2009年7月20日

JR西日本社長起訴 尼崎事故を労働者に責任転嫁するJR

週刊『前進』06頁(2400号2面1)(2009/07/20)

JR西日本社長起訴
 尼崎事故を全面的に居直り労働者に責任転嫁するJR
 分割・民営化体制打倒へ闘う時だ

 7月8日、神戸地検はJR尼崎事故に関しJR西日本の山崎正夫社長を業務上過失致死傷罪で在宅起訴し、山崎は社長を辞任した。JR西日本は、山崎体制のもとで遺族との補償交渉を終わらせ、事故を労務支配の手段として使い切り、徹底的な合理化・外注化を強行しようとたくらんでいた。その思惑は完全に破産した。にもかかわらずJR西日本は、新たな体制のもとで大合理化を進めようと狙っている。だが、動労千葉派の闘いがこれに敢然と立ちはだかっている。JR体制下で最も犠牲が集中する青年労働者の怒りと結合し、矛盾を深めるJR体制を打倒しよう。

 献花・立哨・唱和のさらなる強制叫ぶ

 05年4月25日に運転士・乗客107人を殺したJR尼崎事故の元凶は国鉄分割・民営化だ。JR西日本は、分割・民営化体制下で、「安全よりも営利優先」を露骨に貫いてきた。もうけを生まない安全部門は徹底的に削減し、「阪急・阪神などの私鉄に負けるな」「稼げ」を社是に、1秒の遅れも許さない強権的労務支配を行ってきた。事故やトラブルの責任は個人にあるとして懲罰的な「日勤教育」を繰り返した。その帰結が尼崎事故だったのだ。
 労組の団結を徹底して解体し、こうした体制をつくってきたのは、井手正敬を始めとした歴代のJR西日本幹部だ。だが今回、歴代幹部は山崎を除き不起訴となった。
 国鉄分割・民営化を強行し、規制緩和で安全無視のJRを生み出した政府もまた、尼崎事故を引き起こした張本人だ。国家権力に尼崎事故を裁く資格などまったくない。
 山崎1人の起訴と辞任で、尼崎事故問題を終わらせようというもくろみは断じて通用しない。
 JR西日本は96年12月、東西線の開通に伴い、事故現場の線路を半径600㍍から304㍍に付け替えた。この時の鉄道本部長が山崎だ。この急カーブには、ATS(自動列車停止装置)も設置されていなかった。
 山崎は検察の事情聴取に対し、「運転士が制限速度をはるかに超えてカーブに進入すると思わず、事故は予測できなかった」と主張し、起訴後も「どちらが正しいか裁判で決着をつける」とうそぶいている。事故の全責任を高見運転士に押しつけ、「日勤教育」による恫喝が運転士に無理な回復運転を強いたことも「関係ない」と居直っているのだ。ふざけるな!
 起訴後、山崎は社長を辞任したが、取締役には留まり、「社員の意識改革」を担当、今後も「現場を訪れて安全への取り組みを浸透」させるという。辞任を表明した記者会見で山崎は、「安全優先の企業風土づくりが道半ばであることは残念」と言い放った。「安全優先の企業風土づくり」と称して山崎らは、事故の責任をとことん現場労働者に押しつけ、犠牲者に対する献花・立哨・反省文の唱和に労働者を駆り立ててきた。山崎は、事故を逆手に取って労働者をがんじがらめにする攻撃を、これからも継続すると叫んでいる。
 後任の社長には、山崎の腹心の佐々木隆之が就任した。佐々木は、記者会見で「起訴に影響されずに、前向きに企業活動を推し進める」と豪語した。これは尼崎事故を全面的に居直り、さらなる合理化・外注化・非正規化を強行する宣言だ。大恐慌下で収益が1割近くも落ち込む中で、JR西日本は「安全よりも営利優先」を貫く新たな攻撃に出ようとしている。
 それによる矛盾は青年労働者に集中する。だが、絶対反対派を制圧できないまま、こうした攻撃に突き進むJRの施策は、JR体制の矛盾を深め、青年を始めとする労働者の反乱を引き起こさずにはおかない。
 折しも、国鉄分割・民営化以来の民営化攻撃に対する労働者の根底的な怒りが噴出する中で、麻生は衆院解散−総選挙へと追い込まれた。統治能力を失った支配階級は、かつてない大分裂を遂げている。労働者の怒りを「民主党政権樹立」に収束させようとする体制内指導部をぶち破り、職場から階級的労働運動の火柱を打ち立てるならば、JR体制を打倒することはできる。その絶好機が到来したのだ。

 動労千葉と被告団がJR追いつめた

 JR西日本も検察も国土交通省も、尼崎事故の責任を運転士だけに押しつけ、国鉄分割・民営化が元凶であることを全力で塗り隠そうとした。体制内労組指導部もそこに反動的に密集し、JR資本救済に躍起となった。JR連合・西労組やJR総連・西労、革同支配下の国労西日本本部は労使安全会議に参加し、会社防衛と事故隠しにひた走った。国労西日本本部の革同は、「日勤教育は必要」と叫びたて、資本の手先としての正体をあらわにした。尼崎事故の責任は、こうした体制内労働運動指導部にもある。
 他方、動労千葉・動労総連合と国労5・27臨大闘争弾圧被告団を先頭とする国労共闘は、事故直後から現地と自らの職場で会社を徹底弾劾する闘いを貫いてきた。動労千葉は反合理化・運転保安闘争の蓄積の上に、05年6月、処分覚悟で安全運転闘争を打ち抜いた。
 5・27被告団は、革同支配下の国労西日本本部の裏切りに抗して、事故弾劾の独自の闘いを重ねてきた。それは、「会社存亡の危機」を振りかざし、全社員に「謝罪せよ」と迫るJR資本と真正面から激突する熾烈(しれつ)な闘いだ。
 今年の4月25日、動労千葉と被告団は、「追悼一色」を打ち破り、尼崎現地に労働者の怒りと闘いの火柱を燃え立たせた。同時にこの闘いは、鉄建公団訴訟控訴審の3・25反動判決を弾劾し、1047名解雇撤回の原則を貫く新たな国鉄決戦を宣言するものとなった。全国から結集した650人の労働者とともに、第2次国鉄決戦の扉が大きく開かれたのだ。
 被告団を先頭とする関西の国労共闘は、「魔の急カーブ」の問題を徹底的に暴き、日勤教育や車両の軽量化、危険個所の放置などの問題と併せ、尼崎事故の原因を徹底糾明してJR資本を弾劾してきた。尼崎事故はJRが言う「予見不可能な事故」では断じてない。
 事故で虐殺された107人の遺族、負傷者の怒りもまた、絶対に収まるものではない。遺族の多くが今もJR西日本との和解を拒否している。遺族らは「山崎だけでなく井手ら歴代社長も同罪だ」とさらに怒りを強めている。

 JRの事故発生率は大手私鉄の11倍

 JR西日本だけでなくJR全社において事故が頻発している。07年の国土交通省の統計によれば、JRの事故発生率は私鉄の10〜11倍だ。列車走行100万㌔あたりの輸送障害事故の発生率は、大手私鉄15社平均の0・15件に対し、JR東日本は1・70件、JR西日本は1・54件となっている。
 国鉄分割・民営化以降、規制緩和により車両やレールの検査周期は延伸され、保守部門の外注化がとことんまで強行された。技術継承は断絶され、安全は構造的に崩壊しているのだ。
 JR東日本の「ライフサイクル深度化」の攻撃はその典型だ。JR東日本は、専門技術と経験を要する駅の輸送係の育成を怠ってきた。その結果、輸送係が要員不足になると、40歳以下の運転士をたらい回ししてのりきろうとした。しかし、短期の机上研修だけで、実地訓練もなしに配置したため、事故が多発している。青年運転士の怒りは沸騰し、動労千葉へ次々と加入している。
 最も犠牲が集中しているのが青年労働者だ。リストカットや職場での自殺(抗議だ!)が相次いでいる。正社員、契約社員、派遣の格差と差別も極限まできている。
 JR東日本は、90年以来続けてきた信濃川不正取水事件を、社長らの俸給カットで済ませ、全社員に「謝罪」を強いている。動労千葉の09春闘ストに対し、「会社が社会的批判を浴びている時だからやめよ」と圧力をかけた。西日本でも東日本でもJRは、国労バッジ着用を口実に重処分を強行している。こうしたJR体制への労働者の怒りは煮えたぎりつつある。
 動労千葉と5・27被告団は、JR資本と非妥協的に闘っている。被告団は7・17最終意見陳述公判を勝利的に闘いぬき、JR東日本本社と鉄道運輸機構への弾劾闘争を貫徹した。JR資本を追いつめるこうした闘いの中にこそ、1047名解雇撤回闘争の展望もある。ともに闘い勝利しよう。