2008年11月24日

世界は☆革命情勢 ヨーロッパで闘いが爆発 鉄道・教育労働者、学生が最前線に/『資本論』売り切れ

週刊『前進』06頁(2369号4面3)(2008/11/24)

世界は☆革命情勢 大恐慌にヨーロッパで闘いが爆発
 鉄道握り社会止めるスト
 鉄道・教育労働者、学生が最前線に/『資本論』が売り切れ、゛階級闘争を!”

 米国発の金融大恐慌が猛威を振るう欧州で労働者階級のストライキが再びの高揚局面に入っている。鉄道と教育労働者、学生の闘いが顕著だ。

 第1章 フランス

 パリで11月13日、約2万人の鉄道労働者がEU(欧州連合)の鉄道民営化政策に反対してデモを行った。EUの鉄道民営化は、すでに貨物輸送から始まり2010年までに国際旅客輸送にまで広げられる。デモには15カ国以上の鉄道労働者が集まり、民営化による労働条件や生活条件の低下に抗議した。横断幕には「鉄道民営化にノー」というスローガンが仏英独語で掲げられた。
 英RMT(鉄道・海運・運輸労組)の労働者は「サッチャーによって開始された英国の鉄道民営化は、公共サービスにおける質や安全面を悲惨なものにした。1996年に英国が犯した誤りをくり返すな」と語った。仏CGT(労働総同盟)鉄道部門の労働者も「鉄道民営化は安全輸送義務を無にしかねない」と危惧する。
 11月5〜7日にはフランス全土で鉄道ストが行われた。今回は貨物部門の労働条件の改悪に反対するもの。貨物と旅客の運転士がともに決起した。ストは6日午前8時から24時間の計画だったが、実際にはスト準備として5日晩から前倒しで突入。事実上36時間ストとなった。運転士の55%以上がストに参加した。TGV(新幹線)の3分の2がストップ。地方の急行列車やパリ市街の鉄道なども2分の1から3分の1が止まった。
 ストに入った運転士たちは、貨物の労働時間の改悪に反対している。当局は、夜間の最大労働時間を現行の6時間から最大7時間半まで延長しようとしている。組合は「夜間における7時間半もの運転は労働者の肉体的限界を超え、安全を脅かす」と指摘している。
 国鉄総裁は「私鉄と同じくらい能率よく働き、競争力をもつことが大切だ」と公言する。当局は、組合側との交渉が不調に終わり、自発的協力者(裏切り者)を募った。当局によれば800人が新しい労働条件に応じた。分断・切り崩し攻撃だ。フランス国鉄は約16万が働く。運転士は1万6千人、うち4千人余が貨物だ。
 国鉄当局は赤字の貨物輸送部門の再建を目標の一つにしている。規制緩和・市場開放政策で貨物輸送部門を国際的な民間資本との競争に投げ込む。労働強化で生産性を上げ、赤字を解消しようというのだ。

 第2章 ドイツ

 ドイツで11月12日、ついに全国学生ゼネストが敢行された。大学生だけでなく小中高校生も一斉決起した。学校当局による処分の脅しを振り切っての大反乱だ。教育労働者や保護者も合流。参加者は40都市で実に10万人に上る。
 首都ベルリンでは数千人のデモ隊がベルリン大学を包囲、数百人が大学に突入して占拠、2階バルコニーとキャンパスを結ぶ大集会を実現した。
 学生らの要求は、教育予算の増額、1クラスあたりの生徒数削減、正規教員の増員、授業料の低減・教育の無料化など。
 「競争社会・蹴落としあい反対」「銀行ではなく教育に金を」などに加えて、「階級闘争を」「資本主義を廃止しよう」というプラカードも見られた。新自由主義のもとで進行する公教育の解体と教育の民営化に怒りが爆発している。「大学で『資本論』を読もう」というユニークなスローガンもあった。
 デモに参加した高校生は「すべての大学・高校がストをやるべきなのよ。先生と生徒が一緒になってね」「銀行に大金を投入し、国の未来を担う俺たちには一文も出さない。許せない」「ストだけじゃ解決しない。大学や学校を占拠するくらいしなきゃ」と語る。
 スペインで13日、イタリアでは14日、それぞれ数十万人の大学生・高校生のゼネスト的闘いが起きている。1968年の国際的な学生大反乱のような事態が予感される。労働者階級の「生きさせろ!ゼネスト」と一体であり、世界革命を急速にたぐり寄せる。

 第3章 イタリア

 イタリアで10月30日、再びゼネストが打ち抜かれた。17日に続くもの。教育労働者数十万人が参加した。前日29日の教育改悪案可決に反撃するものだ。政府は、国立大学の民営化や3年間で教職員13万人以上の解雇、教育予算7%削減などを狙う。この非常事態に圧倒的な教育労働者が決起、学校の9割以上が閉鎖になった。ローマのデモには、労働者や学生が全土から貸し切りバスや特別列車で乗り込んだ。ストとデモで都市機能が停止した。
 ベルルスコーニ右派政権は、上下両院で圧倒的多数を確保している。だが、労働者が職場・生産点でストに決起した時、権力者にはなす術がないことが明らかになった。法案は上下両院を通過したものの、政権は完全に危機に陥った。ローマでは極右がデモ隊に鉄パイプで襲いかかった。だが分厚い隊列に阻まれ、素手で応戦した労働者や学生によってたたき出された。

 第4章 ギリシャ

 ギリシャでも大規模なデモとストが闘われている。10月21日のストには200万人、全労働者の3分の1が参加した。ギリシャの人口は1065万人で文字どおりのゼネスト。公共交通は完全に止まり、経済活動はほとんどストップした。ギリシャでは2週間前の10月8日にも国営オリンピック航空の民営化や生活費の高騰に抗議して10万人が24時間の全国ストを打ち抜いたばかり。

 第5章 世界は革命情勢

 世界大恐慌情勢の中で、欧州鉄道労働者のストとデモは、鉄道民営化攻撃への大きな反撃となった。欧州各国の国鉄は、運輸交通網の中で依然として大きな比重を占める。鉄道労働者のストライキは数百万、数千万人の労働者の出勤を止め、社会全体をストップさせる力を持っている。欧州の鉄道は国境を越えてつながっており、一国のストが周辺国の貨物・旅客に影響を与える。
 各国の国鉄労働運動は、欧州労働運動の戦略的拠点、根幹を形成している。鉄道という社会で最重要の基幹産業を労働者が掌握する闘いとして欧州のスト情勢が急展開しているのだ。
 昨年来の欧州鉄道労働者のストライキの継続と発展は「労働者こそ社会の主人公」「労働者こそが世の中を変革する力を持つ」という見地から見た時、とてつもない意義を有している。
 攻防の核心は、労働組合の破壊だ。組合員の切り崩し工作との闘いが焦点となっている。今回の全国ストは、世界大恐慌情勢で危機に陥るサルコジ政権への強力な打撃となった。
 学生や教育労働者の闘いは歴史を画する新局面を迎えた。独伊などでは学生運動に火が付いた。書店ではマルクス『資本論』が飛ぶように売れ、大学で読書会が行われている。「階級闘争を」「資本主義を廃止しよう」など、スローガンも歴然と変わった。デモも戦闘的だ。警官隊と激しく衝突している。
 各国のデモは1930年代におけるナチスとの街頭戦を想起させる様相だ。極右やファシスト勢力の白色テロと対決して、欧州の労働者階級は革命の力量を蓄えつつある。