2009年1月26日

道州制導入へ暴論 江口克彦新著を批判する

週刊『前進』06頁(2376号2面2)(2009/01/26)

道州制導入へ暴論 江口克彦新著を批判する
 大恐慌の現実を直視できず
 「企業展開やり易く」が狙い

 1月4日の朝日新聞に江口克彦著『国民を元気にする国のかたち 地域主権型道州制のすすめ』(PHP研究所)の全面広告が出された。政府の道州制ビジョン懇談会座長を務めるPHP研究所社長の江口が数千万円の広告費を投じて宣伝している。道州制基本法案の早期策定、今国会提出に向かっての大キャンペーンだ。

 第1章 労働者さげすみ繁栄が至上目的

 新著は大資本の都合に基づく荒唐無稽(こうとうむけい)で牽強付会(けんきょうふかい)な主張に満ちている。
 だが軽視できない。世界金融大恐慌のなかで支配階級=資本家階級は、道州制導入にしか打つ手を見いだせず、延命をかけて攻撃を強めているからだ。道州制は、国・自治体丸ごと民営化、公務員360万人全員解雇・選別再雇用、自治労・日教組壊滅を狙う大攻撃だ。しかし労働者の一大反撃を組織すれば、必ず粉砕することができる。
 江口の最大のごまかしは大恐慌の現実を見すえないことだ。これは日本経団連の道州制第2次提言(08年11月)も同じだ。世界金融大恐慌が爆発し、新自由主義の歴史的破産が明らかとなり、資本主義そのものの終わりという時代が来ているのに、そのような時代認識、危機感を全然示していない。隠しているのだ。1929年大恐慌を上回る危機の到来に打ちのめされているのだ。
 「地方の疲弊」「日本の衰退」は新自由主義攻撃の結果であり、資本主義・帝国主義の根本的な矛盾が世界金融大恐慌として爆発する過程で起きた現象だ。ところが江口は「中央集権体制」とそのもとでの「官僚主義」に原因があるかのようにねじ曲げ、それに代わるものとして万能膏薬(こうやく)のように「地域主権型道州制」を対置する。こんなことで資本主義の矛盾が解決され、息を吹き返すことなどあり得ない。
 そもそも江口は「開発」による「繁栄」を最も素晴らしい社会状態だとしている。開発至上の高度成長期の価値観のままの古くさい人間だ。
 そして資本がもうかれば、その地域全体に波及すると考える。これこそ破産があらわとなった「トリクルダウン理論」だ。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ちる」——まさに労働者をさげすむブルジョア思想だ。

 第2章 「トヨタの成功」持ち上げ難破

 「四十七都道府県では、もはや細切れすぎる」という節に江口の主張の核心が展開されている。
 道州制に賛成しているのは日本経団連、経済同友会、日本青年会議所などブルジョアジーの団体ばかりだが、「どうして経済団体3者がそろいもそろって道州制を支持しているのか。やはりそれは都道府県制度のもとでは企業展開がやりにくいから」(87㌻)だという。
 「企業展開をやりやすくする」。資本のために道州制を導入するのであって、住民=労働者階級のためではないということだ。都道府県を廃止し、国の役割を限定し、都道府県を超えた「欧州諸国並み」の巨大な道州権力をつくる。それを大資本が握り、規制を撤廃し、産業基盤を整備し、自由に展開するのだ。
 江口は露骨すぎたと思ったのか、「住民にとっても四十七都道府県は細切れすぎる」と言い、救急車による患者のたらい回し事件、ごみ焼却施設の建設地の押し付けあいなどの解決を広域自治体化—道州制に求める。
 現実はそんな問題ではない。病院が患者を受け入れられないのは、医師を確保できないからだ。ごみ焼却施設を他県に持っていってもそこで公害が問題となる。
 さらに、トヨタの「成功」に言及したところで江口の主張の破綻は決定的となる。
 「トヨタ自動車では、……歳出削減に努力すると共に、同時に事業拡大、つまりは新製品を次々と市場に送り込んでいる。守りを固めながら、常に攻めの経営を展開している」(106㌻)
 江口が本を書いていた11月時点で少なくともトヨタの営業利益の大幅減少が不可避なことは分かっていたはずだ。見て見ぬ振りをして、新著を出版したのだ。そうしないと成功例がなくなってしまい、道州制論も難破してしまうからだ。
 結局、政府・資本家階級が道州制導入でやることは、国・自治体の丸ごと民営化、公務員の大量解雇、自治労・日教組解体の階級戦争なのだ。だが、大恐慌の到来で後のないブルジョアジーにとって、道州制攻撃は自らの墓穴を掘る絶望的なものにしかならない。なぜなら労働者階級の「生きさせろ!」ゼネスト、09年道州制粉砕決戦の爆発は不可避だからだ。