2009年11月16日

〈焦点〉米陸軍基地で“自爆決起”

週刊『前進』06頁(2416号5面3)(2009/11/16)

〈焦点〉米陸軍基地で“自爆決起”
 オバマの戦争政策に痛撃

 11月5日、米テキサス州フォートフッド陸軍基地で、陸軍精神科医ハサン少佐(39)の決死の決起が行われた。戦地派遣前の予防接種のために整列していた第36工兵旅団の兵士約300人に拳銃を乱射した(13人死亡、43人負傷)。生還を期さない「自爆テロ」事件だった。同基地は「戦場に最も近い基地」で、「いつか(こういう事件が)起きる気がした」と基地全体が受けとめている。
 同基地は、世界最大級の陸軍基地だ。第3軍団司令部が置かれ、兵士約5万7000人が駐留。イラクやアフガニスタンへの派兵拠点で、これまで500人以上の派兵兵士が戦死している。
 ハサン少佐は、両親がパレスチナ自治区からの移民で、バージニア工科大学卒業後、陸軍に入隊。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ兵士の治療のためワシントンの陸軍病院勤務、7月に同基地に赴任した。イスラム教徒で、「われわれは戦場にいるべきではない」とイラク、アフガニスタン侵略戦争に反対していた。
 米陸軍の自殺者は、08年143人、09年すでに134人。08年時点でイラク駐留米兵の約6割が2回以上戦地赴任している。また3度目の派遣になった兵士の約4分の1がPTSDの症状を抱えている。今年5月にはイラク派兵中の米軍曹が同僚5人を射殺する事件が起きている。
 米帝は、01年9・11以来、アフガニスタン侵略戦争に突入し、03年にはイラク侵略戦争へ全面的に突入した。この戦闘の泥沼化の中で米帝がやっていることは、徹底的な兵士に対する締めつけだ。
 米国防総省は、人員不足を補うために従軍期間を従来の1年から15カ月に延長。休息期間は2年から1年に短縮した。米帝は貧困層の青年を軍隊以外に働くところがない状態に追い込み、不正義の侵略戦争に駆り出し、過酷な戦場で肉体的精神的な打撃を与えてきた。ハサン少佐は、軍医として日常的に兵士の戦場体験を聞き、治療に当たりながら、しかも自分自身が近くアフガニスタンに派兵されることになっていた。
 ハサン少佐の覚悟の決起は、アフガニスタンへの米兵増派の策動を直撃した決起だった。アフガニスタンはタリバーン支配地域が拡大し、米兵死者数が激増している。8年間に及ぶイラク・アフガニスタン・中東侵略戦争とその泥沼化は、米帝軍隊の解体的危機を日々推し進めている。今回の事件は、米帝の存立を揺るがす危機だと言える。
 オバマは「海外の戦場で勇敢な米国人を失うことも悲劇なのに、米本土の陸軍基地内で兵士が銃火を浴びねばならなかったことにぞっとしている」と語り、追悼行事のために訪日を1日延期せざるを得なかった。まさに米帝にとっては内戦の恐怖なのである。
 米失業率は、ついに10月、10・2%になった。大恐慌のもとで米帝危機は底なしである。結局、米帝は帝国主義間争闘戦を激化させ、世界戦争へ進むほかない。
 大失業と戦争のオバマ政権を、今こそ労働者階級の決起で打倒する時だ。軍隊内からの決起は、米帝の階級支配の破綻の鋭い現れであり、プロレタリア革命の現実性を開示しているのだ。