2009年4月13日

職場の団結で主任教諭撤廃を 東京の教育労働者のアピール

週刊『前進』06頁(2387号4面1)(2009/04/13)

組合執行部の裏切りを許さず職場の団結で主任教諭撤廃を
 東京の教育労働者のアピール

 東京都教育委員会は、4月から「主幹教諭」に続く新たな職として「主任教諭」を導入しました。今年度から本格実施される教員免許更新制ともに、道州制による教育の民営化、教育労働者の大量首切りと非正規雇用化の突破口となる大攻撃です。現場労働者を分断し、職場の団結を破壊する主任教諭制度は、絶対反対、撤廃あるのみです。
 都教委は、都内の公立学校の教員約4万5000人のうち、初年度は約1万4000人、最終的には約2万2500人を「主任教諭」にする方針です。昨年12月に募集を行い、1万8369人が応募。選考は、業績評価と校長の選考調書、職務レポートで行われました。3月に選考結果が発表され、1万3984人が合格、4385人が不合格となりました。
 「日の丸・君が代」被処分者はほとんどが不合格、しかも、1回しか不起立していない被処分者の一部は合格させています。定年退職後の嘱託採用についても、被処分者は07年度まで不採用・合格取り消しが続きましたが、今年は04年1回だけの被処分者は非常勤教員に合格させています。転向を誘導しようとする意図が露骨です。

 第1章 職階制賃金で団結破壊狙う

 教育現場は、戦後長きにわたって校長、教頭以外に管理職が存在せず、ほとんどが「ヒラ教員」で、教育労働者が職場支配権を保持してきました。政府・文部省は一貫して中間管理職の導入を狙い、76年に主任制が導入されますが、主任手当拠出を始めとする職場抵抗闘争で形骸(けいがい)化してきました。
 「学校が『鍋蓋(なべぶた)型組織』になっている」とののしり、上位下達のビラミッド型支配をめざして、都教委は全国に先駆けて03年度から「主幹」制度を導入しました。
 しかし、07年度は定足数6103人に対して配置された主幹が3861人、3分の2にも満たないことに示されるように、実質的に破産しています。多少は賃金が高くても、校長の手先とされるストレスと多忙に到底見合わないと、年々応募が減っていったのです。
 この主幹制度の破産を取り繕い、職階制賃金の導入をテコに、職場の団結の徹底的な破壊に踏み込んできたのが主任教諭制度です。大幅な賃下げ攻撃であり、ヒラ教諭の非正規化への布石でもあります。
 教育職給料表に新たに主任教諭の職級が加えられ、一般教諭の賃金カーブがフラット化されました。小中と高校の賃金表の一本化もあって、高校では30歳以降、小中では40歳以降は大幅な賃下げです。採用から8年、最短の30歳で主任教諭になった場合と、定年まで主任教諭にならなかった場合を比較すると、生涯賃金の差は実に1300万円。ヒラ教員は45歳前後で定期昇給がストップし、主任教諭にならないと昇給はありません。
 東京では2000年に導入された業績評価制度が、04年度からは賃金にリンクされました。教員全員が校長—教育委員会によって毎年A・B・C・Dの4段階に評価され、6号給から3号給まで昇給に差がつけられます。戒告・減給処分を受けるとさらにマイナス2号給、停職だとマイナス3号給です。
 さらに、主任教諭導入とともに、OJT(on the job training )という労務管理が導入されました。校長の「学校経営方針」と「育成方針」に基づいて、主幹が主任の、主任がヒラのOJT責任者として指導にあたり、毎日の仕事を点検・評価させられます。

 第2章 日教組、全教の裏切りで導入

 何よりも問題なのはこの大攻撃に対する組合の対応です。日教組、全教を問わず、東京の教職員組合で主任教諭導入に反対を貫く方針を出した組合は一つもありません。
 主任教諭導入が決まった直後の昨年11月、東京教組(日教組)本部は前例のない「全分会代表者会議」を招集しました。冒頭から「今日は、総決起集会でも討論する場でもない。説明の場です」として、主任教諭になればいくら賃金が上がる、ならなければ賃金が下がる、と説明。「不受験で闘う方針を出すべき」という組合員の発言は無視し、”賃下げされたくなければ、受験しろ”と組合員を脅しつけたのです。実際、東京教組三役の一員は主任教諭に応募、合格しています。
 都高教(日教組)本部もまた、「今年こそストライキで闘おう」と真剣に職場討議を重ねている最中に、現給保障とひきかえに妥結。本気でストを構えていた組合員には絶望が広がり、脱退者も続出しています。幹部は率先して主幹・主任教諭選考に応募し、自らの保身に汲々(きゅうきゅう)としています。都教組(全教)本部もまた、”民主的な主任教諭にするために組合員が率先して取ろう”という論理で、組合員に受験を促しました。

 第3章 分断への怒り糾合し反撃を

 私は職場で若い人に、「主任教諭は職場の人間関係をズタズタにする。30歳代のあなたが50歳代の私たちを指導することになる。どう思う?」と話しかけてきました。若い人もみんな、真剣に考え、熟考した結果、受験しないとを決めた人もいます。
 主任教諭の対象者全員が応募を拒否した学校や、対象者は10人いたのに応募は3人、残り7人は応募拒否、というような学校も多くあります。受験した人でも、管理職に「応募しろ、応募しろ」としつこく言われて無理やり受験させられた人も多いのです。
 合格した後に、主任教諭が教諭のOJTをやらされることを知って、小中学校だけで数十人の辞退者が出ています。
 現場には、主任教諭導入による団結破壊、差別・分断支配への危機感が広くあります。これを組合が糾合して「全員不受験で闘おう」という方針を出せば、主任教諭制度など一瞬にして粉砕できたのです。
 主任教諭制度の正体が明らかになるにつれて、組合本部が妥結したことに怒りが噴出し、制度廃止の声は高まっています。現場では根強い抵抗が続き、校内人事をめぐって”教務主任や学年主任を主任教諭以外にやらせない”という激突になっています。
 組合幹部は、不合格者に対して「今年不合格になった人は、来年は優先的に合格します」とふれてまわり、怒りや不満を抑え込もうと必死です。主任教諭制度は、まさに組合本部の大裏切りに支えられて成り立っているのです。
 都教委の狙いは、職場の団結を破壊し、労働者を分断することです。職場から団結をつくり出し、都教委の手先になり果てた組合幹部をぶっ飛ばすために闘います。
 (長岡芳美)