2009年2月16日

“この土地こそ私の畑” 農地法裁判第1回 市東さん陳述

週刊『前進』06頁(2379号6面3)(2009/02/16)

“この土地こそ私の畑”
 農地法裁判第1回弁論 市東孝雄さんの陳述(要旨)

 三里塚反対同盟・市東孝雄さんが2月3日、農地法裁判(千葉地裁)の第1回弁論で読み上げた陳述書の要旨を掲載します。市東さんの農地死守の決意にこたえ、裁判闘争に勝利しよう。(編集局)
 この裁判は、千葉県の不当な決定に基づく不当な提訴です。まったく認めることができません。
 私の身に起きたことは賃貸借の「解約」というものではなく、農地の取り上げです。その目的は空港建設。空港のための”土地収用”です。農地と農民の権利を守るはずの農地法を使った、あからさまな農地強奪です。
 私は、このような不当な提訴は、ただちに却下するよう求めます。

 第1章 農地法での農地取り上げは不当

 空港会社が明け渡しを求める畑は、南台と天神峰の畑です。このうち天神峰には、離れや作業場、ハウスなどの建物があり、これらの撤去も求めています。みんな、私の生活にとって大切なものばかりです。
 私の祖父は、当時、原野だった土地を開き、農地に作り上げ、以後約90年間、大切に守り続けてきました。地代もきちんと支払い続けてきました。信義を破らず、これからも誠実にこの畑で農業を続けたいと望んでいます。
 農地法は第1条に「耕す者に権利あり」を掲げています。この農地法の大本を勝手にねじ曲げてはなりません。千葉県知事が空港会社のお先棒をかついではなりません。まして、農家の代表であるはずの農業委員会や農業会議が、農地取り上げを手助けするなど言語道断です。
 土地収用法は、公共事業のために個人の権利を取り上げる法律です。それ自体不当ですが、では、いま成田でこの収用法を使わないのはなぜか? 空港建設があまりに強権的で不当なために、事業認定が失効したからです。では、土地収用法で取ることができなかった農地を、農地と農民の権利を守る農地法で取り上げることができるのか。できることではありません。
 そもそも、空港会社は私に対して、明け渡しを要求する資格があるのでしょうか。無断で売買したこと、それを隠し続けたこと、地代をだまし取ったこと、転用目的で買い上げながら転用せず、農地を農地として所有し続け、それを貸し出したこと。これらについて農業委員会に手続きもしていません。農地法違反だらけじゃないですか。
 空港会社が農地法を盾に明け渡せと迫ることなど、許されないのです。

 第2章 親子3代で90年精魂込めた農地

 空港会社は空港建設のために、知事に対して解約の許可を申請しました。千葉県は「農地を農地以外のものにするのが相当」として許可しましたが、空港用地とすることが「相当」だとする判断は、正しいのか。断じて違います。
 暫定滑走路の誘導路は、南台の畑を避けて造ったため「へ」の字に曲がっています。天神峰の畑は空港用地にかかっています。だから、畑を取り上げて誘導路を直線にすることが相当だというのです。
 実に身勝手な話です。完成の見通しの立たない平行滑走路を、欠陥を抱えたまま、無理に造ったのは空港公団です。畑や現闘本部の建物や共有地があるのに、「運用にはまったく問題がない」と言い張って強行したのでした。
 それを今になって「非効率だ」と言って、取り上げようとするとは本末転倒です。地域の住民を苦しめる欠陥空港など、農地に戻すことこそ「相当」です。
 あげくに、県の役人は「1億8000万円の離作補償は、農業収入の150年分にあたる」から十分だろうと言う。農業を守るべき役人が、カネさえ出せばいいという姿勢に、たまらなく腹が立ちます。
 私は、代々守ってきたこの畑で野菜をつくり続けることに生きがいを感じます。農地は単なる土地ではないのです。長い月日をかけて、有機の土、完全無農薬の畑につくりあげてきたのです。祖父が切り開いた時から親子3代にわたって精魂込めた、この土地こそ私の畑です。そして農地と農業を大切にする考え方が、いま、大事だと思います。

 第3章 働く者の権利は守られるべきだ

 裁判所による強制執行に対して、品川のホテルの従業員が身体を張って闘う姿が大きく報道され、共感を覚えました。人は働くことに生きがいを感じます。労働者の職場、農民にとっての農地——これが守られないで、どうして社会が成り立ちますか。農地は私たちの命なのです。
 行政による一片の決定がなんですか。誠実に働こうとするものが正しい、と私は思う。私は正々堂々と、自分の農地を守ります。千葉県知事の無責任で不当な決定や、まったく卑劣な空港会社の農地取り上げに対して、一歩も引かず闘います。
 〔写真は、千葉地裁包囲デモを闘って臨んだ2・3農地法裁判後、記者会見する市東孝雄さん〕