2009年5月11日

〈焦点〉戦時動員狙う 新型インフル問題の核心

週刊『前進』06頁(2390号5面4)(2009/05/11)

〈焦点〉 情報操作し戦時動員狙う
 新型インフル問題の核心

 「新型インフルエンザの脅威」が国家権力とマスコミ総がかりで大宣伝されている。総務省は「対応ガイドライン」を発し「国家の危機管理上の重要課題だ」と叫んでいる。新聞には連日「検疫」「厳戒」「脅威」の見出しが躍る。麻生首相は「非常事態」の陣頭指揮を執るポーズで人気回復を狙っている。こんな状況を徹底的に打ち破らなければならない。
 まず「新型インフル感染が手の施しようもなく拡大し猛威を振るっている」かのような意図的な情報操作と危機管理を粉砕しよう。メキシコでは特定できる死者は40人以上、疑い例を含めると100人を超すと言われる。だがこれは高い貧困率、極端な格差社会、人口あたりの医師・看護師数の絶対的不足というメキシコの社会的現実をぬきに語ることはできない。病気になっても医者にかかることができない中で、病状が悪化し多くの人が亡くなったのだ。
 ところが日本においては、実際には何も起きていない社会の中から感染者を発見=摘発するために、国家、地方自治体、マスコミが「検疫」「予防」に躍起になり、医療、自治体、教育、空港などの労働者が徹底的に動員されている。修学旅行帰りの横浜市の高校生が感染の疑いをかけられ、学校には「生徒の通学路はどこだ」などの電話が相次いだ。高熱で病院を訪れた人が診療を拒否される事態も次々に起こっている。
 感染の恐怖だけが誇大に宣伝されているが、現実の被害は起きていない。だが一方で、日本では毎年3万人以上が自殺に追い込まれている。これが現実なのだ! 
 この間の「ミサイル発射」問題での北朝鮮脅威論と迎撃ミサイル実戦配備—戦時体制構築、裁判員制度導入、民主党・小沢一郎に対する検察の国策捜査、さらには「公然わいせつ」を口実とした芸能人の警察による逮捕と世論操作——。これら一連の動きと一体の治安管理、戦争への労働者動員体制づくりの攻撃が「インフル脅威」キャンペーンの正体だ。
 アメリカ合衆国においては「メキシコからの不法外国人が豚インフルを持ち込んだ。国境を閉鎖し移民を国外追放せよ」という排外主義運動が台頭し始めた。ロサンゼルスのメーデーではこの排外主義にヒスパニック系労働者から強い抗議の声が上げられた。
 起きている事態の本質は、帝国主義の末期的な腐敗と危機だ。
 今われわれが住むこの世界の自然環境と食糧事情は、最末期帝国主義のもとで異常な事態にある。食肉消費のために家畜が大量に飼育され、世界の穀物生産の38%が飼料にされ、牧草地のために膨大な熱帯雨林が焼き払われている。一方で飢餓と貧困が拡大している。今日の帝国主義的な経済・社会、文明・文化のあり方が、食糧、健康(衛生・疾病)、エネルギー消費など労働者人民の生活そのものに深刻な危機と打撃をもたらしている。「新型インフルエンザ」もその帰結だ。
 すべての事象には階級性が備わっている。超階級的な「病気」も「自然災害」もそれらへの対処も存在しない。最末期の帝国主義を打倒して労働者が革命に勝利しこの社会を変革する以外に、われわれの未来は存在しないのだ。