2009年1月19日

米帝・イスラエルのガザ虐殺弾劾 中東石油支配を狙い侵略強行

週刊『前進』06頁(2375号5面1)(2009/01/19)

米帝・イスラエルのガザ虐殺弾劾
 中東石油支配の護持を狙い
 大恐慌下で侵略を強行

 イスラエルが12月27日から強行しているパレスチナ自治区・ガザ地区への大空爆と地上軍の侵攻で、1月14日までにパレスチナ側死者は1010人、負傷者は4700人を超えた。文字どおりの無差別大量殺戮(さつりく)である。イスラエルの極右政党は、イスラム抵抗運動・ハマスを壊滅させるために核兵器の使用を要求するに至った。世界の主要都市で虐殺に抗議する労働者・学生・市民の大規模なデモが起こり、ついにイスラエル国内でもガザ侵略反対の抗議行動が広がっている。パレスチナ人民の英雄的な闘いに連帯し、帝国主義の世界支配を根幹から覆す労働者階級人民の国際的団結と決起を闘い取ろう!

 第1章 ハマス壊滅叫び人民大虐殺

 イスラエル軍は、ハマスを壊滅させるために住民の無差別的虐殺を含む作戦を展開している。イスラエル政府は昨年11月に、ガザ地区に通じる道路を全面封鎖。住民に食糧を配給する国連機関の輸送を大幅に制限した。11月にガザ入りできた食糧トラックは23台。計画のわずか6%だ。ガザのパン屋47店のうち30店が燃料不足で休業となり、地区内の銀行はすべて閉鎖された。病院は医薬品はおろか燃料もない状態に追い込まれた。この上に、イスラエルは12月末の空爆に始まる軍事作戦を発動したのだ。
 ガザに侵攻した地上軍は4日、ゼイトンの町で若者3人を尋問した後、彼らの一族約110人を一つの建物に閉じ込め、この建物を空爆した。30人以上が即死、大半の者が瀕死の重傷を負った。ガザ北方のジャバリア難民キャンプで、国連が運営し地域の避難所となっていた学校も空爆され、大量の死者が出た。遺体や負傷者の救出でガザ地区に入った赤新月社の医療チームも狙い撃ちにされている。まさに無差別虐殺そのものである。
 ちなみにイスラエル(人口700万人)の軍事力は、予算規模でエジプト、シリア、レバノン、ヨルダンのアラブ4カ国(合計8400万人)を合わせた額の2倍以上だ。GDP(国内総生産)もイスラエル一国で他の4カ国合計に匹敵する。しかもイスラエルの軍備は、とてつもない破壊力を持つアメリカの最新鋭兵器が中心だ。わずかな戦闘員が自動小銃と携帯ロケットで武装しているに過ぎないパレスチナ自治区とは比べようもない。
 このイスラエルが、今回のガザ侵攻作戦を半年も前から計画し準備していたのだ。それはちょうど米政府系住宅金融会社の破綻が決定的となり、世界金融大恐慌の引き金が引かれようとしていた時期だ。イスラエルは、アメリカを始めとする帝国主義諸国が仲介するファタハ(ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を実効支配)との「和平交渉」の裏側で、ガザ=ハマスへの全面攻撃を準備していたのである。

 第2章 イスラエル建国以来の危機

 イスラエルがガザ侵略を強行した決定的な理由は、アメリカ帝国主義の後ろ盾があって初めて成り立ってきたイスラエルという軍事基地国家の存立条件それ自体が、世界金融大恐慌の爆発—世界革命情勢の成熟のなかで根本から揺らいだことにある。イラク戦争の決定的な敗勢と合わせ、アメリカの中東政策、すなわち世界支配の中軸が音を立てて崩れ始めたのだ。金融大恐慌が、米資本と密接な関係を持つイスラエル資本も直撃し、イスラエル国内の階級矛盾が劇的に拡大したことも決定的だ。イスラエルの存立条件はあらゆる面で失われつつある。
 1948年のイスラエル建国は、第2次世界大戦後のアメリカの中東政策=石油資源強奪の中軸中の中軸として強行された。それは第2次大戦で突出した軍事的・経済的優位を築いたアメリカ帝国主義が、中東石油の権益をイギリスとフランスから奪い取る過程でもあった。
 大戦後のアメリカの対外軍事援助は、その3割近くがイスラエル一国に集中した。イスラエルは、このアメリカの援助で強大な軍事力を構築し、4次にわたるアラブ諸国との戦争(中東戦争)をとおして住民を大量に虐殺・追放し、現在に至るパレスチナ軍事占領を続けてきた。土地を追われたパレスチナ難民とその家族の数は現在約450万人。うち105万人がガザ地区の難民キャンプで暮らしている。
 アメリカの戦後経済発展と世界支配は、このイスラエル建国と、もう一方のイラン・パーレビ体制(53年に米CIAが旧政権を転覆)を軍事的支柱にして中東の石油を支配し、それを絶対条件にして成立してきた。
 その危機的本質は繰り返し露呈した。73年の第4次中東戦争後、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル支持国への石油禁輸と原油価格の実質4倍値上げを欧米諸国に突き付けた。第1次オイル・ショックだ。さらに79年イラン革命で、アメリカは中東支配の一方の柱を失った。以後アメリカは、中東に膨大な軍を常時展開しなければ石油権益を維持できなくなった。03年からのイラク戦争はその延長上にある。
 この途方もない帝国主義の軍事的略奪構造が、大恐慌を引き金に崩壊し始めたのだ。イスラエルの危機とアメリカの中東支配の崩壊は、大恐慌情勢と合わせて、帝国主義の世界支配を瓦解させ、世界革命情勢を成熟させる核心問題なのだ。
 しかも金融大恐慌のなかで、ロシアや中国を巻き込んで帝国主義の生き残りをかけた資源・市場の奪い合いが激化している。フランス大統領のサルコジや日本のソマリア沖派兵の動きなど、中東への帝国主義的介入は強まっている。まさに今回のガザ侵略は、米帝・イスラエルの中東支配=石油支配をかけた絶望的な侵略戦争、新たな世界戦争の扉を開く攻撃なのである。

 第3章 世界革命へ連帯して決起を

 米大統領に就任するオバマは、ガザ空爆開始時に”沈黙”による支持を与えた後、中東政策について親イスラエルの立場を明言し、新政権の中東問題アドバイザーに、クリントン政権の中東特使で「筋金入りの親イスラエル派」デニス・ロスを起用した。
 またオバマ政権の中心、大統領主席補佐官に起用されたラム・エマニュエルは、イスラエル建国運動期に、ナチス・ドイツに協力してシオニズム運動(ヨーロッパ・ユダヤ人のパレスチナ入植運動)の軍事部門を担った極右組織「イルグン」の立場を賛美・継承する人物だ。オバマ政権が、アメリカ帝国主義の血塗られた中東政策を堅持し継承する政権であることは疑う余地もない。ブッシュ政権の退陣が確定したにもかかわらず、イスラエル政府が今回のガザ全面攻撃を決断できたのは、このオバマの支持が背景にあったからである。
 半世紀を超える帝国主義の侵略とたび重なる虐殺の歴史にもかかわらず、パレスチナの民族解放闘争はまさに不屈の闘いを継続し、イスラエルとアメリカの中東支配を今まさに終わらせようとしている。
 これに連帯して今、全世界でガザ侵略弾劾の反戦デモが爆発している。全世界の労働者階級と被抑圧民族プロレタリア人民の団結と決起で、米帝・イスラエルのガザ侵略に反撃し、世界革命の勝利を切り開こう!