2009年11月 9日

〈焦点〉 鳩山所信表明演説に反撃を

週刊『前進』06頁(2415号5面4)(2009/11/09)

〈焦点〉 鳩山所信表明演説に反撃を
 権力構造の転換と階級圧殺

 鳩山は10月26日、臨時国会で首相就任後初めての所信表明演説を行った。そこで、世界大恐慌の中、日帝ブルジョアジーの新たな政治委員会として戦争への国家大改造を打ち出した。これは、日帝が基本的外交政策として日米争闘戦の激化を明確に前提化した歴史的な戦争政治の宣言だ。
 大恐慌突入の中で日帝の延命の道は、ブルジョアジーの利害を貫く世界戦略、軍事力をもち、資源・市場をめぐる日米争闘戦に勝って生き抜くこと以外にない。
 これに対し米帝は、オバマ訪日に先立ち、ゲーツ国防長官を訪日させ、焦点の普天間問題は「辺野古の現行案が唯一の道」「日米合意を早期に実現せよ」と迫った。
 米帝は、大恐慌の深まり、基軸通貨ドルの没落、イラク・アフガニスタン・パキスタンの侵略戦争の絶望的泥沼化、国内労働者階級人民の反乱で、体制的危機にのたうち回っている。この米帝の現実から言って、日帝の安保外交政策の要求など断じて認められるものではない。したがって、米帝も日帝も徹頭徹尾反動的に突破するしかなくなっているのだ。日帝は、辺野古基地建設とインド洋での給油継続に代わる新たなアフガニスタン侵略戦争に向け、沖縄・本土の労働運動を解体し、戦争国家へ突進しようとしているのだ。
●「戦後行政の大掃除」宣言
 鳩山は、所信表明で「無血の平成維新」を掲げ、「中央集権から地域・現場主権へ、島国から開かれた海洋国家への、国のかたちの変革の試み」を叫んでいる。これは改憲派、日本経団連、極右勢力の共通のスローガンだ。鳩山政権は、連合を内に組み込んで階級対立の激化を反動的に突破し、「普通の国」(小沢一郎)=戦争のできる国に変えようとしているのだ。この「国のかたちの変革」の攻撃こそ道州制導入である。
 経団連は10・20提言で、道州制導入・東アジア共同体推進・社会保障制度解体の3本を一体のものとして要求した。これに応え、所信表明は「新しい共同体」「新しい公共」「新しい価値観」「新たな国づくり」などを打ち出し、道州制の突破を図ろうとしている。
 道州制は国家権力構造の反動的転換と直結している。軍事と外交と治安を国の専権として中央権力機能を特化する。議会制民主主義的統治形態によるブルジョア独裁という戦後的あり方を破壊し、大恐慌と世界戦争の時代に対応した強権的独裁体制に転換する。
 鳩山は「戦後行政の大掃除」と称しているが、これは1980年代に当時の首相中曽根康弘が打ち出した「戦後政治の総決算」と同じだ。中曽根は「行政改革でお座敷をきれいにして、立派な憲法を床の間に安置する」と称して、その最大の柱として国鉄分割・民営化を強行した。同じことをはるかに大きなスケールでやろうとしている。鳩山は「無駄遣いを排除する」というかけ声で、結局は道州制・民営化で公務員360万人いったん解雇の大攻撃に訴えようとしているのだ。また、「無駄遣いの排除」の裏には「財政構造の転換」として、消費税大増税の攻撃が隠されている。
 鳩山は「緊密かつ対等な日米関係」「東アジア共同体構想」を打ち出し、対米対抗的な安保・外交政策を追求している。「東アジア共同体」構想は、ブロック化=円経済圏形成をはらんだ争闘戦的構想であり、米帝との鋭い緊張を生む。軍事衝突も含む、戦後秩序に対する公然たる挑戦を意味しているのだ。臨検法案の策動に見られるように、鳩山政権は、自民党より平和的な政権なのではなく、自民党以上に侵略と戦争の政権である。
●「友愛政治」の凶暴な本質
 所信表明演説は、「東アジア共同体構想」と「地域主権」型道州制を一体のものとして打ち出したところにその本質が鮮明である。現代版の大東亜共栄圏と産業報国会の攻撃を連合と結託して推進するものだ。
 鳩山の「友愛政治」は、そもそも階級平和=労資協調のスローガンであり、労働運動圧殺のイデオロギーである。戦前の日本労働総同盟(総同盟)の前身として1912年に生まれた「友愛会」は、階級闘争の戦闘的発展に対する反革命として発足した反共主義団体だった。それが総同盟になり、労資協調と侵略戦争翼賛の道を歩み、ついには産業報国会に吸収されていった。
 今日の新自由主義の崩壊、資本主義・帝国主義の崩壊のもとで、わき起こる労働者階級の決起を圧殺するために、体制内労働運動を取り込み、翼賛勢力化する、まさに反革命政治の極みとして「友愛政治」がある。それは階級圧殺ということに核心があるのだ。
●鳩山を大絶賛する体制内派
 この鳩山を、これまで「左翼」を自称していた人びとが次々と絶賛し、その前にひれ伏している。JR総連松崎の機関誌「われらのインター」最新号には、松崎の取り巻きに転落した樋口篤三が「鳩山友愛革命に注目を」なる鳩山大絶賛文を書いている。JR総連カクマル一派の本性が満開である。
 また、10・25団結まつりなどでは、二瓶国鉄闘争共闘会議議長が鳩山政権での「政治解決」を熱望し「鳩山と前原を11月末の集会に呼ぶ」などとすがりつきの姿勢を示した。とんでもない反動的幻想だ。鳩山「友愛政治」を絶賛し身も心も権力・資本に売り渡した体制内派をぶっ飛ばそう。
 11・1労働者集会を引き継ぎ、国鉄1047名解雇撤回闘争を軸に、道州制・民営化阻止の労働者階級の反撃を職場から強め、鳩山民主党・連合政権打倒へ闘おう。