2010年1月25日

〈焦点〉 これは階級的な大災害だ ハイチ地震

週刊『前進』06頁(2424号5面4)(2009/01/25)

〈焦点〉 これは階級的な大災害だ
 ハイチ地震と帝間争闘戦

 カリブ海にあるハイチの首都ポルトープランスを中心に12日、阪神大震災と同規模のマグニチュード(M)7・0の大地震が発生し、壊滅的な被害が生じた。被災者は人口の約3分の1にあたる300万人、死者は10万〜20万人とも言われ、被災地では十分な救援や医療も保障されず、遺体が放置された状況が続いている。
 だがこれは不可抗力の自然災害などでは断じてなく政治的階級的な災害である。人命を軽んじ利潤がすべてとする資本主義・帝国主義の支配がこれだけの大災害にしたのだ。米帝を始めとした帝国主義の新自由主義支配によってハイチは「西半球一の貧困」状態に置かれ、国民の半数は1日1㌦以下の生活、失業率は7割近いとされる。貧困層は木が伐採されて地肌むき出しの山の急斜面にあるスラム街に追いやられ、今回はそれが丸ごと地滑り現象を起こして全壊する地域が続出した。
 平地でもほとんどの住宅は鉄骨はおろか鉄筋さえ使われておらず、ブロックを積み重ねた壁にセメントを塗っただけのもの。それが一瞬に崩壊し、がれきの山と化した。安全などまったく度外視されて公的な建築基準さえなく、その上に「手抜き」や当局への「ワイロ」が常態化していたのだ。
 さらに、大地震の危険が予測されていたにもかかわらず対策を講じなかったことも被害を激しくした。ハイチはプレートの境界上にあり、東隣のドミニカ共和国では1946年にM8・1とM7・9の大地震が相次いで起き、多数の死傷者が出た。米仏やハイチの研究チームが2008年に「M7・2程度になりうる」と、大地震の危険性を警告していたのだ。
 現在、各国の「救援活動」が活発に行われている。しかしこれは帝国主義間・大国間の争奪戦そのものとして展開されている。ハイチというアメリカの"裏庭"に対し、米帝はすでに原子力空母「カールビンソン」を派遣。陸軍第82空挺師団も活動を展開し、第22海兵遠征部隊なども派兵しようとしており、計1万人を超える。これらはアフガニスタンやイラクにも派遣されている部隊だ。アメリカの拠出金は1億㌦(約91億円)と、飛び抜けている。米帝の占領とさえ言われている。
 フランスは軍艦2隻の派遣を決定。サルコジ大統領もハイチを訪れる予定だ。中国は胡錦濤国家主席が直接指示を出す形で救援隊をハイチに派遣した。日帝も陸自の「緊急医療援助隊」を鳴り物入りで派遣し、空自のC130輸送機が現地で輸送活動を始めている。
 こうした中でフランスの航空機が、米帝が管制する空港に着陸が認められず、追い返される事態も起きた。フランスは「ハイチを助けるのが支援の目的であり、支配するものではない」と自らの思惑を棚に上げて批判している。
 世界大恐慌のもとで帝国主義間・大国間の争闘戦と戦争への動きが強まっているが、それはハイチ大地震の大災害の場でもむき出しの形で激化しているのだ。
 PKOの主力を派兵しているブラジルでは、コンルータスなど労働組合がブラジル軍の撤退を要求して闘っている。ハイチ、ブラジル、全世界の労働者と連帯し、帝国主義打倒へと闘おう。