2008年11月24日

田母神前空幕長の開き直り許すな 侵略戦争史正当化を図る反革命クーデター

週刊『前進』06頁(2369号5面2)(2008/11/24)

田母神前空幕長の開き直り許すな
 侵略戦争史の正当化を図る計画的な反革命クーデター

 第1章 1月に「問題を起こす」と予告

 「マスコミも反日の意見はどんどん取り上げますが、親日的な意見はなかなか取り上げてくれない。われわれ自衛隊は親日の代表みたいなものだ。だからわれわれが外に向かって意見を言っていかなければなりません。しかし意見を言うと必ず問題が起こります。問題が起きた時は航空幕僚長を筆頭に航空自衛隊が頑張るしかない。問題はなんぼ起こしてもいいから頑張って下さい」
 これは、「日本が侵略国家だったというのはぬれぎぬ」という論文を書いて航空幕僚長を更迭された田母神(たもがみ)俊雄が、今年1月30日に空自熊谷基地で行った講話である。ここには1200人の自衛官が参加したと言われている(週刊金曜日11月14日付)。
 ホテルチェーン「アパグループ」の懸賞論文に応募し最優秀賞になる、そして更迭されて国会に参考人として呼ばれ、自説を公然と主張する——この一連の事態がきわめて組織的計画的な意識的行為であったことは、この1月「講話」をみれば明白だ。まさに田母神の侵略戦争正当化とその開き直りは、軍部のトップによって企てられた反革命クーデターである。
 まず、懸賞論文で主張していることの超反動性、デマ性。日本は一貫して被害者で、正しいことをやってきた、悪いのは蒋介石でありルーズベルトであるということを強弁するために、その背後で操っていたのはコミンテルンであるというとんでもない歴史の偽造をやっている。ファシスト・カクマルと良い勝負の「謀略」史観である。歴史的事実をまるで無視したデマゴギーだ。
 また、コミンテルンが短い論文に6回も出てくるのは、田母神が共産主義やプロレタリア革命を本能的に恐怖し身構えていることを自己暴露している(コミンテルン自体は30年代以降はスターリン主義的に変質して世界革命を裏切る役割を果たしたのだが)。

 第2章 「つくる会」や安倍とも一体

 さらに重大なことは、田母神がこういう主張を空自の幹部に一斉に書かせ、一民間会社の懸賞論文に応募させたことだ。アパグループは、田母神とごく近しい関係にある元谷外志雄(もとや・としお)の経営する会社だ。元谷は安倍晋三元首相の後援会「安晋会」の副会長である。今回の事態の元凶は、この田母神を制服組のトップ・空幕長に任命した安倍と、それを引き継いだ麻生だ。
 元谷は田母神に請われて「空自小松基地友の会」を立ち上げた。今回、94人もの現役の空自幹部が懸賞論文に応募、そのうちの62人が小松基地所属だった。田母神が主導する組織的な「一斉決起」だったのだ。
 田母神は、04年に統合幕僚学校長だった時、「歴史観・国家観」の講座を新設した。その講師を務めた大学教授は、いずれも「新しい歴史教科書をつくる会」の正副会長に就いたことのある福地惇、八木秀次、高森明勅という面々だ。受講した幹部自衛官は陸海空合わせて400人に上る。田母神自身、当時から今回と同じ歴史観を示す文章を再三にわたり発表している。
 まさに田母神は今回、“積年の言動で空自の中はかなり掌握できた”と読んで、のるかそるかの勝負に出たのだ。 

 第3章 日帝の末期的な危機の表現

 田母神がでたらめな歴史観を満展開して過去の日帝による侵略戦争の正当化を繰り返しているのは、それ以外に自衛隊を帝国主義軍隊に作り変える方途がないからだ。しかし、その中身はずさんで稚拙、でたらめの集大成だ。労働者階級が職場から団結して階級的に立ち向かえば、必ず粉砕できる。
 田母神問題は、日帝の末期的な危機の表現である。何よりも世界大恐慌の情勢の中で、日帝は帝国主義の最弱の環として追いつめられている。イラク・アフガニスタン侵略戦争と北朝鮮をめぐる6者協議などの中で、日帝は日米同盟自体の動揺に直面している。さらに自民党政権は安倍政権以来がたが来て、まともな政権運営もできないほどだ。イラク・アフガン侵略戦争への参戦と防衛庁の省昇格によって世界の帝国主義の中に出ていこうとしているが、戦後憲法的制約はいまだ突破できていない。
 この中で軍部が自己主張を始め、制約を取り払おうと突出を始めた。しかもそのよって立つイデオロギーは、靖国思想、「大東亜戦争肯定」論であり、いったん完全に破産したしろものだ。
 日帝が憲法を改悪し、自衛隊の帝国主義軍隊化を果たすためには、「日本は素晴らしい国であり、死を賭して守るに値する国である」という扇動が必要だ。「日本がいい国だと思わないでどうして命を投げ出せるか」というのは確かに田母神が言うとおりなのだ。だが、日本の軍隊はぬぐってもぬぐいきれない血にまみれている。どんな正当化の試みも跳ね返す事実の重さがある。これが日帝の決定的な弱点だ。

 第4章 自衛隊解体、兵士の獲得へ

 だから、問題は自衛隊の存立を前提とした「文民統制」や「制服組の規制」ではなく、自衛隊解体であり、このような自衛隊を持つに至った日本帝国主義を打倒せよ、ということだ。
 軍服を着た労働者である兵士を獲得し、帝国主義軍隊を解体しよう。イラク派兵とともに自衛官の自殺は増大し、隊内でのいじめ、パワハラ、セクハラが増え、死者まで出している。それも田母神問題と一体のものだ。
 国のため、日本のためと言うが、その実体は、一握りの資本家階級のためだ。兵士の倒すべき相手は、「敵国」の労働者ではなく、自国の支配階級だ。労働者の膨大なストライキへの決起と資本主義打倒の闘いへの決起こそ自衛隊の解体、兵士獲得の道だ。労働者に国境はない。労働者の国際連帯で帝国主義を打倒しよう。
 対テロ新特措法(給油新法)延長法案の成立を阻止しよう。
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 第4章 田母神論文の要点

◎ 日本が相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。
◎ 我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者である。
◎ 我が国は満州や朝鮮半島や台湾に学校を多く造り現地人の教育に力を入れた。
◎ 多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価している。
◎ 我が国が侵略国家だったなどというのはまさにぬれぎぬである。