2009年4月20日

富山再審へ熱気の集会 “冤罪増やす裁判員制度”

週刊『前進』06頁(2388号6面4)(2009/04/20)

富山最新勝利へ熱気の集会
 “冤罪増やす裁判員制度反対”

 第1章 ■国民動員図る

 4月12日、東京・大井町駅前の「きゅりあん」で富山再審集会を行いました。「冤罪(えんざい)はなくなるのか—八海(やかい)事件、福岡事件、富山(とみやま)事件から裁判員制度を検証する」という企画が時宜にかなったこともあり、初参加者18人を含む68人で成功しました。
 講演は、浜田寿美男さん(奈良女子大教授)、宮本弘典さん(関東学院大教授)、阿藤周平さん(八海事件元被告)。
 供述分析の第一人者として甲山(かぶとやま)事件をはじめ数々の冤罪事件で鑑定書作成に取り組んできた浜田さんは、「『戦後最大の冤罪事件』と呼ばれる八海事件だが、『戦後最大』と呼ばれるべき冤罪事件の枚挙にいとまがないのが日本の刑事裁判の現実」「裁判員制度によって冤罪は増え、刑事裁判のブラックボックス化が進行する」と説明し、「日本の刑事裁判においては『事実認定は証拠に基づく』のではなく、証拠は事実認定によって決定されている」という実態を、八海事件、福岡事件、富山事件を分析しながら指摘しました。
 宮本さんは、「刑事裁判のもっとも重要な使命は提出された証拠に基づき無罪を発見すること。裁判員制度は、それに向けて制度を構築しているのか。否!」「裁判員制度は危機に立った国家が、政治犯、階級闘争、社会闘争の一掃に向けて国民の動員を図るもの」「今でさえ絶望的な日本の刑事裁判の性質をさらに変貌させて、異端審問、魔女裁判に変える」と喝破しました。

 第2章 ■阿藤さん熱弁

 圧巻は高齢を押して上京された阿藤さんの登壇。1審死刑、2審死刑、3審差し戻し、4審無罪、5審差し戻し、6審死刑、7審無罪・確定と、18年を費やして雪冤を実現する闘いのなかで5人の死刑囚の執行を見送った体験に踏まえ渾身の提起をされました。「人が人を裁くという相対的なものでしかない裁判で、死刑という絶対的な刑罰を科してはいけない。死刑は国家権力による犯罪」「一握りの国家権力の手から裁判を国民の手に取り戻さなければならない。捜査、取り調べ過程をそのままにして裁判制度だけいじっても冤罪が増えるだけ。今も獄中で無実を訴える人たちの存在に思いをいたさなければならない。裁判員制度には絶対反対」との迫力と説得力に満ちた訴えに、参加者は固唾をのんで聞き入りました。
 今井恭平さん(ジャーナリスト)をコーディネーターとするシンポジウムにおいて、私(富山)は、以下のように訴えました。
 「1審無罪は、目撃証人への丁寧な反対尋問が検察官によって隠蔽された供述調書の存在を暴き、証拠開示を実現させることによってかちとられた。だが裁判員制度下では、公判前整理手続きによってこれは阻止され、再審の手がかりすら見いだせなくなる。改憲の先取りであり、隣人の処刑に否応なく加担させられることによって人間性、階級性が解体・変質させられる」

 第3章 ■反対の声82%

 人民の血税を使って繰り広げられる裁判員制度賛美キャンペーンにもかかわらず、最高裁の調査ですら82%が「裁判員制度反対! なりたくない!」と拒否感を示している現状の危機の深さを見抜き、うまずたゆまずその正体を暴いていけば必ず阻止できると実感できた集会でした。
 4・21日比谷集会の成功で裁判員制度阻止に突き進みましょう。富山再審勝利・星野文昭同志奪還への前進をかちとりましょう。
 (富山保信)
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★富山(とみやま)事件
 富山保信同志は1974年10・3全逓カクマル山崎洋一せん滅戦闘を口実にデッチあげ殺人罪で逮捕された(75年1月13日)。「目撃証言」の虚偽を法廷で徹底的に暴き、1審は無罪。だが85年2審東京高裁の逆転有罪判決で収監される。87年最高裁が上告を棄却。10年の服役後、95年に出獄。現在、再審闘争中。