2008年11月 3日

京品ホテル 労働者が自主営業 一方的解雇通告に怒り

週刊『前進』08頁(2366号2面2)(2008/11/03)

京品ホテル 労働者が自主営業
 一方的解雇通告に怒り 職場は自分たちのもの

 東京・品川駅前で明治期から営業する「京品ホテル」の労働者の闘いが注目を集めている。
 ホテル本体とその飲食店4店の130人の従業員は、「経営悪化による廃業」により10月20日付けで全員解雇された。労働者と労働組合が選んだ道は、「自主営業」でホテルを続けることだった。長年携わった自分の仕事を、会社の一方的な都合でつぶされてたまるか——という怒りだ。
 記者は10月29日、同ホテルを訪ねた。JR品川駅高輪口改札の正面だ。建物前の歩道では厨房の仕事着姿などの労働者がビラを配り、ホテル存続の署名を呼びかけていた。壁には全国の労組からの檄布(げきふ)が掲げられている(写真)。組合員から話を聞いた。
 「組合を結成し5月の連休明けの最初の交渉で廃業を一方的に伝えられた。『昨日売買契約がまとまった。みなさんには10月20日でやめてもらう』と。リーマン・ブラザーズの日本の子会社サンライズ・ファイナンスが債権を買い集めて、ホテル廃業、従業員全員解雇、土地と建物だけにして寄こせ、という売買契約を結んだ。ホテルは昨年は経常利益1億円の黒字だが、社長が手を染めてきた事業の失敗で借金60億円。これで解雇など絶対に認められない」
 テレビニュースでは、その小林誠社長が組合との団体交渉で労働者を見下し自らの放漫経営を居直る姿が放映された。
 「実物も見たとおりのワンマンぶりですよ(笑)。自分で週に3回築地に行って使い切れない大量の食材を勝手に仕入れて、結局廃棄するしかなかったり。われわれが自主運営を決めて周りの業者さんらに理解を求めた時、電話をかけて妨害したのも社長だ」
 ホテルの自主運営方針は、「10月20日廃業」という期限が迫る中で組合での話し合いによって決められた。市場の仕入れ先など周囲の理解は欠かせなかった。21日から労働者自身の手でこれまでと同じホテル営業が続けられ、飲食店も開いている。遠くから支援として食べに来る人も多い。
 契約ではホテルを債権者のサンライズに引き渡す期限は10月末日。資金回収をあせるハゲタカ・ファンドによる土地・建物引き渡しの催促が強まることが予想され、緊張が高まっている。ホテル存続を求める署名はすでに3千筆以上が寄せられ、支援集会が何度もこの場所で開かれているが、「相手が強制執行でやってくる可能性も否定はできない」という。
 だが組合員からは「解雇には徹底抗戦」「職場は自分たちのもの」という気概と自負がひしひしと伝わってきた。
 「ここの仕事を回していたのは自分たちだから、社長がいなくても困りませんね」と笑った。
 そのとおりだ。労働者が職場を握り生産と流通を管理すれば、社長や資本家がいなくても社会を運営できる。小さくてもその生きた見本がここにあることを実感した。
 (本紙・石井良久)