2009年9月 7日

自治体労働者の怒りを11月へ 自治労熊本大会決戦

週刊『前進』08頁(2406号2面1)(2009/09/07)

自治体労働者の怒りを11月へ
 自治労熊本大会決戦 本部の大転向暴き決起訴え
 民主支持・民営化推進粉砕を

 大恐慌下における自民党崩壊—総選挙情勢の真っただ中で開かれた自治労第81回定期大会(8月25〜28日 熊本)と前段の青年部総会(23〜24日)、女性部総会(同)、現業評議会総会(24日)は、労組交流センター自治体労働者部会に結集する闘う自治体労働者を先頭に革命を訴える6日間の歴史的な決戦として闘われた。闘う自治体労働者は、国鉄1047名解雇撤回、道州制・民営化絶対反対、自治労本部打倒=体制内労働組合運動指導部打倒の闘いを進め、4大産別決戦でプロレタリア革命を実現しようと訴え、多くの自治労組合員と結びつき、11・1労働者集会1万人結集実現への突破口を切り開いた。さらに8・30総選挙で自民党支配を打倒した労働者の怒りを民主党・連合政権との対決へと解き放ち、組織しよう。

 組合員の怒り解き放つ

 自治労本部は熊本大会で、自治労が労働組合であることをやめて「民主党・連合政権」を支える最大の産別組織となり、危機にあえぐ日帝国家・資本の救済と延命のために道州制・民営化、戦争協力、産業報国会化へと踏み出すことを決めようとした。これに対して革命派は、職場生産点の労働者の根底的な怒りを爆発させて改憲・戦争・道州制・民営化絶対反対、自治労本部打倒の路線のもとに団結し、11・1労働者集会1万人結集への突破口を切り開くことを訴えた。大会は転向か革命かという歴史選択をかけた重大な決戦として闘われたのだ。
 そして実際に全国の組合員の怒りに火がつき、自治労本部打倒、11月1万人結集への決定的な前進が切り開かれた。
 自治労本部は、「政権交代」実現のために組合員を総選挙に全力動員し、そのどさくさに紛れて大転向・大裏切り方針案を提起し通してしまおうとした。しかし、青年を先頭とする労組交流センターのビラとアジテーションは、本部の歴史的な転向・裏切り策動を鋭く暴き、その反動的な思惑を打ち砕いた。道州制・民営化絶対反対、自治労本部打倒の鮮烈な訴えは、組合員の心をとらえた。大会議事が進むにつれ、組合員の怒りが噴出していった。代議員から追及・弾劾された本部は「対応する」「受け止める」「取り組む」など、”踏みにじる”ことしか意味しないごまかし答弁で逃げ回った。
 本部を批判・弾劾する代議員の意見は、現場の労働者の怒りと要求を多かれ少なかれ反映せざるをえなかった。それが連合路線のもとで圧殺されてしまうのか、それとも真に階級的に解き放って革命派の路線にまとめ、体制内労組幹部=自治労本部の打倒、自治労の階級的再生へと発展させるのかが、問われた。今、後者の道が開かれつつある。
 「大恐慌と自民党崩壊をプロレタリア革命へ」「道州制とは何か」「労働組合とは何か」——わが闘う自治体労働者の根本的な訴えは、資本・当局の激しい攻撃と対決し闘うことを求める現場の労働者の意識にフィットした。多くの大会参加者が真剣に耳を傾け、ビラを読んだ。11月労働者集会への賛同署名、法大暴処法弾圧8学生釈放全国声明への賛同署名は数十筆に上り、『前進』が十数部売れた。体制内に収まらない組合員の怒りを11月へ組織しよう。

 “組合運動やめる”方針

 岡部謙治委員長は大会冒頭の本部あいさつで「日本社会の根本的な再建」を掲げて「官僚制を基礎とする明治維新からの強固な中央集権体制からの脱却」が必要であり、「中央省庁が全国一律の基準で地域自治体を拘束するシステムではもはや無理」「分権改革においては……地域主権を確立することが必要」と主張した。
 これは「究極の構造改革」として道州制導入を唱える御手洗冨士夫日本経団連会長や江口克彦PHP研究所社長・政府道州制懇談会座長、橋下徹大阪府知事らの道州制論とまったく同じ表現だ。岡部委員長は、資本家階級の主導する日帝の唯一の起死回生策だが破綻必至の道州制を労働組合の側から訴え、全面推進する意思を示したのだ。歴史的な「階級移行」だ。
 岡部委員長はさらに、「政・労・使は社会を支えるパートナーである」論を提起し、自治労は「地域において公共サービスを担う労働組合である」と「自治労の存在意義」を強調した。”自治労は労働組合であることをやめる”と言っているのだ。
 議案では「財政再建」と「公共サービス再生」のために「組合員利益の維持・向上を追求するこれまでの労働運動からの質的転換をはかる」こと、北朝鮮に対する排外主義を扇動することを方針として打ち出した。
 だが、労働者(階級)と資本(家階級)・資本主義国家の利害は非和解的に対立している。労働者は資本の支配のもとで賃金奴隷にされている。しかし労働者は団結して資本と闘争する。そのための組織=武器が労働組合だ。労働組合は、労働者階級の基礎的大衆的団結形態として、資本とその利益を保障するために組織された暴力である国家・当局と闘って労働者階級の生存と利益を守るための組織である。それだけではなく、究極的には賃金制度=賃金奴隷制を廃止し、労働者階級の自己解放をかちとるために闘う組織でもある。
 これに対して岡部委員長は、労働組合の階級的な立場=原点を完全に投げ捨て、資本と国家・当局にそのパートナーとして全面協力し、労働者の賃金・労働条件を向上させ生活と権利を守る闘いを放棄することを公然と表明したのだ。現場労働者の闘いを圧殺し戦争に協力する産業報国会になるということだ。熊本大会を資本・国家のために身も心もささげる「滅私奉公」組織への「転換のとき」(大会のメインスローガン)とすることを宣言したのだ。ブルジョア政党である民主党の政権を支えることは、日本帝国主義の救済・防衛、帝国主義戦争への協力・動員しか意味しない。

 2割賃下げ提案で民主政権支持

 当然にも代議員の中から激しい怒りがたたきつけられた。「本部運動方針は誰に向けたメッセージなのか。本部は労働者の気持ちがあるのか」「社会的セーフティネットや公正ワークルールなどの政策を述べることは自治労の役割ではない」「『転換のとき』とは何から何への転換なのか」「委員長あいさつの『政労使パートナー』発言は現場の組合の感覚とかけ離れている」「職場の厳しい状況をもたらしたのは政府であり、使用者・資本だ。そうした『政府や使用者とパートナーの組合』に転換するのか」
 階級対立を限りなくあいまいにする本部に弾劾がたたきつけられた。
 「標準的給与」(解説)を提案した本部への追及も日増しに激化した。
 「公務員攻撃に反撃を」「公務員人件費2割削減の民主党マニフェストを支持するのか」「月例給・一時金ともマイナスを最低目標に置く本部方針は疑問だ。独自賃金カットがなされている。これ以上の賃金カットは死活問題だ」「『最低限の標準的給与』として現行額を約20%も削減する『地方公務員の標準的給与のあり方』は絶対に認められない。人勧体制すら強制できなかった大幅賃下げを自治労自ら提案し、合意し、受け入れるのか」
 2割下げの「標準的給与」では、臨時・非常勤職員、現業職員はおろか正規職員さえも食っていけなくなる。標準的給与は、公務員のみならず全労働者への大幅賃下げ・大量首切り・非正規化攻撃を促進する。
 総務省は「自治体の現業賃金は民間より5割〜3割も高い」と言って現業賃金の大幅引き下げ、非正規化、大量解雇圧力を強めている。
 民主党はマニフェストに「無駄遣い一掃」「国家公務員の総人件費2割削減」を大きく掲げて圧勝した。この民主党政権を支えるために自ら賃下げを提案する——これが労働組合のやることか。組合員の怒りと革命派の訴えは完全に一致した。

 道州制反対の意見続出

 自治労本部は、岡部委員長のあいさつにもあるように今大会で完全に道州制推進の立場に踏み切った。議案には「道州制の議論に参加する」とある。道州制は公務員360万人いったん全員解雇・選別再雇用による自治労・日教組破壊、国・自治体丸ごと民営化、改憲・戦争国家化の大攻撃である。この暴露に呼応して多くの代議員が疑問と反対の声を上げた。
 「道州制についての本部のスタンスはあいまいだ。都道府県職員の雇用問題に直結する課題」「道州制については本部方針は弱い。反対のスタンスで取り組むべき」「道州制は国の仕組みを根本から変える。自治体労働者・公務員労働者のいったん全員解雇・選別再雇用が行われる。国鉄・社会保険庁職場で行われたことが全体化される。自治労解体が目的。絶対反対で闘うべきだ」
「日本年金機構基本計画は社会保険庁の責任をすべて現場に押し付けるもので、正義に反し、容認できない。一人の仲間も路頭に迷わせない。当局の責任を追及し、分限免職を阻止する」
 道州制絶対反対の意見には圧倒的な賛成の拍手が沸き起こった。本部は道州制についても政労使パートナー路線についても一言も答弁できなかった。言及した瞬間、闘う自治体労働者の追撃を受け、とどめを刺されかねないと恐れたのだ。
 道州制は国鉄分割・民営化の10倍、20倍の規模の労働組合運動つぶし攻撃である。それはすでに公立病院民営化・廃止・大量分限免職、社保庁解体・1000人分限免職の攻撃など、自治労破壊攻撃として襲いかかっている。しかし、国鉄分割・民営化絶対反対を貫き階級的団結を固めて二十数年闘い続け、JR体制を食い破っている動労千葉、5・27弾圧被告団、1047名闘争の存在は道州制粉砕決戦の勝利の道筋を示している。

 人事評価制度と任用替えを承認

 また「4原則2要件を備えた新たな人事評価制度の確立」を方針化した本部に怒りが集中した。
 「人事評価制度について、すでに実施されたなかに良い事例は一つもない。方針としてまず反対の姿勢をとるべきだ」
 一切の抵抗をやめた本部を弾劾する意見だ。
 「4原則2要件」が確保されていようが、人事評価は本質的に、労働者=人間を評価し、差別し、分断し、競争させ、階級意識を解体し、団結を破壊し、闘いを阻害・圧殺する資本・当局の攻撃なのである。絶対反対・断固拒否を方針に掲げて闘うべきなのだ。
 民営化について、現業評議会総会で現場労働者が切実な訴えを行った。
 「本部の公立病院ガイドラインでは闘えない。民営化は労組つぶし。民営化された53病院のうち自治労の旗が残ったのは三つだけ。指定管理者制度の廃止を」
 大会でも同様に「指定管理者制度は見直し・改善ではなく廃止の立場で闘うべきだ」などの意見がいくつも出された。
 特に民営化された新病院への組合役員の不採用、労組結成阻止という、あからさまな不当労働行為、組合つぶしが行われている現実への激しい怒りが表明された。民営化絶対反対を掲げて職場を組織し原則的に闘う以外に勝利の道はない。
 現業職場の切り捨て・民営化や人員削減・合理化、非正規職への置き換え、賃下げ、労働強化の攻撃を前に、本部はますます後退し屈服を深めている。本部の方針は「直営堅持」「現業活性化」「職の確立」による「質の高い公共サービスの確立」だ。これは「働こう運動」で「市民」に「より質の高い公共サービス」を提供せよ、「市民」のために犠牲を払え、という攻撃だ。滅私奉公であって階級闘争ではない。そして今回、本部は「組合員利益の追求は社会的に共感を得られない」として公務員バッシングに降参した。
 現業職員の任用替え(解説)に対しても、本部は「よりよい任用替え」を求める条件交渉路線で任用替えを認めた。
 要するに「公共サービスを担う労働組合」として「公共サービスを再生し豊かな地域社会をつくろう」という熊本大会スローガンは、政労使で道州制・民営化を推進しようという意味なのだ。
 「闘えば団結が深まり前進する。闘わなければ団結が弱まりばらばらになる」。労働組合として組合員の怒りと決起を引き出し、絶対反対を貫き、階級的団結を固めることを総括軸に闘うことが勝利を切り開く。道州制・民営化絶対反対、自治労本部打倒、11月集会1万人結集の路線と方針は、自治労組合員の中に大きなくさびとして打ち込まれた。
 4大産別を先頭に職場生産点からランク&ファイルの闘いを巻き起こし、労働組合をよみがえらせよう。世界大恐慌下、民主党・連合政権と対決し、大失業と戦争を革命に転化しよう。国鉄・三里塚決戦を最先端攻防として闘い、動労千葉を軸とする国際連帯の力で11・1集会1万人結集を実現しよう。
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 解説
 ●標準的給与 自治労労働局が今年5月19日に県本部担当者会議で提案した。この場では多数の反対で先送りとなった。いったん自治労のホームページに掲載されたが、すぐ削除された。労働局長の江崎孝は来年参院選の民主党公認自治労組織内協力候補。
 ①「2012年に人事院・人事委員会勧告制度が廃止され、団体交渉を基本に地方公務員給与が決定される」ことを前提に②これまでの公務員の全国一律賃金体系を解体し③各自治体ごとの個別の賃金交渉で組合側が提案する「最低限の給料表」。現状より2割削減(初任給11万2400円)の行政職給料表である。「都道府県間の水準差を認める」として自治労側から公務員一律賃金制と統一賃金闘争を解体するもの。
 民主党マニフェストは「無駄遣いをなくすための政策」として「地方分権推進(道州制!)に伴う地方移管、各種手当・退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定(公務員制度改革後)」などで「国家公務員の総人件費2割削減する」とした。
 ●任用替え 公務員労働者の採用に関し、ある採用区分でいったん採用された後、別の採用区分の合格者として採用されること。採用・転職・昇格・降格を任用という。
 任用替えの多くは、現業職員の一般行政職員への配置替え。大半は現業職員の削減が目的。自治体の中で最も戦闘的な現業労働運動をつぶし、自治体労働運動全体をつぶすことが狙い。現業労働者は行政職にない団体交渉権(協約締結権)を持っている。
 自治体当局は、委託や民営化、新規採用ゼロなどで団結を破壊しようとしている。任用替えしたくない現業職員や任用試験に合格しない現業職員が生まれる。職の廃止による分限免職も問題になる。任用試験に合格し任用替えしても、慣れない仕事や人間関係、現業差別で自殺や退職に追い込まれることも多い。