2009年7月27日

「サンデー毎日」対談 不破・中曽根 日共は「資本主義の防波堤」

週刊『前進』06頁(2401号3面5)(2009/07/27)

「サンデー毎日」対談 不破・中曽根 親密な関係
 首切り民営化の元凶と歓談
 日共は「資本主義の防波堤」に

 「世紀の顔合わせ」なる触れ込みで、元首相・中曽根康弘と日本共産党前議長・不破哲三が「サンデー毎日」(7・19号)誌上で対談している。
 現役を退いたとは言え、中曽根は日本帝国主義の頭目の一人で、1982年から87年の5年間の首相として、「戦後政治の総決算」を掲げて日本の軍事大国化を推進しただけでなく、米帝レーガン、英帝サッチャーとともに、新自由主義政策を進めた元凶である。何よりも国鉄分割・民営化を強行した張本人である。労働者階級としては絶対に許すことのできない、不倶戴天(ふぐたいてん)の敵だ。

 中曽根に褒められ有頂天の不破

 ところが、不破ときたら終始和気あいあいと旧交を温めているのだ。そこには非和解の階級対立を背景にした対決姿勢はまるでない。打倒対象どころか、懐旧談に花を咲かせる「元国会議員」仲間なのだ。
 1969年に不破が衆院議員に初当選し、翌年総括質問した際に、中曽根が質問を高く評価して激励してくれたということなどを不破が得々と語っている。
 中曽根も、「不破さんのような市民的で教養主義を備えた幹部が出てきて、その言動や行動で共産党のイメージを修正した」などと褒めそやす。それに不破は礼を述べて悦に入っている。実におぞましい対談である。
 ここで重要なことは、不破が「暴力革命ではない」ことを強調し、それを中曽根が高く評価していることだ。中曽根は、日共が革命政党ではなく、むしろ徹底的な反革命政党であることを確認した上でその利用価値を認めているのだ。
 また、志位委員長がオバマ大統領と書簡を交換したことを評価した中曽根が、「共産党の外交戦略が柔軟性をもってきた。これは第一歩であって、次に進んでもらいたい」と激励し、不破は「大変な評価をいただいて」と有頂天になっている。

 自民党の終わり共に嘆き悲しむ

 対談は最後に、「政権交代」問題に及び、不破は「現政権への対抗軸が明確でない点で、状況は93年(の政権交代)によく似ている」とし、「結局、当時の非自民連立政権がやったのは政党助成金と小選挙区制だけで、これが政治を小さくした根源だと中曽根さんも考えておられますよね」と同意を求めている。なんと、不破は自民党支配の終わりが誰にも明白になっている時に、それには言及せずに、「野党政権になっても政治が小さくなるだけ」と中曽根の共感を求めているのだ。
 破綻した新自由主義政策の元凶である中曽根に、大恐慌が起こり、自民党支配が根底的に崩壊しようとしているまっただ中で、なんという会話を交わしているのか。
 階級的立場を投げ捨てると、こういうことになる。自民党支配の終わりをプロレタリア革命の勝利に結びつける労働者階級の闘いと真っ向から敵対するということだ。

 分割・民営化の大攻撃には沈黙

 対談を通じて、不破は中曽根政治の最も重大な核心点に一切触れない。意識的に避けている。今日の民営化攻撃の出発点となった国鉄分割・民営化についてだ。中曽根がやった階級的犯罪の中でも最も激しく悪辣(あくらつ)な攻撃だった国鉄分割・民営化。20万人の国鉄労働者が放り出され、200人もの自殺者を出した、戦後最大の国家的不当労働行為を指揮したのが中曽根だ。
 中曽根は後に、「国労をつぶせば総評・社会党が崩壊する。明確に意識して(国鉄分割・民営化を)やった」と述懐している。国家の総力を挙げて民営化・労組破壊の攻撃に踏み込んだのだ。
 「戦後政治の総決算」や「行政改革でお座敷を大掃除して床の間に立派な憲法を安置する」と言ってきた中曽根の突破口が国鉄攻撃だった。
 この国鉄分割・民営化こそ、今日に至る大量の労働者の非正規職化とワーキングプア化をつくり出した出発点だ。
 闘う労働者から見れば、そんな大悪党・中曽根と同席すること自体が許せない。ところが不破は、中曽根に一言の批判も発しないばかりか、沈黙を守ることで完全に免罪しているのだ。
 中曽根の攻撃にもかかわらず、国鉄分割・民営化は完成せず、破産している。動労千葉が2波のストで反撃し、1047名解雇撤回闘争が20年以上にわたって続き、今日の道州制・民営化・労組破壊の攻撃の前に立ちはだかっているのだ。
 日本共産党は、この闘いの発展に恐怖し、「解雇撤回」の旗を引き下ろし、政府・自民党に頭を下げ「政治解決」を図る4者4団体の中心として、闘いの破壊に奔走している。4者4団体の裏切りと、不破・中曽根対談のこの「超」の付く親和的雰囲気とは一体のものだ。資本家階級には卑屈にはいつくばり、闘う労働者に対しては屈服を強要して襲いかかる。
 この対談で不破の視野には労働者階級人民は入っていない。完全にブルジョアジーに向かって語っているのだ。日本共産党は、この資本主義の危機の中で、けっして危険な政党ではありません、道州制・民営化にも協力して、資本主義の救済に力を注ぎます、と売り込んでいるのだ。

 スターリン主義の反動と闘おう

 日共はどこまでもスターリン主義である。一国社会主義論と世界革命の裏切りを本質とするスターリン主義は、自己の延命のために、崩壊にあえぐ帝国主義の最後の防波堤となるのだ。
 30年代の大恐慌下で、ルーズベルトを支持し、米帝の行う戦争に率先協力したアメリカ共産党。ナチス・ヒトラーと手を結び、それが破産すると米英帝国主義と組み、「民主主義とファシズムの戦い」として第2次大戦に参戦したスターリン。不破はその後継者だ。
 資本主義社会を転覆する労働者階級の自己解放闘争の思想であるマルクス主義を裏切り、「労働者階級」も「労働組合」も綱領から追放した日共の路線と思想が、不破の言葉から見えてくる。
 まさに日本共産党こそ、日帝・中曽根とともに階級的に打倒すべき反革命だ。そのことを分かりやすく示してくれたことで、大きな役割を果たした対談だと言えよう。
 (高田隆志)