2009年11月23日

〈焦点〉 オバマ“太平洋国家”宣言

週刊『前進』06頁(2417号5面3)(2009/11/23)

〈焦点〉 オバマ“太平洋国家”宣言
 対日争闘戦貫徹むき出し

 オバマ米大統領が11月13日に来日して鳩山首相と会談し、14日に包括的対アジア政策の基本姿勢を示す「東京演説」を行った。
 オバマは「米国はアジア太平洋国家である」と定義、日米同盟を含むアジアでの米帝の影響力を決定的に強化する姿勢を強く打ち出した。鳩山政権が「東アジア共同体構想」などで対米対抗性を示し始めたことに対し、力ずくでこれを圧倒し、アジア政策の主導権を手放さないことを宣言したのだ。
 これは世界大恐慌のもとで対日争闘戦を強力に推し進め、米帝の世界戦略のもとに日帝を動員し、沖縄の軍事基地を半永久的に固定化し、全世界の人民を戦争に引きずり込んでも米帝の利害を貫くという表明にほかならない。
 ブッシュ政権におけるイラク・アフガニスタン戦争へののめり込みと敗北は、アジアでの米帝の支配力を大きく後退させた。新自由主義政策の破綻と大恐慌で米帝の経済危機は一線を超え、失業率は10%を突破、ドル体制の崩壊すら現実味を帯びてきた。この根底的危機の中で、オバマ政権は米帝の世界支配力の復活をかけて「アジアに積極的に関与」する姿勢をむき出しにしたのだ。
 オバマはこの演説で、「日米同盟は少しずつ進化した。イラクの復興やソマリア沖の海賊対策、アフガニスタン、パキスタンの人びとへの支援のことだ」と、ブッシュ時代からの侵略戦争に日帝を動員してきたことを日米同盟の成果として押し出した。また核兵器については「廃絶する決意」を述べたその口で、「核兵器が存在する限り、米国は強力で効果的な核抑止力を維持し、韓国と日本を含む同盟国の防衛を保障する」と米帝の独占的核保有体制をいささかも譲歩せず貫くと断言した。戦争政権としての帝国主義者オバマの正体は明らかではないか。オバマに対するすべての体制内勢力の誤った幻想を徹底的に一掃して闘わなくてはならない。
 鳩山との首脳会談でオバマは、普天間基地移設問題で一切の妥協を排し、現行計画(辺野古移設)の迅速な遂行を要求した。これに対し鳩山は、会談後のコメントで「日米合意は深く受けとめる」と語ったが、その翌日、普天間問題の日米閣僚級作業部会での協議は「日米合意が前提ではない」と明言。前言を翻すかのような態度を示した。一方で鳩山は米帝に対して、インド洋での給油活動中止と引き替えに、アフガニスタン侵略戦争への支援として5年間で50億㌦(4500億円)もの拠出を約束、将来の地上部隊派兵も示唆している。
 「対米追従からの脱却」「対等な日米関係」をアピールしてきた鳩山民主党政権は、日米争闘戦の激化を辞さず、日帝独自の利害を貫こうとしているのだ。
 広島、長崎、沖縄の人民が当初オバマにかけていた幻想は、急激に怒りへと変わりつつある。米国内でのアフガニスタン戦争への批判の声もますます高まっている。派兵に反対する軍隊内からの決起によって訪日日程の変更に追い込まれたことは、オバマ政権の危機の深刻さの一端を表している。
 核兵器と軍事基地を廃絶する力は、全世界の労働者階級の闘いの中にこそある。