2009年6月29日

大恐慌とアメリカ労働者階級 ILWUの闘い

週刊『前進』06頁(2397号6面1)(2009/06/29)

大恐慌とアメリカ労働者階級
 サンフランシスコゼネストの地平引き継ぐILWUの闘い

 GM破産は、アメリカ資本主義の終わりだ。連邦政府も州政府も財政破綻し、一切の犠牲を労働者に押し付けている。1934年のサンフランシスコのゼネストの経験を現代に生かし、闘いを切り開くためにILWUローカル10、34(国際港湾倉庫労組第10、34支部)と動労千葉、民主労総ソウル地域本部を軸に戦闘的・階級的労組が7月、ゼネスト75周年の地に結集する。

 ランク&ファイルが闘いを開く−30年代

 アメリカの1930年代大恐慌の時代は労働者が生き生きと闘った時代だった。その突破口を開いたのが、1934年のサンフランシスコ、ミネアポリス、トレドの三つのゼネストだった。特にサンフランシスコのゼネストは現在のILWUに継承されており、今日的意義が大きい。
 このサンフランシスコ地域一帯の全産業の労働者が参加した大ストライキは、まず港湾・海運部門の闘いから始まった。
 34年5月9日、アメリカ西海岸の全港湾でILA(国際港湾労組)の諸支部が一斉にストライキに突入した。数日後、船員組合も続いた。
 このストが可能になったのは、ランク&ファイル(一般組合員)の指導部ハリー・ブリッジスらが、腐敗していたILAをランク&ファイルの職場闘争でつくり変える闘いを貫いたからだ。ブリッジスらは全港湾を回ってランク&ファイルの団結をつくった。
 また、ILAがアフリカン・アメリカンを組合から排除し、そのために経営側に彼らをスト破りとして使われてきたことを総括し、「差別はボス(経営者)の武器」として、人種を超えた団結を形成していった。
 「経済学者や法律家、財務顧問、それに組合幹部さえも、尊敬に値する真に有能な助言者であっても、自分たち労働者の団結した力に勝る存在であるとは考えなかった」(ハリー・ブリッジス)
 労働者の団結を一切の軸とした闘いにより資本のスト破壊策動を打ち破り、7月まで2カ月も西海岸の全港湾を止め続けることができたのだ。
 7月5日、警察はピケ隊に催涙弾を打ち込み、騎馬警官隊が突入した。拳銃が火を噴き、2人の労働者が殺された。この日が「血の木曜日」と呼ばれている。
 この事態の中で、カリフォルニア州知事は州兵部隊を展開し、連邦軍部隊も警戒態勢に入った。
 ブリッジスは7月7日、サンフランシスコ労組評議会にゼネスト突入決定を要請した。
 多くの既成労組指導部はスト反対だった。特にチームスターズ(トラック運転手などの組合)は港湾荷役に密接に関係する組合だが、中央本部も地元の指導部も港湾・船員ストに敵対的だった。
 だがチームスターズのランク&ファイルが決定的役割を果たした。7月8日、チームスターズのサンフランシスコとオークランドの両支部が、支部執行部の反対を押し切ってストライキ突入決議を上げたのだ。そして7月14日、躊躇(ちゅうちょ)していたサンフランシスコ労組評議会がゼネスト突入を決議した。ゼネストには、小売商店を含めてあらゆる階層が参加し、文字どおり労働者が地域の主人公になった。
 このゼネストの結果、労働者の就労を労働者自身で決定する組合管理のハイヤリングホール制度が確立され、「港のネズミ」と蔑視されてきた港湾労働者は誇り高い「港の主人」になっていく。労働者の職場支配権が確立されたのだ。
 これに恐怖したルーズベルト大統領は35年に労組結成を基本的に認めるワーグナー法を制定せざるをえなくなり、36〜37年にはGMの労働者の工場占拠闘争が爆発していく。これがAFL(米労働総同盟)の右翼的指導部と闘うCIO(産業別組合会議)の躍進をもたらした。ブリッジスらは、ILA本部との激闘の末、ILAの西海岸組織全体をILWUとして分離独立させていった。

 GM破綻と各州破綻資本か組合かの争い

 現在の大恐慌は、30年代の恐慌の比ではない。
 失業率は9・4%だ。ビッグ3の本拠地ミシガン州は14・1%、デトロイトでは25%を超える。財政破産で公務員が大量解雇されているカリフォルニア州では11・5%だ。1年半で倍増だ。
 オバマ政権は、破産法申請の直前まで「全米自動車労組(UAW)が譲歩せねば破産法申請だ」といってUAWに年金、医療カットをのませた。
 UAW本部は、三十数年間も組合員の権利を売り渡す資本への譲歩を重ねる一方で、本部役員の報酬は超高額、その上UAW所有の高級ゴルフ場で無料で遊興するという典型的労組ダラ幹だ。今回の破産過程での譲歩もすさまじい裏切りだ。
 だがUAWには、1936〜37年のフリントでの工場占拠闘争の勝利を始めとした闘いの伝統をもつランク&ファイルが存在している。だから、いかにUAW本部が資本の手先でも、資本は組合の存在をもはや許容できない。
 そのため、今回の破産法申請直前のUAWとの新規協約調印では、労働協約の更改時にスト権を放棄させ、仲裁人の裁定に従う義務を明記させたのだ。これは、労働組合の存在そのものの否定に等しい。
 体制内指導部を打倒しないかぎり、もはや労働組合そのものが成立しない時代に入ったのだ。

 米資本主義の破綻にメーデー復権の闘い

 昨年5月1日、ILWUローカル10、34は、ILWU本部の闘争破壊策動と対決し、ILWU全体のイラク反戦西海岸港湾封鎖の先頭に立った。港湾という戦略部門の封鎖に全産業の労働者が結集し、メーデーが復権され、体制内指導部と対決する勢力を大規模に登場させた。そしてイラク港湾労組との世界史的な国際連帯が形成された。
 その上に立って、カリフォルニア州の公共労働者の大結集が呼びかけられている。その先頭でUTLA(ロサンゼルス統一教組)は、州の教育予算カット・8000人解雇策動を職場でのテスト拒否闘争、ピケット、巨大街頭デモで押し返した。現在も2500人解雇攻撃に対して闘っている。UTLAは、校内での募兵活動との闘いなど、職場での反戦闘争を闘うことによって、これほどの力を形成してきたのだ。これを軸に、諸教組、AFSCME(米自治労)の諸支部などとの統一的な闘争が形成されつつある。
 大恐慌下で戦争、民営化・労組破壊と闘うランク&ファイルの運動が、体制内労働運動と対決しつつ急速に台頭している。アメリカの労働者階級と団結し、アメリカ資本主義・世界の資本主義を打倒し、労働者が主人公となる社会を建設していこう。
 (村上和幸)