酷な搾取を受けているのである。
 『蟹工船』の労働者のように、労働者階級が自らの置かれた現実を拒否し、職場の壁を超えて労働者階級として団結し、資本主義を粉砕するのが革命だ。それが『共産党宣言』の結論だ。
動労千葉の闘い
 動労千葉は、80年代の国鉄分割・民営化攻撃に対し、わずか千人余りの組合で単身ストで闘った。「ストをやれば勝利だ! クビになればなお勝利だ」の精神で闘った。指導部を先頭に全組合員がそう決起した。
 確かに国家の全体重をかけた攻撃に対し千人余りの組合で闘うことは一見無謀にも見える。だが動労千葉は渾身(こんしん)の蜂起で全国鉄労働者に決起を呼びかけた。動労カクマルを打倒し、国労を獲得し、日本の労働運動の主流となる展望をもって、闘いに挑んだのだ。労働者階級の革命性に圧倒的な確信を持って闘ったのだ。それが動労千葉労働運動であり、マルクス主義なのだ。
 マル青労同、マル学同はこの精神で闘っている。法大闘争は「逮捕されたら勝利」の精神で闘い抜かれている。マル青労同の職場闘争も「弾圧はチャンス」の気概で闘われている。なぜそのように闘えるのか。
 「敵をハッキリさせて、仲間をつくる。それが『蟹工船』を読んた私たちのすること」「逮捕されてクビになるかも。でも、私が仲間になりたいのはあなたなんだ。絶対にあなたと団結できる」「全世界の労働者が隣にいるぞ。世界を変えるぞ。枠がとれた。最初から『世界革命やろう』と言えばいい」
 こう言えるのはマル青労同・マル学同が数千万の青年労働者・学生の存在そのものだからである。逆に数千万の青年労働者・学生はマル青労同・マル学同そのものなのだ。逮捕・解雇を恐れず職場闘争・街頭闘争を闘い抜き、隣の労働者・学生と本気で一緒に仲間になることにすべてをかける。団結した労働者は必ず勝利するし、労働者は必ず団結できるのだ。これがマルクス主義だ。
 労働者階級が、マルクス主義を労働者の理論として獲得した瞬間に革命ができるのだ。労働者を蔑視(べっし)したり、軽視する思想を一掃すれば労働者は必ず勝利できる。『蟹工船』を読んだ学生、青年労働者の仲間のみなさん、マルクス主義を労働者の理論として、革命を目指す同志としてともに闘おう。