2009年2月16日

サルコジを称賛する志位 資本主義の救済者=日本共産党

週刊『前進』06頁(2379号3面3)(2009/02/16)

サルコジを称賛する志位
 命脈の尽きた資本主義の救済者=日本共産党

 世界大恐慌情勢の深まりは、革命の現実性をはっきりと告げ知らせている。資本主義の終わりが始まったのだ。情勢はすべての党派に、資本家階級を打倒し資本主義にピリオドを打つ革命の側に立つのか、資本主義の延命に手を貸す反革命の立場に立つのかの二者択一を迫っている。「資本主義の枠内の民主的改革」を唱えてきた日本共産党は、資本主義の防波堤となって労働者階級の決起に敵対している。資本主義の終わりが始まったのだから、労働者階級が権力をとるしかないのに、壊れたタガの修復に全力を挙げるというのが日共の基本姿勢だ。(高田隆志)

 第1章 労働者の味方を装い革命への決起を抑制

 最近、ブルジョアマスコミが日共を盛んに持ち上げ、日共の路線と運動に何か展望があるかのように褒めているのは理由がある。日共こそが「左翼」の顔をし、労働者の味方を装って、末期的な危機にある資本主義の最後の安全装置になってほしいという資本家階級の期待がそこに込められている。
 日共は過去14カ月で1万4000人の党員を増やしたと宣伝している。貧困化と格差拡大、首切り・賃下げ攻撃の激化の中で、労働者の怒りが日共への結集ともなっているのだ。つまり、資本主義が末期状態だから、多くの労働者がその反対物としての「共産党」に希望を見いだし(幻想だ!)、結集している。そのこと自体が革命の現実性を証明していることではないのか。
 問題は、多くの労働者の現状に対する怒りと不満、このままでは生きていけないという危機感を、資本家階級とその政府に対する反乱として組織するのかどうかということだ。そこで、日共は労働者階級の怒りの拡大に乗っかり利用することで組織しつつ、その怒りを革命的行動に結びつけず、逆に闘いを抑制し、労働者がけっして革命に向かわないように全力を挙げているのだ。

 第2章 トヨタや経団連に「要請」し資本家を激励

 委員長の志位和夫は、昨年来、経団連やトヨタやキヤノンに対する「非正規雇用の大量解雇を中止・撤回し、大企業が社会的責任を果たすことを求める」要請行動を展開している。それは、労働者の怒りの決起を組織し、その力で首切り攻撃を粉砕するのではなく、志位が「代弁」し代わりに解決してあげるというものだ。初めから、労働者の決起を恐れ、抑える目的で行われている。
 しかも、そこで資本家階級に言っていることは、「株式至上主義は資本主義の堕落だ」という説教や、「大量解雇はトヨタにとっても自殺行為」という、資本家の立場に立って資本家を擁護することばかりだ。
 NHKの党首インタビュー(1月11日)では「大企業が衰退していくことを望むわけではもちろんありません」「大企業がきちんと社会的責任を果たしながら健全に発展していくことが当然必要だ」と言っている。経営者がしっかりすれば、資本主義は立ち直れる、と激励しているのだ。
 「赤旗」の今年の新年号では、フランス大統領サルコジが「ルールある資本主義」と言ったと、志位が有頂天になっている(引用別掲)。日共から見れば、かの悪名高き極右サルコジも、解雇規制に熱心な「頼もしい」大統領で、「ルールある資本主義」を目指す同志だということになる。
 しかし、フランスの労働者階級はサルコジを「頼もしい」と思っているのか。とんでもない。フランスの労働者は1月29日、主要8労組の呼びかけで公務員の大幅削減などに反対してゼネストに決起した。サルコジ政権の登場以来、最大規模のストだ。昨年11月にも、国鉄労働者が労働時間延長などに反対してストに立ち上がっている。サルコジ政権のもとでの新自由主義攻撃に対する怒りは全労働者階級に広がっているのだ。
 このゼネストを「赤旗」はどう報じたか。1月30日付記事は、「仏全土で統一行動」と、見出しから意識的に「スト」という語を外している。それほど日共はストを恐れている。ストには労働者階級の自己解放性が隠しようもなく現れるからだ。ストを革命に向かって発展させようとしないフランスの体制内指導部もダメだが、日共はストそのものに反対なのだ。
 日共のサルコジ賛美は日本の首相・麻生にもサルコジのように頑張ってほしいという反動的な「メッセージ」なのだ。2月4日の衆院予算委での志位の質問。麻生がかつて「経営者が従業員を大切にし、意欲を引き出すような経営が結果として企業価値の向上につながるものと考えている」と答弁したことを「同感ですよ。総理の言うとおり」と持ち上げ、「言っているだけでなく行動に移すべき」と提言している。「これ以上の雇用破壊を食い止めるために、いま政治が知恵と力をつくすべき時」だと。
 「企業価値の向上」のために従業員を大切に、という転倒した議論に相づちを打つところに志位の反労働者性がさらけ出されているが、いったい麻生が雇用対策で何をやるというのだ。支持率10%台で死に体の麻生にお願いしている場合か。

 第3章 「資本主義の枠内」で解決可能と強弁

 「日経スペシャル・カンブリア宮殿」(1月19日テレビ東京)で志位は次のように語った。
 「私たちは、いますぐ共産主義に行こうって言っているわけじゃないんですよ。……まず資本主義の枠内での改革をやろうと。……ただ、資本主義(の枠内)でやっていっても、どうしても解決しない問題が出てくるだろう。そうしたら国民の合意で次に進みましょうということなんです」
 資本主義自体が目の前で崩壊を開始している。最後の延命策だった新自由主義も、音を立てて崩れている。大恐慌は、最後の弔鐘だ。まさに今が「資本主義ではどうしても解決しない」ことが明らかになった時なのだ。それを必死になって「資本主義の枠内」で解決可能かのように強弁しているのだ。
 志位の言う「国民の合意」とは、資本家階級がOKしたら「社会主義・共産主義に一歩一歩進みましょう」ということだ。これでは労働者階級に永遠に資本の奴隷でいろと言うに等しい。

 第4章 ワークシェアなどにも屈服し侵略を翼賛

 さらに具体的な諸問題について若干触れたい。
 (1)「ワークシェアリング」について。日共は「たんなる賃下げの手段にされている」と「批判」している。だが、そもそも日共は「一人当たりの労働時間を減らして仕事を分かち合うことで失業をくいとめる」と称してワークシェア推進を叫んできた。日共のように「資本主義の枠内」で考えたら、労働者が身を削って雇用問題を解決する(資本家は何も腹を痛めない)というところに行き着くのだ。
 (2)道州制について。日共は「地方自治の破壊」「住民サービスの切り捨て」として反対しているが、この攻撃が資本家階級の要求であり、自治体をなくして丸ごと民営化しようとするもの、公務員労働者360万人のいったん全員解雇の攻撃であることについて一言もない。自治体労働者を始め全労働者の決戦課題としてこの攻撃と闘うこととまったく反対の立場なのだ。
 (3)年末年始の「派遣村」について。志位を先頭にかかわり、その「意義」を強調したが、日共はその場の労働者を「救済の対象」としてしか位置づけておらず、文字どおり解放の主体として決起することを抑圧した。
 これらはすべて04年1月の第23回党大会で綱領を全面改定し、「労働者」「労働組合」「労働者階級」という語を一切追放したこと、「労働者階級の党」ではなく「日本国民の党」として、階級性を追放したことの帰結である。日共は、資本主義、帝国主義の危機の中で、資本家階級と対決することを放棄し、究極の体制内政党になることを宣言したのだ。「資本主義の枠内での改革」とは、この「枠」=体制に手をかける労働者階級の闘いは日共が抑圧するということだ。
 (4)ソマリア沖への自衛隊派兵について。日共は「自衛隊派兵は反対」と言いつつ「海賊取り締まりは警察活動で対応すべき問題」「海上保安庁が周辺国に警備技術を指導したり」日本がやるべきことはいろいろある(1月14、23日「赤旗」主張など)と、「海賊」対策の国際協力は必要と言っている。これはアフリカ、中東の権益確保のための出動の容認である。「海賊」退治は正しいという立場から、新植民地主義体制諸国の人民虐殺・抑圧を支持するものだ。とんでもない侵略翼賛である。
 大恐慌=革命情勢の中で、日共は労働者階級の決起に敵対し、資本主義の防波堤となって反革命的に登場している。日共反革命を打倒し「生きさせろ!」ゼネストへ決起しよう。
--------------------------------

 第5章 資料 “サルコジは頼もしい”

 大内田 もう一つ、こういう経済危機のときに政治がどう対応するかはとても大事だと思うんです。最近フランスのサルコジさん(大統領)が大企業に乗り込んだりして、けっこう頼もしく見えます(笑い)。フランスだけでなく、スペインもドイツも労働者を守るシステムがわりあいによく出来ていると思うんです。
 志位 サルコジ大統領は、昨年九月の国連総会で、投機への規制を訴えて、「ルールある資本主義をともに再構築しよう」といった。これは日本共産党と共通するスローガンですよね。(笑い)
 ヨーロッパでも大企業は経済危機を口実にリストラ計画を進めています。しかし、かなり強力な解雇規制の法的枠組みがあります。そして、政治がどう対応するかでは日本とは雲泥の差があります。政府が直接乗り出していって、リストラをやめさせるわけです。フランスでルノーがリストラ計画を出したときに、ボキエ雇用相が「ルノーのような巨大企業グループは、資産を持っているのだし、こんなリストラやるのは論外だ」といってやめさせる。
 大内田 志位さんが言ったセリフと同じですね。(笑い)
 志位 ほんとうは政府がやるべき仕事なんですね(笑い)。
(「赤旗」1月1日号での志位インタビュー)