2009年10月15日

11月1万結集へ全力疾走を 動労千葉・田中委員長が訴える

週刊『前進』08頁(2410号2面1)(2009/10/15)

11月1万結集へ全力疾走を
 階級的労働運動復権の絶好機だ
 無数の労働者の怒り組織しよう
 動労千葉・田中委員長が訴える

 11・1全国労働者集会まで残り1カ月を切った。自民党支配の崩壊−民主党・連合政権の誕生という大激動情勢下で開催される11・1集会は、歴史を動かす大決戦だ。1万人結集ヘの大組織戦に猛然と打って出よう。動労千葉の田中康宏委員長に、1万人結集が切り開く巨大な展望と、それを実現するための課題について語っていただいた。(編集局)

 自民党を倒した労働者の叫び

 ——8・30総選挙の結果についてどのように見ておられますか。
 田中 半世紀以上にわたる自民党支配が崩壊したことは巨大な可能性をはらむ歴史的事態です。一番大事なのは、何が自民党支配を歴史的崩壊に追い込んだのかです。
 20〜30年にわたる新自由主義攻撃の中で、どれほど労働者がたたき落とされてきたのか。いま労働者は想像を絶するほどひどい現実におかれています。7月の完全失業率は史上最悪の5・7%。就職を希望しながら求職活動をあきらめている人は政府発表で461万人で、失業率にすると7%を超えています。「企業内余剰人員」などと言われ、いつ首を切られるかも知れない現実におかれている607万人の労働者。すべて合わせれば1400〜500万人もの労働者が、この社会の中で生きることができず必死の叫びをあげている。この現実そのものが自民党支配を倒したんです。
 支配階級がもはや誰も労働者を支配できず、飯を食わせることもできない。ここが大恐慌の中で完全に崩れた。その結果、連合が支配権力側に組み込まれ、「民主党・連合政権」とも言える政権になったわけです。
 これは、米オバマ政権下で起こっていることと同じですし、歴史的に見ても1929年世界大恐慌後のアメリカなど、資本主義が第2次世界大戦に行き着く過程で起きたことと同じです。しかも今の日本の国家財政の赤字は限界を超えています。ニューディール政策みたいなこともできないままに、労働者への階級攻撃と戦争への衝動が高まっていく。その先兵を連合が担うのです。
 政権中枢に旧同盟系を始め最も右の連合幹部たちがごっそり入りました。連合が「労働組合」の名をもって労働者を徹底的に痛めるつける。一切の幻想が取り払われ、事態は鮮明になります。階級的な労働運動、労働組合を復権する条件がすべて煮詰まった。闘う労働組合が時代の最前線に登場できるのかがズバリ問われる情勢です。
 焦点は「民営化・労組破壊」と「改憲・戦争」になります。大恐慌の中で、それ以外に政策選択の余地はないからです。
 ドル暴落が迫り、ヨーロッパやロシアは米国債を手放し始め、中国は金を買い集めている。大恐慌は明らかに第2段階に入りました。資本主義の末期症状です。民主党マニフェストなど全部めちゃくちゃになります。
 大変な情勢ですが、すごい可能性をはらむ情勢でもあります。労働者の闘いが燃え広がる瞬間に来ています。その怒りの声を11・1集会に組織しましょう。

 「1047名解雇撤回」を柱に

 ——11月集会のメインスローガンに「国鉄1047名解雇撤回」を据えた意味は。
 田中 階級攻防の最大の焦点となるのは道州制攻撃です。改憲を含めた国家のあり方の大転換です。民主党は道州制導入に踏み切っていますし、支配階級にとってこれ以外に延命の道がないという意味でもそうならざるをえない。自治労や日教組などが完全に屈服する中で、私はこの道州制との闘いをどうすれば階級決戦に持ち込めるのかとずっと考えてきました。他方、非正規職問題、派遣法問題が決定的に重大化しています。これも、どうやって階級決戦に持ち込むのか、と。
 そのためには軸が必要です。やはり、国鉄1047名解雇撤回闘争が先頭に立ち“このもとに団結しよう”と呼びかけるしかない。国鉄分割・民営化の過程で、何が国鉄労働者を襲い、社会はどう変わったのか。それを最も鮮明に訴えられるのは国鉄労働者です。
 さらに言えば、昨年来の4者4団体派の自民党への嘆願路線が最後的に破綻しました。この1年間、4者4団体派と対決し、「なんで、このかけがえのない闘いを自らの手で投げ捨てるんだ!」と言い続けてきました。この闘いの上に、1047名の当該を始め、国鉄闘争を支援してきた膨大な人たちを獲得する条件が出てきています。
 しかも民主党政権のもとで、まちがいなく有象無象の勢力が1047名闘争を巡って動き出す。4者4団体は、民主党に最後の望みをかけてより屈服を深めていく。それは国労の完全な連合化に行き着くものです。
 資本から最後的に使い捨てられようとしているJR総連カクマルも、歴史的裏切りを塗り隠して生き延びるために必死になり、1047名闘争をつぶすために介入しようとしています。JR資本は、尼崎事故を巡る事故調査委との隠蔽(いんぺい)工作を見ても明らかですが、民営化の矛盾を爆発的に噴出させています。それは1047名闘争と動労千葉を解体し、すべてにふたをするという新たな攻撃になっています。
 あらゆる勢力がもう一度、国鉄分割・民営化問題の前に引きずり出され、労働運動を巡る最大の焦点になる。決着がついていないからです。1047名闘争の持つ位置は決定的です。われわれが、ここに新たな決意で躍り込んでいく意味はものすごく大きい。
 4大産別を巡る闘いが今後の労働運動全体を左右し、情勢を左右する位置を持っています。改憲・戦争、民営化・労組破壊という現在の攻撃を見ても絶対にそうだと訴えてきましたが、事態は1047名闘争を焦点としてまさにそのとおりに進んでいます。
 国鉄分割・民営化は、「臨調行革の203高地だ」「行革でお座敷をきれいにして立派な憲法を安置する」と言って強行されました。支配階級は“これで日本の労働運動を解体する”と明確に意識して臨んだわけです。焦点は官公労の解体、今でいえば4大産別労組の解体でした。しかし、支配階級はそれを貫徹できず、今も1047名闘争という形で激突が続いている。確かに階級的力関係は大きく変わりましたが、民営化に象徴される新自由主義攻撃は決定的に遅れました。だから今、大恐慌下で道州制を問題にせざるをえない。
 100万人といわれる労働者が23年間も国鉄闘争を支え続けていることには絶対に根拠があるんです。多くは連合や全労連傘下の労働者たちです。さしあたりは体制内労組の内部で、一歩が踏み出せていないかもしれない。だけど現実にこれだけ物質力ある闘いが続いている。ここに依拠しない労働運動復権論は空論です。そういう意味でも今年の11月のメインスローガンは絶対に「国鉄1047名解雇撤回」だ、と。

 国際階級闘争の巨大な胎動

 田中 そのことにさらに確信を深めたのは、7月に開かれた労働者国際会議です。動労千葉が民営化・労組破壊攻撃と闘い、団結を守りぬいていること——集まった7カ国の労働者はここに最も注目しました。世界的にも、これだけ粘り強く新自由主義と闘いぬけている闘争はありません。イギリスやアメリカにもすごい闘いの経験はありますが、その闘いが今日まで続き、拠点を守って戦線を維持し、労働者の結集軸となって新たな展望をつくっている。こういう闘いはありません。
 ——世界中の仲間が同じところで苦闘しているということですね。
 田中 そうなんです。民営化・労組破壊攻撃と闘い、体制内的なナショナルセンターに抗していかに階級的労働運動をつくり上げていくのか。資本主義の最末期の中で、世界中でわれわれと同じ思い、同じ方向性をもって新しい闘いが始まっている。ブラジルでもトルコでもフィリピンでも、この十数年の間に既成のナショナルセンターに抗して新たな組織をつくり、闘いを始めている。韓国・民主労総も95年結成です。動労千葉結成は30年前ですが、国鉄分割・民営化反対闘争をとおして全国的な闘いを呼びかけたのは89年です。
 サンフランシスコに集まった7カ国の代表すべてが、明確に社会主義的変革に向かった労働運動を目指していました。新しい階級的労働運動が全世界で無数に始まっている。それが、現実にこの資本主義体制をくつがえす力となってつながり始めている。ここにこそ可能性があります。
 その7カ国の代表が、「11月集会を支援し、共同の闘いとして組織化する」という決議をあげました。今年の11月集会は国際連帯という意味でも爆発的に力を発揮していく新たな出発点になります。そのためにも、われわれが1万人ぐらいの労働者を集める力を持たなかったら問題にならない。われわれが力を持てば、すべての闘いが一緒になって前進できるという関係にあるんです。

 三里塚は労働組合自身の課題

 ——11・1集会と一体で10・11三里塚集会への大結集が求められています。
 田中 大恐慌情勢と表裏一体で三里塚は開港阻止決戦以来の正念場に入りました。あらためてもう一度、三里塚闘争が日本階級闘争に持っている意味を全国の仲間に訴えなければいけないと思っています。少なくとも数千人の逮捕者を出し、生命を奪われた仲間も出しながら国家権力と正面から激突し、43年間も非妥協で闘ってきた闘いは世界にもありません。
 動労千葉は、ジェット燃料貨車輸送阻止闘争などをとおして直接的にも反対同盟と“車の両輪”として労農連帯闘争を展開してきました。この闘いの中で5人の組合員が解雇になってますから、文字どおり一心同体で闘ってきましたし、三里塚闘争の位置をもっともっと高めたいという思いはずっとありました。
 ——「三里塚闘争は動労千葉自身の闘いだ」と訴えてこられました。
 田中 労働組合は本来、農民闘争やさまざまな市民運動・住民運動と広く連帯し、自らの闘いとしてともに闘えるのは当然のことですが、開港を目前にした77年の年頭会見で当時の福田赳夫首相が、「労使正常化」と「成田開港」を打ち出しました。労働運動を骨抜きにしてつぶし、他方で三里塚闘争をつぶして成田を開港するということです。その背景は74〜75年恐慌です。
 動労千葉は、この渦中でジェット燃料貨車輸送阻止闘争に立ち上がりました。この闘争を巡って動労本部から統制処分を受け、本部からの分離・独立闘争を闘うところまで行きました。われわれがジェット燃料を運ぶのかどうかが直接的に問われたわけだし、福田発言に明らかなように、開港による三里塚闘争の解体と労働運動の変質・解体攻撃は一体でした。実際、「労使正常化」路線のもとで労働運動の体制内化が一気に進みます。労働運動自身の問題だったんです。ジェット燃料輸送の当事者としては、この問題から身をそらしたら労働組合としてはつぶされる。中途半端に闘ってもつぶされる。団結を守りぬくために徹底対決する道を選んだわけです。
 ——動労カクマルは、そこで退いた。
 田中 そのとおりです。実際の闘いが始まった瞬間に動労本部は裏切った。そこから急坂を転がるように転落し、国鉄分割・民営化の手先にまで成り果てたんです。逆に動労千葉は、ジェット闘争と分離・独立闘争を闘いぬいた団結があったから国鉄分割・民営化攻撃と闘いぬけたんです。
 今、この開港時以来の決戦が来ています。この大恐慌下の歴史的決戦の中で三里塚闘争がどうなるのかは日本の階級闘争、労働運動を左右する位置を持っています。
 何よりも市東さんの農地を巡る闘いが決戦化しています。現闘本部裁判も年内結審が策動されています。11月集会の爆発と10・11三里塚現地闘争は一体だと強く訴えたいですね。
 ——臨時国会では改憲・戦争を巡る問題も焦点になります。
 田中 11月集会への1万人結集は、改憲・戦争の攻撃と正面対決する闘いでもあります。
 6月11日に憲法審査会規程が決まり、自民・公明はもう委員を選んでます。民主党が委員を選べば動き出す。もう一歩危機が深まれば直ちに事態は動き出します。自衛隊のソマリア沖派兵が強行され、海賊対処法が成立し、北朝鮮のロケット発射を巡っては現実とかけ離れた恐怖があおられ、迎撃態勢という事実上の「宣戦布告」が行われました。
 10月臨時国会が始まる中で11月集会が開催される意味は大きいですよ。戦争を止める力は、労働者の団結した力にしかありません。これも11月集会の大きな課題です。

 スローガンを具体的闘いに

 ——われわれにいま問われている課題は。
 田中 去年の11月集会では、「今こそ“生きさせろ!”の声を真正面から上げ“ゼネストが必要な情勢だ”と各職場に帰って闘いを組織しよう」と訴えました。これに全国の仲間が必死に応えてくれて、ストを始めとする無数の闘いが展開されました。この経験はすごく大事で、無尽蔵の教訓に満ちています。まずは一人でもこの状況に抗して立ち、資本や当局、体制内派幹部たちが支配する職場で階級的労働運動をつくろうという挑戦が始まった。
 問われていることは、ここからもう一歩飛躍して無数の労働者と結びつくことです。体制内派との闘いは職場の労働者の獲得戦です。資本・当局、そして体制内派の支配とそのイデオロギーの中で多くの労働者があきらめさせられ、労働者には力がないと思わされ、労働組合なんてこの程度の存在だと思わされてきました。体制内派との闘いとは、こういう現場労働者との格闘でもあります。自らの体制内的あり方を日々打ち砕き、未来と展望を語り、現場の労働者に信頼され、「こいつにならついていく」という存在に飛躍しないといけない。スローガンは明確です。「民営化・労組破壊粉砕」「道州制絶対反対」「派遣法撤廃」「改憲・戦争反対」。それを単なる立場表明にしないで具体的な闘いをどうつくっていくか。この出発点に立つところまで前進してきたわけです。
 労働者が飯も食えなくなり、他方で、腐りきった労働組合によって労働者の団結が破壊されています。もう一歩進めば、間違いなく労働組合が戦争の先兵になる。この現実の中で、マルクス主義や階級的原則を貫くことは大変なことです。だいたいは体制内派に転落していく。現場の困難に負けて日和ったり、ひとりよがりになったり、失敗も大いにあるだろうし、そこからもう一度マルクス主義の原則に戻って……と繰り返しながら進むしかない。この中で鍛えられ、全軍を率いる労働運動のリーダーが現場労働者の手でつくられていく。この困難の中にこそ可能性があるんです。
 動労千葉自身も、いま再び問われてます。組織拡大闘争の一定の前進を切り開いたがゆえに猛烈な反動がきています。今までのあり方ではこれ以上前に進めない。動労千葉も完成されたものじゃないわけですから、現場との関係、資本との関係の中で指導部が日々問われ、方針を形づくっていく必要がある。その繰り返しの中で路線を鍛え、時代を見据え、問われている課題を明確にしてきました。10・1ストを新たな出発点に、さらなる組織拡大闘争に突入します。これが資本に最も大きな打撃を与えるし、1047名解雇撤回への一番の近道だと思っています。簡単ではないですがここに挑むしかないと決意しています。
 われわれが1万人の労働者を結集する力を持てば、どれほどの可能性が広がるかはもう見えています。なんとしてもやりきろうじゃないですか。1万人の結集に向かって全力疾走しましょう。