2009年11月23日

「事業仕分け」は道州制の先取り 大量解雇と労組破壊狙う

週刊『前進』06頁(2417号2面3)(2009/11/23)

「事業仕分け」は道州制の先取り
 「ムダ削減」を叫んで 大量解雇と労組破壊狙う

 3兆円目標に予算要求削減

 小沢・鳩山=民主党・連合政権の「政治主導」路線の目玉組織、行政刷新会議の「事業仕分け」が鳴り物入りで行われている。約95兆円に膨れ上がった来年度政府予算の概算要求を「仕分け人」の追及・批判や一般大衆の目にさらし、霞が関の各省庁官僚の抵抗をねじ伏せ、「ムダ」を洗い出すことで、「3兆円超」の財源をひねり出すのが目標だ。
 11月11〜17日、24〜27日の事業仕分け作業で見直しか否か評価・判定を下す。見直し(廃止、見送り<整理・削減〉、基金の国庫返納、地方移管)の後、財務省主計局が査定し、その後、財務省が事業を所管する各大臣と折衝を行い、財務省が予算原案を作成、それを基に閣議が予算案を決定、今年中に国会提出する予定だ。
 仕分け対象事業は、財務省が概算要求の中から選んだ447事業をまとめた216項目だ。対象事業にならなかった類似事業にも仕分けの判断を適用し、予算の削減額を増やす方針だ。
 事業仕分けを分担する三つの作業グループは行政組織ではなく、仕分け人も官職にあたらない。仕分けは結果責任を伴わないし、強制力もない。公開で行われた仕分けの判定を無視するか尊重するかは、財務相や行政刷新相の政治判断だ。

 仕分け人に神奈川の市職員

 9人の民主党議員を除く56人の仕分け人は「民間有識者」だ。大学教授や資本家・経営者、仕分けをやってきた首長経験者や自治体職員だ。組織や階層の利害を代表しているわけではない。市職員といっても労働組合代表ではない。
 これら元首長や自治体職員(神奈川県の市職員)は、行政刷新会議の事務局長、加藤秀樹(元大蔵官僚)が代表を務める「構想日本」のもとで事業仕分けをやってきた。「構想日本」は2002年から今日まで全国43の自治体で事業仕分けを実施してきた。つまり仕分け人は小泉自公政権時代からの新自由主義政策の信奉者ばかりなのである。
 仕分け人は事業担当官僚を追及し、1項目1時間ずつ公開で議論し、事業の「ムダ」を洗い出す。何がムダなのか、新自由主義的に市場原理を基準に判定される。
 こうした過程が予算編成における「情報公開」「透明性」の確保だと美化され、宣伝されている。だがそれは、傍聴に動員された大衆が仕分け人とともに公開の場で官僚をつるし上げ、見せしめにするパフォーマンスであり、一種のファシスト運動だ。小沢・鳩山=民主党・連合政権は、自民党のできなかったきわめて独裁的な政治形態の国家へと日本を改造しようとしているのだ。
 事業仕分けによる国家の事業の見直し(廃止・削減、地方移管)は、そこで働く公務員労働者の職場・仕事を奪い、首を切り、非正規職化し、賃金を奪う大攻撃だ。例えば社会保障の効率化、コストダウンと称して予算を削減、財源を確保する社会保障解体攻撃だ。

 国家大改造と労働運動圧殺

 事業仕分けは「地域主権」国家=道州制導入と民営化、公務員360万人首切り、労組破壊の攻撃なのだ。最大の狙いは4大産別、公務員の労働組合運動の壊滅、階級闘争の圧殺だ。
 その象徴が「駐留軍等労働者の給与水準」という項目だ。明らかに全駐労の解体が狙いだ。マスコミは「思いやり」予算の米軍駐留費の労働者の給与が高すぎるから削減せよとキャンペーンしている。労働者の賃金が「ムダ」だというのだ。
 小沢・鳩山政権は、世界大恐慌の中、自民党以上に新自由主義政策を強行し、資本主義を救済・延命させようとしている。その一環としての事業仕分けで労働者の首を切り、賃金を下げ、社会保障を奪い、労組を破壊しようとしているのだ。
 ----------------------------
 事業仕分けの例
◆第1ワーキンググループ(地方、公共事業)
◇総務省 地方交付税交付金、明るい選挙推進委託費
◇法務省 裁判員制度の啓発促進
◇財務省 電子申請システム、公務員宿舎建設等
◇国交省 関西国際空港株式会社補給金、まちづくり交付金
◇環境省 エコポイント等CO2削減のための環境行動促進モデル事業
◆第2ワーキンググループ(社会保障)
◇厚労省 生活保護費等負担金、社会保障カード、個別労働紛争対策の推進
◇経産省 電源立地地域対策交付金
◆第3ワーキンググループ(教育、農政、防衛)
◇文科省 義務教育費国庫負担金、道徳教育総合支援事業
◇農水省 強い農業作りの交付金、担い手育成農地集積事業
◇防衛省 装備品の調査、自衛隊の募集事業、基地周辺対策、駐留軍等労働者の給与水準